【北乱】逆襲の死霊術師

革酎

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シナリオID:2875

オープニング

●幽界樹対策調査隊、動く
 かつて、シルトラース帝国東部鎮守都市エスタルには草人狩りと呼ばれる者達が居た。
 若き冒険者ケルテス・マシューズもそのひとりだったが、エスタルに於いて草人及び幽界分樹が討伐されたことで草人狩りとしての役割を終え、現在は元帝国魔導院エスタル支部長クライス・アクバーが組織する幽界樹対策調査隊の一員として行動している。
 幽界樹対策調査隊には多くの元草人狩りや旧帝国魔導院メンバーが参加しており、その大半は非授恵者、即ち一般人である。しかし彼らは一般人としては元々の能力が高く、数名がかりであれば小型クリーパーの一体程度を撃退することが出来る実力を具えている。
 そして幽界樹対策調査隊員には独特の階級が付与されており、何らかの判断が必要となった局面では、その場で最も階級が高い者の意見を優先とする規則が定められていた。
 ケルテスの階級は重戦平卒。決して高い階級とはいえないものの、1~2名の下卒を率いる程度の権限を有していた。
 そのケルテスが、エラトゥーン都市同盟最大の都市リブラネスタに程近い集落付近で妙な集団を目撃した。髭面の中年男が、恐らくアンデッドと思しき人影を何体か従えて集落門をくぐっていったのである。
 特に騒ぎらしい騒ぎも起こらず、男とアンデッドの群れはのっそりとした足取りで集落の中央付近へと消えていった。
 何かが、おかしい――ケルテスはこの時、従えていたふたりの下卒のうちのひとりに、リブラネスタの冒険者ギルドまで走る様にと命じた。
 現在ケルテスとふたりの下卒はメドゥの指先に奪われた龍脈通信装置『龍逓架』の捜索に当たっていた。もしあの髭面男がメドゥの指先に所属する死霊術師であれば、何らかの情報を握っている可能性がある。
 しかしケルテスひとりで、この状況に対処することは出来ない。ふたりの下卒はいずれも一般人であり、明らかに戦力不足だった。
 そこで冒険者ギルドに応援を依頼し、ケルテス達と共に集落内に消えた髭面男とアンデッドの群れに対処して貰おうと考えた訳である。
 指示を受けた年若い下卒は黙然と頷き返し、リブラネスタへと足を走らせた。

●再起を期す男
 リブラネスタに近しい集落内の、少しばかり大きな邸宅。
 かつては集落長の自宅として使用されていたその建屋は、現在はメドゥの指先幹部『緑の人差し指』ラネンターカムの前線基地のひとつとして利用されている。
 集落民は既に全員が殺されており、その遺体は死霊術師ザーティ・アンドロポフによって、自律型アンデッドである吸血屍として再利用されていた。その数、およそ30体程。
 過日ザーティはシルトラース帝国北西部の小都市ルグランブラードに於いて、自慢の雌オーガゾンビ部隊『アバランチレディース』を冒険者達によって全滅させられるという憂き目に遭った。
 可能であれば再度オーガの死体を掻き集めて新生アバランチレディースを結成したいところであったが、流石にオーガの死体というものはそう簡単に入手出来るものでもない。そこで仕方無く、まずは人間遺体から生成した吸血屍集団を配下に収めて、徐々に勢力を増やそうと考えた次第である。
 そして現在、ザーティは旧集落長宅内の居間で現在の上長に当たるラネンターカムと顔を合わせていた。
 ラネンターカムはこの集落の住民を全員殺害し、そのエーテルを強奪した。殺害した集落民はザーティの吸血屍に再利用させた。
「相変わらず、ひとりでは行動出来んのか。うぬの小物ぶりにも困ったものじゃのう」
 古びたソファーに寝そべっている美貌の女吸血鬼は、幾分呆れた様子で苦笑を漏らした。
「アバランチレディースを再結成することが出来れば、もう少し自信が持てるのですが……」
 額に脂汗を浮かべながら畏まるザーティ。
 ラネンターカムは然程の興味も示さず、そのまま報告を続けさせた。
「ルトルガーが進めておる準備の程は?」
「現時点で三割程度、遅れは生じておりません」
 ザーティの応えを受け、ラネンターカムは手製の日程表を覗き込んだ。その美貌は相変わらず無表情だが、その黒い瞳の奥には僅かながら満足げな色が浮かぶ。
 更にもう何点かの報告を受けてから、ラネンターカムはしなやかな肢体を伸ばしてゆっくりと立ち上がった。ザーティは更に身を固くして、恭しく頭(こうべ)を垂れた。
「その勤勉さは認めてやろう。褒美に、大型毒蜘蛛魔獣の吸血屍を造っておいてやった。この裏手に控えさせておるから、好きに使え」
 それだけいい残すと、ラネンターカムはのんびりとした足取りで室を出て行った。

解説

状況:  PCの皆様はリブラネスタ冒険者ギルドで幽界樹対策調査隊員からの依頼を受け、問題の集落に急行したところからスタートして頂きます。  最初は内部や周辺の調査から着手することになりますが、そのうち30体程の人間遺体から生成した吸血屍と、大型毒蜘蛛魔獣の吸血屍が現れて襲い掛かってきます。  これらを撃退し、死霊術師ザーティ・アンドロポフから何らかの情報を引き出すことが出来れば、本シナリオは成功となります。 敵:  以下の敵が現れることが想定されます。  ザーティ・アンドロポフ:メドゥの指先所属の死霊術師。体術にも長けた難敵。  人間遺体の吸血屍:およそ30体。強さは個体によってまちまちですが、熟練の冒険者ならひとりで6~7体ぐらいは同時に相手取ることが出来るでしょう。鉤爪による接近戦と噛みつきによる吸血で攻撃してきます。  大型毒蜘蛛魔獣の吸血屍:体長3メートル程の大型毒蜘蛛魔獣のアンデッドです。毒攻撃の他、吸血攻撃をも駆使します。冒険者数人がかりで斃せる程度の相手です。 用語:自律型アンデッド『吸血屍』  自律型アンデッドは本能で人間サイズの動く物体を襲う代わりに、死霊術師の命令を受け付けない欠点があります。が、生成時に術師を襲わぬ様にと刷り込んでおけば、術師自身が動く物体として囮となり、敵性存在の前へと誘い出せば、後は勝手に攻撃してくれます。  正確に指示を受け付ける通常のアンデッドとは異なり、操作には幾分の癖がありますが、術師自身が操作対象との精神的な支配接続を必要としない利点があります。  吸血屍は食屍鬼とは異なり、生きた人間の血を吸う本能を持つアンデッドです。 NPC:  主なNPCとしてはケルテス・マシューズが登場しますが、彼の部下の幽界樹調査隊員二名もモブNPCとして登場することになるでしょう。  ラネンターカムはもう去った後なので、直接顔を合わせることは無いかと存じます。

マスターより

 皆様、こんにちは。  エラトゥーン都市同盟内で龍逓架と幽界分樹に端を発した南北開戦連動【北乱】のシナリオをリリース致します。  本シナリオでは奪われた龍逓架の捜索に当たっていた幽界樹対策調査隊を支援して下さい。上手くいけば、何か有効な情報が手に入るかも知れません。  それでは、ご縁が御座いましたら参加のご検討を頂けますと幸いです。

リプレイ

●吸血屍という因縁
 エラトゥーン都市同盟最大の都市リブラネスタに程近い、森と丘の間に位置する集落。
 やや小ぶりな集落門の間近に森の端の茂みが広がっており、その裏側に幽界樹対策調査隊のケルテス・マシューズとふたりの下卒がじっと息を潜めて隠れていたが、そこに依頼を受けて駆け付けてきた応援の冒険者達が合流してきた。
「ちょっと、待って、て」
 ここでエルが、相棒の栗鼠リルを肩口から下ろした。
「……見つからないよう、気を付けて、行ってきて、ね」
 優しく頭を撫でてやると、リルは集落方面へと駆け出していった。
 既にケルテスが冒険者達に知らせておいたアンデッドの情報から、敵は吸血屍の群れを配置しているものと考えられた。過去に吸血屍と遭遇経験のあるコルネリウス・アーラの助言から、敵は栗鼠サイズの小動物には反応しないと予測された為、ここではリルによる偵察が最も適切だという判断となった。
 それから数分後には、リルの目を通して得られた情報がエルの口から訥々と語られてゆく。
 人間の吸血屍は、全てこの集落の住民達だった様だ。その数はおよそ三十。この場に居る冒険者だけでも十分に対処可能だろう。
 だがそれ以外に厄介な姿が認められた。体長3メートル程の大型毒蜘蛛魔獣らしき影が蠢いていたのだが、その動きから見て、この魔獣も吸血屍化しているものと考えられた。
「吸血屍、って、何? アンデッド?」
「はい、食屍鬼系のアンデッドと同種です。死肉ではなく、獲物の血を吸うという点が異なりますが」
 エルに応じながら、コルネリウスは最初に吸血屍を創り出した死霊術師アリバ・ジャハール・カサドのでっぷりとよく太った顔つきを何となく思い出していた。
 アリバは既に斃され故人となっているが、吸血屍創造の技術はメドゥの指先に所属する一部の死霊術師の間で共有されているらしく、恐らくは緑の人差し指ラネンターカムにも既に伝わっているだろう。
 術師の命令を一切受け付けない代わりに、人間大の動く物体には本能で襲い掛かるという性質を持つ。但し、製造時に術師や指揮命令者を攻撃対象外とする刷り込みを行っていれば、吸血屍を率いる者は攻撃されることはない。尤も、動く者に対して反応するという性質は残る為、術師や指揮命令者が自ら囮となって吸血屍を率い、他の攻撃対象の前まで誘導するという戦術は可能となるという代物だ。
「毒蜘蛛魔獣の吸血屍は俺が引き受けよう」
 愛用の剣を鞘から抜き放ちながら、アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトが茂みから踏み出した。
「奴らを斃し、集落のひとびとの仇を討つ」
 アルベルトは左掌で己の頬を軽く叩いて自らに気合を入れた。
 エルの偵察情報から、集落内に潜んでいる術師はかつてアバランチレディースなるオーガゾンビ部隊を率いていたザーティ・アンドロポフであることが判明していた。
 それ故、毒蜘蛛魔獣対処、吸血屍対処、そしてザーティ対処の三つの班に役割分担される運びとなった。
 まずザーティに対してはコルネリウスと共にロゼットが担当する。
「ザーティが絡んでるってことは、ラネンターカムと龍逓架の所在も分かるかも知れないわね」
 ロゼットは静かに吐息を漏らした。一刻も早く龍逓架を奪還しなければ、取り返しのつかないことになる。今回ザーティを捕捉出来たのは、寧ろ僥倖だったのではないか。
 そして毒蜘蛛魔獣にはアルベルトと、ナタリア・フィッツジェラルドのふたりが当たる。アルベルトひとりでは流石に厳しかっただろうが、接近戦と魔法攻撃に加え、本職の治癒技術にも長けたナタリアが参戦することによって、毒蜘蛛魔獣の対処は随分と楽になるだろう。
「とっとと片付けて、本命のザーティ捕縛に加勢したいところだな」
 ナタリアはアルベルトの鎧の肩口を軽く叩いた。これに対してアルベルトは、頼りにしているぜと笑みを返した。共にシルトラース帝国の力を受け継ぐ者同士。多くを語り合う必要は無かった。

●激闘開幕
 冒険者達とケルテスら幽界樹対策調査隊員の体が、淡い光に包まれる。
「まだまだ裏がありそうで困っちゃうよねぇ。毎日惰眠を貪ってたいんだけどなあ……あぁやだやだ」
 そんなことをボヤきながらも、ディレイン・オールドケイジは仲間達の身体能力を向上させる支援術の発動を終えた。
 更にルアンナ・ミュラーに対しては輝刃を仕掛けた。吸血鬼ハンターとしての彼女には、対吸血屍戦で大いに活躍して貰わなければならない。
「吸血屍の相手をするのは久しぶりな感じがしますね。まあ全て倒すだけですが」
 然程に気負った風も見せず、ルアンナは他の面々と共に集落方面へと駆け出してゆく。
 初手で、空間爆砕を炸裂させた。集落門前で屯していた数体の吸血屍共が、たちどころに薙ぎ倒される。大気を殷々と震わせる爆音の響きが、戦闘開始の合図となった。
 ルアンナの仕掛けた爆音に釣り出される様にして、集落内から吸血屍共がわらわらと湧き出してきた。が、毒蜘蛛魔獣とザーティは姿を見せない。警戒して集落内での籠城を決め込んでいるのだろうか。
 だがそれならそれで、冒険者の側も対処がし易いというものだ。事前に決めておいた役割分担通りに行動が可能となるのだから。
 ルアンナの合図を受けて、ハヤト=ガラン=ヴォルファングが吸血屍の群れの中へと飛び込んでゆく。と思った直後には、ハヤトは早々に後退してきた。その機動力を活かして吸血屍をルアンナの前に釣り出そうという訳だ。
「狙い通り、来てくれましたね」
 ルアンナは半ば一直線に並んだ吸血屍共に狙いを定め、直後、光り輝く蝶の群れを一斉に放出した。その巨大な潮流の如き破壊の波は、直線状に並ぶ敵を残らず呑み込んでゆく。
 その圧倒的な破壊力を受けて吸血屍共は大半が動かぬ屍へと戻ったが、しかし中には耐久力に優れた個体も居るらしく、何体かは再び立ち上がろうとしていた。
 それら残った敵に対しては、エルの放った光り輝く矢が襲い掛かり、炸裂する光破片が容赦無く撃ち込まれていった。
「おじさんも、もうちょっと仕事しちゃおうかな……あ、ケルテスさん達はまだ、後ろに退がっててね、危ないから。コルネリウスちゃんからの命令は、その後にした方が良いよ」
 ディレインからの指示を受けて、ケルテスとふたりの下卒は素直に頷いて後方へと退いていった。同時にディレインは祭刀にエーテルの輝きを纏わせ、手近の吸血屍へと突撃してゆく。
 ルアンナ、ディレイン、エル、ハヤトの四人体制で、対吸血屍戦は優位に進めることが出来た。接近戦と遠隔戦、そして飛び道具に攻撃魔法と、実にバランスの取れた配置であった。
 その一方で、集落内には別ルートからアルベルト、ナタリア、コルネリウス、ロゼットらが足早に潜り込んでゆく。早々に毒蜘蛛魔獣を始末し、ザーティを押さえることで、得るべき情報を入手する為だ。
 ここでは唯一の情報源ともいえる死霊術師を取り逃がしてしまうことは許されない。
 その為にも、四人の迅速なる行動が不可欠だった。
「その民家の左手裏側……出てくるぞ」
 ナタリアの予言通り、巨大な黒い塊がもぞもぞと這い出してきた。エルの報告にあった毒蜘蛛魔獣だ。その動き方は明らかに、生物のそれではない。
 ここで先手必勝とばかりにナタリアが放った光弾の雨が襲い掛かった。出足を鈍らせたところで、アルベルトがひと息に間合いを詰めた。
「まずは貴様からだ!」
 稲妻をも凌駕する程の鋭い剣戟が、毒蜘蛛魔獣の頭部へと襲い掛かった。余りの速さに、銀色の残影が軌道上にぼんやりと残る。と思った次の瞬間には更に数合、斬撃が鋭く迸った。
 毒蜘蛛魔獣はたちどころに頭部を叩き割られ、前脚を左右二本、失った。が、倒れない。吸血屍には急所というものが無い為、頭部を失ったところで仕留められたことにはならないのだ。
「ならばアルベルトの刃にも、威力を上乗せしないとな」
 ナタリアは輝刃を発動し、ただでさえ破壊力抜群のアルベルトの太刀に更なる攻撃力を与えた。その一方で、毒攻撃に対する備えも忘れない。毒蜘蛛魔獣と呼ばれる以上、この敵は毒攻撃を用いてくる筈だ。
 一気呵成に短期決戦を挑むのが吉であろう。

●ザーティ捕縛
 コルネリウスとロゼットは、集落が背にする小山方面へと足を走らせていた。
 ナタリアの分析によれば、ザーティはこの方面へと逃走を図る筈だ。そして彼女のその読みは、見事に的中していた。
「あのオーガゾンビ共を造ったのは、貴方ね」
 ロゼットが不意にそう呼びかけることで、相手の意識を逃走から驚きへと変じさせた。
 その奇襲に近しい口撃を浴びて思わず足を止めた死霊術師ザーティの目の前に、コルネリウスが瞬きもしないうちに間合いを詰めてゆく。
「今日はジルベルは居ないのですね……ならば、さっさと終わらせてしまいましょう」
 さらりと挑発のひと言でザーティを煽りつつ、コルネリウスはひと際高い咆哮を浴びせた。ザーティは髭面を紅潮させ、コルネリウスに殴り掛かってくる。敵は、金属製のナックルを装着していた。
 ザーティが体術に優れた死霊術師であることは事前に聞いて知っていた。だからロゼットはコルネリウスの命中力を事前に強化し、そして自らも高速打撃力を駆使してザーティへと挑みかかる。
 確かにザーティは死霊術師としては稀有な程に接近戦に強い術師ではあったが、守りの堅いコルネリウスにはほとんど通用しないばかりか、攻撃と治癒の双方で優れるロゼットの攻撃を浴びる状況は、明らかに不利であろう。
 だが、逃げるに逃げられない。コルネリウスは常にザーティの進行方向を塞ぎ続け、かといって下手に後退すればロゼットの矢継ぎ早の攻撃が襲い掛かってくる。
 コルネリウスは壁エルフとして徹底的に守りを固めているが、しかし防戦一方に追い込まれているのは寧ろ、ザーティの方であった。
 そして更にザーティにとって拙い事態が出来した。吸血屍殲滅に当たっていたルアンナ、エル、ディレインの三人が駆けつけてきたのである。
 この三人がここへ来たということは即ち、吸血屍は軒並み撃破されたことに他ならない。
 かつてコルネリウス達が帝国北西部の小都市ルグランブラードで刃を交えたオーガゾンビ部隊アバランチレディースは中々の強敵だったが、ごくごく普通の一般人の死体を用いて造られた吸血屍では、ものの数分程度の足止めにしかならなかった様だ。
 だが、それらの吸血屍も、元を辿ればこの集落の住民達だ。彼らの命を奪い、更にはアンデッドとして己の手足に使役していたその非道さは、決して容認出来ない。
 そしてザーティは、最早これ以上は堪えられぬと判断したのか、敵に背を向けてでも逃走すべきと考えたのだろう。まさに脱兎の如く踵を返して小山方面へ逃げ出そうとした。
 が、それよりも早くルアンナの放った氷結の一撃が襲い掛かり、ザーティはもんどり打って転倒した。その後も脚がもつれて立ち上がることもままならない。
 結局ザーティは逃げるタイミングを完全に逸した。
 気付けば目の前にコルネリウスが再び廻り込んでおり、更にはロゼットの振るう破壊力抜群の祭棍がエーテルを纏い、立ち上がりかけたザーティの脇腹に盛大にめり込んだ。
 ザーティは呼吸もままならない程に悶絶し、その場に崩れ落ちてしまった。
「さぁ、話して貰いましょうか。ルグランブラードの龍逓架を何処に運んだのか」
 コルネリウスの呼びかけに対し、ザーティは答えることが出来ない。ロゼットに叩き込まれた一撃が相当に効いたのか、痛みの余り呼吸困難に陥っていた。
「仕方無いねぇ……んじゃ、まずは念の為に縛り上げておこうかな」
 ディレインが、持参していたロープでザーティを縛り上げた。かつてアバランチレディースを率いて帝国小都市相手に猛攻を仕掛けた程の死霊術師だったが、呆気無く冒険者達の手に落ちることとなった。
 やがて、毒蜘蛛魔獣アンデッドを仕留めたアルベルトとナタリアも合流してきた。アルベルトは腕や首筋に青黒い痣の様な残っていたが、撃ち込まれた毒は全てナタリアが上手く対処していたらしく、大事には至っていない。
「何だ、もう終わったのか」
「意外と簡単に片付いたものだな」
 アルベルトもナタリアも拍子抜けの表情を隠そうともしなかったが、ケルテスや下卒のふたりから見れば、敵勢が貧弱だった訳ではなく、この冒険者達が凄過ぎたのである。

●得られたものは
 しかし、事がトントン拍子に進んだのは、そこまでであった。
 捕縛したザーティに対して冒険者達は矢継ぎ早に問いかけていったものの、ザーティは中々口を割らない。下手なことをいえば、後々ラネンターカムから酷い目に遭わされると恐れているきらいがあった。
 それでも冒険者達は根気良く、ザーティを尋問し続けた。
「そもそも、この集落で何をしようとしていたのですか?」
 コルネリウスからの疑問に対し、ザーティはラネンターカムの命令に従っただけだとの一点張り。実際、ザーティは自分が何故リブラネスタ周辺で集落を攻撃していたのか、余り分かっていない様子だった。
 が、コルネリウスの指示を受けて集落内を捜索していたケルテスと、彼に協力して全ての家屋内を丹念に調べ廻っていたエルが、敵の意図を紐解く証拠を次々と掻き集めてきた。
 どうやらラネンターカムはザーティを使ってリブラネスタ周辺でアンデッド騒ぎによる混乱を引き起こし、リブラネスタの防衛観点を海上から内陸へ向けさせようとしていた様だ。
「ところで、アバランチレディースはどうやって作ったの?」
 ここでディレインが尋問の方向性を変えた。オーガゾンビに関する問いを畳みかけることで、何か重要な情報をぽろっと口走ることを期待してのことだったが、しかしザーティは寧ろ嬉々として応じるばかりで、全くそんな気配は無かった。
 オーガの死骸は、ジルベルが掻き集めたものらしい。それが全て雌だったのは、偶々だったとの由。
「あぁそうなの……じゃ、何でこの前、ルグランブラードに居たの?」
 この問いかけに対してはザーティは黙り込んだ。答えまいと頑張っているのではなく、本当に目的を何も知らずにただ呼ばれただけ、だったのかも知れない。
 結局、ザーティは龍逓架の所在は何ひとつ知らないことが分かった。毒蜘蛛魔獣の死骸の出どころも知らないとのことであった。
「余り大した情報は、得られなかったわね」
 溜息を漏らすロゼット。だがディレインは、そうでもないとかぶりを振った。
「龍逓架については幹部級しか知らないってことが分かった。つまり狙うべき情報源はもっと他にある。それが分かっただけでも収穫だよ」
 ディレインの言葉は決して負け惜しみではない。
 捜索はまだ、始まったばかりなのだ。

マスターコメント

 皆様お疲れ様でございました。  斃すべき敵は全て斃し、ザーティも捕縛出来たので戦闘面では成功です。  ただ情報の引き出し方がちょっと甘かったですね。  もうちょっと違う観点であればもっと意外な事実を知ることが出来たのですが、他にも調査・捜索系のシナリオは出ていますので、そちらの結果を待つことにしましょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2023年04月09日 22時32分51秒 公開

成功

相談掲示板

  1. ロゼット

    ヒーラーのロゼットよ。よろしくね。 依頼の内容は、死霊術師が目撃された集落の調査ね。 そこから襲い掛かってくる人間の吸血屍およそ30体と、 大型毒蜘蛛魔獣の吸血屍1体を撃退すること。 そして死霊術師ザーティを捕縛、彼からラネンターカムの居所や 装置『龍逓架』の在処について、何か情報を引き出すことかな。 あと味方NPCに依頼人の調査隊ケルテスと部下2名がいるわ。 3人であたれば戦力にもなりそうだから、手を借りるなら。 とりあえず敵戦力への対応の割り振り、かしら。 ザーティに2名、毒蜘蛛に2名、人の吸血屍に4名ぐらいかな? 最終的な人数は皆の希望次第だけど。 私は、強くはこだわらないけどザーティの捕縛希望で。

  2. コルネリウス・アーラ

    ウォーリアのコルネリウスです、よろしくお願いします。 ロゼットさんは情報をまとめて頂きありがとうございます。 割り振りについてはロゼットさんの仰る人数比でまず動き、毒蜘蛛とザーティを抑えつつ、吸血屍の数が減ったら毒蜘蛛・ザーティ側へ援護して頂けたら良いかと思いました。 私はひとまず、ザーティの対処か毒蜘蛛の対処どちらかを希望しますね。 >ケルテスさんと部下 敵の対応が難しそうな場合には、無理をさせない方針でよいでしょうかね。 幽界樹対策調査隊員はその場で最も階級が高い者の意見を優先するとの事ですし、手を借りるなり何か指示を出すのでしたら、上曹の私から伝えましょう。

  3. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 今回俺は、大型毒蜘蛛魔獣の吸血屍に向かう予定だ。 大型毒蜘蛛魔獣の吸血屍を倒して余裕があればザーティに向かうぜ。

  4. ディレイン・オールドケイジ

    ヒーラーのディレイン・オールドケイジ、よろしく。 情報の整理、ありがとう。助かるよ。 俺は人の吸血屍かな。 バフまきと範囲ヒールでいくつもり。 ケルテスさんはともかく、部下の2人は一般人ってことだから、後ろに下がっててもらうのがいいのかね。 ケルテスさんに部下を守ってもらうというか。

  5. エル

    エル、です。…シューター、です。 どうぞ、よろしく。 まとめ、ありがとう、ございます。 わたし、は、吸血屍、かな、と、思い、ます。 他のところ、でも、いい、です、けど。 集落、に、入る前、は、偵察とか、し、ます、か? リル(ペットの栗鼠)の分身、に、行ってきて、もらおう、かな、とか…。

  6. ナタリア・フィッツジェラルド

    ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 遅くなって済まない。 術師の命令を受け付けないとはいえ、術師を襲わないようにという命令系統を刻み込めただけでも技術者の執念を感じさせるな…… 体術に覚えありとはいえ、術師が積極的に前に出て囮を務めるなど正気の沙汰ではないだろうに。 それはそれとして、ヒーラーが3人も居るとなればそれぞれの班に1人ずつ配置可能という事になるな。 という訳で私は毒蜘蛛対応班のサポートに出る。 アクションスキルは主に解呪2と輝刃4とヒール2、そしてメテオライトといったところか。

  7. ナタリア・フィッツジェラルド

    あと言い忘れたが、ロゼットは纏めに感謝を。

  8. コルネリウス・アーラ

    そうですね、エルさんのペットさんに偵察をして頂けると助かりそうです。 あ、部下の方は一般人でしたね。でしたらケルテスさんはディレインさんの仰るように動いて頂くほうが安心でしょうか。 では私はザーティの対応に回りますね 最初の配置についてまとめをしますね ■ザーティ ロゼット コルネリウス ■毒蜘蛛 アルベルト ナタリア ■吸血屍 エル ディレイン

  9. ハヤト=ガラン=ヴォルファング

    おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! ロゼットは纏めサンキューな! 俺もザーティの野郎はとっ捕まえられんなら捕縛って線で賛成だぜ!! んじゃ、俺はとっとと数の多い吸血屍を蹴散らしてからザーティ捕縛に加勢する流れで動くことにすんな! ■ザーティ ロゼット コルネリウス ■毒蜘蛛 アルベルト ナタリア ■吸血屍 エル ディレイン ハヤト

  10. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ロゼットさんは情報の纏めをありがとうございます。 今更ながら感謝申し上げます。

  11. ロゼット

    後はルアンナ次第かな?キャスターの彼女に吸血屍戦へ 参加してもらえると、布陣としては理想的ではあるのだけど。 エルのペットでの偵察は助かりそう。敵の存在を発見できれば、 集落に入ってから不意打ちされるリスクを減らせそうだわ。 >コルネリウス 組むとなったら、よろしくね。PL情報の体術以外は不明だけど、 体術=素手格闘?だとしたら、防御面は回避が主体かしらね。 命中強化を用意しておこうかしら。

  12. エル

    偵察、は、集落内、の、大体の配置(道路とか主な建物とか)、と。 死霊術師とアンデッド、が、消えた、中央辺り、って、いう感じ、で、いい、です、か? 他に、あれば…。

  13. ルアンナ・ミュラー

    顔出しが遅れてしまいました! キャスターのルアンナです。 私も吸血屍対応で問題ないです、さっさと殲滅してザーティ確保に向かいましょう! ■ザーティ ロゼット コルネリウス ■毒蜘蛛 アルベルト ナタリア ■吸血屍 エル ディレイン ハヤト ルアンナ

  14. コルネリウス・アーラ

    >ロゼットさん はい、よろしくお願いします。 そうですね、命中は私も意識しておきたいなと思っていますので、それを踏まえて攻撃スキルを選んでおきますね。 防御面は体術も得意といっても死霊術師ですし、魔防もある程度上げておくのと、カバリングを用意しておきます。

  15. ロゼット

    >エル 集落内の様子、でまとめても良いと思うわ。 集落に住人の姿がないこと(既に殺されていること)、 あと吸血屍が徘徊していることが事前に分かれば理想ね。 住人が居ないなら私たちも避難や救出は考えずに、最初から 吸血屍の撃破に専念できる、PL知識を前提に行動できるから。

  16. エル

    >集落内の様子でまとめる では、そう、して、み、ます。 ロゼットさん、ありがとう、ございます。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0