アンラッキーネコ、現る
岩岡志摩
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シナリオID:2600
オープニング
●登場
リーンエス王国に属するフローラ・ウォレス伯爵が治める領地の中に、バイエという村がある。
その村には、ペットの同伴も認められている温泉宿があった。
そこはもともと犬猫達と触れ合うことのできる宿だったが、突然敷地内に温泉がわき出し、温泉宿としての側面も増えた。
そして冒険者達の助けを借りた結果、その宿はペットの療養や温泉を利用した飲食物も利用できる宿になった。
昨年も近くの森から妖精がやってきて、お化け退治を頼まれたり、幼体の魔獣ケルベロスが現れたりするなど、この宿にはいろんなものがやってくる。
そして今回の『それ』もその一つと言えた。
●アンラッキーネコ、現る
『それ』が現れたのは、手狭になった建物を改装している最中だった。
「み~」
最初に気が付いたのはこの宿の主で、『それ』は周りにいる仔犬や仔猫たちの中ですました顔(?)をしていたという。
――最初からここにいましたよ?
そう言いたげな顔(?)で、『それ』は宿の主を見返す。
「み~」
見た目は黒い仔猫そのものだ。その姿はとても愛くるしい。
――2本足で立っていることを除けば。
どうやら子猫サイズだったこともあってか、村の警備をかいくぐって侵入してしまったと思われる。
宿の主もさすがに見逃すことはできず、追い払おうとした。
しかしその試みは失敗する。
「み~」
何度試そうとしても、『それ』が指(正確には肉球つきの手)で宿の主を指し示すと、何故か妙なことが起きる。
置いた覚えのない紙に足を取られる。
近くを通りかかった従業員が足を滑らせ、運んでいたサンドイッチが飛んでくる。
天井板が何の前触れもなく外れ、上にあったものが落下してくる。
あるいは、それまで周囲でゴロゴロしていた仔犬仔猫達に突然飛びつかれ、そのまま押しつぶされる、などなど。
最初は偶然かと思ったが、続けて起こると宿の主も不安になる。
「……しかたがない。専門家を呼ぼう」
そう言って宿の主は冒険者ギルドに依頼を出すことを決めた。
応対した冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスに向け、宿の主はこう語る。
「そいつに指をさされると、必ず良くない事が起きるのですよ……」
今のところ怪我につながるような事態には発展していないが、そうした状況が続くのは宿にとっても好ましくない。
何より2本足で立つ猫(?)は、宿にいる仔犬仔猫達の中で最初からそこにいたような顔(?)でゴロゴロしている。
「おそらくですが、魔獣の一種でしょう」
少なくともアルヒの知る限りでは、2本足で動く猫(?)は魔獣と考えた方が自然だ。
ただし話を聞く限りでは、周囲にいる仔犬仔猫達と混ざっても問題ないほど幼い姿をしているようなので、幼体の可能性も否定できない。
それでも魔獣使いでもいない限り、魔獣を制御できるとは思えない。
かわいそうだが、その魔獣は討伐して被害を未然に防ぐことが推奨される。
「依頼に応じる冒険者達にも、飼おうとして持ち帰らないよう釘を刺しておきます」
アルヒはそのあたりも注意点として挙げていく。
宿の主によると、そのアンラッキーネコとの仮称をつけている猫だが、今は子犬子猫達と触れ合うことができる広間でくつろいでいることが多いようだ。
できればその周囲から仔犬仔猫や食べ物、荷物など討伐の妨げになりそうなものは片づけておきたいところだが、アンラッキーネコによる妨害(?)のせいか、片付けようとするたび指をさされ、妙なことが起きるのでそのままの状態になっている。
そういうわけで、冒険者の皆様がこのアンラッキーネコを退治しようとすれば、何かが起きる確率は高い。
「どうか冒険者の皆様には、よくないことを乗り越えて退治をお願いしたく」
依頼人である宿の主は平身低頭でアルヒに頼み込んでいた。
なお今回の依頼だが、問題のアンラッキーネコ(仮)をどうにかしてくれるなら、あとは温泉宿で自由に過ごしてくれて構わないそうだ。
もちろん冒険者達は無料で温泉宿の各施設を利用できる。
この宿の目玉である仔犬仔猫達と遊んでもいいし、ペットと一緒に温泉に入ることも問題ない。
温泉を利用した各料理も、好きなだけ楽しむことができる。
仔犬仔猫達と遊びながら、さりげなくアンラッキーネコを観察し、隙を突いて倒してもらっても構わないと、宿の主は確約した。
●やること
今回皆様は温泉宿より魔獣が現れたため、それを退治する依頼に参加しました。
この温泉宿は今までにも冒険者の皆様から様々な企画や改善案を示され、実現にこぎつけた恩義もあり、冒険者の皆様には好意的です。
今回退治するアンラッキーネコですが、今のところ直接危害を加えるような能力は確認されていません。
しかしアンラッキーネコが指さした先では妙なことが起きるため、すぐに退治できるとは限りません。
これまでに判明している出来事としては、いつの間にか足元にあった紙で足を滑らせたり、料理が飛んできたり、飲み物が落ちてくる、仔犬仔猫達に殺到されてもみくちゃにされるなど、様々です。
ただしいずれも怪我をしない範囲におさまり、考えようによってはある種のご褒美(?)めいたことも起きるため、あえてアンラッキーな出来事を楽しんでみるのも手です。
依頼人からは問題の魔獣を退治してくれるなら、改装作業を妨げない範囲で自由に過ごしていいとの話が届いています。
この温泉宿ではペット同伴の客が楽しめるよう、色々な工夫がされています。
建物内では床でゴロゴロ寝転がることができるよう絨毯がしかれており、その上に飲食ができそうなテーブルや椅子も用意されています。
庭に出ると半分はドッグランができそうな広々とした芝生の空間になっており、こちらも走ったり寝転んだりできます。
ペット同伴でないお客が建物内にいる仔犬や仔猫達と遊ぶための遊具(フリスビーや、毛糸球など)に加え、ブラシといった犬猫達のケアをするための道具も一通り揃えています。
犬猫だけでなく、他の種類のペットに与えるエサも宿に頼めば用意してくれます。
またこの温泉宿では、皆様はペットと一緒に温泉へ入る事ができますが、現在改装工事が進められているため一部のみ利用可能となっています。
使えるのは大浴場(大人数用)、小浴場(3人くらい)、ペット達の療養にも使えるよう水の深さを変えた温泉プールになります。
もちろん衛生面にも配慮して温泉の湯は常に新しく、改装作業中も清掃はこまめに行っています。
またペットの入浴を介助できるための器具や道具も、温泉区画の中に一通りそろっています。
そしてこの温泉宿では、サンドイッチや肉料理以外にも、温泉を利用した蒸し料理やお菓子類も用意できるため、皆様はそれらの料理を食べることができます。
ということで温泉宿ではアンラッキーネコ(仮)と関わり、退治してくれる冒険者をお待ちしています。
リーンエス王国に属するフローラ・ウォレス伯爵が治める領地の中に、バイエという村がある。
その村には、ペットの同伴も認められている温泉宿があった。
そこはもともと犬猫達と触れ合うことのできる宿だったが、突然敷地内に温泉がわき出し、温泉宿としての側面も増えた。
そして冒険者達の助けを借りた結果、その宿はペットの療養や温泉を利用した飲食物も利用できる宿になった。
昨年も近くの森から妖精がやってきて、お化け退治を頼まれたり、幼体の魔獣ケルベロスが現れたりするなど、この宿にはいろんなものがやってくる。
そして今回の『それ』もその一つと言えた。
●アンラッキーネコ、現る
『それ』が現れたのは、手狭になった建物を改装している最中だった。
「み~」
最初に気が付いたのはこの宿の主で、『それ』は周りにいる仔犬や仔猫たちの中ですました顔(?)をしていたという。
――最初からここにいましたよ?
そう言いたげな顔(?)で、『それ』は宿の主を見返す。
「み~」
見た目は黒い仔猫そのものだ。その姿はとても愛くるしい。
――2本足で立っていることを除けば。
どうやら子猫サイズだったこともあってか、村の警備をかいくぐって侵入してしまったと思われる。
宿の主もさすがに見逃すことはできず、追い払おうとした。
しかしその試みは失敗する。
「み~」
何度試そうとしても、『それ』が指(正確には肉球つきの手)で宿の主を指し示すと、何故か妙なことが起きる。
置いた覚えのない紙に足を取られる。
近くを通りかかった従業員が足を滑らせ、運んでいたサンドイッチが飛んでくる。
天井板が何の前触れもなく外れ、上にあったものが落下してくる。
あるいは、それまで周囲でゴロゴロしていた仔犬仔猫達に突然飛びつかれ、そのまま押しつぶされる、などなど。
最初は偶然かと思ったが、続けて起こると宿の主も不安になる。
「……しかたがない。専門家を呼ぼう」
そう言って宿の主は冒険者ギルドに依頼を出すことを決めた。
応対した冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスに向け、宿の主はこう語る。
「そいつに指をさされると、必ず良くない事が起きるのですよ……」
今のところ怪我につながるような事態には発展していないが、そうした状況が続くのは宿にとっても好ましくない。
何より2本足で立つ猫(?)は、宿にいる仔犬仔猫達の中で最初からそこにいたような顔(?)でゴロゴロしている。
「おそらくですが、魔獣の一種でしょう」
少なくともアルヒの知る限りでは、2本足で動く猫(?)は魔獣と考えた方が自然だ。
ただし話を聞く限りでは、周囲にいる仔犬仔猫達と混ざっても問題ないほど幼い姿をしているようなので、幼体の可能性も否定できない。
それでも魔獣使いでもいない限り、魔獣を制御できるとは思えない。
かわいそうだが、その魔獣は討伐して被害を未然に防ぐことが推奨される。
「依頼に応じる冒険者達にも、飼おうとして持ち帰らないよう釘を刺しておきます」
アルヒはそのあたりも注意点として挙げていく。
宿の主によると、そのアンラッキーネコとの仮称をつけている猫だが、今は子犬子猫達と触れ合うことができる広間でくつろいでいることが多いようだ。
できればその周囲から仔犬仔猫や食べ物、荷物など討伐の妨げになりそうなものは片づけておきたいところだが、アンラッキーネコによる妨害(?)のせいか、片付けようとするたび指をさされ、妙なことが起きるのでそのままの状態になっている。
そういうわけで、冒険者の皆様がこのアンラッキーネコを退治しようとすれば、何かが起きる確率は高い。
「どうか冒険者の皆様には、よくないことを乗り越えて退治をお願いしたく」
依頼人である宿の主は平身低頭でアルヒに頼み込んでいた。
なお今回の依頼だが、問題のアンラッキーネコ(仮)をどうにかしてくれるなら、あとは温泉宿で自由に過ごしてくれて構わないそうだ。
もちろん冒険者達は無料で温泉宿の各施設を利用できる。
この宿の目玉である仔犬仔猫達と遊んでもいいし、ペットと一緒に温泉に入ることも問題ない。
温泉を利用した各料理も、好きなだけ楽しむことができる。
仔犬仔猫達と遊びながら、さりげなくアンラッキーネコを観察し、隙を突いて倒してもらっても構わないと、宿の主は確約した。
●やること
今回皆様は温泉宿より魔獣が現れたため、それを退治する依頼に参加しました。
この温泉宿は今までにも冒険者の皆様から様々な企画や改善案を示され、実現にこぎつけた恩義もあり、冒険者の皆様には好意的です。
今回退治するアンラッキーネコですが、今のところ直接危害を加えるような能力は確認されていません。
しかしアンラッキーネコが指さした先では妙なことが起きるため、すぐに退治できるとは限りません。
これまでに判明している出来事としては、いつの間にか足元にあった紙で足を滑らせたり、料理が飛んできたり、飲み物が落ちてくる、仔犬仔猫達に殺到されてもみくちゃにされるなど、様々です。
ただしいずれも怪我をしない範囲におさまり、考えようによってはある種のご褒美(?)めいたことも起きるため、あえてアンラッキーな出来事を楽しんでみるのも手です。
依頼人からは問題の魔獣を退治してくれるなら、改装作業を妨げない範囲で自由に過ごしていいとの話が届いています。
この温泉宿ではペット同伴の客が楽しめるよう、色々な工夫がされています。
建物内では床でゴロゴロ寝転がることができるよう絨毯がしかれており、その上に飲食ができそうなテーブルや椅子も用意されています。
庭に出ると半分はドッグランができそうな広々とした芝生の空間になっており、こちらも走ったり寝転んだりできます。
ペット同伴でないお客が建物内にいる仔犬や仔猫達と遊ぶための遊具(フリスビーや、毛糸球など)に加え、ブラシといった犬猫達のケアをするための道具も一通り揃えています。
犬猫だけでなく、他の種類のペットに与えるエサも宿に頼めば用意してくれます。
またこの温泉宿では、皆様はペットと一緒に温泉へ入る事ができますが、現在改装工事が進められているため一部のみ利用可能となっています。
使えるのは大浴場(大人数用)、小浴場(3人くらい)、ペット達の療養にも使えるよう水の深さを変えた温泉プールになります。
もちろん衛生面にも配慮して温泉の湯は常に新しく、改装作業中も清掃はこまめに行っています。
またペットの入浴を介助できるための器具や道具も、温泉区画の中に一通りそろっています。
そしてこの温泉宿では、サンドイッチや肉料理以外にも、温泉を利用した蒸し料理やお菓子類も用意できるため、皆様はそれらの料理を食べることができます。
ということで温泉宿ではアンラッキーネコ(仮)と関わり、退治してくれる冒険者をお待ちしています。
解説
●目標
アンラッキーネコ(仮称)の能力を確かめた上で退治する
失敗条件:故意の有無を問わず、宿に深刻な被害を与えた
登場
アンラッキーネコ(仮称)×1
二足歩行する黒猫の姿をした魔獣。戦闘能力は皆無だが下記能力を使用する模様。略称『不運猫』。
不運の指差し
指をさされた人の運を劇的に下げ、妙なことや良くないことが発生して行動の失敗を誘発してくる。
以下は発生する事例の一部だがいずれも怪我はしない。
・周囲にいる仔犬仔猫達に飛びつかれ、もみくちゃになる。
・何故か足元にあった紙に足を取られる。
・何故か従業員が置いたと思しきサンドイッチや骨付き肉(調理済み)といった食べ物が口元へ飛んでくる。
・何故か天井板が外れ、上に置いてあった果実水入りの樽が横転して、果実水を口で受け止める羽目になる。
いたずらをしているつもりなのだろうか?
PL情報:皆様の方でアンラッキーネコに指さされたら、何が起きるのかを自由に設定できる。
従業員達
温泉宿で働く人達。魔獣退治後の後片付けを行う。
アルヒ・ラスカス
今回の増援。皆様の指示に従う。使用スキルはヒール。解呪。汎用スキルはテレパス。
状況
ウォレス伯爵領内バイエ村に存在する温泉宿。現地時刻は正午で快晴。
現在この宿は改装中のため他の客はいないが、仔犬仔猫達はいる。
温泉宿ではゴロゴロできる屋内空間の他にドッグランのような空間や、同伴するペットをケアするための道具も一通りそろっている。
温泉のある個所は現在改装中だが、頼めばペット同伴での入浴も可能。
以下簡易見取り図
ABCDEFGHIJK
壁壁壁壁壁壁壁囲囲囲囲
1壁座座座座 壁 囲
2壁〇 〇〇 窓 囲
3壁(1) 窓(3)囲
4壁座 〇〇 窓 囲
5壁窓窓窓窓窓壁囲囲囲囲
6柵芝芝芝芝芝囲 囲
7柵 囲 囲
8柵 (2) 囲 泉 囲
9柵芝芝芝芝芝囲 囲
柵柵柵柵柵柵囲囲囲囲囲
1:犬猫とのんびりと遊べる区画。全面絨毯で寝そべることもOK。ここにアンラッキーネコ(仮称)がいる。飲食可。
2:犬猫と運動しながら遊べる場所。全面が芝。
3:現在改装中。
〇:テーブルや椅子
座:ソファ
壁:温泉宿外壁
泉:入浴場所。ペット同伴可。男女別とそうでない温泉(水着着用必須)の両方あり。
柵:木材の柵。高さ2m程度。
囲:囲い。高さ5m程度。
マスターより
今回のアンラッキーネコ(仮称)は、PC様よりリクエストされた魔獣になります。
皆様がこの魔獣を倒す過程でアンラッキーネコに指さしをされると、ほぼ確実に妙なことが発生して妨害を受けます。
例えば宿で提供される様々な料理が飛んできて、皆様の口の中へ飛び込んできたり、上から様々な種類のジュースが皆様の頭上より口元へと流れてきたり、子犬子猫達に殺到されてモフモフの中に埋もれてしまったりと、色々発生します。
なお皆様の方で発生する不運な出来事を、肉体的ダメージがない範囲で決めることも可能です。
能力を確認するという目標もあるので、発生するアンラッキー(?)な出来事を一通り楽しんでみるのも手です。
ただし宿の建物や従業員、仔犬仔猫達に深刻な被害を生じさせる行動は故意の有無に関わらずNGです。
退治後は温泉宿で自由に過ごすことができます。
この温泉宿ですが、現在改装中のため皆様の貸し切り状態になっています。
ペット同伴でなくても、温泉宿には『従業員』の仔犬仔猫達もいるので犬猫達との触れ合いはできます。
ご不明な点がございましたら、出発36時間前まででしたらアルヒが答えられる範囲は答えます。
リプレイ
●不運?
他の冒険者たちと共に、温泉宿へ到着したナタリア・フィッツジェラルドには、気がかりなことがある。
「此処に来る途中でロクでもない目に遭ったりしたものだが、占いの結果が最悪だったせいとかじゃないだろうね?」
どうやらナタリアはこの宿へ来る以前より不運に見舞われていたらしい。
「宿の破壊厳禁、というオーダーは順守で依頼を遂行するぞ」
ナタリアがいる区画には、今回の討伐対象であるアンラッキーネコ(仮称。以降は不運猫の略称も使用)以外にも従業員の子犬子猫達がごろんごろんしている。
「ペット同伴可という事なのでノーラも連れてきたぞ」
ゲルトは現場となる宿の特徴を聞いていたので、自身の相棒である白狼ノーラと共に宿を訪れた。
なおゲルトは不運猫に指をさされると不運が襲う、という現象についてはあまり信じていない。
「持ち帰ってはいけないのか……仕方がない」
同じように猫のショウガ同伴で依頼に参加したレピド・クロサイトは、今回討伐対象となる不運猫を持ち帰ることができないと知り、心なしかしょんぼりしたようにも見受けられる。
「最初は試そうか。軽いナイフ投げ、武器の振り下ろしとかで」
サイラスは不運猫がどの程度の行動に反応し、不運なことが起きるのかを確認するため、試しに風雷坊を鞘から抜かない状態で、軽く上下に振るう。
距離が遠いのか気にしないのか、当の不運猫はサイラスを指さす真似をせず、何も起こらない。
「次は殺意の量とか調節してどのくらいだとどう対処するのかとか。そういうので遊びつつ確認してみるつもりだ」
その反応を確認したサイラスは、次に風雷坊を鞘から抜いて少し不運猫へと歩を進め、刃を上下に振るう。
「み~」
すると不運猫はサイラスに向け指(正確にはにくきゅう付きの手)を指し示し、なぜかサンドイッチが飛んできた。
どうやら近くを通りかかった従業員が足をもつれさせ、運んでいたサンドイッチを放り投げる形になったらしい。
サンドイッチは宙で放物線を描いてサイラスのもとへ飛んでくるが、サイラスは空いた手でサンドイッチをキャッチし、従業員のもとに運んでいく。
「次はオレが試してみるつもりだ」
今度はゲルトが不運猫に接近を試み、ノーラもゲルトの後に続く。
「み~」
今度はなぜかゲルトの移動先に骨が落ちていた。
ゲルトは骨に足を取られて転び、宙を舞った骨はノーラが落下先へ回り込み、口でキャッチする。
「指を差された人に不運が襲う……これは本当だ」
ゲルトは身をもってその能力を理解した。
「んー、中々に不思議な能力ですね?」
グレイブ・ヤードは目の前で発生した現象に対する分析を始める。
(殺意や害意ではなく、あくまで障害としての事象を起こす、ですか)
今のところ発生する事象は、怪我をしない範疇におさまっている。
(あくまで事象であるためにおそらく本人(?)も何が起きるのかは予想できないのでしょうかね?)
今の段階では情報が少ないため、不運猫が発生する現象を自由に操作しているかどうかは、グレイブも即断を避けている。
「まずはアンラッキーネコを油断させよう」
レピドは周囲でゴロゴロする仔犬仔猫達との触れ合いを始める。
「追い払う意思無しでも指差されるのかを確認したいことも兼ねている」
すると周囲にいた仔犬仔猫達が、レピドのもとへ集まってきた。
(賢者の石を弄られるのは苦手だが)
自身もショウガを飼う身であるレピドは、予め温泉宿の方で用意してくれたおやつを小皿に乗せ、床に置き始める。
小さく鳴いて見上げる仔犬達に向け、レピドは小皿にあるおやつを差し出すと、仔犬達は夢中になって食べ始める。
さらにレピドは手元に寄ってきた仔猫に対し、ブラッシングを行い始める。
(アンラッキーネコが単一、というか視覚に入った対象にしか指を指さないというなら、この隙に接近だね)
その間にナタリアは周囲にある物陰に身を隠し、徐々に不運猫が顔を向けていない方角より接近を試みる。
●討伐
いつしかアンラッキーネコこと不運猫は、他の仔犬仔猫達と一緒にドッグランができそうな広場へ動き始め、冒険者達も広場へ移動する。
ここでグレイブは不運猫からの指差しを誘引するため、その正面で動いてみる。
「あえて見つかるように動いて何度か指を指されてみましょうか」
不運猫はグレイブも指差しをしたが、グレイブやその周囲に何か起きた様子は見られない。
「一応対策は用意しましたが、まぁなんというか。ご加護頼りという感じですかね?」
予めグレイブは周囲や足元を警戒していたためか、足元に敷き詰められた芝生が一部くぼんでいることに気づき、体勢を崩されることはなかった。
(アンラッキーネコの注意が他の味方に向いている間に対処できないか、試してみよう)
今度はゲルトがグレイブとは別方向からアンラッキーネコ(不運猫)に近づいていく。
「み~」
不運猫はその動きを察知したのか、ゲルトとノーラのいる方角に向き直ると指差しを行い、両者(?)とも周囲にいた仔犬仔猫達からもみくちゃにされる。
(ノーラ、楽しそうだな)
ノーラともども仔犬たちによるモフ埋めの刑に処されたゲルトは、埋もれながらも心なしか嬉しそうだ。
「性根というか、性質を見ておきたいですね」
――倒さなければならないとはいえ、どういう立ち位置で倒すのかというか、感情面は決めておきたいですから。
グレイブは冷静に不運猫の状態と発生する事象の観察を続け、ナタリアが徐々に不運猫へと忍び寄っていく。
「み~」
すると不運猫はナタリアがいる方角へと顔と手を向けると、今度はナタリアにも仔犬仔猫達は飛びついていく。
「憂き事の尚この上に積もれかし、なる言葉がある。その身を以って力を確かめる事も、研究者の仕事だ」
ナタリアは仔犬子猫達に纏わりつかれながらも、今起きていることを確認する。
仲間たちの動向を見たレピドは仔犬仔猫達へのお世話を中断し、自身も闇夜の外套で顔を隠して別の方角より接近を試みるも――。
「み~」
どこからともなく骨付き肉が、レピドの顔めがけて飛来した。
顔に当たった骨付き肉を取りこぼし、地面に転がるのを見たレピドは内心落ち込む。
(スキルなしでの接近は難しいか)
レピドはそう分析すると、一度アンラッキーネコから距離を置く。
(鍵と言えるのは隠密行動を旨とするシーフだね)
一方で自身の接近が失敗したナタリアは、レピドの行動が足がかりとなると判断し、援護に回る。
ナタリアは強力なエーテルの波動を開放し、範囲内にいたレピドや周囲にいる仲間達のエーテルを増幅することでその能力を向上し、金色の光を立ち登らせた。
(ネコへのアンブッシュにおいて、シーフが身を潜める場がないのなら遮蔽物を作るまでだ)
さらにナタリアは祈りとともに光輝を放つ六角形の柱を広場に作り出し、レピドや仲間が身を隠す場所を作り出す。
(見た目に惑わされないようにしよう。これも仕事だから)
ナタリアからの援護を受け、その身からレピドは意識を切り替えると、認識を妨げるエーテルを自身の周囲に張り巡らせ、ナタリアの光縛封を隠れ蓑にしながら再び不運猫へと忍び寄っていく。
「おれが意識の引き付け役を受け持とう」
それまで状況を見定めていたサイラスはそう告げるとシーザーロア3を発動し、戦意と共にエーテルを不運猫に浴びせ、その感情を刺激して不運猫の意識を自身へと向けさせる。
「後は防護とかのほうに集中するつもりだ」
――他の人に指差しが行かないように、だな。
サイラスはその場にとどまり、相手を驚かせる際有利に働くスキルも駆使して不運猫の意識を自身に固定できるよう務める。
「み~」
指をさされ、芝生のくぼみに足を取られそうになったサイラスだが、幸運の星スキルによる加護もあるのか、転ぶことなくその場に踏みとどまり、剣鱗を構え守りの姿勢を貫く。
――というか、おれが動かなければ良くないか、これ?
サイラスは不運が向かう先を自身に固定することで、仲間達の行動を援護する。
そしてナタリアの援護を受けたレピドが、母蜘蛛糸のロープへとエーテルを通して投擲し、不運猫を絡めとる。
(ノーラの尻尾を踏まずに済んでよかった)
仔犬子猫達の山から抜け出すことに成功したゲルトも不運猫へ近づき、竜鉄の棍で一撃を加える。
ゲルトの一撃を受けた不運猫は暴れて抵抗するが、レピドは拘束を緩めない。
「これは憎悪でもなく、文字通りの不運である」
その間に、一連の動向を観察していたグレイブの中で結論が出たらしい。
グレイブは源霊収束によって周囲に漂うエーテルの残滓を集めて収束し、加速した一撃を不運猫へと打ち込んだ。
その一撃に不運猫は耐え切れず絶命し、動かなくなった。
●退治後
「苦痛は少なく、やるなら自信の最大の一撃で、と思いまして」
不運猫の討伐を確認したグレイブは、先の一撃についてそう語る。
その骸をサイラスが引き取りにかかる。
「弱くても幸運とかに関与できるものはレアだし」
幸運というよりも不運といった方がよさそうだが、サイラスにとっては素材が回収できればいいようだ。
「一年中、いや来年分も含めて運気を使い果たしたんじゃないか?」
その一方ナタリアは疲れ果てた様子を見せ、その場に座り込む。
何が起きるかわからない、という状況はナタリアの心身に負担を強いるものだったようだ。
「運気を回復する為に、お目出度い縁起物でも食べたくなってきたな」
こういうときは気持ちをリフレッシュするのが一番と、ナタリアは起き上がり、温泉宿の食堂へと向かう。
「私は掃除などのお手伝いに回ります」
グレイブは待機していた従業員達に声をかけ、現場となった部屋や広場の後片付けを一緒に取り組んでいく。
「オレも手伝った方がよさそうだな」
ゲルトもまたグレイブの後に続き、後片付けに加わるとノーラと一緒にできる範囲のことを行い始める。
部屋の中を片付けている間も、ガルドやノーラは仔犬仔猫達に囲まれている。
ノーラの尻尾に子猫達がていていと飛びつき、子犬たちも混ぜて~とノーラだけでなくゲルトにも飛びついてくる。
「あの猫が何かをしなくても、元からそうだったみたいだな」
ゲルトはある程度めどがついたところで作業を切り上げると、今はノーラともども仔犬子猫達からふるもっふにされている。
「可能であれば墓を作ってあげたいとは思いますが、店的にはあまりよろしくないですよね?」
掃除を行う中で、グレイブは今回退治したアンラッキーネコの弔いをやってもいいか尋ねるが、温泉宿への配慮も忘れない。
グレイブより話を持ち掛けられた従業員達は宿の主にも話を通した結果、「場所と必要なものはこちらで用意します」との答えが返ってくる。
アンラッキーネコのような存在が宿に現れるのは初めてのことではなく、グレイブが弔ってくれるなら不運もおさまるだろうと宿は判断したようだ。
温泉宿からの答えと埋葬場所を聞いたグレイブは、ある程度作業を進めたところでサイラスのもとへ向かい、埋葬の許可が出たことを話す。
「了解だ。おれもやることは終えたから手伝いをしようか」
グレイブから話を聞いたサイラスは手伝う旨を伝え、グレイブと共に不運猫の埋葬作業を行う。
一方レピドはショウガと共に、温泉につかっていた。
温泉宿からのおすすめに従い、今レピドが入っている風呂は足が伸ばせて座ることができる作りと広さがある。
「……ぬくいな、ショウガ」
「にゃー」
温泉の効果なのか血色の良い顔でレピドが呟き、同じ風呂に入っているショウガからも返事(?)が届く。
レピドが温泉を堪能している頃、食堂に足を運んだナタリアはこの温泉宿おすすめの料理を食していた。
今ナタリアが口にしているのは、イノシシ肉の蒸し料理。
この温泉宿があるバイエという村では、イノシシ肉は縁起がいいものとされており、この宿では温泉の熱を利用した蒸す工程を調理に加え、利用客に提供している。
弾力はあるのだが、ナタリアの歯ではらりと肉は噛み切れた。
「こういう料理もあるのか」
丁寧に下処理されているため野生の臭みはなく、調味料との相性がいいためか、蒸された後も脂は残っているのに、くどさはない。
ナタリアは料理を味わいながら、これで運気が回復することを密かに願う。
やがて温泉を楽しんだレピドは、ショウガと共に再びアンラッキーネコがいた部屋に戻っていた。
既に片づけは完了し、今は仔犬子猫達が部屋のあちこちでころんころんと転がり、よちよちと動いている。
「ここの犬や猫は皆小さいな……これが育つとショウガになるのか……」
ショウガと一緒に寝転んだレピドは、すりすりと頭や体を寄せてくる仔犬子猫達を撫で返しながら、密かに感動していた。
●いつも通り
やがて埋葬も含め、すべての作業とやりたいことを終えた冒険者達は、温泉宿から依頼の完了を伝えられ、帰還していく。
宿の構造に被害を出すことなくアンラッキーネコを退治し、後始末も手際よく行ってくれた冒険者達に対し、温泉宿の主や従業員達は深い感謝を示して頭を下げる。
「またのお越しをお待ちしております」
温泉宿では、いつでも皆様のご来訪をお待ちしております。
他の冒険者たちと共に、温泉宿へ到着したナタリア・フィッツジェラルドには、気がかりなことがある。
「此処に来る途中でロクでもない目に遭ったりしたものだが、占いの結果が最悪だったせいとかじゃないだろうね?」
どうやらナタリアはこの宿へ来る以前より不運に見舞われていたらしい。
「宿の破壊厳禁、というオーダーは順守で依頼を遂行するぞ」
ナタリアがいる区画には、今回の討伐対象であるアンラッキーネコ(仮称。以降は不運猫の略称も使用)以外にも従業員の子犬子猫達がごろんごろんしている。
「ペット同伴可という事なのでノーラも連れてきたぞ」
ゲルトは現場となる宿の特徴を聞いていたので、自身の相棒である白狼ノーラと共に宿を訪れた。
なおゲルトは不運猫に指をさされると不運が襲う、という現象についてはあまり信じていない。
「持ち帰ってはいけないのか……仕方がない」
同じように猫のショウガ同伴で依頼に参加したレピド・クロサイトは、今回討伐対象となる不運猫を持ち帰ることができないと知り、心なしかしょんぼりしたようにも見受けられる。
「最初は試そうか。軽いナイフ投げ、武器の振り下ろしとかで」
サイラスは不運猫がどの程度の行動に反応し、不運なことが起きるのかを確認するため、試しに風雷坊を鞘から抜かない状態で、軽く上下に振るう。
距離が遠いのか気にしないのか、当の不運猫はサイラスを指さす真似をせず、何も起こらない。
「次は殺意の量とか調節してどのくらいだとどう対処するのかとか。そういうので遊びつつ確認してみるつもりだ」
その反応を確認したサイラスは、次に風雷坊を鞘から抜いて少し不運猫へと歩を進め、刃を上下に振るう。
「み~」
すると不運猫はサイラスに向け指(正確にはにくきゅう付きの手)を指し示し、なぜかサンドイッチが飛んできた。
どうやら近くを通りかかった従業員が足をもつれさせ、運んでいたサンドイッチを放り投げる形になったらしい。
サンドイッチは宙で放物線を描いてサイラスのもとへ飛んでくるが、サイラスは空いた手でサンドイッチをキャッチし、従業員のもとに運んでいく。
「次はオレが試してみるつもりだ」
今度はゲルトが不運猫に接近を試み、ノーラもゲルトの後に続く。
「み~」
今度はなぜかゲルトの移動先に骨が落ちていた。
ゲルトは骨に足を取られて転び、宙を舞った骨はノーラが落下先へ回り込み、口でキャッチする。
「指を差された人に不運が襲う……これは本当だ」
ゲルトは身をもってその能力を理解した。
「んー、中々に不思議な能力ですね?」
グレイブ・ヤードは目の前で発生した現象に対する分析を始める。
(殺意や害意ではなく、あくまで障害としての事象を起こす、ですか)
今のところ発生する事象は、怪我をしない範疇におさまっている。
(あくまで事象であるためにおそらく本人(?)も何が起きるのかは予想できないのでしょうかね?)
今の段階では情報が少ないため、不運猫が発生する現象を自由に操作しているかどうかは、グレイブも即断を避けている。
「まずはアンラッキーネコを油断させよう」
レピドは周囲でゴロゴロする仔犬仔猫達との触れ合いを始める。
「追い払う意思無しでも指差されるのかを確認したいことも兼ねている」
すると周囲にいた仔犬仔猫達が、レピドのもとへ集まってきた。
(賢者の石を弄られるのは苦手だが)
自身もショウガを飼う身であるレピドは、予め温泉宿の方で用意してくれたおやつを小皿に乗せ、床に置き始める。
小さく鳴いて見上げる仔犬達に向け、レピドは小皿にあるおやつを差し出すと、仔犬達は夢中になって食べ始める。
さらにレピドは手元に寄ってきた仔猫に対し、ブラッシングを行い始める。
(アンラッキーネコが単一、というか視覚に入った対象にしか指を指さないというなら、この隙に接近だね)
その間にナタリアは周囲にある物陰に身を隠し、徐々に不運猫が顔を向けていない方角より接近を試みる。
●討伐
いつしかアンラッキーネコこと不運猫は、他の仔犬仔猫達と一緒にドッグランができそうな広場へ動き始め、冒険者達も広場へ移動する。
ここでグレイブは不運猫からの指差しを誘引するため、その正面で動いてみる。
「あえて見つかるように動いて何度か指を指されてみましょうか」
不運猫はグレイブも指差しをしたが、グレイブやその周囲に何か起きた様子は見られない。
「一応対策は用意しましたが、まぁなんというか。ご加護頼りという感じですかね?」
予めグレイブは周囲や足元を警戒していたためか、足元に敷き詰められた芝生が一部くぼんでいることに気づき、体勢を崩されることはなかった。
(アンラッキーネコの注意が他の味方に向いている間に対処できないか、試してみよう)
今度はゲルトがグレイブとは別方向からアンラッキーネコ(不運猫)に近づいていく。
「み~」
不運猫はその動きを察知したのか、ゲルトとノーラのいる方角に向き直ると指差しを行い、両者(?)とも周囲にいた仔犬仔猫達からもみくちゃにされる。
(ノーラ、楽しそうだな)
ノーラともども仔犬たちによるモフ埋めの刑に処されたゲルトは、埋もれながらも心なしか嬉しそうだ。
「性根というか、性質を見ておきたいですね」
――倒さなければならないとはいえ、どういう立ち位置で倒すのかというか、感情面は決めておきたいですから。
グレイブは冷静に不運猫の状態と発生する事象の観察を続け、ナタリアが徐々に不運猫へと忍び寄っていく。
「み~」
すると不運猫はナタリアがいる方角へと顔と手を向けると、今度はナタリアにも仔犬仔猫達は飛びついていく。
「憂き事の尚この上に積もれかし、なる言葉がある。その身を以って力を確かめる事も、研究者の仕事だ」
ナタリアは仔犬子猫達に纏わりつかれながらも、今起きていることを確認する。
仲間たちの動向を見たレピドは仔犬仔猫達へのお世話を中断し、自身も闇夜の外套で顔を隠して別の方角より接近を試みるも――。
「み~」
どこからともなく骨付き肉が、レピドの顔めがけて飛来した。
顔に当たった骨付き肉を取りこぼし、地面に転がるのを見たレピドは内心落ち込む。
(スキルなしでの接近は難しいか)
レピドはそう分析すると、一度アンラッキーネコから距離を置く。
(鍵と言えるのは隠密行動を旨とするシーフだね)
一方で自身の接近が失敗したナタリアは、レピドの行動が足がかりとなると判断し、援護に回る。
ナタリアは強力なエーテルの波動を開放し、範囲内にいたレピドや周囲にいる仲間達のエーテルを増幅することでその能力を向上し、金色の光を立ち登らせた。
(ネコへのアンブッシュにおいて、シーフが身を潜める場がないのなら遮蔽物を作るまでだ)
さらにナタリアは祈りとともに光輝を放つ六角形の柱を広場に作り出し、レピドや仲間が身を隠す場所を作り出す。
(見た目に惑わされないようにしよう。これも仕事だから)
ナタリアからの援護を受け、その身からレピドは意識を切り替えると、認識を妨げるエーテルを自身の周囲に張り巡らせ、ナタリアの光縛封を隠れ蓑にしながら再び不運猫へと忍び寄っていく。
「おれが意識の引き付け役を受け持とう」
それまで状況を見定めていたサイラスはそう告げるとシーザーロア3を発動し、戦意と共にエーテルを不運猫に浴びせ、その感情を刺激して不運猫の意識を自身へと向けさせる。
「後は防護とかのほうに集中するつもりだ」
――他の人に指差しが行かないように、だな。
サイラスはその場にとどまり、相手を驚かせる際有利に働くスキルも駆使して不運猫の意識を自身に固定できるよう務める。
「み~」
指をさされ、芝生のくぼみに足を取られそうになったサイラスだが、幸運の星スキルによる加護もあるのか、転ぶことなくその場に踏みとどまり、剣鱗を構え守りの姿勢を貫く。
――というか、おれが動かなければ良くないか、これ?
サイラスは不運が向かう先を自身に固定することで、仲間達の行動を援護する。
そしてナタリアの援護を受けたレピドが、母蜘蛛糸のロープへとエーテルを通して投擲し、不運猫を絡めとる。
(ノーラの尻尾を踏まずに済んでよかった)
仔犬子猫達の山から抜け出すことに成功したゲルトも不運猫へ近づき、竜鉄の棍で一撃を加える。
ゲルトの一撃を受けた不運猫は暴れて抵抗するが、レピドは拘束を緩めない。
「これは憎悪でもなく、文字通りの不運である」
その間に、一連の動向を観察していたグレイブの中で結論が出たらしい。
グレイブは源霊収束によって周囲に漂うエーテルの残滓を集めて収束し、加速した一撃を不運猫へと打ち込んだ。
その一撃に不運猫は耐え切れず絶命し、動かなくなった。
●退治後
「苦痛は少なく、やるなら自信の最大の一撃で、と思いまして」
不運猫の討伐を確認したグレイブは、先の一撃についてそう語る。
その骸をサイラスが引き取りにかかる。
「弱くても幸運とかに関与できるものはレアだし」
幸運というよりも不運といった方がよさそうだが、サイラスにとっては素材が回収できればいいようだ。
「一年中、いや来年分も含めて運気を使い果たしたんじゃないか?」
その一方ナタリアは疲れ果てた様子を見せ、その場に座り込む。
何が起きるかわからない、という状況はナタリアの心身に負担を強いるものだったようだ。
「運気を回復する為に、お目出度い縁起物でも食べたくなってきたな」
こういうときは気持ちをリフレッシュするのが一番と、ナタリアは起き上がり、温泉宿の食堂へと向かう。
「私は掃除などのお手伝いに回ります」
グレイブは待機していた従業員達に声をかけ、現場となった部屋や広場の後片付けを一緒に取り組んでいく。
「オレも手伝った方がよさそうだな」
ゲルトもまたグレイブの後に続き、後片付けに加わるとノーラと一緒にできる範囲のことを行い始める。
部屋の中を片付けている間も、ガルドやノーラは仔犬仔猫達に囲まれている。
ノーラの尻尾に子猫達がていていと飛びつき、子犬たちも混ぜて~とノーラだけでなくゲルトにも飛びついてくる。
「あの猫が何かをしなくても、元からそうだったみたいだな」
ゲルトはある程度めどがついたところで作業を切り上げると、今はノーラともども仔犬子猫達からふるもっふにされている。
「可能であれば墓を作ってあげたいとは思いますが、店的にはあまりよろしくないですよね?」
掃除を行う中で、グレイブは今回退治したアンラッキーネコの弔いをやってもいいか尋ねるが、温泉宿への配慮も忘れない。
グレイブより話を持ち掛けられた従業員達は宿の主にも話を通した結果、「場所と必要なものはこちらで用意します」との答えが返ってくる。
アンラッキーネコのような存在が宿に現れるのは初めてのことではなく、グレイブが弔ってくれるなら不運もおさまるだろうと宿は判断したようだ。
温泉宿からの答えと埋葬場所を聞いたグレイブは、ある程度作業を進めたところでサイラスのもとへ向かい、埋葬の許可が出たことを話す。
「了解だ。おれもやることは終えたから手伝いをしようか」
グレイブから話を聞いたサイラスは手伝う旨を伝え、グレイブと共に不運猫の埋葬作業を行う。
一方レピドはショウガと共に、温泉につかっていた。
温泉宿からのおすすめに従い、今レピドが入っている風呂は足が伸ばせて座ることができる作りと広さがある。
「……ぬくいな、ショウガ」
「にゃー」
温泉の効果なのか血色の良い顔でレピドが呟き、同じ風呂に入っているショウガからも返事(?)が届く。
レピドが温泉を堪能している頃、食堂に足を運んだナタリアはこの温泉宿おすすめの料理を食していた。
今ナタリアが口にしているのは、イノシシ肉の蒸し料理。
この温泉宿があるバイエという村では、イノシシ肉は縁起がいいものとされており、この宿では温泉の熱を利用した蒸す工程を調理に加え、利用客に提供している。
弾力はあるのだが、ナタリアの歯ではらりと肉は噛み切れた。
「こういう料理もあるのか」
丁寧に下処理されているため野生の臭みはなく、調味料との相性がいいためか、蒸された後も脂は残っているのに、くどさはない。
ナタリアは料理を味わいながら、これで運気が回復することを密かに願う。
やがて温泉を楽しんだレピドは、ショウガと共に再びアンラッキーネコがいた部屋に戻っていた。
既に片づけは完了し、今は仔犬子猫達が部屋のあちこちでころんころんと転がり、よちよちと動いている。
「ここの犬や猫は皆小さいな……これが育つとショウガになるのか……」
ショウガと一緒に寝転んだレピドは、すりすりと頭や体を寄せてくる仔犬子猫達を撫で返しながら、密かに感動していた。
●いつも通り
やがて埋葬も含め、すべての作業とやりたいことを終えた冒険者達は、温泉宿から依頼の完了を伝えられ、帰還していく。
宿の構造に被害を出すことなくアンラッキーネコを退治し、後始末も手際よく行ってくれた冒険者達に対し、温泉宿の主や従業員達は深い感謝を示して頭を下げる。
「またのお越しをお待ちしております」
温泉宿では、いつでも皆様のご来訪をお待ちしております。
マスターコメント
今回はアンラッキーネコを退治する内容でしたが、ご参加下さった皆様はそれぞれのやり方で「よくないこと」を乗り越え、アンラッキーネコ退治を達成されました。
また現場となる温泉宿への被害も抑え、後片付けなどアフターフォローも行われるといった、目標達成プラスアルファの結果を全員でつかみ取ったとみなし、大成功と判定いたしました。
称号につきましては、今回「よくないこと」に向き合われた皆様をたたえる形で、該当される方に付与させていただきました。
改めましてこのたびはご参加くださりありがとうございました。
また機会がございましたらよろしくお願いいたします。
ショートシナリオR普通 報酬:標準5 / 4〜8人
2022年12月02日 22時22分21秒 公開
大成功
相談掲示板
まだ人数が集まってないが、相談始めるか。ヒーラーのゲルトだ。 指を差された人が対象だから、こっそり後ろから近付けばスキルの対象にならずに済みそう。 ウォーリアの引き付けスキルやシーフの隠密があれば何とかなりそうか?
レピド・クロサイト、シーフだ。よろしく頼む。 スキル以外にも、普通の猫にするみたいにおやつやブラッシングで油断させてみてもいいかもしれない。 追い払おうとすると反応するみたいだし。
些細な不幸とその原因(らしいもの)を見てなお冷静になれるか みたいな感じも無きにしも非ず グレイブ・ヤードです。 命に係わらなければあえて不幸の種類をコンプリートする勢いで動いてもいいのかもしれません。 情報収集も必要なようですし
No.4
サイラスだ、よろしくなー まあシーザーロアもちこもかと
ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。 滑り込みになるが、宜しく。 リアクションとしては、アンラッキーネコによる不幸に関しては、奴と出会う以前に起きたり感じた、縁起でもない事柄のせいなのか?というのも考えてるなあ。 例えば占いの結果が最悪だったとか。 戦闘に関しては、光縛封が回復系の射線も通さないという効果だそうだから、アンラッキーネコが指を刺した方角における射線も通さないのか試してみようと思う。 これならシーフなどによるアンブッシュの一助にもなるはず。
ギリギリで申し訳ない、アンブッシュ用のハイディングはちゃんと持っていくつもりだ。 引き付けスキルや光縛封も助かる。