【西局】おもてなしは戦いの風
革酎
コメント 11
シナリオID:2384
オープニング
シラー砂漠最大級のバルバロイ組織『太信党』に情報を横流ししていたリーンエス王国内地の裏切者は、始まりの百家に連なる名門ファブランド侯爵家であった。
この事実が明るみとなった現在、王家派遣の王国騎士団がファブランド侯爵家とその寄り子貴族の所領に対して封鎖措置を取った為、当主クウリ・ファブランドは侯爵家を陰から支配していた上位吸血鬼レムアルス・ファブランドと共に、アンデッド部隊を伴って領地を脱出した。
そのクウリとレムアルスを無事にシラー砂漠へと迎え入れるべく、太信党の首領ウザリ・クル・タハーラが50人規模の太信党戦士団を派遣したという情報が、リーンエス王国西方辺境伯ルーヴェン・アクファリテの網に引っかかった。
ルーヴェンは漠兵隊長アザンティア・カーンに、この出迎え部隊を叩けと命じた。
裏切者貴族と太信党が何の障害も無いままに安穏と合流したとあっては、今後の対バルバロイ戦略に色々と不都合が生じるからだ。
アザンティアは麾下の漠兵隊数個小隊に出撃準備をさせると同時に、自らは西方辺境伯領都の冒険者ギルドへと走った。
確実に太信党の出迎え部隊を撃破する為には、授恵者の力が必要だったのだ。
冒険者ギルドには、吸血鬼ハンターとしても知られるロレッタ・レーゼンの姿があった。
太信党が王国内地の上位吸血鬼と結託していたことを受け、ロレッタも冒険者としてだけではなく、対吸血鬼戦にも力を貸すべく、しばらくの間この地に留まっていたのである。
「いよいよ、決戦が近い様だな。獅子身中の虫は排除された……後は総力戦というところか」
冒険者ギルドのロビーでアザンティアを呼び止めたロレッタは、敵の黒幕が上位吸血鬼だったことに一層の気合を入れている模様。
対してアザンティアは、今回仕掛ける相手は吸血鬼ではないのだが、と小さく苦笑を漏らした。
「しかし魔獣使いや死霊術師は居るだろう。だから授恵者の力が必要だと判断した次第だ」
今回はラネンターカム陵から少しばかり東に進んだ辺り、太信党の本拠地に比較的近しい砂漠の中での戦闘となる。これまでの戦闘の結果、敵は砂顎の魔獣使いが人手不足に陥っているとの情報もあり、今回魔獣が現れるとすれば岩蠍と大型吸血蝙蝠の二種だろうと予測された。
「心得た。私も手を貸そう」
ロレッタはまだ掲示板に貼り出される前の依頼票をアザンティアの手からもぎ取り、受付カウンターへと足を向けた。
●静かなる亀裂
太信党の本拠地ラネンターカム陵を発った出迎え部隊は、数名の魔獣使いと死霊術師を伴って東へと向かう。その中にはメドゥの指先からの協力要員アリバ・ジャハール・カサドや、メドゥの指先幹部『青の中指』ジルベルの姿もあった。
つい先日までフィルエス大森林に赴き、帝国過激派の尖兵として働いていたふたりだが、ちょっとした事情でその傘下を離れ、今は太信党の戦力として動いていた。
「で、レムアルス閣下ってぇのは、どんな御仁なんだい?」
道中、ジルベルは太信党戦士団のリーダーで授恵者でもある槍使いカジェ・ソレホという男に訊いた。
カジェは知らぬと、愛想悪くかぶりを振る。
「太信党は誰も、件の人物とは会ったことが無い。ウザリ様も恐らく、今度の合流が初対面だろう」
ファブランド侯爵家の傀儡当主たるクウリ・ファブランドとは何度か顔を合わせたことはあるそうだが、レムアルスは本当に実在するのかと疑問を抱かせる程の、徹底した秘密主義だった様だ。
それが今回こうして、姿を現すことになった。それはつまり、余程に追い詰められているということなのだろう。
「けどよぉ、割りと大胆に動いているみてぇだが、王国騎士団や冒険者、それに西方辺境伯辺りにも、こっちの動きは掴まれてんじゃねぇの?」
「無論、承知の上だ。恐らく強襲のひとつやふたつはあるだろう。しかし逆をいえば、それらの攻撃を我らが跳ね返すことが出来れば心理的にもこちらが優位に立てる」
カジェはふんと鼻を鳴らして、胸を張った。
そんなもんかねぇ、とジルベルは小首を傾げる。内心では、どうなっても知らねぇぞ、と舌を出していたのだが、表情には絶対に出さない。
ともあれ、出迎え部隊はラネンターカム陵の東の砂漠を進む。
アザンティア率いる漠兵隊による強襲を受けたのは、その直後であった。
解説
マスターより
リプレイ
灼熱の陽射しが容赦無く照り付けるシラー砂漠の、広大なる砂海。
その一角で、傲然とうねる会戦の雄叫び。
シラー砂漠最大級のバルバロイ組織『太信党』の戦士団と、アクファリテ西方辺境伯麾下の漠兵隊がむせ返る程の暑さの中で獰猛に吠え、互いに白刃を煌めかせていた。
「やっぱ美女が近くで見てくれてっと、気合いの入り具合も違うな!」
傍らで長刀を振るうロレッタ・レーゼンに笑いかけながら、ハヤト=ガラン=ヴォルファングは目の前の太信党戦士をひとり、軽く斬り伏せた。
これまで散々煮え湯を飲まされ続けてきた相手だが、いよいよ西方辺境伯側に戦局の利が向いてきた。好き勝手されてきた分、きっちりお返ししてやらねば気が済まぬとばかりに、ハヤトは次々と敵を薙ぎ倒してゆく。
だが一番の狙いは、首領格だ。いつまでも雑魚を相手に暴れ回るつもりはない。
「どうやら、あいつがリーダー格の様だな」
ハヤトの左手側で巨大な剣を振るっていた漠兵隊長アザンティア・カーンが、ひと際大柄な戦士を指差した。曰く、授恵者でもある槍使いカジェ・ソレホという男だそうだ。
この少し前、ハヤトは漠兵隊一個小隊、及び仲間のフリーダ=ブロムヴィストと共に早駆けし、敵の側面を衝く形で強襲を仕掛けた。
漠兵隊とフリーダの初手は敵の注意を引くことに成功。
「ここで気が付かれるのは想定外ですが、気にせず続行せよというのが天の思し召しの様です」
いつもの様に啓示を受けて突進したフリーダだったが、その猪突猛進のスタイルは以前から何ら変わらず、天啓を受けていようがいまいが、余り関係無かったかも知れない。
いずれにせよ、彼女の荒波の如き勢いと、訓練された漠兵隊員の機動力はハヤトの接近を上手く誤魔化し、更にはロレッタやアザンティア隊の動きまでをも開戦直前まで隠し通せたのだから、戦術としては大正解だったといえるだろう。
そして強襲は何も側面の一方向だけではない。前方から、ジュスト・ヴェルジー率いる漠兵隊一個小隊が敵の混乱を衝いて一気に迫った。
ジュストがまず、破壊力抜群の魔法攻撃を仕掛ける。その威力と範囲の広さは、太信党戦士達にとっては最大の脅威だったろう。その爆発的な衝撃波は複数名の太信党戦士を一撃で叩き伏せた。その一角を突破口にして、ジュストの指示を受けた漠兵隊一個小隊が崩壊した敵陣形の傷口を更に押し広げる様にして、怒涛の勢いで突入してゆく。
「来たよ、ロゼ……魔獣共だ」
ジュストはこの乱戦の中でも落ち着いた声音で、生涯の伴侶となる美貌の娘に声をかけた。
今回は不慣れな砂漠戦ということで、諸々の準備を万端に整えてきていたローザリカ・L・ディオールが、幾つかの黒く巨大な影が蠢き、こちらに接近してくる姿を認めた。
太信党の魔獣使い共が従える、岩蠍である。
「まずはあいつらからだね……空の敵はユークリア君、少しの間、任せるよ」
敵を見据えるローザリカの左右に、ユークリア・フィナンシェとアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトが立った。
「では岩蠍の方は、お願いしますね。さぁいきますよ……まだまだお役に立てるブルーフレア!」
ユークリアが意識を集中させると、ローザリカやジュスト、そしてアルベルトの肉体が淡い炎の揺らめきの如き光に包み込まれる。僅か一分弱という短い間だが、授恵者達のあらゆる能力が格段に向上した。
「まずは岩蠍……貴様らから斃す」
ローザリカからも回復支援を受けたアルベルトは、愛用の得物を鞘から抜き払い、巨岩を彷彿とさせる漆黒の異形に向けて一気に駆けた。
●青の中指の猛威
今回も敵は吸血屍の一団を投入してきている。
ということは、必ず居る筈だ――メドゥの指先の死霊術師アリバ・ジャハール・カサドが。
「随分長い間活動してましたし、そろそろ退場して貰っても良いですよね」
強襲部隊と他の冒険者仲間達とは少しばかり距離を取った位置で、ルアンナ・ミュラーは傍らのベルク・オスマットに低い声音で呼びかけた。
ベルクも若干うんざりした様子で、良い加減あの褐色デブの首を討ち取ってやると静かに返した。
アリバ周辺には吸血屍の群れが蠢いている。まずはあの肉壁を何とかせねばならないが、そこはルアンナの高威力の範囲魔法攻撃が大いに役立つだろう。
敵ヘの突破口が見えれば、次はベルクの出番だ。一気にアリバの懐まで接近し、その首を掻き斬ってやれば良い。接近戦能力は極端に低いと思われるアリバだから、近づきさえすれば必ず仕留められるという自信が、ベルクにはあった。
「じゃ、行きましょうか」
「今度という今度は逃がさん……」
ふたりは敵の後背方面から、そっと近づいてゆく。
漠兵隊と仲間の冒険者達が派手に暴れ回り、ほとんどの注意を引き付けてくれている。今が好機といえるだろう。
事実、吸血屍の群れは漠兵隊やロレッタ、アザンティアに対して攻撃の中心を据えており、アリバ自身の守りはかなり薄くなっていた。
しかし、冒険者や漠兵隊の側が圧倒的有利に戦局を進めていたかといえば、実はそうでもない。
太信党戦士や吸血屍に標的を絞っていたハヤト、フリーダ、ジュストといった面々は漠兵隊員と共に戦闘を優位に進めていたが、その一方で岩蠍に照準を定めたアルベルトとローザリカは、思わぬ展開に苦戦を強いられつつあった。
メドゥの指先幹部『青の中指』ジルベルが、岩蠍との戦闘に集中していたふたりに襲い掛かってきたのだ。
こんなに早い段階で現れるとは思っても見なかったふたりは、ジルベルの圧倒的な機動力と超人的な手数の多さに、対処が出来なかった。
「幾ら何でも、発想が足りなさ過ぎねぇか? 何で味方と連携するのが、自分達だけだって思うんだよ?」
仲間同士で連携を取るのは冒険者だけの専売特許ではない。ジルベルは過去にも、冒険者が取り得る戦術は敵もまた取り得るということを語っていた。今回も、まさにその通りの動きをジルベルは見せていた。
アルベルトが岩蠍の巨大な鋏による攻撃を防いだ瞬間、横合いから現れたジルベルが強烈な後ろ廻し蹴りを炸裂させ、アルベルトの側頭部を蹴り抜いた。軽い脳震盪がアルベルトを襲ったところで、岩蠍の尾針が頭上から迫る。
ローザリカが愛用の扇で辛うじて払いのけたが、今度はそのローザリカがジルベルの足払いを受けて熱砂の上に尻餅をついた。ジルベルが顔や胴に蹴りを叩き込まなかったのは、可愛らしい娘さんに痛手を負わせるのは気の毒だという変な心遣いがあったからかも知れない。
「術の使い方もちぐはぐだな。何で最初に俺の動きを封じなかった? 何で俺との接近戦に持ち込むにブルーフレアを使っちまった? そんな発想じゃあ、俺は仕留められねぇよ」
呆れるジルベルに、ローザリカは尚も必死に体を起こして立ち向かおうとするが、ジルベルは背負っていた巨大ブーメランをあらぬ方向へと投げた。
だが、何の狙いも無しに投じた訳ではない。弧を描いて飛ぶ巨大ブーメランは、ジュストの背後を衝いた。
「やべぇ! そのブーメランは要注意だぞ!」
ジルベルの戦術を熟知しているハヤトが警鐘を鳴らしたが、如何に危険を察知しても、回避能力が追い付かなければ意味が無い。ジルベルは回避と防御が薄いジュストを狙うことで、事前察知の有意性を帳消しにした。
ジュストの左の肩口に、巨大ブーメランの刃先が深々と突き刺さった。エーテルによる高い防御力をも貫く一撃に、ジュストはその場に蹲ってしまった。ジルベルはローザリカに、激痛で動けなくなったジュストを早く治療してやれと促す。
「これで極大火力と治療兼火力担当のひとりを同時に封じた。戦術ってのはな、こうやるんだよ。よく覚えときな」
そこへ、ユークリアが駆け付けてきた。上空の蝙蝠型魔獣の他に、魔獣使いひとりを撃破したユークリアだったが、対ジルベル戦の不利な状況を見てしまい、自身の戦果に喜んでいられる状況ではなくなっていた。
ところがここで、思わぬ事態が生じた。
「わわわわわっ、な、何ですか?」
「おぉっと……こいつぁ調子に乗り過ぎちまったかな?」
突如発生した流砂がジルベルとユークリアを呑み込んでしまった。どうやらこの一帯の地下には空洞があるらしく、地上の激しい戦闘が引き金となり、一部の空洞に大量の砂が流れ込み始めた様だ。
だが戦闘は尚も続く。
アルベルトはジルベル追撃を諦めざるを得ず、まずは目の前の岩蠍を片付けることに集中した。
「青の後ろ指差され組、貴様は必ず斃す。だが今は……岩蠍、貴様らが先だ!」
流砂に呑み込まれる直前のユークリアが施術してくれた治癒で相当に回復したアルベルトは、猛然と襲い掛かってくる岩蠍共に再び、鋭い刃を叩きつけた。
●完全勝利まで
吸血屍の一団が、突如として薙ぎ倒された。
太った中年男が悲鳴に近しい情けない叫び声を漏らす。ルアンナの攻撃魔術で守りを失ったアリバは、更に強烈な戒めの術を喰らい、動きたくても動けない。
そこへベルクが周囲の敵を一切無視して、驚く程の速さで迫った。
「フットワークが軽いデブとか本気で迷惑だ……良い加減、死ね!」
「き、貴様ァ!」
それが、アリバの最期の遠吠えとなった。これまで幾つもの戦線で冒険者を相手取ってきた死霊術師は、遂にものいわぬ骸となって、乾いた砂の地面に倒れ伏した。
太信党内でも指折りの死霊術師が斃されたことで、太信党戦士団は僅かに浮足立った。注目が集まったところで、ベルクは閃光塗弾を炸裂させ、周囲の視界を奪うと同時に素早く離脱。
ルアンナとベルクは、遂に目的を達した。
しかし、戦いはここで終わった訳ではない。太信党戦士団や魔獣の群れ、更には吸血屍も幾らか残っている。これらを全て平らげて初めて、完全勝利といえるだろう。
ベルクはルアンナのもとで態勢を整えると、再び敵陣の中へと飛び込んでいった。
「獲物が居なくなったし、丁度良いから纏めて死んでくれ」
今までは標的に逃げられた腹いせや八つ当たりで他の敵を襲うことが多かったベルクだが、今回は戦勝祝いだとばかりに更なる敵を求める。
そのベルクに付き合う形で、ルアンナも蝙蝠型魔獣や吸血屍の掃討に入った。
「追いかけっこにも、やっと終止符が打てた訳ですし、今日はとってもお目出たい日ですね!」
上機嫌で魔力をばら撒き始めるルアンナ。その驚異的な破壊力の矛先がアリバから太信党戦士団に向け直された。アリバの身代わりの様な格好となった太信党戦士達からすれば、とばっちりの様なものであった。
そしてハヤトは槍使いのカジェと一対一の戦闘に持ち込んでいた。
周囲の敵はフリーダやロレッタ、アザンティアといった面々が漠兵隊員達と共に抑え込んでくれている。
「うるぁ! どこ見てやがる! テメェの相手はこのハヤト様だぜ!」
部下達が次々とフリーダやロレッタに斃されてゆくのを見て明らかに動揺しているカジェ。その僅かな隙を見逃さず、ハヤトはここぞとばかりに勝負に出た。
カジェは槍使いとしては優秀だったが、超接近戦を得意とするハヤト相手では柄の長さが災いし、相当不利な状況に追い込まれた。そこへ加えてアリバが討ち取られ、ジルベルが流砂に呑み込まれて行方不明。
戦意が大いに揺らいだのは、無理からぬところか。
しかしハヤトは容赦も遠慮もしなかった。
フリーダが太信党戦士団を複数纏めて薙ぎ倒した瞬間、同時にハヤトもカジェを手数で圧倒し、そして斬り伏せた。
首領格を失った太信党戦士団は、士気が極端に落ち、陣形が総崩れとなった。
「ここが勝負どころだ……ロゼ、一気に行くよ」
「残るは厄介者は蝙蝠と吸血屍だけだね。それじゃあもうひと暴れといこうか」
アルベルトが岩蠍を全て始末したところを見届けたジュストとローザリカは、残る魔力を魔獣と吸血屍の殲滅に全て投入。
ルアンナとベルクが残敵掃討戦に参戦してきたことで、戦局はほぼ、漠兵隊側の勝利に傾いていた。
●再会
砂漠の地下空間は思ったより広かったし、何より暗かった。
しかしジルベルが持参していた光源用の生活紋具で視界は確保出来たし、何よりジルベル自身が地理感覚に明るく、どうやら地上に出られそうな位置へと近づきつつあった。
そんな中、ユークリアはまさか敵であるジルベルが彼女を案内して一緒に脱出しようとしていることに、驚きを隠せなかった。
「ジルベルさん……冒険者に鞍替えする気はないんですか?」
「今更無理だよ。俺の所為で身内を失った連中が、冒険者になったんで改心しまーっすっていったところで、許してくれると思うか?」
確かに、それもそうだ。
メドゥの指先を抜けたくても抜けられない――青の中指としてのこれまでの所業が、ジルベルの未来を縛っているに違いない。
因果応報というやつだろう。そんなことを漠然と考えていたユークリアだが、不意にジルベルが肩車でユークリアを天井付近に押し上げたものだから、思わず声を漏らして驚いてしまった。
「その辺、薄くねぇか? ちょっと小突いてみて崩れる様なら、穴開けて地上に出られるぜ」
いわれるがままに杖の先で叩いてみると、天井を形成していた岩盤が大きく崩れた。途端に、強い陽射しが目を刺激した。
次にジルベルは肩車から、そのまま自身の両肩の上にユークリアを立たせた。これでユークリアは両手を岩盤の縁に手をかけることが出来た。ジルベルはユークリアの足裏を太い腕でぐいっと押し上げ、ユークリアを地上へと押し出した。
「ジルベルさんは、出ないんですか?」
「今出てったら、袋叩きにされちまう。俺は別の地点から逃げるよ」
からりと笑って、ジルベルは再び地下の闇の中へと消えていった。
だがそれは、嘘だ。壊密宗による肉体改造で格段に強くなったという噂もある。今のジルベルは、そう簡単に斃せる相手ではないだろう。
それからしばらく砂上を彷徨ったユークリアだが、然程の時間を要することなく、仲間の冒険者達や漠兵隊と合流することが出来た。
「あのジルベルとかいう奴は?」
ロレッタの問いかけに、ユークリアは複雑な表情でかぶりを振った。逃げられたというよりも、逃がしてくれたといった方が正しいかも知れない。
「あの野郎、変なところで気を遣うからやり辛ぇよな」
ハヤトが小さくぼやいた。
気を遣うといえば、ローザリカの顔や胴には手を出そうともしなかった。紳士なのか、或いはジュストの怒りを誘う真似を回避しただけなのか、よく分からない。
ともあれ、敵は完全に撃破し、ユークリアともこうして無事に合流出来た。
首領格のカジェ・ソレホのみならず、壊密宗と共に一年近い因縁を結んできた死霊術師アリバ・ジャハール・カサドをも討ち取ることが叶った。
作戦は成功裏に終わったといって良い。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年08月13日 16時24分08秒 公開
参加者
相談掲示板
キャスターのジュストだ、よろしく頼む。 目的: クウリ・ファブランドと上位吸血鬼レムアルスを迎え入れようと進軍中の太信党の出迎え部隊を強襲する。 場所: ラネンターカム陵から少しばかり東に行ったところの砂漠地帯。 ほとんど遮るものは無く、会戦に近い形での部隊間戦闘になることが想定される。 敵: 太信党の戦士団50名 魔獣使い数名 吸血屍少数 岩蠍と呼ばれる強固な殻を持つ巨大蠍型魔獣、大型の吸血蝙蝠型魔獣 太信党戦士のリーダー格カジェ・ソレホ 『青の中指』ジルベル 死霊術師アリバ・ジャハール・カサド 友軍: 漠兵隊長のアザンティア・カーン 冒険者ロレッタ・レーゼン 漠兵隊員多数 以上が今回の依頼の概要。 誤りや不足があれば修正をお願いしたい。 そんなわけで、どの程度打撃を与えれば成功、とは明示されてはいないけれど、俺は少なくとも指揮官(ネームド)以下を蹴散らして、クウリやレムアルスを出迎えることができない状態に追い込めば良いという認識。 太信党戦士のリーダー格は倒しておけば以降の戦いが楽になるとは思うけれど。 完全な奇襲は難しいにしても、素早く仕掛けて向こうの体勢が整わない内に一気に攻め込めば有利に事を進められそうだよね。 幸い今回は砂顎もいないようだし、砂地という足場の悪さはあるけれどシーフの皆にはそれを補うスキルもあるし。 速い冒険者や積極的に前に出てる冒険者が早々に魔獣使いや太信党戦士のリーダー格を倒すことが出来れば獏兵隊もより攻めやすくなるかな? 俺は敵群を分断するような足止め用の魔法を持っていっても良いし、範囲魔法で数を減らすのに注力しても良い。
ヒーラーのローザリカ、よろしく頼もう。 ジュストは情報の整理助かった。参考にさせて貰うよ。 初撃をどこに撃ち込めばより効果的に敵を崩せるか……悩みどころだね。 指揮官あたりにドカンと撃ち込んだところを近接要員が強襲してもいいだろうし、 とにかく戦士団や魔獣に集中砲火してできるだけ数を減らしてしまうのも手だと思う。 敵については吸血蝙蝠とやらが少し気になったな。 空中から攻撃を仕掛ける時だけ降りてくるようだし、遠距離攻撃持ちが意識して対処する方がいいのかもしれない。 僕自身の行動は考え中ではあるが…… ヒーラーの追加スキルは回復系が多かったし皆への回復支援をメインにしようかな。 攻撃手段を近接と遠距離どちらにするかは相談しつつ決められたら。
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 今回俺は、最初に岩蠍に向かい、余裕があればジルベルに向かう予定だ。 岩蠍・ジルベル共に『破鎧砕3』を当ててから『鋭撃2』又は『千鳥雷切斬』で攻撃する予定だ。
キャスターのルアンナです。よろしくお願いしますね。 新スキルのスペルバインドを取得したのでせっかくなら使ってみたいですねえ。 カジェ・ソレホあたりを捕まえて確実に倒せるようにも出来そうですけど如何でしょう?
ヒーラーのユークリアです。よろしくお願いします。 では初手でブルーフレアと使いますので、受ける方は近くで待機をお願いします。 大体後は杖を持って攻撃しながらヒールします。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 我は褐色デブ、もといアリバを強襲してこようと思う。 前回は逃がしたがここらで脱落させるなり首と胴を泣き別れにさせるなりしておきたい。
ベルクさんが狙うなら、アリバにスペルバインドを使いましょうか? 随分出番長かったですし、そろそろ退場させても良いですよね(
>フィナンシェさん ブルーフレアの援護よろしくお願いします。 岩蠍・【青のうしろゆびさされ組】のジルベル共々叩き斬ってやるぜ!
今の所出ている希望は アルベルト:まずは岩蠍、その後ジルベル撃破 ベルク:アリバ撃破 ルアンナ:アリバ撃破支援 ユークリア:ブルーフレアで支援後攻撃と回復 ローザリカ:回復支援主体 アリバに関しては敵群の中央か後方にいそうだけど、シーフなら一気にそこまで仕掛けることも可能か。 斬り込んで貰って内側から動揺を与えてくれたらその間に距離を詰めて、火力を上げた範囲攻撃を叩き込んで敵最前線を崩すかな。 その時にロゼが懸念している蝙蝠を倒してしまえれば良いけど、倒しきれなかったら後方の獏兵隊に弓で狙い撃って貰っても良さそうだ。 最前線を崩したら希望のある冒険者は獏兵隊では難儀しそうな敵を各自マークしておけば、他は獏兵隊の能力を活かして掃討できるかと思った。 俺は敵前線を範囲攻撃で崩した後はカジェ・ソレホを優先して狙いたいかな。 ただ距離つめられると困るし、弓で狙い撃ちされるのも嫌なので同じくカジェ対応に回ってくれる近接対応可能な人がいると助かるな。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! ジュストは色々とまとめあんがとな! わかり易くて助かるぜ!! さて、今回はこっちから強襲してって感じみてーだが、定石と言えば魔獣使いを先に潰して敵の魔獣共を追っ払うってのが手っ取り早ぇがジルベルあたりがいんならそー易々といかなそんだな… んじゃ、俺は太信党戦士のリーダー格とやらの槍使いを斃しにいくとすっかな!! 一気に仕掛けんなら脚を活かして特攻みてぇとこだから後詰に漠兵隊員をいくらか借りてくのもいいかもな!
間が空いてしまったうえに明日が出発ではあるが、さて。 現状、魔獣担当が少ないし……僕は岩蠍や吸血蝙蝠中心に攻撃しようかな。 岩蠍の防御力は厄介だし少しでも通りの良さそうな魔法攻撃を主体にしつつ、 アルベルト君が破鎧砕を仕掛けたタイミングでは近接攻撃を叩きこみたいと思っているよ。 あとは吸血蝙蝠を撃ち落したりだとか、回復支援をしたりだとか。そんな予定だ。