憩いの森の保全を

コースケ

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シナリオID:2438

オープニング

●夏の終わり
「だいぶ伸びましたねえ」

 パンクリアース学園内に造られた憩いの森のひとつを眺め、年配の女性教員が目を細めていた。
 この森を管理するガーデニング同好会(通称:庭愛会)の顧問でもある彼女は、新学期を前に学園内を見回っていたのだ。
 森の中心を流れる小川の水音と、木々の間を通る風が心地よく、何処からか小鳥の囀りも聞こえ、木陰にあるベンチに座って読書を楽しむのも良さそうである。

「けれども、少し伸び過ぎではないかしら」

 針葉樹はそこまでではないが、成長の早い広葉樹は大きく枝を伸ばし、隣の枝と交差している様にも見える。夏の陽射しを遮ってくれるのはいいが、枝や葉が過密過ぎるのも良くない気がする。
 庭愛会の顧問とは言え、樹木に関しての知識はあまり無い女性教員は、自分の見立てが正しいか迷った結果、夏期休暇から帰ってきたばかりの庭愛会会長、リエル・サンウッドを呼んで意見を求めた。

「若い樹ですし、元気過ぎて梢が伸びすぎてますね。込み入ると病害虫の被害を受けやすくなるのと、樹形が歪になって見栄えも良くありませんし、剪定して樹形を整えるのがいいと思います」
「やっぱり? でも、大変では無いかしら?」

 顧問の言葉に、リエルはうむむと考え込む。出来れば新学期が始まる前に剪定を終えて憩いの森の見栄えを良くしたいが、夏期休暇中であるため庭愛会のメンバーが揃うか微妙な所である。
 一人でやるには微妙に範囲も広い為、出来れば人手が欲しい。

「メンバーが揃わなかった時は、聴講生も含めて有志を募ってみましょうか?」
「いい考えね。それなら、私は聴講生の報酬を活動費として申請しておくわ」

 そういった事情で、憩いの森の手入れをしてくれる人材が集められる事になった。


●おまけ
 郊外にある学園所有の農場。ガーデニング同好会と特殊作物研究部(通称:特作研)が使用している畑で、特作研部長のクロード・レイルは南瓜を収穫していた。

「収穫は終わりだな。先月収穫した南瓜もそろそろ食べ頃だろうし、学園祭で何か出すのも良いかもな」
「そう言えば、学園祭はリエルちゃんと回る約束はしたのかい?」

 夏期休暇中も学園に残り、農作業を続けていた友人を見かね、戻り次第農作業に付き合っていたフィリップ・バンクの質問に、クロードは南瓜を運びながら平然と答える。

「いや何も」
「はぁっ!? いやいや。もう告白くらいはしたんだろ? あ。リエルちゃんが夏期休暇から帰ったら約束する気かい?」

 驚くフィリップに、クロードは不思議そうな顔を向け口を開いた。

「いや、告白もまだだから約束してないんだが」
「はあ!? あれだけの宣言したのに、何で進展してないんだよ!?」
「いやいや。ちゃんと計画立ててるって。まず来月の体育祭でいいところ見せて、再来月には憩いの森の紅葉を一緒に眺めて気持ちを高める。そして12月の聖霊節に告白を--」

 したり顔で計画を披露するクロードを遮り、フィリップの叫びが木霊した。

「こっっっの朴念仁! 僕やマルグリットをどれだけやきもきさせれば気がすむんだー!!」

解説

学園の憩いの森の手入れをして下さい。 舞台となる憩いの森は私のシナリオ『【学騒】学園に憩いの森を』に出てきますが、参照しなくても支障はありません。 ●憩いの森 テニスコート2面分ほどの敷地に、水車で汲み上げられた水が流れる小川があり、中央に中洲のような休憩スペースがあります。 小川を挟んで西に針葉樹、東は広葉樹中心に植えられており、王国の豊かな土壌に根付いて枝葉を伸ばしています。 木製の遊歩道とベンチやテーブル、屑籠が各所に設置されています。 やって欲しいことは伸びすぎた枝の剪定を中心に、全体の手入れです。 ●人物等 クロード・レイル リーンエス王国西部に領地を持つレイル男爵家の長男で、パンクリアース学園6年生の17歳。 特殊作物研究部(通称:特作研)の部長であり、体格の良い大雑把な性格ですが面倒見が良く後輩からは慕われています。また、実家が大規模な農業を行う関係で小作人に異種族も多く、異種族への偏見もありません。 リエルに対して好意を伝える意思はありますが、このままだと夏の間の進展の見込みはありません。 リエル・サンウッド リーンエス王国南部に領地を持つサンウッド子爵家の長女で下に弟が居ます。パンクリアース学園4年生の16歳。 ガーデニング愛好会(通称:庭愛会)の会長であり、明るい金髪を動きやすいよう後ろで結んだ快活な少女で、誰にでも親切に接するため男女問わず人気があります。 クロードへの好意を自覚していますが、告白はして欲しい様子。 フィリップ・バンク 辺境都市郡は水上都市アキュアリスタ出身のパンクリアース学園6年生の17歳。 クロードの友人で普段は物腰も柔らかく言葉遣いも丁寧だが、友人には砕けた口調と態度を取る。 クロードとリエルに対し『はよくっつけ』と思っていますが、クロードの悠長さに手を焼いています。 マルグリット・シーク エラトゥーン都市同盟はリブラネスタ出身でパンクリアース学園5年生の18歳。 気品のある顔立ちと学業も優秀なため教師陣からの信頼も厚い優等生。 リエルを妹のように思い可愛がっているが、その恋心を応援したい反面、リエルが遠くなりそうに感じて寂しい気持ちも。 今回は森の手入れの手伝いとして参加。 特殊作物研究部 農業研究会から派生した部活。リーンエス王国の肥沃な大地を有効活用すべく様々な作物を栽培し研究している。 ガーデニング愛好会 園芸部から派生した部活で、憩いの森の管理を担当しています。

マスターより

お世話になっております。コースケです。 NPC達の進展をさせたいなと思いつつ、機会を作れず4ヶ月も過ぎてしまっていました……。 とはいえ、主役はPCの皆さんなので、NPCは放置して森の保守管理に集中して貰って大丈夫です。 園芸等のスキルが活かせる場所ですので、そういったことが得意な方は腕の見せ所ですよ! また、希望すれば『ガーデニング同好会』か『特殊作物研究部』どちらかへの入部も可能です。プレイングに書いていただければ、称号として付与させて頂きます。 PCはパンクリアース学園関連の設定がなくても、聴講生として学園内で行動したり、部活動への参加もできるので、どんな方気兼ねなく参加して頂けたらと思います。来月には選挙等のイベントもありますので、この機会にパンクリアース学園に接してみるのも如何でしょうか。 質問などありましたら、甘酸っぱい顔をしているオッターが答えます。 それでは、よろしければご参加お願いいたします。

リプレイ

●集合!
「新学期に向けて、森の手入れを頑張りましょう!」

 ガーデニング愛好会会長、リエル・サンウッドの求めに応じて集まった八名と、リエルの知己であるクロード・レイル、フィリップ・バンク、マルグリット・シークは憩いの森に集まっていた。

「はい。よろしくお願いします。それにしても、すっかり大きくなりましたね、健康な証拠です」
「そうだね。あれからあんまり経っていないのに見違えちゃった」
「確かに、大森林と比べ成長が早い気がしますね……」

 コルネリウス・アーラとベアトリーチェ・カロッサが木々を見上げ、リディリディ・トゥラ・イェレミースは何やら考え込んでいる。
 この三人のエルフは憩いの森の作成にも関わっており、その時と比べると木々は枝を伸ばし旺盛に葉を繁らせていた。

「森の手入れでございますか。自然の森と違って人の手が必要なのでございますね。勉強になるでございます」
「うん。人の手が入った森なら、人の手でちゃんと管理しないとダメ、と聞いた。というわけで、森の木の剪定作業とか、やる」

 同じく木々を見上げ、ヨツユビハリネズミのハーフビーストであるハリーヌ・ヨツユビは学ぶ姿勢を見せていた。隣のユミカも(ホムンクルスとなる以前の記憶がないため)おそらく未体験ながら、作業にやる気である。

「皆、怪我に気を付けるようにな。まだ陽射しも強く気温も高いから暑さにもやられぬよう、適度に休憩を挟みながら作業していこう」

 元帝国の従軍治癒士らしいナタリア・フィッツジェラルドの言葉に、一同が返事を返していると、ジュスト・ヴェルジーと、ローザリカ・L・ディオールが荷物を積んだ台車を引いて来た。

「とりあえず梯子や足台、高枝切り鋏なんかを借りてきたよ。これなら小柄な人でも作業出来ると思う」
「箒や麻袋も借りてきたから、出たゴミを纏めるのに使ってくれ」

 ガーデニング愛好会に所属する二人は、作業を効率よく行えるよう必要な道具を手配して来たのだ。

「助かります。それでは始めましょうか!」

 リエルの号令で、一同は道具を手に森へ入った。


●作業開始!
 東の広葉樹エリアでは、園芸初心者のユミカとリディリディがリエルに剪定を教わっていた。

「ユミカは、どの枝を剪定すればいい、とか、よく分からないから、分かる人に教えて欲しい。どの枝、落とせばいい?」
「そうですね。教えて貰ってどんどん刈りましょう」
「え、えーと、とりあえず鋏に持ち替えましょうか?」

 伐採でもしそうな勢いで斧と鉈を構えるユミカとリディリディに、リエルは剪定用の鋏を渡す。

「こんなの、で……?」
「いいんですか?」

 かくり、と首を傾げるユミカとリディリディに、リエルは頷いて自分も鋏を持つ。

「移植してから伸びた枝の剪定なので、そんなに太い枝はありませんから。むしろ、本数が増えすぎてその分細くなった枝を減らして、残した枝に養分を集中させるためでもあるんです」

 言ってリエルは自分の胸ほどの高さの樹に鋏を入れる。

「込み入ると光が当たりませんし、病気や害虫が付きやすくなりますから、風通しが良くなるよう思いきって枝を切り落としてください。あ。切るときは枝の根本から切ってくださいね。途中からだと残した枝から芽が伸びてまた込みいっちゃいますから」

 ぱちり、ぱちりと迷いなく枝を落としてゆくリエルの手元を見て、ユミカとリディリディも鋏を手に取る。

「木の状態は悪くないようですが……」

 エーテルによる共感覚があるリディリディには問題ないように感じるが、リエルによると枝が伸長した先もイメージし、重なったり過密になる枝を切るらしい。

「こういう作業、得意じゃ、ない……」

 ユミカは細かい作業が苦手ながら、リエルに切っていい枝を確認しながらおそるおそる枝を落としてゆく。手が届かないところは梯子を使い、何とか一本の木の剪定を終えた。

「上手ですよ。次は一人で切る枝を決めてみましょうか?」
「うん。頑張って、みる」


●果樹と巣箱
「木苺や苔桃も、順調そうですね。来年の初夏には実がなるでしょうか、とても楽しみですね」

 コルネリウスは、果樹などを植えた一帯を担当していた。
 ガーデニング愛好会にも所属し、エラトゥーン都市同盟南東の都市、ベールコートで花鳥園を経営する彼女の園芸についての知識と技能は高く、手際よく作業を進めていた。
 果樹は来年の実りを見据えた剪定を行い、時期が終わった草花はこれから花を咲かせるものと植え替える。終わった花の種も取り出し、また時期が来たら蒔けるよう保管するなど無駄もない。
 孔雀さんの羽根ペンを手に必要な肥料などをメモする姿は、経営者としての姿が垣間見える。

「せっかくだし綺麗に見えるようにしたいよね!」
「うむ。地質に問題は無さそうだ。ただ、幾らか虫がついている木があるようだな」

 ベアトリーチェは高枝切り鋏を手に樹形を整え、ナタリアは地質に対する知識で土壌を調べている。更にナタリアは、エーテルによる共感覚で木に付いた虫を発見していた。

「虫さんですか? 有益な虫さんもいるので駆除するか見てみましょうか」
「有益なものもいるのか?」
「はい。蜜蜂さんや蝶さんは受粉を助けてくれますし、蜘蛛さんは葉を食べる芋虫などを食べてくれます。逆に、葉や幹、根を食い荒らす虫は駆除しないとですね」

 コルネリウスはナタリアに案内を受けると、葉を食害する芋虫を素手で駆除し、害を受けた葉を枝ごと剪定して処分する。

「え、芋虫(ソレ)を素手でやるんですの……?」
「ええ。毒はないのでぷちっとやって大丈夫ですよ」
「アーラは君にも同じことをやるよう強制しているのでは無いので安心したまえ」

 マルグリットがコルネリウスの行為に青ざめるのを見て、ナタリアが苦笑しながらフォローを入れる。マルグリットは胸を撫で下ろしていたが、畏れのこもった視線をコルネリウス向けていた。
 そこへ剪定作業をしていたベアトリーチェがやって来る。

「ちょっといいかな? 枝を切ろうとしたらあれに気付いたんだけど……」

 ベアトリーチェが指す先には、樹上に設置された小鳥用の巣箱があった。

「もしかして、中に巣を作っているんですか?」
「うん。大体の小鳥は初夏が繁殖期だから、この時期に卵や雛はいないと思うんだけど、今も使ってる形跡があるからもしかしてと思って」

 コルネリウスの問いにベアトリーチェは頷く。周りの枝を剪定し、環境を変えれば驚いて巣に居着かなくなるかもしれない。もし卵や雛がいるのなら、親鳥が居なければ死んでしまうだろう。

「なるほど。もし親鳥が残っても丸見えだと外敵に襲われやすくもなるだろうし、迂闊に剪定する訳にもいかないか」
「そうですね。巣箱の周りには手を付けないでおきましょうか」
「良いのかな?」

 ナタリアが冷静に分析し、不安そうだったベアトリーチェがコルネリウスの言葉に顔を輝かせる。コルネリウスはそれに笑顔で返した。

「ええ。冬になれば巣も使わないでしょうし、剪定はその時にやりましょう。小鳥さんには新しい環境に慣れて貰うか、もう少し目立たない場所に巣箱を移させて貰うことにしましょうね」


●緑の園
「ロゼは登らなくて良いからね??」
「どうして君に止められなくてはならないんだ!」
「良いからね??(二度目)」

 西の針葉樹エリアに、ジュストとローザリカの声が響く。梯子に登ろうとしたローザリカを、ジュストが止めていた。
 王国の伯爵令嬢としては相応しくない行動を取ろうとしたローザリカを、許嫁であるジュストが嗜めた形である。
 ローザリカの淑女にあるまじき言動は今に始まった事ではなく、付き合いの長いジュストがそれに釘を刺すことはあまりないのだが、今回は彼的に見過ごせない部分があったらしい。

「『夫婦喧嘩はハリネズミも食わない』という奴でございます」
「何か言ったか?」

 ハリーヌがボソリと呟く言葉を聞き取れず、クロードが聞き返すがハリーヌはそ知らぬ振りで作業に入る。

「おっと、トゲが出てしまいました。何でもありませんので作業に入りましょう」


 そんな事をしている内に、自分の代わりにジュストを梯子に登らせたローザリカが、ビシバシと指示を飛ばしていた。

「そこ! 左をもう少し、そっちは手を加えなくてもいいのでは。あとそこは……」
「……うん、俺からお願いした手前君の指示にも従うけど」

 『翡翠の園』と称される自領で植物に親しんで育ったジュストはそれなりに園芸の知識もあるのだが、ローザリカは何かをぶつけるように指示を飛ばしてくる。
 釈然としないものを感じつつ、他の男に許嫁を下から見上げられる様なことになるより良いとジュストは手を動かした。


「……ワタクシ達はあちらをやりましょう」
「……そうしようか」

 二人に近付きがたいものを感じたハリーヌとクロードは距離を取り、ハリーヌの相棒のゴリラに梯子を支えさせて作業に入る。

「コチラの枝は重なりすぎているでございましょうか?」
「そうだな。あと、左の枝も隣の木に差し掛かっているから切っていいんじゃないか?」

 二人で多方向から樹形を確認し、剪定作業を進めていく。
 ハリーヌはちょこちょことよく動き、枝の剪定だけでなく雑草を抜いたり遊歩道の苔や泥を落としたりと細かいところまで気を配っていた。

「ワタクシも学園生でございますから、設備の手入れは当然でございます」

 クロードから働きぶりを誉められ謙遜するも、嬉しげにヒクヒクと鼻が動いている。


 一同はこうした作業の他に、小川に溜まったごみの掃除や水車を手入れし、落ち葉や雑草を集めて発酵させ腐葉土とするなど、剪定以外の作業まで完了させた。
 これで新学期でも学園生の憩いの場所として使用することが出来るだろう。


●作業を終えて
 一同は中洲のスペースに集まり、マルグリットが用意したサンドイッチを広げていた。

「こちらで食べる昼食も良いものですね」
「うん。森を通って来た風が気持ちいいよね!」
「枝を剪定して風通しが良くなったのもあるんじゃないかな」
「はい。皆さんのお陰です」
「頑張った甲斐があるというものです」

 コルネリウスとベアトリーチェが風に目を細め、リエルの言葉にハリーヌが胸を張る。ジュストは自然にそれに交じって紅茶を飲んでいた。

「……」
「……」
「「……ハッ!?」」

 そのジュストへローザリカとクロードが物言いたげな視線を送っていたが、互いにそれに気付き、周りに聞こえないよう囁き合う。

「いいのかい。アレ」
「ディオール様こそいいんですか?」
「従兄殿(アレ)はああいうモノだ。それは後で片を付けるとして、君とリエル君の事だ。四年のリエル君には来年以降もあるが、他でもない君と過ごせるのは今年だけ。そんな大切な時期に恋人として過ごすという貴重な時間を逃していいとでも?」
「こ、恋人だなんて!」
「声が大きい。その気がないとは言わせないぞ? 他人と過ごした記憶と恋人と過ごした記憶。来年以降、君の知らない彼女に出来る思い出に負けないのはどちらかな?」
「……うっ」

 ローザリカの言葉に押され、クロードはようやく事態を認識する。事実、卒業まであと半年しか無いのだ。
 それをフィリップとマルグリットが『もっと言ってやって!』と視線を送り、その後方でナタリアが保護者の眼差しで見守っていた。

「何と言うか……、若いな」


●人工の森
「今さらかもしれませんが、この森に手入れは必要なのでしょうか? 手を入れなくとも十年か二十年もすれば立派な森になるのではないかと……」

 先程までユミカと旺盛な食欲を見せていたリディリディは、食事を一段落させる(ほぼ食べ尽くす)と思い出したように疑問を口にした。
 フィルエス大森林で生まれ育った彼女にとって、人工の森に違和感を感じるのだろう。

「そうですね、本来は自然に任せるのが良いのかもしれないですけど、人間(ヒューマン)にとっては十年は長い時間ですから……」

 そう答えるリエルに、リディリディはうむむと考え込む。
 エルフも木を切る事はあるし、ここの木々も状態は悪くない。だが、リディリディには見栄えを気にし過ぎているように感じるのだ。

「確かに性急かもしれません。けれど、人がお世話する植物は森のものより綺麗な花を咲かせ、大きな実を付けます。リディさんだって、その素晴らしさは知っているでしょう?」
「確かにそうですね……」

 コルネリウスの言葉に、リディリディはハッとした顔になる。先程のサンドイッチだって人の手で作られた小麦や野菜が使われているのだ。

「そう考えれば理解できそうな気がして来ました」
「そうそう。木を健康にするためでもあるんだし、剪定もダイエットみたいなものと思えば分かりやすいんじゃないかな?」

 腑に落ちかけたリディリディに、ベアトリーチェも言葉をかける。だが、リディリディは再び怪訝そうな顔をしていた。

「すみません。私そういうのよく分からなくて……」
「だい、えっと……?」

 ユミカもチョココロネをもきゅもきゅ噛りながら首を傾げる。
 リディリディはあれほど食べるにも関わらずダイエットとは無縁であり、同じくよく食べるユミカは、身体の一部分(むね)に集中する体質なのだろう。

 これはずるい。


●学園祭に向けて
「そう言えば、庭愛会(うち)は学園祭で何かするのかな。学園内の本格的な庭園は庭師がやってくれるけど、一角を庭愛会で手入れしてガーデニングパーティや喫茶店風にハーブティーを振舞うとかどうだろう?」
「そうですね! 折角ですし、ここを使わせて貰えるよう申請してみましょうかっ!?」

 凍りついた空気を変えるべく、咳払いをしたジュストが話題を振り、リエルが食い気味に反応し、多くもそれに賛同する。

「ガーデニングパーティーは楽しそうだし僕も興味があるな。彼が言うようにハーブティーとして薄荷(ハッカ)を消費できるし、カボチャも順調ならパンプキンパイやケーキなど秋らしくて人気が出そうだ」
「そうだな。カボチャの収穫は終わって追熟させてるから、学園祭には食べ頃になってる筈だ」
「ここを使うなら、ベンチを飲食のスペースに出来そうですね。キッチンは屋台等を借りてくる事になるでしょうか」
「カボチャ、美味しそう」
「お肉は出ないのでしょうか……?」

 庭愛会のメンバー以外にも興味を引いている様で、リエルもやる気を漲らせていた。

「皆さん、よろしければ来てくださいね! お客さんでも構いませんので!」


 こうして、作業を終えた一同は解散するのだが、クロードがリエルを呼び止めた。

「リエル、ちょっといいか?」
「……うん」

 憩いの森へ戻って行く二人に、ベアトリーチェが「頑張れー」とエールを送り、リディリディは「あと30年ほど経ってからでも……」と長命種族(エルフ)の感覚で発言してフィリップとマルグリットを悶絶させていた。

「…………」

 ナタリアはそれも含め、無言で二人を見送っている。


 この結果を一同が知るのは、もう少し先の話である。

マスターコメント

お待たせしました。 皆さん剪定以外にもよく働いて頂けたので、憩いの森の手入れは十分でしょう。 学園祭についての提案もありがとうございます。カボチャを使って何かやるつもりでしたので、参考にさせていただきます。 よろしければそちらにも参加頂ければ……! リエルとクロードの結果については、学園祭シナリオのオープニングにてお知らせさせて頂きます(文字数が……) リプレイ、楽しんでいただければ幸いです。 ご参加ありがとうございました!
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2022年09月07日 10時20分09秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ハリーヌ・ヨツユビ

    ワタクシはハリーヌ。 しがないヨツユビハリネズミでございます。 皆様、今回もよろしくお願いするでございますよ! さて、木の剪定でございますか。 ワタクシの身長でも、ゴリラの肩車なら届くのでございましょうかねぇ… その他には、特に遊歩道まわりの雑草むしりをしておきたいでございます。

  2. ジュスト・V・ケレス

    ガーデニング同好会のジュストだ、よろしくね。 木の剪定を手伝いつつ、作業の合間に学園祭の話題など振ってみようと思っているよ。 皆の作業で出た木の枝や落葉、雑草は纏めてマジックポケットで搬出する予定。 >ハリーヌ君 確か梯子や踏み台のようなものが備品としてある気がするから、剪定用の鋏と一緒に合わせて必要物品として揃えられるよう俺の方から手配をお願いしておこうか?

  3. オッター

    あー。ちょっと訂正がある。 オープニングと解説で『ガーデニング同好会』と『ガーデニング愛好会』と表記が混在してるんだが、正しくは『愛好会』だ。 間違えてすまねぇ。

  4. ジュスト・V・ケレス

    オッター殿は説明ありがとう。 ではガーデニング愛好会所属、ということで改めて名乗らせて貰おう。

  5. コルネリウス・アーラ

    ガーデニング愛好会員のコルネリウスです。よろしくお願いします。 落ち葉や雑草は堆肥にも出来ますので活用も出来たらしたいな、と思うのですが可能でしょうかね。 私も然程背が高くないのと、梯子の上など高いところはちょっと苦手なので剪定は手の届く範囲になりそうですので草むしりや他に出来そうなことを少し考え中です。

  6. ナタリア・フィッツジェラルド

    ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 ガーデニング愛好会というか、特殊作物研究部との関わりはこれで二度目になるな。 伸びすぎた枝の手入れを中心とするだけで、全体的にやらねばならない案件は他にもあると。 剪定なら身長もあるから任せておいてくれ。 他にも出来そうな事と言えば地質学と植物共感を使っての、土壌の整備くらいだな。

  7. ベアトリーチェ・カロッサ

    ベアトリーチェだよ! よろしくねー! 剪定した時に落ちた枝とか葉っぱとか、屑籠に入ってるゴミとかの片付けも必要だよね。

  8. No.8

    リディリディです。 よ、よろしくお願いします。 個人的には森の木を剪定という行為には首を傾げますが・・・。 ですが、私もこの森を手がけた者のひとりになりますし、見届けようかと思います。 すでに仰られているように、剪定以外にも出来ることが多いかもしれませんし。

  9. ユミカ

    ユミカ、よろしく。 剪定でも片付けでも、色々頑張る。

  10. ハリーヌ・ヨツユビ

    >ジュスト様 ありがとうございます。 ではお言葉に甘えるでございますよ! ベンチやテーブルも雨晒しでございますから、汚れや腐食の有無を確認しておくでございます。 水車まわりもゴミが絡まると大変でございましょうから、点検しておきたいでございますねぇ。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0