月光石も山の賑わい

奇古譚

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シナリオID:2430

オープニング

●
 ――ダマスカス、という鉱石がある。
 其れは主にシグモル火山帯でのみ発掘される鉱石で、何よりの特色はエーテルを帯びやすいという所にある。シグモル火山帯ではこの特性を大いに活かす為にダマスカスを加工し、“紋具”へと昇華させる。エーテルの扱いに慣れていない者でも、紋具を扱えば多少なり、魔法を扱う事が出来る。
 其れは火生の神ボルガニスクが人々にもたらした神の知恵。
 また、採掘されていないダマスカスに囲まれて産声を上げるからだろうか。シグモル火山帯出身者には【授恵者】が多いとも言われている。

 ――ところで、シグモル火山帯ではダマスカス以外にも様々な鉱石が発掘できる。
 流石に金や銀といった純資産になり得る鉱石はそうそうないが、鉄は勿論、他にも名の知られていない鉱物がひょっこりと顔を出す事がある。

 月光石。
 そう呼ばれる石もそんな“ひょっこり顔を出す鉱石”の一つだ。

 何故か夜にしか発掘されない。
 故に月光と共に現れる石――月光石と称されるその鉱石は、大きな特徴が二つある。
 まず一つは「割ってみないと月光石か判らない状態で発掘される」という事。ただ傍目からみただけでは、常人なら、普通の石だと放り捨ててしまいそうな状態で発掘される。
 月光石と判るのはエーテルの僅かな揺らぎが判る者だけだという。
 そして二つ目。最大の特徴は「割って開いた人間の心の色が現れる」という事だ。
 とある戦士が割ってみたところ、其の月光石は赤く輝いて見せたという。魔術師が次に金槌で開くと、青く。シーフが興味本位で開くと、風を思わせる翠色に。
 月光石を割るものの在り方や心情をあらわすかのような其の色は、波紋を描くように揺らいでどれも美しい。のだが――ダマスカスのようにエーテルに親和性がある訳でもなく、加工したところで鉄を加工した物品と硬度はそう変わらない為、実用性の低さから余り重要視されずに此処まで来た。

 ……いや。
 現在もそんなに重要視されてはいないのだ。ただ、その月光石が何故かどっさりと出て来る坑道が見付かった、というだけで。
 問題は其の後だった。炭鉱夫が言うには、其の奥にダマスカスの新たな鉱脈を感知しているというのである。
 掘りあてられた月光石の数は計り知れぬ。心優しき誰かが火山帯の民に配っても余ろうかという程だ。

 ――なら、火山帯の外の民にも配れば良いのでは?

 斯くして、月光石の採取依頼が冒険者ギルドに届く。
 見る分には美しく、加工すればアクセサリにもなるだろう。防具や武器にするには心許ないかもしれないが――贈り物には最適だ。
 採取依頼という名の「厄介払い」だが……君色の石、といえば、いくらか聞こえが良いだろう?

解説

●目的  月光石を採取しよう ●立地  シグモル火山帯に幾つも通っている坑道の一つです。幾筋も枝分かれしていて、まるで迷路のようになっています。  其の内の幾つかの坑道から大量の月光石が見付かりました。他の石や砂利とあいまって、まるで崩落したかのように見えるでしょう。  ですが、自然に割れて白く輝く幾つかの光は、紛れもなく月光石のものです。 ●出来ること  →月光石の採取  →採取した月光石の加工依頼  月光石の「採取」が今回の依頼です。  傍目にはただの石にしか見えませんが、金槌などで割ってみると持ち主の心の色を反映するといわれる不思議な石です。  ただ、エーテル伝達や強度の問題があり、シグモル火山帯の人々は余りこの石を重視していません。寧ろダマスカスの鉱脈を塞いでいる可能性もあると危惧しています。  今回はその月光石の採取依頼です。  割って己の色を確かめてみるもよし、友達や恋人と見せ合うもよし。  其の月光石を直ぐ傍の村でアクセサリなどに加工依頼する事も出来ます。  (※アイテム発行などはありません) ●注意事項  迷子・描写漏れ防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは判るように【】で囲んだ合言葉などを添えて下さい。  また、やりたいことはどちらか一つ(採取か加工か)に絞って頂いた方が描写量は多くなります。

マスターより

 こんにちは、奇古譚です。  割ったら輝く石って浪漫がありますよね。良いよね。空は飛べないけど。  今回はそんな石(ただし武具にするのは難しい)のお話です。或いは石を割ってみて、己の適性が判る――なんて事もあるかも。ないかも。  宜しくお願いします。 ●  イベントシナリオではアドリブ控えめとなります。  皆さまが気持ちよく過ごせるよう、マナーを守ってイベントを楽しみましょう。  では、いってらっしゃい。

リプレイ

●
「人生で初めて採掘をするかと思いましたが」
 ほっ、とイヴェール・イリュジオンは安堵のため息を吐く。目の前には石、そして砂、そして石。まるで坑道の天井が崩れて落ちたかのようなそれらが全て“月光石”なのだと炭鉱夫が言っていた。これならば拾って帰れば問題なさそうだ。
 まず、自分で割る用のもの。其処ら辺の石を拾えば問題ない、という炭鉱夫の言を信じて、掌に収まるサイズのものを選ぶ。
 そして、持ち帰って誰かに割って貰う用のもの。これは少し大きめが良いかもしれない。一人で楽しむものではないだろうから。きょろきょろと周囲を見回して、両手に収まるサイズのものを選んだ。
「自然に光っているものは……」
 はて、そういえばこの坑道は妙に明るかった。周囲を見回せばきらりきらり、輝くという程ではないがほんのりと光る石の断面が目につく。夜にしか見付からず、月の光にエーテルが反応するから、昼間に採掘されても月光石とは判断されないのかもしれない。
 小さいものを拾い上げる。薄白い輝きを見詰めていると……脆かったのだろう。少し力を入れた拍子にぱりんと表面が割れて――断面の色が変わり始めた。じわじわと赤みを帯びて、乾いた血を思わせる色へと変じる。

 ――ああ、これが私の色。

 イヴェールは何処か静かな面持ちで、其の色を見ていた。意外だとは思わなかった。夢を追いかけて家を出たあの頃とは、もう違うのだ。
「……。これを人への贈り物に使う訳にはいきませんね」
 どこか諦念を思わせる瞳で呟くと、イヴェールはまた手ごろな石を探し始めた。


●
 サイラスは鍛冶師である。採掘という文化とは強く結びついている。
 出来る限り回収したい、と炭鉱夫に申し出れば、最も多く月光石が発見されたエリアへと案内された。幾らでも持って行っていい、と、荷馬車まで貸してくれる始末。余程沢山出てきたのだろうな……と、サイラスは僅かに炭鉱夫の精神的疲労を案じた。見て美しい石ではあろうけれども、大量に出てしまっては邪魔になる事もあるのだ。
 さて。
 出来る限り色を付けずに回収するにはどうしたらよいか。取り敢えずまだ割れて発光していないものを慎重に選んで、サイラスは(これも快く貸して貰った)手押し車へと入れていく。投げ込んで割れては元も子もないので、割れていないのを確認しながら押し込むように入れていく。
 たまにいるのだ。“自分だけの特質があれば尚良い”と言う客が。この石はきっと、そういう客を相手にするには十分な材料に思えた。貴方だけの色をした石で飾りましょう。うん、これだ。溶工には向いていないと聞いたから、少し加工方法は限られて来るが――其れでも、例えば盾の周囲に散りばめるだけでも喜ばれるだろう。

「おっと」

 そんな事を考えながら石を入れていたものだから、うっかり一つ取り落としてしまった。ぱりんと割れた其れを拾い上げてみると、まるでルビーか何かのように真っ赤に輝きだす。血というには美しく、けれど不吉な色だった。
 だがそんな事をサイラスは気にしていない。そうか、これが俺の色か。頷いて、受け入れる。そして「だけど君は、上手く取れなかったから置いてけぼりだ」と、そっと横合いに除けたのだった。


●
 レティシア・レインフィールは坑道というものを余り知らない。
 けれども、この明るさは尋常ではない、というくらいは判る。崩れてきて割れた石が白く輝いて、坑道をきらきらと照らしているのだ。
 ランプ要らずの坑道の中、レティシアはごくりと喉を鳴らした。これから石を手に取って、割るのだ。そのつもりで来た。けれども、きっと良い色ではないだろうと己が心中で囁くのだ。きっとどす黒い色をしている。光っても判らぬような色をしている。……心中を見透かされるというのは、例え石相手であろうとも……

 ――ぱりん。

 だからだろうか。レティシアが選んだ石はとても小さなものだった。ただの石であれば良いのに、なんて願いながら一つ金槌で割ると、白い断面が覗いて、徐々に色を変えていく。……其れは予想外に、深い青色をしていた。まるでサファイアかラピスラズリのような、深い湖の色だ。

 ……何故?

 レティシアの心中に、疑問符が舞う。こんな美しい色が自分の色だというのだろうか。
 でも、これが私の色なら。
 無意識に握りしめていた、首飾りの装飾。そういえば月光石の加工をしてくれるらしいと聞いた。どうせなら、この石を誰かに――そう思って浮かんだ横顔は、かの黒き傭兵の姿をしていて。……いけない、とレティシアは頭を振った。

 私の心は、ずっとあなたに。だから、この石もあなたに。
 ……捧げる墓石は、何処にもないけれど。
 貴方に恋をして、愛された。そして愛したあの時間は満たされた穏やかなものだった。けれど、かの傭兵に向ける感情はそれとははっきりと違うのだ。
 確かな恩義と、全てを失わせた負い目。だから愛ではない。恋ではない。失いたくないのは、護りたいという気持ち。そう、其の筈。そうでないといけない。

 そうでなくては、私は――


●
 ――実に興味深い石だ。
 色っていうのは隠された意味を持つ事が多いけど、此処の石はどうなのかな。

 キオルティスは無垢な白色に輝く石たちに、何物にも染まらなかった、という意味を見る。そんな風に、手に取った者の心によって色が変わるのは意味があるんじゃないか、と思うのだ。
 一つ、掌サイズの石を取ってみる。インスピレーションだ。特に意味はなく、目についたものを取っただけ。
 さて、どんな色が出て来るか。ぱりんと大胆に、しかし慎重に割ってみると、最初は無垢な白色が覗いた。其れが中央から雫を落とすようにじわ、と色付いて――紫色に染まって行く。どちらかといえば華やかな紫だ。淑やかというには、余りにも鮮やかだった。

「へえ、これは……」

 キオルティスは驚いたように声をあげ、そして、ふふ、と微笑を零した。
 この色は俺にとってどんな意味を持つんだろう? この紫は綺麗で、真っ直ぐな色をしている。俺に似合わないくらいに。
 そうだ、紫は中庸の色――赤と青を混ぜた色。どちらが多くても、この色にはきっとならない。どちらも同じほど混ぜてやっと、この紫が出来上がるのだろうと思う。だから、“赤と青が無ければ立てない”。そうも思ったけど……

「少し違うね」

 キオルティスはそっと、石に呟いた。
 君の色は独り立ちしている。混ぜた色じゃなくて、ちゃんと一つの紫という色として。
 ……そうだ。どういう人が割ったら紫に染まったかとか、炭鉱夫なら知っているんじゃないか? キオルティスは思い立つと、炭鉱夫たちが集まっている場所を目指して爪先を返したのだった。
 そうして大笑いする事になる。「紫は色香の色」だなんて言われるから。


●
 御邑 奈月と御邑 都は、二人仲良く月光石の採掘。
 本当はダマスカスの鉱床が見たかったのだけれど、「月光石が多すぎるから危ない」と炭鉱夫さんに止められてしまいました。
 なので、今回は月光石をトンテンカン。

「お姉ちゃん、眠くないですか?」
「お昼寝沢山したから、眠気はあんまりないよぉ。大丈夫ぅー!」

 周りにはほろほろと、白く輝く石が落ちています。これならはぐれる事はないでしょう。炭鉱夫さんから貸して貰った工具で、二人は土壁をコンコンコン。尖った先でノックすると、ほろほろと土と石が落ちてきました。
 取り敢えず掘れば判る。とは炭鉱夫さんの言ですが……

「おぉ? 本当に普通の石と変わらないねぇ~」

 都の言う通り、其れはぱっと見では月光石なのか、そうでないのか判りません。割ってみないと判らない。まるでくじ引きをするかのような高揚感に、奈月はちょっとどきどきしていました。

「じゃあ、月ちゃんから割ってみなよぉ~」
「え! い、良いんですか?」
「いいよぉ~。だって僕はお姉ちゃんだしぃー?」

 妹に譲ってあげるのは、お姉ちゃんの特権なんだぁ。
 のんびりと言ってくれた都に、奈月は胸がぽかぽかとして嬉しくなりました。ああ、自分は本当にいいお姉ちゃんをもったなぁ、って思うのです。
 では、と石を手に取って、工具を慎重にコン、と石に当てます。
 すると、ぱりん、と割れました。中には――白。やった! 月光石です。輝く石を二人で見つめていると、白は雫を落としたかのようにじわじわと色を変え、やがて柔らかな桃色になりました。

「わぁ……!」
「すご~い! 月ちゃんみたいな色だねぇ~! うんうん、あったかい色だぁ」
「そ、そんな……私はこんな、綺麗じゃ、……ない、ですよ……」

 顔が熱くなるのが、奈月は自分でも判りました。
 お姉ちゃんに褒められて、とっても嬉しくて。でも素直になれなくて。でもそんなのは都にはお見通し。可愛いねぇ、とのんびり笑うのです。

「いつか、だますかす、も此処で採ってみたいねぇ。凄くきちょーなんだっけ?」
「はい。いつか採ってみたいですね」

 でも、奈月の視線はずうっと月光石に注がれたままです。これを何か、アクセサリにすれば綺麗なのではないかしら。其のまま置いておいても綺麗かも? そう考えている妹。そして、じゃあ僕も、と一つ石を採る姉。

「じゃあ、僕の色は……」

 コン、と都の工具が石をノックしました。
 ――さて、何色が出たでしょう? 其れは姉妹の胸の中に秘密にしておくとしましょう。


●
 かつての話だ。
 シルヴィア・A・カペルが祖母に「冒険者として見分を広めなさい」と静かに、けれど厳かに言われた日。
 祖父の友人である"先生"からだと、ブローチを一つ渡された。水仙の花弁に蝶の羽根をあしらった、とても華美なブローチだった。
 水仙が意味するところは希望。そして蝶は、不死と復活の象徴。
 いつか先生に言われた「寄る辺の紡ぎ手」という言葉が、脳裏に過ぎった。其れは今も、シルヴィアの人生の指針として心に刻まれている。

 ……かつての話だ。
 先生と旅をしていた途中に、先生は毒で精神を病んだ。昔、吸血鬼から受けた毒が回ってしまったのだ。結果として先生は、弟子と友の区別すらつかなくなった。シルヴィアの色を見て、アルヴィンと呼んだ。アルヴィン・カペルであれ、と、シルヴィアを矯正しようとした。

 其れももう、かつての話だ。
 先生とは和解して、シルヴィアは「シルヴィア・A・カペル」として生きるようになった。其れは先生からの解放ではなく、己からの解放でもあった。祖父の真似事をするのではない。祖父の名を誇りとして、けれど、己自身の脚で、立った。
 だからだろうか。シルヴィアが割った月光石はまるで透き通った湖のような碧めいた青色をしていた。“蒼玉”の令嬢にふさわしい色と言ってしまえばそうだけれども、シルヴィアにとっては別の意味を持っていた。

「失礼」
「おう、月光石の加工かい?」
「ああ。……少し細かい注文になるのだが、構わないだろうか」
「大丈夫だよ! 月光石を持ってきたお客さんは大体そうさ。今回は沢山出たからねえ、こっちとしても稼ぎ時というものさ」

 加工屋はそう言って笑った。
 では、とシルヴィアが注文したのは、舞う蝶をモチーフとした鞘付きのペーパーナイフ。持ち手と刃の境界に碧を――月光石を埋め込んだ、上品な意匠のもの。

「ほうほう。……大切な人に?」

 其の丁寧な説明から感じたのだろう。
 加工屋がシルヴィアに問う。探りを入れるという訳でもない、世間話の一つとして。

「そうだ。とてもお世話になった人なんだ、……喜んでくれると、良いのだけれど」

 先生の喜ぶ顔が見たい。
 もう会えぬと思っていた人がカペルに帰ってきてくれた、其の喜びを伝えたい。シルヴィアは微笑を浮かべて、月光石と同じ色をした瞳を柔らかく細めたのだった。


●
 レピド・クロサイトは其の時初めて「月光石」という単語を知った。
 不思議な石があるものだと脚を運んだ、シグモル火山帯。何処か懐かしく、何処か忌まわしい香りのする其処へ踏み入って、会う炭鉱夫に道を聞きながら坑道へと入る。
 どうせなら、何かに加工して貰うのも良いかもしれない。考えながら、割れた月光石が仄光る坑道の奥で立ち止まる。男が身に着けても目立たない装飾品といえば、……矢張り、指輪だろうか。
 鉄と同等の強度なら、普段使いしても早々には壊れないだろうし、何より――見たい時に見られる、というのは良いと思う。

 適当に拾って御覧、と炭鉱夫が言っていたのを思い出し、其の通りに適当に拾う。
 渡された採掘用具でぱりん、と半分に割ってみると――まるで夜空のような藍色に、月光石の断面が染まった。夜空のように昏いのに、磨き抜いた石のようにきらきらと輝いている。
 レピドは正直、驚きを禁じ得なかった。――レピドはホムンクルスである。其の“工程”で用いられた賢者の石は、深紅の色をしている。だからてっきり、己の心を映すという月光石も赤く染まるものだと思っていたのだ。
 だが、この色を見ていると酷く落ち着く。青は鎮静の色だというが、其れだけではないように思う。何か、包まれるような安心感を覚えるのだ。

 そういえば、この石は“心を映す”のなら……心が変わってしまったら、変色したりするのだろうか? 其れとも、割った時の心をとどめておく石なのだろうか。
 もし後者なら、しっかりとこの色を覚えておきたい。今日この日、この時を映した色。良い記念品になりそうだ。これは是非指環にして持っておこう。
 レピドは知らず笑みを浮かべながら其の石を握りしめ……加工屋に“これは一度染まったら変わらないんだよ”と教えられて安堵した。この磨き抜いた夜空の色を、ずっと見ていられるのだから。


●
 ジュスト・ヴェルジーはローザリカ・L・ディオールを心から愛している。
 だからだろうか。
 月光石を割ってみると、まるで夕暮れ時の空の色を映したかのような、黄金から赤へ移り行く色に染まった。其れは奇しくも、隣で神妙に月光石を見ている彼女の髪と瞳の色にも似ていた。
 これはブレスレットにしたいな。
 そうして、君に贈るんだ。
 言うと、ローザリカはきょとんと其の夕陽色の瞳を丸くして……噴き出した。

 ローザリカ・L・ディオールはジュスト・ヴェルジーを独り占めしたいと思っている。
 だからだろうか。
 月光石を割ってみると、彼の瞳によく似た翡翠色に石の断面はあっという間に染まった。
 もうすぐ学園でも新学期が始まる。そうしたら、あらゆる時も隣にいたいというローザリカの願いは叶わなくなる。ジュストに秋波を送る女性の数は少なくない。だから、彼を繋ぎ留めておく何かが欲しいと常々ローザリカは思っていた。
 これはネクタイピンにしよう。
 そうすれば君は僕のものだと主張できるだろう?
 気分良さげにいおうとジュストを見たら、彼が「これをブレスレットにして君に贈りたい」というものだから、……思わず吹き出してしまった。

 二人とも、考える事は同じだったのだ。
 自分のものだとしるしを付けたい。一緒にいられないときも、これを見て自分を想って貰いたい。少しでも、ほんの少しでもいい。君の心の片隅に、自分の色があれば良い。

 ――成長したつもりでも、君をちゃんと守れないのが悔しくて。

 ――力不足を痛感して、君が前を歩く姿が眩しくて、支えになりたくて。

 其れでも、君を一番に思っているのは自分なんだと。
 其れだけは絶対、誰にも譲らないと。
 ほんの少しの負い目を剥き出しの独占欲でくるんで、美しい月光石に託して君に贈ろう。

 そうしてジュストは茨と薔薇をモチーフにした翡翠色のネクタイピンを。
 ローザリカはキャッツアイと月光石を交互に繋げたブレスレットを。
 考える事は同じだねと笑い合いながら、贈り合うのだった。

 ――考える事が同じなら、この後もきっと同じだね?

 「これくらいじゃ、ちっとも足りやしない」!

マスターコメント

 お疲れ様でした。  それぞれ素敵な色の月光石を手に入れられたようで、何よりでした。  当方としても皆さんの素敵な色と由来を見られて何よりでした。楽しかったです。  そっと称号などお送りしております。ご確認下さい。  ご参加ありがとうございました!
イベントシナリオ

イベントシナリオ易しい 報酬:標準10 / 4〜25人

2022年08月31日 16時46分11秒 公開

大成功

相談掲示板

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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0