【猟姫】伯爵令嬢の覚悟
革酎
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シナリオID:2642
オープニング
西方辺境伯領及びその寄り子貴族領を、リーンエス王国内地の王党派から切り離そうと画策する南西部貴族派のアルゼマン侯爵とジルクック伯爵は、まずその手始めとしてシュバート伯爵領最西端の商業街テモルスを事実上の支配下に置いた。
テモルスを東西に走る街道は西方辺境伯領へと繋がる交易路であり、西方辺境伯領南部に於いては、最大の王党派用支援補給路としての役割を担っていた。
しかしながら、ジルクック伯爵私兵団が岩蠍型ゾンビからの防衛という名目でこの町に居座り、今も尚、事実上の支配権を握っている。このままでは、支援補給路の南部経路は南西部貴族派によって占拠されたままとなるだろう。
ではシュバート伯爵はどう対処するのか。
実のところ、彼はテモルス奪還どころではなかった。というのも、吸血鬼ラネンターカムが放った岩蠍型ゾンビの群れが領内を蹂躙し、その追撃に手一杯となってしまったのである。
岩蠍型ゾンビ共の動きはシュバート伯爵の知見では到底予測することが出来ず、各集落、各町村での目撃情報を追いかける形で、場当たり的に対処する以外に方法が無かった。
しかしこれでは一向に解決の目途が立たない。この状況を放置しては私兵団も、そして領民も、一様に疲弊するばかりである。
仕方無く、シュバート伯爵は冒険者ギルドに支援を求めることにした。ここまで対応が遅れたのは、彼が典型的なヒューマン至上主義者であり、ヒューマン以外の多くの種族が登録されている冒険者ギルドを頼るのは、心情的にどうにも受け入れ難かったからである。
だが事態がここまで及んだ以上、最早背に腹は代えられない。
シュバート伯爵は領都の冒険者ギルドに家令を走らせ、領内を闊歩する岩蠍型ゾンビの群れの討伐を正式に依頼することにした。
●令嬢の覚悟
新米ながら冒険者として独り立ちを果たしたエリニア・ストゥは、主たるルーヴェン・アクファリテ西方辺境伯の指示を受けてシュバート伯爵領都へと足を運んでいた。
冒険者ギルドからの依頼を引き受け、岩蠍型ゾンビの群れを討伐する為である。
ロビーで受付を終え、依頼を引き受ける他の冒険者の登場を待つ間、エリニアはロビー脇の休憩エリアでひと息ついていた。と、そこへ見覚えのある顔が姿を見せた。
オルストフ伯爵家令嬢セティアだった。乗馬用の軽快なスタイルで、腰には護身用の細剣を携行していた。
「セティアさん、どうしてここへ?」
「その……何ていうか、じっとしていられなくて……」
自分の母親が此度の動乱に一枚噛んでいるかも知れない。そう考えただけで、居ても立ってもいられなくなったのだという。
エリニアは幾分、困った表情を浮かべた。岩蠍型ゾンビを相手に廻した状況で、自分だけならば兎も角、セティアをも守り切れる自信が無かったからだ。
セティアは、それならば心配ご無用と静かに微笑んだ。
「私も依頼を出します。護衛を引き受けて下さる冒険者を募集すれば、それは立派なお仕事でしょう?」
確かにその理屈なら大丈夫だろうが、問題はセティア自身の安否だ。敵は恐るべき魔獣のアンデッドなのである。如何に護衛を雇ったところで、絶対に安全だという保証は無い。
「それは分かっています。でも私が動かなければ、お父様はお母様の暴走を止めようとはしないでしょう」
即ちセティアは自分自身を人質にすることで父親たるオルストフ伯爵に迫り、貴族派の為に動く母カネーレの暴走を止めさせようという魂胆らしい。
その覚悟には何の迷いも無い。エリニアとしても、セティアの決意を覆すだけの説得材料が無かった。
ならばということで、エリニアは未だ冒険者ギルドに留まっているシュバート伯爵の家令にかけあい、今回の依頼にセティア護衛を条件として追加する様に申し入れた。
エリニアとセティアからの説明を受けた家令は驚きながらも、しかしその申し入れには利があると即座に理解し、依頼内容にセティア護衛を追加することを快諾してくれた。
●仕事仲間、合流
シュバート伯爵領内、某所。
なだらかな傾斜を見せる草原内を、十体の岩蠍型ゾンビがゆったりとした足取りで移動している。
そのうちの先頭二体の背甲上には黒装束の人影が、馬に跨る要領で体を預けている。いずれも天陽道の唱紋士であった。
やがて、彼らのうちのひとりが前方に佇む白銀虎の半獣人に気付いた。
「これはこれは、青の中指殿ではござらぬか」
唱紋士に呼び掛けられたメドゥの指先幹部『青の中指』ジルベルは陽気に手を挙げて応じた。岩蠍型ゾンビ共は吸血屍と同じ製法で造られた自律型アンデッドであり、攻撃対象外として刷り込まれた相手以外なら、人間以上のサイズの動く生物は片っ端から攻撃する。が、ジルベルに対して攻撃態勢を取らないということは、彼を攻撃対象外とする命令が予め刷り込まれているのだろう。
ジルベルはのんびり歩を寄せ、手近の岩蠍型ゾンビの黒光りする背甲を軽く撫でた。
「猟姫殿は良い仕事なさるねぇ。俺のこともしっかり攻撃対象外に指定しておいてくれたんだな」
「王都の方は、もう宜しいので?」
最初に声をかけてきた唱紋士の問いに対し、ジルベルは小さく肩を竦めた。
「あっちは過激派と右腕殿が面倒見てるから、俺はもうお役御免になっちまった。で、鬼一さんがこっちで仕事なさってるって聞いたモンだから、俺もお手伝いに参上しようかと思ってね」
それは有り難い、とふたりの唱紋士――天言殺呪の使い手灘九条 実康と桐蓬忍道の達人岩御門 典将は、揃って頭を垂れた。
「んじゃあ宜しく頼むよ」
ジルベルもふたりの唱紋士に倣って、岩蠍型ゾンビの背に跨った。
解説
マスターより
リプレイ
鞍上で、ロゼットは後方に軽く視線を流した。
今、彼女の背後にはシュバート伯爵麾下の私兵団十数名の武装した姿がある。
「上手くいきましたね、ロゼットさん」
傍らで騎首を並べるエリニア・ストゥが幾分頬を上気させ、嬉しそうに呼び掛けてきた。
この少し前、ロゼットはエリニア、そしてセティア・オルストフ伯爵令嬢の両名を伴い、リーンエス王国王党派貴族シュバート伯爵のもとに直談判へと赴いていた。
事態の早期解決の為という名目で会談を申し入れたロゼットは、岩蠍型ゾンビ集団に対する牽制と陽動を兼ねた作戦を進言したのである。
シュバート伯爵は王国貴族にありがちな、典型的なヒューマン至上主義者であり、雑多な種族が名を連ねる冒険者という存在には懐疑的な視線を向けていた。しかしロゼットとエリニア、そして西方辺境伯寄り子貴族の令嬢たるセティアが直接乗り込んできたことで、シュバート伯爵も色々と考えざるを得なかった。
結果、彼としても対岩蠍型ゾンビ戦に於ける作戦提案を呑むこととなった。
「後は連中を見つけるだけ……でも危なくなったら、すぐ後ろに退いてね。危険なことは私達、冒険者の役割だから」
ロゼットのこの台詞の後半は、エリニアの馬にタンデム騎乗しているセティアに向けられたものだ。セティアはかしこまりましたと大人しく頭を下げる。自らを人質にして母カネーレの暴走を止めようという思い切った行動を取る娘ではあるが、己の分をわきまえるだけの冷静さは持ち合わせている様だ。
そして、シュバート伯爵が領内に張り巡らせている情報網から、敵の現在地はかなり絞り込みつつある。それは冒険者の側も同様で、もう間も無く、接敵しようという頃合いであった。
「間に合うでしょうか?」
セティアの問いに、ロゼットは大丈夫だと頷き返す。彼女の仲間達は、戦術というものをよく理解している。無駄な暴走は決してしないだろう。
そして事実、岩蠍型ゾンビの群れを視界に捉えた冒険者達は、ロゼット率いるシュバート伯爵私兵団の到着を待ちながら、じりじりと間合いを詰めていった。
●戦闘開始
先行して敵の情勢を偵察してきたハヤト=ガラン=ヴォルファングとベルク・オスマットのふたりは、揃って渋い表情を浮かべた。
敵は岩蠍型ゾンビだけではなく、天陽道の唱紋士ふたりに加え、メドゥの指先幹部『青の中指』ジルベルの姿もあった、と報告した。
「何か気のせいか、あの白虎とは最近よく出くわしている様に思える」
王党派と貴族派の争いにはまるで興味が無いベルクだが、直接戦う相手がジルベルとなると、多少面倒臭いという気がしないでもない。
元々ベルク自身、今最も気にかけているのはシルトラース帝国の再興だ。その一番の支援者が王国である以上は下らぬ内争で消耗して欲しくないというのが本音である。どこまでも帝国本位なベルクだが、その願望を達成するには、矢張りジルベルという障害の登場は余り嬉しい話ではない。
「唱紋士のひとりは、岩御門 典将なのですね……では、私が押さえましょう」
コルネリウス・アーラの幾分うんざりした表情。どんなところにでも首を突っ込んでくる天陽道には、いささか辟易しているのかも知れない。
しかし叩くと決めた以上は、きっちり斃し切ってみせる。今のコルネリウスは単なる盾役としての防御力だけではなく、必要とあらば確実に敵を斃すだけの攻撃力も具えていた。
「なら俺は灘九条だな」
ハヤトは天言殺呪の使い手灘九条 実康を引き受けると宣言した。
残る面々――ルアンナ・ミュラーとミゼリア・L・ステュクス、そしてベルクの三人で岩蠍型ゾンビの討伐に当たるということで、それぞれの役割分担は大体決まった。
「物理防御は凄いですけど、魔法に対しては結構弱いですからね。一網打尽にしてしまいましょう」
ルアンナの魔力が岩蠍型ゾンビには十分な破壊力を発揮することは、過去の戦闘で証明されている。その実績には間違いが無く、今回も主火力として機能することになるだろう。
問題はどうやって一カ所に誘い込むか、であるが。
「なるべく、がんばって、ひきつけますね……」
コルネリウスに憧れ、自らも盾役や囮役として経験を重ねつつあるミゼリアが、いつもの大人しげな調子でルアンナに頷き返した。
ミゼリアとコルネリウスが並び立てば、戦線が大きく崩壊する様な事態は中々発生しない。このふたりが揃うだけでも、その安心感は比類無いといって良い。
「お、来た様だぞ」
ベルクが東側の陸を指差した。
見ると、ロゼット率いるシュバート伯爵私兵団の陽動部隊が到着した様だ。
いよいよ、作戦開始である。
●確立した戦術
岩蠍型ゾンビの群れは、遠目に現れたシュバート伯爵私兵団に向けて動き出した。私兵団は近隣の町の守衛隊を装っており、その動きには怪しい点は見られない。
その間、ロゼットとエリニアは迂回させる様に馬を走らせ、冒険者達との合流を果たす。
「敵の移動ルートは、分析通りでしたね」
ルアンナに攻撃強化術を仕掛けるロゼットに、コルネリウスは抜刀しながら静かに笑いかけた。
シュバート伯爵は情報力に問題は無いが、分析力にいささか難があった。逆をいえば、その情報を冒険者達が利用すれば、岩蠍型ゾンビの群れの現在地はすぐに割れたのである。
そして事実、完璧に敵を捕捉することが出来た。後は作戦通りに敵を叩くのみだ。
直後、ルアンナの放った魔力の奔流が敵集団に襲い掛かった。ジルベルは咄嗟に回避した様だが、岩蠍型ゾンビと唱紋士のふたりはまともに直撃を浴びたらしい。
続けてミゼリアが、陣形が乱れる敵目掛けて駆け込んでゆく。全身から黒い瘴気を噴き上げ、苦痛を無視する強引な突入戦術で敵の群れの間を一気に駆け抜けた。
「さぁ、きなさい」
自律型の岩蠍型ゾンビは一匹の例外も無く、ミゼリアの動きに喰いついた。
そのミゼリアのやや後方付近で、ロゼットが配置に就いた。彼女は集中して祈りを捧げ、敵とミゼリアの間に雷雲を呼び起こす。ゾンビ共はミゼリアのみに意識を取られており、激しい雷の一撃には目もくれない。そのまま、次々と雷撃を浴びながらも黒い瘴気を噴き上げるミゼリアだけを目指し続けた。
そしてルアンナにとっても、今の敵の動きは狙い撃ちし易かった。
「いきますよ……光輝く蝶の群れは見どころ満載ですからね」
その宣言通り、眩い光を放つ蝶が巨大な河を形成し、岩蠍型ゾンビを一気に呑み込んでいった。更に続けて、間髪入れずに無数の光弾を頭上から降り注がせ、確実に打撃を蓄積させてゆく。
この一連の攻撃で、早くも敵は三体が動かぬ骸と化した。
だが、全ての敵が一斉にミゼリアへと到達してしまえば、如何に堅い守りを誇る彼女といえども少々危ない。そこでベルクが左右から奔走し、比較的距離のある岩蠍型ゾンビの脚関節に刃を叩き込んでいった。こうすることで個体毎の進撃速度に差が生じ、ミゼリアに到達しようとする敵に時間差が生まれる。
エリニアも得意の弓術で援護射撃を連発し、ベルクによる個体毎の時間差移動に拍車をかけた。
その結果、ミゼリアとしては一度に相手に廻す敵の数が減ることで、より少ない負担で囮役に専念することが出来た。勿論ロゼットの回復支援もあってのことでもある。
対岩蠍型ゾンビ戦は、順調に戦局が進んでいるといって良い。
●厄介な敵共
問題は、それ以外の敵である。
コルネリウスは岩御門に、そしてハヤトは灘九条へとそれぞれ肉迫した。
「生憎だが、邪魔はさせねぇ! こっちも片付けねぇと、西方のパワーバランスが崩れちまうんでな!」
機動力のハヤトが、天言殺呪の使い手たる灘九条攻略に動いたのは正解だった。灘九条は遠隔戦には滅法強いが、接近され、速さで翻弄されると最早お手上げだ。
一方コルネリウスが桐蓬忍道の達人である岩御門を相手取ったのも、戦術的には常道といって良い。岩御門は素早さには定評があるが、一撃当たりの攻撃力は然程でもない。こういう手合いは、防御力の高いコルネリウスが相手に廻ることで、ほぼ無力化させることが出来る。
「何度もお相手するのは、流石に飽きてしまいます。そろそろ決着をつけませんか?」
コルネリウスの挑発に、岩御門はまんまと乗った。セティアやエリニアを攻撃すればもっと違う戦術も取れたのだろうが、この時の岩御門には冷静さの欠片も見られなかった。
逆にコルネリウスとしては伯爵令嬢や新米冒険者を狙われれば決死の覚悟で守り切る腹積もりだったが、相手を挑発し、自ら前に出ることで後顧の憂いを断つという積極戦術に出ることで、作戦成功率を大いに高めた。
この時点で、残る懸念はジルベルだけであった。
そのジルベルだが、冒険者側のよもやの対応に、素っ頓狂な声を上げていた。
「おいおい、マジかぁ!」
この直前、得意の巨大ブーメランを投擲して後衛、即ちエリニアやセティアに一撃を叩き込もうとしていたらしいのだが、既に先読みして動いていたベルクが一気にセティアの傍らへと駆け戻り、巨大ブーメランを叩き落としてしまったのである。
コルネリウスが事前にブーメラン攻撃もあり得ると仲間達に知らせておいたのも大きく、セティアとエリニアはジルベルが動き出した時点で、他の冒険者達がカバーし易い位置へと移動していたのである。
冒険者側の完全な読み勝ちであった。ブーメラン自体は特殊なものではなく、量産が利く一般武器に過ぎないのだが、ジルベルが使うと恐るべき必殺の遠隔兵器と化す。これを早い段階で破壊出来たのは、戦術上非常に大きな意味を為した。
この直後、ジルベル周辺に光る柱が屹立した。ロゼットがジルベルを蚊帳の外に置くことで、より勝率を高めようとしたのである。正しい判断といえるだろう。
その間にまず、ハヤトが灘九条を仕留めた。
「いつまでもてめぇの相手はしてらんねぇんだよ! さっさと沈みな!」
ハヤトの蹴りを主体とした接近戦に、灘九条は最後まで対応することが出来なかった。
天言殺呪は、遠隔戦での撃ち合いとなると、かなり厄介な敵だ。しかし灘九条自身、近接戦闘の技量はかなり低い。相手がハヤトともなれば尚更で、ほとんど為す術が無かった。
結局、この厄介な天言殺呪使いはハヤトの繰り出す超速の刃をほとんど躱すことが出来ず、敢え無く血の海に沈んだ。
「な、灘九条!」
仲間が斃されたことで、岩御門も動揺した。その隙を見逃すコルネリウスではない。鋭く、そして迷いの無い一撃が、岩御門の胸元を正確に捉える。
これまで散々冒険者達に手を焼かせてきた桐蓬忍道の達人は、コルネリウスの放った大剣の切っ先に心臓を貫かれ、物いわぬ骸と化した。
天陽道の唱紋士が、立て続けに斃れた。その光景を、ロゼットは感慨深げに眺めている。これまで何度も苦戦を強いられてきた相手だが、存外、呆気無い最期だった様にも思えた。
そして岩蠍型ゾンビの群れも、囮役のミゼリアに殺到するところにルアンナの極大魔力攻撃を次々と浴びては斃れ、浴びては斃れを繰り返して、やがて残りは二匹だけという状態に陥っていた。
●点穴打術
だが戦いは、最後まで分からない。
ここで光の柱を破壊して脱出してきたジルベルが、二刀流で刃を振るいつつ参戦してきた。
その対応に真っ先に入ったのが、ハヤトである。
「行かせねぇよ!」
「お前、ホンッッット、俺のことが好きだなぁ!」
双方下らない軽口を叩き合いながら、乾いた金属音を響かせて刃を交える。戦闘スタイルはよく似ているが、ジルベルの技はいささかシャルガネに伝わる格闘技に似ていなくもない。
最初の数合までは互角に打ち合っていたハヤトだが、徐々に手数で押され始めた。矢張り敵は、メドゥの指先でも幹部に数えられる男である。純粋な技量では、まだハヤトより上と見た方が良いかも知れない。
と、そこにベルクが参戦した。
ふたりがかりならば互角に戦えるかも知れぬという算段だったが、しかし現実はそう甘くはなかった。
「えぇい、面倒臭ぇなぁ、もう!」
短く吠えた直後、ジルベルはハヤトとベルクの首筋に軽い一撃を加えて距離を取った。その直後、ハヤトもベルクも全身が痺れ、その場に膝を落としてしまった。
この動きに、コルネリウスは見覚えがあった。
「もしかして……点穴を?」
「ちぃとお前さん達、俺を甘く見過ぎだなぁ。成長するのは何も、冒険者だけの特権じゃねぇんだぜ」
かつて点穴打術の達人チェイ・ツァンウと行動を共にしていたこともあり、その極意をたとえ一部だけでも伝授されていたところで、何ら不思議な話ではない。
「俺がニッキーを逃がした時、俺自身もどうやって脱出したのか、不思議に思ったことは無かったか? これがその種明かしだよ!」
勿論、ジルベル自身は点穴打術の達人という訳ではなく、ほんの一瞬敵の動きを封じることが出来るに過ぎない。だが超速戦闘に於いては、その一瞬が命取りとなる。
ジルベル程の技量ともなれば、動きがほんの瞬間的に止まった相手の首を刎ねることなど、造作も無い。しかしここは、敢えて退いた。ハヤトやベルクの首を刎ねる間に、コルネリウスやロゼットの攻撃を浴びる可能性があったからだ。
ジルベルとしてはこれ以上の戦闘継続は意味が無く、離脱することに全力を傾けるべき状況であった。
「じゃあな、俺はもうお役御免ってことで帰ることにするよ。後は二匹だ。頑張んな」
それだけいい残して、ジルベルは一気に離脱していった。
追跡しようにも、まだ岩蠍型ゾンビは二体、残っている。冒険者達としても、当初の目的たるアンデッド共を全て斃さない限り、依頼は成功したとはいえない。
「今回は、諦めましょう」
コルネリウスはすぐさま頭を切り替え、残る二体のゾンビ討滅に意識を集中した。
やがて、ルアンナとミゼリア、コルネリウス、エリニア、ロゼットといった面々が攻撃を集中させ、最後の二体も無事に斃すことが出来た。
●テモルス奪還
冒険者達の活躍で、岩蠍型ゾンビはシュバート伯爵領内から全て、姿を消した。
この結果、ジルクック伯爵私兵団がシュバート伯爵領最西端の商業街テモルスに居座る理由が失われたことになる。
ここでセティアがシュバート伯爵と連れ立ってテモルスへと入り、ジルクック伯爵私兵団と直接交渉に臨み、テモルスからの撤退を申し入れた。
オルストフ伯爵の令嬢が直接出馬してきたことで、ジルクック伯爵も戦術転換を余儀なくされた。
王党派の反撃が、ここでも始まった格好である。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:多い6 / 4〜6人
2022年12月11日 21時56分36秒 公開
相談掲示板
ヒーラーのロゼットよ。 まだ未成立だけど、よろしくね。 戦闘の打ち合わせもあるけど、どう追跡、捕捉するかも問題ね。 目撃情報を追うだけだと、シュバート伯爵のように後手にまわって、 追いつくのに苦労するかも。 成立していない段階でなんだけど、一案として、シュバート伯爵に 捕捉のために協力をお願いしてみようかと思っているわ。 目撃情報から次に立ち寄りそうな場所のひとつで、派手に警戒を してもらって、ゾンビの群れに迂回させるように仕向けられないかと。 ある程度、動きを誘導した先で私たちで先回りすれば、捕捉できる 可能性が上がるんじゃないかなって。
依頼は成立ね。まだ数差が厳しいけど、やるからには全力で。 差し当たり、どう追跡、捕捉して先手を取るか。 戦いが始まったらどう動くか。この2点かしら。 >敵について 岩蠍型ゾンビ:物理には硬い。自律型で動く対象を狙う。 灘九条実康:キャスター型、複数対象の魔弾みたいな魔法を使う。 岩御門典将:シーフ型、回避高い。攻撃を当てるのは難易度高め。 逃走離脱用の炎術みたいなのを使う。 もう知ってる人も多そうだけど、イメージの共有ってことで。 ジルベルについては、私は戦うところを見たことが無いわ。 なんだかいつも、遠巻きに観察?してるイメージがあって。 全部を倒せるなら理想なんでしょうけど、優先順をつけるなら、 討伐指示を出されてる岩蠍型ゾンビなのかしら。 ジルクック伯爵私兵団が領内に居座す名目も、無くなる訳だし。
ウォーリアの、ミゼリア……です。 よろしく、おねがいします……ね。 ついせきと、ほそくについては……すみません、よい考えが、うかんでいないのですが…… ロゼットさんの、うかいさせて、こうほをしぼる案は……よいのではと、思い……ました。 てきのじょうほうも、ありがとう……ございます。 岩サソリゾンビは、「倒し方が確立されてる」と、書いてありましたが…… こう動いた方が……みたいなのがあれば、ご指示いただけたら、うれしい……です。 今のところは……セティアさんの、護衛を最優先に……対ゾンビの、タンク的な動きを考えて……います。
ウォーリアのコルネリウスです。よろしくお願いします。 >方針 岩蠍型ゾンビの群れの討伐がメインの依頼内容と認識していますので、こちらを優先とした方が良いと思います。 追跡についてはちょっとまだ纏まっていないので後程改めて。 ジルベルについては…私は最後に会ったのは大分前ですね。 戦闘での対応は経験はありますが、動きが非常に素早く、能力強化もされて回避能力も相当なため、余りまともにやり合えたことがありません。 戦闘となると、倒せない事は無いようですが優先すべき相手(岩蠍型)がいる事も含め、確実に足止めを行わない限り対処の難易度は高いのではと思います。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 >方針 まぁ岩蠍の討伐依頼なわけだから、岩蠍優先でいいだろうな。 問題は天陽道とジルベルによる妨害をどう排するかになるが。 >追跡 目撃情報から進路を予測して回り込むしかないか?
キャスターのルアンナです。 岩蠍を倒すのが依頼の主目的な訳ですし、それをまずは優先で良いと思います。 >追跡 目撃といいますか、あんな大きな蠍魔獣が何体も歩いてるのを人が見てたら速攻で通報が入ると思うんですよね。 逆に普段使う人がいない道とかを相手が知ってたらそっちを通るんじゃないでしょうか。
シュバート伯爵への要請は、反対がなければ入れてみるわ。 何か都合が悪いなら、また言ってちょうだい。 >追跡と捕捉 土地勘があるようには見えないから、ある程度は 街道というか、道なりに移動すると思うのだけど…。 先回りできて、待ち伏せの形で仕掛けられたら理想かな。 >戦闘方針 岩蠍型ゾンビの全滅は成功条件のようだから、硬い岩蠍には ルアンナに魔法攻撃を優先して、お願いしたいかなと思うわ。 私は…定番だけど「光縛封」で敵1体を3ラウンド隔離は できるかな…?仮に隔離するなら今回だとジルベルかしら。 >ミゼリア 弱点みたいなのは、ちょっと記憶にないかな。 動く対象を自動で狙う相手みたいだから、じっとしていると 攻撃される優先度は下がる、を護衛には利用できそうかしら。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! >追跡 ロゼットの案のシュバート伯爵への要請をして貰ったうえで構わねぇが、俺は鼻を使って追跡してみるつもりでいんぜ。 アンデッドってんならそれなりに臭いは残り易いだろーしな。 >戦闘 岩蠍の方は硬そーで相性悪そうだからな、 灘九条実康>岩御門典将>ジルベルの優先順で倒しにかかるのと注意を引き付けておこうかと思ってんぜ。 何人かは助太刀してくれっと助かるが岩蠍を殲滅する方が優先だしな。 最悪1人でも引っ掻き回してみるつもりだ。 岩蠍の殲滅にはルアンナの魔法が鍵を握りそうだし、そっちは頼んだぜ! ちなみにジルベルの野郎はブーメランで遠距離攻撃も仕掛けて来やがるから、後衛陣や護衛対象へのカバーにもすぐに入れる態勢でいねーとまずいかもしんねーぞ?
岩蠍は、うごく対象を自動でねらう……んですね。 ありがとう、ございます。 なら……セティアさんには、近くであまりうごかずにいてもらうように、お願いして…… わたしは剣をふりまわすなりして、なるべくたくさん、岩蠍をひきつけられるように、うごいて……みようかと……。 ブーメランは、あぶない……ですね。 回避がとても高いなら……シーザーロアよりも、カバリングのほうが、手堅い……でしょうか。 一応、セティアさんのそばで、ねらわれた時には庇えるように、意識しておきます……ね。 いまのところ、岩蠍のひきつけに専念するつもりですが……もし、ジルベルたち3人の分担にも、加わったほうがよさそうなら……おっしゃっていただけたら、と。
>自身の行動 私はシュバート伯爵への協力要請と。 戦闘時は、「光縛封」を(戦闘参加してくるなら)ジルベルに、 あと「祈雷4」の範囲攻撃を岩蠍型ゾンビにかけようかと。 このゾンビなら察知はできなさそうだし、識別可だから 乱戦でも撃てるわ。ゾンビ用に【物魔撃】の攻撃スキルも。 灘九条実康、岩御門典将への個別対応には加わらずに、 全体へのヒーラー、回復行動をしてるわ。 >ミゼリア このゾンビだと、シーザーロアの効果(感情の有無)が出ない 可能性がありそうだから、カバリングの方が良いかも。
間が空いてしまいすみません。 ジルベルは戦闘に参加してくるかどうか自体が不明ではありますね。 岩蠍型ゾンビは私も攻撃の相性は余り良くありませんから、ハヤトさんが灘九条実康を優先するのであれば私はゾンビ対応がスムーズに出来るよう、岩御門典将を抑えておきますね。