【再起】地上の灯台。あるいは代官の新居
馬車猪
コメント 9
シナリオID:2338
オープニング
天にある星々はあまりに小さすぎ、飛んでいる間は常に緊張で心身が痛めつけられる。
「大丈夫だ」
御者がビッグオウムに言い聞かせる。
帝国の南東部へ飛んだ帰りにクリーパーを目撃し、万一を考え迂回したところで魔獣の群れを見つけてさらに迂回しているうちに夕暮れ時を過ぎてしまった。
(どうする。着地するか?)
夜間でも着地を成功させる自信はある。
だがそれは、地上が本当に安全だったならばだ。
ビッグオウムはゴブリンという種が人類社会での居場所を維持するための大切な道具だ。
少なくとも御者の健康よりははるかに大事で、場合によっては命よりも貴重な存在だ。
相棒が身じろぎする。
大陸南東部うまれの相棒にとって、夏とはいえ北国の空は優しくない。
(少しでも余裕があるうちに……)
御者が激しく瞬きする。
ゴーグルを取り去って目をこすりたくなる。
滅んで無人のはずの男爵領のど真ん中、その地上から数十メートルの位置に焚き木が燃えていた。
「明かり!?」
訳が分からない。
この地域で夜間目立つ明かりを灯すのは自殺行為に近い。
害獣、魔獣、クリーパーなど人間に対する脅威が無数に存在するのだ。
視界が揺れた。
御者の体力が底をつきかけている。
「あそこに着地する」
罠の可能性はあるが、空に留まるのもそれ以上に危険だ。
御者は自らと相棒が生き残るため、危険を承知で明かりに賭ける。
幸いなことに空飛ぶ脅威には遭遇しなかった。
丘が近づく。
伐採の後が生々しい頂上付近に、無人の焚き木がぽつんと燃えている。
「3、2、今っ」
地面は狭く固い。しかし冒険者を危険な場所の近くまで運ぶ1組にとっては着地するには十分だ。
骨に痛みが残らない程度の衝撃に耐えて、久々の安定した足場を堪能した。
「……参ったな」
安堵の息を吐く暇もない。
丘はてっぺんを除けば森に近い。
木々の間の黒々とした闇の中から、数十の瞳がこちらを凝視している。
その中に1つ、紫と金の瞳が混じっていた。
●
「依頼の説明会に参加して下さりありがとうございます」
冒険者ギルドの職員が丁寧に頭を下げた。
周囲には緑がたっぷりで、北国とはいえ夏なので飛んでいる虫も多い。
「これは帝国復興事業の1つに関わる依頼です」
切り開かれた場所には焚き木の跡があり、それを囲むように狼の子供達がじゃれあっている。
大人の狼はときどき顔を出すだけで、森の警備や丘周辺の警戒を行っているようだ。
「無人の元男爵領へ人を送り込む前に、害獣や魔獣やクリーパーを有利な地形に誘い出して討伐する作戦が行われていたのですが……」
周囲には血と肉のにおいが漂っている。
狩りに慣れた者なら、猪と鳩の血肉に似ていることに気付けるだろう。
「予想以上に敵の数と襲撃頻度が多かったのです」
狼の子等は肉の食べすぎで丸っこくなっている。
処理仕切れない骨や残骸が埋めた跡が丘にいくつもあり、木々の間に吊したハンモックで目に濃いクマのある授恵者が熟睡中だ。
そのうちの1人は代官本人。
ハンモックから垂れた桃髪に興味を示した子狼が、そうっと忍び寄って桃色に触れる直前つまみ上げられた。
「危ないわね」
紫と金の瞳が薄く開いている。
狼藉者と思い喉に当てていた指から力を抜いて、ハンモックから降りるついでに子狼を地面へ降ろす。
「状況は?」
「説明中です。そのままお休みください」
職員は元貴族令嬢にも現帝国代官にも特に敬意は抱かないが、外敵を倒し人類の領域を取り戻そうとする授恵者に対してなら便宜もはかる。
「そう……」
代官は疲れているらしくうつらうつらと居眠りを始める。
別の子狼が「ぼくもあそんで」という顔で近くに座ってじっと見つめている。
「話を元に戻します」
職員は子狼に犬用の干し肉を与えながら真顔で説明を続ける。
「今回お願いしたいのはこの丘の防衛です。依頼人は一度放棄したいらしいのですがビッグオウムの御者から是非維持して欲しいという要望が複数寄せられているのです」
今も、近くの空をビッグオウムが南に向かって飛行中だ。
主要街道に沿って飛ぶ方が安全だが、主要街道を使うと遠回りになる場所もある。そういうときにこの丘を休憩場所として使えると助かるのだ。
可能ならば永続的な拠点に、それが無理でもせめて後数日は維持して欲しいらしい。
「依頼の期間は4日間です。戦闘に専念しても、丘の狼の面倒を見るのに専念しても、それ以外に専念しても構いません」
複数を同時に行っても構わない。
これは、冒険者が帝国復興事業に関わるための依頼である。
●
「昼夜逆転生活ね」
セニャが目覚めて子狼を満足させた頃には完全に日が落ちていた。
職員は既に帰還し、罠であると同時に帝国の統治復活を告げる役目も持つ炎が赤々と輝いている。
「後数日か」
水が残り少ない。
冒険者が運び込んでいたら水は足りるかもしれないが、セニャと部下の体力がもたないので結局後4日が限界だ。
(しっかりした砦……は無理でも家を建てたかったわね)
丘に生えている木が予想より頑丈で斜面には凸凹した岩が多く、土木や建築の専門家ではないセニャとその部下では歯が立たなかった。
空から聞き慣れた音が聞こえた気がした。
「出迎えを……」
メイドに命じようとしたそのとき、直前まで「ぼくもあそんで」という顔だった狼が鋭く吠えた。
セニャの瞳が獰猛に輝く。
厚い雲で星も月も隠された空に、ビッグオウムより頭1つ大きな何かが辛うじて見える。
気配とにおいが、血生臭い肉食獣のそれだった。
「退避」
落ち着き払った声が響く。
狼の群れが森に駆け込み、その直後ビッグオウムの繊細な飛行とは正反対の飛行が始まる。
セニャの口元が少しひきつる。
今彼女が逃げると、魔獣ですらない狼が皆殺しにされかねない。
ぎりぎりまで引きつけて、固い地面を抉り取るようにして蹴りつけ飛行じみた速度で真横へ躱す。
「嘘でしょ」
いずれ砦を建てるつもりで固めた地面に直径5メートルの穴が開いた。
そこまではいい。
問題なのは、そのクレーターから立ち上がったビッグオウムもどきがほとんど無傷であることだ。
羽の上からでも、飛行生物とは思えない筋骨の逞しさがはっきりと分かる。
「こんなのが襲ってくる場所で後4日間か。参ったわね」
双方同時に踏み込み地面がさらに破壊される。
細剣と金属光沢のクチバシが衝突し、激しい火花を散らした。
解説
マスターより
リプレイ
枝から見下ろすと、体を休めつつ斜面を見下ろす狼達が見えた。
ベルク・オスマットを見つけられなかったとはいえ、それは相手が悪すぎただけだ。
視線をほぼ水平に向ける。
夜を見通す目が、地平線までの雄大な平原をしっかりと確認する。
(いずれ主要街道から延びる支街道の中継点や警備拠点となる。ならないようでは……)
帝国の復興に失敗するということだ。
ベルクは厳しい現状認識を静かな表情の下に隠し、わざと気配と音を発して幹を駆け下りた。
「驚かせないで」
驚き胸を押さえた代官が肩を落とし桃髪が揺れる。
「かつてとある赤い猪の半獣族の英傑がこう言ったそうだ、睡眠不足は良い仕事の敵だとな。あとそんな寝不足で濃い隈ができたやつれた面をアルベルト卿に晒すつもりか?」
「礼は言っておくわ」
「気にするな。セニャ殿には悪いが復興だとかビッグオウムによる伝達・輸送網の確保だとかを考えるとここに拠点はぜひとも欲しい。まぁ件のオウムを駆除できればの話になるがな」
「帝国の上層部もそう思っていて欲しいわね」
「今さら気弱になっても遅いわ」
疲れた顔でつぶやくセニャに毛布を投げ渡し、用事が済み次第寝るよう伝えるベルクであった。
「セニャさん!」
ベルクに少し遅れて各種装備と共に到着したミア=リゼルが真っ直ぐに駆け寄る。
狼達は主の気配から客人と判断して動かない。
「また無茶をして……。いえ、依頼が間に合ったという点では前回よりは危なくありませんが皆様にもう少しこう、この……」
セニャを心配する人達を安心させて欲しいという思いと、結婚や子育てを考えると今危険を冒すのが一番マシという理屈の両方が分かる。
「もう少し安全な状況に身を置くとかできませんか!?」
だからミアの口から出たのはこういう言葉だ。
「これ以上安全を重視するのは難しい……ねえ、ちょっと」
セニャの発音が可愛らしく歪む。
しばらく戦闘はないと判断したミアが、学園にいた頃と比べて荒れてしまった肌に容赦なく潤いを塗り込んでいている。
「肌のお手入れです!」
目覚めたメイド達が、主ではなく美容の専門家に従った。
「最近セニャさんに会うたびグッタリしてたりすること多い……多くない?」
アルマ・ヴァレンタインはヤギ革の水袋から新鮮な水を器に移す。
「セニャさんがしっかり休める場所の用意に使ってねー。あとはー」
ぐるりと周囲を見下ろす。
丘の頂上以外は手入れされていない森で、今切り出しても建材としての価値は低い。
「時間との勝負だね」
理知的な緑の瞳が、不敵にきらりと輝いた。
●
突風の如く踏み込み、眼球ごと眼窩を貫き切っ先を頭蓋に当てずに止める。
引き抜く動作は防御の動きと不可分だ。敵討ち狙いになった別の猪の一撃を、日傘でもある防具で受け止める。
そんな鮮やかな戦いをするミアのすぐ側から杭打ちの音が聞こえる。
「啓示でも『まずは拠点整備から。初手ブランチマイニングは邪道』との事ですし、まずは拠点整備をしつつ邪魔な敵を排除していきましょう」
安全は一応確保できているので最優先は水だ。
フリーダ=ブロムヴィスト達三人は、冒険者の足でも数十分かかる水場に向けて直進中で当然のように地元勢力の迎撃と正面衝突した。
それでもフリーダは一直線だ。
飛び抜けた防御力は魔獣と害獣の攻撃を跳ね返し、土木工事用から繰り出される伐採と藪払いは容赦なく障害物を破壊し移動の目印となる杭を打ち込んでいく。
ストレガ・L・リベルガストラは殺すしかない敵を仕留め、士気が崩壊して逃げ散った敵は追わずに血抜きにとりかかる。
無理矢理背負える形にまとめ、血に引き寄せられる別の群れを撃退しながら川へと向かう。
そして異空間の中身を解放する。
冒険者の苛酷な戦いに携帯可能な水袋(大)ではなく、水袋(大)なら大量に収容可能な特大木製容器だ。
これはセニャの実家が長年使ってきたコンテナと同型だ。
戦闘には全く使えないが輸送の場面ではとても使い易い。
「来ます」
フリーダが警告する。
太陽を背にする方向から、紛らわしい音と共にそれがやって来る。
「『混ざり物』の長の一人、ゴブラスは動物と心通わせ友としていたという。ビッグオウムも元々樹海に住む野生の獣で、説得したと伝わっているのだ。このオウムは近縁種だろう。先人達の苦労がよくわかるのだ」
速度と方向から数秒後の位置を予測しそこへ重力場を置く。
それで墜落するほど甘くはないが、長距離飛行能力を持たない魔獣は冒険者後衛への突撃が不可能になる。
「おそらくにおいで目が醒めたのだ」
ストレガがつぶたく間にフリーダが必要な気合いとエーテルを溜め終わる。ついでに荷物であった背中の食肉も降ろす。
「貴方の相手は私です」
美しい武具を美しく錬磨された技で使いこなすフリーダが、殺意とエーテルを真正面からぶつける。
強力であっても状態異常への耐性は並でしかないビッグオウムもどきは、絶望的な壁であるフリーダに執着するしかなくなり移動力と攻撃力を活かせない。
ミアの細剣とストレガの光弾が翼と足に当たり易い方向から攻めて、順当に勝利を確定した。
「繁みに隠していくのだ」
拠点が遠いのでこれしか手がない。
素早く血抜きだけ済ませ、ストレガ達は大荷物と全力で丘に駈けていった。
●
超人達による技能の暴力であった。
「セニャ、今回はこの丘の開発だな。任せておけ!」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトは非常に強力な分重い武器防具を外し、代官のコネを酷使し借りた道具を構える。
「この丘に砦を築いてみせるぜ!!」
彼を含めて建築・土木の専門家が3名。
それに近いのが数名。
体力と腕力は1人で熟練大工数名分だ
フリーダが啓示経由でぼんやり知っているそれを思わせる速度で、木が木材に変わり地面が水はけと安全を考慮された形に整えられていく。
(もしかしたらここでセニャと暮らすことになるのか。中途半端な砦を築くわけにはいかないな)
その代官は疲れを癒やすために熟睡中だ。
近くにアルベルトかいるので完全に警戒を解いている。
気を抜いた表情は、辣腕の代官ではなく年齢相応の少女に見えた。
「セニャと新婚生活……ああ、余計なことを考えるな、俺!」
柔らかそうな唇からアルベルトは目が離せない。
魔獣の体当たりに耐える強度があった幹が、力の入れすぎで変な形にへし折れた。
「なるほどね」
サイラスは丘に持ち込まれた魔獣の死体を調べている。
所々獣に食われているが元が大きいので調査には支障はない。
「数日で建てられるものじゃ無理だな」
飛行のために骨はやや軽量だが筋肉は凄まじい。
これでは急造の小型砦など最良でも時間稼ぎにしかならない。
「となると……どうするかねー」
トラバサミも用意は可能ではあるが相手の大きさを考えると効く確信は持てない。
「水で羽を濡らす、きつい酒で状態異常?」
色々案は思いつく。が、時間をかけて用意するよりサイラスが1本矢を撃ち込んだ方が効果が有りそうだ。
「どうしよ」
火酒並みに強く、それでいて香りと味わいが豊かな酒を眺め、午前だけで1棟分の準備を整えたサイラスがうむむと唸っていた。
獣道が拡張される。
人間が攻め込むなら防御側が奇襲し放題の幅しかないが、黒アルパカが牽く荷馬車が通ることもぎりぎり可能だ。
「砦まで造れるかなー」
アルマは良質な道具を次々持ち替えながら柱や板を仕上げていく。
干していない木を建材にしてしまったので1年以内に不具合がでるかもしれないがそれまでには彼女がなんとかするだろう。
「今回はとりあえず拠点として機能するのが最低限だよ。でないとここだけでなく近くの土地全部放棄することになるよー」
技術が違い過ぎてアルマに使われている兵士達が、必死の表情でできることをしている。
盾と剣だけ外したフリーダが思考に集中する。
斜面に直接建てるか、斜面を削って水平な地面を作るか、どちらも一長一短だ。
「外壁を優先しましょう。住みやすさの優先度は最下位で」
兵士が捨てられた子犬のような目を向けてくるがフリーダは迷わされない。
「貴方達はどうします?」
フリーダに問われたのは非常に体格の良い狼だ。
最初は何を言われたか分からなかったようだが、フリーダが犬小屋を1つ組み立てると機嫌良く尻尾を振り始める。
が、小屋に上半身を突っ込んだ直後、ひゃんと情けない声を出して尻から後退した。
「虫除けの効果でもあるのでしょうか」
腕のあるフリーダなら設計変更も容易ではあるが、工数が増えるので時間の余裕は確実になくなるので汎用的に使える建物に集中する。
雑魚の相手は狼に任せ、冒険者達は素晴らしい速度で森を小さくして建物を増やしていく。
「あとは水場か……井戸が掘れれば一番いいが、掘れそうな場所はあるかな?」
見た目とは逆に頑健な心身を持つベルクが、汗を拭き水分補給をして疲れた息を吐く。
夜間に1頭とはいえ魔獣と戦ったので疲労の色が濃く眠気にも襲われている。
兵士が凸凹の岩を数人がかりで運んでいる。
1人で同じサイズの岩を運んでいるアルマは比較的元気だ。ショートスリーパーの体質が有効に機能している。
「休憩場所はできたから運び終えたら使ってねー」
工事はまだ、始まったばかりだ。
●
依頼4日目の夜。
アルマも含めてそろそろ限界が近い。
交代で休憩しながら、ほぼ完成した砦の近くで今日の分の薪に焚き火の面倒を見る。
「おそらくビッグオウムの近縁なのだ」
地面に広げた解体済み偽オウムの最終確認を終え、ストレガは結論を下した。
「今回は持って帰れないのだ」
マジカルポケットに入るサイズにはできても小さくまとめる過程で壊れそうだ。
ストレガは骨から出汁をとった肉と野草の鍋を火から下ろす。
「人は肉のみに生きるに非ず。健康状態を考えていきたいのだ」
「はい。暖かい食事は士気の維持にも繋がりますから」
焚き火の近くでも昼と比べれば薄暗いのに、ミアは今が昼であるかのように鍋から皿に取り分けお盆に載せて覆いを置く。
「行ってきます!」
「気を付けるのだ」
ストレガに見送られ、ミアは現在起きている授恵者と兵士に食事を配っていく。
「おいしいですよ」
ストレガに迫るほど料理が得意なミアも協力しているので、舌の肥えたセニャも目を丸くする美味しさだった。
●
「焼くかぁ」
死ぬまで戦う敵を捕らえるのは難しい。
サイラスは大きな盾の表面に微かに残る傷跡をちらりと見て、作戦を少し修正することにした。
丸焼きである。
羽毛ごと焼くと余計なにおいが生じるので食欲はあまり刺激されない。
しかし同族にはそれが何か伝わった。
2頭目の死体に火を付ける前に、暗視能力がないとはいえ十分に優れた目で空から迫る巨体に気付く。
「小屋1つか」
狙いが外れた急降下体当たりが、無人の小屋を強烈な衝撃で押し潰す。
砕けた破片が木々にめり込み、異様な響きが丘全体を覆った。
「全部で4つ!」
暗視能力と超視覚を兼ね備えたセロンガード・シュタインドルフが大声で伝達する。
これでセロンガードの位置が露見してしまうがそれ以上の益がある。
「4っ!?」
真正面というより真下から突撃を受け止めたアルベルトが無理矢理横移動し竜鱗の盾を振りかぶる。
装甲に重ね合わせる形で展開したエーテルが、奇襲を仕掛けたもう1頭とぶつかり一瞬で消滅する。
「セニャ起きろ!」
反撃の斬撃は速度と重さと鋭さを兼ね備え、しかし体格相応のしぶとさを持つオウムもどきは血を流しながら空へ上がって距離をとった。
「グラヴィティボルトも効果はそろそろ終わりです」
夜間の長距離戦闘では圧倒的な強みを持つセロンガードの先制攻撃のおかげで敵の動きが鈍かった。
しかしその効果ももう終わりだ。
動きのキレを取り戻した巨体が、森や切り開かれた丘のてっぺんに着地し焚火を跳ね飛ばす。
「アルマさん!」
「てわけするよー!」
ミアとアルマが広範囲を癒して冒険者と狼の被害を軽減する。
そして、アルマから放たれた波動が冒険者の体にぶつかり青い炎と化してその能力を大きく引き上げる。
「あぶないよー」
ヒーラーとは思えない体のキレでクチバシと蹴りを躱す。
巻きこまれた木や建物が酷い有様だが今は気にする余裕がない。
「こんな習性でよく今まで生き延びてたね」
無数の光の破片が空の一角を彩る。
サイラスの凶悪な魔法攻撃が反映されたそれは、羽も本体も区別せずに魔獣の命を削る。
「この習性だから牧童や農民の帰還を妨げていたのでしょう」
身分は冒険者でも心情的には帝国に属しているセロンガードが疲れた声で同意する。
日暮れ前までしっかり寝ていたので疲労は許容範囲。しかしこの地が今まで被った被害を考えると頭が痛くなる。
「1頭も逃がさずいきましょう」
夜目が遠くまで利き、長距離攻撃まで可能な彼がこの戦場のキーマンだ。
丘から離れようとした敵に猛烈な射撃を浴びせ、丘に戻れば攻撃を緩めることで敵が退却を決断するタイミングを遅らせる。
「鳥肉、手羽先。大味かな? それとも馳走の類かな?」
まだ生きているように見せかけた死体の横でベルクが挑発する。
逃亡を決断した2体のうち1体が、怒りで全身を震わせベルクに迫り完全に躱される。
(いかんな)
ここまで戦況が一方に傾くと挑発の効果も長くは続かない。
ベルクに複数の手傷を負わされた魔獣が、辛うじて無事な翼を激しく上下させ浮遊する。
「道筋が見えました」
フリーダから言葉と殺気が飛ぶ。
高度な付与術まで修めている彼女の術は極めて強力で、生きるための飛行が死ぬための飛行に捻じ曲げられる。
フリーダは迎撃しない。
残っていた術を全て使って魔獣のいくらかを自らに集める。
「そこか!」
アルベルトが突進。
フリーダを突破できない魔獣を刺し貫き、暴れるそれから大太刀を引き抜きながら切り裂き内臓を地面に落とす。
周囲から術と矢が飛んでくるのを気にもせず、自らの雄叫びと頑丈さを活かして敵を引き寄せその場に拘束しようとする。
「砦を怖そうとするんじゃない!」
攻撃ではなく移動に巻き込まれるだけで、対人間としては十分な砦にひびが入るか変形してしまう。
1体を上下に両断して止めを刺して敵の数を減らした後も、アルベルトは自らを囮兼壁として使い拘束を優先するしかなかった。
「セニャさーん。生け捕りいけそうー?」
「もう死んで……嘘、生きてる」
弱々しく息をする鳥から細剣を抜いて蹴りつける。
乱戦の場から転がり出た鳥が地面に倒れ、アルマが伸ばした光の縄により厳重かつ容赦なく拘束される。
「よし! これなら生き残りがいても誘き寄せると思うよー」
「そうね。これで丘を維持するしかなくなるわね」
脅威となるものがいなくなった丘で、風呂が恋しい代官が重い息を吐いていた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年07月21日 23時30分11秒 公開
相談掲示板
ヒーラーのミア=リゼルです。よろしくお願いしますね。 おびき寄せが成功した場合に最大4体が同時に襲来、これを全滅させること…が最大目標になりますね。 今後のことも考えると、個人的にはここでしっかり討伐しておきたいですね。 他にも魔獣が+αで参戦、と。こちらはセニャさん+手助け数名で片付けられそう……となると問題はジャイアントオウムのほうですが……。 4日間の防衛ですから、最初の1、2日は要塞化や罠の設置などに注力して残りの日数でおびきよせ、討伐、というのはどうでしょう?
No.2
サイラスだ、よろしくなー とりあえずジャイアントオウムの方に行く予定 準備をするのに賛成で土木とかで罠仕掛けたり要塞化、弓で戦闘しようかと
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー できれば4体ぜんぶ倒して安全を確保できるといいねー 誘き寄せー…は夜に灯りをつけておくのとー 餌はともかくジャイアントオウム(仮称)ってどう使うのかなあ 生け捕りとか声帯模写でボスケテな感じで助けを呼ばせるとかそういう…? 個人としては休憩場所と拠点になる建物を整備したいので 汎用に建築・土木と夜間も作業継続or戦闘参加できるよう もう1枠はショートスリーパーにしようかなと あとは休めるときにしっかり休めるよう野営セットとか お水(大)も持っていく予定だよ
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 ジャイアントオウムに行くかね。 とりあえず一匹半殺しで捕まえて、生きたまま磔にして生餌にするか? 分かりやすくしておけば、仲間意識があれば助けようとしてくるだろう。
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 俺は、基本は『建築・土木』で砦の建設を行って、戦闘時は主にジャイアントオウム(仮称)に対応する予定だぜ。 『シーザーロア2』でジャイアントオウム(仮)を引き付けて『衝撃刃3』で叩き斬るつもりだ。 後は過酷な環境で4日間過ごせるように『サバイバル知識』を持っていくぜ
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 できるだけ早期にジャイアントオウムを全て撃破できれば、 その死体を放置する事で寄ってきた他の魔獣や害獣を蹴散らす形も取れそうです。 とはいえそのジャイアントオウムを全て倒すのが難しい気がしますが。 とりあえずこちらもシーザーロアで引き付けて仕留めていく形になるでしょう。 後は拠点から小川までのルートをしっかり確立したい所です。 このまま休憩場所として使用するのであれば、 水源の安全を確保する事でより使いやすくなるでしょう。
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 オウムに手が足りてるなら鳩と猪倒して解体してるのだ。とりあえず飯には困らないかと。
シーフのセニャよ。よろしくね。 答えられることは答えるつもりだけど、建築や土木とかの専門知識はないから注意してね。
ふむふむなるほど…(皆さんの行動をメモしつつ セニャさんもお疲れ様です。 では私も鳩や猪さんの対応に回りましょう。癒し手も必要になるでしょうから。セニャさんの肌の癒し手も…!!(わきわき