【甘壇】青薔薇の芸術祭と甘輝祭
岩岡志摩
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シナリオID:2812
オープニング
リーンエス王国にカペル侯爵領と呼ばれる一帯がある。
そこは王国首都に程近く、ここに領地を構えるカペル侯爵家は始まりの百家に連なる家柄である。
その領地は『花の領地』とも呼ばれ、季節ごとに様々な花が咲くという。
そこで暮らす領民たちの気質はと言えば、温厚でありお祭り好き。
その領都には大きな劇場があり、その周辺には各地より集った芸人や楽器職人達が暮らしている。
これはカペル侯爵領が芸術の保護活動を行っているためだ。
そして今年もカペル領では『青薔薇の芸術祭』が開催される。
もともと青薔薇とは『存在しない花』を指すが、カペル家では『芸術には不可能を可能にする力を持つ』と信奉されている。
そしてこの領都には、その名を冠する芸術家集団も存在している。
今はまだ存在し得ない『青薔薇』の名を彼らはいただき、カペル家もその考えを支持している。
その青薔薇の芸術祭に際しては、高名な芸術家が各地から招聘され、領都の劇場では連日絢爛の舞台が続く。力強い歌声が空間に叩きつけられたかと思えば、どこか作り物めいた歌声も混在し、精密な動きとダイナミックな動作をする演者が同じ舞台でぶつかり合い、それぞれの魅力を披露する。
著名な芸術家だけでなく芸術家の卵たちもこの祭りの場に集まり、街の至る所で芸術家の卵達がパフォーマンスを行い、自らの芸術を観客へと売り出していく。
そんな芸術祭も、今年は『甘輝祭』を芸術祭に取り入れようという試みがある。
カペル領の特産品であるワインを使ったホットワインにチョコレートを合わせたり、演目や美術モチーフに宝石を取り入れたりと、様々なことを試み――楽しもうとしている。
――今年の芸術祭は、例年以上に華やかになりそうだ。
カペル領の領都で芸術祭に関わる人達は、そんな期待を寄せる。
そうした人々の様子を、カペル領の領都を訪れた貴族――フローラ・ウォレス伯爵が眺めていた。
●愛好家が増えた
以前にもフローラ伯爵は、この地で行われた『青薔薇の芸術祭』を見に来ている。
もともと伯爵の領地はカペル領から遠く離れた場所にあるが、シルヴィア・A・カペルからの提案がきっかけとなった。
――芸術の保護活動を行っているという点で、畏れながらウォレス領とカペル領には共通点があると感じています。
その提案に従い、フローラ伯爵は『青薔薇の芸術祭』が行われている時期を選んで領都へと足を運び、芸術祭を体験した結果――。
「とても素敵なひと時でした」
フローラ伯爵は『青薔薇の芸術祭』に魅了された。
以来フローラ伯爵は、この時期のカペル領で行われる芸術祭を楽しみにしていた。
――カペル領に来て頂いて光栄です。
――祭りはまだまだ続きます。どうかお楽しみ下さい。
前回の芸術祭にて、シルヴィアから歓迎する意向を聞いていたフローラは、前回と同じく護衛という名目で冒険者ギルド支部に依頼を出していた。
「冒険者達にも、カペル領の領都で行われる芸術祭を楽しんでもらいたいというのが私の希望です」
応対した冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスに対し、フローラ伯爵は本当の目的をそう伝えると、アルヒは依頼斡旋に向けた手続きを始める。
そして依頼に応じてくれた皆様と共に領都を訪れ、今に至る。
「皆さん護衛ありがとうございます。ここからは思い思いの形で動いて下さって構いませんよ」
ここでフローラは同行していた皆様に向け、自由な行動をとるよう促す。
「皆さんがこの祭りを楽しむことができれば、この依頼は達成ということにします」
フローラ伯爵は皆様に対し、自分のいる場所を記したメモを渡していく。
「私はこのあたりにいますので、何か用事があれば声をかけて下さい」
なおフローラ伯爵だが、この場所で皆様がどのような行動をとってもいいように、ある程度根回しを進めるつもりでいるようだ。
「皆さんが行きたい場所へ向かい、やりたいことを始めるまでには必要な手続きを終わらせます」
そしてフローラ伯爵からは、皆様全員がこの芸術祭を十分楽しむことができたと判断し、フローラ自身やアルヒに伝えた時点で帰還の途につくと説明を付け加える。
なおもいくつか説明を終えたフローラ伯爵は笑みを残し、自身が領地より連れてきた護衛と共に祭りの雑踏へと消えていく。
ここから先は冒険者である皆様の自由時間になる。
この祭りでの芸術と冬薔薇を眺めたり、楽しんだりしながらホットワインを飲むこともできる。
そして芸術祭に『甘輝祭』を取り入れようとした結果、祭りが行われている各所でホットワインにチョコレートを合わせたものを提供したり、舞台での演目、美術のモチーフに宝石を取り入れたものが披露されたりと、新しい試みも楽しむことができる。
もちろん皆様が劇場の舞台に立ち、何かをすることもできる。
既に皆様には、フローラ伯爵より芸術祭を楽しむために必要な資金も渡されている。
飲食に使ってもいいし、パフォーマンスをやっている芸術家の卵達へと渡すチップにしてもいいだろう。
どうかこの機会に、皆様には新しい試みも始めた『青薔薇の芸術祭』を楽しんで欲しい。
●やること
今回皆様はフローラ・ウォレス伯爵が出した護衛依頼に応じ、現地までの護衛という形で『青薔薇の芸術祭』が行われているカペル侯爵領の領都に来ました。
ここでフローラ伯爵は、皆様冒険者達にも『青薔薇の芸術祭』を楽しんでもらうことが依頼の趣旨だと明かしました。
芸術と言っても、その解釈は様々です。
舞台での劇の他にもそれぞれの解釈による芸術が、この『青薔薇の芸術祭』では披露されています。
今回の芸術祭では『甘輝祭』を取り入れようという試みがあり、特産品であるワインを使ったホットワインにチョコレートを入れたものも楽しむことができます。
飲食以外にも『甘輝祭』を取り入れようとする試みは様々な形で行われ、演目や美術のモチーフとして宝石を加えた芸術を見ることもできます。
皆様はそれらを見て回り楽しむこと以外にも、特産品であるワインを使ったホットワイン(チョコレートを入れるか、そのまま味わうかの選択は自由)、宝石を用いた芸術を楽しむこともできます。
購入するための資金はフローラ伯爵より皆様へと渡されています。
希望があれば劇場の舞台に立ち、何らかの芸術を皆様が披露することもできます。
楽しみ方は人それぞれです。
何かあればフローラ伯爵に頼むのも手です。
よほど特殊なものや、希少なものでもない限り、伯爵の方で大概のものは揃えることができます。
フローラ伯爵は貴族の中では冒険者達に対し好意的な姿勢を見せる方ですが、注意点があります。
それはウォレス伯爵家やその領地、そこで暮らす領民を見下す、または危険にさらすような言動をしないことです。
フローラ伯爵は温厚な性格ですが、自分が庇護すべき対象を侮辱されることや、危険にさらすことをほのめかす言動には厳しい態度で臨みます。
また、これは当たり前の話ですが『青薔薇の芸術祭』をぶち壊すような真似をすれば、カペル侯爵領で暮らす人々も決していい顔はしないでしょう。
そのあたりだけは注意をお願いします。
それでは皆様。
皆様が楽しいひと時を共有し、思い出を残すことも兼ねて。
『青薔薇の芸術祭』を楽しんでみませんか?
解説
マスターより
リプレイ
カペル侯爵領の領都は、青薔薇の芸術祭を楽しむ人々で賑わっていた。
「またカペル領に来られて嬉しい♪ シルヴィアさん、今回はお招き有難う御座います!」
アステルはシルヴィア・A・カペルに感謝し、頭を下げる。
「ご連絡ありがとうございました、せっかくの機会なので、今回もお邪魔しますね!」
リサ・ベイカーもシルヴィアに招かれた1人だ。
「なかなか興味深いお祭りなので、色々見て回りたいですね」
リサは挨拶の後、周囲を見渡すと次の行動を決めていく。
リサやアステルのエスコート役を務めるキオルティスも、シルヴィアと挨拶を交わす。
「今回はシルヴィさん達の舞台鑑賞と、観光をメインにするつもりだよ」
キオルティスの言葉通り、今回シルヴィアは仲間達と共に舞台で歌劇を披露する予定だ。
「去年はルティスお兄ちゃんと舞台に立ったけど、今年は街巡りとシルヴィアさん達の舞台を観劇するつもりだよ」
アステルの話を聞いたシルヴィアは、アステル達に舞台の開始時間を伝える。
「是非楽しんでほしい」
3人を送り出したシルヴィアは、フローラ・ウォレス伯爵やアルヒ・ラスカスにも舞台の観劇を持ちかける。
「今年も芸術祭にお越し頂いて嬉しいです。素敵な一日になりますように」
――友人達にも領地の人々にも楽しんで貰いたい。
シルヴィアはそう願いつつ、舞台の打ち合わせへと戻る。
●巡る
アステルとリサは、キオルティスに守られながら会場内を進む。
「ルティスお兄ちゃんと2人も良いけど、今回はリサさんも一緒に街を巡るよ」
――そういえばリサさんって、絵を描く……はずだったと思うんだけど。
そう思ったアステルはリサに行き先を尋ねると、リサは首を傾げ思案する。
「これといって目的は決めて無いのですが……やっぱり、絵画ですかね。あとは、食べ歩き?」
リサの答えにアステルは目を輝かせる。
「それだと私と一緒だね! 今日は新しい絵の具を買おうと思っているの。一緒に見よー!」
アステルがリサに手を差し伸べ、リサもその手を取り共に絵画の展示場所へ向かう。
その中でキオルティスは巧みな誘導とフォローで、段差や他の人達との衝突からアステルやリサを守る。
「嗚呼、あの色もこの色も綺麗! ずっと見続けられる……っ!」
「これは素晴らしい。せっかくなので、気に入った作品一つを購入させて頂きます」
アステルやリサは陳列された絵画を眺め、それぞれの美点を称賛する。
「実家のお義母様にプレゼントしましょう」
(秀逸なデザインの方は、ベイカー商会にスカウトしたいくらいですけど……引き抜きみたいで、怒られてしまいますかね?)
絵画の購入時に作者名を聞いたリサはそう考え、さりげなくベイカー商会の名を伝えるだけに留めた。
やがてリサは近くに並ぶ装飾品にも目を向け、アステルと共に装飾品を手に取る。
「可愛いね。でも此方も素敵で似合うと思うんだよ」
それまで2人を見守っていたキオルティスは、予め購入していた2種類の花束を取り出す。
「これは今日の記念に、俺から2人への贈り物だよ」
そのままキオルティスは、リサとアステルに購入した花をそれぞれ贈り、2人から礼を言われ微笑む。
「宝石も花も……レディたちも輝いて、とても綺麗だね」
キオルティスの見立て通り、宝石と花がよい対比となって、アステルやリサの魅力を引き立てている。
(其々の花言葉に意味があるけれど、分かるだろうか)
内心そう思いつつ、キオルティスは次の場所へと2人を導く。
「寒い時期だから、そろそろ暖かい飲み物でもどうかな?」
キオルティスの提案にアステルやリサも頷きを返し、3人で飲食物を扱う出店を見て回る。
「ホットワインならアステルも飲める……かな? リサさんは平気?」
キオルティスが人数分のホットワインを購入すると、アステルとリサに渡す。
「香りが素敵ですね、温まりそうです」
リサはキオルティスに礼を述べると、ホットワインを口に運ぶ。
ワインの風味とシンプルなチョコレートの美味しさが一体となり、その香りと味がリサの鼻と舌を楽しませる。
「……なるほど、これはどちらかというと、ホットチョコにワインを入れている感じですね?」
「ノンアルタイプも有るかもね」
その美味しさにリサは驚き、キオルティスはアルコールのないものも探す。
「あ、でもあっちの食べ物もおいしそうだね! あの食べ物の色も良いなぁ」
それまでホットワインとチョコレートを楽しんでいたアステルが、何かを見つけたようだ。
「流石芸術の街だけあって、チョコレートも露店売りであってもデザインが素敵ですね」
アステルの視線を追い、宝石に見立ててカットされたチョコレートを見たリサはその意匠に目を細める。
「と、そろそろシルヴィアさん達の舞台が始まる時間かな?」
それまで楽しい時間を過ごしていたアステルは、観劇の時間が近いことに気づき、リサやキオルティスへそのことを告げた。
●準備
ヴィナスとエミリア・シバは、合流したシルヴィアと共に歌劇の打ち合わせを行う。
「今回も引き続き芸術祭に参加しようと思って、シルヴィアのお誘いを受けたよ」
「ふふっ、とっても贅沢な時間を過ごせそう。こんな素敵な催しに誘ってもらったのを感謝しないとね!」
ヴィナスとエミリアはそれぞれシルヴィアへの感謝を口にすると、役割分担を決めていく。
「私が担当する部分は舞踏を使って、冬から春になるのをイメージした感じを表現したいわね」
エミリアが自身の役割を表明すると、ネーヴェ・グラヌローザも自身の演じる内容を明かす。
「私は宝石要素として雪華のブレスレットを身につけまして。……後は雪華の舞扇を活かした踊りにするつもりです」
「ネーヴェとエミリアと共演するのは去年の秋以来だね。今回も楽しもう」
エミリアとネーヴェの希望を聞いたシルヴィアは、2人が見せる演技に期待を示す。
そんなシルヴィアを、今回歌劇への出演を決めたセラフィナ・M・ベイリーが見ていた。
(貴族なのに偉そうにしないし、私の見た目を忌避しないし)
――こんな私に「友達になろう」とシルヴィアさんは言った。
(変な人。でも不思議と嫌な気はしない)
そう思いながらも、セラフィナは自身が楽しんでいることに気づく。
「歌は好きです。踊りも好きです」
(あぁ。昔の私は舞台が好きだったのかな?)
そんな思いを馳せるセラフィナに向けられる、シルヴィアの視線は優しい。
「ハーディングフェーレでの演奏がメインだけど、歌も歌うつもりだし、作中歌の作詞もするよ」
ヴィナスはそう言いながら、歌劇で使う歌の歌詞を仲間達に見せる。
「作中のものだし、甘輝祭を意識した、想い合う男女の恋の歌ね」
「言葉選びの一つ一つが綺麗だ」
ヴィナスの解説に、歌詞を読むシルヴィアの感嘆が重なる。
「甘輝祭をテーマにした舞台!」
セラフィナもヴィナスの歌詞を前に、その表情を綻ばせる。
「劇の流れにもよるけれど、演奏や舞を一緒に考えよう」
ヴィナスの提案を受け、まずネーヴェが賛意を示す。
「歌詞はヴィナス様ご考案のものでいきましょう。叶うなら舞踏のお得意な方々とご一緒に踊れますと嬉しいですわ」
そしてネーヴェは合唱で担当したいパートを伝え、承諾を得る。
「あと、皆でゆっくり打ち上げとかもいいよね」
ヴィナスはそう言いながら、仲間達と共に準備を進めていく。
●歌劇
「シルヴィア先輩達の舞台、観覧させて頂きますね。知り合いのネーヴェさんも参加されるようで楽しみです」
リサがアステルやキオルティスと共に観客席で見守る中、歌劇は始まる。
――それはある冒険者の物語。
とある商人から迷宮神の宝石を入手して欲しいと依頼を受けた冒険者は、迷宮神から宝石を賜るべく、迷宮神の前でパフォーマンスを披露する。
最初はシルヴィアのソロパート。
シルヴィアはあごの下でフィドルを支えて構え、薔薇色の爪紅が塗られた爪を見せるように弓を持ち、弾き始める。
シルヴィアの演奏スキルでフィドルは高く澄んだ音色を奏で、観客の耳へ心地よい調べを送る。
続いてヴィナスも演奏スキルで追憶のハーディングフェーレを奏でると、華やかで余韻の残る音色を発し、シルヴィアの演奏に合わせる。
そのままヴィナスは旋律に合わせてまずは一声。
――それは朝露の雫 それとも月夜の煌めき。
シルヴィアも演奏しながら歌唱スキルを駆使し、ヴィナスの歌声に続く。
――あなたは私の頬の輝きを知った。
心震わせるあなたへの私の想いで。
あなたの胸は甘く焦がれる。
あなたを想い零れ落ちる私の涙は。
あなたしか知らない一粒の宝石。
(コテコテだけど、いいか)
ヴィナスは内心そう思いつつも、シルヴィアと共に歌いあげ、他の演者達も動き出す。
(それでは甘く、可愛く、ちょっと切なく、やってみましょうか)
舞台用に衣装を整えたセラフィナは、歌唱スキルとカリスマスキルを駆使してヴィナス達の歌に加わる。
(ひらひらしていた方が舞台で映えるのですよね)
纏う衣装が一呼吸遅れてたなびき、セラフィナは可愛らしい女の子のような歌声から、男の子めいた声に感情を乗せた歌声まで幅広く発し、掛け合いめいた演出も織り交ぜる。
続いてネーヴェとエミリアがそれぞれの踊りを披露する。
(皆様の歌や演奏、踊りはどれもとても素晴らしいものです。ここにいる全員の力を合わせればきっと、更に素晴らしいものが出来上がるに違いありませんわ)
ネーヴェの踊りに合わせて雪結晶のブレスレットと雪花の舞扇が躍動し、煌めきを見せる。
(スキル『雪華』も使いまして、舞台に華やかな彩りを添えましょう)
ネーヴェが歌唱スキルを駆使した歌と共に、雪華を発動して数多の雪の結晶めいたエーテルを解き放ち、周囲の演者達へ吸い込まれるように溶け、消える。
(ちょっとずるいんだけどもシーフの技能も利用してみようかしら?)
既にエミリアはフェイクカバーを使い、自身の纏う衣装を白縹色に変えていた。
エミリアが表現するのは冬の終わりと春だ。
スキルを解除すれば、その衣装も薄桜色のドレスへと瞬時に変わり、観客を驚かせる。
(春はシャルガネで見た桜の印象が深いのよね)
そのままエミリアは、自身が見た桜のイメージで舞踏スキルを使い、見事な踊りを披露する。
ヴィナスが丁寧な演奏と気持ちを込めた歌を披露すれば、セラフィナも自身の歌声を重ねて華を添える。
(あぁ楽しい!)
セラフィナは内心の嬉しさを自身の歌声と踊りに乗せる。
(ネーヴェさんの歌、素敵だなぁ……シルヴィア先輩も相変わらず格好いいですね)
リサは舞台で演じられる芸術の素晴らしさに、観客席から見入る。
一方アステルは演じられる内容から何かを学び取ろうとしていたが――。
(舞台が素敵すぎてそれどころじゃなかった! 皆が舞台で輝いているのが。命が、魂が、自然と胸に入ってくるの!)
そのアステルの横にいるキオルティスも、アステルと同じく舞台で披露される仲間達に魅入られていた。
自身も奏で、歌いたいと心が震えている。
その衝動を抑えながら、キオルティスはリサやアステル達の楽し気な様子にも目を向け、笑みを見せる。
そして最後は全員での合唱。
――その恋は甘く、そして輝く。あなたを想うことで恋を知った。
シルヴィアがエミリア、セラフィナ、ネーヴェ達の踊りを後押しするような演奏を見せて歌う。
――心を焦がし 心を震わせ。
ヴィナスもシルヴィアと呼吸を合わせ、背中合わせになるような位置で歌と演奏を披露し、シルヴィアとの合奏を見せる。
――私の、僕の、想いを交わす。
そしてエミリアも歌唱スキルと舞踏スキルをフル活用して、他の踊り手達と動きを合わせ、時には鏡合わせとなるように舞う。
――私と僕の物語。
――世界でたったひとつの物語。
――想いは輝く宝石のように。
全員で力を合わせ。一つの楽曲を作り上げ。
物語はハッピーエンドで幕を閉じる。
歌は終わり、演奏もその全てを弾き終わる。
――皆さんの素晴らしい舞台に、最大限の拍手を!
真っ先にリサが拍手を送れば、他の観客達も精一杯の拍手と喝采を送る。
その中にはシルヴィアより観劇を誘われたフローラ伯爵や、アルヒの姿もあった。
●幕
女性の演者や観客に恭しく一礼後、舞台を降りたヴィナスは改めてシルヴィアに感謝する。
「今回は俺も誘ってくれてありがとう」
「私も今回の歌劇ができたことに感謝だよ」
シルヴィアもヴィナスや仲間達に感謝を伝える中、アステルやキオルティスが合流する。
「やっぱり音楽の力は凄いね」
キオルティスは仲間達が演じた歌劇への賛辞をしつつ、予め購入したマローブルーティーにネモフィラを添えたものを進呈すると、アステルも宝石状にカットされたチョコレートを提供する。
「やっぱり観るのも良いけど、演じるのも良いね! 帰ったら、今日の舞台を新しい絵の具で描いて、フルートで感想を奏でるよ」
――あの舞台を観たからこそ、また一層皆の輝きが増している気がする。
アステルは自身の気持ちをそのまま仲間達へと伝える。
「とても嬉しいよ。舞台、楽しんでくれて良かった」
シルヴィアはキオルティスやアステルに礼を述べると、セラフィナと共に一休みする。
「疲れた体に甘い飲み物は最高ですね」
セラフィナが事前に購入したホットチョコレートを取り出すと、シルヴィアも自分の飲み物を用意する。
「ホットワインとチョコで乾杯したいな」
そんなシルヴィア達にキオルティスやアステルも加わり、舞台の感想を語りあう。
「嗚呼、本当に素敵な一日だったな♪」
アステルの呟きに、この場にいる仲間達も頷く。
既にシルヴィアは仲間達と歌劇の時間を共有する中で、音楽の楽しさに目覚めたという自覚があった。
一方舞台を終えたエミリアは、祭り会場内の巡回を始めている。
「時間の許す限り色々な人の舞台を見学させてもらったり、展示品などを積極的に見て回ったりするわ」
エミリアとしては様々な芸術を取り入れ、自身の有する芸の幅を広げる狙いがある。
会場内で様々な芸術を楽しんだエミリアは、冬薔薇の香りが色濃く残る場所で休憩を取る。
そしてネーヴェも芸術祭を楽しみ始めた。
「他の方々の演目も鑑賞致しまして……残った時間は街中を見て回るつもりです」
その中でネーヴェは待機していたアルヒを労う。
「アルヒ様、お疲れ様です。もし宜しければいかがですか?」
購入したホットワインとチョコレートをネーヴェは差し出すと、アルヒは「ありがとう」と感謝し受け取る。
「待機もお仕事の一環である以上は、お祭りを堂々と楽しむことは難しいかと思いますから」
――味もまた思い出の一つになりましょうから。
いつも美しいものを見た。
いつも新しい何かと出会った。
この芸術祭でも、そんなひとときを皆で過ごした。
マスターコメント
ショートシナリオR易しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2023年03月05日 14時14分29秒 公開
相談掲示板
シルヴィアだ。皆、お祭りのお誘いに快諾してくれてありがとう。 今年も来て下さったウォレス伯爵とアルヒ、魅力的な依頼にして下さった岩岡志摩さんにも心からの感謝を。今回はよろしくね。 劇場の舞台に立つのも、街でチョコレートを食べながらホットワインを飲むのも、どちらも楽しそうで迷ってしまうね。 今の所は舞台でパフォーマンスをしたいと思っている。もし共演してくれる人がいたら大歓迎だから声を掛けて貰えると嬉しい。
ヴィナスだよ、よろしくね。 舞台に立つ予定だよ。 >シルヴィア 良かったら一緒にどう?
ネーヴェ・グラヌローザと申します。 シルヴィアさんは今年も素敵なお祭りにお誘い下さいまして、ありがとうございました。 皆様どうぞ宜しくお願い致します。 私も舞台で何かパフォーマンスが出来たら、と思っていたのですが…… シルヴィアさん、ヴィナス様、お二方にご一緒しても構いませんか?
ヴィナスもネーヴェも舞台のお誘いありがとう。 勿論大歓迎だよ。一緒に舞台を楽しもう。 二人はどんな舞台にしたいかな? 私は今のところ、甘輝祭らしく宝石やチョコレートを題材にするのが良さそうかなと思っているよ。 パフォーマンスについては考え中。演奏も踊りも楽しそうだし、昨年ネーヴェと共演させてもらった時のようにミュージカル風にするのも素敵だなって。
キオルティスと言うよ。シルヴィさんは今年もお誘い有難う(微笑 素敵な青薔薇の芸術祭に出来るよう、そして皆が楽しめるよう、 過ごさせて頂く所存だよ。 とりあえず、まだ予定は未定だけれど…舞台が濃厚、かな。 甘輝祭を絡めた、また去年とは違った街の様子を楽しむのもいいね。 もう少し色々考えてみるよ。
エミリアよ。シルヴィアちゃん素敵なお誘いありがとう。 いろいろ楽しそうだし、美味しそうなものがたくさんあって目移りしちゃうけれど、 せっかくならばシルヴィアちゃん、ヴィナスちゃん、ネーヴェちゃんとお三方が大丈夫ならご一緒させてもらえたらなと思うわ。舞踏と歌唱ならばそれなりに出来ると思うので。
エミリアとも一緒に共演出来るならとても嬉しいよ。改めてよろしくね。 キオが舞台に立つなら楽しみにしている。街も賑やかだし、何方にするとしても思い切り楽しんでね。 >舞台 舞台のテーマは本当に悩むね……『甘輝祭』らしさを出すなら、いっそ「迷宮神から宝石を賜るべく、冒険者が神の前でパフォーマンスを披露する」と事実を混ぜた設定の演劇にするとかかな。宝石を求める理由で個性も出せるし、最後は共演で神を唸らせた、とハッピーエンドに纏めやすいかなって(ぱっと思いついただけだから他のテーマも勿論OKだよ)。 私は演奏するとしたらフィドルになるかな。歌唱や舞踏も頑張るよ。
>舞台 シルヴィアさんの仰る演劇の案、とても今年らしくて宜しいのではないでしょうか。 劇中はそれぞれの得意なことを披露しつつ、最後は全員で力を合わせて一つの楽曲を作り上げたり出来たら素敵だと思いますわ。 私自身は歌唱と舞踏が出来ますわね。エミリア様と同様に、この二つで行こうと思っております。演技と、あとは変装なども一応出来ますわ。
お、遅くなりました… シルヴィア先輩、ご招待ありがとうございます。 舞台、わたしは鑑賞させて頂きますね。 あとは、基本的に色々見て回ろうかなと。
>シルヴィア お、いいね。面白そう。 俺もやるなら演奏と歌かな。歌の場合は歌詞考えるかな…。 皆で得意なことを披露することで見せ場作れるし、最後の共演も迷宮神へ芸を奉納する色合いがあっていいと思う。 展開は俺もハッピーエンドに賛成だ、芸術祭であることも考えれば、シルヴィアの領民の皆さんが楽しんでくれる方がいいし。
リサもお誘いに快諾してくれてありがとう。 舞台を観に来てくれるなら嬉しいな。一層気合を入れてパフォーマンスをしようと思うよ。 >舞台の内容 快諾感謝だ。最後に皆で力を合わせて楽曲を作り上げるのはとても素敵だね……! 迷宮神への奉納する意味合いもとても良いと思う。出発まであと数日だし、劇の内容はその方向で行こう。 私の方で共通プレを作ってみたよ。昨年ネーヴェと共演した時と同じタグを使わせて貰っている。 ▼ 【歌劇】 舞台に参加してミュージカル 迷宮神から宝石を賜るべく、冒険者が迷宮神の前でパフォーマンスを披露する物語 劇中はそれぞれの得意な事を披露 最後は全員で力を合わせ一つの楽曲を作り上げハッピーエンド ▲ 言い回しは変えるかもしれないけど、内容は変えないつもりだ。もし変えた方が良い部分があったら遠慮なく言ってね。 共通プレは私が記載するから、皆はプレに【歌劇】と書いて貰えると有難い。 >舞台でのパフォーマンス エミリアとネーヴェが歌唱と舞踏、ヴィナスが歌唱と演奏だね。 最後に皆で合唱出来たら楽しそうだし、私も歌いたいな。ヴィナスと同じく演奏も出来ればと思っているよ。 ヴィナスが歌詞を考えてくれるなら嬉しい。是非よろしく頼むよ。
シルヴィアちゃん【歌劇】のタグありがとう。 できるだけいろいろ考えてみるわね!
シルヴィアさんお誘いありがとうございます。 セラフィナです。よろしくお願いします。 遅くなってすみません。 >舞台 私も【歌劇】に混ざってもいいでしょうか? 楽器は弾けませんが、歌とダンスは自身があります。
取り急ぎ……! >セラフィナ 勿論大歓迎だよ。セラフィナの歌とダンスも今から楽しみだ。当日はよろしくね。
No.15
遅くなってしまったけど、シルヴィアさん、お誘いありがとうございますっ!! 私は…シルヴィアさんたちの舞台を観て、他、色々見て回ろうかな。って思ってます。 素敵な舞台、楽しみにしてますねっ!!
じゃ、俺もシルヴィさんたちの観劇後にふらっと街を見て回ろうかな。 カペル領が素敵な街だと言うことは折り紙付きだしね!(微笑 同じ行動予定のリサさんとアステル、良ければご一緒しないかい? プレ締切的に無理にとは言わないけれど。 勿論、2人のプレに合わせることも厭わないよ。 もし可能であれば、是非。
キオルティスさん、ありがとうございます。 明確に見る場所を決めて無いのですが、ご一緒させて頂く感じで行動させて頂きますね!
No.18
>ルティスお兄ちゃん 一緒するする!リサさんもOK下さったし、3人で色々見て回ろっ♪
シルヴィアさん歓迎ありがとうございます。 舞台に上がる皆さんもよろしくお願いしますね。 楽しい舞台にしましょう。 私は中性的である事を活かして 少女のような声と少年のような声の2つを使って歌いあげる予定です。
リサさんもアステルも快諾有難う。 2人のレディをエスコート出来るようにジェントルな振舞いを心掛けるよ。 ホットワインや花、宝石類…街の至るところも勿論、キラキラしていて 素敵だろうから見て回るとして。 出来れば舞台をやるシルヴィさんたちに差入れとか持っていかないかい? そこで皆と絡むことが出来たら、折角この場で居合わせた偶然の必然も 一層華やぐと思うんだけれど…どうかな。
セラフィナもアステルもお誘いにOKしてくれてありがとう。 キオに故郷を褒めてもらえて嬉しいよ。私達の舞台も、街中で開催されているお祭りも楽しんでもらえたら幸いだ。 差し入れも本当に嬉しい。折角のご縁だし、是非皆と絡みたいと思っていたんだ。 舞台の後、打ち上げのような感じでホットワインやホットチョコレートを楽しむのも良さそうだね。街を見て回る三人も、ちょっと一息入れたくなったら戻ってきて一緒にのんびりする事も出来るし(出発が近いし、今から変更は大変だと思うからあまり気にせずに……! とりあえず私は舞台の後にホットワインも飲めたらなと思っているよ) あ、フローラ伯爵とアルヒも観劇にお誘いしてみるつもりだ。 セラフィナは2つの声を使い分けられるんだね。少女のような声と少年のような声……どんな歌になるのか、楽しみにしている。思い出に残る素敵な舞台にしよう。