【聖祭】聖夜ニ徘徊スル死者

おおくまねこ

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シナリオID:2694

オープニング

●
「ペトロ。お前があの奇妙な死体の第一発見者だそうだな。いつ、どこであの死体を見つけた? さあ、申せ」
「……」
 それは聖霊節(ユールフェス)の季節の、冬にしてはやけに生ぬるい風が吹く日の夜のことだった。殺人事件発生の通報を聞き、ストゥーバ村に駆け付けてきた代官(地元領主)が第一発見者の男に問いかけると、男は俯いたまま震えるばかりだった。

「どうした? なぜそんなに震えるのだ?」
「お、お代官様……オラ、あんな恐ろしいもの見たのは初めてで……なんと、なんと言ったらいいか……」
「落ち着くのだ、ペトロ。ここは安全だ……おい、ホットチョコレートを持ってきてやれ」
「お代官様、あれは来賓用の高級品で、庶民が飲むようなものでは……」
「構わぬ」
 ペトロは代官の部下が持ってきたホットチョコレートをごくごく飲むと、落ち着いたのか、口を開き始めた。

「ありがとうございます。お代官様。こんなうめえもんは初めて飲みやした。
 ……オラがあの、穴だらけの死体を見つけたのは、明け方でさあ。田んぼ道のあたりで犬を散歩させてたんですが、急に犬が足を止めてキャンキャン吠え始めました。まるで、何かに怯えてるみてえに……。そんで、吠えてる方を見てみたら、道端に人が倒れているのが見えまして……」
「続けよ」
「それで、助け起こそうと近づいたんですが、そしたら、そいつはもう死んでたんですよ! 血まみれで、全身、穴だらけになって! 凄い数のカラスがたかって死体を漁ってましたが、うちの犬が吠えたのでみんな逃げていきました」
「お前が見つけた時、すでにその者は死んでいたのだな?」
「はい。間違いありません。まるで、獣に食い荒らされたみてえな、ひでえ状態でした。……カラスがたかってたんで、実際食い荒らされたんでしょうけど。ああ、思い出したらまた震えが……」
 また、ペトロの膝が笑い出した。

「ふむ。すまんがペトロよ、もう少し話を聞かせてくれ。死んでいた男に見覚えはあったか?」
「いえ、見た事ないやつでした。村のモンじゃねえことは確かです」
「そうか」

 代官は口元に手を当てて考え込む。そう、この変死体は身元が分からないのだ。遺体を検死した神父や野次馬にも尋ねてみたが、誰も死んでいた男に見覚えがないのだという。遺体の所持品も検分したが、身元が分かりそうなものは何も持っていなかった。
(この男はどこのどいつなんだ? なぜこの村の道端で死んでいた?)
 非常に気になるが、もう一つ代官が明らかにしなければいけないことがある。それは、犯人が誰かということだ。代官は男の死体に残った奇妙な痕跡から、これは魔獣やクリーパーの仕業などではなく、「他殺」だと踏んでいた。せめて足跡でも残っていればいいのだが、降り続ける雪が現場の痕跡を消してしまったのだ。

「ペトロよ。もう一つだけ教えてくれ。この死体には、『無数の人間の歯型』が付いていた。これは恐らく――殺人事件なのだ。犯人らしき人物を見たりはしなかったか?」
「いえ、あの死体を見つけた時、周りには誰もいませんでした」
「――そうか。聞きたいことは終わりだ。もう行って良い。村人達には、事が解決するまで外出は控えるように伝えよ。お前もな」
「へえ、お代官様。仰せの通りに。あと飲み物、御馳走様でした」

 ペトロは代官にペコリと頭を下げると、退室していった。残された代官は自分もホットチョコレートを一杯飲んだ後、頭を抱えた。
「まったく、わけがわからん! よりにもよって聖霊節(ユールフェス)にこんな事件が起こるとは……。これは私ではどうにもならんな。冒険者ギルドに依頼を出すとしよう」

解説

目標:全てのアンデッドの撃破。 舞台:エラトゥーン都市同盟辺境の村、ストゥーバ 依頼人:地元領主 状況:都市同盟辺境の村で変死体が発見されました。死体の痕跡から領主は犯人を超常の存在と見ています。冒険者達の使命は、犯人(できれば被害者も)を突き止め、村から脅威を取り除くことです。 備考:朝からずっと雪が降っている。 ●心霊スポット:死体が消える井戸 ストゥーバ村の外れにある古井戸。動物の死体や骨を放り込み、一晩経つと跡形もなく消えるという怪奇現象が発生する村の心霊スポット。また、井戸の付近では時折幽霊が出るという噂がある。 また、井戸の近くには荒れ果てた家がある。 ●登場NPC(死者を含む) 身元不明の死体 村はずれの心霊スポットに続く道端にて発見された身元不明の変死体(男)。遺体は損傷が激しく、カラスにも食い荒らされていたが、なぜか「人間の歯」で食いちぎられた痕があった。 現在は村はずれの教会に遺体が回収されている。 ダリス神父 村の中心にある教会の神父。訪ねれば犠牲者の亡骸を見せてくれる。非授恵者。 村人 悪霊騒ぎに怯え、みんな自宅に引き籠もっている。冒険者が家に近づくと窓や扉を少しだけ開けて様子を窺う。 白ワンピースの女 身長3メートルのキメラゾンビ。『死体が消える井戸』の中から出現する。服の下に複数の死体を繋ぎ合わせた痕跡がある。タフでパワフル。 口裂け女 「ワタシ、綺麗……?」 口が耳まで裂けている女のアンデッド。村と井戸を繋ぐ田んぼ道に出現する。エーテルで世界を認識しているため、強いエーテルを持つ者以外はぼんやりとしか見えていない。うわ言を口にするが、生前の妄念に支配されている為意思疎通は不可能。 正体はゾンビではなく怨霊であり、倒しても10ラウンド経つと復活してしまう。復活を阻止する為には村のどこかにある彼女の怨念の根源(本体)となっている遺骨を破壊するか、聖職者がお祓いをする必要がある。 移動力:7 噛みつき 歯による近接攻撃。顎の力が非常に強いため、魔獣やクリーパーの爪や牙に匹敵する破壊力がある。 高速移動 『ホライゾナルジャンプ』に酷似したスキル。 『狂イ牙』 『殺界』に酷似したスキル。メインアクションのタイミングで使用する。 死霊術師 どこかにアンデッドを製作した死霊術師がいるはずだが……? 動物霊 廃屋を彷徨う痩せ細った半透明な犬。撃破可能だが成仏させることも可能。

マスターより

こんばんは。おおくまねこです。一応【聖祭】って付いてますが、メリークリスマス! という雰囲気とはかけ離れた内容のシナリオですね。ホットチョコレートがかろうじてクリスマスを演出しているぐらいでしょうか(クリスマス映画のホームア●ーン2にも出てきます。ホットチョコレート。ちなみに和訳の問題で実態は普通にココアだそうです)。 さて、今回はホラーなアンデッド退治シナリオです。アイテム上限強化も入ったので敵のステータスはちょいと強めに設定しております。怖いの好きな方はよろしくお願いいたします。

リプレイ

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 冒険者達がストゥーパ村に着くと、村は静まり返っていた。
「むらびとたちが……かわいそう。はやく、あんしんさせて……あげたい、です」
 家の中からの視線を感じつつ、ミゼリア・L・ステュクスが言った。雪が降っているのでとても寒いのだが、ミゼリアはいつものボロ布を着ていた。温度耐性を持っているので、特に問題はないようだ。男性陣は目のやり場に困るかもしれないが。
「そうですね。早く犯人を捕まえましょう。まずは犠牲者の遺体を見てみましょうか」
 クローリカの言葉に冒険者達は頷き、遺体が置いてあるという教会を目指した。

「こんにちは。冒険者です。領主様の依頼でやってきました。調査の為、亡くなられた方の亡骸を見せていただきたいのですが」
 シルク・メイプルリーフは神父へと挨拶した。
「ようこそ、ストゥーバ村へ。話は聞いております。どうぞ中へ」
 神父は冒険者達を招き入れ、霊安室へと案内した。

「それでは、失礼いたします」
 グレイブ・ヤードは死者に祈りを捧げた後、棺を開けた。中に入っていたのは、傷だらけの惨たらしい遺体だった。しかし、冒険者達は遺体から犯人捜しのヒントとなる情報を得るべく、遺体の検分を始めた。

「穴だらけだね……まるで獣に襲われたようだ。けど、歯形が妙だ。肉食獣っぽい感じじゃないね」
「カラスがたかっていたらしいが……嘴の痕は死後についたものだろうな」
 アラン・スミシーの言葉にセリオス・オーガストが相槌を打った。

「これは……人間に噛まれた跡に見えますね」
「人間の顎でこのようなことが可能なのでしょうか?」
 シルクが口を挟むと、検死を見守っていた神父が口を開いた。
「授恵者なら、できなくはないですが……それよりもアンデッド……ゾンビや吸血鬼が犯人、という可能性が高いかと」
 クローリカの言葉に、冒険者達は頷いた。

「体の中も調べてみましょう。人体には色々と隠せる場所もありますから」
 グレイブは解剖せずに調べられる範囲で内臓も調べてみた。結果、特に遺体の内臓や傷口には不審なものは見つからなかった。遺体を一通り確認し終えた後、冒険者達は神父に遺体の服装や持ち物について尋ねてみた。

「服や持ち物などは何かあります?」
「犠牲者は指輪をしていました。服と靴はこちらです」
 神父が持ってきた服は血だらけでズタズタに引き裂かれていた。靴は血がついているが、特に変わった所はない。

「旅人って感じの服装じゃねえな。この村の住人じゃないんだよな?」
 ケン・Z・ブラッドリーが尋ねると、神父は頷いた。
「はい。それほど人口の多い村ではないので、村人は互いに全員が顔見知りです。しかし、こんな人は知りません」
「なるほど。こいつは部外者ってわけだな」
「はい」
(嘘はついていないな……犯人がアンデッドなら、葬儀を行う神父もグルの可能性があるが)

「どうか安らかな眠りを」
 シルクが死者に祈りを捧げた後、冒険者達は教会を後にした。

●
 冒険者達は村人への聞き込みを終えた後、また教会に戻ってきた。

「実は、事件発生の一月ほど前に女性が一人行方不明になっていたようだ。もしかしたら事件に関係あるかもしれない。結婚式の前日に急にいなくなったそうだ。捜索はされたみたいだが、『結婚が嫌になって逃げたんだろう』と結論づけられたみたいだね」
 領主の館に行き、この村や近隣の資料を閲覧してきたアランが言った。

「その話なら村人も言っていたな。あと、いかにも怪しい場所の話を聞いた。『死体が消える井戸』だそうだ。聖霊節(ユールフェス)と言うより夏の怪談寄りな話だよな」
 ケンはそう言うと、村の地図をテーブルの上に置いた。地図には村はずれに印が書き込まれている。村人の話では、村はずれにある古井戸に獣の死体を投げ込むと、一晩で消えるという心霊スポットがあるらしい。

「『通常』遺体はそれなりの期間をかけて腐敗し大地に還るものです。一晩、というのはまぁおかしい話ですね」
 グレイブは溜息を吐いた。

「あ、怪しい……では皆でそこに向かいましょうか。地形の都合上、事件現場も途中で通るようですし、ちょうどいいでしょう」
 クローリカは雪が積もった田んぼ道の方を指差しながら言った。

●
「みんな、転ばないように気を付けろ。雪が積もっている」
 先頭を歩いていたセリオスが言った。セリオス本人は積雪環境に適したスキル《バランス感覚&温度耐性》を装備しており、十全に活動できている。

「! みんな、止まれ。怪しい女がいる」
 セリオスが警告した。進行方向から、村人らしき格好の女がゆっくりと近づいてくる。だが、どうも様子がおかしい。首が変な方向に傾いているし、歩き方もぎこちない。よく見れば、口は耳元の辺りまで裂けていた。

「ありゃ、どう見てもアンデッドだな……。あいつが犯人じゃねえか?」
「わたしも、そうおもいます」
 ケンがそう言うと、ミゼリアは頷いた。他の者達も異論はないようだ。

「すまんが、俺は先に井戸の方に行く。あいつの相手は任せた。ゾンビがいるなら死霊術師もいるだろうしな」
 なんとなく急いだほうがいいと直感していたケンはそう言うと、水の張っていない田んぼに降り、ゾンビを迂回して走り出した。残りの六名はアンデッドと交戦すべく、準備に入る。
「加護をかけますね」
 シルクが神に祈りを捧げると、妖しいピンク色のオーラが冒険者達を包み込んだ。

●
「まずは様子見だ」
 口裂け女アンデッドを弓の射程に捉えたセリオスは、眉間へと向けて矢を放った。
ドス。
 セリオスの矢が女の眉間に突き刺さった。しかし、セリオスの一撃に耐えた女はキロリとセリオスの方を睨み付け、刺さった矢を引き抜いた。

「気を付けろ! こいつはただのゾンビじゃない!」
 警戒レベルを一気に上げたセリオスが叫んだ。セリオスは熟練の冒険者だ。相手が並のゾンビならば、首から上が丸ごと吹き飛んでいる。それがあの程度のダメージということは、相手が尋常ではない量のエーテルを有しているということに他ならない。

「強敵だね! みんな、油断せずに行こう!」
 アランは前に出ていたミゼリアに堅甲を付与しつつ、自分は後ろへと下がった。
「ワタシ……キレイ?」
 女アンデッドがうわ言のように呟く。その直後、姿が冒険者達の視界から掻き消えた。

(速い!)
 次の瞬間、クローリカの肩に女の歯が食い込んだ。尋常ではない加速で一気に距離を詰めたアンデッドが噛みついたのだ。肩の肉を抉り取られ、クローリカは痛みに顔を歪めた。
「このっ!」
 クローリカはすかさず細剣をアンデッドの顔へと突き刺した。そのまま体を蹴ってアンデッドを引き剥がし、態勢を立て直す。アンデッドの方はクローリカが剣に宿らせていた破壊のエーテルに侵蝕され、少しエーテルが弱くなったようだ。
(何か、ゾンビにしては感触がおかしいような……?)

「シスターバリア!」
 シルクがクローリカに旋棍(トンファー)を向けると、クローリカの体の前に薄ピンクのハート型エーテル障壁が展開された。

「迷える魂ですか、どうか安らかに」
 グレイブは無銘の祭祀刀を一閃し、女の脚を切りつけた。肉が裂かれ、血が流れ、鮮血が勢いよく噴き出す。
(……?)
 その光景に、グレイブはささやかな違和感を覚えた。

「……たおします」
 ミゼリアは漆黒のエーテルを纏ってアンデッドに突進すると、無表情のまま処刑剣を振り上げた。ミゼリアはホムンクルス(一度死んでいる身)だ。自分自身が生ける屍のようなものだと思っている彼女は、アンデッドを恐ろしいとは思わない。ミゼリアの黒剣はアンデッドの肩を容易く切り裂き、右腕を吹き飛ばした。

「ヒールだ!」
 アランは負傷した仲間達に向けてハイパーヒーリングオーラを飛ばした。癒しの光を受け、クローリカの傷が塞がっていく。

「不気味な奴だな」
 セリオスは再びを矢を放った。敵は白兵戦特化型のようだが、モタモタしていれば味方の損害が広がっていくだろう。それに、先に進んだケンのことも気がかりだ。

「ワタシ……キレイ?」
 口裂けが再びそう呟くと、冒険者達の全身に悪寒が走った。その直後、背後に視線を感じたクローリカ、ミゼリア、シルク、グレイブは咄嗟にその場から離れようとしたが、腹部に熱い痛みを感じた。
(噛まれた……!?)
 四人は全員腹に攻撃を受けていた。あのアンデッドの攻撃だろう。正体は判然としないが、殺界に近い性質の範囲攻撃のようだ。

「範囲攻撃ですか、厄介ですね」
 クローリカは再び突きを放ち、アンデッドの喉を切り裂いた。痛覚はないのだろうが、衝撃でアンデッドは少しよろめいた。その隙を見逃さず、ミゼリアとグレイブもアンデッドへと刃を叩き込んだ。
「すぐ治します」
 シルクはクローリカにヒールをかけた。

●
 口裂け女はしばらく孤軍奮闘していたが、数の不利を覆すことは敵わず、とうとう消滅した。ヒーラー達は仲間の負傷を治し、その場を後にした。だが……。

「ワタシ、キレイ……?」
 冒険者達がケンを追おうとしたすぐ後、耳を覆いたくなる声が、後ろの方から聞こえてきた。

●
「ここが例の井戸か……」
 噂の井戸に到達したケンが井戸を覗き込もうとすると……。
「アアアア」
「!」
 井戸の底から白いワンピースを着た女のアンデッドが飛び出して来た! ケンは反射的に太刀を抜き、女アンデッドに一撃を入れた。アンデッドはよろめいたが、お構いなしにケンを殴り返してきた。小さくないダメージにケンは血を吐きながら、井戸から出現した巨大な敵を見つめる。
「でかいな。キメラゾンビか?」

 その女は異様に背が高かった。身長は3メートルはあるだろう。巨人なのではなく、縦に長いのだ。ゆらゆらと不気味に揺れるその姿は、尺取虫を連想させた。
「あんたを倒さんと井戸は調べさせてもらえんようだな」

●
 一方、ケンを追う冒険者達は、井戸に向かって走りながら復活したアンデッドの対応策を練っていた。
「怨霊なので不死身なのかもしれませんね」
 シルクが困り顔で言った。
「みなさんは……さきに……」
 ミゼリアは振り向き、剣を握り締めた。
「倒し切らずに両脚を破壊すれば時間を稼げるかもしれません。井戸を目指すのはその後にしましょう」
「よし、その手で行こう!」
 グレイブの言葉にアランが頷く。グレイブの作戦に乗った冒険者達は、復活した怨霊の機動力だけを奪ってから井戸に向かう方針を取ることにした。

●
(タイマンはちょいと厳しい相手だったな。まさか首を落としてもまだ動くとは)
 ケンは荒い息を吐きながら、自身にヒールをかけた。ヒールの光が消えてなお、その体はボロボロだ。白ワンピースの方はすでに頭部を失っており、全身傷だらけだが、まだ動いている。このまま長引けば先に自分が倒されるだろう。
「ウオオオ」
 獣のような唸り声を上げ、白ワンピースがケンを追撃すべく距離を詰めてきた。しかし、その時ケンの背後から巨大な光の矢が飛来し、白ワンピースの胴を貫いた。

「ケン、大丈夫か?」
「おう、なんとかな」
 セリオスの問いかけに血だらけのケンは笑った。怨霊を撒くことに成功した残りの六人が追い付いたのだ。

「うわ、なんですかあれは! 肩車したゾンビですか!?」
 到着したクローリカは白ワンピースの異様な体型に驚いた。
「ゾンビ……たおします」
 ケンと白ワンピースの間に割って入ったミゼリアは、血の付いた黒剣を構えた。

●
 冒険者達は白いワンピースのキメラゾンビを撃破した後、井戸の調査を開始した。

「井戸の奥に通路がありました。廃屋の方に繋がっているようです」
 井戸の底から出て来たグレイブが言った。古井戸の中には横道があったのだ。通路は上から覗き込んでも見えない位置に巧妙に隠されていた。冒険者達が井戸の隠し通路を進むと、鍵のかかった扉に出くわした。

「こわしますね」
 ミゼリアは処刑剣を正眼に構えた。
「死霊術師がいるかもしれない。みんな、注意してくれ」
 アランが警告を発した後、ミゼリアの大剣(マスターキー)が唸り、扉は派手な音を立てて吹き飛んだ。

「誰もいないようですね」
 部屋に飛び込んだクローリカが言った。扉の奥にあったのは、生活感溢れる地下室だった。冒険者達が慎重に部屋の中を探索すると、服や新鮮な食べ物、死霊術関係の書物や動物の死体、バラバラの骨などが見つかった。
「断言はできないけど、被害者と同じぐらいの体格だね。もしかすると、被害者の男性が死霊術師だったのかも」
「状況から判断すると……その可能性は高いでしょうね」
 アランの言葉にシルクが頷いた。冒険者達がさらに探索を進めると、部屋の奥に禍々しいエーテルを放つ祭壇に人間の遺骨が仰々(ぎょうぎょう)しく置かれていた。

「女性の骨……もしや、あの怨霊のものでは?」
「なるほどな。こいつがアンデッドの本体ってことか? 破壊することはできそうだが……」
 グレイブの言葉に、ケンは鞘に手をかけた。
「いえ、村に持ち帰ってお祓いをしてもらいましょう。死者の魂を浄化できれば恐らく怨霊は消滅するはずです」

●
「こ、これは!」
 冒険者達は地下室から事件の調査に使えそうなものや、祭壇に飾られていた遺骨を持ち出し、教会に持ち込んだ。

「この遺骨がアンデッドを生み出しているようです。お祓いをしていただけますか?」
「分かりました。やってみましょう」
 シルクが頼むと、神父は頷いた。
(貴女が誰なのかは知りませんが、そろそろ眠りましょう?)
 グレイブは神父が行う儀礼を静かに見つめる。

「迷える魂よ、どうか主の元へ帰りなさい。安息は神の国でこそ与えられる……」
 神父が遺骨をお祓いすると、骨を取り巻いていた不気味なエーテルが次第に薄まり、最後には消えた。

「さて、一応試してみるか」
 ケンは切り落とした白ワンピースのゾンビの歯型と、犠牲者の男の傷跡が一致するかどうかかを試していた。

「……合わねえな。じゃあやっぱり、殺したのは白ワンピースじゃなくて口裂け女の方か」
「でしょうね。噛みついて攻撃してきましたし」
 ケンの言葉にクローリカが頷いた。

「神父。こいつには見覚えはねえか?」
 ケンは持ってきた白ワンピースの頭を神父に見せた。

「こ、この女性は……!」
 神父は驚きの声を上げた。
「やっぱり、村の方かい?」
 アランが問うと、神父は頷いた。

「はい。10月頃に亡くなられた方です。当教会でい、埋葬したのですが……」
「埋葬されてから死体が盗まれたってことか。あんたは気づかなかったのか?」
 ケンが問うと、神父はまた頷いた。

「はい。恥ずかしながら。お墓の掃除は半月に一度程度でしたから……」
「――そうか」
 ケンは神父の態度をよく観察していたが、彼はシロだと判断した。

「悪しき死霊術師は去りました。これでもう、この村から死体が消えることはないでしょう」
「そうですね。これで、あの女性達もゆっくり眠れるはずです」
 グレイブとシルクはもう一度、鎮魂の祈りを捧げた。

マスターコメント

犠牲者の正体の特定に成功し、アンデッドも撃破できましたので、結果は大成功とさせていただきます。 アンデッドと死霊術師、そしてOPで死んでた人の関係は御想像の通りでございました。井戸で死体が消えるのも死霊術師がパクッていたから、という単純なトリック(?)です。 ちなみに怨霊の遺骨をお祓いせずに破壊した場合、その日の晩の夢枕に女の霊が立つというホラーな隠しギミックがありましたが、そこも回避されてしまいました(笑)
ショートシナリオR

ショートシナリオR難しい 報酬:多い7 / 4〜8人

2023年01月15日 18時38分14秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ミゼリア・L・ステュクス

    ……ウォーリアの、ミゼリア……です。よろしく、おねがいします……ね。 とりあえず……タンクのうごきを、するつもり……です。 おはらいとか、じょうぶつさせたりとかは、できないので…… 白ワンピースのゾンビや、くちさけ女の、足止めとか……そういう感じに、なりそうかなと……。

  2. No.2

    シスターシルクです 戦闘時は回復役と前衛を務めますね やはり小屋が怪しいと思うのですが順番に事に当たりますか? それとも手分けして?

  3. グレイブ・ヤード

    ヒーラー、グレイブ・ヤードです。 人数的に手分けして早期発見に努めたほうがよさそうな気もします。 持久戦はなかなか難しそうですので

  4. アラン・スミシー

    どうも、ヒーラーのアラン・スミシーだ! 相手さんの出る条件はわかっているから、アンデッドの索敵の必要性が薄めなのは 幸いだけれども、死霊術師をなんとか突き止めたいね。 あと、個人的にはご遺体の身元も特定したいところだ、 このへんの調べ物周りをきっちりするねえ。

  5. クローリカ

    ウォーリアのクローリカです。 身元不明のご遺体の方は、アンデッドに食べられてしまったのでしょうか…。 ワンピースのキメラゾンビは戦って倒せば大丈夫みたいですが、口裂け女はどうします? 遺骨を探すか神父様に頼むか…、そういえばシルク様でもお祓いは出来るのでしょうか?

  6. アラン・スミシー

    遺骨探しも兼ねて調べ物したいけど、どうアタックしたものかだね……。 怨念の根源、ってことだから、怨念を抱くだけの理由があると思うのだけれど、 村に伝承とかあれば調べ上げたいかな。遺骨が古い、つまり昔から 存在するものであれば一種の土着的な恨みだろうし、新しいなら今回の騒動のために 誰かが他殺された、ないしは遺骨が盗まれたということになるし、 このあたりは村人の失踪や死亡があったかどうか、 もしくは過去に事件があったかだとかで村の記録をあたりたい~。 お祓いできるかどうかだけれど、神父さんに試みてもらうのならば最前線に 非戦闘要員を立たせる必要があるから、動物霊を成仏させるか試してもらって それができたら連れ出す形はどうだろうか? おじさんの提案はこんな感じー!

  7. グレイブ・ヤード

    そういえば「お祓い」はどの辺りでいいんでしょうか? 解呪的なニュアンスで考えればいいのでしょうか? >準備について 雪が降っている環境ですので、防寒関係はしっかりしたほうがよさそうです。 アンデッドは関係ないでしょうけど、我々は正者ですので。 寒さで動けなくなることはないにしても、多少は影響があるかもしれませんからね。 >探索ポイント 一番怪しいのは井戸ですよね。 遺骸が一晩で消えるというのはまあ自然現象的にあり得ないわけですし。 中に誰も入ったことはないでしょうから、何者かが潜むにも、何かを隠すにも有用かと思います。

  8. ミゼリア・L・ステュクス

    てわけ……ですね。 では……わたしは、井戸のようすを、みにいってみよう……かと。 おばけさんたちは……なるべく、じょうぶつ?……させて、あげたい気もしますので…… 襲われたら、戦いはしますが……じょうぶつさせる方法が、わかるまでの……時間かせぎをする……くらいのつもりで、応戦します……ね。 >防寒 ……温度耐性の、スキルを……もっていこうかと、おもって……ます。

  9. アラン・スミシー

    はいはーい!防寒はおじさんも防寒耐性もっていきまーす! 事前にやる調べ物くらいかな、戦闘はヒーリングに集中する形になると思うー。

  10. アラン・スミシー

    防寒耐性じゃないや、温度耐性ね!

  11. No.11

    コレもしかして被害者の方が死霊術師本人だったらと思ったのですけど……いえ、あの荒れ果てた家を調べてみるまではわかりませんよね

  12. No.12

    タフでパワフルと聞いてワンピースの女性も気になりますが聖職者としては未熟なれど口裂け女さんの足止めを請け負いましょう 倒してしまっても構わないのでしょう?

  13. アラン・スミシー

    シルクくん!ファイトだ!?無理はしないでね!? あー、被害者が本人ってオチか……ありえなくはないね。 下調べの方は色々とするけど、全員が温度耐性を持つ場合事実上スキルが一つに限られるし、 人手があるに越したことはないから、それぞれ思ったことを調べた方がいいと思ったかな?

  14. グレイブ・ヤード

    >変死体 そういえばこれも調べてみる価値はありますよね。 触媒を(体内含め)隠しているって可能性もありますし 死体だけど死者じゃないというのが死霊術師的にありそうですし まだ荼毘に伏したわけではないでしょうから、十分確認出来たらきっちり埋葬しておくのもいいかもしれません (回収という表現なので) >行動に関して どこに行くかと何をやるかは皆さんで情報共有できるといいと思います 私は現時点の希望として「古井戸に向かい内部の調査」と考えています。 ロープと照明は必要かなと思いますし、防寒具も準備するつもりです。

  15. アラン・スミシー

    ではこちらはご遺体そのものの調べかな。 埋葬されていないようだし、この寒さなら腐敗も遅いだろうから実際に見ておこう。 あとは、村民に欠員がいるかどうかとか、 周辺で行方不明の人物が居ないか資料面からあたってみようと思う。 あと個人的に村の歴史とか見ておきたいので見ておくね~。

  16. No.16

    ではできるだけ集団行動しつつそれぞれの調査を行いましょう まず私は教会でご遺体を見て 可能であれば冥福をお祈りした後井戸の方へと向かい 途中口裂け女さんが出現したらそちらの対応をいたします

  17. クローリカ

    >行動 遺体などを調べた後にゾンビと口裂け女と戦闘という流れになりますし、私はシルク様に同行しましょう。 行動は攻撃を優先にしますね。

  18. ケン・Z・ブラッドリー

    顔出しが遅れてすまない ウォーリアーのケンだ よろしくな どんなに倒しても必ず復活するという倒しきれない敵というのなら耐久戦しかないわな まぁ・・・簡単に倒せて復活するタイプなら倒して復活の間に調べるとかできるかもしれないがな PL情報だと思うがワンピースの女が死体の継ぎ接ぎってことならもしかしたらこの村の墓地から材料を得ている可能性もある気がするな まず最初にワンピースの女を倒して材料が人のものかどうかを見てみるというのもいいと思う 動物のものが多ければ井戸に投げ込まれた動物の遺骸を利用してるだろうし、人ならそれをどここかから調達する必要が出てくるだろうからな 廃屋も怪しいが、事の次第によっちゃ教会と神父も怪しくなるよな

  19. アラン・スミシー

    フムフム……。先に倒すかのならそれに従おうかな、応戦に付き合うよー。 領主さんがご遺体の身元確認を要求しているから教会に安置してもらってるけども、 ご遺体を見る時いじられてる気配がないかとかも見ておくか……。 神父さんは特に怪しい様子がなければ動物霊除霊ができるか試して欲しいと 思ってるけどもどうしようね?ご一考いただけると幸いだー。

  20. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、同じく顔だし遅くなった、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえずまとまって行動で調査で了解だ。 骨を探し出したほうが効率は良さそうだしな あとは雪が降ってるとあるから時間がたつと積もって足場が悪くなりそうだから気をつけた方がいいかもな

  21. No.22

    調査する方は可能であれば雪の下に痕跡がないかも確認お願いします

  22. No.23

    完全に憶測なので黙っていようかと思いましたが言ってしまいますね 井戸では無く道端にいた男性はおそらく口裂けさんの被害者だと思われます ですが口裂けさんには強いエーテルを持った人しか認識できません つまり被害者の男性は受恵者もしくはそれに準ずるエーテルをお持ちだった可能性があります 井戸に投げ込んだご遺体を食していたのはキメラゾンビさんでその餌にされてたのは野良犬さんとかだったのかもしれません キメラゾンビさんと口裂けさんの関係は不明ですがナニカあると思われます。

  23. グレイブ・ヤード

    現時点で真実はわかりませんから、憶測や予測を持って行動するのは必要なことだと思います。 >戦闘に関して (事前情報で分かっているのであれば) 倒したら復活するのであれば移動できなくさせて置くというのも一つの手ですよね? 四肢のみ破壊して半分埋めておくとかやっておけば調査及び実験の時間はとれそうです。 >雪の下の足跡 これに関してはあれですかね?踏み固められた雪の形跡とかそういうものです?

  24. アラン・スミシー

    推察の方ありがとう、助かるよ。 こっちはご遺体の調査に注力するけれども、アンデッド同士に 何かあるかもしれないという点の推察・調査があれば今後同じことが 起きないように対処できるかもだね……。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0