【緑陰】求む! 帝国復興ツアー参加者【祈樹】

炙りとろ左門

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シナリオID:2420

オープニング

 シルトラース帝国の突然の『崩壊』から二年。当時よりその実情を、人伝に聞きはせどもその目で見ることのなかった冒険者一党(アドベンチャーパーティ)がひと組、ついにその地に足を踏み入れた。
 一年前、即席で結成された初心者冒険者たちの一党は、縁あってその後も行動を共にし、通称「ひよこ隊」として知られていた。その【ひよこ隊】は先日、エドゥノーグの地にて「鉄級探索者」として認められたのだが……。
「もう、あたしたちも一人前だよなぁ?」
 上機嫌に先頭を行くのは、ドワーフの戦士(ウォーリア)・ナルシル。それを、ハーフビーストの斥候(シーフ)・リディルが慌てて追いかける。
「もう、ナルシル! シーフより先行しないでって言ってるじゃないですか!」
「ああ? 矢面に立つんならあたしが一番前の方がいいだろ?」
 どちらの主張にも一理ある。そのふたりを、ヒューマンの治療師(ヒーラー)・ドゥリンが諌めた。
「時と場合によりけり、臨機応変に……だよ。ナル、リディ」
 一年前はおどおどと自分の意見も言えなかった彼は逞しく成長し、すっかり一党(パーティ)内の調整役となっている。
「どちらが先行するにしても、歩調は合わせなくちゃ。ね? ミュー」
 ドゥリンは後ろを振り返る。その視線の先には、魔術師(キャスター)であり【ひよこ隊】の頭目(リーダー)・ミュルグレスが――地図を逆さまに持って歩いていた。
「えっ、ミュー!? 地図が逆さまだけど!?」
「……ん」
「なんで何事もなく正位置に戻してるの!? 今までの道案内は!?」
 ドゥリンは慌てて前方の二人を引き摺って戻って来るのと、ミュルグレスの手元の地図を覗き込む。
「大丈夫だ。道は間違っていない。私が見ていたから」
 その後ろから、ミュルグレスと同じエルフが少し身を屈めて会話に割り込む。ドゥリンはそれを聞いてほっと胸を撫で下ろした。
「良かった……じゃ、なかった。すみません、セイアッドさん。護衛任務を請け負っていてこれじゃあ……」
 セイアッドと呼ばれたエルフの青年は緩く首を横に振る。
「気にするな。彼女は大体いつも別のことを考えているというのは、ここ数日で理解させられた」
「あはは……あ、でも。ミューはいざという時はすごいんです」
 慌ててフォローを入れるドゥリン。だがセイアッドは気を悪くした風もない。
「それも理解している。昨日、クリーパーから奇襲を受けた時も、彼女の采配は見事なものだった。もちろんお前たち個々人の動きもめざましく……お前たちだからこそ成り立つ一党(パーティ)と言えるだろう」
 それより、とセイアッドは続けた。
「ディルクラムを休ませたい。このあたりで休憩したいのだが、いいだろうか?」
 セイアッドが手を引いて導く少女は、目元にぼろぼろの包帯を巻いている。ディルクラムの目はかつて悪意ある者たちに抉り取られ、脚も腱を切られた後遺症により上手く動かない。杖と、セイアッドの先導、そして彼女を見守る大狼(リフ)の助けなしには生きてはいけない。
「すみません。少し、疲れてしまって」
 細い呼気とともに漏れる声は僅かに掠れ、少女の雰囲気をより一層儚いものとしている。ドゥリンはぱっと顔を赤らめ、視線を落とした。
「いえ、大丈夫です。そうしたら少し休んで……でもそろそろ、他の冒険者たちとの合流場所です。安全のためにも、日が暮れる前には着きたいのですが」
「承知した」
 セイアッドは頷くと、ミュルグレスの肩を軽く叩く。するとミュルグレスはのんびりとセイアッドを見上げ、それから一行を見回した。
「他の冒険者たちと合流したら、改めて『帝国復興ツアー』の説明をする……セイアッドとディルクラム(エーテル浄化者たち)を連れて……西へ。長い旅に、なりそうだね」

解説

皆さんは「帝国復興ツアー」なるものに参加することになりました。 帝国の東からスタートし、西を目指して各地を巡りながら復興のお手伝いをするというものです。 ツアーの中核にはエーテル浄化者たちが組み込まれており、彼らの護衛も任務に含まれています。 今回はそのツアーの顔合わせ。キャンプ設営をしたり、友人と語らったり、情報交換をしたりする交流回です。 シナリオは【ひよこ隊】と合流したところからはじまります。 ■キャンプサイト 時刻は夜。近くに川と小さな共益林があるほかは平坦な土地ですが、やはり荒れ気味です。 川には魚が、森にはきのこや食用の木の道などが落ちていますが、限られた恵みですので乱獲はNGです。 ■できることの例 基本的にフリーアタックですが、以下のようなことができます。 ・PCやNPCと交流する ・川釣りや森で晩御飯を確保 ・食事の準備手伝い ・キャンプテントで夜会話! などなど。他にもOP内にあるフックを利用しても構いません。 ■NPC ▶︎〈ひよこ隊〉:去年の夏に結成された新米冒険者パーティ。 ミュルグレス:隊長。ナイスバディのエルフ、キャスター。 ドゥリン  :イケメンヒューマン、ヒーラー。 ナルシル  :胸は平野のドワーフ、ウォーリア。 リディル  :ボクっ娘ハフビ、シーフ。 ▶︎ エーテル浄化者たち:帝国復興のため西へと向かっている。 セイアッド :警戒心高めのエルフ、エーテル浄化者。 ディルクラム:盲目の美少女ヒューマン、エーテル浄化者。 リフ    :ディルクラムに付き従う大狼。 ■特記 プレイングで指定しなければ、モブ含むNPCの描写は最低限か、登場しません。 字数の都合でNPCとのやりとりがカットされる場合もございます。ご了承ください。 マスターページは参照しなくても判定に影響はありませんが、上記の他、描写やマスタリングに関する項目があります。

マスターより

初めましての方は初めまして。こんにちは、炙りとろ左門です。 本シナリオは新米冒険者と行く「【緑陰】」シリーズ……でしたが!! NPCたちも実力をつけ、探索者としても認められ、ついに一人前に。 チュートリアルもおしまいというわけで、新フェーズへと移行します。 (チュートリアルシリーズは新たにご用意する予定です) もちろんこれまでの流れを知らなくても問題ありません。 今まで関わりがなかったけれど……という方もこれを機にどうぞ! また、ツアー(連作)ですが、途中で自由に加入/離脱ができます。 また本依頼にはOPにも登場したNPC「ミュルグレス」が関連づけられており、挨拶をしたり、必要に応じて応答します。質問の際はコメント冒頭に【Q】をつけてください。 ※NPCによる質疑応答については、OPや解説において判断に迷う表現があった場合のみで、基本的にはOPや解説に書かれていることが全てとなります。 それでは皆様のご参加&プレイング、お待ちしております!

リプレイ

「よっ……と。こんなもんかね」
 サイラスはカゴの中に木の実を放り入れ、立ち上がった。川で魚を獲る(素手で)ことも浮かんだが、他の同行者が糸を垂らしている側でやるのも憚られる。というわけで、森での採集を選択した。
 その時、がさりと後ろの茂みが動いた。サイラスは再び静かに身をかがめ、カゴを地面に置く。互いに息を潜める間、流れる緊張は狩りのそれだ。
「――そら!」
 タイミングを見計らい、サイラスは尻尾をぐるりと回して茂みに叩きつけた。ギャン、と悲鳴が上がり、狼型の魔獣がその場に倒れる。
 茂みをかき分けて確認すると、急所を打たれた魔獣がひくひくと地面に倒れて痙攣している。痩せ具合や近くに仲間がいないところを見るに、群れから逸れたか、一頭生き残った魔獣なのだろう。
「身は少ないか……食えないほどじゃないが」
 食材として以外にも、毛皮や爪、牙など利用できる部分は多い。サイラスは魔獣の脚を縛って背負うと、カゴを拾ってキャンプへと戻った。

 サマエラ=フォリウムはキャンプに参加している人数を確認すると、必要な食材の量を計算する。それなりの人数で長旅ともなれば、まず食事面を考慮することだ。贅沢はできないが、満足感が得られる食事が望ましい。
「きのこ、木の実……と、魚と肉、だな」
 食材の選択肢が多いのは幸いだ。サマエラはスープかシチューを候補に入れつつ、鍋の用意をする。そこへ、森から戻ってきたトーラが調理場に籠を置いた。中には木の実ときのこが詰まっている。
「こんなものでしょうか!」
「ありがとう、トーラ。他の者が獲ってきてくれたものもあるし、十分な量だろう。あとは川で水を汲むついでに、スィーリーンたちの釣果を合わせるとしよう」
「はいっ」
 調理器具を濯ぎに川へと向かったサマエラを見送り、トーラはひとまず火を熾すことにする。そこへ、ミュルグレスとセイアッドが薪を手にやってきた。
「あ、ちょうどよかったです、ミュルグレスさん。今、火を熾そうとしていたところでして」
「うん。手伝う」
 石を並べ、ミュルグレスとトーラがナイフで薪を削り、それをセイアッドが集めて種火を作る。枯れた小枝を使って根気強く火を大きくすれば、やはり達成感があるものだ。
「よし。これで火は大丈夫ですね。……そういえば、帝国の復興の旅ということですけど、ミュルグレスさんはどこか目的の場所があったのでは……?」
「あ、うん。えとね」
 トーラの疑問に、ミュルグレスは地図を取り出す。やはり逆さまなのを、セイアッドが直した。
「極北へ向かうのに、帝国北部のこの平野部からじゃなくて……いちど北壁山脈の西に、用があって」
 ミュルグレス曰く、尋ねるべき人がいるらしい。
「でも、北壁山脈は……」
「厳しい旅になると思う」
 これまでとは比べものにならないほどに、過酷な旅になる。襲いくる寒さや、魔獣、クリーパー。帝国崩壊後、無事だった集落自体が少ない。徒労に終わるかもしれない。
「それでも、行くんですね」
 トーラの言葉に、ミュルグレスは頷いた。であれば止めることはできない。【ひよこ隊】の頭目(リーダー)は彼女なのだ。
「そうだ!」
 トーラは深刻な空気を払拭するように、手を叩く。一つ思い出したこともあった。
「セイアッドさん。エーテル浄化の能力を模倣できないか、試させて貰えないでしょうか?」
「模倣……とは?」
 目を瞬くセイアッドに、トーラは軽く【エーテルイミテイト】について説明した。
「もし模倣ができるなら、わたしも浄化のお手伝いができるんじゃないかと思いまして」
 望みは薄いが、物は試しだ。セイアッドとトーラは少し火から離れて試行錯誤を繰り返すが、結論としては【不可能】だった。
「ううーん……イメージがしにくいのが、いけないんでしょうか」
「冒険者向けに販売されているスキルは……覚え方とか、コツとか、全部書いてある、けど。浄化能力はそうじゃないから……かも」
 様子を見ていたミュルグレスがそう結論づける。残念そうに肩を落とすトーラを、セイアッドが興味深そうに見つめていた。

 ミュルグレスに火の番を任せ、トーラとセイアッドがテントの設営に向かうのと入れ替わりに、アルト=ミルドレッド=バ・ロッサとサニー・フォン・オルライトが荷物を置きにやってきた。
「あ、アルトだ」
「私よ! あんたは相変わらずみたいね」
 くるくると地図を回して首を傾げるミュルグレスに、アルトは苦笑する。
「帝国の復興手伝いなんて、大した役目だけど……あんたたちに任せて大丈夫かしらね……」
「だいじょうぶ」
「それが一番信用ならないのよ」
 ぐっと親指を立てるミュルグレスに、アルトは思わず突っ込む。
「ま、とりあえずしばらくは様子見に来てあげるから、好きなように頑張れば?」
「うん」
 と、ミュルグレスはふとサニーの方を見る。
「アルトのこと、よろしく」
「なんであんたによろしくされなくちゃいけないのよ!? それに何が一体『よろしく』なのよ!?」
 サニーが返事をする前に、真っ赤になったアルトがミュルグレスに詰め寄った。ミュルグレスは「きゃー」などと真顔で言いながらアルトから逃げ回る。
「ほらほら、挨拶が終わったらお手伝い、でしょ? アルト君」
 サニーに嗜められ、アルトはむぐぐと照れを収めるのだった。

 ヴァンゲルス・ロッドは採集したきのこを数個木の枝に刺し、火で炙った。サマエラは汁物を作るようなので、こちらはごろごろと具材を大きく切り分けた料理を用意する。栄養価のあるものを吸収の早い料理で摂取するほか、食べ応えのものを用意することで満腹感を刺激する。そんなヴァンゲルスの調理を、ミュルグレスは興味深げに見つめていた。
「そういや、お前さんはどうして森から出てきたんだ?」
 それまで気になっていたことを、ヴァンゲルスは訪ねた。彼女たちの旅は長いが、あまり詳しく話す時間は持てなかった。
「極北に、私の求めるものがあるって、星が言ってたの、は……話したっけ……」
 それはエルフ族に伝わる神託とは異なる、占星術による導きだが――ミュルグレスは火に小枝を放り込み、続けた。
「おとうさんが……昔、出ていったの。おかあさん、病気だったのに。あの人が、おかあさんと私を置いて、征竜に会いに極北へ向かった……その理由。生きているか、死んでいるのか。征竜とはなんなのか……」
 極北にその答えがあると、星が示した。
 ヴァンゲルスは炙ったきのこを火から下ろし、次に肉を炙る。
「……なるほどね」
 極北についてはまだわからないことばかりだ。だが、目下の彼女たちの目的は帝国復興の手伝いである。
「ま、俺如きがやれることなんざたかが知れてるが――やれるだけやってみるさ」
「頼りにしてるね、ヴァン」
「おう」
 ところで、とヴァンは鞄の中から嗜好飲料を詰めた瓶を取り出して見せた。
「夜、飲まねえか?」

 スィーリーンは川辺で釣り糸を垂らしながら、物思いに耽っていた。
 姿を現した帝国の皇帝、そして皇妃イダ――それぞれに思うところはあるものの。帝国臣民に――この地に暮らす人々には関係のないことだ。彼らが1日も早く、穏やかに暮らせるようになってほしい。
 そして帝国崩壊の謎が徐々に詳らかにされるうち、やはりちらつくのは、皇子レイウェストの元近衛騎士・エフレムのことである。
(帝国を旅するのなら、どこかでエフレムさまの情報が入手できるかもしれません……)
 今どこで何をしているのか、元気でやっているのか、過るのはそんな心配ばかりで。
「……あ!」
 ぴんと張った釣り糸に、スィーリーンは我に返る。
 釣果はそれなりだ。少し離れたところで同じく釣りをしているエミリア・シバもまた、スィーリーンの視線に気づくと腕を頭上に掲げて円を作る。夕食に用いるには十分だろう。
「あとはこれを調理班にお任せして……テントの設営のお手伝いに加わりますね」
「ええ」
 スィーリーンが釣った魚を、エミリアは自分のカゴに移す。
「そうそう、ディルクラムちゃんを見かけなかった?」
「ディルクラム様ですか?」
 エミリアの問いに、スィーリーンはふと辺りを見回す。
「先ほどまでは野営予定地にいらっしゃいましたけれども……」
 それぞれ、そう離れずに作業を行っている。ゆえにディルクラムの姿が見えないのは不思議だ。
「あら……」
 にわかに緊張した空気となるが、エミリアはすぐさま索敵スキルでディルクラムと思しき人物の位置を特定する。
「大丈夫そう。それじゃあ、またお夕飯時に」

 エミリアはスィーリーンと別れ、魚の入ったカゴを調理班に手渡すと、岩陰に腰掛けていたディルクラムへと近づいた。
「具合はどうかしら?」
 ディルクラムは声のした方へ顔を向け、微笑む。
「おかげさまで、だいぶ楽になりました。私たちには、荷馬車を買うだけの金銭的余裕はありませんでしたから……」
 足の悪いディルクラムを荷馬車に乗せて運べば、旅程はかなり短くなる。エミリアの提案で、ディルクラムの消耗は大きく緩和された。
 ディルクラムのそばに常に付き従っている大狼(リフ)の姿が見えないが、エミリアはあまり気に留めずディルクラムの隣に座り込む。
「ディルクラムちゃんは、エーテル浄化者なんですってね」
「ええ……そうらしいですね」
「らしい、っていうのは?」
 ディルクラムは、微笑みを崩さずに続ける。
「私自身に、あまり実感がないものですから。祈ったから、土が豊かになるというのも、雨が降ったというのも、たまたまかもしれないでしょう?」
 しかし、偶然も幾度となく重なればもはや必然である。
「『為すべきこと』を与えられた……そう考えることで生きていく者、利用する者……この旅の果てに見つかる答えには、正直、あまり期待してはいないのです」
 諦観を孕んだ吐息が漏れる。ディルクラムは逆に、エミリアに尋ねた。
「あなたは、何を思ってこの旅程に?」
「おねえさんは……将来、一緒に人助けの旅をしようって約束してる人がいるの」
 相手は正確には人ではないが、詳しく話すと長くなる。予行練習よ、と続ければ、ディルクラムはその答えに満足したようだった。
「約束ですか。それは、良いものですね」

 エリカ・プレトリウスは、思い切ってセイアッドに声をかけた。
「……あの、お水は如何ですか」
 セイアッドはテントを張り終えたところだった。汗を拭い、じっとエリカを見つめる。彼が警戒している様子はひしひしと伝わってきた。同族にさえこれなのだ。
「……その」
 ゆえに、エリカは言葉を選んだ。セイアッドが他者を警戒する気持ちは、なんとなくわかる。エリカもまた、臆病だった。優しそうな人間ですら恐ろしく感じられたあの頃。ゆえに言葉を交わしたいと――それだけではない。
 先日、エリカは幼いエーテル浄化者を隠す為に、仮初めの巫女役を担った。ゆえに、エーテル浄化者の持つ能力に純粋に興味があるのだ。
 尤も言葉がまとまらず、こうして水袋を差し出すこととなっているのだが。
「……ああ」
 セイアッドはエリカの手から水袋を受け取る。少し、戸惑っているようだった。
「炊事を手伝って参ります。出来たらお呼びしますから、お休みください」
「待て」
 出直そうとその場を辞そうとしたエリカを、セイアッドは呼び止める。そして水袋を少し持ち上げ、ぎこちなく笑った。
「助かった」
 それが今のセイアッドにできる最大の歩み寄りだということを、エリカは理解している。
「いえ……どういたしまして」
 少し、距離を縮めることができたかもしれない。エリカは確かな手応えを感じるのだった。

● 皆で食事を
 日が完全に落ち、空に星が瞬く頃。準備が整い、一同は火を囲んで食事をとっていた。
「熱いから、少し冷ますといい」
 川魚と山菜を煮込んだスープをそそいだ器を、サマエラはそっとディルクラムに手渡した。ディルクラムは器を両手で包み込むようにして持つと、「ありがとうございます」と微笑む。
「そういえば、リフは……」
「彼女は、済ませたと」
 少し離れたところで丸くなっているその大狼は、「わふっ」とサマエラに返事を寄越した。
「ならば、いい。……よければ、あとで感想を聞かせてほしいな」
「ええ。……いい香り。私がこんな状態なので、セイアッドの食事がおぼつかなくなっていて……だから、よかった。ありがとうございます。ね、」
 隣で黙々とスープを噛み締めていたセイアッドが、手を止める。
「……ああ」
「ああ、じゃなくて」
「……感謝する」
 ディルクラムが小さくの笑うのに、サマエラもまたつられた。
「ふたりはあまり笑わないから、少し気になっていた。よく食べて、今日はゆっくり休んでほしい」
 サマエラは空になったセイアッドの器を受け取ると、鍋からもう一杯注いだ。

「この間、前に出て戦うヒーラーを見たんです」
 ドゥリンはマグに注いだスープをこくりとひとくち飲んで、アラン・スミシーに語った。
「盾を持って、剣を振るって、ウォーリアと並んで戦っているのを。とても、かっこいいな……って」
「へえ。おじさんは後方支援が主だねえ〜。きみは?」
「僕もそうです。まだまだ学ぶべきことは多くありますけど……」
「またまた〜」
 ドゥリンも一年前に比べれば随分と成長したことは、彼を見守ってきた周囲が認めるところだ。一方アランは冒険者生活は日が浅い。野営準備の段階でも学ぶべきことが多くあった。
 長旅であることを考慮した献立の作成、食材の下拵え、現地調達した食材の保存方法、野営場所の選定基準。それを、作業の中で、そして今のような会話の中で会得していく。
「でも、人生ってそういうものなのかもねー」
 アランも、エルフの平均寿命的にはあと100年余りで寿命といったところだろうか。それだけの間に、どれほどの冒険をこなせるだろう。どんな出会いと別れを経験し、100年後、死を前に何を思うのだろう。
「おじさんはね、旅に出て日が浅いから。ほんとに。だからみんなの話がもっと、聞きたいんだ」
「僕もそうですね」
 二人は直近の冒険の話から日を遡り、会話を楽しむ。これもまた、野営の醍醐味だろう。

● またひとつ夜を数えて
 食事を終え、それぞれが割り振られたテントに戻る。アルトとサニーもまた見張り番の交代表を確認してからテントに戻った。
「サニー、疲れてない? 大丈夫?」
 挨拶回りから野営の手伝いまで、とにかく息をつく暇がなかった恋人を、アルトは気遣う。サニーは「大丈夫」と柔らかく微笑んだ。そんなサニーに、アルトはぎゅっと抱きついた。
「アルト君、」
「みんなの前では我慢してたでしょ。だから、これくらいは許してよね」
「……そうだね」
 胸に顔を埋めるアルトの頭を、サニーは優しく撫でる。
「サニー。私のわがままに付き合ってくれて、ごめんね……ありがとう」
「謝ることなんてないのに」
 好きな人と一緒にいられることは、きっと幸せなことだ。このような世の中であればこそ、一層。
「寝る前に、何か飲んでおこう。今のうちにゆっくり休めるように……水がいいかな」
「うん」
 サニーはお揃いのマグに【ピュアウォーター】で水を注ぐ。それを飲み干すまでの間、アルトとサニーはぽつぽつと、取り止めのない会話を楽しんだのだった。


マスターコメント

お疲れ様でした! 顔合わせは無事終了、次回よりツアーが始まります。 なお、少しお休みをいただくこととなりましたので……でも年内には出したいなと! それではまた、お会いしましょう~!
イベントシナリオ

イベントシナリオ普通 報酬:標準10 / 4〜25人

2022年08月31日 18時06分03秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. アルト=ミルドレッド=バ・ロッサ

    ミュル〜…ミュルグレス、来たわよ~ 何かすることある? ………あ、アルトよ! 私は私で、やることあって来たのよ!! べ、別に、決して…ひよこ隊のメンバーがいるから来たとか、そ、そんな単純な理由とかじゃないからっ!!

  2. ミュルグレス

    …… はっ。 ねてない……。 アルトも、みんなも、いらっしゃい。今回は帝国の旅……極北も近い、ね。 今回は、顔合わせだから…やりたいようにしてくれて、構わないよ。

  3. アラン・スミシー

    ひよこ隊と同じく、 ぴよぴよ冒険者のアラン・スミシーだ! どうぞよろしく!

  4. トーラ

    トーラです。 エーテル浄化しながらの復興の旅ですね。 よろしくお願いします! 夜営の準備をして、セイアッドさん達と話をしていると思います。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0