【鬼哭】鎮圧求む。ブラックデスよりも先に
岩岡志摩
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シナリオID:2667
オープニング
シルトラース帝国の中で、レイウェスト・バルダスらの支配地域である帝国南部鎮守都市ヴィント付近には、幾つかの移住ゴブリン達の村がある。
それはレイウェストとドン・ゴーフルの間で交わされた取引によるものだ。
住民はブラックデスの構成員か関係者で占められ、ドン・ゴーフルの指示のもと帝国民とは決して諍いにならぬよう、慎ましく生きていた。
しかし最近になって、ゴーフルの言いつけを無視するゴブリン達も現れ始め、言いつけに忠実なゴブリン達との間で対立するようになる。
先日もヴィントに程近い場所に存在する村の1つで、ゴブリン同士の喧嘩が発生した。
この時は喧嘩が起きた酒場に冒険者達も居合わせていたので、冒険者達の手でゴブリン達は鎮圧され、被害は最小限に抑えられていた。
しかし事態はさらに混迷の度合いを深めていく。
●依頼
ある村一帯に配備された帝国兵――正確にはその指揮官が、届いた情報に頭を抱えていた。
先日冒険者達の助力も得て、ある酒場で発生したゴブリン同士の争いを鎮圧したのは記憶に新しい。
それ以外にも、指揮官は帝国兵と共に各村々を駆け回り、ゴブリン達の騒動を鎮めてきた。
それにも関わらず、ゴブリン達の暴動はおさまる気配をみせていない。
ただ指揮官を悩ませているのは、この報せだった。
――ゴールディよりブラックデス実戦部隊が派遣され、現在こちらに向かっている。
帝国へ向かうブラックデス実戦部隊からは、既にこの指揮官に対して手紙を届けており、今回の派遣についての理由を述べていた。
――ゴブリンの起こした騒動は私達が責任をもって対処いたします。
名目としては、騒ぎを起こすゴブリン達を鎮圧するための支援となっているが、手紙を受け取った指揮官は額面通り受け取ることはしない。
既に指揮官は独自の情報網を駆使して、現在ブラックデスの頭領代理を務めるサチコが同胞であるゴブリン達に対し、厳しい姿勢で臨むことを表明したとの情報を得ている。
そうなると、ブラックデス実戦部隊はゴブリン達をただ鎮圧するのではなく、その命を奪うことも視野に入れている可能性が浮上してくる。
確たる証拠はないが、自身の直感からそんな分析を立てた指揮官のもとへ、配下の帝国兵が駆けこんできた。
「――の村で、大規模な暴動が発生しました!」
その帝国兵より詳細を聞いた指揮官は、冒険者達の協力が必要だと判断し、直ちに冒険者ギルド支部へと使者を向かわせた。
●惨状と介入
指揮官からの依頼を受けた冒険者達が、暴動が起きた村に到着した頃には、既にその村は戦場と化していた。
何かに引火したのか、燃える炎は村にある家々を焼き始め、紅の舌を不気味に伸ばしていく。
巻きあがる黒煙に空からの光が遮られる中、村は文字通り戦場と化していた。
狂ったようなゴブリン達の笑い声と、ゴブリン達の振るう農具や攻撃が村を壊す音、そして人々の悲鳴。
それらは不愉快な不協和音となって、村の東側に到着した皆様の鼓膜を刺激する。
「助けに来たぞ! 安全な方角はこっちだ!」
冒険者と同行する帝国兵達が村に残る人々に向け声を張り上げ、それを聞いた人々が村の東側へと押し寄せてくる。
事前に得た情報では、今回暴れだしたゴブリン達の中に授恵者も含まれているため、一般人で構成されている帝国兵では歯が立たない。このため指揮官は授恵者に対処できる冒険者達を募集する依頼を出し、今に至る。
帝国兵達が逃げてきた人々を誘導し、収容作業を続ける中、村の中で暴れていたゴブリン達に新たな異変が迫っていた。
ゴブリン達が発する不協和音に、肉を断ち切る嫌な音が付随する。
「――!?」
暴れていたゴブリンの1人は、音の正体と何が起きたのかを知る。
そのゴブリンがそれを理解する時間があったのは、単に順番が後ろだったからに過ぎない。
目の前にいる同胞の背に、1本の刀が生えていた。
切っ先から垂れる雫は地面の土ほこりと混じり合い、小さくひしゃげた球ができる。
その球を見ていたゴブリンは、同胞の体から刀を引き抜く音を聞き、降ってきた赤黒い滝が地面に血だまりを作る。
さらにその上から同胞だったものが、頭から血だまりに突っ込み、もう動かない。
視線を戻すと、刀を振るった者の周囲が煌めきを見せるたび、肉を切り裂く音が響き、自らが生み出した血だまりの中へとゴブリン達は倒れていく。
一連の動きを目撃していたそのゴブリンは、その者へ命乞いをしようとしたが、軽い衝撃とにぶい音と共に思考は停止する。
――頭に刃を通されて、ものを考えられる人間はいない。
引き抜かれる音と共に、かつて彼だった肉体が、血だまりに倒れたゴブリン達の仲間入りを果たし、動かなくなる。
ゴブリン達の血をしこたま吸った太刀を、黒ずくめの姿をした男は初めて払い、地面へ直線状の赤黒い線ができる。
「これより処置を始める」
その男――ブラックデス実戦部隊所属のゴブリンは、この村で暴れるゴブリン達の処置を開始した。
住民達の避難誘導を続けていた指揮官は、先行偵察に赴いた帝国兵からブラックデス実戦部隊の介入が始まったと知る。
そして実戦部隊所属のゴブリンは、接触した帝国兵に向けこうも告げていた。
――邪魔するならば、まとめて排除する。
その報告を聞いた指揮官は、皆様に懇請する。
「頼む。今暴れているゴブリン達の身柄を、一人でも多く生きたまま確保してほしい」
指揮官はブラックデス実戦部隊によって騒動の原因を始末させるのも1つの手だと認めている。
――命以外が不要ならば、の話だが。
「帝国領内で発生した犯罪は、帝国の法に従って裁くべきだ」
先日酒場の騒動を鎮圧したある冒険者もそう語っていた。
指揮官もそれに強く同意する。
「今暴れているゴブリン達は野盗の類ではない。裁きを省略して刑罰を執行するような真似を認めることはできない」
少なくともヴィント周辺へ移住してきたゴブリン達は、それぞれ帝国に貢献していると指揮官は断言する。
「今ここで暴れているゴブリン達も、帝国が受け入れた住民である以上、帝国の法によって裁かれなければならない」
表立っては言わないものの、指揮官は今回のブラックデス実戦部隊による対処を認めてしまったら、今後帝国内でゴブリンが絡む事件が発生したとき、法よりもゴールディの事情が優先される悪しき前例になることを危惧していた。
暴動の原因を探るのは後でもできる。
だからどうか行ってほしい。
行ってくれ。
この村で起きていることは「他の誰かがやってくれる」話ではない。
最高の精鋭である皆様に。我々は助けを求めている。
村の中にいるいのちを救うことができるのは。
今、この場にいる冒険者をおいて他にない。
指揮官の懇請に対し、皆様の選択は――。
●選択肢
今回の選択肢は以下の3つになります。
1:暴れるゴブリン達(一般人)を無力化して捕縛する。
2:暴れるゴブリン達(授恵者)を倒して捕縛する。
3:ブラックデス実戦部隊員を倒す(生死問わず)。
解説
マスターより
リプレイ
シルトラース帝国の兵士達が消火に当たる中、冒険者達はゴブリン達を生きたまま捕縛するため、それぞれの方角から村へ突入する。
「あははは。ベルピー、なんだか面白くなってきたね~」
村の西側より進出したフレイヤ・サンライズは、暴れまわるゴブリン達や村の惨状を見るなり、同行するベルク・オスマットに対してそんな言葉を投げかける。
話を向けられたベルクは、フレイヤに対して当面の方針を伝える。
「生きたままの捕縛が最優先だ。捕まえたらベルク=タークの曳く荷車の上に放り込んで置く」
既にベルクは自身の愛馬と荷馬車を、村の外へ待機させている。
その荷馬車に捕縛したゴブリン達を収容すると決めたベルクは、フレイヤと共に村へと踏み込んでいく。
「サチコ殿は政治を誤っているのだ」
ベルクやフレイヤ達と同じく、西より村へ突入したストレガ・L・リベルガストラは、今回の介入が誤りだと指摘する。
この村にいるゴブリン達は、ドン・ゴーフル達ブラックデスの関係者が多い。
その身内の不始末をどうにかしたいという心情は、ストレガも理解できるが――。
「もはや帝国のゴブリンは帝国民なのだ」
帝国やその法を無視した独断専行は間違っている。
ストレガはそう結論付けると、稲妻のような光が荒れ狂う空間を発生させ、範囲内にいるゴブリン達を蛇のような稲光で絡めとり、その移動を阻害する。
そのゴブリン達を捕捉したベルクとフレイヤは、手分けしてゴブリン達の捕縛にかかる。
「まずは貴様からだ。今のうちに身柄を確保する」
威圧感スキルによってゴブリン達を威圧したベルクが、鞘に納めた暗爪刀「狐爪」による加減した一撃でゴブリンの胴を打ち、気絶させると、フレイヤは閃光塗弾のピンを抜き、残りのゴブリンへと投擲する。
フレイヤから投擲された閃光塗弾は、少しの間をおいて閃光を伴って破裂した。
まともに光を見たゴブリンは農具を取り落とし、両手で目をおさえ身悶えする。
「農具はマジカルポケットにぶち込んで無力化し、捕縛すればいいんだよね?」
フレイヤはベルクの方針に従い、マジカルポケットを駆使してゴブリンが落とした農具を収容すると、霊刀 五十鈴依媛を鞘に納めた状態で振るい、腹を打たれたゴブリンはそのまま昏倒する。
「弓に狙われるようなら距離を取るが、こちらを狙う弓持ちはいないようだな」
シャドウは一般人よりも授恵者ゴブリンの射線を警戒しながらも、村の北より一般人のゴブリン達への無力化を始める。
「あの辺りにいるゴブリン達は動きを止めたか。好機だな」
シャドウはストレガが移動を妨害したゴブリン達へ狙いを定めると、疾風足による瞬間的な加速を披露して一気に距離を詰める。
そのままシャドウは加減した拳の一撃をゴブリンの頭に激突させ、その一撃で白目をむいたゴブリンはそのまま地面に倒れ、気を失う。
「気絶したなら、光縛呪で捕縛できるのだ」
ストレガは仲間が無力化したゴブリンの1人を光の縄めいたエーテルで拘束し、周囲にいたベルクやフレイヤ、そしてシャドウも依頼人より支給されたロープで捕縛を始める。
そして村の西南方向でも、ロゼットがゴブリンの捕縛を始めている。
「実戦部隊員に近い位置にいるゴブリン達から無力化するわ」
ただしこちらの方面は、南側に陣取るブラックデス実戦部隊員らしきゴブリンが、暴れているゴブリン達を殺し始めているため、迅速な捕縛が求められる。
「ちょっと痛いけど、後で治してあげるからね」
覚悟を決めたロゼットは、振り下ろされる農具をダマスカス鋼の聖盾で防ぎ、ダマスカス鋼の祭棍を加減してゴブリンの足へと振りぬく。
足払いをかけられて横転し、うめき声をあげるゴブリンの奥から別のゴブリンが駆けてくる。
ロゼットはそのゴブリンが至近距離まで迫ったところで聖盾を突き出し、ゴブリンの頭を軽く殴る。
聖盾で殴られたゴブリンはそのまま農具を取り落として気絶し、地面に倒れこむ。
無力化を確認したロゼッタは、依頼人より支給されたロープを取り出すと、2体のゴブリンを順番に捕縛していく。
そして身柄を確保できたところで、ロゼットは北側にいる仲間達にも声をかける。
「こちらにいるゴブリン達の身柄は押さえたわ。急いで搬送するわよ」
冒険者達は残る一般人ゴブリンの無力化と、捕縛したゴブリン達を帝国兵のもとへ運ぶ作業をそれぞれ行っていった。
●弓ゴブリンとの戦い
シャドウが警戒した弓ゴブリン達は、東より進出した冒険者達が交戦を始めている。
「チッ、ここも面倒な事になってやがるな!」
ハヤト=ガラン=ヴォルファングは天眼を駆使して村の状況を把握すると、まずは北側にいる弓ゴブリンを捕捉していく。
「暴動を起こしているゴブリン達を無力化する。できる限り迅速にだ」
セリオス・オーガストは天眼と超視覚を駆使して敵味方の位置や全体の状況を確認すると、村中央に陣取る弓持ちゴブリン達に竜骨の強弓を向ける。
そのままセリオスは弦を鳴らし、エーテルで形成された光弾を素早く放つと、矢弾は弓ゴブリン達がいる屋根上で炸裂し、濃い煙幕が周囲を包みこんだ。
ここでミゼリア・L・ステュクスが、盾役として動き出す。
「……おもなあいては……ゆみ……なんです」
既にミゼリアはペインキルによって痛覚を遮断し、アダマントボディによる効果を得た状態から、北側にいる弓ゴブリンを捕捉していた。
そのままミゼリアは紅眼淫香による魅了をもって、弓ゴブリンの判断能力を奪い、自身へと攻撃を向けさせる。
「……こうげきには……これでたいしょ……なんですね」
ミゼリアは黒縛の手枷を掲げ、瘴気のような漆黒のエーテルを纏うと瞬間的に守りを固め、飛来した一射を受け止める。
ミゼリアより黒いエーテルが飛散する中、別方向から爆発的な脚力をもって距離を詰める走法を駆使したハヤトが跳躍して一気に肉薄する。
「気絶狙いだ。命は奪わないようにするつもりだぜ」
そのままハヤトの握る竜爪の短剣が竜巻と化したかのような連撃を繰り出し、合計3度弓ゴブリンを打ち据える。
屋根に着地したハヤトの前で、連撃に耐え切れず意識を失った弓ゴブリンが仰向けに倒れていく。
「北は片付いたようだな。俺は南側を無力化するとしよう」
ミゼリアやハヤトの動きを天眼で確認したセリオスは、村の東南に陣取る別の弓ゴブリンに強弓を向け、風読みの矢2を解き放つ。
セリオスの一射は風のエーテルを纏って加速し、弓ゴブリンに命中するとその身を射抜く。
セリオスの一撃で生命を削られた弓ゴブリンは、血を噴きながら屋根より転げ落ち、地面に叩きつけられ昏倒した。
●対ブラックデス実戦部隊員
冒険者達がゴブリン達を無力化していく中、村の南側ではトーラとサイラスの2人が、ブラックデス実戦部隊員と思しきゴブリンと相対していた。
天眼を駆使して周囲に残る弓ゴブリン達の動向も確認しながら、トーラはゴブリンに叫ぶ。
「こんなことをして、ゴブリンが迫害される原因を作るつもりですかっ!?」
ゴブリンは何も答えないが、トーラは今後起こりうる可能性を指摘する。
「かえってゴブリンが恐れられる理由を作るだけです!」
トーラの言う通り、暴れるゴブリン達を切り刻むブラックデス実戦部隊員の姿は、普通に村で暮らしている人々から見れば十分恐怖の対象となりうる。
トーラの言い分を無視するゴブリンに対し、サイラスがある問いを投げかける。
「ブラックデスのボス誰だっけ?」
サイラスはそんな言葉と共にエーテルを叩きつけ、ゴブリンの戦意を自分に向けさせる。
「面子ぶっつぶれだから締めに来たんだろけどねー?」
煽るような口振りのサイラスに向け、ゴブリンは刀を向ける。
「逆に言えば、部下に尻拭いさせるくらい情けないという事かなー?」
そう言ったサイラスに対し、ゴブリンは無言のまま威力を重視した鋭い一撃を繰り出してくる。
掲げた剣鱗でゴブリンの刀を受け止めたサイラスは、肉体を蝕むエーテルをまとわせた風雷坊を斜めに斬り下ろし、斬撃を浴びたゴブリンは鮮血を撒いてよろめき、その動きが鈍る。
「言っても聞かないなら、力付くで取り押さえましょう」
説得による解決は無理だと判断し、トーラも攻勢に加わる。
「ただし殺害は避けて捕縛し、依頼人へ引き渡します」
そう宣告したトーラは、急速にゴブリンとの間合いを詰めると、パリィングダガーに赤光のエーテルを纏わせて刃を形成し、ゴブリンの足へと突き通す。
トーラの短剣はそのままゴブリンの足へと突き刺さると同時に、糸状に変化したエーテルがゴブリンに絡みつき、その動きを妨害していった。
●一般人ゴブリン、身柄確保
ロゼットはテレパスを介し、アルヒ・ラスカスと意思疎通を図る。
(……アルヒ、怪我人の状態はどう? 手は足りている?)
ロゼットはこの村へ突入するよりも前に、アルヒに対し帝国兵のもとで捕縛されたゴブリン達が運び込まれてきたら、治療に当たってほしいと要請していた。
要請に従い、現在アルヒは帝国兵が守りを固めている村の東側にいるが、そのアルヒからもテレパスを介して現在の状況が伝わってくる。
(重傷者がいるの? 今から向かうわ)
自身の力が必要だと判断したロゼットは、治療が必要な場所へと急行する。
その間にも、一般人ゴブリン達が残る一帯には、村の中央にいる弓ゴブリンからと思しき攻撃が時折飛来する。
先にセリオスが発動した濃煙炸弾2による煙幕は、持続時間が過ぎたのかその姿を消していた。
「同胞を死なせるわけにはいかないのだ」
ストレガは逆巻くエーテルの風を身に纏う。
ストレガの風は、飛来した一射を巻き込んで、あらぬ方向へと吹き飛ばした。
「生きたいなら言う通りにするのだ」
ストレガは警告しながら持参したロープでゴブリンを捕縛すると、ベルクが荷馬車を置いてある場所までゴブリンを運ぶ。
「同胞を頼むのだ」
ストレガは己のエーテルを操り負傷を癒す光をゴブリンに放ち、その怪我を治療すると、その場にいたシャドウにゴブリンを託す。
(ブラックデス実戦部隊員が生きている場合、その処置は帝国の判断になるのだが……)
ストレガの中では、ブラックデスの実戦部隊員も同胞に含まれている。
「了解だ。俺も残りのゴブリン達を早めに捕縛するつもりだ」
ストレガよりゴブリンを預かったシャドウは、ベルクが設置した荷馬車のところまで運ぶと、そのまま疾風足を駆使して瞬間的に加速し、村の中へと駆け出す。
「弓に狙われるようなら距離をとる。もしブラックデス実戦部隊員と遭遇するようなら全力で逃げる、といったところだな」
シャドウは様々な事態を想定しながら、一般人のゴブリンへと突っ込んだ。
精神を集中させたシャドウは、反応速度を瞬間的に高め、低い姿勢のまま振り抜かれる農具を躱す。
そのまま地を低く詰め寄ったシャドウが、額をつきあわせられるほどの至近距離からゴブリンの腹部に拳を叩き込む。
その一撃でゴブリンの意識が遠のき、倒れたところでシャドウは支給されたロープを取り出し、捕縛にかかる。
そしてベルクとフレイヤも捕縛したゴブリン達を荷馬車に放り込むと、荷馬車や愛馬と共に一度村の北側より外に出て大きく迂回し、東側にいる帝国兵達のもとへ合流する。
帝国兵にゴブリン達を引き渡したところで、ベルクとフレイヤは村の南側へと急ぐ。
「今から回復するわ。重傷者はどこなの?」
ベルクやフレイヤと入れ違う形で村の東に到着したロゼットは、アルヒの案内に従い重傷者のもとへ向かう。
そしてロゼットはリヴァーオブヴァイタルを発動して天地に巡るエーテルの流れと接続し、自身を介して転化された生命力を重傷者に送り込むことで、その負傷を瞬時に回復させた。
●弓は沈黙
弓ゴブリンの攻撃は、その一部が一般人ゴブリン達がいた区域にも流れたようだが、冒険者達はそれ以上の攻撃を阻止にかかる。
「今のところカバーが必要なのは、村の中央くらいだな」
天眼を駆使して戦況を把握したハヤトは、弓ゴブリン達が意識を向けていない方角へとフェザーステップを駆使して一度迂回する。
「まとめて射抜くには、北側から撃つのがよさそうだな」
セリオスも天眼を駆使して全体の動きを確認しながら、残る弓ゴブリン2人を両方とも射程に捉える位置へと動く。
そしてハヤトやセリオスの行動を支援するため、ミゼリアも行動に移る。
「……ここは、かげわたり……なの」
瘴気めいた漆黒のエーテルを身に纏っての高速移動によって、ミゼリアは一気に移動すると、弓ゴブリンの射線に割り込んだ。
割り込まれた弓ゴブリンは、エーテルを籠めた矢をミゼリアへと放ち、ミゼリアがいる場所で炸裂させる。
破片めいた光がまき散らされ、黒縛の手枷を構えていたミゼリアはダメージを受けるが、ペインキルで痛覚を遮断しているミゼリアは淡々と対処する。
「……こうそく……さいせい……で……かいふく……なんです」
瘴気のような漆黒のエーテルを顕現し、邪悪な術式をもって負傷を回復させるミゼリアだが、一連の動きは弓ゴブリンへの誘いだった。
ミゼリアが弓ゴブリンの攻撃を受け止める間に、南側へと回り込んだハヤトが屋根の上へと跳びあがると、もう1人の弓ゴブリンが慌ててハヤトに弓を向け、矢を放つ。
「そんな攻撃で俺に当たると思っているのかよ?」
既に見切り3を駆使して攻撃の軌道を見定めていたハヤトは、身を低くして飛来した矢を躱すと、そのまま弓ゴブリンの懐へと飛び込んでいく。
「これなら片方を着実に無力化したほうがいいか?」
同じころ最適な位置に立ったセリオスは、超視覚によってハヤトの動きを視認すると、先程ミゼリアを攻撃した弓ゴブリンへと狙いを定める。
「弓持ちが片付いたら、残りも鎮圧だな」
殺さないように急所以外に狙いを定め、セリオスは目にもとまらぬ速さで二連射を放つ。
その間にハヤトが勇牙雷龍撃を発動して短剣を交互に繰り出し、3連撃を浴びた弓ゴブリンは意識を刈り取られ、倒れ伏す。
そしてセリオスより放たれた2本の矢も、もう1人の弓ゴブリンへと吸い込まれ、その身に突き刺さる。
セリオスに射抜かれた弓ゴブリンは、貫かれた箇所から血を噴き、その場で昏倒した。
●ブラックデス実戦部隊員は
シーザーロア3による効果があるうちに、サイラスはブラックデス実戦部隊員のゴブリンへ挑発を続ける。
「そうでなくても関係投げ捨ててでも、自分の名を優先なんだから器が知れるよね?」
言われたゴブリンは刀にエーテル光を纏わせ、長大な刃を形成する。
「言い返すことなく殺界での反撃優先かよ?」
ゴブリンのやろうとすることをサイラスは見抜き、押し出した剣鱗で斬撃を防いだ。
「不意打ちが来ることは想定済みです」
それまで天眼を駆使していたトーラもゴブリンの反撃を察知すると、真・神眼法を駆使してすべての感覚を研ぎ澄ませ、振り下ろされる斬撃を見切り、回避する。
(後は弱体化も続けての時間稼ぎだな)
サイラスは、眼前のゴブリンを他の場所へ向かわせなければ十分目的は達成できると踏んでいる。
実際サイラスの読み通り、周囲で暴れていたゴブリン達も、既にその大半を冒険者達が捕縛して帝国兵達のもとへ収容されている。
(全員が収容されるまで、このゴブリンを押さえておけばいいだけの話だ)
サイラスは再び風雷坊へ肉体を蝕むエーテルを纏わせると、ゴブリンとの距離を詰め、そのまま斬り払う。
新たな斬痕を刻まれたゴブリンに、再びエーテルが纏わりつき、その動きを阻害する。
攻防の合間に天眼によって周囲を確認していたトーラも、これ以上の処刑を止めるようゴブリンへの説得を続ける。
「先祖返りしたゴブリンを処刑しても、事件は収まりませんよ!?」
――まるで先祖返りでもしたかのようだ。
凶暴化したゴブリン達について、そんな話もあったことをトーラは聞き、自身が集めた情報からトーラはそう考えたようだ。
「何より、ドンさんがこんな事を望んでいると思っているんですか!?」
この地へゴブリン達を移住させることを決めた、ブラックデス首領ドン・ゴーフルはこのような対処など望んでいないはずだ。
トーラは、ブラックデス実戦部隊員の所業に憤りを見せる。
ここで北側よりベルクが空を駆け上がるがごとき移動術を駆使し、駆けつける。
ベルクは北側への突破を防ぐ形で戦闘態勢をとり、ゴブリンに告げる。
「代行殿の権限がどんなものか知らんが、移住した以上彼らは帝国の臣民であり、帝国の法の下にある」
ベルクはブラックデスの首領代行を務めているサチコについても言及しながら、前提となる話を口にして、問いただす。
「ドンの言いつけと帝国側の意向を無視して、帝国との諍いを代行殿はお望みか?」
少なくともドン・ゴーフルや帝国側は穏便な解決を目指していたと、ベルクは聞いている。
やや遅れてフレイヤも駆けつけ、ベルクと合流する。
「これはあれだね、ケジメが必要だね」
フレイヤはいまだ諦める様子のないブラックデス実戦部隊員を見て、緑色の光弾を飛ばす。
宙を駆け抜けた光弾は、命中したゴブリンの身へと炸裂し、守りを劣化させるエーテルがゴブリンの身に纏わりつく。
「どうする? やっぱドッカーンっていっとく? 主に首から上だけを」
そこまで言ったところで、フレイヤはある頼みごとを口にする。
「ところでベルポー、ゴブリン生きたまま生えてる角をさ、桂剥きとかしてみたいんだけど。そのときはちょっと抑えててくれない?」
冗談とも本気ともつかない態度で、フレイヤは言葉を継ぐ。
「ほら、案外内側の方がきれいだったりしそうじゃん」
言われたベルクは、フレイヤの常ならぬ言動の意図を考える。
ブラックデス実戦部隊員のゴブリンにも聞こえるように言ったことから鑑みると、恐らくフレイヤは本気ではなく、ゴブリンの戦意を折るためにあえてそんな物言いをしたのだろう。
「駄目だ。帝国兵は速やかな引き渡しを求めているだろう?」
そう推測したベルクはフレイヤに却下を伝える中、トーラがゴブリンとの距離を一気に詰める。
「このまま殺さない程度にダメージを与えつつ、戦意を削ぎましょう」
不殺を心掛けたトーラが肉体を蝕むエーテルを纏わせたパリィングダガーで、低い位置からゴブリンの身へと刺突を繰り出す。
トーラの一撃はゴブリンの身に突き刺さり、その刃に纏うエーテルがゴブリンを蝕み、その命中精度を下げていく。
そしてゴブリンが次に示した行動は、意外なものだった。
――栄えあれ。
小さな呟きと共に、ゴブリンはその手に握る短剣で、自身の首筋を深々と切り裂いた。
首筋から鮮血を噴きながら、ゴブリンは前のめりで地面に倒れ、動かなくなる。
駆け寄った冒険者達が状態を確かめたときには、既にブラックデス実戦部隊員のゴブリンは絶命していた。
●鎮圧
村を焼いた火災も消し止められ、暴れていたゴブリン達も冒険者達の尽力により、身柄を確保することができた。
その中でミゼリアは、捕縛されたゴブリンに触れながら、アンチ・サイを駆使して凶暴化が軽減できないか試していた。
「……あんち・さい……で、けいげんは……むり……なんですね」
しかしゴブリン達には何の変化も見られず、アンチ・サイでは効果がないことをミゼリアは知った。
村でゴブリン達を殺していたブラックデス実戦部隊員は、捕縛される前に自害したため、一連の行動が本人の独断なのか、指示によるものかは不明のままだった。
それでも今回の暴動に対し、冒険者達が被害を最小限に抑える形で鎮圧できたことは大きい。
「帝国の民を守ってくれたこと、心より感謝する」
依頼人である帝国兵指揮官は事後処理に忙殺される中、鎮圧を成し遂げた皆様1人1人に対し、精一杯の感謝を伝えていた。
マスターコメント
イベントシナリオ難しい 報酬:標準10 / 6〜25人
2022年12月22日 15時31分52秒 公開
相談掲示板
シーフのトーラです。 よろしくお願いします! わたしは黒服のゴブリンを止めに回ろうと思いますけど、希望が多ければ変更も大丈夫です。 いくら暴れているからと言って、即座に殺しにかかるのは見過ごせないですから。 それで事態を納めても暴力で解決するという事を示すのは、住民に恐れられて受け入れて貰えない可能性もあるでしょうし、いつか黒服のゴブリンが暴れだす可能性もあります。 とはいえ上からの命令で動いてるのなら説得は難しそうですから、結局は力付くということになるでしょうか…。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 ふむ?代行殿(サチコ殿)はドンの指示を白紙撤回できる権限などあるのかな? 帝国の指揮官殿も言っているが、彼らは出身がどうであろうと今はれっきとした帝国の臣民にあたる。であるならば彼らの身は帝国の法の下にあると言えるだろう。 何が言いたいか?帝国の法の下にある存在をゴールディの者が害する、これはドンの意向である<帝国民とは決して諍いにならぬよう>に反していると言えるだろう。 それを指摘すれば多少の動揺は与えられるのであろうし、不殺の譲歩程度は引き出せないかと考えている。 ちなみに我は暴徒の鎮圧に回るつもりだ、さっさと鎮圧して帝国軍預かりにすればゴールディの実働隊も手は出せんはずだしな。
シーフのシャドウだ。よろしくな。 なにぶん駆け出しなため一般人ゴブリンを捕縛することしか出来ぬ。 まあ、シューターに狙われたら死ぬかもしれんが・・・。 とにかくよろしくな。
No.4
サイラスだ、よろしくなー とりあえず黒服シーザーロアで捕獲すればええかね? 魔矢あるが刀と短剣からして術系統向きではないと見るが
アルヒ・ラスカスだ。今回はよろしく頼む。 何か不明な点があれば、可能な範囲で答えるつもりでいる。 現場でも必要に応じて指示を出してくれれば、できる限り応じるつもりだ。
成立ですね。改めてよろしくお願いします! アルヒさんもよろしくお願いしますね! サイラスさんがシーザーロアで引き付けて貰えるのは助かります。 わたしが直接足止めに回っても、魔矢で一般のゴブリンを狙われると阻止は難しいでしょうし。 >サチコさんの権限 ドンさんがああなっている以上、新しいリーダーにサチコさんがなったのなら下は指示に従うのではないいでしょうか。マフィアは上の指示には絶対従うイメージがあります。 ただ、ドンさんの影響力が失われているとは思えませんし、説得の材料としてはいいと思います。
……ウォーリアの、ミゼリアです。よろしく、おねがいします。 では……敵の弓兵たちを、シーザーロアで、ひきつけてみます……ね。 攻撃を、ひきうけてる間に……どなたかに、倒していただけたら、ありがたい……です。 あとは……一般人ゴブリンの、捕縛とか……でしょうか。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! んじゃ、俺は弓鬼の奴らを無力化して捕縛して回ることにすんぜ!!
現在まとめです。 ベルクさんの行動が自信なかったので一旦外してあります。 ●黒鬼対応 サイラス トーラ ●小鬼対応 シャドウ ●弓鬼対応 ミゼリア(小鬼対応含む) ハヤト
あ、我は小鬼対応に回るな。 ●黒鬼対応 サイラス トーラ ●小鬼対応 シャドウ ベルク ●弓鬼対応 ミゼリア(小鬼対応含む) ハヤト
・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む。 とりあえず弓鬼対応に回るとする。まあ何とか殺さないように射ないとな ●黒鬼対応 サイラス トーラ ●小鬼対応 シャドウ ベルク ●弓鬼対応 ミゼリア(小鬼対応含む) ハヤト セリオス
ヒーラーのロゼットよ。よろしくね。 そうね…手加減が必要な小鬼対応に入りましょうか。 スタート地点はA7からで、B6にいる小鬼から対処するわ。 黒鬼の近くにいるゴブリンは先に対処した方が良いでしょうし。 ●黒鬼対応 サイラス トーラ ●小鬼対応 シャドウ ベルク ロゼット(A7から) ●弓鬼対応 ミゼリア(小鬼対応含む) ハヤト セリオス
俺はD1から行くよ。 黒鬼には近づきたくないからな。
ではわたしは9Eからスタートして予定通り黒鬼を止めますね。 今日の夕方が出発なので忘れないように行動を出しましょう!
やばぴょん、ギリできた☆ 私?ベルピッピと一緒に遊ぶよ♪ ●黒鬼対応 サイラス トーラ ●小鬼対応 シャドウ ベルク ロゼット(A7から) フレイヤ ●弓鬼対応 ミゼリア(小鬼対応含む) ハヤト セリオス