【学祭】もふもふに隠れた魔獣たちを捜せ

青猫格子

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シナリオID:2483

オープニング

●動物たちと触れ合おう
 夏休み明けのパンクリアース学園では、実家へ帰っていた生徒たちが寮へ戻り賑わっている。
「これ、お土産。よかったら食べてね!」
 イアン・ランボヴィルは生徒たちに実家で作られたクッキー、パウンドケーキなどの焼菓子を配っていた。
 先日ブームを起こしたトロピカルフルーツと、彼の故郷ランボヴィル領産のナッツを組み合わせて作られた品だ。
 お土産が好評なのを見たイアンは父の目的がひとまず達成されたことに安堵する。
 まだ数があったので、今度はクラスの友人たちに配ろうと教室へ向かう。

 イアンが教室に入ると、生徒たちが黒板を囲んで話し合っていた。
「……というわけで、今年の出し物は合同で『牧場体験』を行うことになった。賛同するものは拍手をしてくれ」
 まとめ役のラルス・ダンネベルクがそう言うと教室が拍手に包まれる。
(しまった、学園祭の話し合いがあるのを忘れてたよ)
 イアンは目立たないようにこっそり教室の端に向かう。
「イアン君、帰ってきてたんだ」
 クラスメイトのイゴールがイアンに気付いた。
 彼は平民寮にいるのでイアンが帰ってきていたことを知らなかったようだ。
「ま、まあね。ねえ学園祭のことなんだけど……」
 イアンは小声でイゴールに出し物について聞いてみる。

『牧場体験』は、名目上は農業に触れたこと無い貴族などが庶民の生活を学習するための一環として行われる真面目な展示ということになっている。
 基本は敷地内に牛やヒツジを放牧し、乳搾りや毛刈りなどを体験するイベントだ。
 もっとも、実際はモルモットやヒヨコのような小動物、犬猫とのふれあいいコーナーなどもあり娯楽の要素も大きい。
 大規模な出し物になるため複数のクラス合同で行われることが多い。
 今回はイアン、ラルスたちのクラスと、アンネリーのクラスで行われることに決まったようだ。
「なるほどね……」
 イゴールから話を聞いたイアンは考える。
 ラルスがその話を引き受けたのは、大勢の人を統率して指導力(リーダーシップ)を発揮することで、今後学内の貴族派として影響力を印象づけたいと考えているのかもしれない。
「とりあえず、アンネリーさんは前の学園祭で仮装舞踏会を成功させてるし、大きなイベントもきっと大丈夫だよね」
「イアン、俺もいる事を忘れないでくれるか」
 いつの間にかしかめ面のラルスが二人の近くまで来ていた。
「はは……もちろん分かってるよ。あ、お土産のお菓子食べる?」
 イアンが申し訳無さそうにしながら菓子を出すと、呆れながらもラルスは受け取る。
「動物たちは学園外の牧場から、イベントの前日に連れてくることになっている。期間が終わったらまた返す必要があるので、その間しっかり面倒を見なければな」
 その後はクラスの皆で菓子を食べながら、誰がどの動物を担当するか話し合うなどした。

●開催の前日
 イベントの準備は順調に進み、いよいよ会場に動物たちを運び込む段階まで来た。
 会場は学園の空き教室と、隣接する庭に柵を取り付けて作った即席の牧場だ。
 馬車から檻(ケージ)に入った小動物、荷台から降りてきた牛、羊たちが運び込まれる。
「わあ、もふもふして可愛い……って重い!」
 力作業であるため、貴族の生徒の中には従者に手伝わせるものも多い。
「これで全部だな」
「思ったより多くないすか?」
「檻が大きいだけだろ」
 ラルスがクラスメイトたちと部屋に運び込まれた動物を確認していると、会場の外でなにか騒ぎが聞こえる。

「よりによって牧場体験の会場に運び込んでしまったんですかッ!!」
「すいません! 手際よく持っていかれてしまい……」
 教師と思われる男と配送業者が揉めているようだ。
「ああ、面倒くさいことになりました……」
「どうしたんだ?」
 急いで出てきたラルスが教師に話しかける。
 男には見覚えがあった。確か、生物学教師のクロヴィス・トベルのはずだ。

「私が研究している生きた魔獣たちのサンプルが、間違って会場に運び込まれてしまったのです」
「なんだと!」
 クロヴィスの言葉にラルスは驚く。
「しかも、彼らには共通する特徴があり、それぞれの似た動物の中に溶け込むことを得意としています。そのためよく観察しないと見つけられない、珍しい魔獣なのです。ネコ型、ネズミ型、ヒツジ型の魔獣が届く予定だったのですが……」
 要するに、動物たちの中にいると探すのが困難な魔獣ということらしい。
 それがよりによって、多くの動物がいる会場に運び込まれてしまったというわけだ。
「そんな、まだ中で荷物を解いている生徒がいるよ。危ない!」
 イアンが慌てて教室へ行こうとするのを、クロヴィスが止める。
「しー、静かに。そこまで心配する必要はありません。それより魔獣(やつら)に気づかれて逃げられた方が厄介です」
 彼の話によると、魔獣の力は強くなく、同型の動物とさほど変わりない。
 性格は基本的には臆病で、追い詰められると戦うより逃げることが多いらしい。

「なんだか面倒そうだな……なあ、授恵者ならなんとかならないのか?」
 ラルスが困ったようにイアンを見る。
「僕はちょっと……でも冒険者の中には探すの得意な人もいるはずだよ」
 見つけにくい魔獣ということは、エーテルを介しても判別しづらい可能性もある。僅かな違いを見分けるためにじっくり探していく必要がありそうだ。
「貴重なサンプルですので、できるだけ無傷で回収してください」
「仕方ないな、とりあえず探せる人手を集めるか」
 クロヴィスの言葉を聞いて、ラルスは面倒そうに言う。学園祭の始まりまで残り時間は少ない。
 急いで冒険者ギルドへ使いを出し、魔獣を探す人手を集めることにした。

解説

 学園祭で行われることになった牧場体験のイベント会場。  そこに魔獣たちが紛れ込んでしまいました。  魔獣はクロヴィスが研究中の比較的珍しい魔獣で、似た姿の動物の中に紛れ込んでしまったため見つかりにくいようです。  貴重なのでなるべく無傷で回収してほしいと希望しています。  見つけるために会場の中で動物たちをよく観察しながら探しましょう。 ■会場について  牧場体験は学園祭イベントの一つで、農業に触れたことのない貴族などが自然に触れるという名目で行われます。会場は複数の空き教室と隣接する校庭の一部を使用しています。  会場の庭に柵を作り羊、牛などの家畜が放牧され、教室内にはモルモットなどの小動物、鳥類、犬猫などの何箇所かのふれあいコーナーがあります。 ■探すべき魔獣たち  それぞれ一匹ずつ、会場内に紛れ込んでしまったようです。  以下、クロヴィスから提供された情報です。 (仮称)ネムリヒツジ  一見普通の羊だが、よく近づいて匂いを嗅ぐと、甘いお菓子のような匂いがする。  この匂いはネムリヒツジが危険を感じると強烈に放たれるようになるが、香りを嗅ぎすぎた者は眠くなってその場で倒れて寝てしまう。 (仮称)シビレネズミ  薄茶色で、ハツカネズミによく似ている。怒るとヒゲが瞬時に赤くなり、ヒゲに触れると電気ショックを受けたようにしびれてしまう。  このシビレ攻撃は一瞬しか出せないので深刻なダメージにはならない。また疲れるのかあまり連発はしないらしい。  普通のネズミと同じように素早く、物陰に隠れていることが多い。 (仮称)スライムネコ  灰色の普通の猫に見える。しかし、敵が目をそらした隙に液体のように不定形に変形して逃げてしまう。  隙間のない部屋で扉を厳重に閉めておけば逃げることはないが、普通の檻なら簡単に脱出できる。  ドアノブを動かして扉を開け、僅かな隙間を作り逃げることもあるらしい。  誰かが見ていると不定形にはならないが、持ち上げた時稀に身体が伸びることもある。 ■今回関わるNPC  ラルス:パンクリアース学園生。今回の依頼人。  イアン:パンクリアース学園生。ラルスのクラスメイト。  クロヴィス:教師で研究者。魔獣を探している。

マスターより

 こんにちは、青猫格子です。  動物園とかにありますよね、小動物とのふれあいコーナー。  今回はそれに似ている牧場体験のイベント会場に、魔獣が紛れ込んでしまったというお話です。  安全にイベントを開催するため、また貴重な研究対象を逃さないためにも魔獣を探さねばなりません。  魔獣を探しつつ、動物とのふれあいを楽しむのもいいかもしれないです。  それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

リプレイ

●集められた冒険者たち
 牧場体験の会場に魔獣が紛れ込んでしまったので、探してほしい。
 ラルスの依頼により急遽4人の冒険者が集められた。
「ここが牧場体験の会場か!」
 アステルが会場を物珍しそうに眺める。教室に隣接した庭に柵を作り、羊や牛が放されている。お世話係の生徒たちが乾草を与えるなどの世話をしていた。
「ほー、美味そうなのが揃ってんな」
 ナハシュの感想に、ラルスは少し顔をしかめる。
「何言ってる? 念のため言っておくが、捕まえて食べたりするなよ」
「そんなことするわけないだろう。なあ?」
 ナハシュがサイラスに話を振るが、彼は興味なさそうに答える。
「同じ所を探すより、手分けして探したほうが早いだろ」
「じゃあ、オレはスライムネコを探しに行く!」
 アステルはそう言うと、真っ先に教室の中へと向かった。
 ナハシュとクロヴィスはシビレネズミを探しに教室の中へ。
「小さい生き物を探すのはな……まずは羊を探すか」
 ヨル・スレイマンは探しものはあまり得意ではないらしい。
 ひとまず、彼とサイラスがネムリヒツジを探すことにした。

●眠り羊の誘惑
 臨時に作られた牧場であるが、動物たちが自由に行動しやすいように、ある程度の広さはある。
 羊や牛たちはその中を歩き回る、休むなどして過ごしていた。
 庭の隅には簡易な作りの小屋もある。
「こう、自由に動いてると、見分ける方は大変だ」
 ヨルにとって羊の見た目の区別は難しい。よく見れば違うのはわかるが、動いて別の群れの中に紛れ込んでしまったら、分からなくなってしまうかもしれない。
「大丈夫だ。鼻の利く助手を連れてきた」
 サイラスはペットの大福を指差す。
 食べることと寝ることが大好きな大福なら、わずかなネムリヒツジの匂いにも反応するだろう。

 二人はまず庭の中心部に集まっている羊たちに近づく。
 狼(大福)の姿を見た羊たちは警戒してめぇめぇと声を上げるが、大福が羊たちの周囲をぐるぐると回ることで二人の周りに羊を集め始めた。
「牧羊犬みたいなことできるんだな」
 サイラスが感心しながら言うが、よく見ると大福は羊が珍しくて走り回っているだけのようにも見える。
 とりあえず、近くに来た羊に順番に触れて動物交感で感情を読んでみることにするサイラス。
(やや緊張……してるのは慣れない場所に居るのと、大福を見ての反応だろうか)
 感情が読み取れるということは、彼らは魔獣ではないのだろう。
 ヨルも周囲の群れの中に隠れている存在がいないか、よく目を凝らしてみる。
「あれ、そういえば、ここで世話をしてた生徒は?」
 先ほどまでは庭で餌を与えていた生徒がいたはずだ。気がつくとその姿が見えないことにヨルたちは気づく。
「!!」
 突然、何かに気づいたのか大福が走り出した。
 サイラスとヨルは、羊の群れを抜け出して急いで後を追いかける。

 大福は小屋の入り口に立ち止まり、鼻をフンフンと鳴らしている。
 二人は入る前に、サイラスが用意していた布で顔を覆い、匂いを嗅ぎすぎないよう気をつけながら中に入った。
「すぅ……」
 ヨルは入ってすぐに、寝息を立てて寝ている女子生徒を目にする。乾草の山の上で気持ちよさそうに寝ている。
(やっぱりこの中に魔獣が……)
 小屋の中はいくつかに区切られており、暗いため奥の様子はわかりにくい。
 暗視を持つヨルが先に奥へと進む。
「めぇ!」
 柵から顔を出した羊がヨルに向かって鳴いた。その姿は他の羊と変わらないが、たしかにほんのり甘い匂いがする。
「さ、怖がらないでこっちへおいで」
 ヨルが柵を開けて羊を外に出す。その様子を見てサイラスは教室にいたクロヴィスに合図を送る。
「めぇ……」
 小屋から出てきた羊は狼を目にして弱々しい声を上げる、それと同時に周囲の甘い匂いが強くなってきた。
「大福は向こうで待っててくれ、このままじゃおれたちが寝てしまう」
 サイラスはネムリヒツジを押さえ大福に声をかける。
 そうしているうちにクロヴィスが助手と共に大きな檻を持ってやってきた。
「これでもう大丈夫です」
 羊を檻の中に入れ、さらに布で包んで匂いを遮断する。なんとか眠る前に魔獣を確保することができた。
 小屋で寝ていた生徒も、匂いがなくなったためすぐに目を覚ますだろう。
「とりあえず羊は完了か」
 ヨルは一体目の魔獣を捕獲したことで、少し安心したようだ。
「この調子で他の魔獣も見つけていこう」
 サイラスたちは仲間を手伝うため、教室の中へ行くことにした。

●小動物たちの中で
 サイラス、ヨルたちが庭で羊を探している頃、ナハシュ、アステルはクロヴィス、ラルスと共に教室内に入った。
 教室内は小動物などのふれあいコーナーになっており、この教室には鳥類のコーナーとネズミ類等のコーナーに分けられている。
「シビレネズミの見た目の特徴で他に分かっていることはあるか?」
 ナハシュがクロヴィスに尋ねる。
「依頼書に書いたことが全てです。あと大きさはこのくらいですかね」
 そう言いながら、クロヴィスが手で丸を作る。
 だいたいハムスターと同じくらいの大きさのようだ。

 犬や猫は隣の教室にいるということで、アステルはそちらへ向かうことにした。
 ナハシュはネズミたちのいる柵の中に入り、様子をよく見てみる。
 ネズミたちは柵の中に作られたトンネルや回し車の遊具に出入りをする、小屋で餌を食べるなどせわしなく動いていた。
 双波を使い、それぞれの位置関係を把握するナハシュ。
「どうやらネムリヒツジが見つかったようなので行ってきます」
 クロヴィスは校庭を見て、急いで外へ出ていった。

「おお、わかった。さて、じゃあこっちはこれを仕掛けるか」
 ナハシュが荷物から取り出したのは、エールの瓶であった。
 瓶の中身を飲み水の皿に入れようとするので、ラルスが思わず声をかける。
「ちょっと待て」
「なんだ、知らないのか? ネズミはエールが好物らしいぜ」
 既にいい匂いに引き寄せられたのか、ネズミやモルモットたちが集まってきていた。
「ここの動物は全部よそからの借り物だ。変なもの飲まされては困る」
 ラルスが困ったように言うと、ナハシュは不満そうだ。
「変、ってただのエールだよ。強い酒でないし、小さいネズミは飲んだらすぐに眠くなって寝ちまう」
 それでもラルスが納得しないので、ナハシュは直接飲ませるのはやめて、エールの香りをつけたおやつを与えることにした。

「さあさあ、食べろ! 遊べ! そして歌って眠れ!」
 皿を置くと、ネズミに加えてリスやハムスターなどの動物たちも集まってきて奪い合うようにおやつを食べ始めた。
 その間にナハシュは、おやつに関心を見せない動物が隠れていないか、周りをよく探してみる。
 お腹が一杯になり十分に運動した小動物たちは、眠くなったのか次第にそこかしこで眠り始めた。
 そのころだった、ネムリヒツジを捕まえたヨルとサイラスが室内にやってきたのは。
「これは、ネムリヒツジの影響か?」
 ヨルが驚くが、ナハシュがそうではないと事情を説明する。
「ならシビレネズミは、まだどこかにかくれていそうだな」
 サイラスが周囲の状況を見て言う。
 周りには小屋や遊具など、隠れやすい設備がいくつもある、ヨルたちはその中を除いて隠れている小動物がいないか探す。

「ここにいるこいつ、怪しくないか?」
 ヨルが小屋の一つの奥にうずくまっているネズミを指差す。
 薄茶色のハムスターくらいの大きさで、たしかに条件は合っていた。
「じっとしててくれ……」
 ナハシュが気配を殺しながら小屋に近づき、素早く手にした母蜘蛛糸のロープを差し入れる。
「キィ!」
 ネズミは逃げようとしたが、ロープの先に触れると強力な粘着力でくっついてしまった。
「よし、捕まえたぞ!」
 ナハシュが喜びながらロープを引き出すと、背中にロープのくっついたネズミがジタバタしている。
「キィキィ」
 シビレネズミのヒゲが赤く光る。ヒゲがロープにくっつかないよう、ナハシュは気をつけながら、クロヴィスが用意した特製の籠にネズミを入れた。
「二体目も無事回収できましたね」
 クロヴィスは嬉しそうだが、ラルスは渋い顔をしている。
 周囲の小動物たちが満腹になり、すやすやと寝ている光景をみるとそうならざるを得ない。
(牧場体験が始まる前に、起きてくれるといいのだが……)
 とにかく、今は残りのスライムネコを見つけるのが先決だろう。

●液体の如き猫との攻防
 犬猫コーナーへやってきたアステルは、猫たちがくつろぐ柵の中へ驚かせないようにゆっくりと入る。
「灰色の猫みたいに見える、ってだけ……なんだよな?」
 相手は猫にそっくりの魔獣である。逃げられないよう、気をつけながら探さねば、と慎重に周囲を見て回る。
 猫たちは生徒の作ったキャットタワーに登ったり、ただの木箱に入ったり等、それぞれお気に入りの場所を見つけて過ごしているらしい。
「さあ、一緒に遊ぼう、おやつもあるよ」
 アステルは動物のお世話セットやおやつを出しながら猫たちに呼びかける。
 見向きもしない猫もいれば、興味を持ち近づいてくる者もいる。

(スライムネコは灰色だったよな?)
 近づいてきた猫や、その周囲にいる猫たちを観察する。少し見ただけでも灰色に該当する猫は二、三匹いそうだ。
「にゃあ~」
 茶トラ柄の猫がおやつを欲しそうに近づいてきて鳴いた。リボンの首輪をつけており、普段から可愛がられている様子が窺える。
「よしよし」
 アステルがおやつを与えると、他の猫たちも次第に近づいてきた。
 その中にいた灰色の猫をなでながらそっと動物交感を使ってみる。おやつを与えられて満足しているようだ。
(まあ魔獣は臆病らしいから、この子は違いそうだけどね)

 しばらくしてアステルは、物陰から自分たちを見ている一匹の猫の存在に気づく。
「こわくないよ、ほら、おいで」
 怖がらせないように優しく呼びかけると、灰色で青い目の猫がそろりと出てきた。
(この子も灰色……動物交感を使ってみたいけど)
 アステルは出てきた灰色の猫に触れないかと、おやつを差し出しながら近づいていく。

 ギィー……
 教室の建て付けの悪い引き戸が大きな音を出し、驚いた灰色猫の形がぐにゃりと変わった。
「うわあっ!」
 アステルが驚いたのと、溶けた猫が引き戸に向かって流れるのはほぼ同時だった。
「あれがスライムネコ!?」
 扉を開けて入ってきたヨル、ナハシュとサイラスは驚く。
 スライムネコは誰かに見られている時はめったに変形しないと言うが、よっぽど驚いたのだろう。
 溶けた姿のまま出口に向かって滑ってくる。

「逃しちゃまずい!」
 ナハシュが急いで戸を閉める。
 サイラスが向かってきたスライムネコを取り押さえるが、ぬるりと彼の手から逃げ出そうとする。
 離れる前にヨルは光縛封を発動させ、サイラスごと光の柱の中に閉じ込めた。
「かわいそうだが、しばらくここにいてもらおう」
 サイラスは予めヨルに貰っていた水袋の袋をスライムネコにかぶせ、しっかり閉じ込めた。
 廊下から戸を叩く音とクロヴィスの声が聞こえる。
「大丈夫ですか!?」
「はい、なんとか……」
 教室の中でバタバタと音がしていたので心配したのだろう。スライムネコを逃げられないようにしたので、入ってきて大丈夫だとアステルが伝える。
 その後、スライムネコも専用の檻に移し替えられ、全ての魔獣を無傷で回収することに成功した。

●牧場体験に向けて
「全ての魔獣が無事で助かりました。貴重なサンプルですからね。何かあったら今後の研究に支障が出ていましたよ」
 クロヴィスは馬車に魔獣を運び込む指示をしながら、冒険者たちに感謝の言葉を述べる。
「ああ、それに動物にも生徒たちにも目立った被害がなさそうで何よりだ」
 ヨルの言葉に、サイラス、アステル、ナハシュらも頷く。

「被害、なあ……」
 ラルスは会場に視線を向けながら腕を組んでいた。
 ネムリヒツジの香りで眠った女子生徒は、身体が乾草まみれになり半泣きでメイドたちに取り除いてもらっている。
 眠っていた小動物たちの一部は既に起き始めていたが、お腹一杯で来客者が餌を与えても興味を示さないだろう。
 開始までに回し車などでたくさん運動させないとならないかもしれない。
 鳥や犬猫は騒ぎで驚いた程度で、特に被害はなかったのが幸いか。
「まあ、学園祭にアクシデントはつきもの。これくらい被害のうちに入らないか」
 この程度なら、開場までには復旧(リカバリー)できるだろう。
「オレたちにできることがあるなら手伝うよ。もっと動物たちともふれあいたいしな!」
 アステルがラルスに声をかける。
 人手は多いことに越したことはない。ラルスはありがたく協力を受けることにした。
 冒険者たちと生徒は協力して、会場の準備を急ぐのであった。

マスターコメント

 様々な魔獣が紛れ込んでいましたが、無事に全種回収することができました。  牧場体験も無事に開催されそうです。参加ありがとうございました。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜8人

2022年09月26日 11時46分20秒 公開

成功

相談掲示板

  1. No.1

    サイラスだ、まあ今更だが とりま人来ることは祈って眠り羊優先でプレを書く

  2. アステル

    参加遅れたけどアステルだ、よろしく! 俺はスライムネコでプレイング書いてみる!

  3. ヨル・スレイマン

    ヒーラーのヨル・スレイマン。宜しくね。 ある程度全体をフォローする形にしておこうかな。

  4. ナハシュ

    成立してたのか!ナハシュだ、よろしく。 シビレネズミメインで書いておくぜ!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0