【鬼哭】緑刃と馬の怪物
革酎
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シナリオID:2587
オープニング
シルトラース帝国南部鎮守都市ヴィントから、リーンエス王国方向へ少しばかり外れたところにカーケルスという辺境の小さな町がある。
帝国崩壊前はミラルイーズ男爵という人物が町の中心となって諸々の行政を取り仕切っていたが、そのミラルイーズ男爵は二年前に既に亡くなっており、その娘であるキャスリィ・ミラルイーズが所謂代官代行という形で町のひとびとを支えている。
このカーケルスとヴィントの中間付近に、ゴールディから移住してきたゴブリンの一団の住まう村があった。元々は廃村だったのを、彼らゴブリン達が自力で居住可能な環境にまで復旧させたのである。
ヴィントとカーケルスはこのゴブリン復旧村を、レディオンと呼んでいた。
レディオンに住むゴブリン達は、実はゴールディでブラックデスに敵対しているマフィア『レッドブーツ』の構成員達だった。
ブラックデスがゴールディに於ける覇権を掌握した後、幾らかの元レッドブーツ構成員はドン・ゴーフルの傘下に収まり、その中から数多くのゴブリン達が帝国への移住民として送り込まれた。
ところがここ最近、レディオンに妙な動きが見られる様になった。
レディオンのゴブリン達は突如として武装で身を固め、帝国民の住まう近隣の村や集落に夜襲を仕掛け始めたというのである。
一体何が起きているのか――ヴィント冒険者ギルドは実態を探った。
結果、レディオンのゴブリン達はグリーンナイフなる新興マフィアに恭順し、ブラックデス及び帝国民に敵対しようとしていることが分かった。
流石にこれは捨て置けぬと判断したヴィント冒険者ギルドは、四名の駆け出し冒険者を鎮圧に向かわせた。ところがレディオンのゴブリン達は思いの他に手強く、新人授恵者でとうにかなるレベルでは無かった。
新人授恵者四名はレディオン内に囚われたのか、消息不明となった。
元帝国魔導院エスタル支部長クライス・アクバーは、自身が開発・製造した対幽界樹戦の切り札『本格式凝黒装置』の整備の為に、ヴィントを訪れていた。
ひと通りの整備作業を終えてから、路銀を稼ぐ為の適当な依頼が舞い込んでいないかと冒険者ギルドに顔を出したクライスだったが、彼はそこで初めてグリーンナイフと呼ばれる新興のゴブリンマフィアが帝国南部のそこかしこで騒ぎを起こし始めていることを知った。
ヴィントとカーケルスの間に位置するレディオンも、そのうちのひとつである。
カーケルスではかつての教え子キャスリィが代官代行として町の行政業務に日々走り回っているし、ここヴィントに於いては本格式凝黒装置が18台、厳重な警備体制のもとで保管されている。
レディオンのグリーンナイフが本腰を入れて暴れ始めると、ヴィントにもカーケルスにも良からぬ影響が出始めることだろう。
(面倒な奴らだ……ひとつ、締め上げておいた方が良さそうだな)
自身が開発した対幽界樹戦の切り札で折角士気が高まりつつある現状に、余計な水を差されたくない。
クライスは掲示板に貼り出されているレディオンのグリーンナイフ討伐の依頼票を剥ぎ取ると、迷わず受付カウンターへと向かった。
●売り込み
レディオンには、13人の元レッドブーツ構成員だったゴブリンが住んでいる。
彼らはいずれもグリーンナイフへの参加を決め、それぞれが自らに武装を施して、いずれ訪れるであろう帝国側やブラックデスとの戦いに備えていた。
リーダー格はふたりの大柄なゴブリナ。赤い肌を持つゴブリナはレッドウーマン、緑色の肌のゴブリナはミラーウーマンと名乗っていた。
いずれも自身の本名を忘れてしまっているのだが、正直なところ名前などはどうでも良い。要は自分達がグリーンナイフの一員として存在感を示すことが出来れば、それで良かった。
そんな彼らが武装蜂起を始めてから数日後、ひとりの巨漢がふらりとレディオンを訪れた。
男は、鬼一 劉厳と名乗った。
天陽道と呼ばれる暗殺組織の頭領で、自身は天陽師という地位にあるのだという。
シャルガネ居住区民特有の黒い瞳と黒い髪、黄色っぽい肌の顔立ち。どこか呑気な雰囲気を漂わせているが、ちょっとした身のこなしや鋭い眼光から、只者ではないことはすぐに分かった。
「帝国やブラックデス相手に一戦交えようとしておられると伺い、売り込みに参り申した」
鬼一劉厳は軽い調子で、自身が操る式鬼を参戦させては貰えまいかと告げた。
「式鬼? 何だいそれは?」
「鬼の姿を象った魔獣、とでも申せばご理解頂けますかな」
訝しげに問い返すレッドウーマンに、鬼一劉厳は簡単な絵図を用いて説明した。
基本的に式鬼は、式鬼使いと呼ばれる唱紋士(天陽道の構成員)が操る。だが今回は天陽師たる鬼一劉厳自身が使役する式鬼を実戦に投入し、その能力を試験したいのだという。
「馬頭といいましてな。まぁ簡単に申せば、馬の頭を持つ鬼の怪物とでも思って頂ければ結構」
レディオンのグリーンナイフとしては、特に断る理由も無い。彼らは天陽道がメドゥの指先や帝国過激派とつるんでいる組織だということを、噂程度には聞いて知っていた。
ここで利用してみたところで何らかの損失に繋がる訳でも無さそうだ。
「ふん……良いさ、使ってやる。その代わり、足引っ張ったらその場て叩き殺すよ」
「これは僥倖。痛み入り申す」
不敵に鼻を鳴らすミラーウーマンに、鬼一劉厳は仰々しく頭を下げた。
解説
マスターより
リプレイ
グリーンナイフを名乗るゴブリン達の村の周辺には、数名の歩哨が立っている。
連中を討伐する為に駆けつけてきた冒険者達は、敵が既に臨戦態勢にあることを遠目に悟った。
「元レッドブーツの奴等か……性根から叩き直してやらねぇといけねーみてーだな!」
同じゴブリンとしてもう一度教育してやる、という訳でもないだろうが、ハヤト=ガラン=ヴォルファングはいつも以上に気合を入れた表情で自身の両頬を軽く叩いた。
その傍らには、アウレーリア・フォン・ネーベルベルクの頭の痛そうな表情。
「ひとつの問題が片付く前に次から次へと……」
幽界樹、帝国過激派、メドゥの指先等々、今の帝国は難問が山積している。そこに加えてこのグリーンナイフ騒動だ。帝国に所領を持つネーベルベルク家の現当主としては、幾ら苦り切っても苦り足りない。
「山賊の様に振る舞い、隣人達を殺すならば、私は同胞とて容赦しないのだ」
ハヤトとは真逆に、恐ろしい程に落ち着いた表情を見せるストレガ・L・リベルガストラ。しかしその目は不気味に据わっている。隣人を助けよという教育方針は間違っていないし、多くの同胞達に生き残る術を教えた筈だ。そしてその教えはまだまだ続けてゆく必要がある。
それだけに、今回の暴挙は許せなかった。
「何とも唐突な野生化に反体制化。一体何が起こっているのでしょう?」
フリーダ=ブロムヴィストが疑問に思うのも尤もだ。今回も天啓とやらは、伏兵が居そうなエリアだが何とかすべし、と出ている。蜂起したゴブリン以外にも敵が居るかも知れないが、それらを含めても何か色々と面倒な事態が起きている様な気がした。
「歩哨の警戒態勢は大体分かった。そろそろ、行くか」
手頃な切り株に腰掛けていた元帝国魔導院エスタル支部長クライス・アクバーが、のっそりと立ち上がった。これまでに得られている情報から、あの集落を構成するゴブリンの人数や勢力はある程度、分かっている。だがフリーダがいう様に伏兵の存在も考えられる為、いきなり突入するのではなく、こうして少し離れた位置から状況を観察していたのだ。
するとそこへ、偵察に出ていたキオルティスが丁度良いタイミングで引き返してきた。当初はフリーダも偵察に出る腹積もりだったが、どちらかといえば戦闘に偏った技術構成の彼女では情報を収集し切る前に敵に見つかる恐れがあった為、結局キオルティス単独での偵察ということになった。
「状況は掴めた。矢張り皆が予想していた通り、伏兵が隠れていそうだ」
愛用の細剣の鞘先で、乾いた地面に簡単な絵図をがりがりと描きながら説明するキオルティス。捕まっている新人冒険者達や、伏兵らしき謎の気配の主の位置も、大まかではあるがしっかり把握出来ている。
「リーダー格はふたりのゴブリナ、でしたね。先にこの両者を分断しましょう。私がいずれか片方、後から出てきた側の動きを封じます」
ルアンナ・ミュラーの提案に、クライスは静かに頷き返す。妥当な案といって良い。
「では俺は、最初に出てきた方に仕掛けよう……範囲魔法を使う時はいってくれ。すぐに退く」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトがルアンナとストレガ、アウレーリアの三人にそれぞれ視線を送った。ハヤトとキオルティスは機動力で敵を引っ掻き回す役どころだろうから、今回、前衛の中でも盾役といえるのはアルベルトとフリーダのふたりだけだ。敵の数もそれなりに多いから、位置取りには特に気を使わなくてはならない。
「さ、それじゃあ準備に入りましょう。皆さん、良いですか?」
ダニエル・ヘリントンの号令を受けて、冒険者達とクライスは一斉に動き出した。
集落近辺まで近づき、敵が出てきたところでダニエルの最初の強化支援術が発動する手筈だ。後は最初に決めた役割分担通り、それぞれがそれぞれの責任に従って動くだけである。
●レッドウーマンとミラーウーマン
集落周辺は俄かに騒がしくなった。
ダニエルの強化支援術を受けて全身に青白い光を帯びたアルベルトとフリーダのふたりが、猛然と突っ込んでいった。グリーンナイフの側もすかさず対応し、歩哨がそのまま迎撃要員として両者の前に立ちふさがると同時に、大声をあげて仲間達に来襲ありを知らせていた。
直後、リーダーと思しき大柄なゴブリナが飛び出してくる。先に姿を見せたのは赤い肌のレッドウーマンだった。三人のゴブリンを従え、手近なアルベルトへと挑みかかってくる。
次いで緑の肌のミラーウーマンが姿を見せたが、そこにルアンナが稲光の束を迸らせて素早く足止めを仕掛けた。
レッドウーマンはミラーウーマンの動きが封じられたことには気づいていない様子で、そのまま部下を率いてアルベルトとの接近戦に突入した。
「貴様を倒す!」
「やれるモンならやってみな!」
アルベルトの剣と、レッドウーマンの巨大な戦斧が激しく打ち合った。
一方、フリーダは近づいてきたゴブリン達の対処に廻る。ひとりで複数を相手取るのは中々骨が折れるが、陽動に徹するだけならば防御に専念するだけで良い。
その時、不意に虚空から二枚の式符がひらひらと舞ってきた。と思った次の瞬間には、巨人の様に大きな体躯の化け物が現れた。式鬼特有の出現スタイルだ。
「出やがったな……天陽道絡みって訳か!」
馬の頭を持つ二体の式鬼に敵の容易ならざるを悟ったハヤト。素早くクライスに視線を飛ばす。
「頼む、時間を稼いでくれ!」
「心得た」
クライスは両の腕と脚に魔導障壁を纏わせ、格闘魔導師としての戦闘態勢で式鬼の一体との間合いを詰めた。残る一体に対しては、ストレガが青藍に光る錨と鎖を絡ませた。
当初ストレガはいずれかのリーダーゴブリナに足止めを仕掛ける腹積もりだったが、既にルアンナがミラーウーマンの動きを抑えている。そこに重ねて足止めを加えるのは戦力の無駄遣いだ。それならば式鬼の一体を封じる方が余程に建設的だった。
しかしミラーウーマンも全く身動きが取れない訳では無く、少しずつではあるがアルベルトへと近づきつつある。そこへキオルティスが割って入った。動きが阻害されている敵ならば、キオルティスの機動力はより効果的に機能する。
「それにしても、何でまた急にグリーンナイフだなんて名乗り始めたんだ? 美味い話なら、乗ってやらなくもないけどね」
目にも止まらぬ早業で刃を繰り出しつつ接近と後退を繰り返すキオルティスだが、敵からの情報収集も忘れない。ミラーウーマンは傲然と吠えた。
「ドン・ゴーフルの野郎に騙されてたってことに気付いただけさ! それ以外に何があるってんだ?」
奇妙な応えに、キオルティスは内心で小首を捻った。
余りに単純過ぎる。本当にそんなことで、少なくない数のゴブリン達が急におかしくなるのだろうか。
訝しんだキオルティスだが、ミラーウーマンの言動には嘘は無さそうだ。ではゴブリン達自身も気付いていない別の何かが、裏で動いているのだろうか。
一方のレッドウーマンも、アルベルト相手に妙な怒声を浴びせていた。
「お前らもドン・ゴーフルの野郎に騙されてんのか?」
「それは一体、何の話だ?」
お互いに防御を削りながらのじりじりした攻防の中で、アルベルトは眉間に皺を寄せる。どうやらこのゴブリン達の蜂起は、冒険者達が思っていた以上に奇妙なからくりが動いている様にも思える。
それが何なのかは、勿論この場では分からないのだが。
●一進一退
下っ端ゴブリン共はルアンナとストレガの圧倒的な破壊力の範囲攻撃魔法で、次々と蹴散らしていった。
授恵者ではないゴブリン共は、炸裂する巨弾の連発や降り注ぐ光弾の雨に次々と斃されてゆく。だがその一方で、ストレガは渋い表情を浮かべていた。
「あの式鬼とやら、少々面倒だな」
ストレガが最初に仕掛けた足止めを、件の式鬼は容易に破った。
通常の式鬼でも相当な強敵だと聞いていたが、今回現れた馬頭の怪物は更にその上を行く化け物だということか。
その時フリーダが、ストレガからの戒めを打ち破った式鬼に向けて吠えた。魔術師達にあの物理攻撃の塊の様な化け物が襲い掛かったら、その瞬間に戦線は崩壊する。何とか自身で引き付けて、仲間達との距離を取らせる必要があった。
が、既に数体のゴブリンをも相手に廻しているフリーダ。これは数的にも相当に危うい。
「フリーダさん、そのゴブリン達は私の方で対処します! 式鬼をお願い出来ますか!」
「馬の頭は刺身にしても食えないと啓示が語っております。承知致しました」
若干意味不明な応えだったが、フリーダはルアンナの提案を受け入れて式鬼の相手に専念する様だ。ならばルアンナも、フリーダに追いすがろうとするゴブリン共に光弾を浴びせかけ、敵が変わったことを教えてやらねばならない。
この策は、上手く機能した。
フリーダが式鬼の一体を、そしてそれまでフリーダが相手に廻していたゴブリン共はルアンナが受け持つことで、戦線は辛うじて維持されたといって良い。
その時、集落内からハヤトが四つの人影を率いて飛び出してきた。囚われていた新人冒険者達だ。彼らは一様に酷い有様で、ハヤトに叱咤されながら這う這うの体で逃げ出してきた。
アウレーリアが追撃するゴブリン達を範囲攻撃魔法で抑える間に、ハヤトと新人たちはダニエルの元へと辿り着いた。
「皆さん、集まって下さい! すぐに治して差し上げますから!」
アルベルトやフリーダの治療補助に専念していたダニエルも、この時ばかりはケアの相手を新人達に切り替えざるを得ない。この新人達が深手を負ったままでは、ハヤトやアウレーリアも思う様に動けないからだ。
「早く戦域から離脱してくれるかしら。今の貴方達は、無事に逃げ切ることが最大の任務と心得て頂戴」
アウレーリアの台詞は随分冷たくも感じられるが、しかし事実であり、そして適切だ。
「ケツは持ってやる! 逃げ切るくれぇは自分達で何とかしろ!」
尚も追いすがってくるゴブリン共に閃光塗弾を投げつけながらハヤトが吠えた。新人達はダニエルからの治療を受けて、走れる程度までには回復している。彼らは頷きつつ、慌てて逃げ出していった。
そのダニエルが、あっと喉の奥で叫んだ。
フリーダが式鬼の強烈な一撃を浴びて昏倒してしまったのである。クライス程の達人であれば一対一でも何とかなる相手だが、フリーダひとりでは流石に荷が重過ぎた。
「ダニエル、フリーダを助けるぞ!」
「お任せを!」
ハヤトとダニエルでフリーダ救助に走る一方、ストレガとアウレーリアのふたりがかりで式鬼の動きを封じる作戦に出る。
「フリーダは任せた! 俺は式鬼を操ってる奴を叩く!」
「ご武運を!」
魔術師達が式鬼の動きを上手く封じたところで、ハヤトは式鬼の使役者の気配を追うことにした。
近くに居ることは分かっている。使役者はその存在を隠そうともしていない。キオルティスの報告によれば、集落の木柵裏側に大柄な男の気配があったという話だ。
●鬼一劉厳
アルベルトもキオルティスも当初、何が起きたのかをすぐに理解することは出来なかった。
少し前、ハヤトが式鬼の使役者を追って集落内に飛び込んだところまでは視界に収めていた。ところがその直後、同じ顔の黒衣の巨漢が一斉に数名、戦域に姿を現し、戦闘中の冒険者達に肉迫した。
危険を感じたキオルティスは即座に間合いを取り、アウレーリア、ストレガ、ルアンナら魔術師三人も警戒して防御に身を固めた。
この結果アルベルトを除いては、それまで相手に廻していた敵に後退する隙を許すこととなった。ミラーウーマンは集落方向に足早に退き、式鬼の一体も魔術師達の攻撃範囲を逃れた。
「な、何が起きたのですか?」
フリーダを介抱し、漸く状況を把握したダニエルはただ狼狽するしか無かった。集落内に飛び込んだ筈のハヤトが派手な破壊音と共に木柵を突き破って吹っ飛ばされてきたのは、その直後だった。
「やれやれ……高みの見物で終わろうと思うており申したが、態々それがしにお手合わせを乞いに参るとは」
いつの間にか同じ顔の男達は姿を消し、その本体と思しき黒衣の巨漢がのっそり姿を見せた。
「桐蓬忍道奥義、空蝉群闘を見るのは初めてで御座ったかな」
空蝉群闘――簡単にいえば、分身の術だ。尤も原理は単純で、要は超高速機動での残影が本物に見えただけに過ぎないのだが、その残影にエーテルを通してより本物らしく見せるという芸当の様だ。
その為、魔術師三人は防御に徹する破目に陥ったが、下っ端ゴブリンをあらかた倒し終えた後だったのが不幸中の幸いだった。
(こいつ……只者じゃねぇな……)
ハヤトは奥歯を噛み鳴らした。同じ天陽道でも、一般術師たる唱紋士とはまるで次元が違う。
「名乗る程でも御座らぬが、それがしは天陽師の鬼一 劉厳と申しましてな。御身らとは此度が初の顔合わせとなり申そうか」
穏やかに語る黒衣の巨漢は、茶飲み話でもするかの様な落ち着いた佇まいだ。二体の式鬼を操っているのは間違い無くこの男だが、冒険者達やクライスを前にしてもまるで動じる様子が無い。
「天陽師……つまり天陽道の頭領か」
丁度、相手にしていた式鬼を始末し終えたクライスがハヤトの傍らに立ち、鬼一劉厳と対峙した。ミラーウーマンは鬼一劉厳の思わぬ強さにすがろうと思い立ったのか、その傍らに素早く移動して得物を携える。
もう一体の式鬼も鬼一劉厳達を守る位置へと移動し、低い姿勢で冒険者達を牽制する様に構えた。
レッドウーマンはしかし、アルベルトの接近戦から逃れることが出来ていない。アルベルト自身がキオルティス程の機動力を持たない為、鬼一劉厳の分身の出現を受けても素早く距離を取ることが出来なかったのが、却って幸いした格好だった。
「馬頭の性能試験も必要な結果は取り終えた。それがしとしてはもうここに用は御座らぬが……まだ手合わせをご所望で御座るか?」
鬼一劉厳は、この場は退くといっている。ミラーウーマンも追随する様だ。
そして冒険者達はというと、ひとり戦域内に残されているレッドウーマンへの攻勢以外には、取れる手立てが無い。
「では失礼仕る。また機会があれば、お会い致しましょうぞ」
突如目の前に炎の壁が生じ、そしてすぐに消えた。と思った直後には鬼一劉厳、馬頭、ミラーウーマンは姿を消していた。天陽道の堰辺火遁と呼ばれる離脱術に違いない。
直後、アルベルトの一撃がひとり残されて狼狽するレッドウーマンを叩きのめした。
こうして――討伐戦は、思わぬ形で幕を閉じた。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年11月20日 23時48分50秒 公開
参加者
相談掲示板
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 伏兵に加えて人質もいるという点が少々厄介ですね。 とりあえずは正面や側面等から攻撃を仕掛ける陽動役と、 どさくさに紛れて人質救助を行う救助役の2班は最低でも必要でしょうか。 後は事前に遠距離から確認して伏兵がいる事を突き止められると、 それを前提とした戦法が取れて有利に立ち回れそうですね。
キャスター、アウレーリアです。宜しく。 ゴブリンも式鬼も、各々決して雑魚ではないようですね。 兵力差ではおよそ1対2ですが、一度に複数相手するのは得策ではないでしょう。 特にリーダー格の2体は連携させたくないところです。分断を試みませんか。 人質の救助も考慮が必要ですが、そちらに人数を割き過ぎると戦力不足の恐れがあります。 制圧を優先する、戦闘しながら救助する、或いは専従者を出すなら多くて二人程度でしょう。
間が空いてしまいましたが…、キャスターのルアンナです。 リーダー格と式鬼がみんな同時に来たら流石に辛いものがありますし、分断して相手するのは賛成です。 下っ端はまあ置いておくとして、リーダーゴブリンと式鬼が一体ずつのまとまりでするのが良いでしょうか?
ストレガなのだ。宜しくなのだ。 戦闘の方に回るのだ。 分断は賛成。足止めするスキルは複数あるので活用したい。
遅くなって申し訳ない。シーフのキオルティスと言うよ。 今回はどうぞ宜しくね。 俺も分断は賛成。遊撃的に動こうかと思っていたけれど もし特に手段が無いようなら、リーダー格のどちらかを 誘導しながら配置場所へ引っ張ってくることも厭わないよ。 更にどちらかの移動を制限しておくと万全かな?
>方針 それではこちらもリーダー格どちらかを誘導する形を取ろうと思います。 シーザーロアなり遠隔攻撃なりで引き撃ちする形を取って、 もう片方を足止めして互いの位置を孤立させる事ができたら理想的ですね。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 元レッドブーツの奴等はリーダー格2人の他は11人ってことだよな。 こいつらも人数が多いから放ってはおけねぇよな? 幸いアクバーがいてくれっからリーダーか式鬼の1~2体を任せといて雑魚共を無力化する面子も何人か用意した方が良いんじゃねーか? 今んとこリーダー格達に比率が多そうだから雑魚共の片付けと囚われた冒険者達の解放優先で動こうかと思うぜ。 人質にされっと面倒だしな。 解放さえすりゃまがりなりにも冒険者何だから自衛に専念くれぇはさせられんだろ。
ウォーリアのアルベルトだ よろしくな 顔を出すのが遅くなってすまない 作戦は大体理解した 頑張らせてもらうぜ
私も敵を分断するのにアーケインストリームを持っていこうと思います。 その後はまず下っ端たちを範囲魔法で蹴散らしてからどちらかの班に加勢しますね!