【鬼哭】ロマンスは犯罪の馨【毒杯】
明乃そら
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シナリオID:2668
オープニング
精神支配から解き放たれ、理性を失くしたゴブリン達。
その暴走を食い止めるべく、ブラックデスは帝国に向けて実戦部隊を派遣する。
だが結果的に、ゴールディは新たな抗争の火種が生じ、更なる混沌の地へと化してしまう――。
ゴールディにある歓楽街『ヘヴンズロウ』――この街はついこの間までとある悪徳商会に牛耳られていたのだが、冒険者の活躍によって一味を追放、今は住民達の手で新たな道を歩み始めたところであった、が――。
「……折角こうして街を取り戻したばっかりなのに、何だかまた騒がしくなってきたね」
新しく街の元締めとなったゴブリンの少女シュリナは、息つく暇もなく降りかかってくる災難に、深い溜め息を漏らして頭を悩ませていた。
「厄介な事態だが、今は街の再建に力を注ごう。ブラックデスが街を離れてしまった以上、俺達が守っていかないとな」
シュリナの幼馴染であるゴブリンの青年エミルは、彼女のサポート役として、元締めの務めを全うするよう助言する。
あの日以来、街の奪還に協力してくれたブラックデスのメンバーが、治安を守ってくれていた。
ところが今回の騒動で彼らも部隊に借り出され、あらゆる方面において人手が不足してしまっている状況だ。
更には一方で、こうした非常事態を好機と睨み、裏で暗躍する連中がいるのであった――。
「目障りな奴らが出払った今こそ、好都合ってモンよ。悪いがちょっくら邪魔するぜ」
ある日、街に乗り込んできた、ガラの悪い荒くれ者の男達。
見るからにカタギの者ではないと判別できる、剣呑な風貌。
ブラックデスと対立しているマフィアの組織『ホワイトライフ』が、構成員の留守を狙って仕掛けてきたのだ。
「ひぃぃ……た、助けてくれぇ! どうか、どうか命だけは!!」
彼らはブラックデスのメンバーがいないのを良い事に、好き勝手に暴れ始めて街中を荒らし回り、住民達は連中の横暴な振る舞いに悲鳴を上げる。
「そこまでだ! 街の秩序を乱す輩は、ボクが許さないよ!」
暴力を振るうホワイトライフに対抗すべく、シュリナが元締めとして勇敢に声を荒げて立ち向かう。
怒気を孕んだ咆哮に、ホワイトライフの面々は動きを止めて、彼女をジロリと睨み付ける。
「こりゃまた、随分と威勢のいい嬢ちゃんだ。お前がこの街を仕切ってるのか?」
集団の中から、白いスーツを纏った一人の男が、ケタケタと笑いながらシュリナの方に歩み寄る。
どうやら彼が、この集団を率いるリーダーのようだ。男はシュリナの前まで近付くと、薄ら笑みを浮かべて名を名乗る。
「俺はジャンゴ。一応、ホワイトライフの幹部をやってるモンだ。お前らをここで潰しても構わねェんだが、一つ、提案をしようじゃねェか」
組織の幹部を名乗るその男――ジャンゴは卑しげに舌舐めずりしながら、シュリナの耳元で囁いた。
「お前、俺のオンナにならねェか? さっきの啖呵に惚れちまってな。言う事を聞けば、街の連中に手は出さねェさ」
今日のところは挨拶だけで、後日返事を聞かせてもらうと告げながら、ジャンゴは手下を引き連れ、場を去っていく。
●プロポーズは突然に?
「――というワケで、そのホワイトライフの幹部と、今度……デートする事になっちゃったんだ」
居住区に戻ったシュリナは、待っていた情報屋のシャルティナ・カッツェに会うや否や、先程あった出来事を困惑気味にたどたどしく話す。
「ソイツはまた災難だったな。とは言え、ブラックデスが街を離れてる今、連中とまともにやり合っても勝てやしねぇぜ」
相手が大手マフィアの幹部とあっては、分が悪い。シャルティナは事情を察しながらも、喧嘩を売るのは得策ではないとシュリナを諫める。
それは十分判っていると理解しつつも、シュリナは突然の事に動揺し、感情的にもこの申し出を受け入れられずにいた。
「しかも交際を断ろうモンなら、嫌がらせをしてくるのは間違いねぇ。コイツはある意味、脅迫だ。だったらアンタはどうするか、こういう時こそリーダーシップが試されるんじゃねぇか、新しい元締めさんよ」
鼓舞するように励ますシャルティナの言葉に、シュリナは大きく頷き、迷いが晴れたような表情を見せる。
「そうだね……ボクがしっかりしないとね。分かったよ、彼の誘いを受けようと思うよ」
シュリナの背後で話を聞いていたエミルは、彼女が下した決断に複雑そうに顔を歪ませ、歯痒い気持ちを滲ませる。
そんな彼の様子に気付いたシャルティナは、思考を巡らせ、シュリナに策を講じるのであった。
「ちょいと案があるんだが……今回の件、アタシ達にも一枚噛ませてくれねぇか?」
悪巧みを思いついたような不敵な笑みを漏らしつつ、依頼の手配を持ち掛ける。
片や、シュリナも同様の事を考えていたらしく、話が早いとシャルティナの意見を了承した。
「奴さんはどうせ格好良いところを見せたい心算だろうから、赤っ恥を掻かせて諦めさせるのが一番だ」
他人の恋を邪魔するヤツは、どんな扱いを受けても文句は言えまい。
シャルティナは不安そうなエミルに視線を送り、後はしっかりフォローを頼んだぜ、と改めて念を押すのであった。
解説
マスターより
リプレイ
賑わいを見せる大通りから脇道に逸れ、薄暗い路地裏を進んでいくと如何わしげな店が立ち並ぶ。
ここで取り扱っているモノは、決して表に出回らない、裏の世界でのみ流通される曰くつきの品。
多くが盗品だったり訳ありのモノであるのだが、中にはお宝めいた品が眠っている……かもしれない。
「気に入ったモンはあったか? 今日は初デートの記念日だからな。特別な品を選んでやるぜ」
白いスーツ姿のスリムなゴブリン、ジャンゴがニヒルに笑い、帽子の鍔を指で上げ、くるりと回ってポーズを決める。
「そ、そうだね……。じゃあ、アクセサリーがいいかな?」
半ば強制的に交際する事になったシュリナは、ジャンゴの気取った言動に若干引きつつ、調子を合わせてデートごっこに付き合うのであった。
贈り物に相応しい品を求めて店を回って見比べながら、惚れたオンナの為にと奔走するジャンゴ。
するとシュリナが一軒の店を指差して、あそこに行ってみようとジャンゴの袖を引っ張り、誘う。
「あんたら、うちで物を買おうってのか。だったらお目が高いねぇ」
店先で二人に話し掛けるのは、赤銅色の鱗の竜人、サイラスだ。
本来であれば別に店主がいるのだが、事情を話すと、好きに使ってくれと代わりに店番を頼まれたのだ。
店内ではリコリス・アデュラリアも客の役としてシュリナ達を遠巻きに見張る。
シュリナの友人を装う事も考えたが、相手はマフィアの幹部、まずは警戒しながら様子を窺う事にした。
実はこの一件、ジャンゴを諦めさせようと、冒険者達とシュリナが仕組んだ計画だった。
そんな事とは露知らず、真剣に品定めする伊達男。そして悩んだ末、綺羅びやかに装飾された緑柱石の首飾りを買おうと交渉し始めた時――店に一人の男が訪れ、店番役のサイラスに声を掛ける。
「この前頼んだモノは用意出来たかな。〝主〟の為にも、手に入れるまで戻れないからね」
身形の良さそうなスーツを纏った青年、商人を演じるロドリック・アルカインが間に割り込みながら話を進める。
「素敵な首飾りですね。彼女さんへの贈り物ですか?」
リコリスがさり気なくジャンゴに訊ね、それを聞いたロドリックは首飾りを譲ってくれないかとジャンゴに頼む。
「そちらは私が先約済みでしてね。主からの依頼で、想い人に贈る為の宝石を必ず持って帰ると約束したので」
ロドリックは商人として、依頼主の恋を叶える為に買いに来た事を説明する。
恋愛絡みを理由とし、対抗心を煽るロドリックの言葉に焚きつけられたか、ジャンゴは要求を拒み、頑なに首飾りを渡そうとしない。
「他人の恋愛事情なんざ知らねェよ。痛い目に遭いたくなけりゃ、とっととうちへ帰んな」
睨みを利かせて凄むジャンゴに、ロドリックは怯む事なく冷静な態度で提案する。
「……では、貴方の言い値の倍で買いましょう。それなら公平な取引ですよね」
資産家らしく、金なら幾らでもあると豪語する。その自信に満ちた立ち振る舞いに、ジャンゴも負けじと張り合おうとするが――興奮気味の彼をシュリナが宥め、店に迷惑だから他のモノにしようと説得する。
「きっと貴女にも相応しい品が見つかりますよ。宜しければ私が見繕って差し上げましょうか」
シュリナに話を合わせつつ、贈り物を一緒に探そうとするリコリス。
勝手に話を決められて、ジャンゴにとっては面子を潰された形でプライドを傷つけられたも同然だ。
女性二人が盛り上がる中、一人苛立ちながら、怒りを抑え切れずにロドリックの胸座を掴み上げる。
「ここでの暴力沙汰は彼女を悲しませるだけですよ。もし力で解決したいなら、相応しい場所で行いませんか?」
熱り立つジャンゴの手を払い除け、眼鏡をくいっと押し上げながら、ロドリックは決闘での決着を申し出る。
「誰に喧嘩を売ったのか分かってんのか? まあいいさ、俺が勝ったら首飾りはもらう。文句は言わせねェぜ?」
自分に力勝負を挑むとは、馬鹿な奴だとせせら笑い、ジャンゴは喜び勇んで決闘の約束を交わすのだった。
●恋のゲームはほろ酔い気分
「マフィア同士の抗争に、政略結婚は切っても切れぬ物ではあるが。知らない仲でもないし、乗り気でない付き合いを認めるほど無関心ではないからな」
ルチル・プルメリア・グレイハーツは酒場のカウンター席で一杯飲みつつ、シュリナとの関わりについて思いを巡らす。
強引な求愛に良い未来があるとは到底思えず。見知った顔が困っているなら、力を貸そうとこの依頼を受けた。
何よりも、金と力を笠に着る求婚者にはキツくお灸を据えないと。そんな腹積もりで標的が現れるのを待っていた。
「拗らせた恋ほど厄介なモンはねぇ。奴さんも大人しく手を引いてくれりゃいいんだが」
情報屋のシャルティナ・カッツェがルチルとの酒の席に付き合いながら、今後の段取りを打ち合わせていると――。
「……ったく、今日はムカつく日だぜ。とりあえず、決闘の前に景気付けの酒でも飲むか」
扉を勢いよく蹴って入ってきたのは、白いスーツ姿の伊達ゴブリン。
その横ではシュリナが戸惑い気味に店内を見回し、席に座っているルチル達と目を合わせる。
「おやおや、そこのお兄さんは荒れてるようだね。ひょっとして、彼女にいいところを見せられなかったかい?」
不満を露わにしているジャンゴに、ルチルが揶揄うような台詞を吐いて、グラスの中の酒を飲み干す。
「あァ? 生意気な口を利くじゃねェか。俺を一体誰だと思ってるんだ?」
脅すような口調で迫るジャンゴに対し、ルチルは落ち着き払った態度で懐からカードを取り出してみせる。
「おいおい、ここで喧嘩は御法度だよ。勝負なら、賭場らしく――賭け事で決めようじゃないか」
裏社会にも暗黙の掟が存在する。ルチルがカード勝負に誘うのは、勝算があるからこそなのだ。
「連れの嬢ちゃんに格好良いトコ見せたいんだろ。勿論、受けて立つよな」
ここで引き下がっては面子が立たない。シャルテイナの煽り文句に乗せられて、目に物見せてやるぜとジャンゴが勝負の席に着く。
ゲームのルールは、1枚のカードを額に当てて、数字の強さを競うものだ。
因みに今回は特別に、賭け金の代わりに負けた方が酒を飲む。
他にも、先に酔い潰れた方が相手の全財産を持って行っても構わない。ただし飲み比べだとこっちが勝ってしまうがね、と注意を促すルチルだが、ジャンゴには挑発しているようにしか聞こえていない。
始まる前から冷静さを欠いているのが、見て取れる。駆け引きは余り得意ではなさそうだと、ルチルは内心ほくそ笑む。
一対一の真剣勝負。シャルティナとシュリナは観客として、勝負の行方を静かに見守る。
序盤はジャンゴが連勝し、その都度ルチルはルール通りに酒を飲み続ける。
しかしこれも全ては戦略の内。こっそり放っておいた栗鼠のラトとエーテルリンクで視覚を共有。自分の手札も視える以上、後は気付かれないよう演技をするだけ。
最初に負けているのは、相手を油断させる為。酒への耐性も備えているが、少し酔ったフリをしてみれば、向こうは調子に乗って警戒心も薄くなる。
その隙を逃す事なく、後半戦は一転してルチルが攻め立て、遂にジャンゴは限界を超えてしまう。
「ま、まだ……おわっれねぇ……。つぎは、れったい……おれさまが……」
呂律が回らなくなってきているジャンゴを見兼ね、シュリナがもうここまでとストップを掛ける。
酩酊し、醜態を晒す伊達ゴブリンに、ルチルはちゃっかり全ての酒代の請求書を手渡すのだった。
●最後に勝つのは
「……本当に今日は何て日だ。散々な目に遭いやがる」
まだ多少の酔いは残っているが、ジャンゴは気力で堪えて、目的地の闘技場へと足を向ける。
これ以上、シュリナに無様な姿を見せられない。男としての意地が彼の心を突き動かし、己の魂を奮い立たせる。
そして漸く決闘の場に辿り着いた時、彼を待っていたのは――。
「随分と遅かったな。寄り道して賭け事にでも興じていたかい?」
装備を整え、武器を手にしたロドリックと、リコリス。更には店番役のサイラスと、ルチルまでもが同じ闘技場の舞台に立っていた。
「お前ら……全員グルだったのか!?」
自分が嵌められたと悟った瞬間、ジャンゴの酔いはどこかに吹き飛び、激しい怒りが込み上げてくる。
「申し訳ないとは思ったが、ウチの大切な元締めを容易く差し出すわけにはいかないのでね」
そこへ現れたのは一人の青年、エミルが凛然と佇み、ジャンゴに向かって啖呵を切る。
「ああそうか。つまり、俺を倒す気でいるわけだ。……舐められたモンだぜ」
ジャンゴは一行の目的を理解した上で、甘く見られている事に呆れ果て、舌打ちしながら冒険者達をジロリと一瞥。
「いいぜ、全員纏めて掛かってきやがれ。ホワイトライフの幹部の実力、思い知らせてやろうじゃねェか」
だったら力尽くで分からせるまでだと、闘争心を燃やし、刃を抜いて冒険者達と対峙する。
「こちらとしても、女を脅して、交換条件で交際を申し込むような姑息な男に負ける気はありませんけど」
リコリスが毒気を含んだ言い方で、傷口に塩を塗り込むように言葉でジャンゴを牽制する。
「女ってのは、自分の為に必死になってくれる男に心動かされるものだ。どっちがシュリナに相応しいのか、はっきり白黒付けようじゃないか」
エミルの秘めた想いを察したか、ルチルは彼の背中を押すかのように闘志を鼓舞し、ジャンゴに対して宣戦布告する。
「俺達が勝てばシュリナの事は潔く諦めてほしい。約束は守ってもらうぞ」
強い決意と覚悟を秘めて、エミルが気迫を漲らせれば、ジャンゴも負けじと殺気を溢れんばかりに滾らせる。
――斯くして、一人の少女を巡る闘いの幕が、今ここに切って落とされるのだった。
「俺の本職は生産職なんだが。あんたが欲しがってた首飾り、実は俺が作った物だったりして」
さり気なくネタ晴らしするサイラスだが、もうどうでもいいとジャンゴが鬼気迫る勢いで飛び掛かってくる。
色恋沙汰となると必死だねぇ、などと余裕めかした態度で迎え撃とうとするものの――直後、相手の力量を見誤っていた事にサイラスは気付く。
刃を振り抜く動作が見えぬ程、刹那に繰り出される迅速の太刀。
音も無く、忍び寄る刃の軌道にサイラスは咄嗟に反応し、間一髪、盾で刃を弾いて防ぎ、辛うじて負傷を免れる。
「……やるなァ、冒険者。そうこなくっちゃ面白くねェ」
初っ端の一撃は防がれたが、歯応えのある冒険者達との戦いに、ジャンゴは胸を躍らせ愉しそうに嗤う。
敵は大手マフィアの幹部を務める程の実力者。数の上では優位でも、僅かでも隙を見せれば致命傷になり兼ねない。
「流石に一筋縄ではいかないか。なら、最初から全力で押し切るまでだ」
ロドリックが精神を集中させて魔力を高め、翳した杖からまばゆい光の矢を放つ。
「まともにやり合うのは分が悪そうだな。だったらこいつはどうだ」
ルチルがクロスボウに番えるは、魔力で作った光の矢だ。撃ち放った矢弾はジャンゴの足元の床に刺さると爆ぜて、生じる黒い煙が視界を遮る。
「まずは相手の間合いで戦わない事。距離を取りつつ、火力を弱らせましょう」
リコリスの杖から溢れ出る禍々しい気。呪詛を宿した魔力の枷がジャンゴの身体に纏わりついて、蝕む瘴気がじわりと力を殺いでいく。
冒険者側でジャンゴと力勝負を挑めるのは、サイラスのみだ。残りのメンバーは援護射撃で補佐しつつ、優位な状況に持ち込もうとする。
「てっきり口先だけの身の程知らずと思ったが、侮って悪かったな。お詫びに手加減なしで行かせてもらうぞ」
サイラスが構えし刀は、長寸肉厚、刃が大きく反った大太刀だ。
重心を低く落として力を溜めて、踏み締めた脚で強く地を蹴り――そのひと振りは稲光をも叩き斬らんばかりの勢いで、大気を薙いでジャンゴの身体を斬り裂いた。
「グハ……ッ!? こいつは少々効くな……だが、まだまだだ!」
一瞬、ジャンゴの上体がグラリと傾ぐが、気力で耐え抜き、ファイティングポーズを構え直す。
その後も互いに譲らず、一進一退の攻防が続くが――やがて、決着の時が訪れる。
エミルの放った一矢が、ジャンゴの足を射抜く。この一撃でジャンゴは体勢を崩して膝を突き、眼光鋭く睨むエミルに、ジャンゴはニヤリと口角を吊り上げ、刀を捨てて観念した。
「……この勝負、俺の負けだ。彼女の事は諦めてやるよ」
素直に敗北を認めたその瞬間、冒険者達の勝利が確定した。
「エミルの愛の力の方が上だった、という事かね」
決闘に勝ち、安堵の表情を浮かべるエミルの顔を、ルチルがちらりと見遣って仮面の奥で嬉しそうに笑みを漏らす。
「ありがとうみんな! 今回も助けてもらって、本当に感謝しかないよ!」
不条理な束縛から解放されたシュリナが、声を弾ませながら冒険者達に頭を下げてお礼を言う。
「王侯貴族程ではないにせよ、元締めとなったシュリナが未婚のままなら、今後も政略手段として交際や婚姻の申し出があるでしょう」
燥ぐシュリナに、リコリスは現在の彼女の身分を考えながら、未来の行く末を案じて説く。
「もし彼女に対して特別な感情があるのなら、早めに行動を起こした方が後悔は少ないと思いますよ」
続けて紡いだ言葉は、エミルに向けた助言であった。
唐突に話を振られ、エミルは照れ臭そうに困惑しつつ、同じく恥ずかしそうにはにかむシュリナに視線を送る。
「……まあ、あくまで年上の経験談です。最終的に判断するのはあなた達ですから」
今後の二人がどういう道を選択するのか。普段は多くを語らぬリコリスからの進言を、二人は真剣に受け止め、頷いた。
「ま、そん時は俺が特製の指輪でも作って贈るさ」
もし要望があれば協力すると、サイラスもその日が来るのを心待ちにする。
そうした一連のやり取りを黙って微笑ましく見守るロドリックも、幸せそうな空気に思わず口元が緩むのだった。
すっかり祝福ムードで話に花を咲かせる後ろでは、ジャンゴが足を引き摺りながら、冒険者達の側に近寄ってくる。
「俺はよォ、新たな恋に生きる事に決めたぜ。そこのエルフのお嬢さん、そのクールな魅力がたまんねェ。どうだい、俺と今晩、付き合わねェか?」
パチンと指を鳴らして、気取った仕草で今度はリコリスを懲りずに口説く。
心の切り替えの早さは流石というべきか、しかし残念ながら、今回は余計に相手が悪かった。
リコリスは全く表情を変えず、冷めた目で、蔑むようにジャンゴを見つめ、杖を高く掲げて魔力を一点に集束させる。
「――五十年早い」
昂る魔力の塊が激しく叩き込まれて、迸る強烈な衝撃と共に、ジャンゴはその場に崩れて気絶してしまう。
またもや恋に敗れて倒れた男は、気を失っていても尚、満足し切った穏やかな笑顔を見せていた――。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜6人
2022年12月23日 23時15分05秒 公開
相談掲示板
シーフのシャルティナだ。まだ揃ってないけど今回もまたよろしくな。 邪魔の仕方はお任せするから、それぞれ好きにやってもらって構わねぇ。 アタシも手伝えることがあれば協力するんで、何かあったら言ってくれ。
まだ人数は揃ってないが……情報屋のルチルだ、よろしく。 とりあえず恥をかかせて堂々とお断りできるようにすればいいんだろう? (2)の賭博…というか、酒絡みでなら恥をかかせられる算段はあるね。 うわばみがLv5であるから生半可な耐性ではぐでぐでに酔い潰せるさね。 (1)闇市場はまあ適当に言いくるめてセンスの悪い物を買わせればいいだろう。 (3)闘技場は、鼻を挫くならタイマンでボコボコにしてやった方がいい感じに折れるだろうね。 エミルもどうやらシュリナに気があるようだが…ここは直接妨害に関わらせるより、最後に花を持たせるぐらいがよさそうだね。
それほど余裕がない時程での参加、失礼する。本業の合間に冒険者家業で稼ぎに来たのだが、なんだか妙な状況のようだな。 「ホワイトライフの幹部で、白いスーツを纏ったスマートな体型の伊達男風ゴブリン」か。 個人によるとはいえ、任侠の世界の人物は周りから自分がどう見られているかに拘るものもいると聞く。 衆人環視の上で何かしらの宣言をさせ、それがみっともなく果たせなければ、恥を感じて引き揚げてくれるだろうか。闘技場で一見してみすぼらしい弱者やか弱い女性に負けるとか? プレゼントを買うというなら、そうだな。シュリナと商店に根回しがいるが、彼女が欲しがったものを、彼が買おうとして買えなかったというのは恥になるだろうかね。
連投失礼する。 考えてみたが、私は(1)で、王国の高貴な身分の方の御用商人として立ち回ろうと思った。シュリナと町のアクセサリ屋とグルになり、シュリナが欲しがった商品を取り合う感じの役回りだ。行動方針としては、彼のダサさを周囲へアピールできればと考える。 「愛する人に贈るため、特定の色の宝石をみつけたら値段には糸目をつけず買ってこい」のような命令を受けているということにして、ガンガン値段を釣り上げ、愛のために使える金額がその程度なのか? という感じで恥をかかせれば、ジャンゴはきっと暴力に訴えようとするだろう。 その際は路上、女連れでの暴力沙汰のみっともなさを指摘し、(3)での決闘で決着をつけるべくつなげたい。(3)ではきっと、どなたかが彼のプライドを折るために腕を鳴らしてお待ちだろうから、そこでみじめに敗北した際の恥かき要素に上乗せできるだろうという算段だ。 素案であるため、利用、あるいは協力、修正の提案などがあれば前向きに承る。 時間がないので行動予定を先出ししたが、望ましくない場合は全面的に取り下げる所存ゆえ、その場合もぜひ指摘してほしい。
>ロドリック いや、(1)はその案で動いてもらっても構わないと思う。 指摘通りプライドの高い男だろうからね。まあ、せっかくのプレゼントが思い通りに行かず醜態を見せてしまえばかなりマイナスだろう。 >個人 人数の揃い次第だが(2)は確定のつもりだ。 賭け勝負を吹っかけて上手く言いくるめてどんどん酒飲ませていこうかと。 デートは同日にやるようだし、酔い過ぎた状態では闘技場でも本来のパフォーマンスを出せないだろうと。
No.6
サイラスだ、まあギリギリだがよろしくなー とりあえず(3)いこかなと。(1)の方アクセサリーなら彫金とおしゃれさん持ち込んで適当につくろかー? 相手の能力次第だけど、防御抜いて火力で速攻か、防御して適当に捌いて力がない情けなく見えるようにするかするつもり で、本職鍛冶屋、色々やってるが本職鍛冶屋なのでアクセ含めて俺こっちメインなのに戦闘で鬼狩りとか名乗る奴が当たってるって恥ずかしくないの?ってやれればお得かなと。
成立したようで何よりだ。 >ルチル では、1でそのような形で提出する。2は触れる余裕がなさそうなのでお任せしよう。 >サイラス 魅力的な提案ではあるが、作戦の性質上、価格競争でジャンゴが躊躇する程度には高価なものである必要があるのだ。ササっと用意できるもので、そこまで高価な材料が揃うかどうか……。 それと、アクセサリの販売者と3で戦う人間が同一人物であると、さすがにジャンゴから全てグルだとバレてしまいそうな懸念があるな。売り手が他に確保できるなら、全員グルであるという方が安心はあるのだが。 (ご助力ありがとうございます! 店の商品に比べてスキルで作成した場合にどれくらい高級そうなものが用意できるのか、判断がつきかねるのでプレイングではサイラスさんが作ってくれた物と店にある物を比べて作戦に有効そうなものを選ぶ、というように書いてマスター様のジャッジに委ねようかと思います)
成立したようなので……遅くなりましたが、キャスターのリコリス・アデュラリアです。 よろしくお願いします。 各行動での方針に関しては現時点で出ているもので異論はありません。 私は(1)でジャンゴの失態を誘導しつつ 可能であれば(3)のサポートを行いましょう。 ウォーリア相手なら魔法攻撃はよく効くでしょうから。 エミルについては、知らない顔でもありませんから 余裕があれば後のフォローに向けて多少声掛けをしておこうかと。
おそらく最終調整になると思う。 同じ1のリコリスさんはぜひ、よろしく頼む。 エミルに関しては私は知らない人物だが、こういう場合に仕事がないと辛いかもしれないな。 私の方では、芝居に乗ってくれるアクセサリ屋の手配を彼に頼むようにしよう。 それでは、現地で。
無事成立に必要な人数が揃ったようだね。安心したよ。 そして無理に合わせなくてもいいが、ちょいと思い付いたので一つ。 アタイは情報屋もやってる事だし、せっかくだから「シュリナの欲しそうな物」という情報を売って顔を覚えてもらいつつ、アクセサリ屋へ自然に誘導する手伝いをしようかと。 それで酒場に来た時にこっちへ喧嘩売りやすくなってくれたら万々歳さね。