楽園への遠い道

馬車猪

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シナリオID:2799

オープニング

●
 知力、体力、時の運。
 3つが揃っていてもまだ足りず、経験や授恵者としての力を最大限活用してようやく予選が突破できる難関であった。
 年齢も性別も種族も様々な受験者が涙をこらえている。
 ここはネーベルベルク伯爵家が代々治めていた帝国南東部の一地方。
 元難民の村がまばらにあるのがせいぜいの帝国南東部ではかなり復興が進んだ土地であり、現在はネーベルベルク家家令テオドール・ブフマンの実質的統治下にある場所だ。
「みなさん予選突破おめでとうございます」
 小柄なハーフリングの中でも特に若くみえるテオドールではあるが、主家不在の中可能な限り土地と人口を維持してきた実績と能力が彼を特別な存在にしている。
「残るは最終試験のみです」
 これは、いずれ復活する(させる)ネーベルベルク領の防衛部隊指揮官選抜試験であり、指揮養成教育を兼ねている。
 客観的に見て無理無茶無謀とすらいえるがこの程度の困難を乗り越えられないようではネーベルベルクの復興はあり得ない。
 冒険者による試行結果をもとに領民教育と文官候補の選抜および養成はゆっくりとではあるが進んでいる。文武が車の両輪である以上、武を手抜きする訳にはいかないのだ。
「ご覧の通り、この地方の復興は道半ばです」
 テオドールは率直に現実を語る。
 現時点では自警団程度の規模でしか維持できないので指揮官として採用されるのは少数だ。
 ならば試験は受験者同士の潰し合いかと受験者が覚悟したとき、最終試験の内容が公開された。
 雪中行軍である。
 領内都市ヴァイセンタールより出発し、山脈を突破し最終的に保養地を目指す。
 この地方では『姫様のハイキングコース』とも呼ばれる、夏なら新米授恵者の少女が通行できる程度の経路である。
「最近は魔獣の目撃情報が届いています。これは確定情報ではありませんが、強力な個体が出現する可能性も無視できない程度にあります」
 受験者達が微かに動揺する。
 授恵者もいはするが格(レベル)は非常に低い。
 同じく受験者である帝国軍の精鋭部隊出身の元兵士(足を痛めた非授恵者)と殺しあいになれば互角、総合力では後者が勝る程度だ。
「また、試験官は私(文官)達から冒険者に変更になります」
 冒険者ギルドには試験中の障害物担当と遭難防止と適度な魔獣撃退、そしてもちろん受験者遭難時の救助も依頼している。
 当然、救護された受験者は不合格となる。
「採用予定より大勢の方が合格した場合は、私達の領と縁のある地方に紹介させていただきます。合格した皆さんと会えることを願っています」
 テオドールは非常に厳しくはあるが、誠実ではあった。

●試験運営依頼
「というわけで試験運営依頼です」
 雪が見える温泉(露天風呂)の中で冒険者ギルド職員とテオドールがふやけている。2人とも色々配慮して水着を着用済みだ。
「街……まあ人数は少なくなってますが街です。とにかく街から出発して寒い風に吹かれて山が連なる山脈を登り、地形的にそこを通るしかない峠を通過、その後も延々歩き続けてここ(保養地)がゴールな試験です」
 道案内とそこそこ以上の護衛(授恵者)がいれば突破は簡単だ。
 大きな箱に焼いた石と熱々の料理と飲み物を詰め込んでマジカルポケットで運べば、テオドール(非授恵者の文官)を慰安旅行として安全に連れてくることも容易だった。
 しかし受験者にそんな贅沢は不可能だ。
 詳細な地形情報を知る案内人は非常に貴重だ。習得が難しめな(コストが重い)スキル(マジカルポケット)持ちの授恵者はさらに貴重でギルドのコネが必要だった。
「みなさんにお願いしたいことは2つあります」
 監督員として不正の防止と受験者遭難時の救助を担当し、試験官として適度な難易度の困難を用意する。
 前者はスタート地点からゴールまで受験者の近くで監視する必要があり、後者は雪を使った障害物作成や適度な数と脅威の魔獣を誘導し不必要に大きな脅威の排除までする必要が有る。
「兵士として並より上の能力と……小隊長か中隊長が務まる能力があれば全員でも採用……できたらいいなぁ」
 テオドールは非常に快適すぎて今にも眠ってしまいそうだ。
「説明ありがとうございます。試験開始は今から2日後。最終試験を受けるのは9人の男女です」
 ギルド職員の方は平気な顔をしている。
「受験者の個人情報は依頼をうけた時点でお渡ししますが…」
 職員は温泉(露天風呂)の外にいる冒険者の顔を1人1人見る。
「人材としては皆さんよりかなり下です」
 受験者を馬鹿にしている訳ではない。
 授恵者としてもそれ以外の面でも優れた冒険者が多いだけだ。今回が初依頼の冒険者だとしても、最低でも戦闘力と一芸を兼ね備えた有為の人材なのだ。
「可能であれば訓練と救助を優先してください。今回の9人は、仮に不合格だったとしても帝国の色々な組織が欲しがるだろう人達ですから」
 試験終了後に冒険者も入れるよう男風呂と女風呂の1つずつを予約しておきますと、職員はシリアス顔で断言した。

解説

●目的  雪中行軍試験の無事終了 ●場所  雪が積もった長い登り道と、魔獣が潜んでいる気配がある峠と、強い風と雪が頻繁に発生する下り坂です  受験者の中で足が遅い者は、途中で最低1泊する必要があります ●受験者 ・古参兵  足が少し不自由な元帝国軍人。非授恵者  帝国北部の雪と風が厳しい場所での経験が豊富で、魔獣に遭遇しなかった場合は合格が確実視されています  ただしかなりの変わり者で、常時兜ともこもこした服を着た年齢性別不詳の人物です 「軍務で足を痛めてしまってな……」(作り声) ・授恵者  今回受験者の唯一の授恵者です  荒んだ目をした小柄なハーフリング少女  暗視とスリ(盗み)が使えるLV1シーフです  重度の人間不信なのでトラブルを起こす確率が大で、冒険者が関与しないと準備不足で遭難し合格しても揉めてどこかへ立ち去ります 「へへっ、冒険者かよ。きらきらしてやがる」(暗い声) ・元軍人達1  元精鋭部隊の一般的元軍人。非授恵者。2名  故郷が全滅し所属部隊も壊滅してしまったので、退職して帝国軍ほど過酷でない職場を探しています  帝国の中でも雪の少ない土地や都市部での活動が中心だったため、雪中行軍の知識はあっても経験は不足気味です 「試験が始まるまではあまり寒くなかったんだが……」 「まずい。迷ったかな」 ・元軍人達2  元精鋭部隊出身ということになっている、帝国軍の元情報部門所属の非授恵者達。3名  精神的にも肉体的にもきつくなってきたので円満退職後に就職先を探していました  兵士としての能力は高水準ですが全員年齢が中年以上なので体力面で厳しく、また、以前の職場と同じようなことをするくらいなら合格しても辞退します 「君はっ」 「あなたもここに?」 ・元傭兵  傭兵もしていたことがある中年以上の非授恵者男性。2名  雪には慣れていますが連携は得意ではありません 「競争相手が強すぎる……」 「なんとか妨害、できるか?」 ●雪  いっぱいあります ●魔獣  毛が白く目が赤い魔獣が単独で合計十数体登場  雪上に隠れるのが得意で、魔力を帯びた牙で噛んできます  全長は30センチ前後で移動は5。戦闘力は魔獣にしては低く、草や弱った動物や人間を食料にしようとします。万全の体調の受験者なら撃退可能  1体だけ目が強く輝いている個体がいて、この個体は移動は3しかなく隠密に向いていませんが大きさの割に強く獰猛です。受験者では勝てません ●温泉  希望者は入れます

マスターより

 リクエストありがとうございます  プレイングに迷ったときは、林間学校の肝試しでお化け役の先生ポジションをイメージしてみてもいいかもしれません

リプレイ

●
 白い雪が山肌に残っているだけでなくまだ降っている。
 見上げれば太陽が見える程度にしか降っていないのに、視界は普段の数分の1だ。
「二年半前に一度通った道筋も、雪に覆われるとまるで別世界ね」
 アウレーリア・フォン・ネーベルベルクの表情はいつも通り(令嬢らしい上品さ)だが瞳に浮かんだ表情は複雑だ。
(誰よハイキングコースとか言った奴。私も決死だったのですけど?)
 微かに漏れた気配に強い兎が反応する。
 アウレーリアの存在感があまりにも強すぎて、頭だけ雪に埋めて死んだふりをした。
「……テオ達が下見してる筈だけど」
 この程度なら試験(雪中行軍)の障害として使えると判断し、止めは刺さずに周囲を見渡す。
「片意地を張らずに気楽にチャレンジしてくれると嬉しいのですが」
 雪を踏みながらフリーダ=ブロムヴィストが移動している。
 足跡のない雪原を進む白金の戦士というのは幻想的な存在に思えるが、フリーダは結構堅実だ。
「待遇の割に受験者が少ないんですよね」
 襲いかかってきた魔獣(赤眼輝く兎)を平気な顔(完全に無傷)で受け止める。
 数ヶ月の間この峠の支配者面をしていた(本物の強者に遭遇することがなかった)魔獣は慌てて後退する。
 いつもなら白い体が雪に紛れて見えなくなったろうが、一瞬の接触の際にフリーダに斬りつけられた傷から鮮血を流しているので今は非常に目立つ。
 薄い刃物が兎の毛と毛の間を通過し肌に触れる。
 脆さと引き替えに鋭さを引き出された刃が、凄まじい技術で操られて肌と肉を裂き太い血管に切れ目を入れる。
 トーラがそっと体を離す。
 白い外套は雪色の背景に紛れ、攻撃に参加した後であるのに一瞬でも目を逸らすと見失ってしまいそうだ。
「お見事です」
 キリアン・フィッツジェラルドは矢を矢筒に仕舞い弓を下ろす。
 試験を台無しにする可能性があった兎(魔獣)は、試験開始まで生き延びることはできないはずだ。
 キリアンはゲル(避難所)をどこに設置するか考えながら警戒は続けている。
「食材として欲しい」
 ナタリア・フィッツジェラルドの発言は唐突に聞こえるかもしれないが理に適っている。
 食料も薬だ。特に寒い場所(栄養が多く必要な所)では特に重要だ。
「ナタリア姉さん?」
「無事に試験から返すのも我々の仕事だ。潰すのは受験者の傲慢だけでよい」
 軍医(ナタリア)は弟(キリアン)を連れて兎(魔獣)の回収と解体を急ぐ。
 授恵者として高い格(レベル)を持つ2人は、特に準備をしなくても解体も調理も凡人よりずっとうまくできた。

●
 試験は過酷で、静かであった。
 雪を踏む音も雪をかき分ける音も雪の中に消え、受験者(獲物候補)の消耗を待つ兎(魔獣)の気配が薄く現れては消える。
 焦りで罵声が口から飛び出しかけた。
 元傭兵は使い慣れた槍を構え、視界の隅に見える少女(受験者)に不穏な視線を向ける。
(いけませんね。周辺への警戒がおろそかです)
 フリーダは特に隠れてはいない。
 前日(準備期間)より降雪の勢いが強く見通しが悪いという理由もあるが、受験者の注意力が冒険者より雑という理由の方が大きい。
 本来のコースから少し外れて移動しつつ、適度な頻度で魔獣を追い立てて受験者の近くへ誘導。
 受験者は危なげなく撃退はするが、戦った後に進路が大きくずれる者もいる。
「完全に試験用コースから外れました」
 フリーダが発言し、元傭兵が激しく動揺する。
「減点にはなりますがまだ不合格ではありません。受験、頑張って下さい」
 元傭兵はそれ以降真面目に奮闘し、力不足という現実を受け入れ棄権を宣言した。
 不気味な振動が発生する。
 雪に潜んだトーラが闘気槌(広範囲攻撃)で雪崩を引き起こしたのだ。
「雪崩だ! 安全な場所まで走れ!」
 足が不自由な受験者が自らの有利(雪山知識)を惜しまず開示し全員を誘導する。
 誘導した分自身は遅れそうになるが、体力はある受験者が両側から肩を貸してぎりぎりで間に合う。
 雪崩の量がさほど多くない(トーラによって調整されている)ことには、まだ気づけない。
(困難へ挑むとき、仲間を引っ張れる人がいると良いですね)
 トーラは受験者を遠くから見ている。
(そういう意味では、あの子は少し問題が……)
 不安定な雪(足場)を跳躍(ホライゾナルジャンプ)で通過する。
「起き上がれば息はできます」
 1人逃げようとして数十センチの雪に飲まれた授恵者(ハーフリング)を、慎重に引っ張り出した。

●
「こちらは失格者を全員確保した。数が多いので試験への追随は私も弟(キリアン)も無理だ」
「承知したわ。試験官は私が引き継ぐから後はよろしくね」
「了解した」
 アウレーリア(ネーベルベルク家の生き残り)とそのナタリア(保護者兼従者)の意思疎通は迅速だ。
 非常に短時間で情報交換を終えてそれぞれの仕事へ戻る。
「不合格。今から治療を行う。素直に治療を受ければ後遺症なしで下山できる。……分かったな?」
 失格者(元傭兵)が肩を落とす。
 悔しさと少しの悪意が生じ、しかしそんなものは温かな飲み物と栄養満点の肉(料理)の前には無視できる程度に軽い。
「他の受験者を利用したとはいえ、魔獣を相手にするときは常に複数で1体に当たるのは良かった」
 ナタリアはコップに火酒を足してやりながら結果について解説する。
 既に試験が終わった相手には多少の融通は効かせる。
 追い込むのは選抜のための手段であって目的ではないからだ。
「俺はまだやれるっ」
 同業者(元傭兵)の制止を振り切って騒ぐ者もいる。
 人里から離れた閉鎖空間に女性1人と男複数という組み合わせは犯罪を呼び背寄るようなものだ。
 ただし女性1人が武力でも慎重さでも圧倒しているので問題が起きる確率は0だ。
「家族なり縁がいる者が山の下にいるだろう。下山するまで頭を冷やせ」
 今は何のスキルも使っていないのに、ナタリアは本気を出さなくてもこの場の全員を圧倒できる。
 失格者は肩を落とし、従順にナタリアへ従うのだった。
 ゲルがある場所の数百メートル先では試験が続いている。
「行軍行軍ですもの。他の受験者と組むのを評価することはあるけどそれを理由に不合格にはしないわ」
 かつてと比べて体力も魔力も大幅に増えたアウレーリアが生き残りの受験者達を軽々追い越していく。
「今から連携についての試験を開始します。今の組を解体して新しい組を作りなさい」
 態度は上品かつ穏やかでも試験官としては本当に容赦がない。
 心身とも疲労した状態で、それでも受験者は力を振り絞って暴力ではなく交渉と協調を行う。
(いいわねぇ。全員は採用できないからふるい落とすしかないのが残念よ)
 アウレーリアは徐々に速度を落として最後尾へ移動する。
 予め知らせた正規ルートがわざと見つけ辛い内容だったり、いくつかの道がこんもり雪で埋めたれていたり、足跡や轍が正しくない方向を指していたりする試練が受験者のすぐそこまで迫っていた。

●
 直前間の記憶と今の五感からの情報が一致しない。
 受験者の中で唯一授恵者だった少女が、追い詰められた草食動物じみた態度で武器(ナイフ)を抜いて立ち上がる。
「今日はよく休むことを勧めますよ」
 キリアンは、姉とは別のゲルの中に温かい料理が入った鍋を抱えて入ってくる。
 油断した行動に見えるかもしれないが、同じ授恵者でも力の次元が全く違うので彼にとって危険はない。
「最初に伝えておきます」
 鍋を敷物の上に載せて大きな匙をその上に載せ、キリアンはゲルの外に出る。
「あなたが記憶を失ってから日付が変わっています。残念ながら不合格です」
 キリアンはゲルの開いたままの入り口から相手(授恵者)を観察する。
 新人の冒険者と比較しても弱く、目つきも雰囲気も賊じみている。
(人間不信というより……。決して甘くはないネーベルベルク領へと売り込みに来たのは何故なのでしょうかね。労働の対価という意味で宝の山に見えたのか、獲物と認識したのか、それとも……)
 今判断を下す必要はないし、最終的な判断を下すのはテオドール・ブフマンだ。
 キリアンは1人だけ構ってはいられない。
(姉さんがいくらか支援したはずなんですが)
 正解のコースを外れたら危険遅滞に踏み込む前に気づけるよう昨日のうちにロープを張っていた。
 それに複数箇所、複数人が捕まって寒さに震えている。
 ホークアイ(野外での索敵術)を持つキリアンは、その数の多さに気づけてしまう。
 軽く息を吐いて、次々矢を放って失格者達に迫る兎(魔獣)を仕留めていった。

●
「男湯でも聞こえますか」
 湯船に浸かっていてもアウレーリアは貴族(支配者)らしく振る舞える。
 少し離れた(お互い目視も侵入も不可な)男湯から返事があった。
「問題ないようですね。では結果を発表します」
 口調も態度もお淑やかなのに、支配を納得させてしまうだけの迫力がある。
「時間内にゴールできた方は全員合格です」
 2日目の天候が崩れたため体力の重要性が非常に増し、失格せずここに到達できたのは男性の元一般軍人2人だけになった。
「他の合格者を発表する前に行軍中の行動の評価を伝えます」
 アウレーリアは伝達を伝達のみでは終わらせずに褒められるところは褒める。
 この地方で採用されない場合でも、帝国のどこかで公の組織に採用されるだろう人材がほとんどなのだ。
 支配者側の人間としては当然の配慮であり、実際に行うのは難しい行動でもある。
(問題はあの子(ハーフリングの授恵者)ね。躾に使う手間暇以上の価値があるかどうか……)
 アウレーリアは、1地方を預かってきた一族として甘い判断はできない。
 合格者を少し追加で発表した後、試験の終了を宣言した。
「体も冷えているでしょうし、きっと気持ちいいですよ!」
 今のトーラは押しが強い。
 種族とクラスが同じ人間に対する親近感はあるがそれが主な理由ではない。
(今回の依頼は指揮官候補の登用試験です! わたしには過ぎた役目かも知れませんけど、試験官として見定めるだけじゃなく、試験の目的のため全力を出します!)
 ネーベルベルクの地も、帝国全体も、喉から手が出るほど人材が欲しいのだ。
 人材を見つけ出すのも大事だし育てるのも同じくらいに大事だ。
 優しくかつ逃げられないように面倒を見てあげながら試験を受けた理由を聞き出す。
 トーラは否定は返さず肯定か最低でも保留で反応し、人間不信から行動に接しても相手に届く言葉と態度を慎重に選択する。
「ネーベルベルクさんは依頼でご一緒した事がありますけど、貴女を悪い様には扱わないと思いますよ」
 気配の質と強さを相手に近づける共感を抱かせる。
「利害の一致という事で考えてみてはどうですか? 貴女は労力の対価に報酬と地位を得て、テオドールさんは有能な人材である貴女を雇える。Win-Winの関係です」
 世を拗ねてはいても墜ちきっていない(メドゥの指先に参加など考えもしない)子供など、トーラにとっては手のひらの上で転がせる存在だった。
(トーラさんであれば大丈夫でしょうが……)
 見た目は麗しくてもキリアンは男風呂である。
 試験中助けた男達から感謝の言葉を受け取りながら、女風呂にいるはずの少女(授恵者)のことを考える。
(仕事柄の話において、信用とは労働の成功の結果として報酬を与え、受け取るものです。それに向いていないのは本人も分かっているようでした。それでも、必要とされたかったとか……?)
 人材に育て上げるのは大変だなと、感じていた。
(啓示でも「トラブルメーカーは実際不向きだし戦力不足もダメです」と出ていますが、「フラグをいくつも立てる必要があるかわりに上限が高いです」とも出ています。……それにしても良い湯加減です)
 フリーダは女風呂にいることで役目を果たしている。
 防具を外した状態でも前衛(フリーダ)を突破できる人間は冒険者を除けばこの場に存在しない。
(試験中に他人と揉めた方は難しいでしょうね。他人との協力ができない人材が指揮官として戦力になるのか……と)
 体に芯まで温まってきた。
(今回は寒い地域で活動しましたし、温泉の温かさが身体に良いですね)
 外にはまだ、雪が舞っている。

●
「合格者はネーベルベルク領の公僕として働くことになる。故に規律こそが全て。はねっかえりやはみ出し者は組織の癌といえよう」
 ナタリアは、テオドールが採用保留とした少女(授恵者)の扱いについて苦言を呈する。
「此度の雪中行軍に効果はあった」
 優秀な冒険者5人が知恵を絞って優れた技能を振るった結果は素晴らしい。
「しかし元が低すぎる者は1つの試験だけでは普通に戻れない」
 善意も悪意もない、冷静な評価がこれだ。
「ええ、ええ、それはその通り」
 個人的武勇は凡人(非戦闘員)でも組織運営では凄腕のテオドールが悩んでいる。
「だけど冒険者じゃない授恵者との縁は希少なんだよ。今回見送ったら次はいつ採用できるか……」
 ナタリアに対しては、課業時間外の口調で本音を口にする凄腕官僚であった。

 今回合格した者はテオドール・ブフマンのもとに残り、採用されなかった者は紹介状を受け取り帝国各地へ散った。
 唯一の授恵者はこのまま解き放つと完全に身を持ち崩しかねないため、採用を保留にしたまましばらく様子を見る予定らしい。

マスターコメント

 お疲れ様でした。
ショートシナリオR

ショートシナリオR普通 報酬:標準5 / 4〜8人

2023年03月02日 15時08分02秒 公開

成功

相談掲示板

  1. トーラ

    トーラです。 よろしくお願いします! わたしで成立ですね。 とりあえず、身を隠して受験者の人達をこっそりサポートしようかなと思っています。 魔獣の対応については基本受験者に任せて、危なくなるまでは様子見で良いですよね?

  2. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    ん、無事に成立ですね。お集まりいただきありがとうございます。 これは試験ですので、基本的に自力で突破してもらうのが前提です。 が、遭難や命に関わる怪我があってはいけませんので、その場合は迷わず救助をお願いします。 受験者の多くは経験豊かですが、ほぼ非授恵者なので一歩間違えば容易く死んでしまいます。 困難をコントロールしつつも、いのちだいじに、で参りましょう。はい。 あ、皆様もし余裕があれば、彼らのサバイバルを観察・評価してあげてくださいな。 たとえ身体能力では授恵者に敵わずとも、知恵と工夫で乗り越える者を私は高く評価いたします。

  3. トーラ

    わかりました。 魔獣に関わらず試練には立ち向かって貰うという事ですね。 観察・評価も了解です! それと、トラブルを起こしそうな授恵者の子について、気になるので良く見ておく様にしようと思います。

  4. ナタリア・フィッツジェラルド

    ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 リアの従者という事もあって面接官の1人にして、志願兵の監視役や万一の際の救護班兼医療隊員として動くつもりだ。 1泊するにあたってゲルの用意もするが、あくまで彼らの為にしてやる事はそれくらいだ。 あとリア、今一度確認するが強力な魔獣相手とされるケース以外で、私の助力を乞うた者は確実に救助する代わりに不採用とするが宜しいか?

  5. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    ナタリアも手伝ってくれてありがと。 過酷な環境で、怪我人や要救護者が出る可能性は十分あります。 ヒーラーの貴女がいれば、いざという時にも心強いでしょう……勿論、合否は別ですが。 彼我の戦力を判断して、勝てない相手は回避するのも訓練のうちだと思います。 参加者の状態確認のためにも、途中でチェックポイントのゲルを設置するのは良さそうです。 もし辿り着かない者がいれば、捜索に向かわねばなりませんし……。 高速移動・搬送用の荷馬車を用意しておきます。余裕があれば、テレパスもあると良いかも?

  6. トーラ

    なるほど。 ではわたしもテレパスを用意していきますね。

  7. ナタリア・フィッツジェラルド

    とりあえず、スタッフの人数不足を懸念して愚弟にも来てもらった。 奴にもテレパスと看破で監視役と捜索役を兼ねる形を担わせて貰ってな。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0