光輝く硝子を組んで
白葉うづき
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シナリオID:2639
オープニング
●
リーンエス王国北部に位置する都市、シャイネ。教会都市とも呼ばれるそこの人々は、毎日を慎ましやかに送っている。その中の一つ、グナーデ教会には神父であるメルチス・アダラードが常駐し、今日も人々と共に祈りを捧げ、孤児院の子どもたちと静かな時間を過ごしていた。一区切りついたところで、訪問者を迎える。
「こんにちは、メルチス」
「こんにちはミカエル、今日はどうしたんですか?」
「お酒の買い付けの途中に、貴方たちの顔を見に寄ったんです。今年も聖霊節に向けてさまざまな飲み物が出ていましたよ」
抱えている紙袋の中身を見せてもらうと、何本か鮮やかな瓶が並んでいた。
「この時期はワインが売りに出されることが多いですね。特別な人と特別な時間を過ごすのに、ちょうどいいものを仕入れてきました。これをどうぞ」
「わあ、綺麗な瓶のブドウジュースですね! ミカエルの選んだお酒も、ぜひ飲んでみたいです」
「いつでもいらしてください。あの子たちも歓迎しますよ」
ミカエルは街にあるバーの主人であり、メルチスの昔からの友人だ。雰囲気のあるバーと、本人自体に漂う色香で熱狂的なファンも多いらしい。
「このガラスチャームも可愛らしいですね」
「ええ。可愛らしい飾りが付いてくる、というのを売りにする品も多いようです。この都市らしい遊び心もあって私は好きですよ」
この都市は教会が多いこともあり、ガラス産業も発展している。ちょっとした飾りや日用品までガラス製品も多い。街中で見られる『ゼーゲン』と呼ばれるガラス製モビールも、もともとステンドグラスの切れ端を使って作られたものが最初だ。
「そういえば、店に来るガラス屋が端切れを寄付したい、と話していました。どうでしょう、あの子たちと一緒に何かを作ってみるのは」
「それはいいですね! 教会に飾ったり、あの子たちのお気に入りにしたり、プレゼントしたり……ミカエルのお店にも飾れるものを作るのも楽しそうです!」
「ふふ、楽しみにしています。お話をするいい機会にもなりますね」
「! はい、そうですね」
メルチスは微笑み、瞳を細める。
●
「本日は、皆さんと一緒に工作をしたいと思います」
皆を前に、メルチスが説明を始める。ガラス屋さんから貰ったガラス片を使って、好きなものを作ってみようという内容だ。ガラス片は危なくないよう、それぞれの角を丸めてもらっている。素材同士をくっつけるのも、魔法の接着剤を用意してもらったようだ。
「一番作りやすいのは、紐を結んで作るネックレスなどでしょうか。ガラス同士をくっつけて何か絵を作ったり、壁に飾れるよう木枠にはめるのもいいですね。ゼーゲンを作り、願いを込めて贈り物にするのも素敵ですよ」
「こうさく!」
「スールはこういうこと好きで、得意ですものね」
「強そうナノ作るゾ!」
「神父、教会に飾るものを作ってもいいんですか?」
「もちろんですよ、ピオ。ずっと飾っておくのも、聖霊節の飾りとして飾るものもいいと思います。ぶどうジュースの御礼に、バーへの贈り物をするのもいいですね。皆さんも、急にお呼び立てしてしまいすみません。私たちだけで工作をするのも寂しかったので、来ていただいて本当に嬉しいです。ぜひのんびりとした時間を過ごしていただければと思います」
穏やかに微笑むメルチスは、ひとつ呼吸を置く。
「皆さんが好きなものを作ってください。作りながらお話もしましょう。これから訪れる聖霊節、新しい年……もう少し先のことだって、もちろん」
「!」
その言葉を聞き、孤児院の一員であるアルドが僅かに目を見開く。
「まだ神父に言えないなら、他の方に相談するのもいいと思うわ」
「フィオ、……うん、そうだね。……僕でも平気か、僕なんか行ってもいいのか、神父たちに迷惑かけないか、それに、……僕が居なくなっても、……教会も僕も、平気なのか」
ずっと思考がぐるぐると回っている。手を伸ばしたガラスの破片が綺麗で眩しくて、そっと手の中に隠した。
リーンエス王国北部に位置する都市、シャイネ。教会都市とも呼ばれるそこの人々は、毎日を慎ましやかに送っている。その中の一つ、グナーデ教会には神父であるメルチス・アダラードが常駐し、今日も人々と共に祈りを捧げ、孤児院の子どもたちと静かな時間を過ごしていた。一区切りついたところで、訪問者を迎える。
「こんにちは、メルチス」
「こんにちはミカエル、今日はどうしたんですか?」
「お酒の買い付けの途中に、貴方たちの顔を見に寄ったんです。今年も聖霊節に向けてさまざまな飲み物が出ていましたよ」
抱えている紙袋の中身を見せてもらうと、何本か鮮やかな瓶が並んでいた。
「この時期はワインが売りに出されることが多いですね。特別な人と特別な時間を過ごすのに、ちょうどいいものを仕入れてきました。これをどうぞ」
「わあ、綺麗な瓶のブドウジュースですね! ミカエルの選んだお酒も、ぜひ飲んでみたいです」
「いつでもいらしてください。あの子たちも歓迎しますよ」
ミカエルは街にあるバーの主人であり、メルチスの昔からの友人だ。雰囲気のあるバーと、本人自体に漂う色香で熱狂的なファンも多いらしい。
「このガラスチャームも可愛らしいですね」
「ええ。可愛らしい飾りが付いてくる、というのを売りにする品も多いようです。この都市らしい遊び心もあって私は好きですよ」
この都市は教会が多いこともあり、ガラス産業も発展している。ちょっとした飾りや日用品までガラス製品も多い。街中で見られる『ゼーゲン』と呼ばれるガラス製モビールも、もともとステンドグラスの切れ端を使って作られたものが最初だ。
「そういえば、店に来るガラス屋が端切れを寄付したい、と話していました。どうでしょう、あの子たちと一緒に何かを作ってみるのは」
「それはいいですね! 教会に飾ったり、あの子たちのお気に入りにしたり、プレゼントしたり……ミカエルのお店にも飾れるものを作るのも楽しそうです!」
「ふふ、楽しみにしています。お話をするいい機会にもなりますね」
「! はい、そうですね」
メルチスは微笑み、瞳を細める。
●
「本日は、皆さんと一緒に工作をしたいと思います」
皆を前に、メルチスが説明を始める。ガラス屋さんから貰ったガラス片を使って、好きなものを作ってみようという内容だ。ガラス片は危なくないよう、それぞれの角を丸めてもらっている。素材同士をくっつけるのも、魔法の接着剤を用意してもらったようだ。
「一番作りやすいのは、紐を結んで作るネックレスなどでしょうか。ガラス同士をくっつけて何か絵を作ったり、壁に飾れるよう木枠にはめるのもいいですね。ゼーゲンを作り、願いを込めて贈り物にするのも素敵ですよ」
「こうさく!」
「スールはこういうこと好きで、得意ですものね」
「強そうナノ作るゾ!」
「神父、教会に飾るものを作ってもいいんですか?」
「もちろんですよ、ピオ。ずっと飾っておくのも、聖霊節の飾りとして飾るものもいいと思います。ぶどうジュースの御礼に、バーへの贈り物をするのもいいですね。皆さんも、急にお呼び立てしてしまいすみません。私たちだけで工作をするのも寂しかったので、来ていただいて本当に嬉しいです。ぜひのんびりとした時間を過ごしていただければと思います」
穏やかに微笑むメルチスは、ひとつ呼吸を置く。
「皆さんが好きなものを作ってください。作りながらお話もしましょう。これから訪れる聖霊節、新しい年……もう少し先のことだって、もちろん」
「!」
その言葉を聞き、孤児院の一員であるアルドが僅かに目を見開く。
「まだ神父に言えないなら、他の方に相談するのもいいと思うわ」
「フィオ、……うん、そうだね。……僕でも平気か、僕なんか行ってもいいのか、神父たちに迷惑かけないか、それに、……僕が居なくなっても、……教会も僕も、平気なのか」
ずっと思考がぐるぐると回っている。手を伸ばしたガラスの破片が綺麗で眩しくて、そっと手の中に隠した。
解説
●目標
ステンドグラスを使い、好きなものを作る
●教会都市シャイネ
リーンエス王国北側に位置する都市。教会が多いことで教会都市とも呼ばれる。古いものから新しいものまで教会が揃い、人々は自分の信じる神が祀られた教会へ赴く。
●材料と作り方
さまざまな色、形、大きさ、厚さの色付きガラス。ステンドグラスの切れ端なので、厚さは1センチ以下が多いようです。危なくないようすべての角が緩い丸みを帯びています。他には基本的な工作道具と、あまり大きくない木枠、木片や金属棒、紐、ワイヤー、そして絵を描く道具が使えます。
ガラス同士の接着に、魔法の接着剤を使わせてもらえることになりました。数分で接着し、ガラス同士やガラスと素材をくっつけることが出来ます。人体には無害です。
○ゼーゲン
ガラス細工のモビール。市販品は幸運が降りそそぐように、悪いものが入ってこないように、など祈りが込められているので、作成時はお好きな願いを込めるのがおすすめです。
ガラスを紐やワイヤーで幾つか結び、支えとなる木や金属棒を使って、バランスを見ながら作成します。
○オーナメント
部屋を飾ったり、置物やアートとなるもの。今の時期なら、聖霊節用に作るものが喜ばれると思います。作り方はそれぞれ、自由です。
他、工夫とアイディア次第で作成することが可能です。
本格的なものを作ろうとする場合、ガラス屋さんが設備を貸してくれますが、時間が掛かったりあまり大掛かりなものは難しいです。また、削ったり割ったりは危ないので、別室での作業となります
●NPC
・メルチス・アダラード
子どもたちを助けながら、自分も作品を作っています。かなり独特のセンスを持っているようです。
・アルド 12歳 ハーフビースト少年。授恵者に目覚め、パンクリアース学園に興味を持つ
・フィオ 11歳 エルフ少女。しっかり者、花や植物が好き
・ピオ 10歳 ヒューマン少年。本が好き
・ハウラ 9歳 リザードマン少女。おませさん、もふもふした動物が好き
・ティト 8歳 ゴブリン少年。強くなりたい
・スール 7歳 ハーフリング少年。裁縫好き
様子を見に来てくれるので、ミカエラに声を掛けることも可能です。
●備考
教会、もしくはバーに飾るものを作ると喜ばれそうです。子どもたちへの贈り物も喜ぶと思います。
お話も、とても喜ぶでしょう。
マスターより
お世話になっております。白葉うづきです。
ステンドグラスを使い、好きなものを作りましょう。
聖霊節に向けたものを作ったり、誰かのプレゼントにしたり、教会やバーなどへ贈る物を作っても歓迎されます。
お好きに楽しんでいただければと思います。
皆さんのアニエピカライフが素敵なものになりますように!
ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。
リプレイ
「こんにちは、いらっしゃい!」
「よう、元気にしてたか?」
「今日はよろしくお願いしますね」
「ぜひ、楽しんでいってください」
カイン・ステラ、コルネリウス・アーラたち冒険者は挨拶を返し、出迎えたメルチス・アダラードに案内される。創作の時間の始まりだ。
色とりどりの硝子を前に、アステルは想像を膨らませていた。こんなに素敵な形や色の種類があったら、きっと素敵なものしか出来ない。
「お花の形……」
「フィオさんは花が好きなの?」
「は、はい」
ぽつりと零れた言葉を拾い上げると、桃色の女の子は目を瞬かせた。
「良かったら一緒に、花をえがいたモザイクパネル、作っても良い?」
「いいんですか? ぜひ!」
「よかった! 私は何を作ろうかな……えっと、レンゲで!」
「素敵、お好きなんですか?」
「ううん、大好きなお兄ちゃんの誕生花なんだ」
兄の生まれた日に添えられた、誕生花という考え方。アステルはその花にあるという花言葉の意味も気に入っている。
「『あなたと一緒なら苦痛がやわらぐ』っていってね。私はお兄ちゃんと一緒なら何でも嬉しくって楽しくて、苦痛も分けてもらって和らげて、苦痛に苦しむお兄ちゃんをみて苦痛になる自分をなくすの。……ちょっとわかりづらいかな」
「わかります。一緒なら幸せだって」
「えへへ。あ、フィオさんの誕生日は?」
「私は十月十二日です」
わかったと笑うアステルに、フィオも尋ねる。アステルは快く答えてあげた。
(たまにはこういうのも良いですね)
命を奪い合う緊張感ばかりでは疲弊してしまう。平和で何事もない、何かを生み出せる依頼に飛び込んだヴィルヘルミナは、紙を広げて簡単に図を描いていく。連れてきたカカポと素材を見ながら予想図を完成させ、次に外形作りに取り掛かった。ガラス同士はくっつけるにしても、元になる骨組みがあった方が綺麗に出来上がる。本業職人の腕の見せ所だ。
ワイヤーを曲げていると、後ろで声が聞こえた。
「ピオ、下手!」
「うう、細かいことは苦手で……ティトもです!」
「オレもニガテ!」
ヒューマンとゴブリンの少年が並んで何かを作っている。苦戦しているようだ。
「木枠を置いてやった方が組み合わせやすいですよ。あなたも、くっつける時は必ずテーブルで」
ヴィルヘルミナの言葉に、二人は素直に従う。
「本当です!」
「ありがとナ! 一緒ニやってイイか?」
「構いません」
いそいそ道具をまとめ、子どもたちが移動してくる。作業をしながらも時折手助けをすると、嬉しそうな笑顔と礼が返ってきた。
「皆、元気そうだな」
「はい。お陰様であの村も賑わいを取り戻し、村の方から便りも続いているそうです」
イズル・M・ヴォルゴールは、前回関わった仕事のその後をメルチスから簡単に聞いていた。平穏が難しい時だからこそ、こうして自分の仕事が誰かを幸福にしたことは、モチベーションにもなる。
(さて、何を作ろう)
作業を開始したイズルが思い描いたのは、教会に飾るティンセルガーランドだ。さっそく形の近い小さな破片を集め、イズルはテーブルに並べ始める。どうやって配置すればより綺麗になるのか考えながら。
(あまり危なくないようにもしないとな)
幼い子はいないにしろ、もし事故のきっかけになればことだ。イズルは一メートル強の紐を複数本持ってきて、それらにガラスをくっつけていく。重くなりすぎないよう、けれど綺麗に見えるよう丁寧に。
「好きな色は何ですか?」
「きいろー!」
「銀色よ!」
「ええと……青、かな」
コルネリウスは子どもたちと話しながら、星の形を模索する。近くでメルチスも何か作っているようだ。
「メルチスさんは何、を」
「ジド・ルウが完成したんです!」
眩しい笑顔と共に見せてもらった作品は、潰れたトマトに目がついたものだった。
「個性があってとても素敵だと思います。世界にひとつだけの作品ですね」
「わぁ、ありがとうございます! この兎も上手く出来たと思うんです」
(溶けた雪だるまじゃなかったんですね……)
「今日はお誘いありがとうございます」
「こっちこそ。来てくれてありがとな。ネーヴェは、ステンドグラスで何か作品を作ったことがあるか? 俺は初めてなんだ」
「いえ、実は私も初めてですの。どんな風に作っていくのか、とても楽しみですわ」
「俺も」
アルフィー・リッパーの耳と尻尾が揺れていることに気付き、ネーヴェ・グラヌローザは微笑む。
「お互い頑張りましょうね」
説明を聞いた後、二人は各々の作品作りに取り掛かった。ネーヴェは頭の中で思い描きながら、それに似た形を組み合わせていく。菱形を組み合わせた星、四角と長方形を合わせたプレゼント、丸を繋げた雪だるま……ひとつずつ表情の違うオーナメントが出来上がっていく。
きらきらしたステンドグラスの破片を、同じく瞳を輝かせてアルフィーは見ていく。手先が器用な彼は自分でもアクセサリーを作ることが多く、想像の翼もたやすく広がった。それに、とネーヴェを見る。今日の彼には目的があった。
(この前迷惑かけちまったからな)
酒を共にした時、寝てしまったこと。そのお詫びとして彼女に贈り物を作るのだ。良さそうな破片を見ながら、何でもない風にアルフィーは口を開く。
「あー、なあ。あんたはどんな色が好きなんだ?」
「私、ですか? そうですわね、やはり白や青が好きでしょうか。アルフィーさんは何色がお好きですか?」
「俺か? そうだな……白と、赤が好きかな」
自分の尻尾に結んだリボンを見る。気にかかる色だ。
ネーヴェと緩やかな会話を交えながら、アルフィーは白と青を中心に破片を組み合わせては試していく。作成するのはキャンドルスタンド。模様は雪の結晶とか、時期に合わせたものは贈り物にも良さそうだし、彼女にも似合いそうだ。アルフィーの尻尾はぴんと伸びる。
「よし、じゃあ作るか」
別室にて作業を開始したのはサイラスだ。せっかく作るのならば、己の作りたいものを好きに作りたい。まず最初に取り掛かったのは自前用のオーナメント。持ってきた材料から赤いガラスを取り出し、組み合わせては割ったり削ったりして形を整え、くっつけていく。――みるみるうちに竜の形が見えてきた。胴をうねらせ迫力のある佇まいを想像する。これに翼を付け、上に聖霊節らしく星を付けるのが良さそうだ。
「一応あの酒、聖霊節の星って名前だしね」
集中した作業の末、翼の生えたガラスの赤竜が誕生する。細かなガラスの破片で出来たその竜は、角度を変えるだけできらきらと反射し見応えがあった。後は平面か球体かで竜を閉じ、吊り下げ型か床に置くかを決めるだけだが――サイラスの耳に、扉をひっかくような音が聞こえた。
「ん? あ、入ってきたら駄目だからな。破片散ってて危ないし」
扉のガラス部分に、白いもふっとしたものが映った。サイラスの飼い犬だ。扉に足を掛け、今日も人懐っこそうにサイラスを見ている。
「……吊るした方が安全くさいな」
そう結論付け、出来上がっていた星の加工を始めた。
透明なステンドグラスで立方体を作り、その中に竜を入れて閉じる。その上に飾った星へ紐を通して、吊り下げられるようにした。
「結構さくさく出来ちゃったな」
じゃあ教会用にもオーナメントを作るか、と。ジド・ルウを思い出しながら、サイラスはステンドグラスを見繕いに戻る。
カインはまず木枠を作成し、その中に絵を描くようガラスを配置していく。上部分は青に黒を混ぜたような深い色、下に行くにつれて徐々に明るい色の青になっていく、小さな空。カインは手元でグラデーションを織り成していった。
制作が始まってから少し経ったところで、カインはフィオを呼び、一緒にお茶の準備を始める。
「最近のアルドはどうだ?」
「! 知ってたんですか?
「ああ、前からな」
「もう……アルドは、本当に隠し事が上手じゃないです。ずっと悩んでるんです。出来るだけ迷惑かけたくないって」
「やっぱり、送り出す気なんだな」
「翼も飛ぶ意思もあるのにぐずぐずしてるんですもの」
「はは、手厳しいな」
どうやら、彼女の気持ちはとうに決まっていたらしい。
「フィオもいい子でいようとするとこあるから心配だな。寂しいから、我が侭位言って欲しいんだけどな」
フィオは目を瞬かせ、それから微笑む。
「今日はカインさんの料理が食べたいです!」
言葉に、カインは嬉しそうに笑った。
「アルドくん、何かお悩みですか?」
「! お姉さんは何でもわかるね。……すごいなぁ」
アルドから、学園に興味があると話してもらったコルネリウスは微笑む。
「興味を持ってもらえるのは、在学生としても嬉しいです」
「お姉さん、そうなの?」
「前年度は生徒会役員もしたんですよ」
コルネリウスは色んな話をする。学園のこと、授業のこと、そして尽力する、派閥や立場など関係なく誰もが視野を広めて学べる学園作り。
「アルドくんとも、一緒に学びたいと私は思っています。教会は寂しくなるとは思いますけれど、みんなしっかり者です。私が保証します。時々帰ってきてお顔を見せてあげれば、安心できますよ。教会の皆も、アルドくんも」
「……うん。ね、もっとお話、聞かせて」
名残惜しいと思う気持ちはわかる。けれど背を押すものになればと、コルネリウスは言葉を重ねた。
出来上がったティンセルガーランドは、少し重量はあるが角度を変えればきらきらと色んな色に輝いた。六本も作れば十分だろう。
まだ時間はありそうだと、イズルは自分用の飾りを作り始める。金と黄緑色に近い破片を探し、選んだ木片の周りへ放射状にガラスを接着していった。手の平サイズのそれは、ガラスが加わるたびに星のようにも見える。イズルは破片を見つめながら、時折オーナメントを置き、何かに浸るよう瞳を細めた。
「かなしそう」
「ん? ……ああ、これは大切な人をイメージしたんだ。もう会えないけど」
覗いてきた子どもが悲しそうな顔をして、イズルはぽんぽんと撫でる。
「俺にとって、明の明星みたいな人、!」
少年が、背伸びをしてイズルを撫でていた。
「お姉さん、とても手先が器用なんですね。尊敬します!」
「すごいゾ、ミテるだけデ楽しいナ!」
骨組みにガラスを組み合わせて色を宿してやると、立体的なガラスのカカポが出来上がる。カカポの隣に飾ってやると興味津々に見ていた。次に移る前にお茶が配られ、持ってきたお菓子を子どもにも分けてあげる。
(そういえば、ドワーフだけいないんですね)
孤児が居ないのはいいことだが、少しだけ疎外感も感じる。
「見てください、本が出来ましたよ!」
「みてクレ、剣だ!」
「見えますね」
ただ、こうして慕われるのも悪い気はしない。次に取り掛かった作品にも、子どもたちは歓声を上げてくれた。
「やった、綺麗に出来たよ!」
完成を迎え、アステルは喜びの声と共に両手を上げる。ステンドグラスのレンゲの花は、光を浴び輝いていた。
「私も出来ました!」
アステルが手を向けると、照れくさそうにハイタッチしてくれる。
「フィオさんにプレゼント! ガーベラの花だよ!」
アステルが渡したのは、赤に黄、ピンクと鮮やかな花が咲いたパネルだ。
「綺麗……!」
「よかった! 『希望』や『前進』って意味があるんだ」
「大切にします! その……アステルさんにも」
フィオが作っていたのは、四葉のパネル。
「私のために!? ありがとう、大切にするね!」
作業も終わりを迎え、選り分けも済んだネーヴェにアルフィーが声を掛ける。
「この間はあんたに迷惑かけたから、よかったら」
差し出したのは、ステンドグラスで出来たキャンドルスタンド。青と白で六角形を作り、その周りに広がるよう大きな結晶を描いていた。
「まぁ、これは……私に?」
「ああ。あの時、酒の味はよくわからなかったけど、あんたと飲んだのは楽しかったから。だから、またこうやって遊べたら嬉しい」
「ええ、是非。またご一緒くださいな」
嬉しそうに受け取ってくれたネーヴェに、アルフィーは照れくさそうに頬をかく。
「今日は俺の好きなことだったけど、今度はネーヴェの好きなものもおしえてくれ」
「そんな、楽しいひと時を過ごせたのは私も同じですわ。こんな素敵な贈り物もいただきました。ですが……アルフィーさんのお気持ちが、とても嬉しいです。ありがとうございます、大切にいたしますね。それと、こちらを」
「え……これは」
ネーヴェが差し出したのは、赤と白で彩られた星のオーナメントだ。アルフィーは目を瞬かせて見つめる。
「ふふ、実は私も、アルフィーさんへ作りましたの。よろしければ受け取っていただけますか?」
「本当にいいのか? あとで返せっていっても返さねーぞ」
「ふふっ、勿論です。それはあなたを思い浮かべながら作った物ですから」
色違いの瞳をますます大きくし、それからそっぽを向いた。
「……今日は俺が御礼しようと思ったのに」
呟くような声に、ネーヴェはまた微笑む。それからキャンドルスタンドを光に透かし、眩しそうに見つめた。
「とても綺麗ですわね……」
そんなネーヴェの姿を見てまた照れたり、彼女に誘われ子どもたちにオーナメントを配りに行くのも、もう少し後の話。
サイラスがオーナメントを渡すと、お礼と共に瞳色のゼーゲンが渡される。どうやら今日のお礼にと全員分を作ったようだ。イズルが渡されたものは、ひとつひとつ色の違う紫だ。
「みんなが過ごす聖霊節が、少しでも楽しくなりますように」
イズルの言葉に、子どもたちも祝福を返す。
「私から、聖霊節のプレゼントです」
「わーすごい!」
お揃いの星型オーナメントで喜ぶ皆に、コルネリウスは微笑む。
「メルチスさんにも良かったら」
「これは……素敵な贈り物をありがとうございます」
アルドからの話も伝えると、メルチスは優しく笑った。
「ありがとう。私は、あの子が幸せならば嬉しいんです」
「もし困ったことがあれば私が必ず護りますし、力になると約束します」
「……本当に貴方は、私たちに幸せをくれる。けれどどうか貴方も、無事を約束してください」
メルチスは、感謝と祝福の祈りを捧げる。
アルドを呼び、カインは完成した作品を見せる。
「すごい、綺麗!」
「空っぽいだろ。空は昨日と今日で違ったりするが、大陸中同じ空で繋がっている。面白いだろ」
「そっか……」
「アルドは、どうしたい?」
少年はきっと進みたい道がある。カインたちが出来るのは、それを塞がず、話を聞き、決断の助けをするだけ。
「アルドは欲張りになっていい。お前は価値のある男だ」
想いを伝え終えたカインは、年下の友人をただ見守る。
「カイン兄ちゃん。僕は多分、学園に、行きたい。行って勉強して、もっと……皆の役に立てるように、なりたい……!」
お姉ちゃんにも伝えてくる、と走る少年の背中は、ずいぶん大きくなったように見えた。
「よう、元気にしてたか?」
「今日はよろしくお願いしますね」
「ぜひ、楽しんでいってください」
カイン・ステラ、コルネリウス・アーラたち冒険者は挨拶を返し、出迎えたメルチス・アダラードに案内される。創作の時間の始まりだ。
色とりどりの硝子を前に、アステルは想像を膨らませていた。こんなに素敵な形や色の種類があったら、きっと素敵なものしか出来ない。
「お花の形……」
「フィオさんは花が好きなの?」
「は、はい」
ぽつりと零れた言葉を拾い上げると、桃色の女の子は目を瞬かせた。
「良かったら一緒に、花をえがいたモザイクパネル、作っても良い?」
「いいんですか? ぜひ!」
「よかった! 私は何を作ろうかな……えっと、レンゲで!」
「素敵、お好きなんですか?」
「ううん、大好きなお兄ちゃんの誕生花なんだ」
兄の生まれた日に添えられた、誕生花という考え方。アステルはその花にあるという花言葉の意味も気に入っている。
「『あなたと一緒なら苦痛がやわらぐ』っていってね。私はお兄ちゃんと一緒なら何でも嬉しくって楽しくて、苦痛も分けてもらって和らげて、苦痛に苦しむお兄ちゃんをみて苦痛になる自分をなくすの。……ちょっとわかりづらいかな」
「わかります。一緒なら幸せだって」
「えへへ。あ、フィオさんの誕生日は?」
「私は十月十二日です」
わかったと笑うアステルに、フィオも尋ねる。アステルは快く答えてあげた。
(たまにはこういうのも良いですね)
命を奪い合う緊張感ばかりでは疲弊してしまう。平和で何事もない、何かを生み出せる依頼に飛び込んだヴィルヘルミナは、紙を広げて簡単に図を描いていく。連れてきたカカポと素材を見ながら予想図を完成させ、次に外形作りに取り掛かった。ガラス同士はくっつけるにしても、元になる骨組みがあった方が綺麗に出来上がる。本業職人の腕の見せ所だ。
ワイヤーを曲げていると、後ろで声が聞こえた。
「ピオ、下手!」
「うう、細かいことは苦手で……ティトもです!」
「オレもニガテ!」
ヒューマンとゴブリンの少年が並んで何かを作っている。苦戦しているようだ。
「木枠を置いてやった方が組み合わせやすいですよ。あなたも、くっつける時は必ずテーブルで」
ヴィルヘルミナの言葉に、二人は素直に従う。
「本当です!」
「ありがとナ! 一緒ニやってイイか?」
「構いません」
いそいそ道具をまとめ、子どもたちが移動してくる。作業をしながらも時折手助けをすると、嬉しそうな笑顔と礼が返ってきた。
「皆、元気そうだな」
「はい。お陰様であの村も賑わいを取り戻し、村の方から便りも続いているそうです」
イズル・M・ヴォルゴールは、前回関わった仕事のその後をメルチスから簡単に聞いていた。平穏が難しい時だからこそ、こうして自分の仕事が誰かを幸福にしたことは、モチベーションにもなる。
(さて、何を作ろう)
作業を開始したイズルが思い描いたのは、教会に飾るティンセルガーランドだ。さっそく形の近い小さな破片を集め、イズルはテーブルに並べ始める。どうやって配置すればより綺麗になるのか考えながら。
(あまり危なくないようにもしないとな)
幼い子はいないにしろ、もし事故のきっかけになればことだ。イズルは一メートル強の紐を複数本持ってきて、それらにガラスをくっつけていく。重くなりすぎないよう、けれど綺麗に見えるよう丁寧に。
「好きな色は何ですか?」
「きいろー!」
「銀色よ!」
「ええと……青、かな」
コルネリウスは子どもたちと話しながら、星の形を模索する。近くでメルチスも何か作っているようだ。
「メルチスさんは何、を」
「ジド・ルウが完成したんです!」
眩しい笑顔と共に見せてもらった作品は、潰れたトマトに目がついたものだった。
「個性があってとても素敵だと思います。世界にひとつだけの作品ですね」
「わぁ、ありがとうございます! この兎も上手く出来たと思うんです」
(溶けた雪だるまじゃなかったんですね……)
「今日はお誘いありがとうございます」
「こっちこそ。来てくれてありがとな。ネーヴェは、ステンドグラスで何か作品を作ったことがあるか? 俺は初めてなんだ」
「いえ、実は私も初めてですの。どんな風に作っていくのか、とても楽しみですわ」
「俺も」
アルフィー・リッパーの耳と尻尾が揺れていることに気付き、ネーヴェ・グラヌローザは微笑む。
「お互い頑張りましょうね」
説明を聞いた後、二人は各々の作品作りに取り掛かった。ネーヴェは頭の中で思い描きながら、それに似た形を組み合わせていく。菱形を組み合わせた星、四角と長方形を合わせたプレゼント、丸を繋げた雪だるま……ひとつずつ表情の違うオーナメントが出来上がっていく。
きらきらしたステンドグラスの破片を、同じく瞳を輝かせてアルフィーは見ていく。手先が器用な彼は自分でもアクセサリーを作ることが多く、想像の翼もたやすく広がった。それに、とネーヴェを見る。今日の彼には目的があった。
(この前迷惑かけちまったからな)
酒を共にした時、寝てしまったこと。そのお詫びとして彼女に贈り物を作るのだ。良さそうな破片を見ながら、何でもない風にアルフィーは口を開く。
「あー、なあ。あんたはどんな色が好きなんだ?」
「私、ですか? そうですわね、やはり白や青が好きでしょうか。アルフィーさんは何色がお好きですか?」
「俺か? そうだな……白と、赤が好きかな」
自分の尻尾に結んだリボンを見る。気にかかる色だ。
ネーヴェと緩やかな会話を交えながら、アルフィーは白と青を中心に破片を組み合わせては試していく。作成するのはキャンドルスタンド。模様は雪の結晶とか、時期に合わせたものは贈り物にも良さそうだし、彼女にも似合いそうだ。アルフィーの尻尾はぴんと伸びる。
「よし、じゃあ作るか」
別室にて作業を開始したのはサイラスだ。せっかく作るのならば、己の作りたいものを好きに作りたい。まず最初に取り掛かったのは自前用のオーナメント。持ってきた材料から赤いガラスを取り出し、組み合わせては割ったり削ったりして形を整え、くっつけていく。――みるみるうちに竜の形が見えてきた。胴をうねらせ迫力のある佇まいを想像する。これに翼を付け、上に聖霊節らしく星を付けるのが良さそうだ。
「一応あの酒、聖霊節の星って名前だしね」
集中した作業の末、翼の生えたガラスの赤竜が誕生する。細かなガラスの破片で出来たその竜は、角度を変えるだけできらきらと反射し見応えがあった。後は平面か球体かで竜を閉じ、吊り下げ型か床に置くかを決めるだけだが――サイラスの耳に、扉をひっかくような音が聞こえた。
「ん? あ、入ってきたら駄目だからな。破片散ってて危ないし」
扉のガラス部分に、白いもふっとしたものが映った。サイラスの飼い犬だ。扉に足を掛け、今日も人懐っこそうにサイラスを見ている。
「……吊るした方が安全くさいな」
そう結論付け、出来上がっていた星の加工を始めた。
透明なステンドグラスで立方体を作り、その中に竜を入れて閉じる。その上に飾った星へ紐を通して、吊り下げられるようにした。
「結構さくさく出来ちゃったな」
じゃあ教会用にもオーナメントを作るか、と。ジド・ルウを思い出しながら、サイラスはステンドグラスを見繕いに戻る。
カインはまず木枠を作成し、その中に絵を描くようガラスを配置していく。上部分は青に黒を混ぜたような深い色、下に行くにつれて徐々に明るい色の青になっていく、小さな空。カインは手元でグラデーションを織り成していった。
制作が始まってから少し経ったところで、カインはフィオを呼び、一緒にお茶の準備を始める。
「最近のアルドはどうだ?」
「! 知ってたんですか?
「ああ、前からな」
「もう……アルドは、本当に隠し事が上手じゃないです。ずっと悩んでるんです。出来るだけ迷惑かけたくないって」
「やっぱり、送り出す気なんだな」
「翼も飛ぶ意思もあるのにぐずぐずしてるんですもの」
「はは、手厳しいな」
どうやら、彼女の気持ちはとうに決まっていたらしい。
「フィオもいい子でいようとするとこあるから心配だな。寂しいから、我が侭位言って欲しいんだけどな」
フィオは目を瞬かせ、それから微笑む。
「今日はカインさんの料理が食べたいです!」
言葉に、カインは嬉しそうに笑った。
「アルドくん、何かお悩みですか?」
「! お姉さんは何でもわかるね。……すごいなぁ」
アルドから、学園に興味があると話してもらったコルネリウスは微笑む。
「興味を持ってもらえるのは、在学生としても嬉しいです」
「お姉さん、そうなの?」
「前年度は生徒会役員もしたんですよ」
コルネリウスは色んな話をする。学園のこと、授業のこと、そして尽力する、派閥や立場など関係なく誰もが視野を広めて学べる学園作り。
「アルドくんとも、一緒に学びたいと私は思っています。教会は寂しくなるとは思いますけれど、みんなしっかり者です。私が保証します。時々帰ってきてお顔を見せてあげれば、安心できますよ。教会の皆も、アルドくんも」
「……うん。ね、もっとお話、聞かせて」
名残惜しいと思う気持ちはわかる。けれど背を押すものになればと、コルネリウスは言葉を重ねた。
出来上がったティンセルガーランドは、少し重量はあるが角度を変えればきらきらと色んな色に輝いた。六本も作れば十分だろう。
まだ時間はありそうだと、イズルは自分用の飾りを作り始める。金と黄緑色に近い破片を探し、選んだ木片の周りへ放射状にガラスを接着していった。手の平サイズのそれは、ガラスが加わるたびに星のようにも見える。イズルは破片を見つめながら、時折オーナメントを置き、何かに浸るよう瞳を細めた。
「かなしそう」
「ん? ……ああ、これは大切な人をイメージしたんだ。もう会えないけど」
覗いてきた子どもが悲しそうな顔をして、イズルはぽんぽんと撫でる。
「俺にとって、明の明星みたいな人、!」
少年が、背伸びをしてイズルを撫でていた。
「お姉さん、とても手先が器用なんですね。尊敬します!」
「すごいゾ、ミテるだけデ楽しいナ!」
骨組みにガラスを組み合わせて色を宿してやると、立体的なガラスのカカポが出来上がる。カカポの隣に飾ってやると興味津々に見ていた。次に移る前にお茶が配られ、持ってきたお菓子を子どもにも分けてあげる。
(そういえば、ドワーフだけいないんですね)
孤児が居ないのはいいことだが、少しだけ疎外感も感じる。
「見てください、本が出来ましたよ!」
「みてクレ、剣だ!」
「見えますね」
ただ、こうして慕われるのも悪い気はしない。次に取り掛かった作品にも、子どもたちは歓声を上げてくれた。
「やった、綺麗に出来たよ!」
完成を迎え、アステルは喜びの声と共に両手を上げる。ステンドグラスのレンゲの花は、光を浴び輝いていた。
「私も出来ました!」
アステルが手を向けると、照れくさそうにハイタッチしてくれる。
「フィオさんにプレゼント! ガーベラの花だよ!」
アステルが渡したのは、赤に黄、ピンクと鮮やかな花が咲いたパネルだ。
「綺麗……!」
「よかった! 『希望』や『前進』って意味があるんだ」
「大切にします! その……アステルさんにも」
フィオが作っていたのは、四葉のパネル。
「私のために!? ありがとう、大切にするね!」
作業も終わりを迎え、選り分けも済んだネーヴェにアルフィーが声を掛ける。
「この間はあんたに迷惑かけたから、よかったら」
差し出したのは、ステンドグラスで出来たキャンドルスタンド。青と白で六角形を作り、その周りに広がるよう大きな結晶を描いていた。
「まぁ、これは……私に?」
「ああ。あの時、酒の味はよくわからなかったけど、あんたと飲んだのは楽しかったから。だから、またこうやって遊べたら嬉しい」
「ええ、是非。またご一緒くださいな」
嬉しそうに受け取ってくれたネーヴェに、アルフィーは照れくさそうに頬をかく。
「今日は俺の好きなことだったけど、今度はネーヴェの好きなものもおしえてくれ」
「そんな、楽しいひと時を過ごせたのは私も同じですわ。こんな素敵な贈り物もいただきました。ですが……アルフィーさんのお気持ちが、とても嬉しいです。ありがとうございます、大切にいたしますね。それと、こちらを」
「え……これは」
ネーヴェが差し出したのは、赤と白で彩られた星のオーナメントだ。アルフィーは目を瞬かせて見つめる。
「ふふ、実は私も、アルフィーさんへ作りましたの。よろしければ受け取っていただけますか?」
「本当にいいのか? あとで返せっていっても返さねーぞ」
「ふふっ、勿論です。それはあなたを思い浮かべながら作った物ですから」
色違いの瞳をますます大きくし、それからそっぽを向いた。
「……今日は俺が御礼しようと思ったのに」
呟くような声に、ネーヴェはまた微笑む。それからキャンドルスタンドを光に透かし、眩しそうに見つめた。
「とても綺麗ですわね……」
そんなネーヴェの姿を見てまた照れたり、彼女に誘われ子どもたちにオーナメントを配りに行くのも、もう少し後の話。
サイラスがオーナメントを渡すと、お礼と共に瞳色のゼーゲンが渡される。どうやら今日のお礼にと全員分を作ったようだ。イズルが渡されたものは、ひとつひとつ色の違う紫だ。
「みんなが過ごす聖霊節が、少しでも楽しくなりますように」
イズルの言葉に、子どもたちも祝福を返す。
「私から、聖霊節のプレゼントです」
「わーすごい!」
お揃いの星型オーナメントで喜ぶ皆に、コルネリウスは微笑む。
「メルチスさんにも良かったら」
「これは……素敵な贈り物をありがとうございます」
アルドからの話も伝えると、メルチスは優しく笑った。
「ありがとう。私は、あの子が幸せならば嬉しいんです」
「もし困ったことがあれば私が必ず護りますし、力になると約束します」
「……本当に貴方は、私たちに幸せをくれる。けれどどうか貴方も、無事を約束してください」
メルチスは、感謝と祝福の祈りを捧げる。
アルドを呼び、カインは完成した作品を見せる。
「すごい、綺麗!」
「空っぽいだろ。空は昨日と今日で違ったりするが、大陸中同じ空で繋がっている。面白いだろ」
「そっか……」
「アルドは、どうしたい?」
少年はきっと進みたい道がある。カインたちが出来るのは、それを塞がず、話を聞き、決断の助けをするだけ。
「アルドは欲張りになっていい。お前は価値のある男だ」
想いを伝え終えたカインは、年下の友人をただ見守る。
「カイン兄ちゃん。僕は多分、学園に、行きたい。行って勉強して、もっと……皆の役に立てるように、なりたい……!」
お姉ちゃんにも伝えてくる、と走る少年の背中は、ずいぶん大きくなったように見えた。
マスターコメント
お疲れ様でした!
作品作りは捗ったでしょうか。
教会にいただいたものは、子どもたちに大人気です。
聖霊節には必ず飾られるでしょう。
また、少年の背中を押していただきありがとうございます。
私自身も感無量の想いがいたしました。
ご参加いただきありがとうございました!
ショートシナリオ易しい 報酬:少ない8 / 4〜8人
2022年12月13日 19時59分54秒 公開
大成功
相談掲示板
コルネリウスです、よろしくお願いします。 メルチスさんの作品も、楽しみにしていますね。 私は何を作るかはまだ考え中なのですが、アルドくんとお話がしたいと思っています。 以前から学園に興味があるようでしたし、在学生としても色々お伝えやサポートが出来たら良いなと。
メルチス・アダラードを申します。今日はお集りいただきありがとうございます。 ぜひ好きなように作品をお作りください。 おや、私の作品が楽しみなのですか? それはそれは、張り切って作りますね……! こう見えても自信があるんですよ。 コルネリウスさんの作品も、もちろん皆さんの作品も、生まれることを心待ちにしております。
ヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いします。 折角ですから色々と作ってみようかと。
No.4
アステルです。どうぞよろしくね!! 私は絵が好きだから、その方向で行くつもりだよ。 皆と仲良く、楽しくできたら嬉しいな♪
カイン・ステラ、よろしく。 今ちょっと立て込んでるので今日は挨拶だけ。