【再起】獣が巣くう亡都
馬車猪
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シナリオID:2851
オープニング
今では魔獣同士の苛烈な生存競争の舞台となり、石畳も頑丈な建物も壊れて草が生い茂っている。
この廃墟の主は魔獣ではない。
小型のクリーパーに匹敵する力を持つ魔獣も普段は廃屋に隠れ潜んでいる。そこまでしても運が悪ければ蛇のように動く蔓草に巻き付かれて2度と戻れぬ闇の中に消える。
かつての城塞都市で、植物のクリーパーが力を蓄えていた。
●
その群れの狩りは理知的だ。
獣を見つけた後は執念深く追跡を続け、休息を妨害し弱い個体を狙う。正面から戦うことを徹底に避け反撃される前に距離をとる。
人間じみた残酷な狩りを行う狼達は、実はそれほど高度な思考はしていない。
(反撃の兆候あり。後ろへ思いっきり走って)
(わん!)
作戦立案は絆で繋がった主に丸投げだ。
ペットは群れを構成する1頭1頭に無理をさせないことに集中し、獲物の消耗具合を冷静に観察する。
わん!
リンク中は目も鼻も主並に低下するので部下達の方が偵察の役に立つ。
少しだけ悔しさを感じながら、ペットは後退する群れの最後尾で敵を警戒する。
恐怖と怒りが混じり合った轟音が響く。
全高2メートル近い牛魔獣が、大柄とはいえ普通の狼でしかない群れを追って来る。
(予想進路を伝える。反撃するなら一撃離脱よ)
(わん!)
無数の狩りを成功させた主に対する信頼は絶大だ。
全力移動が終わった直後の牛に駆け寄り右前脚をがぶり。
血を味わう前に口を開けて素早く跳び退き尻を見せて群れに戻る。
上機嫌に揺れる尻尾に牛の怒りが燃え上がるが、リンク済狼は高速すぎてただの牛では追いつけない。
牛は怒りと屈辱に耐える。
人間が消えてからは牛の天下だったのに、いつの間にか鉄の棒を持った人間が戻ってきて、そこから逃げても妙に身ぎれいな狼に追い回されて食事もまともにできない。
牛は群れに合流する。
最強の個体が脚を痛め、群れ全体も餓えた状態では別の土地に移住することも難しい。
餌は豊かでも不穏な気配しかない岩場に群れ全員で向かう。
狼達の瞳が、何の感情も浮かべず牛を観察していた。
●
目標が廃墟に消えて数分後、待ちに待った連絡が届いた。
(ご苦労様。機動力を削いだから戦果は十分よ。今日は久しぶりに鶏肉にしましょ)
(わんわん!!)
わんわん!!
ペットの様子から察した群れの狼達もはしゃぎ始める。
王国のリーラント伯爵領で育った狼達は今日も元気だ。
仕事をすれば清潔な水と新鮮な肉と暖かい寝床が手に入るのだから元気にならない訳がない。
整然と列を作って行進する狼達は、種としては狼でも行動は飼い慣らされた犬だった。
2人のシューターが荒野で食事の準備をしている。
直径2メートルサイズの荷物から目的のものだけを抜き出すのは時間との勝負だ。
異空間の外では、生肉の腐敗は進んでしまうし人間用の料理は冷めてしまう。
「そっちは順調ー?」
「廃墟に追い込むのはね。これからどう仕留めるかを考えると頭が痛くなるわ」
「だよねー。お嬢様、じゃなくて代官様や冒険者みたいに私達強くないから追い払うのが精一杯だしー」
食事の準備が整ったときには狼が帰還している。
半数は周囲を警戒し、残りは行儀良く並んで許可を待つ。
尻尾は高く上げられ高速で振られ、ごはん! ごはん! とはしゃいでいるのが誰の目にもよく分かる。
「食べていいよー」
「順番にね」
それぞれの皿に用意された生肉に狼が食らいつく。
どんな病気や虫が潜んでいるか分からない野生の肉とは違い、専業畜産農家が育てた肉なのでとてもおいしい。
水に砂や土が混じっていないのも最高だ。
「負傷者、未帰還、共に0ー」
「こっちは1頭転んでかすり傷。包帯の残りが不安ね」
今日の狼の仕事はこれで終わりだが、人間は荷物を異空間に戻した後も仕事は終わらない。
地図を広げて共有した情報を書き込み明日以降の行動を考える。
「そろそろ次の段階ー?」
「そう、ね」
最初は多くいた害獣も魔獣も、今では大部分が巨大な廃墟に逃げ込んでいる。
元は城塞都市だが今は圧倒的な力で粉砕されていて、穴だらけの城壁がいつ崩壊するかも分からない。
「思い切って燃やすのはー?」
目を細めて北を見る。
1キロ以上離れているのに壊れた城壁が見えるほど、元城塞都市は大きい。
《あの日》とその直後に壮絶な戦闘が行われたようで不自然に大きな枯れ木がいくつか見える。
「お嬢様の旦那様の実家を燃やす気? 私は嫌よ。仮に旦那様が許しても後で揉めるのが目に見えてる」
この2人は代官が実家にいたときからの腹心だ。
最期まで付き合う覚悟があると同時に、よりよい待遇を受けたい気持ちも持っている。
城塞都市を修復するのも大変だが、修復が不可能になると撤去でもっと大変になってしまう。
「でも私達もそろそろ戻らないとだよー」
代官は広大な土地の復興を担当している。
つまり1つの土地に派遣できる戦力はほんの少し。狼の群れを率いるペットとその主は代官の奥の手。1箇所に長期間貼り付けるのは不可能だ。
「私達が離れたら魔獣がまた徘徊し始めるわ。なんとかしないと……えっ?」
違和感に気付く。
大好物の肉を食べるのを途中で止めた狼が、まるでここが戦場であるかのような態度で周囲を警戒し始める。
遠くから、生きながら潰される牛の悲鳴が聞こえた。
「丸一日かけて1頭の脚を削るのが精一杯だった魔獣を簡単に、か」
シューターが表情を歪める。
放置するには、危険過ぎる脅威であった。
●
「帝国での依頼です」
冒険者ギルド受付嬢が帝国の地図を広げる。
「崩壊した城塞都市にいる敵を可能な限り倒して下さい」
人間の生存者は皆無。
複数の魔獣の群れが逃げ込んでいるが、これは害獣でもあるので討伐推奨だ。
「冒険者が都市に入る前に友軍が都市を包囲します。魔獣が数頭都市の外に逃げても問題ないはずです」
敵を全滅させろという依頼ではない。
とにかく敵の数を減らしてくれという依頼だ。
「1つ、特に注意して頂きたいことがあります」
普段は陽気な受付嬢が、緊張で表情を強ばらせている。
「魔獣より強いなにかが都市に潜んでいます。それを見つけ、可能なら討伐を。難しい場合は情報を持ち帰って下さい」
依頼人はなにかがいるということしか分からなかった。
「情報が足りない状況で危険な場所で戦うことになる依頼です。十分に注意して下さい」
そう言って、受付嬢は深く頭を下げた。
解説
マスターより
リプレイ
城塞都市1つを8人でローラー作戦をするのは無理無茶無謀というのが常識だ。
都市は広く、たった8人では何ヶ月あるいは何年かかってもおかしくない。
もっともそれは常人にとっての常識で、冒険者には当てはまらない。
(掃討戦っつーよりは狩りだな。狩りはいまいち好きじゃねえが)
大型遊具を思わせる瓦礫の密集地帯を危なげなく進む。
膨大な体力は竜鉄製全身鎧を来たままでの移動を可能にし、しかし移動速度を半減させる。
(距離はよし)
仲間との連携を常に意識する。具体的にはお互い駆けつけられる距離の維持だ。
なお、移動中に装甲と石の間で生じる音はかなり大きく魔獣が忍び寄るのを見つけるのは困難だ。
「これだから好きじぇねえんだよ」
竜骨の戦槌で小さな石や砂利ごと周囲を粉砕する。
潰れた肉と体液の混合物が砂利を湿らせるがアーテミシアは目を向けることすらしない。
崩れ落ちた防壁を越える。
あの日から少しの間激烈な攻防が行われた空間に、特大の枯れ木と砕けた武具がかなりの数転がっている。
「獣が多い」
鼻と耳はアーテミシアに常時膨大な情報をもたらしている。
彼我の実力差に気づかれる前に衝撃刃を飛ばして群れの主力を倒す。
「この程度の連中じゃ肩慣らしにしかならねえな」
本命を見つけて仕留めるまで、集中力と維持する自負と能力がアーテミシアにはあった。
「啓示でも『特に強敵を逃がすと大きなガ=バを生む可能性があります』と出ています。牛型魔獣を容易く倒す相手です。油断せずに行きましょう」
独特のスタイルで語るフリーダ=ブロムヴィストに、完全に死角から4つ脚の肉食獣が襲いかかる。魔獣にしては小柄で、害獣としては脅威の大きさだ。
「これは参りました。透視は戦闘中使いにくいのですよね」
フリーダは倒れるどころか揺れすらしない。
少し不安定な体勢で耐えたので少し体力は使ったがそれだけだ。
「野生で生き延びてきただけだって巧いですね」
フリーダは複数の意味で頑丈だ。
普通の魔獣では装甲を貫くことはまず無理で、大型級に片足を突っ込んでいるクリーパーの奇襲でも短時間では倒せない。
「ええ、本当に」
距離1メートルの視界に一瞬、蔓のようなものが現れ消える。
フリーダは剣を持ったままの腕で合図を送り、とりあえず逃げ遅れた害獣に止めを刺すことにした。
セリオス・オーガストが移動に使う時間は活動全体の1割未満だ。
残りのうち9割は五感かスキルによる索敵である。
(極端な狩りになるな)
魔獣や害獣相手なら商店街や瓦礫に潜んでいても温度で看破可能だ。
調査のするには危険を冒す必要がある場所には孤高者の宗波を使い、地形も敵の位置を全て明らかにした上で攻撃か移動を選択できる。
(あの建物は前衛組が向かう。水路跡にいる魔獣は……別のを狙うか)
曲射で狙う必要がある標的も、同行する冒険者に情報を伝えるだけで済んでしまう。
セリオスは圧倒的な長距離攻撃力を振るう前に、それ以上に圧倒的な索敵能力で戦場を蹂躙していた。
ナタリア・フィッツジェラルドが発生させた大爆発が牛魔獣の群れを1つ殺し尽くす。 しかし都市を満たす不穏な気配は薄れもしない。
「何体いるんだ」
確実にいるはずの強敵を警戒し続けながら魔獣も警戒するのはかなりの負担だ。
「キミたちは完全に包囲されているー!」
アルマ・ヴァレンタインは別の群れに対し大真面目に降伏を勧告する。
魔獣もクリーパーもときどき知性や悪知恵を備えた個体がいるので揺さぶりとして有効でもあるのだ。
「んー?」
薄ら気配を感じるが頑張ってで探してもよく分からない。
凄い速度でセリオスの矢が飛んでいく度に断末魔の悲鳴か振動が生じているのは分かる。
「念のためー」
小柄で可憐なアルマが構えると十字架型鈍器が非常に豪華な玩具にも見える。
「とー!」
勿論性能は本物で使い手も本物だ。
敵味方識別機能がなければ石畳を大きく抉る威力を持つ光塊をまとい、アルマを中心に半円を描く。
「めいちゅー! ……びっくりしたかも」
手応えが3つもあったのでびっくりした。
片手で押して瓦礫の山を崩すと、手応えがなければ見逃していた大きな蛇が3つ、死体で転がっていた。
●
(都市が包囲下にあるなら油でも撒いて焼き払うのが手っ取り早いのだろうが)
ベルク・オスマットはまたも枯れ木を見つける。
(王国ならともかく帝国ではこの手段は取りたくないな)
某代官が聞けば厳重に抗議してきそうなことを考えながら、この元城塞都市粉で見つけた数十体目の魔獣をマークする。
(生き物である限り常に隠れるのは無理というもの)
驚くほどの軽装であるベルクは、クリーパーと比べればまともな生き物達には見つけられない。
ベルクなら1人でも倒せる相手であり、戦えば他の相手に気付かれる。
それも襲ってくれば時間の節約になるが、逃走されるとマーク済みでも時間が無駄になる。
(1度戻って知らせておくか)
ベルクの気配が消える。
羊は見つかったことも気付かず草を噛み砕いていた。
その数分後。
体格はヒューマン程度でも骨格と筋肉が凄まじい猿が激しい音を立てて着地する。
強力な個体にとって餌でしかない羊が怯えて竦んでも、猿は普段のように狩ろうとはしない。
「隠れんのが得意だろーが、俺の鼻から逃れられると思うなよ!」
草に覆われた街路をハヤト=ガラン=ヴォルファングが駆ける。
あの日の戦闘で開いた穴に猿が罠を仕掛けている。
「猿知恵だなぁ!」
臭気がハヤトに罠の存在を知らせる。
1度宗波を飛ばすだけで地形も何もかも調べ尽くし、さらに加速し逃げようとした猿へ追いついた。
鋭い呼気より鋭い拳が爪を伴い猿の腹を抉る。
ほぼ同時に忍刀による刺突が猿の目を狙い、猿の意識が目の防御に集中した丁度そのタイミングで二度目の拳が猿の脇腹にめり込む。
猿の口から、血混じりの唾液がだらりとこぼれた。
魔獣は命を諦めない。
即座に反撃しようとするが一撃離脱を得意とするハヤトは既に距離を取り終えている。
だから地面を蹴り近付き、ハヤトの連撃をなぞるように反撃する。
稚拙ではあっても腕力はハヤト以上。十分な脅威であり、しかしハヤトの読みと動きはそれ以上だ。
「悪いな。あんたで終わりじゃないんだ」
無理矢理指を広げて当てようとする猿の拳を見事に避け、今度は蹴り斬り殴りの3連撃。
格の差を悟った猿が逃げようとするが、移動速度の根本的な違いにより追いつかれて仕留められた。
●
日は傾き瓦礫と瓦礫の間を抜ける風も温度を下げる。
夕闇直前の視界の中で大きな牛が猛然と迫り、しかし黒い刃は特大の腕力と洗練された技で無造作に斬り捨てた。
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトの内心は怒りで煮えたぎっている。
その状況でも幼い頃からの教えと訓練と冒険者になってからの実戦経験から形作られた戦術眼は正常なまま機能する。
「時間だ」
この依頼の期間に制限はあるが1日で終える必要はない。
敵に有利な条件を与える必要はないので、アルベルトは奥歯を噛みしめ皆に都市外への撤退を勧める。
「……なんだ?」
違和感を覚えてアルベルトが目を細める。
熱で見る目に切り替えても、冷えていく魔獣の死骸くらいしか目立つものがない。
ナタリアの理性はアルベルトの判断に賛成し、なのに強い違和感に襲われる。
「……まさかな」
これまでも連携できる距離を維持してきたが、戦闘中同様の距離まで近付く。
その上で、アルベルトを襲うなら敵がいるだろう場所に缶から出した袋をぶつける。最初の効果はなかったが2つめも使う。
目立つ色の中で、蔓草が生き物のように動いていた。
「お前かっ!」
憤怒を顔に出すアルベルトだが足が動かない。
着色された蔓草が、じりじりと足の装甲を這い上がりながら締め付けてくる。
「支援いくよー!」
アルマを中心に発生したエーテル波動はアルベルトの防御能力も抵抗能力も大きく引き上げて抵抗可能な時間を増やす。
「クリーパーの情報収集で終わっても良かったが、此処で倒せば悲劇の拡大は終わる。武勇を轟かせる必要もあるしな」
ナタリアはちらりとアルベルトを見てからストーンブラストを使う。
蔓草と侵入者の共倒れを期待していた魔獣が痛めつけられわずかな生き残りが逃げていく。
「俺の故郷でよくもここまで好き勝手してくれたな! 容赦はしない!」
術による強化があるとはいえ元の能力が高くなければとっくに防具ごと足を破壊されている。
鎧の下で筋肉を盛り上がらせたアルベルトが、凶悪な締め付けに対抗しながら反撃を狙う。
蔓草は自らの体を大きく振っての打撃攻撃に切り替えるが殴り合いはアルベルトの得意分野だ。
黒く大きな盾で巧みに受け流し、ナタリアによる癒やしを受け入れ戦闘能力を維持する。
「草ごときがナメた事しやがって」
音を立ててアーテミシアが瓦礫と魔獣の死骸を蹴散らし現れる。
アルベルトに絡みつく蔓草ではなく、そこから地面に伸びる蔓草と地面の下にあるだろう蔓草目がけて速度と装備の重さを載せた一撃を直撃させる。
「……とはいえハンマーじゃちっと効きが悪いか?」
感触から判断すると全てあわせて1つの化け物だ。
ハヤトは自らの強みを、細く長大な怪物に強要する
「んじゃ、帝国復興のために一肌脱ぎますか!」
反撃しても当てられず、無視すれば回避重視から攻撃重視に切り替えてくるハヤトは非常にやり辛い相手だ。
「目印はつけた。足止めはそこそこでいい、攻撃に集中を!」
追いつき宗波を当てるのも終えたベルクが攻撃に加わる。
(見た目は細いがなんだこれは。大型級のクリーパーではないか)
一般的な基準では達人級のベルクの刺突と斬撃でも、命を削りきるのにどれだけかかるか分からない。
長距離攻撃としては非常識な域の大威力が空から降ってくる。
相手が細かろうが見た目の割に早かろうが、セリオスの圧倒的な技術は非常な高効率で蔓草を削る。
(予備の矢は十分だが)
逃げようとした敵に極端な軌道で矢を当てる。
残弾は1だが敵はそれを知らない。逃げるのが時間の無駄と判断ミスした敵は、その場に残っての交戦継続を選択する。
「これで〆だ」
ナタリアがウェイブ・オブ・インフィニティロアの効果時間が0になる寸前にウェイブ・オブ・インフィニティロアをかけ直す。
複数能力の向上が戦況にもたらす影響は相変わらず絶大だ。
(サルベーションオールも効いてる……よね?)
アルマはヒール以外でも頑張っているのだが、蔓草の締め付けが強力かつ巧妙すぎて少々混乱もしている。それでも、サルベーションオールの効果はとても頼もしい。
5メートル越えの蔓草が全身使った突撃を、フリーダが真正面から受け止める。
本来なら完全に防いでも衝突時の衝撃だけで大怪我しかねない一撃だが、対大物戦まで温存していたスキルがフリーダの体を守りきる。
反撃は白銀の刃よりもエーテルの方が先に届く。
クリーパーからの殺意はフリーダでも緊張するほど強力で、しかしフリーダは敵を仕留めるまで耐える自信があったる。
(ロアで抵抗を抜けたのは結構な幸運……忙しい時に啓示が来ても困るのですが)
政治と経済についての何からしいが解釈する暇はないし多分内容が高度すぎた。
アルベルトが咆哮する。
幼い頃を過ごし、父祖や兄達と一緒に守って後代に伝えるはずだった街に響く。
黒い刃が振るわれ夕日を反射するたびに、鋼よりも強靱なはずの蔓とそこから伸びる触手じみた攻撃手段が雑草かなにかのように切り飛ばされる。
「どれがまだ生きているクリーパーでしょうか」
フリーダは攻撃を引き受け防御に成功し続けてはいるのだが、直接攻撃してくる蔓草以外がどこまで生きているのか既に死んでいるのかよく分からない。
「特殊な能力を持っている可能性がある」
ナタリアは敵を過大評価も過小評価もしない。
手持ちを的確に運用し敵にとっての脅威であり続ける。
「粉々になるまで殴ればそれで終わりだろ」
アーテミシアは戦槌に光の刃をまとわせ蔓草ごと周囲を薙ぎ払う。
健在な蔓草は未だ多く、しかし蔓草の一部に見えていた残骸が消え蔓草は一回り小さくなる。
蔓草全てが動きを止めたときには、完全に夜になっていた。
●
「ちょっと離れるぜ」
アーテミシアは周囲への警戒を同行者に任せて体と防具の確認を行う。
「全くこんなんで体に痕が残っちゃ笑い話にもなりゃしねえや」
討伐と生存が最優先だったので命に直接関わらない傷の治療は後回しにしていた。
今は敵の気配はないので、装備を少し外して術を使い筋肉と肌を健康な状態に戻す。
「むむむー?」
火をおこして野営の準備をしていたアルマが、何度も雨を浴びたはずなのに湿りのない枯れ木に注目する。
「ただの残骸と思ったけど昔に戦った焚き付けになるクリーパーのに似てるし、色々使えるー?」
「アルベルト卿のご家族の戦果確認にも使うはずだ。ほどほどにな」
報告書のために記録を取り始めたナタリアが一言声をかけ、アルマも素直にうなずく。
「見事隠し通された」
ベルクは彼女にとって最高に近い礼をする。
戦力も態勢も整わない状態で可能な限り民を逃がし敵を削り時間を稼いだのは、感情に関係なく評価すべき行動だ。
「さて」
礼儀の時間は終わり。後は仕事の時間だ。
「お宝はど~れかな♪」
質も量もたっぷりな情報に触れるのは楽しく、しかし全く余裕がない状況で隠されたので多少(?)乱雑になっている。
「……多いの」
緊急事態なので隠し場所に放り込むのが精一杯だったようだ。
ベルクはマジカルポケットから大箱を取り出し、その中から書類運搬用の箱や封筒を取り出す。
(これは戸籍でこの暗号は帳簿……いや調査中の資源か。さすが侯爵家。扱う案件の規模が違う)
今でも価値はあるが平和になった後に重要度が跳ね上がる情報だ。
ベルクは統治に関する資料を優先して箱の中にできる限り詰め込んでいく。
その中には資源関連に匹敵する情報も複数あった。
(アルベルト卿に渡せるなら渡したいものもあるがここで直接渡す訳にもな)
単純に高額で換金できるものなら帝国上層に送りつければ良いがそういうものばかりでもない。
(依頼は依頼だがこのまだとあまりにもな。アルベルト卿やセニャ嬢のために復興地域にある程度便宜を図ってもらえるように交渉……できるといいんじゃが)
最後にちょっと弱音が出た。
この依頼は融通が利く種類の依頼だが限度はあるのだ。
作業は夜を徹して行われ、中身が詰まった大箱が異空間に収納されたときには空が薄ら明るくなっている。
シュタールシュヴェーアトの地の夜明けは遠く、しかし確実に近付いていた。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2023年03月18日 19時30分03秒 公開
参加者
相談掲示板
とりあえず揃ってンだな。 で、どうすンだコレ。ある程度分かれてローラー作戦でもするか?
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー げ、げーみんぐ蔦草…? 方針はまとまってでも手分けでもどちらでもー といっても単独だと専門さんじゃないから探査スキルないし看破とか 入らなくても内部のチェックができそうな透視あたりもっていこうかなと (生物には違いないから色は誤魔化せても輪郭クッキリで見つけやすくなったりー…?) 足元悪いからバランス感覚とか建物と防壁崩れ予測に建築・土木とか 他にもセットしたいのがあってチョイスは考えちゅう ひとまず見つけたときの目印付けに閃光塗料はもっていくね
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 戦3 盗2 射1 癒2 か。 魔がいないのがちょっと痛いが、バランスはいいな。 とりあえず我は斥候して中の確認かな?
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 俺の故郷で、好き勝手してくれてる様だなこの(ピー音)クリーパー共は・・・。 アーテミシアさんの言う様にローラー作戦で良いと思うぜ。 クリーパー共は見つけ次第にぶった斬ってやるぜ! 七色の蔓草対策にサーマルアイを用意するつもりだ。
・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず俺も斥候役だな 隠れてるようだから俺もサーマルアイや超聴覚、孤高者の宗波などでサーチをあっけながら発見次第駆除するつもりだ
遅くなった。ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 本職のキャスターは確かに居ないが、それでも私から魔法攻撃主体のアセンで出る事は可能だ。 メテオライトも魔弾も持っている。 透視は戦闘に入ったら使えないとの事だから、不意打ちに注意しなければならないな。 こちらからもサーマルアイと看破を持参しよう。
ンじゃオレは超嗅覚と超聴覚にしとくか。保護色化するなら視覚は微妙そうだな。 今回は守り固めるよりは攻め型のほうが良さそうだ。 魔獣は見つけても気づかれてないなら泳がせておくのもアリだな
仮プレはとりあえず出しておいたが、発見次第閃光塗弾を投げ込んで君達からも気付きやすいようにはしておく。 とはいえ報告書提出もやっておきたいから、1個しか持参出来ないが。