【恨源】その手紙は誰のもとに誘うのか?
広大野人
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シナリオID:2859
オープニング
豪華な調度品に囲まれた一室で男と青年が言い争っていた。
「縁談を勝手に取り付けたり無かったことにしたり、いい加減にして下さい。僕は父上の道具ではありません!」
「分かっていないのはお前の方だ。この国において、庶民が貴族になれるという機会はほぼないのだ。折角のチャンスなんだぞ!」
「僕は貴族の地位に興味はありません。領主様を支える事こそ、我らが成すべき事ではありませぬか!」
それは幾度も繰り返された口論。
この街の領主であるユーゴ=ダルダニエには跡継ぎがいない。いや、子は生まれたのだがいずれも早く亡くなったのだ。
「だから言っているではないか。領主様の血族とお前が結婚する事で、ダルダニエ領は安泰という事を」
「それなら、わざわざ結婚する必要はありません。新たな領主様を迎えるだけでよいではないですか」
「家臣団との繋がりをより堅固にする為だ」
領主の血族が養子としてこの街にやって来たとして治政がうまくいかなかった場合、養子を出した方の家名が傷つく事になる。安定した治政が続くように優秀な家臣団をそのまま引き継ぎたいと考えるのは当然の事。
理屈は分かる。しかし、それはあくまでも机上の話だ。
「僕には心に決めた人がいます。そこは絶対に譲れません」
青年には愛する人がいた。
将来を誓い合い、苦難を共にし、今も支え合って過ごしている。それを父親は絶対に認めないのだ。
「どこの骨とも知らない小娘なぞ、愛人として囲っておけばいいではないか」
「理論が破綻していますよ、父上。家臣団との繋がりを堅固にするものであれば、婿入りした僕が愛人を作っておく事など、出来るはずがない」
「これは全てダルダニエ家を守る事だ!」
父と呼ばれている男は開き直った態度を取る。
もはや、話は平行線のままだ。
「やはり、領主様に相談致しましょう。トレゾルが見つかったのであれば、尚更です」
「その必要はない。また領主様を苦しめるだけだ! いいな、領主様には絶対、トレゾルの話をするなよ!」
そう言い捨てて、男は部屋から乱暴に出て行くのであった。
●???
男はそれから雑務を手早く済ませると、別の建物へと移動する。
広大な中庭の一角に設けられた『取引所』の地下には、防音を施された秘密の部屋があるのだ。
「……折角、情報をリークしたのに、奴等は例の王国騎士を討ち漏らしたそうだな」
「冒険者共の動きが思った以上に良くて……これは脅威になります」
仰々しい態度で応える部下に男は唸る。
腕利きの補充が必要だろう。今後の計画にも必要だ。
「まぁ、王国騎士が死ななかったのであれば、それはそれで良い。エナハルト・ティルムには、トレゾルを貰ってもらう役目があるからな」
「では……いよいよですか」
「タイミングが肝心だ。早すぎても遅すぎても機会を逃してしまう」
養子となる領主の血族を調整するのに時間が掛かった。
何人か候補がいたものの、領主が渋ったのだ。年齢や容姿、学歴から能力まで……最初は授恵者でなければならないとか無理難題を言っていたが、少しずつ条件を崩させた……全ては計画に至る為に。
順調だったはずだ。なにもかも……それが乱れたのは、王国騎士エナハルトが来訪してからだ。領主は優秀な王国騎士であるエナハルトが気に入ってしまったのだ。
その為、養子への過剰な期待が再び高まってしまった。更にはトレゾルが見つかった事も大きい。まだ領主の耳には入っていないだろうが、噂は届いているかもしれない。自ら積極的に会いに行こうとしないのは、幸いだったが。
捨て置きながら今更手の平を返す訳には……という心情かもしれないが。
「相応しい舞台も用意しなければな。疑わしいと思われないように計画を進めなければならん」
「事故か病気か……でございますか?」
「その通りだ。兎も角、あの王国騎士がこの地を去ってからでないと、な」
記録はもちろん、そこに至るまでの過程を違和感なく、手順に沿って粛々と行えば、後日、調査されても悪事が明るみになる事はない。
授恵者の中には残留思念を読み取れる者もいるというが、最初から読み取れる事を前提に計画を組めば恐れる事もないのだから。
●
王国騎士エナハルトの元にお礼の品として花束が届いた。
組織の残党に襲われた酒場の看板娘から……というのは表向き。花束には匿名の手紙が添えられていた。
「……『貴殿がこの街を去る前に、全てをお伝えしたいと思います。どうか、私共のところへおいでください。揺れ歪む樹木が指す隠家にてお待ちしております』……罠では無いようですね」
受付男子イシアがその手紙を読み上げていた。
字の書き方から、以前、騎士団本部に届いた匿名の手紙と同一人物だと思われるが確証はない。
エナハルトは返された手紙を受け取りながら応える。
「成果を出してしまった以上、街に留まれる理由がなくなってしまった。一応、領主には冒険者から追調査を要する旨があった事を伝えたが……あまり望めないかもしれない。その事を踏まえても、この手紙を出してきた人物は、僕の動向について、よく知る立場にある者……という事だろう」
「……本当に組織の残党がこの街に居たとは思えません。もし、それを把握しているのなら、匿名での通報に意味はありませんから」
イシアは首を傾けさせてそんな台詞を口にした。
わざわざ回りくどい方法を取らざる得なかった理由があるのかもしれない。それはエナハルトも同様に考えた。
「組織とは関係のない何らかの事件が起こっていて、それを組織のせいにした……この人物が全てを伝えたいというのなら、会いに行かねばならないはずだ」
「分かりました。なら、冒険者達を手配致しましょう」
「いまだに事件の全容は掴めていない……出来れば、この人物と話す上で、この街で起こっている事に関して、情報を整理し、ある程度、推察しておきたい所だ。それと、肝心な事だが、この人物が待つ場所を特定しないといけない」
手紙からのヒントを元に、街中で聞き取りして隠家とやらを探す必要があるだろう。
フィールドワークも王国騎士としての務めではあるだろうが、領主館での書類調査がメインだったので、街中の事は詳しくないし、協力者の当てもない。
街の事について調べていた冒険者の方が隠家を見つけやすいかもしれない。
事件の真相に辿り着く為には、なんとしてでも手紙を差し出して来た人物と接触しなければならないのだから。
解説
マスターより
リプレイ
街中での調査を続けていたシルヴィア・A・カペルは『青い星』亭の扉を開けた。
まだ開店間もなく客は誰も入っていなかったようで、入店したシルヴィアの姿を見て、明るい表情を浮かべたレサタが駆け寄ってくる。
「あの時はお世話になりました!」
「元気そうで良かったよ」
一般市民らしい服装をしていても、それで溶け込めるかは別なのか、それともレサタの記憶力が良いのか、シルヴィアだとすぐに分かったようだ。
「何か召し上がりますか? お礼したいですし」
「ありがとう。なら、何かおススメの茸料理はあるかい?」
「ありますよ! 絶品鳥の子茸尽くしです!」
ビシっと指差した先には多様な茸料理がメニュー板に描かれていた。
「なら、それを頼もうか」
「はいっ!」
快活な様子を見るに、襲撃事件で大きなショックは受けていないようだ。
「そうだ、レタサさん。この街で『揺れ歪む樹木』という言葉は何かを揶揄するものだったりするかい?」
「『揺れ歪む樹木』……ですか? いえ、聞いた事はありません」
首を傾げる様子から、彼女が嘘を言っている訳ではないとすぐに分かった。
隠家探しは骨が折れるかもしれないと思いつつ、シルヴィアは看板娘が勧めてきた料理が出るのを静かに待つのであった。
●
調査に費やす事が出来る時間は限られている。
ナハティガル=ラーはだんだんと高い位置に上っていく太陽の位置を確認し、変装を施した上でスラム街へと繰り出した。
(領主の子供達の早逝に始まる跡取り問題と、領内で発生している一連の出来事が繋がっているのだとしたら……)
陰謀の黒幕は治政に関われる者であり、匿名の手紙の差出人は、その陰謀を阻止したい人物だと考えられた。
(問題は……領主の子供達や領民の連続死を証明する『物証』だ)
黒幕は当然、証拠隠滅や記録の改竄を行っているはず。
誰にも怪しまれず病気や体調不良で人を殺めるには、遅効性の毒物の類になるだろうか。
(毒物を怪しまれずに用いるのであれば、例えば、個別での炊き出しや配給時に食料として密かにばら撒いている可能性は大いにある)
そのように推測した上での物証探しだ。
冒険者の仲間も同じように考えている者が居る。その推理を証明する為には、現物を手に入れる必要があった。
「…………」
ふと、建物の隅で蹲っている浮浪者を見かけた。炊き出しで出されたスープを持ったまま呆然としているのだ。他のスラム住民らしき者達は同じ食事を掻きこむように食べているのに……何故かと注意が向いた。
「食べないのか?」
声を掛けると浮浪者はびっくりした表情を向ける。
服装からして流れ着いた難民か旅人のように見えた。
「……ここの連中は、こんなものを喜んで食べるのか!?」
「こんなもの? ……そこ通りでも売っているこの街の特産茸だぞ」
湖畔周囲に広がる森の中でよく採れる茸らしく、風味と歯ごたえがあって、ここ住民なら誰でも食べた事がある茸らしい。
「いやいや、これはどう見てもスゥバンキュラだって」
「スゥバンキュラ?」
「あぁ、俺の故郷だと寄生虫を吐いたり下痢で出す為に、少量食べる事はあるんだが……こんな量喰ったら、ピーピーにゲーゲーだよ」
両肩を竦めた浮浪者の言葉にナハティガルは確認する。
「スゥバンキュラで間違いないんだな?」
「あぁ、そうさ。俺の故郷はキリリウヌっていう、国境近くの街なんだが、そこの周辺で獲れたんだ」
ナハティガルは決定的な情報を得る事が出来たと確信した。
本当にスゥバンキュラという毒茸が、この街の特産茸と類似するものなのかは調べる必要があるが、それは王国騎士に託す方が早いだろう。名前と場所さえわかれば、特定は容易いだろうから。
●
エリザ・A・ミシャールはレサタと一仕事を終えて更衣室で着替えていた。
(さ……てと、どうしたものかねぇ?)
エリザは思案していた。この街で起こっている出来事に、どこまで深入りすべきか……部外者が立ち入って良いのかと考えているのだ。
王国騎士エナハルト・ティルムからの依頼ではあるので、エリザに出来る事はしなければならない。では……何をすべきか、だ。
「恥ずかしい話だが、やはり少し苦しくてね……」
だから、エリザはレサタにそう切り出した。
確実に夜逃げ屋へと至るには、この『縁』を使う時だと思ったからだ。
「しょうがないよね。この街の徴税額って多いから。その分、暮らしに不自由はないんだけど……」
レサタの台詞の通り、納めなければならない税は、同規模の街と比べても明らかに高い。
ただ、異常という程でもなく、彼女の言葉は続く。
「……払えない人はとても酷い目に遭う。それが過ちだと彼は教えてくれた。だから、多くの人が彼を応援してるの。私もそうだし……できれば、エリザさんも」
「案内してくれるの? その彼に」
「えぇ……でも、すぐには難しいかな。私も全てを知っている訳じゃないから……もし、急ぎで探すのであれば湖畔かも。私が初めて彼と会ったのも、そこだったから」
申し訳なさそうなレサタにエリザは静かに頷いた。
湖畔という情報が得られただけでも意味はあるのだから。
●
「……なんか色々繋がっていくと、分からない事が多いなりに思うのよね」
街中で情報収集に勤しんでいたルベア・ベルニがキオルティスと合流してそう言った。
キオルティスは他の冒険者との集合場所である城門の方へ向かいながら応える。
「何か思い当たる節があるのかい?」
「ナハティガルさんが酒場で遭遇した人、スラム街で私が見かけた青年、エリザさんが接触しているレサタさんの言葉……私は隠家で待っている人物がただの夜逃げ屋だけじゃなくて、筆頭執事の息子さんじゃないのかなって」
だから、隠家も筆頭執事の息子に関連する所にあるのではないか……そう目星を付けたのだが、結局、有力な情報は得られなかった。
少し不安そうな表情を浮かべたルベアにキオルティスが口元を柔らかく緩める。
「邪推も甚だしいけれど……夜逃げ屋は本当に夜逃げをさせているだけなのかな。本当の目的を悟られない為だったりしないだろうか」
「本当の目的……貴族の内側で揉めてる……じゃないのなら、何らかの陰謀が張り巡らされてるって事?」
「それを確かめる為にも、隠家は見つけないといけないか」
訊く事は沢山あるようだ。
二人は城門でシルヴィアやエリザ、エナハルトの三人と落ち合い、そのまま近くにあるナキーノ湖に向かった。エリザが得た情報に、キオルティスは確信を得たようで、しっかりとした足取りで湖畔の縁を進む。
「あぁ……なるほど『揺れ歪む樹木』ですか。流石ですね」
何かに気が付いたエナハルトがポンっと手を叩いた。
その台詞と湖に映る景色にシルヴィアとエリザも「なるほど」と呟く。仲間達の反応に、先頭を進むキオルティスが振り返った。
「『揺れ歪む樹木』は『水に映る樹木』の事を言っているのかなって。街の近くには湖はここしかないし……後は『指す』方向だから……」
キオルティスが指差した場所。
広葉樹に囲まれた中で、傾いて湖畔に伸びている針葉樹が1本あった。
三人の視線が水面に映る針葉樹の先へと向かう。薄暗い深い森の中に建物らしきものが辛うじて見えたからだ。
「恐らく、あれが隠家。もっとも、罠の可能性も否定できない。エナハルトさんの指示に任せるけど?」
シーフとしての技能を活かし、隠家とその周囲の状況を確かめる事も出来るとキオルティスは提案しているのだ。それに対し、王国騎士は首を横に振った。
「及びませんよ。王国騎士の権限はまだ健在ですから、必要なら一気に制圧してしまいましょう」
「まぁ、これだけ授恵者がいればね」
頬の辺りに触れながらルベアがそう告げるのであった。
●
冒険者達の予測通り、隠家の中で待っていたのは一人の青年、筆頭執事の息子であるプラザ・ゼィパムだった。
「ご足労いただき、ありがとうございます」
室内に他の者の気配が無い事を確認したエリザが開口一番、告げる。
「エナハルトに匿名の手紙をくれたのはアンタらだろ?」
「はい。レサタから聞いていますよ、エリザさん。もっとも、貴女が冒険者で街の事を調べている事に関しては、レサタは知らないでしょうけど」
「泳がされていたって事か。まぁ、お互い様だな」
プラザは微笑を浮かべると頷いた。
腹の探り合いは望んでいないようで次々と何かの資料をテーブルに並べだす。
「どこから話しましょうか……いや、先に、疑問を訊かれた方が早そうですね」
「それなら、俺から尋ねようか。夜逃げさせた者の行方はどうなっているのかい?」
反応を見逃すまいとしたキオルティスの質問に青年は即答した。
「身寄りがある所や保護がある所です。次の街で揉め事を起こし、夜逃げ屋の存在が露呈すると困りますから」
「人身売買はしていないと?」
「魔獣の餌にするような人買いもいると聞いた事はありますが、私達はそんな事はしません」
その言い様から嘘をついていないようだ。
次にルベアがスラム街で手に入れた『茸』を見せる。
「これがスラムで出回ってる、って聞いたんだけど、何か知っているのよね?」
「この街の特産茸は多く流通しています……ですが、貴女の持っている茸は、似ている別の茸かもしれません」
「別の?」
マジマジと茸を見つめるルベア。エリザも覗き込んでみたが、一見、出回っている茸との違いが分からない。
その様子を眺めながらシルヴィアが言った。
「特産茸とよく似た別の毒茸。これが陰謀を明らかにする鍵だよね。そして、陰謀の黒幕はプラザの父であるオーキサ。領主は黙認か、あるいは知らないか……でも、話を聞くと、知らないようだね。知っていたら、子供の死因に勘付くだろうから」
「ご推察の通りです。特産茸とよく似た毒茸の正確な情報は父しか知り得ません。私達は夜逃げに関わる中で偶然知っただけで……その茸の名前も、どこで採れるのかも……」
悔しそうに手を握るプラザ。
ここまでの流れにキオルティスが息をゆっくり吐き出した。もっと裏があるかと思ったが、そこまで心配する事でもなかったからだ。
「つまり、キミ達では物証を得られなかった。だから、王国騎士をキミは匿名の手紙で呼んだって事なんだね。不審死の調査から毒茸の正体が判明すれば、過去の跡取り問題にそのまま繋がるから」
そして、物証については他の冒険者が追っている。きっと、何らかの成果を得られるはずだ。
この街で起こっていた出来事が繋がっていく事を感じつつ、ルベアは呟くように言葉を紡いだ。
「跡取り問題というのは、きっと領地の乗っ取りという事だよね」
チラリと向けられた視線にシルヴィアは深く頷く。
「宴に参加した人々はプラザ婿入り案を歓迎していた。反対者が一人もいないのは根回しが済んでいるという事。養子貰った後に領主が事故や病気で亡くなれば……」
「婿入りが決定しているプラザとその養子が領地を引き継ぐ事になるという事か。貴族の話は詳しくないが違和感はなさそうだな」
シルヴィアの後にエリザがそう話を続けた。
そして、全員の視線が改めてプラザに集まる。ここから、青年が本当に伝えたい事なのだろうから。
「父は領主様を暗殺するタイミングを図っています。愚かな父を止める為に、皆様には協力をお願いしたいのです」
「その言葉の意味を、わかって言っているのだな?」
厳しい口調のエリザの台詞に、青年はしっかりとした力強い返事をして応える。
「領主様に見出されて、今の立場に私達は居ます。大恩ある領主様を裏切る事が人として、誤っていると信じています。そして、父が悪事に手を染める事を絶対に望まない人がいる事も……」
青年に覚悟は十分にあるようだ。
黙ってやり取りを聞いていたエナハルトが思案しながら懸念を発する。
「筆頭執事が領主の領地の乗っ取りを画策していると、ミアの立ち位置が微妙か……」
「確かにミアが鬼札だけれど。後は、領主がどう動くかだね」
シルヴィアの台詞に真っ先に応えたのはルベアだった。
誰かが背を押さなければならないのなら、それ自らの役目だと思うが故に。
「私個人の希望でしかないけど……ミアさんと、実の父親である領主を親子として対面させてあげたい」
互いの立場があったとしても、この『縁』に、きっと意味があるから。
「だとしたら、領主の暗殺は絶対に阻止しないとだね」
纏めるように告げたキオルティスに面々は力強く頷くのであった。
●
「私は一介の冒険者……ですが、私が何者であるかは、あなたにとって重要なはずです」
ミア=リゼルは徴税吏の所へと訪れ、領主の娘である事を告げた。ミアの容姿にも心当たりが十分あったのだろう。徴税吏は平服して洗いざらい知っている事を語り出す。
「……働ける能力が無い者は排除するよう領主様とオーキサ様から言付けされておりまして……しかし、プラザ様は街の為に貢献してきた者も居るはずなのでそれでは忍びないと……裏マニュアルの件はお二人共、知らぬ所でございます」
「あなたは領主の指示よりもプラザさんを協力していると?」
意地悪だが、少し高圧的に訊くミア。
だが、ここは大事な所だ。徴税吏は領主や執事団との繋がりが強い。どっちの味方なのか、確認が必要だった。
「……申し訳ございません。し、しかし、尋常ではないのです! もはや……人の所業とは思えませぬ!」
堪えていた心の内を吐き出すように徴税吏は叫ぶと、未納税者の強制労働について説明した。
領内で筆頭執事が管理している鉱山に拉致されると動けなくなるまで働かされた後、領主館にある地下室で記録と整合性が取れるように『処理』され、埋葬できない場合は特別な売買ルートが存在するというのだ。
「領主は……父は、黙認しているのですか?」
「幼くして亡くなったミア様の兄や姉を失ってから、領主様はより政に専念するようになりまして。多忙故、領内の問題は執事団に任されており、記録を確認されるだけです」
「私の兄姉達の死とプラザさんの婿入りの話……無関係ではありませんよね?」
その質問に徴税吏は下げた頭を床につけたまま答える。
「詳しくは存じませんが、実はオーキサ様が領主様を酷く恨んでいると……プラザ様から聞いた事があります。お子様達の死も、婿入りの話も……きっとその延長線上かと……」
「……分かりました。話してくださって、ありがとうございます」
ミアは徴税吏を許すような優しい口調で告げると軽く頭を下げてから、踵を返した。
力強く握った拳が震えている……『処分』の話や、顔も知らない兄や姉の話を聞かされた衝撃は思ったよりも大きかったかもしれない。
(詳らかにしなければ……私は、理想を追ったせんせいの弟子だったのですから……)
領主館を覆いかぶさるような真っ黒な雷雲を見つめながらミアはそう決心するのであった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2023年04月04日 14時29分26秒 公開
相談掲示板
ご挨拶が遅れて申し訳ありません…!ヒーラー、ミア=リゼルです。 引き続き、皆さんにご助力いただけたらと存じます。よろしくお願いします!
早速になりますが、情報収集をするのか、隠屋を探すのか… 判定はどちらか一方となるそうなので、そのバランスは把握しておきたいな…と。 優先度としては次回の要素としても隠屋の捜索がまず外せない、ということでひとつ。 私も探索に回ろうかな…とは思うのですが、これまでの回で足がかりを入手していないので、がんばって推理も考えています。推理については間違っていても達成度には影響しないそうなのでMSのお言葉に甘えさせていただくとして。差し支えなければ皆さんのご予定を伺いたく…!
シルヴィアだ。今回はよろしくね。 揺れ歪む樹木が指す隠家とは随分と詩的な表現だ。 隠家を探すのは必須事項のようだし、私も探索判定と推理をしようと思う。推理は苦手だけれど頑張るよ。
エリザだ。今回もよろしく。 ちょっと仮説を置いて、すり合わせをした方がよさそうかな? まだ考えがまとまっていないから、まとまり次第で投下するよ。 予定では……20日ぐらいに。
シーフのナハティガル=ラーだ。 久方振りの参加となるが宜しく頼む。 現時点では隠家の探索を行う予定だ。 ……しかし、『揺れ歪む樹木が指す隠家』か。如何にも意味ありげではあるな。
遅くなったわ。 シーフのルベアよ、宜しく。 私も隠家の探索…かな。 推測内容はぼんやり思ってることはあるけど、今晩に改めて。
エリザさんも擦り合わせが必要って言ってたけど…。 各々の仮説は共有しておいた方が、何となくプレイングも書きやすいかなって思った。 同調するもよし、違う方向から考えてみるもよし、で。 というわけで、私が今のところ考えてることを。 まず、待っているのはプラザ・ゼィパムじゃないかな、と思ってる。夜逃げ屋の正体もね。 報告書を頭から見直したんだけど、最初の調査(第1話)の冒頭で、歓楽街の酒場に情報収集にきたナハティガルさんに対し何の前情報もなく冒険者かどうか尋ねてるのよね…。 筆頭執事の息子なら『身なりがいい』匿名の手紙の主、というのにも一致してるし。 次の調査(第2話)では、私はスラムで『身なりがいい』青年が衛兵と一緒に居て「ゼィパム様」と呼ばれてるのを見かけ、エリザさんはプラザの婚約者であるレサタから「夜逃げ屋の人のことはよく知っている」って言われてる。 その辺りのことを考えると、プラザが手掛けた成果の一つであるスラム街の縮小ってつまり…って思う。 他にもここで触れてない街の人もいるし、違う可能性も全然あるんだけど…。 …待っている人物は兎も角、隠家は今のところまだちょっとぼんやり。 何となく『青い月』亭がそこか、じゃなかったら関係してるかな、と思うんだけど、確たるものはない感じ。
(す、すみません背後の風邪の治りが遅くて…今晩書き込みますね!取り急ぎご連絡を…)
仮説が纏まらない所ではあるのだけれど……。 私もルベアと同じく、待っている人物はプラザだと思う。利ではなく義で動いている人というのも彼とレタサだと信じたいね。徴税人と、おそらくバーキンズは二人の協力者かな。 揺れ歪む樹木が指す隠家については、街中で聞き込みをするしかなさそうか。『青い月』亭も気になっているけれど色々と調べてみたい。 話術を持って行って歓楽街の商会組合や街中で聞き込みしてみるよ。 もう一つの汎用スキルは、何らかの用途で使われている符牒の可能性を考えて交渉か演技にする予定。領主邸の宴に参加した人がいるかもしれないし、変装もしていくつもりだ。
お待たせしました! 隠家の方は…ちょっとまだ上手く紐解けてないんですけど… OPの情報について整理も兼ねて。 ・「トレゾル」とは? 【PL情報】おそらくミア=リゼルのこと。トレゾルとはフランス語で「宝物」の意味。領主がトレゾルの生存をすでに確認している可能性はあるが、オーキサやプラザはこれを秘匿している ・養子(プラザの婿入り先)への「調整」 【PL情報】養子となる領主の血族に施されているもの。細部まで領主の指示かは不明。主導はおそらくオーキサ。強制労働により消えていった者たちとの関連がまだ明らかになっていないが、関連していると思われる。 ・手紙の主 【PC情報】差出人不明(騎士団本部に直接届けにきた身なりの良い人物)『匿名』での情報提供。若そうな男性。 内容:とある領主の子供が4人、成人前後に亡くなった (→)
● PL情報からの推測 ・オーキサたちが計画を進めている場所には聞き耳を立てている存在がおり、その人物はことの全容を知る者として「隠家」で待っていると思われる。すでに挙がっているようにプラザの可能性が高い。 ● すでに明らかになっているPC情報から推測できること ・夜逃げ屋=プラザの可能性が高いこと オーキサさんは何か計画があるようです。少なくとも非人道的な手段で以てそれを成そうとしている…目的は、表向きは治世の安定としつつも、息子プラザさんを使っての領の乗っ取り…でしょうか…。 「調整」について領主が把握しているかどうかは不明ですが、オーキサさんの目的を考えれば、領主の子供達が成人前後で亡くなっているというのは偶然ではなくおそらく陰謀で、プラザさんが「義によって」それをリークした…と繋げることができるかと。 領主は何も知らないのか…知っていて黙認しているのか。 なんとなく見えてきましたけど、これをどうPC情報から吸い上げていくかが課題ですね…
やあ、これまでの話を読み返して図表に落とし込んだりいろいろとしていたらすっかり遅くなってしまった。そしてアタシが考えたことは下にほとんど整理されてしまっているね。 これまでに書いてもらった内容を受けて、まだ説明が付いていない事項としては以下ぐらいかな? ・徴税吏と夜逃げ屋が繋がっていることの理由? ・トゥアン(#1 エミリアさんパートに登場、酒場の女主人)に個別の役割はあるか? 仮定が全て正しい前提で話を進めた場合、プラザの最終的な目的はオーキサの企みを阻止し、証拠を確保した上で筆頭執事としての立場から排斥することになるのだろうか。 オーキサ側も複数人、かなりの陣容であると予想できるね。その為にもプラザもなかなか手が出せないんだろう。アタシらが聞き込みをするにしても、オーキサ側の陣営に引っかからないように話を聞く相手は選ばないといけないね。侍衛のヘディンなんかは敵方な気がする。 レサタからのお礼の花束に匿名の手紙が付けられていたということは、レサタとしても手紙の主との関係を隠すつもりはないということじゃないか? それであれば、最終的にはレサタに直接聞いてしまうのが良いと思う。 #3で直接レサタを救助したシルヴィアと、トレゾルであるところのミアが揃っていればレサタを信用させるには十分じゃないか……と提案させてもらおうかな。もちろん採用するしないは二人の自由だ。 アタシは素性を隠していたから、ちょっと信用を取るには弱いんだよね……
ああ、あとはあれか。マスターコメントからの拾いだけれど 『陰謀の物証』 『陰謀が発生した原因』 この2つも目星をつけとかなきゃならないかね……
ありがとうございます。そうですね…誰に接触するか、すなわち隠家の場所はどこか聞く相手についても考えなくてはいけなかったので、レサタさんでもいいかなと思います…ただ人手が足りないので、私は徴税吏さんに再び接触したいなとも。 徴税吏さんとは接触時、裏マニュアルの存在を教えていただきましたが、その際少し驚かれて…おそらくこの時に私の存在は領主に伝わっているはず。身分をあかせば、このあたりのつながりについてお話を聞けるかもしれません。 もし徴税吏さんが、レサタさんたち夜逃げ屋に協力していた徴税吏さんと同一人物で、害意ある人でないのなら隠家の場所についても聞けるかな…このあたりは慎重にアプローチしたいですね。 その場合レサタさんとの接触をシルヴィア先輩にお任せする形になってしまうのですが… 陰謀の物証と原因…うーん ちょっとまた夜に書き込みますね!
取り急ぎ。 レタサに直接聞く案、良いね。それなら予定を変更して、私は街中の人に聞き込みをしつつ、最後に『青い星』亭に行ってレタサに直接聞いてみよう。 徴税吏はミアの顔立ちを見て領主の血縁だと気づいていると思うし、ミアが再度接触した時にどういうアプローチをしてくるのかは気になっている。ミアが徴税吏に会いに行くのも良いなと思っているよ。お互い頑張ろうね。 『陰謀の物証』については……ルベアが見つけた茸が怪しいかな。スラム街に流通しているようだったし。
(寝落ちちゃってました…!) ああ、あの茸…確かに謎ですね。この時間ですし、取り扱うかはルベアさんにお任せしますが…! プレイング、これでいいものかと悩みつつ…皆さん、よろしくお願いしますっ