【再起】代官になりたいっ
馬車猪
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シナリオID:2625
オープニング
友人に話したのが昨日のことである。
「リットを代官見習いとして任命する」
そして、どう見てもお偉いさんが任命書を運んで来たのが今日である。
「任地はこの丘とその周辺だ。殿下の期待を裏切らないことを期待する。以上だ」
必要なことだけをリットに伝えると、既に御者が乗り込んでいたビッグオウムに乗りヴィントの方向へ飛び去っていった。
「どういうこと?」
リットは現状を理解できない。
「リットおめでとう!」
「いつかはやると思ってたぜ!」
帝国からの脱出行から苦労を共にしてきた仲間達が心底喜んでいる。
「えーっと」
リットは嫌な予感がした。
荒野で何度も己の身を救ってきた直感が、このままでは破滅すると告げてきている。
「ねえリットちゃん」
副官の少女が深刻な顔で話しかけてきて、リットは本心から安堵する。
冒険者ギルドは遠い。知恵袋が駄目なら諦めるしかなかった。
「ひょっとして皇子様と会って何か話した?」
いつも冷静に助けてくれる少女は、何故か焦りを隠せない。
「別にいつも通りだぜ。最近あったこと話して、そういえば飯時だったから一緒に飯食ったな。兵士用の飯だから量だけはあったぜ!」
教養がなく頭も悪いリットは全く気付いていないが、帝国を主導するレイウェスト皇子と直接言葉を交わし食事までするというのは厚遇という言葉では足りないほど良い扱いだ。
「リットちゃん」
真顔だ。
すっ、とリットも真剣な表情になり、仲間達は少女の本性を思い出して静かになる。
「周囲の忖度か皇子様の指図かは分からないけど、リットちゃんが言ったのが原因で間違いないと思う」
少女はリットとうまれは同程度だが頭のできが違う。
「つまりどういうこと?」
少年は心も体も強くはなったが頭はそのままだ。
「リットちゃんが……私達が失敗したら皇子様のメンツを潰すことになるの」
部屋の中が静まりかえる。
一介の運送業者であるリットでも、メンツが潰れたままだとまともな契約も結べないし同業者はもちろん有象無象にも雑に扱われるようになる。
レイウェスト皇子のメンツがどれほど大事かなど、底辺からようやくここまで成り上がった彼等だからそ身にしみて理解できる。
「今から代官やめるってのは……」
「最悪のメンツの潰し方ね」
緊張が酷く、少女も本性を隠しきれない。
「目をかけた子分……ダチでも恩人でもいいわ。前例を無視して出世させた奴が尻尾巻いて逃げ出したりなんかしたら、人を見る目がないってことになる。皇子様がよ?」
腕っ節が大事な稼業なら挽回もできるかもしれない。
だが、皇子にとっては人を見る目がないという評判は致命傷に近い。
もとはスラムの子供でしかない若者達は、答えを見付けられず頭を抱えていた。
●
「良かったのですか?」
ヴィントに戻った文官は、要約した報告書を差し出しながら皇子へたずねる。
「ああ」
皇子は悔いがある表情だ。
「難民キャンプのときのリットへの報償が遅れて悪いことをしてしまった」
帝国は今絶望的な人材不足だ。
冒険者を代官として採用できるならリットに出番などないが、冒険者を採用したくても採用できない今ならリットを代官に引き上げることができる。
レイウェストにとって、リットの『代官になりたいっ』はきっかけでしかない。
地位にも美貌にも惑わされず友として接してくれるリットを、皇子として許される範囲で便宜をはかろうとも考えていたのだ。
「御意」
文官はそれ以上は何も言わない。
皇子の決定はそれほど重い。
なお、この2人は選良の中の選良と英才教育を施された授恵者にして皇子である。
庶民基準の馬鹿かどれほど馬鹿なのか、全く理解できていなかった。
●
「代官おめでとうございます!」
「今日は祝いですぜ食べてくだせぇ!」
代官就任祝いの宴にリットが感動する。
「いやー良かった良かった」
「他国人でしかも女の代官ってのはどうにも……」
芋と豆ばかりの料理で騒ぐ村人達は前任者に非好意的だ。
なお、法的にはこの地の代官はまだセニャでありリットはその下につけられた代官見習いでここの担当なだけである。
「おめーらよー、女を甘く見るのはやべーぜ」
難民キャンプで世話になったは帝国貴族令嬢で、数え切れないほど助けてもらった冒険者も女性の比率が高く、1番頼りにしている仲間も女性だ。
だからリットにとって性別は強弱にも尊貴にも関係ない要素だ。
へへへと誤魔化す村人の前で、リットは遠慮せずメシを食らう。
スラムや難民キャンプ最初期のときと比べれば蒸しただけの芋もごちそうだ。
(多くね?)
奇妙なほど量が多いことにようやく気付く。
「冬越し用の蓄えに手を出したりしてねーよな?」
盛り上がっていた宴が一瞬で静まりかえる。
その中で唯一村長が笑顔で揉み手をしながら、「共犯ですぜ」とリットに囁くのだった。
●
「勘弁してくれぇ」
リットは執務机に突っ伏している。
前任が私物を持ち去ったので空間が余り、どこか物淋しい。
「金が……」
本当にない。
幸い輸送手段はあるので食料の調達は安く済んだが、輸送中は稼げなかったので総合すれば被害は甚大だ。5つある村の過半で同じようなことが起きたのだ。
天井のさらに上から微かに羽音が聞こえる。
砦にはビッグオウム用の休憩所が併設されているのでオウムと御者の来訪は珍しくない。
「ちわーっす! 郵便でーす!」
最近帝国内で起きている騒動とは無縁の御者が顔を出す。
リットに差し出されたのは頑丈な封書だ。
差出人は帝国代官。
複数地域の復興を受け持つ大物であり、リットの前任者であり上司でもある。
「ナイフで開封するんだっけ?」
「配達人に聞かんでくださいよー」
ナイフを貸してくれたのでリットは礼を言って中身を取り出す。
念のため冒険者ギルドへの依頼2回分の資金を渡しておくという内容で、資金を引き出すための書類も同封されていた。
「大丈夫? 顔色悪いよ。……このあたりにはここにしか休憩所がないんですからしっかりしてくださいよー」
リットがただの運送業者であった頃からの知り合いなので遠慮がない。
「お、おう」
リットは表情を取り繕えない。
どんどん、とドアではなく建物というより地面が揺れる。
普段より働かされたビヒモーによる賃上げ交渉だ。
リットが窓から顔を出すと、そろそろ仕事の時間なのにビヒモー達がゆっくりその場に座り込む。
賃上げが決まるまで粘る構えだ。
助けは来ない。リットの仲間は領内に散らばり仕事中なのだ。
「助けて冒険者」
リットの泣き言を聞いた御者が、肩をすくめて冒険者ギルドへの飛行プランを練り始めていた。
●
「お手伝い依頼です!」
ギルドの受付嬢は元気だ。
「若い新人代官さんを助けてあげてくださいって依頼です」
玉の輿っていいですよねと思わず本音を零す受付嬢。
リットの字が汚すぎて『見習い』の部分を読み取れなかったことに気付いていない。
「内容は……」
説明しようと資料へ目を落とした受付嬢が固まる。
「とにかく頑張って下さい!」
リットやその仲間の教育。
リットを敵視はしていないが甘く見ている住民への対処。
リットが飼っていることになっている大型ビヒモーの群れ(賃上げ交渉中)の懐柔。
やることが、とても多い依頼であった。
解説
マスターより
リプレイ
「リット! 代官になったんだって? すごい出世じゃないか!」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトは弟子であり義弟である少年に立身を心底喜んでいる。
そんな心温まる光景の近くで、ベルク・オスマットが覚悟を固めている。
(リット坊が代官か)
必要なら残酷な手段もとれるとはいえ倫理を捨てている訳ではない。
(我等が力を貸してもほぼ確実に失敗する。殿下の面子のために事故にあってもらうしか、ない)
殺意は一欠片も漏らさず、覚悟を決めた。
「代官見習いね」
アウレーリア・フォン・ネーベルベルクは頭痛を堪えるのに似た仕草をする。
嫌になるほど多く、そして全く整理できていない書類の山からリットが受け取った重要書類を見つけ出した。
帝国代官代理補佐に相応しい事務仕事である。
「なんだ代官見習いか、なら猶予はあるか」
ベルクは暗殺計画は頭からポイ捨てするが心労は消えない。
リットと仲間の追い詰められた顔と気配を見れば最低限の現状を彼らが認識できていることは分かる。
(殿下、最悪ではありませんが短慮ですぞ)
今やらねばならぬことを思い浮かべて限界まで圧縮すると、予定滞在期間を明らかに上回っていた。
(帝国の人材事情を考えれば大分マシな人選なのよね)
アウレーリアはベルクの思考を察した上でこう思う。
(後ろ暗い人間まで引っ張り込んでセニャの下に付けた手前、殿下の差配をやらかし扱いできないわ)
睡眠時間を削って、書類とそれ以外と格闘することを覚悟していた。
(たしかに私は先日、ヒトの上に立つというのを薦めはしましたが、こんなに早いとは……)
物憂げにうつむいてもリディリディ・トゥラ・イェレミースの美貌は曇らない。
(ヒューマンは生き急ぐというか。せっかちでいけません)
ここに知り合いがいれば、あなたはのんびりしすぎよという目で見ていただろう。
「なるほど……友人に相談した途端に代官見習いになったと」
リディリディは詳しい事情を聞き出し、皇子に対して非常に失礼な感想を抱いていた。
「リットくん代官サマになったんだ! 大出世だね、おめでとー! って喜んでばかりもいられないのがねー」
アルマ・ヴァレンタインは書類ではなくリット達の表情から察している。
「相変わらずヒューマンのやることは遅いですわね」
ふふんと上から目線なのはバンビだ。
実際に早いし実績もあるのでリットは反論できない。
「このバンビが来たからにはリット様には最速で代官としての業務を全うしてもらいますわよ」
今回念入りに準備してきたのは教導だがバンビは広範な知識も身につけている。
砦にいる人間を集めて情報を引き出す様は非常に手慣れていて、引き出される側も『ひょっとしてなんとかなるのでは』と思うようになっていた。
●
「リット、ビヒモーは運送業の貴重な戦力だ。ある程度、懐を痛めることは覚悟するんだぞ」
耳に痛い言葉も人格と能力と実績を兼ね備えた身内の言葉なら聞き入れられる。
「おう!」
義兄の言葉に素直にうなずくリットは、既に問題が解決したかのような軽い足取りだ。
「さて、ビヒモーの餌の配合はリットの懐具合とビヒモーの要求する味や栄養を考えれば、こんなもので良いだろうか」
アルベルトは帝国侯爵家の子息として高度な教育を受けただけでなく牧畜についての知識も広くて深い。
頭の中で具体的な数字を計算し、数字は分からなくても五感で分かるようやや豆多めな食事を用意する。
なお、一番体格の良いビヒモーはアルベルトを見はするがあからさまにリットを無視している。
「なあリット。本当に飼ってるんだよな?」
アルベルトが頭痛を堪える表情になり、リットが目を逸らし、ビヒモーは数口試食して動きを止める。
味と栄養の面でできる限り豆に近いものを用意したのだが、食感や香りまではフォローできていなかった。
「スラムで食っていたモンよりうめぇのによぅ」
落ち込むリットの隣で副官の少女が頑張って慰めている。
「リットさん、が、代官に。おめでとうございます」
そこに現れたのはエルだ。
依頼はうけて来たが心情としてはお手伝いが目的である。
「副官さん、大丈夫?」
胃に優しいお茶と、ちょっとどころでなくお洒落で凝ったお菓子を渡す。
すると、少年少女が礼を言うより早く、それまで座り込んでストをしていたビヒモーが立ち上がりエルに身を寄せた。
「ビヒモーさんたち、お仕事頑張ってる、ん、です、ね」
エルは心情としてビヒモー派であり、ビヒモー側もエルを信頼している。
「賃上げして、もらえませんか? その分お仕事頑張ってもらうよう、ビヒモーさんたちにもお願いするのがいい、と思い、ます。大豆比率を維持、できるように」
そう言うエルの背後で、体格としては魔獣を通り越してクリーパーっぽい大柄ビヒモーが熱心にうなずいている。
「餌代改善が無条件で叶うとは思ってませんわよね?」
バンビの眼力が強い。
このまま待遇改善がなると思っていたビヒモー複数が微かに慌てる。
「資金が増えればヒビモー達の餌も良くできます」
ナハト・シュライバーも同意する。
「根本的な問題として、リットの担当地域には役畜しか産業がないわ」
アウレーリアが冷たい現実を告げる。
農業から得られる収入がコストを上回るのは早くて来年だ。
一度放棄された土地を、教育水準の低い民を使って再興させるのだからこの予想でも早いくらいだ。
「帳簿には目を通した。当たり前だけど赤字で、今のままだと財政破綻するまでの『余命』は来年の春」
アウレーリアの言葉を理解できているのは冒険者と副官くらいだ。
「待遇改善の分一層働いてもうわ。リット達は働く時間ではなく質の向上が絶対必要よ」
リットは逃げたいが見習いとはいえ代官なのでどこにも逃げられない。
「セニャも似たようなことはしていたけど」
法と慣習の隙間を縫うようにして稼いで運転資金を得ていたともいう。
「行政と分離した営利組織……リット商会といえるものを整備していくしかない」
リット不在でも事前指示と定例報告で業務継続可能な体制を構築までしておかないと、戦力としても駆り出される授恵者が代官業などできないとアウレーリアは考えていた。
ナハトは慣れた態度だ。
依頼に慣れているのは勿論、帝国の子爵家の一員として新規部署の立ち上げも運営も身近であるし学園生なので知識も十分以上だ。
「その為にはリットさんの仲間達にも読書き、そして他の代官や商人、取引相手に舐められない為の礼儀作法も習得して頂いた方が良いかと。適性がある方は計算を、授恵者の方なら商業知識など習得して頂くのも良いかもしれません」
言葉使いが柔らかくても実質は断言であり命令に近い。
依頼達成のために必要であり、リットが代官になるつもりならこれは最低限のラインだ。
(交渉や礼儀作法の基礎の基礎を身につけさせましょう)
教導のは特別得意な訳ではないが教養として身につけてる。
まず挨拶を、姿勢の矯正と発声の仕方から教え込むつもりのナハトであった。
「あんたは今から実戦投入可能だな」
バンビは油断した訳ではなく、この相手には本音で接する方が良いと判断した。
「資金は少なくとも稼げる要素はあるのだからビヒモー問題の解決のついでに儲けを出して財政を立て直すぞ。最初に商会の主導権を握れば後々有利……ですわね?」
バンビは知的な美少女の仮面を被り直す。
短時間で圧倒されて力の差を体感させられた少女が、顔を青くしながら何度もうなずく。
「リット様とも付き合いは長いですし、何と言っても大好きなセニャ様の後任ですからね」
彼女はヒューマンにしては早いのでバンビにとっては好印象だ。
「行きますわよ」
今からですかっ、と言いたげな少女と大きなヒビモーの群れを引き連れ、バンビはリット商会(仮)の第一歩をハイスピードで踏み出させるのだった。
●
「おはようございますっ。どうだねーちゃん!」
挨拶の直後に胸を張るリットに、貴族のパーティーに潜入可能な水準の礼儀作法を修めたベルクで無言で駄目だしする。
「0から身につけるのは大変だからねー」
アルマは明かりを教室のあちこちに設置する。
リット商会(仮)営業時間終了後なので日没後なのだ。
アルマは教卓代わりに机の後ろに箱を置いてその上に立つ。
「今日は皆さんに、言葉のお勉強をして貰います」
持ち込んだ黒板には可能な限り簡素にした報告書の文面を書き込んでいる。
うげっ、と渋い表情になるリットに「リットくんは軍や官僚への報告書の練習が別にあるから」と伝えて絶望させる。
「まず相手に伝えることを考えてー」
ハーフリングの中でも特に小柄で穏和な態度のアルマだが、これまで何度も実力を見せて来たので舐める者は皆無だ。
「お仲間さんたちだけで運送業を回したり他の事業も手がけたりもするかもだしで読み書きは最低限できてないとねー?」
直接顔をあわせて情報伝達なんて贅沢は滅多にできなくなる。
つまり読み書きが不十分なら今の仕事を続けることもできない。
「はい今日はここまで」
特にリットが安堵する。
「小テストとして『レターセット』にここを宛先にしたお手紙を書いてもらってボクがヴィント辺りから発送~、でちゃんと届いたらひとまず合格だよ! ちなみにできなかった人はー……後日追試が必要かな?」
少年達が青い顔になり、リットが力尽きて机に突っ伏していた。
そんなリットの隣の席にリディリディが座る。
「貴方は思いやりや大胆さは十分にありますが、代官になるにはまだ知識と何より経験が足りません」
そのままでは確実に届かないリットの手紙を添削する。
リットは跳ね起きるようにして姿勢を戻し、真っ赤な手紙を見てショックを受ける。
「良識を持った、貴女が信頼のできる者が必要です。所謂宰相ですね」
リディリディはアルマから追加授業を受けている少女をちらりと見る。
教養はともかく善悪についてはセニャと同レベルに感じる。
「望み薄かもしれませんが、ヒトを貸してくれるように前任の方にお願いするのも手です」
リディリディの言葉が聞こえてしまい、少女がびくりと体を震わせる。
「それから、村の人間に甘い顔ばかりをしてはいけません。一緒になって蓄えに手を出すなんて言語道断です。決まり事を作り、破ったらどうするかも定めておいてください」
明日村を回ることを知っているので、心を鬼にして注意を行っていた。
●
翌朝。
ベルクは出発前最後の訓示を行っている。
「代官業は各村から恨まれやすいから基本一人で行くなよ? 必ず仲間に護衛してもらって動け」
帝国という巨大組織の表も裏も知るベルクは、徴税と調停の危険さと面倒臭さを良く理解している。
冒険者がリットを守ろうとしても確実に税と紛争についての陳情は行われる。
前任者と比べれば明らかに与し易いからだ。
「これだけは頭に焼き付けろ」
各村の状況と特色について夜鍋して書いたメモを村の数だけ渡す。
「特に水利権は各村の存亡に関わってくるだけに下手な差配は即反乱や暴動に繋がる。最悪になりそうなら誤魔化せ、先延ばしにしろ。人数で威圧して時間稼ぎをしろ。情報収集をしっかりやって調停案を作るのはその後だ」
ベルクは主君の名誉もかかっているので必死だ。
「お、おう、わかったぜ」
リットは本人なりに一生懸命なのだが能力が足りない。
(水利権が特に重要なだけで調停はどの分野も難しいのだがな。今回は、最悪を避けることができれば良しとするしかないか……)
ベルクは、リットの頭を考慮し言いたいことの半分以上を言わずに我慢していた。
「さて、村の皆さん。知っての通り、俺の義弟リットはレイウェスト殿下から直々に代官見習いを任じられたのだ。つまりリットの言葉はレイウェスト殿下のお言葉にも等しいのだ」
分かり易く強そうでカリスマのあるアルベルトの発言は、リット以上に馬鹿でリットとは比較にならないほど倫理観が薄い村人にも通用する。
「……当然、従ってくれるものと俺は信じているぞ」
手応えはあるのだが短時間で警告を忘れそうな嫌な予感もした。
鈍い人間でも感じられそうなほど濃厚なエーテルだけでなく強いカリスマも持つアウレーリアは、男尊女卑な村人にも舐められない。
(食料庫の管理は厳しくするしかないか)
それでも、この住人達の行動は悲観的にしか予想できない。
「それじゃ訓練すっぞー!」
ベルクの指示に従い、リットと仲間達は外敵への備えという名目で集団訓練を村人相手に行い上下関係を叩き込んでいた。
●
「財源をみつけて赤字を解決しないと……」
リディリディは一般的な領地経営手法の中から解決手段を探すが見つからない。
「発想を変えましょう」
ナハトは領主という経営者一族であるからこそ執念深い。
「商会を立ち上げるのなら……運送業と並行して、代筆業や代読業、人探し業を始めてもいいかもしれません」
代官という仕事が持つイメージにはあわないかもしれないが気にする余裕などない。
「村人に対する料金を特別安価にしても良いでしょう」
恩を売る。
餌にする。
報償にするなど使い道は多数ある。
恩を売りつけ、力を見せつけ臣従させるというのは古来から用いられてきた伝統的手法だ。
「生き別れも多いですから需要はあるはず」
ちくりと胸が痛むが気付かないふりをする。
「後は……」
ナハトは視察したとき見たがさつな村人を思い出し、むぅと唸る。
性別の偏りは扱いに注意が必要な問題だ。出逢いを名目にした商売はうまくいけば効果絶大だが、危険も大きそうだった。
●
ビヒモーにとって通常の荷車は軽すぎ荷物を背中に載せる方が楽なほどだ。
「休憩、する?」
エルが問うとビヒモーは歩きながら考え、考えているうちに100メートル以上進む。
「荷下ろし、はじめて」
指示を出すのはエル、従うのはリットの仲間達、のんびり食事をするのはビヒモーだ。
(ビッグオウム、と、棲み分け?)
砦から飛び立ち頭上を通過したビッグオウムに手を振ると、翼を振って応えてくれた。
ビヒモーは特別速くはないが一度に運べる量はかなりのものだ。
競合相手は多いが、この体力と体格があればやっていけるはずだ。
「今のうち、練習」
大口顧客である帝国軍や代官相手になあなあは期待できない。
荷物の確認から報告のやり方まで、根性がある少年少女が泣き出す寸前まで厳しく教えている。
「ん」
今の所、合格点なのは斥候兼先導のウィルだけだ。
(ちょっと無理目かもと思いましたがいけそうですわね)
バンビは明日の分の改善プログラムを作成中だ。
机の上で学ばせるより、仕事の過程で必要な文字や構文を使わせ脳味噌に刻み込む方が効率が良いと思ってはいたが大当たりだ。
「何事も最速で」
そうすることでようやく、リットや帝国の未来が見えてくるはずだった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年12月02日 02時32分35秒 公開
参加者
相談掲示板
ナハトです、よろしくお願いします。 問題は山積みですが、いずれも単独の問題ではないんですよね。 まずは資金、そして人材。 この2つを解決出来れば連鎖的に他の問題を解決できるけれど、現在起きている早急に解決すべき問題に関しては並行処理していかないとあちらを立てればこちらが立たずとなるわけで。 さしあたって人材育成に関しては最低限オウム管理と輸送業を担える人材を育成して、資金を調達できるようにする必要があるかと思いました。 資金調達の為にはビヒモーの飼料は質を上げざるを得ないとかと。 ただ大豆が少なくても満足出来るような飼料を開発出来れば出費を抑えられるんですよね。このあたりもどうにか出来れば良いんですが。 服従方法に関しては、力、金(食料)、魅力やカリスマとありますが、力だけでは反発が起きますし、金だけでは舐められる。 バランスをとる必要がありますが、幸か不幸か、セニャさんという比較になる前任者がいる分セニャさんにはなかった親しみやすさとかを上手く利用しつつ舐められないよう力も見せていく感じになるでしょうか。 外敵から守って貰えるという環境は慣れてしまって実感やありがたみが薄いので。 単純な武力ではなくリットさんに協力すれば良いこと、見返りがあるということをわからせる方向が良いのではと。 現状では大した見返りや全員分は用意出来ませんが、酒や嗜好品程度なら僕達からも提供出来ますし。 協力してくれた方には働きぶりに合わせて良いことがあるし、協力しない方を害することはないけれど相応の扱いになるよ、という。 増長したりしないよう手綱を握っていく必要はありますけれど、どうでしょうかね?
ウォーリアのアルベルトだ よろしくな 取り急ぎビヒモーのストライキを解決する必要がありそうだな。ビヒモーが動いてくれさえすれば運送業の再開も目処が立つし・・・ とりあえずは『牧畜知識』をフル活用してコストを抑えつつビヒモーが要求するレベルの餌の作成を試みるかな。あとは、その配合を住民に伝えつつ、運送業のノウハウを伝えようかな
ベルクだ、よろしく頼む。 …口は災いの元というが、うん、これはなんというか、その…な? 見習いにするでなく補佐にするなど段階を踏むべきとは小言を殿下に忠言したいところではあるが、時既に遅しだからなぁ。 とりあえずビヒモーの賃上げに関しては定期的な嵩まし(数日に一回多めに大豆とか) 農村に関しては幸いアルベルト卿がおられるからアルベルト卿から村に念押ししておくとかが効果的か? リットの仲間には…早急に最低限の単語単位でいいから読み書き出来るようにすべきか。
エル、です。…シューター、です。 どうぞ、よろしく。 ビヒモーさんたち、には、賃上げに応じ、て。 その分お仕事頑張ってもらうよう、お願いするのがいい、か、と思い、ます。 飼料の開発、いい、と思い、ます。 リットさんと仲間さんたち、に、勉強してもらうのは必要、と思い、ます。 全員に、読み書き簡単な計算。リットさんと副官さんに、代官のお仕事。 ナハトさんの言うように、オウム管理と輸送業。 あと、授恵者のひとたちを中心に(?)、戦闘訓練も必要、かも? 村の不服従とかオウム休憩所の警備とか、実力はあって損はない、です、し…。
キャスター、アウレーリアです。宜しく。 んー、どこも抱える問題は同じね……。 まず、ビヒモーの賃上げストには応じる方針で良いと思います。 安くて質の良い代替飼料の調達・開発ができれば良いですが、これから冬でそう都合よく食用品が入手できるとも限りません。時間を稼いでいるうちに、資金繰り問題の解消が優先ですね。 リットが代官(見習い)として働き始めたら、今後ますます運送業への従事比率は下がります。 彼がいなくても仕事が回るよう、運送組織の再編を図りましょう。 行政の片手間ではなくて、きちんと商会の形で分離した方が良いでしょうね。 出来れば、運送業以外の産業を他に育成できると良いのですが……。 教育問題については、今回少し教えるだけで解決する問題ではないと思いますけれども。 もし、彼やその部下を研修という形で貸していただけるようであれば。 うち(ネーベルベルク領)で庶民向けの基礎教養講座を開こうと考えています。 リクシナかな……実際に教育課程を依頼に出来ないかと思っている所で。
No.6
リディリディです。 よろしくお願いします・・・。 リットさんに助言はしましたが、まさかこんなに早く代官に就いてしまうとは。 ヒューマンはせっかちでいけません。 このままではリットさんが良いように扱われてしまいますね。 唆した責任もありますし、リットさんとお話しようかと思います。 それと・・・、収入源ですね。 赤字財政ではどうにもならないので早く解決したいところです。 ネーベルベルクさんの仰るように他の産業が必要ですね。 採れる作物、もしくは狩猟での獲物とかがあると良いのですが。
にーちゃんねーちゃんすげーなー(議論をまったく理解できていない) ウォーリアで代官見習いのリットだ! よろしく!! なんか分からないことがあったら答えるぜ!
とりあえず仮プレイングは提出したぜ。 内容は、ビヒモーの餌の問題と村の不服従問題の解決に向けて行動するものになっているぜ
うーん、悩みましたが今回は少し欲張って資金繰りの話とセットで教育について言及しつつ、服従させる案についてもリットさんにお話出来ればと思います。 教育に関しては最低限読書きが出来るところから徐々に、ですね。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー リットくんがお代官サマ(見習い)かー、めでたいけど課題は山積みだね… ひとまず教導もってって読み書きの基礎だけでも身に付けてもらおうかなあと
ええと、わたし、は、今の所。勉強のお手伝い、か。 資金と、勉強してもらう時間を稼ぐために、運送業のお手伝い、か、なあ、と思って、ます。