大切なものを探して
広大野人
コメント 4
シナリオID:2633
オープニング
●
横暴な領主や鬼のような親や親族から逃げ出し、二人は夕陽に照らされた海岸線を歩く。
戻る場所なんてない。
あるのは……新天地を目指すだけだ。それは苦難の旅路だろう。
だけど、二人の顔に絶望はなかった。愛する人と共に歩んでいけるのなら――苦難はむしろ二人の絆をより強くするだけのものだから。
「どうしたんだい?」
河口付近に辿り着いた時、男性は連れそう女性の寂しそうな表情に気が付いた。
やはり……故郷を飛び出す事は辛いのだろうか。
「あの時、投げてしまった婚約指輪……投げた振りでもしてればって」
「その事か。良いんだよ」
「でも、あの指輪……貴方がとても苦労して用意してくれたのに」
諸々あって、衆目の前で女性は指輪を投げなければならなくなった。
本心ではない。けれど、そうでもしないと、彼の命が危なかったから。
「いつかまた必ず渡すから……だから、落ち込まないで欲しい」
「うん……」
その時、二人は夕日を強く反射する光を見つけた。
干潟の端で、まるで生き物のようにチカチカと。
二人は不思議そうな顔を浮かべて顔を見合わすと、恐る恐る光の正体に近づいた。
「あ……これは!?」
「し、信じられない……こんな事って!」
夕陽を反射していたのは失われたはずの婚約指輪だった。
男性は指輪を拾い、自らの衣服で丁寧に拭くと表情を緩めた。輝きは失われていない。いや、むしろ、以前よりも眩く見える。
そして、驚きと喜びに満ちた女性のしなやかな手を大事に握ると婚約指輪を――
●
バンっと台本がテーブルを叩いた。
「あんね……いや、分かるよ。気持ちはさ……でも、あり得なさすぎでしょ!」
監督が頭を抱えながら言った。
恋愛を題材とした劇だから、多少のご都合があっても、構わないけど、幾らなんでも都合良すぎる話だったからだ。
「いやいや、これぐらい、夢見たっていいじゃないですか!」
自信満々に脚本家が胸を張る。
作り話だからこそ、奇跡があっていいのだ。愛の為に全てを投げだした二人が、愛の結晶ともいえるものを最後の最後で手にできて、ハッピーエンドで終わるのだから、この上ない形だと考えているのだ。
「あまりにも現実味がないと逆に反応が悪くなるんじゃないか」
「……確かにそうですが……けれど、世の中にはもっと凄い奇跡だってありますし!」
現実は小説より奇なり。
脚本家の反論に監督は唸る。どうせなら、もっと凄い奇跡で締め括ってもいいんじゃないかなとか思いつつも……収拾がつかない展開にはさせたくない。
「そうだ。折角だから、冒険者に探し物をさせて、その話を聞かせて貰ったらどうだ。お前が描いた脚本以上に、何か大切なものを偶然にも見つけた人が出て来るかもしれないだろ?」
縁というものは不思議なものだ。
ある品物が巡り回って十数年振りに元の持ち主の所へ帰ってきたという話もあるぐらいだし。運命か奇跡か偶然か、この依頼を通じて、探し物が見つかるかもしれない。
それに、もし、探し物が見つからなくとも、その過程そのものも、脚本の参考になるかもしれないのだ。
「なるほど。それは良いかもしれませんね」
大いに頷く脚本家だった。
横暴な領主や鬼のような親や親族から逃げ出し、二人は夕陽に照らされた海岸線を歩く。
戻る場所なんてない。
あるのは……新天地を目指すだけだ。それは苦難の旅路だろう。
だけど、二人の顔に絶望はなかった。愛する人と共に歩んでいけるのなら――苦難はむしろ二人の絆をより強くするだけのものだから。
「どうしたんだい?」
河口付近に辿り着いた時、男性は連れそう女性の寂しそうな表情に気が付いた。
やはり……故郷を飛び出す事は辛いのだろうか。
「あの時、投げてしまった婚約指輪……投げた振りでもしてればって」
「その事か。良いんだよ」
「でも、あの指輪……貴方がとても苦労して用意してくれたのに」
諸々あって、衆目の前で女性は指輪を投げなければならなくなった。
本心ではない。けれど、そうでもしないと、彼の命が危なかったから。
「いつかまた必ず渡すから……だから、落ち込まないで欲しい」
「うん……」
その時、二人は夕日を強く反射する光を見つけた。
干潟の端で、まるで生き物のようにチカチカと。
二人は不思議そうな顔を浮かべて顔を見合わすと、恐る恐る光の正体に近づいた。
「あ……これは!?」
「し、信じられない……こんな事って!」
夕陽を反射していたのは失われたはずの婚約指輪だった。
男性は指輪を拾い、自らの衣服で丁寧に拭くと表情を緩めた。輝きは失われていない。いや、むしろ、以前よりも眩く見える。
そして、驚きと喜びに満ちた女性のしなやかな手を大事に握ると婚約指輪を――
●
バンっと台本がテーブルを叩いた。
「あんね……いや、分かるよ。気持ちはさ……でも、あり得なさすぎでしょ!」
監督が頭を抱えながら言った。
恋愛を題材とした劇だから、多少のご都合があっても、構わないけど、幾らなんでも都合良すぎる話だったからだ。
「いやいや、これぐらい、夢見たっていいじゃないですか!」
自信満々に脚本家が胸を張る。
作り話だからこそ、奇跡があっていいのだ。愛の為に全てを投げだした二人が、愛の結晶ともいえるものを最後の最後で手にできて、ハッピーエンドで終わるのだから、この上ない形だと考えているのだ。
「あまりにも現実味がないと逆に反応が悪くなるんじゃないか」
「……確かにそうですが……けれど、世の中にはもっと凄い奇跡だってありますし!」
現実は小説より奇なり。
脚本家の反論に監督は唸る。どうせなら、もっと凄い奇跡で締め括ってもいいんじゃないかなとか思いつつも……収拾がつかない展開にはさせたくない。
「そうだ。折角だから、冒険者に探し物をさせて、その話を聞かせて貰ったらどうだ。お前が描いた脚本以上に、何か大切なものを偶然にも見つけた人が出て来るかもしれないだろ?」
縁というものは不思議なものだ。
ある品物が巡り回って十数年振りに元の持ち主の所へ帰ってきたという話もあるぐらいだし。運命か奇跡か偶然か、この依頼を通じて、探し物が見つかるかもしれない。
それに、もし、探し物が見つからなくとも、その過程そのものも、脚本の参考になるかもしれないのだ。
「なるほど。それは良いかもしれませんね」
大いに頷く脚本家だった。
解説
●目的
貴方の大切なものを探す(見つかるとは限りません)。
●内容
貴方にとって大切なもの(物品や人物、想い出、気持ちなど)を探して頂きます。
・物品の場合、基本的には市場で売っているものに準拠します(目安としてはオリジナル化してある物やオリジナル化が可能な範囲なものになります)。
・人物については『死者』や『生死不明者』には当然ながら会う事はできません……が、夢の中であれば会う事ができます。
・場所に関しては、現状冒険者が到達できる所であれば制限はありませんが、それ以外の場所や特別な設定などの場合は、リプレイ上では、場所を明記せず、ぼやかして表現させていただきます。
・『何かを求めて探す』⇒『見つけたものが自分にとって大切なものだった』という形も大丈夫ですので、その際はプレイングで『最初から探し物を知っている訳ではない』など分かるように明記して下さい(読み取れない場合アドリブ対応とします)。
・リプレイは『探しているPCの姿』を描写しますので、依頼主に対する報告義務をプレイングの中では求めていません(キャラクター設定上、公にできない事情が明らかになると困る場合に対する判定上の都合によるものです)。
●発見できるかできないか
基本的にはプレイングで指定されて構いませんがお任せでも可です。
●特に探しものはないけど誰かに同行したい
その場合、双方のプレイングに同行者を明記して下さい。片方でも明記が無い場合、アドリブ対応とさせていただきます。
●NPC
必要であれば、私が管轄しているNPCを『探している相手』として指名できます(登録・非登録問いません)。ただし、『行方不明』になっている場合、どの様な形で会えるかは個々の状況によりますので、必要があれば質問卓で確認してください。
卓ではエクエスかファンゾムが何となく対応してくれます。
●結局、どんなシナリオなん?
大切なものを探している貴方の心情に焦点を当てたシナリオとなります。
探しものが見つからなくとも、その過程で思った事や決意した事、諦めた事……でもいいでしょう。もしくは探したものが見つかった時に、新たに抱く想いや達成感があるかもしれません。キャラクターの深堀として、参加頂ければと思います。
●その他
プレイングによってはアドリブ全開になる恐れがありますので、その点もご了承いただける方の参加を推奨致します。
マスターより
おはようございます。当依頼にて61作目となった広大野人です。
さてさて、今回のシナリオはちょっと一風(?)変わった探しもののシナリオとなります。見つかっても良いし、見つからなくてもいいし、「このアイテムを正史で見つけた事にしたい」とか「あの人と再会したい」とかでも良いし……と言っても、100%希望通りにいくかは世界観やら大人な都合もありますけど。
ちなみに私の場合、大事にしていた自転車が盗難にあって、暫くしてから何の脈絡もなく偶然通りがかった隣町のある家の庭に置いてある事を発見して、無事に取り返した……という想い出があったりします。
それでは、ご参加の程、お待ちしております!
リプレイ
●コルネリウス・アーラ
冬の風が窓を揺らして音を立て、コルネリウスは手紙に書き出したペンを止めた。
冒頭に――親愛なる父へと。――と記し残して。
ここは学園寮の自室。
家を出てから数年が経過し、今は冒険者として、そしてパンクリアース学園の生徒として日々を過ごしている。
(未来の事……私が『大切にしたいもの』は……)
そんな悩みをコルネリウスは父への手紙に綴った。
人生の岐路というものは、ふとした時に訪れるものなのだろう。未来に進む道を探し、選択する……その意味が何か、尽きない悩みがペン先を幾度も迷わせた。
学園生活で得た事、王国とこの国に生きるひとたちの為に、自身が出来る事をしたい。力になりたい人もできた……けれど、自分が王国で生きていく上では覚悟も必要だった。世相は不安定で、いつか王国と家族を天秤に掛けなければいけない事態だってあるかもしれない。その時、選択した『一番大切なもの』を、一切の後悔をせずに護りきれるのだろうか……覚悟仕切れない自身の弱さを吐露するように父に送った。
そして今、コルネリウスの手元にはその返信が届いていた。
ふと、優しげな眼差しを向ける赤紫色の瞳とふわりと広がる美しい銀色の髪が瞼に浮かぶ。
(父さん……)
広げた便箋に、コルネリウスの目元に涙が溜まる。
叱咤されるかもしれないと思った返事は――コルネリウスの背を優しく押す言葉だったからだ。
迷う事が恥ずべきではない事。父も家族もコルネリウスを『大切』に想っている事。例え、護るべきものを選択しなければならない日が来ても、コルネリウスが帰る場所は父が家族と共に護り抜く事……そして、最後にはこう記されていた。
「正しいと思って踏み出した道を進みなさい」
その言葉をコルネリウスは読み上げ、それまで胸の奥で溢れないように止めていた気持ちが溢れ出てくる。
微かに震える手で便箋を机の上に置き、零れ落ちそうな涙を拭った。
(……私、気付く事ができました。父さん……)
自身にとって必要なもの、手にとるべき、とても大切なもののひとつを。
自分の事を信じ、選んだ道と進む姿を認め、ありのままの自身を見てくれる……この進む姿を貴いと言ってくれるひと達。
(私は……私を認めてくれる、ひと達に命をかけて応えたいです)
コルネリウスは心の中で気持ちを整理すると、背中を押してくれた父さんに感謝の手紙を書き出すのであった。
●ハリス・アル・ターミル
一時、膝を抱えていたハリスだったが、恋人の為にとロスガリア中を巡り回っていた。
「我ながら如何に農業以外を知らず生きてきた事か……」
寝ずの強行軍で幾つもの街や村を回り、最終的に辿り着いたのはとある港町だった。
自身には勿体ない程の良縁に恵まれ、恋人と過ごす初めての12月の祭事。その時に贈る品を探していたのだが、農業一筋で生きてきた20数年……何を買っていいのか分からないままだ。
「……しかし、挫ける訳には! 祭事を控えた今なら、贈り物を扱う店はあるはず。ここは片端から当たってみるとしましょう!」
農耕と一緒だ。
動かなければ作物は育たない。動かなければ贈り物一つ手に入らない。
意気揚々と入った店は珍しい果物を扱う店だった。
「うぅむ……特産の果物とは惹かれますが。作ろうと思えば自力で……」
祭事といえばご馳走だが、食材を考えていると、どうしても仕事の延長を意識してしまう。恋人なら喜んでくれるだろうが、そうじゃない。
かと言って普通の店ではぬいぐるみやお菓子などを勧められる。
「トゥーリ殿は大人の女性。何か少し凝ったものをと……」
雰囲気の良い店に移動したハリスは店員にこれまでの経過をそう説明した。
食べ物でも無難なものでもなく……残された選択に店員は思いついたように、香炉と香料を持って来た。
「こちら、愛する人と過ごすひと時、気持ちをより高める香りとなっています……祭事に相応しい熱い夜になれますよ」
店員の台詞にハリスは全力で首と手を振った。
「そんなもので万が一があればどうするのですか!? 駄目です!!」
その万が一を迎える為のお香では……という店員のポカンとした顔にハリスは力強く言い放った。
「健全に! かつ、良き時間を共に過ごしたいのです!!」
「わ、わかりました……では、隣のブースにある『角飾り』は如何でしょうか? お客様は立派な角をお持ちですし……」
その提案にハリスは覗き込むようにブース内を見回した。様々な形状や大きさの飾りが並んでいる。
二人の共通する部位を飾る品物というのは良いかもしれない。
ハリスは暫し悩み続けた結果、腕輪に似た角の根元を飾る幾何学模様の角輪を選んだ。中央に輝く宝石が翠色のものと銀色のもので対になっているのも素晴らしい。
「喜んで貰えるでしょうか……はは、このような気持ちも祭事の一興ですね」
無事に探し物をみつけたハリスは初めて抱く気持ちと共に、贈り物を手にして帰路につくのであった。
●クレア・エクレール
クレアは冒険者として変わらない日々を過ごしていた。
(……)
自然と『彼』の姿を探している自分に気が付く。
組織幹部だったユーゲン・フォリングは拘留先で火事に巻き込まれ死んだとされる。けれど、クレアは『彼』がこの世界のどこかで生きている事を願っていた……いや、信じている。
『彼』の碧色の髪と瞳と共に最後に交わした言葉が、今も脳裏に繰り返し訪れているから。
(いつかすれ違うかもしれないし、出くわすかもしれない)
ありえないような偶然は奇跡と言ってもいいだろう。
夢見る乙女のようだとも、都合のいい願いだとも思われるかもしれない。クレア自身、再会できる確率が限りなく低い事は理解している。
(でも、ボクは幸運だから!)
希望の前に確率は意味を成さない。再会できる、そのいつかはどんなに遠くても、あるいは思ったよりも近くても、必ずやってくる。
だから、クレアは大陸中を仕事で飛びまわりながら『彼』の『碧』を探し続けていた。
ただ再会を待つヒロインではなく、自らの足で駆け続ける姿はクレアらしいと言えばそうなのかもしれない――もっとも、再会した時に何て声を掛けようかと寝る前に色々と考えたりする所はとても乙女チックではあるけれど。
そんなある日の事、依頼で立ち寄ったヴィントのとある装飾店でクレアは『彼』の『碧』と同じ色の宝石で彩られたブローチを見つけ、思わず手に取った。
「これは……」
魅入ったクレアに店主が感慨深げな様子で説明してくれる。
「半月ほど前、俺が商いのやり方で悩んでいた時に、親切に教えてくれた旅の青年がいてよ。感謝のつもりで作ったんだ。良い色だろ。その青年の目と同じ色を選んだんだぜ」
「……その人、髪も同じ色していなかったかな?」
ブローチを持つ手が微かに震える。
「あぁ……そう言われればそうかもな……そいつの事、追っかけてるのか?」
「そんな、ところ……だよ」
「だったら、御代はいらねぇ。あんたにくれてやる」
何かを察した店主にクレアはすぐに財布を出そうとしたが、それよりも早く店主が首を振った。
「あんたと青年の関係は俺にはわからないが、これも何かの縁かもしれねぇ。いつか顛末を聞かせてくれ。そしたら、その時、うちの商品をいっぱい買ってくれりゃいいからよ」
店主のかっこつけた笑みに、クレアはギュッとブローチを握り締めるのであった。
●エミリア・シバ
煌びやかなイルミネーションで包まれた街の通り。
二人の冒険者は露店やディスプレイを眺めながら腕を組んで歩いていた。
「このお店、かわいいものも新しいお酒もありそうね」
雑貨兼酒場を覗き込んでエミリアが期待を膨らませる。
踊り子としての仕事も冒険者としての仕事もない日は、当てもなく街中を散策し、お気に入りのものを探しており、今日もそんな穏やかな日を過ごしていた。
「そろそろ夕食も兼ねて入りますか?」
エクエスの問いにエミリアは少し考えた後、「そうね」と頷く。
確かに色々と店を回ったし、陽も落ちようとしているから夕食の頃合かもしれない。
「美味しいお酒があるといいわねぇ」
戸を開けて店内に入ると玄関ホールの半分程を雑貨が所狭しと並べられていた。
すかさずやってきたボーイがテーブルの用意をしてきますとエクエスに伝えている間、エミリアは何気なく雑貨に視線を向け――息が止まった。
それはアンティークのように古びた短剣だった。
もっとも、美術品の価値があるとは思えないものだ。刃に刻まれた溝は無骨でまとまりもなく、雑と評価されてもおかしくない代物だから。けれど、これが美術品でない事を、誰よりもエミリアが知っていた。
(…………)
遠い記憶が蘇る。
初めての仕事で毒を仕込む為に刃に溝を危なげに刻む幼き日の『私』。
仕事が嫌になり逃げ出した、あの日……。
(まさか、こんな所で再会する事になるとはね)
懐かしそうに短剣を手に取るエミリア。
どこかで落として失くしたのだが、誰かが拾って小銭稼ぎで売ったのだろうか。それが巡り巡って此処に在る事が不思議だった。偶然にしては出来過ぎだが悪い気は全くしない。
(そうね……)
エミリアは短剣に思いをそっと告げた。
無くさないで……消さないで……捨てないで……子供の頃の自身の慟哭を感じたから。
(自分の過去を誤魔化さず自覚して……全てを抱えていくわ。私が『おねえさん』であり『私』であるために)
胸元に寄せた短剣に心の中でエミリアは誓う。
この短剣は持っていこうと。全てを抱えていくこの旅路に一緒に連れて行くべきものだ。
「テーブルの準備ができたみたいですよ」
背後から響いたエクエスの声に、エミリアは振り返って微笑を浮かべて応える。
思わぬ再会をした事に、この剣士は驚くと同時に、これまでと変わらず、自分の事を受け入れてくれるだろうから。
●シルヴィア・A・カペル
生徒会役員であったシルヴィアは、生徒会室にお礼を伝える為、訪れていた。
ゆっくりしていってほしいという現生徒会役員の気遣いに、重厚な机の天板をなぞるように触れて頷く。
友と多くの学園生を守りたいという思いを抱き、誰もが笑える学園を目指した。
兄姉制度、文化祭、禁忌の塔でのことも、生徒会副会長としての活動も、メドゥの指先「黄の中指」ジード・ランスウッドとの陰謀戦も――シルヴィアは立ち向かい、選択の結果、ここに至っている。
(私は……祖父を演じただけではなかったはずだ……)
想う事があった。
産声を上げた時から『侯爵令嬢』という責任を背負っている。
偉大なる祖父であり、学園卒業後は『蒼玉』の後継者でもある。そして、祖母の意向で『冒険者』にもなった。更に冒険者の依頼を通じて、ジドの理想を託された……自らの存在そのものが、そうした理想を注ぎ込む器だったのではないかと。
誰かに望まれる理想を演じているだけで、『私』は何処にもいないのでは無いのか……小さい頃に旅した時の『私』は、彼方へと消えてしまったのだろうか。
手にしているジドの文集がやたらに重い。
(……私に理想を託して死んで逝くのか……誰も彼も……)
先に逝った人達は皆、少なくとも自身よりも智恵と経験も優れていただろう。それでも果たし続ける事ができなかった理想を――私にできるのだろうか。
託された理想に圧し潰されそうな気持ちの正体をシルヴィアは理解した。
(泣きたくなるとは……こういう事なんだね)
出来れば言葉をもっと交わしたかった。例え夢の中でも……理想を私が継いでよかったのかと……。
その時、お土産に持ってきた砂糖漬けされた薔薇入りの瓶が、太陽の光をキラキラと反射させた。祖父は祖母が作る砂糖漬けが大好きだった。
きっと、祖父も……このように瓶を眺めていたのだろうか。
(……そうだったのか……)
ゆっくりと瓶を持ち上げる、シルヴィア。
悩み苦しみながら、祖父もどこかでこうしていただろうと。けれど、そんな風には思えなかった祖父に憧れていた。その憧れを器に見立てていたのかもしれない。
祖父だけじゃないジドもきっと今の自分と同じように悩みを抱えていただろう。
(だとしたら、私は……)
シルヴィアは不意に訪れた不安に心の中で恋人の事を思い浮かべた。
彼への想いは、器ではなく、間違いなく自身だけのものなのだから。
●ミア=リゼル
組織幹部の一人だったトレイシーから渡されたメモを頼りにミアは幾つかの研究所跡を夜通し巡っていた。
ただ、証拠らしいものは何も見つからなかった……が、それは予想されたものだ。ジード・ランスウッドは研究の痕跡を残すような人物ではないから。
「ここにも……何もないですか……」
実験の規模や内容が少しでも明らかになれば……とも思っていたが、虚しい時間だけが過ぎていく。気が付けば夜明けが近いのか空がとても明るい。どうやら徹夜になってしまったようだ。
(陽が昇る……)
差し込んでくる朝日が窓の模様……いや、窓に彫られたデザインを通じて、一枚の床タイルを目印のように照らす。
ミアは驚きのあまり、息が止まった。
徐々に明るくなっていく研究所内の景色にフラッシュバックする記憶――ここかもしれないし、ここではないかもしれない。けれど、幼い日の想い出のようなものが一瞬だけ巡った。
「……このタイル……」
まるで誘われるようにミアはタイルを剥がした。
思った以上に簡単に外れた床の下には、ちょっとした大きさの石棺が埋まっている。
(まさか……)
緊張で心臓の音が大きくなる。
ミアは石棺の蓋を持ち上げ――そこには、丁寧に幾重にも包みで封じられた何かが入っていた。ゆっくりと慎重に包みを解いていく。
(……ツィトリ……これは調査書……ですね。それからこっちは……自鳴琴?)
書類をザっと見るが古くて痛んでおり解読が難しかったが、父親を示す欄には『ユーゴ=ダルダニエ』と記されてあった。だが、ミアに父の記憶はない。
母子を見捨て何もしなかった人だ。
(母に言わせれば、私はその人に生き写しだと……)
おかげで随分と母には憎まれたものだ。だから、特段、本当の父親が恋しい訳ではない。けれど、今、どこでどうしているのか、自分の事を覚えているのか……そこに興味があった。
(父のオルゴールでしょうか?)
煌びやかな装飾模様が描かれた自鳴琴の隅には名前が彫られていた。
想い出の品だったのか、それとも売るつもりだったのか……今となっては何故、調査書と一緒だったのか分からない。
ただ一つ、確かな事はあった。
(……久しぶり)
きっと幼かった自分も、こうして自鳴琴を眺めていたのだろうから。
ミアは調査書と自鳴琴を大事に鞄へと仕舞い、研究所から外に出る。
昇った陽が新しい日の到来を告げているのであった。
冬の風が窓を揺らして音を立て、コルネリウスは手紙に書き出したペンを止めた。
冒頭に――親愛なる父へと。――と記し残して。
ここは学園寮の自室。
家を出てから数年が経過し、今は冒険者として、そしてパンクリアース学園の生徒として日々を過ごしている。
(未来の事……私が『大切にしたいもの』は……)
そんな悩みをコルネリウスは父への手紙に綴った。
人生の岐路というものは、ふとした時に訪れるものなのだろう。未来に進む道を探し、選択する……その意味が何か、尽きない悩みがペン先を幾度も迷わせた。
学園生活で得た事、王国とこの国に生きるひとたちの為に、自身が出来る事をしたい。力になりたい人もできた……けれど、自分が王国で生きていく上では覚悟も必要だった。世相は不安定で、いつか王国と家族を天秤に掛けなければいけない事態だってあるかもしれない。その時、選択した『一番大切なもの』を、一切の後悔をせずに護りきれるのだろうか……覚悟仕切れない自身の弱さを吐露するように父に送った。
そして今、コルネリウスの手元にはその返信が届いていた。
ふと、優しげな眼差しを向ける赤紫色の瞳とふわりと広がる美しい銀色の髪が瞼に浮かぶ。
(父さん……)
広げた便箋に、コルネリウスの目元に涙が溜まる。
叱咤されるかもしれないと思った返事は――コルネリウスの背を優しく押す言葉だったからだ。
迷う事が恥ずべきではない事。父も家族もコルネリウスを『大切』に想っている事。例え、護るべきものを選択しなければならない日が来ても、コルネリウスが帰る場所は父が家族と共に護り抜く事……そして、最後にはこう記されていた。
「正しいと思って踏み出した道を進みなさい」
その言葉をコルネリウスは読み上げ、それまで胸の奥で溢れないように止めていた気持ちが溢れ出てくる。
微かに震える手で便箋を机の上に置き、零れ落ちそうな涙を拭った。
(……私、気付く事ができました。父さん……)
自身にとって必要なもの、手にとるべき、とても大切なもののひとつを。
自分の事を信じ、選んだ道と進む姿を認め、ありのままの自身を見てくれる……この進む姿を貴いと言ってくれるひと達。
(私は……私を認めてくれる、ひと達に命をかけて応えたいです)
コルネリウスは心の中で気持ちを整理すると、背中を押してくれた父さんに感謝の手紙を書き出すのであった。
●ハリス・アル・ターミル
一時、膝を抱えていたハリスだったが、恋人の為にとロスガリア中を巡り回っていた。
「我ながら如何に農業以外を知らず生きてきた事か……」
寝ずの強行軍で幾つもの街や村を回り、最終的に辿り着いたのはとある港町だった。
自身には勿体ない程の良縁に恵まれ、恋人と過ごす初めての12月の祭事。その時に贈る品を探していたのだが、農業一筋で生きてきた20数年……何を買っていいのか分からないままだ。
「……しかし、挫ける訳には! 祭事を控えた今なら、贈り物を扱う店はあるはず。ここは片端から当たってみるとしましょう!」
農耕と一緒だ。
動かなければ作物は育たない。動かなければ贈り物一つ手に入らない。
意気揚々と入った店は珍しい果物を扱う店だった。
「うぅむ……特産の果物とは惹かれますが。作ろうと思えば自力で……」
祭事といえばご馳走だが、食材を考えていると、どうしても仕事の延長を意識してしまう。恋人なら喜んでくれるだろうが、そうじゃない。
かと言って普通の店ではぬいぐるみやお菓子などを勧められる。
「トゥーリ殿は大人の女性。何か少し凝ったものをと……」
雰囲気の良い店に移動したハリスは店員にこれまでの経過をそう説明した。
食べ物でも無難なものでもなく……残された選択に店員は思いついたように、香炉と香料を持って来た。
「こちら、愛する人と過ごすひと時、気持ちをより高める香りとなっています……祭事に相応しい熱い夜になれますよ」
店員の台詞にハリスは全力で首と手を振った。
「そんなもので万が一があればどうするのですか!? 駄目です!!」
その万が一を迎える為のお香では……という店員のポカンとした顔にハリスは力強く言い放った。
「健全に! かつ、良き時間を共に過ごしたいのです!!」
「わ、わかりました……では、隣のブースにある『角飾り』は如何でしょうか? お客様は立派な角をお持ちですし……」
その提案にハリスは覗き込むようにブース内を見回した。様々な形状や大きさの飾りが並んでいる。
二人の共通する部位を飾る品物というのは良いかもしれない。
ハリスは暫し悩み続けた結果、腕輪に似た角の根元を飾る幾何学模様の角輪を選んだ。中央に輝く宝石が翠色のものと銀色のもので対になっているのも素晴らしい。
「喜んで貰えるでしょうか……はは、このような気持ちも祭事の一興ですね」
無事に探し物をみつけたハリスは初めて抱く気持ちと共に、贈り物を手にして帰路につくのであった。
●クレア・エクレール
クレアは冒険者として変わらない日々を過ごしていた。
(……)
自然と『彼』の姿を探している自分に気が付く。
組織幹部だったユーゲン・フォリングは拘留先で火事に巻き込まれ死んだとされる。けれど、クレアは『彼』がこの世界のどこかで生きている事を願っていた……いや、信じている。
『彼』の碧色の髪と瞳と共に最後に交わした言葉が、今も脳裏に繰り返し訪れているから。
(いつかすれ違うかもしれないし、出くわすかもしれない)
ありえないような偶然は奇跡と言ってもいいだろう。
夢見る乙女のようだとも、都合のいい願いだとも思われるかもしれない。クレア自身、再会できる確率が限りなく低い事は理解している。
(でも、ボクは幸運だから!)
希望の前に確率は意味を成さない。再会できる、そのいつかはどんなに遠くても、あるいは思ったよりも近くても、必ずやってくる。
だから、クレアは大陸中を仕事で飛びまわりながら『彼』の『碧』を探し続けていた。
ただ再会を待つヒロインではなく、自らの足で駆け続ける姿はクレアらしいと言えばそうなのかもしれない――もっとも、再会した時に何て声を掛けようかと寝る前に色々と考えたりする所はとても乙女チックではあるけれど。
そんなある日の事、依頼で立ち寄ったヴィントのとある装飾店でクレアは『彼』の『碧』と同じ色の宝石で彩られたブローチを見つけ、思わず手に取った。
「これは……」
魅入ったクレアに店主が感慨深げな様子で説明してくれる。
「半月ほど前、俺が商いのやり方で悩んでいた時に、親切に教えてくれた旅の青年がいてよ。感謝のつもりで作ったんだ。良い色だろ。その青年の目と同じ色を選んだんだぜ」
「……その人、髪も同じ色していなかったかな?」
ブローチを持つ手が微かに震える。
「あぁ……そう言われればそうかもな……そいつの事、追っかけてるのか?」
「そんな、ところ……だよ」
「だったら、御代はいらねぇ。あんたにくれてやる」
何かを察した店主にクレアはすぐに財布を出そうとしたが、それよりも早く店主が首を振った。
「あんたと青年の関係は俺にはわからないが、これも何かの縁かもしれねぇ。いつか顛末を聞かせてくれ。そしたら、その時、うちの商品をいっぱい買ってくれりゃいいからよ」
店主のかっこつけた笑みに、クレアはギュッとブローチを握り締めるのであった。
●エミリア・シバ
煌びやかなイルミネーションで包まれた街の通り。
二人の冒険者は露店やディスプレイを眺めながら腕を組んで歩いていた。
「このお店、かわいいものも新しいお酒もありそうね」
雑貨兼酒場を覗き込んでエミリアが期待を膨らませる。
踊り子としての仕事も冒険者としての仕事もない日は、当てもなく街中を散策し、お気に入りのものを探しており、今日もそんな穏やかな日を過ごしていた。
「そろそろ夕食も兼ねて入りますか?」
エクエスの問いにエミリアは少し考えた後、「そうね」と頷く。
確かに色々と店を回ったし、陽も落ちようとしているから夕食の頃合かもしれない。
「美味しいお酒があるといいわねぇ」
戸を開けて店内に入ると玄関ホールの半分程を雑貨が所狭しと並べられていた。
すかさずやってきたボーイがテーブルの用意をしてきますとエクエスに伝えている間、エミリアは何気なく雑貨に視線を向け――息が止まった。
それはアンティークのように古びた短剣だった。
もっとも、美術品の価値があるとは思えないものだ。刃に刻まれた溝は無骨でまとまりもなく、雑と評価されてもおかしくない代物だから。けれど、これが美術品でない事を、誰よりもエミリアが知っていた。
(…………)
遠い記憶が蘇る。
初めての仕事で毒を仕込む為に刃に溝を危なげに刻む幼き日の『私』。
仕事が嫌になり逃げ出した、あの日……。
(まさか、こんな所で再会する事になるとはね)
懐かしそうに短剣を手に取るエミリア。
どこかで落として失くしたのだが、誰かが拾って小銭稼ぎで売ったのだろうか。それが巡り巡って此処に在る事が不思議だった。偶然にしては出来過ぎだが悪い気は全くしない。
(そうね……)
エミリアは短剣に思いをそっと告げた。
無くさないで……消さないで……捨てないで……子供の頃の自身の慟哭を感じたから。
(自分の過去を誤魔化さず自覚して……全てを抱えていくわ。私が『おねえさん』であり『私』であるために)
胸元に寄せた短剣に心の中でエミリアは誓う。
この短剣は持っていこうと。全てを抱えていくこの旅路に一緒に連れて行くべきものだ。
「テーブルの準備ができたみたいですよ」
背後から響いたエクエスの声に、エミリアは振り返って微笑を浮かべて応える。
思わぬ再会をした事に、この剣士は驚くと同時に、これまでと変わらず、自分の事を受け入れてくれるだろうから。
●シルヴィア・A・カペル
生徒会役員であったシルヴィアは、生徒会室にお礼を伝える為、訪れていた。
ゆっくりしていってほしいという現生徒会役員の気遣いに、重厚な机の天板をなぞるように触れて頷く。
友と多くの学園生を守りたいという思いを抱き、誰もが笑える学園を目指した。
兄姉制度、文化祭、禁忌の塔でのことも、生徒会副会長としての活動も、メドゥの指先「黄の中指」ジード・ランスウッドとの陰謀戦も――シルヴィアは立ち向かい、選択の結果、ここに至っている。
(私は……祖父を演じただけではなかったはずだ……)
想う事があった。
産声を上げた時から『侯爵令嬢』という責任を背負っている。
偉大なる祖父であり、学園卒業後は『蒼玉』の後継者でもある。そして、祖母の意向で『冒険者』にもなった。更に冒険者の依頼を通じて、ジドの理想を託された……自らの存在そのものが、そうした理想を注ぎ込む器だったのではないかと。
誰かに望まれる理想を演じているだけで、『私』は何処にもいないのでは無いのか……小さい頃に旅した時の『私』は、彼方へと消えてしまったのだろうか。
手にしているジドの文集がやたらに重い。
(……私に理想を託して死んで逝くのか……誰も彼も……)
先に逝った人達は皆、少なくとも自身よりも智恵と経験も優れていただろう。それでも果たし続ける事ができなかった理想を――私にできるのだろうか。
託された理想に圧し潰されそうな気持ちの正体をシルヴィアは理解した。
(泣きたくなるとは……こういう事なんだね)
出来れば言葉をもっと交わしたかった。例え夢の中でも……理想を私が継いでよかったのかと……。
その時、お土産に持ってきた砂糖漬けされた薔薇入りの瓶が、太陽の光をキラキラと反射させた。祖父は祖母が作る砂糖漬けが大好きだった。
きっと、祖父も……このように瓶を眺めていたのだろうか。
(……そうだったのか……)
ゆっくりと瓶を持ち上げる、シルヴィア。
悩み苦しみながら、祖父もどこかでこうしていただろうと。けれど、そんな風には思えなかった祖父に憧れていた。その憧れを器に見立てていたのかもしれない。
祖父だけじゃないジドもきっと今の自分と同じように悩みを抱えていただろう。
(だとしたら、私は……)
シルヴィアは不意に訪れた不安に心の中で恋人の事を思い浮かべた。
彼への想いは、器ではなく、間違いなく自身だけのものなのだから。
●ミア=リゼル
組織幹部の一人だったトレイシーから渡されたメモを頼りにミアは幾つかの研究所跡を夜通し巡っていた。
ただ、証拠らしいものは何も見つからなかった……が、それは予想されたものだ。ジード・ランスウッドは研究の痕跡を残すような人物ではないから。
「ここにも……何もないですか……」
実験の規模や内容が少しでも明らかになれば……とも思っていたが、虚しい時間だけが過ぎていく。気が付けば夜明けが近いのか空がとても明るい。どうやら徹夜になってしまったようだ。
(陽が昇る……)
差し込んでくる朝日が窓の模様……いや、窓に彫られたデザインを通じて、一枚の床タイルを目印のように照らす。
ミアは驚きのあまり、息が止まった。
徐々に明るくなっていく研究所内の景色にフラッシュバックする記憶――ここかもしれないし、ここではないかもしれない。けれど、幼い日の想い出のようなものが一瞬だけ巡った。
「……このタイル……」
まるで誘われるようにミアはタイルを剥がした。
思った以上に簡単に外れた床の下には、ちょっとした大きさの石棺が埋まっている。
(まさか……)
緊張で心臓の音が大きくなる。
ミアは石棺の蓋を持ち上げ――そこには、丁寧に幾重にも包みで封じられた何かが入っていた。ゆっくりと慎重に包みを解いていく。
(……ツィトリ……これは調査書……ですね。それからこっちは……自鳴琴?)
書類をザっと見るが古くて痛んでおり解読が難しかったが、父親を示す欄には『ユーゴ=ダルダニエ』と記されてあった。だが、ミアに父の記憶はない。
母子を見捨て何もしなかった人だ。
(母に言わせれば、私はその人に生き写しだと……)
おかげで随分と母には憎まれたものだ。だから、特段、本当の父親が恋しい訳ではない。けれど、今、どこでどうしているのか、自分の事を覚えているのか……そこに興味があった。
(父のオルゴールでしょうか?)
煌びやかな装飾模様が描かれた自鳴琴の隅には名前が彫られていた。
想い出の品だったのか、それとも売るつもりだったのか……今となっては何故、調査書と一緒だったのか分からない。
ただ一つ、確かな事はあった。
(……久しぶり)
きっと幼かった自分も、こうして自鳴琴を眺めていたのだろうから。
ミアは調査書と自鳴琴を大事に鞄へと仕舞い、研究所から外に出る。
昇った陽が新しい日の到来を告げているのであった。
マスターコメント
お疲れ様でした&ご依頼にご参加いただき、ありがとうございました。
アドリブ全開気味ぃぃぃぃ! 解釈違っていたらすみませぬ……。ただ、各々、大事なものはちゃんと見つけられたかなって思いながら描かせていただきました。文字数ぅぅぅ足らねぇぇぇぇぇぇ(叫
このシナリオを作っておきながらなんですが……見つける事も大事だけど、きっと、見つけた後もとても大事なのかなと思っています。今後の皆様の冒険者生活に役に立つ結果になっていればいいな~と。
それでは、改めて、依頼へのご参加、ありがとうございました。
ショートシナリオ易しい 報酬:標準6 / 4〜6人
2022年12月13日 10時43分11秒 公開
大成功
相談掲示板
トゥーリ殿が……トゥーリ殿が落選とは……(三角座りするリザードマン)(
シルヴィアだ。今回はよろしくね。 具体的な内容はまだ考え中だけど、良い旅になればと思う。 皆にとっても素敵なひと時になりますように。
クレアだよー。 ボクは探し物っていうか、探し人? 夢の中の話になるかもしれないけど、それはそれで。 皆も探しもの、見つかると良いね。
ミア=リゼルです。よろしくおねがいしますね。 私は…場所を訪ねることになるでしょうか。 皆さんの大切なものが見つかりますように。