【究石】人馬と人間のおっさん共、邂逅す
革酎
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シナリオID:2305
オープニング
●懐かしい顔と新しい顔
シルトラース帝国東部街道のポラスロー駐屯所に、元帝国魔導院エスタル支部長のクライス・アクバーと、元ロモズ歩兵団長のリーヴァー・シュランドルが姿を見せたのは、陽射しの強いある夏の日であった。
東部街道を南に下ってヴィントを目指そうとしていた時、ポラスロー駐屯所に所属する中年の警備兵が慌てて馬を走らせてきたのである。
そのただならぬ様子に何かを察したクライスが、一体何事かと呼び止めたところ、件の警備兵は、
「ポラスロー駐屯所に、ちゅ、中型クリーパーが現れたんだ! だから一番近い町に走って、冒険者を雇う様にとの命令が……!」
その瞬間、クライスはリーヴァーに黒眼鏡の奥からさっと目配せして、頷きかける。
「あたし達も授恵者よ。すぐに応援に駆け付けるわ。あなたはそのまま冒険者ギルドに走って、援軍を募ってきてくれるかしら?」
リーヴァーの言葉を受けて、中年の警備兵は礼を口にしながらも、再び手綱を打って馬を走らせていった。
同時にクライスとリーヴァーは、ポラスロー駐屯所へと駆けに駆けた。
やがて、前方から凄まじいまでの破壊音が響き渡ってくる。
見ると巨人型の中型クリーパーの姿が、三つも視界に飛び込んできた。中々普通では見られない光景だ。
「中型が三体か……こいつは少々、厄介だ」
低くぼやきながらも、クライスは更に足を速めた。
それから一分もしないうちに、最も近い位置にいる中型クリーパーの背後へと廻り込む。クライスは間髪入れずに特大の空間爆砕を叩き込んだ。
不意打ちを喰らったクリーパーは、その場に膝をついて四つん這いになった。
「おぉ……あ、あんたもしかして、クライス先生か!?」
クライスにとっては聞き覚えのある声が、駐屯所の外壁付近から飛んできた。
ポラスロー駐屯所の責任者である帝国軍警備隊長グリウス・ラーケンは、クライスが帝都の魔導院で勤務していた頃の、魔導院付き警備隊の班長だった人物だ。
ラーケン隊長は三十数名の警備隊員を指揮して、中型クリーパー相手に必死の抗戦を仕掛けている。が、授恵者がひとりも居ない兵力では、防戦一方だった。
「久しいな、ラーケン班長……いや、今はもう警備隊長か」
「挨拶は後にしよう、先生。まずはこいつらを早く何とかしないと!」
ラーケン隊長の鬼気迫る表情に、それもそうだなと冷静に頷き返すクライス。一方でリーヴァーは、別の個体に接近戦を仕掛けていた。
「セレフィーナ、無理はするな。ひとりで何とかなる相手じゃない」
「それは分かってるけどぉ!」
愛用の長剣を振るいながら、リーヴァーは幾分困り顔。本人も、単独で何とか出来る相手だとは思っていないが、かといって何の手当てもせずに放っておく訳にもいかない。
その時だった。
光の尾を引く強烈な矢の一撃が、東の丘の斜面から鋭く飛んできた。
必殺の一撃はリーヴァーに巨大な鉤爪を振り下ろそうとしていた中型クリーパーの上体を、ぐらりとよろめかせた。
「おぉッ、あんた、ヌロブアじゃないかッ!」
ラーケン隊長が嬉しさと懐かしさの入り混じった喜色を声に乗せた。一方でクライスとリーヴァーは、驚きを禁じ得ない。
助っ人に現れた強力な弓の使い手は、人馬の特異個体だったのである。
その名は、ヌロブア。
かつて帝国東部で人馬騒乱の火種が巻き起こった際、ポラスロー駐屯所にケンタウロスゾンビの襲来を警告したことで、人間達の信頼を得た人物だ。
人馬騒乱決着後も、ヌロブアは療養の為にしばらくポラスロー駐屯所で過ごしていたらしく、その間に彼とポラスローのひとびとはすっかり打ち解けたらしい。
一カ月ほど前にやっと人馬の聖地へと帰っていったヌロブアだが、偶々所用で近くまで足を延ばしていた際、世話になったポラスロー駐屯所が中型クリーパーに襲われている光景を目にして、慌てて駆けつけてきたのである。
「私も、協力します。皆で一緒に、この怪物共をやっつけましょう」
若干たどたどしい言葉運びではあったが、ヌロブアは共に戦おうと気勢を上げた。
シルトラース帝国東部街道のポラスロー駐屯所に、元帝国魔導院エスタル支部長のクライス・アクバーと、元ロモズ歩兵団長のリーヴァー・シュランドルが姿を見せたのは、陽射しの強いある夏の日であった。
東部街道を南に下ってヴィントを目指そうとしていた時、ポラスロー駐屯所に所属する中年の警備兵が慌てて馬を走らせてきたのである。
そのただならぬ様子に何かを察したクライスが、一体何事かと呼び止めたところ、件の警備兵は、
「ポラスロー駐屯所に、ちゅ、中型クリーパーが現れたんだ! だから一番近い町に走って、冒険者を雇う様にとの命令が……!」
その瞬間、クライスはリーヴァーに黒眼鏡の奥からさっと目配せして、頷きかける。
「あたし達も授恵者よ。すぐに応援に駆け付けるわ。あなたはそのまま冒険者ギルドに走って、援軍を募ってきてくれるかしら?」
リーヴァーの言葉を受けて、中年の警備兵は礼を口にしながらも、再び手綱を打って馬を走らせていった。
同時にクライスとリーヴァーは、ポラスロー駐屯所へと駆けに駆けた。
やがて、前方から凄まじいまでの破壊音が響き渡ってくる。
見ると巨人型の中型クリーパーの姿が、三つも視界に飛び込んできた。中々普通では見られない光景だ。
「中型が三体か……こいつは少々、厄介だ」
低くぼやきながらも、クライスは更に足を速めた。
それから一分もしないうちに、最も近い位置にいる中型クリーパーの背後へと廻り込む。クライスは間髪入れずに特大の空間爆砕を叩き込んだ。
不意打ちを喰らったクリーパーは、その場に膝をついて四つん這いになった。
「おぉ……あ、あんたもしかして、クライス先生か!?」
クライスにとっては聞き覚えのある声が、駐屯所の外壁付近から飛んできた。
ポラスロー駐屯所の責任者である帝国軍警備隊長グリウス・ラーケンは、クライスが帝都の魔導院で勤務していた頃の、魔導院付き警備隊の班長だった人物だ。
ラーケン隊長は三十数名の警備隊員を指揮して、中型クリーパー相手に必死の抗戦を仕掛けている。が、授恵者がひとりも居ない兵力では、防戦一方だった。
「久しいな、ラーケン班長……いや、今はもう警備隊長か」
「挨拶は後にしよう、先生。まずはこいつらを早く何とかしないと!」
ラーケン隊長の鬼気迫る表情に、それもそうだなと冷静に頷き返すクライス。一方でリーヴァーは、別の個体に接近戦を仕掛けていた。
「セレフィーナ、無理はするな。ひとりで何とかなる相手じゃない」
「それは分かってるけどぉ!」
愛用の長剣を振るいながら、リーヴァーは幾分困り顔。本人も、単独で何とか出来る相手だとは思っていないが、かといって何の手当てもせずに放っておく訳にもいかない。
その時だった。
光の尾を引く強烈な矢の一撃が、東の丘の斜面から鋭く飛んできた。
必殺の一撃はリーヴァーに巨大な鉤爪を振り下ろそうとしていた中型クリーパーの上体を、ぐらりとよろめかせた。
「おぉッ、あんた、ヌロブアじゃないかッ!」
ラーケン隊長が嬉しさと懐かしさの入り混じった喜色を声に乗せた。一方でクライスとリーヴァーは、驚きを禁じ得ない。
助っ人に現れた強力な弓の使い手は、人馬の特異個体だったのである。
その名は、ヌロブア。
かつて帝国東部で人馬騒乱の火種が巻き起こった際、ポラスロー駐屯所にケンタウロスゾンビの襲来を警告したことで、人間達の信頼を得た人物だ。
人馬騒乱決着後も、ヌロブアは療養の為にしばらくポラスロー駐屯所で過ごしていたらしく、その間に彼とポラスローのひとびとはすっかり打ち解けたらしい。
一カ月ほど前にやっと人馬の聖地へと帰っていったヌロブアだが、偶々所用で近くまで足を延ばしていた際、世話になったポラスロー駐屯所が中型クリーパーに襲われている光景を目にして、慌てて駆けつけてきたのである。
「私も、協力します。皆で一緒に、この怪物共をやっつけましょう」
若干たどたどしい言葉運びではあったが、ヌロブアは共に戦おうと気勢を上げた。
解説
状況:
PCの皆様はポラスロー駐屯所最寄りの町の冒険者ギルドで、中型クリーパー撃退の依頼を受けて、大急ぎで駆けつけてきたところからスタートして頂きます。
敵は巨人型の中型クリーパーが三体。
特殊能力は無く、強大なパワーで力任せに攻撃し、分厚い表皮で防御を固めているという典型的な物理戦闘型のクリーパーです。
三体も居るというのは少々珍しい状況ですが、多分どこかから流れてきたのでしょう。
中型は一体当たりの戦闘力が授恵者数名分に匹敵するともいわれていますから、結構厳しい状況です。
但し味方には超人的な強さを誇るクライス・アクバーとヌロブアの両名が居ますので、PCの皆様と協力すれば何とか撃破出来るでしょう。
敵:
三体の中型クリーパーです。
頭頂部までの高さはいずれも約4メートル程で、若干腕が長く、拳や鉤爪を力任せに振り回して攻撃してきます。
物理防御力もそこそこ高く、分厚く硬い皮膚を打ち破るのはいささか骨が折れます。
魔法防御力に関しては不明ですが、クライスの魔法攻撃で大きくぐらついたところを見ると、魔法攻撃はそれなりに有効かも知れません。
NPC:
主なNPCはクライス・アクバーとリーヴァー・シュランドルの師弟コンビ、人馬の特異個体ヌロブア、ポラスロー駐屯所の帝国軍警備隊長グリウス・ラーケンといった辺りです。
その他、警備隊の帝国兵達がモブNPCとして登場することでしょう。
マスターより
皆様、こんにちは。
クライス先生とリーヴァーのコンビで進めてゆく新しい連作の第一弾です。
今回は過去に人馬連動で顔を見せた古老派の特異個体ヌロブアと、クライス先生の出会いのお話です。
とはいえ、状況は結構切迫していますので、のんびり自己紹介している暇など無く、中型クリーパー共を一緒にやっつけましょうという内容になっています。
そんなに頭を使う様なシナリオではございませんので、単純に戦闘シナリオで暴れたいというだけでも結構です。皆でクリーパー共を蹴散らしましょう。
尚、本連作では何をやるかといいますと、ずばり【幽界樹打倒の為の必殺アイテムを考えてみよう】です。
個人の連作でやるにしては随分重要な内容ですが、運営様とも色々すり合わせながら進めて参りますので、興味がございましたら一度覗いて頂けますと幸いです。
リプレイ
●到着、即激闘
シルトラース帝国東部街道を駆ける、五つの人影。
いずれも腕の覚えのある授恵者達である。
「この向こう側ですね……まず一体は、任せて下さい! 頑張って抑えます!」
先頭を走るハルハン・ツァガーンナルが、自身の身長よりも長いハルバードを小脇に抱える構えで叫んだ。
ポラスロー駐屯所は砦という程の規模は無いものの、高さ二メートルを超える木柵が周囲をぐるりと囲み、更には二階建ての詰所もある為、冒険者達から見て駐屯所の向こう側に居る三体の中型クリーパーは、すぐにはその姿を視界に捉えることが出来なかった。
しかし激しい戦闘音と警備兵達の叫び声は、よく聞こえる。戦場はもう、目と鼻の先だ。そして駐屯所東側の平地を迂回したところで、いきなり全長四メートル程の巨人が三体、足元の警備兵達を相手に大暴れしている姿が現れた。
「いきますよー! 空間爆砕ドカーンです!」
ツァガーンナルが手前の中型クリーパーに接敵するよりも早く、ルアンナ・ミュラーが術式発動の態勢に入った。敢えて大声で叫んだのは、巨人の足元で奮戦している友軍に知らせる為だ。
その中には幾つか、見知った顔もあった。
「大きいのが来るぞ、一旦退け」
「巻き込まれたら怪我どころじゃ済まないよ!」
元帝国魔導院エスタル支部長のクライス・アクバーと、元ロモズ歩兵団長のリーヴァー・シュランドルがほぼ同時に叫んだ。
ポラスロー駐屯所の責任者である帝国軍警備隊長グリウス・ラーケンはふたりの声を聞くや、すぐさま部下達に後退を指示する。
足元の敵が一斉に距離を取ったところで、三体の巨人型クリーパーは追撃には移らず、手近の構造物に対する破壊の為に長い腕を振り回し続けていた。
宣言通り、ルアンナの放った不可視の衝撃波が巨人共を大いにぐらつかせた。それでもすぐに倒れないのは、矢張り中型としての耐久力が為せる業か。
「先制パンチとしては上出来ね……後は一体ずつ、確実に仕留めていきましょう」
最も近い個体に炎の檻で足止めを仕掛けたアウレーリア・フォン・ネーベルベルク。身動きが出来なくなったところへ長い得物を携えたツァガーンナルが立ちはだかり、盾役としてその動きを封じた。
一方、最初に一発大きいのを叩き込んだルアンナは、別の個体に雷の槍を叩き込んで、こちらも同様に動きを封じた。
その足元に、驚異的な接敵能力を誇るベルク・オスマットが駆け込んでゆく。目にも止まらぬ三段連撃をお見舞いして、着実に巨人の機動力を潰した。
そこで漸く、見覚えのある顔が近くに居ることに気付いた。
「あれ? ヌロブア殿に、ロモズのリーヴァー元団長殿か……これはまた何ともいえない組み合わせだな」
「あの人馬さん、顔馴染み? んじゃ、後でゆっくり紹介してね」
ルアンナとベルクの攻撃で機動力を失った個体の正面に、リーヴァーが盾役として廻り込みながらベルクに軽く笑いかけた。ベルクは勿論と頷き返しつつ、残る一体の足元へと駆け込んでゆく。
「団長サマ、居たんだ」
前衛達のすぐ後ろに張り付く形で飛び込んできたアルマ・ヴァレンタインだが、リーヴァーはその呼び方はもうやめろと、長剣を振るいながら苦笑を返してきた。
アルマとしても、今は場合が場合だと積もる話は後回しにして、まずは仲間達のエーテルを劇的に向上させる術の発動に専念した。
今回駆け付けた冒険者達の中では、治癒師はアルマひとり。つまり、回復と防御支援は全てアルマの両肩にかかっているといって良い。ここで戦闘以外のことに意識を廻している余裕は無かった。
●一体目、撃破
「お前の相手はボクです! よそ見はさせませんよ!」
ルアンナとアウレーリアの強力な魔法攻撃を浴びて、後衛に長い腕を伸ばそうとしていた個体に対し、ツァガーンナルが猛然と吠えた。
もともと長身のツァガーンナルが、更に己の身長を超える長得物を振り回すことで、四メートル近い巨人の上半身付近にも近接攻撃が余裕で届く。その特性を活かした接近戦術は、強大な魔法攻撃を繰り出すルアンナとアウレーリアへの注意を逸らすには十分な威力を発揮した。
既にアウレーリアがこの個体の防御力を削ぎ落しており、ツァガーンナルの武器でも打撃が加えられる状態になっている。魔法攻撃との相乗効果もあり、冒険者達が最初に狙いを定めた個体は、早くも瀕死の呻きを漏らしていた。
その時、三体全ての下半身に連撃を叩き込んで機動力を損なわしめたベルクが後退してきた。どうしたのかとアウレーリアが問いかけると、ベルクは一旦戦域を離脱し、他に同様のクリーパーが徘徊していないかを確認してくる腹積もりだという。
「あの三体は北東方面から近づいてきたという話だった。クリーパーは同種同色同士で群れる習性があるから、仮に他にも居るとすれば、その方角を捜索し、近づかれる前に手を打つべきだろう」
「一理あるわね。街道沿いは結構お掃除した心算だけど、まだこういうのが徘徊してる以上、移住民を安全に送り届ける為には少しでも多くのクリーパーを駆除しておく必要があるから」
アウレーリアの賛同を得た上に、クライスやリーヴァーからも是非見て来いとのお墨付きを貰っていたベルクは、軽く頷き返してから足早に北東方面へと駆けていった。
結果として戦力をひとり欠いた格好となったが、強力な魔法攻撃術を誇るクライス、アウレーリア、ルアンナの三人に加えて、前衛としてはリーヴァーとツァガーンナル、治療と支援にアルマという面々が揃っている。
既に一体を仕留めつつある現状に於いては、ベルクの離脱は然程には痛くないだろう。
「私はそろそろ二体目……リーヴァーさんが抑えているあの個体に着手しますね!」
ツァガーンナルに呼びかけてから、ルアンナはリーヴァーの背後へと走った。二体目の個体はまだ然程の火力を浴びておらず、その耐久力は健在である。ここでルアンナの魔術が敵の防御力を削ぎ落とせば、盾役のリーヴァーでも前衛火力としての役割を果たすことが出来るだろう。
最後の三体目については駐屯地の警備兵とクライス、ヌロブアといった面々が対処に廻っている。ベルクが下半身に痛打を加えていた効果もあり、今や完全に包囲戦へと入っているから、こちらは今少し、時間的に猶予があると見て良さそうだった。
やがて一体目が、ツァガーンナルの接近戦による打撃とアウレーリアの強力な火炎魔術の前に屈した。その巨体が音を立てて崩れ落ち、動かぬ骸と化した。
アウレーリアはそのままリーヴァーとルアンナの支援に入るが、ツァガーンナルは少し治療が必要だ。
「オッケィオッケィ! すぐに治してあげるからね!」
アルマは強力な治癒師だ。日頃の言動はいささか奇天烈な方向に傾くこともあるが、治癒師としての技量は信頼出来る。
たちどころに、ツァガーンナルの負傷は癒えていった。
「団長サマの方は、放っておいても大丈夫みたいだね……ってことは、あっちの警備隊の皆さんが抑えている方に廻った方が良いかも」
「同感ですね。クライスさんとヌロブアさんが前衛に廻っているのも、余り宜しくありません。ボクが盾に入ります!」
アルマに頷き返してから、ツァガーンナルはハルバードと盾を構えた独特の姿勢で、三体目の正面へと駆け込んでいった。
それまでは魔力で防御を固めて盾役となっていたクライスと、機動力で敵の注意を引き付けていたヌロブアの二段構えで敵の攻撃を封じていたのだが、ツァガーンナルの参戦でこの両名とも、本来の極大火力に集中することが出来る様になる。
中型クリーパーは確かに手強い相手だが、この陣容ならば過度に恐れる必要も無いだろう。
●完全勝利
ツァガーンナルがクライスとヌロブアの為の盾役に入る一方、アウレーリアはルアンナと共にリーヴァーが抑えている個体への攻撃火力として参戦した。
「そういえば団長……じゃなかった、リーヴァー様が前で戦ってるのを見るのは、もしかしてこれが初めてじゃないかしら?」
ロモズ歩兵団時代のリーヴァーは専ら、後方で全体指揮を執ることが多かった。アウレーリア自身も、リーヴァーが敵の攻撃の矢面に立っている姿を見た記憶が無い。
「へぇ、そうなんですね……あんなに細身で盾役というのも、凄い話ですけど」
ルアンナの目から見ても、リーヴァーは着飾れば立派な貴族令嬢だ。それが巨人の目の前で高い機動力を発揮し、その注意を引き付け続けている。同じ盾役でも物理的な防御力で耐えるのではなく、機動戦術で回避しながら敵を引き付けるタイプなのだろう。
であれば、敵の認知能力、即ち視界への攻撃がリーヴァーの助けになると踏んだアウレーリアは、その頭部付近に魔術や閃光塗弾を叩き込む戦術に出た。
その発想は、功を奏した。件の巨人は相変わらずリーヴァーにのみ攻撃の手を加えようとしているが、アウレーリアの術に陥り、その命中率は極端に落ちている。
回避盾タイプのリーヴァーには、アウレーリアのこの支援は非常に理に適っていた。
と、そこへヌロブアの強烈な矢が背後から襲い掛かってきた。ツァガーンナルが盾役となって三体目の面倒を見る様になった為、ヌロブアは攻撃に専念出来る様になった訳だが、彼の矢を射る手の速さは脅威的で、三体目のみならず、リーヴァーが抑えている二体目に対しても容赦無く攻撃を叩き込んで来る。
そこにルアンナとアウレーリアが、畳みかける様に攻撃魔法を集中させた。
アウレーリアの紅蓮の炎と、ルアンナの巨岩弾の炸裂、そしてヌロブアの一撃必殺に近い威力の矢が次々と襲い掛かり、二体目の巨人も轟音を響かせてその場に崩れ落ちた。
これで残るは一体。
戦闘終結の目処は、大方のところで立ったといって良い。
「さぁ、あと一体だよぉ! 気合入れていこー!」
ツァガーンナルを治癒術で支援し続けていたアルマが、号令をかけた。
警備兵達も距離を取って矢の攻撃に切り替え、徐々に残る一体の耐久力を削りつつある。そこへルアンナとアウレーリアの火力が加われば、もうほとんど勝負あったも同然だ。
リーヴァーがツァガーンナルとは反対側、三体目の個体の背後へと廻り込み、長剣を振るい始めた。アルマがツァガーンナルの治療に入る間は、リーヴァーが回避盾として敵の攻撃を受け持つ。
その間にもルアンナの光弾とアウレーリアの火炎魔術は絶え間なく、残る一体の巨人の耐久力をひたすら削り続けた。
長期戦を望まないクライスとヌロブアも、一気呵成にそれぞれの攻撃を叩き込む。ふたりは巨人の上体を貫く一撃をタイミング良く撃ち込んでいった。
「あと、ひと息……!」
回復したツァガーンナルがリーヴァーに代わって、三体目の正面へと廻り込んだ。
残り一体となった巨人は、獰猛に吠えながら長腕を振り回す。が、その攻撃がツァガーンナルに届くことはなかった。
ルアンナとアウレーリア、それぞれが放った魔法攻撃が巨人の息の根を止めた。三体目の中型クリーパーは、既に斃された他の二体と同じく、轟音を響かせてその場に崩れ落ちた。
同時に、警備兵達の間から歓声が沸いた。
彼らだけでは絶望的ともいえた恐るべき強敵が、全て地に屈したのである。
辺境の片田舎で、然程に守りも厚くない駐屯所を突如襲った悪夢は、こうして退けられた。警備兵達が浮かべる笑顔は喜びというよりも、無事に生き残ることが出来たという安堵の色が強かった。
●意義深い邂逅
それからしばらくして、ベルクが引き返してきた。
幸い、同系の中型クリーパーはどこにも居なかった。途中、何体かの別系統の小型クリーパーと遭遇することはあったが、いずれもベルクの敵ではなかった。
ベルクが東門を抜けると、ポラスロー駐屯所の練兵場では負傷した警備兵達の応急手当が行われていた。
その一方でアルマが駐屯所の調理場を借り、持参した肉や干物に加えて駐屯所に備蓄してあった食材をも借りて、ちょっとした宴の準備を進めていた。
クライスと面識の無い冒険者はここで漸く、かつての草人狩りの中心人物と知己を得たことになる。
そして同時にクライス自身も、人馬の特異個体ヌロブアと改めて顔繋ぎが出来た、という訳だ。クライスも過去に人馬騒乱の報告書は目に通していたが、こうして特異個体と交友を深めるのは初めての経験だった。
「ねぇ団長サマ、こないだのカルケルーア・ロモズでの宴会の時、何かやらかしてなかった?」
先日行われたロモズ歩兵団での歓送会では、アルマは見事に酔い潰れてしまっていた。あの時、何か粗相をやらかしたのではという不安感が、頭の片隅に残っている。
リーヴァーは大丈夫だと笑いながら、同時に、団長サマ呼ばわりはもうやめてくれと重ねて懇願した。
「そうね、折角団長職なんて重責から解放されたんだもの……それでリーヴァー様、クライス様とご一緒で、このご時世にまさかぶらり旅、でもないでしょう? 南に何か、お心当たりでもおありなのかしら?」
アウレーリアに問われたリーヴァーは、クライスに視線を流した。今のリーヴァーは単にクライスのお供に過ぎないということが、この一瞬のやり取りですぐに理解出来た。
クライスは、隠す様なことでもないからということで、アウレーリアの疑問に答えた。
「幽界樹を斃す為のヒントを探して廻っている。俺はエスタルに出現した奴しか知らんからな。そこで実際に同種個体が現れたヴィントとダルトートを見て廻り、その出現現場から得られる物が無いかを探るつもりだ」
「それってつまり……幽界樹打倒の為の必殺紋具を考えてみようというお話ですか?」
ルアンナが身を乗り出して訊いた。
クライスは、そういう方向になるだろうなと否定はしなかった。
「例えば伐採を楽にしたり、それ以外の方法でやっつけようってことですよね?」
魔術師であるルアンナは興味津々だったが、クライスは静かにかぶりを振った。
「単に斃すだけなら、既にヴィントやダルトートで実績はある。打倒法は余り問題ではない。寧ろ厄介なのは、奴にどうやって近づくかという点だ」
クライスは暗に、幽界樹周辺に漂っている黒い霧を何とかしなければ話にならない、と語った。
今はその対策をどうするかに重点を置いて探っている最中だった。
「確かに……近寄れなければ、ひと太刀浴びせることも出来ませんしね」
接近戦が商売のツァガーンナルも、成程と頷き返す。
その時ベルクが、ヌロブアの紹介は済んだのかと問いかけてきた。
「エスタル奪還戦以前に生じた人馬騒乱の際に、我らに味方してくれた縁のある御仁だ。あの時、ヌロブア殿が急を知らせてくれなければ、ここは危なかった」
そうだったのか、とクライスは驚きの表情。
ヌロブアとクライスはここで改めて、お互いに尊敬し合う良き友となれそうな予感を抱いた。
シルトラース帝国東部街道を駆ける、五つの人影。
いずれも腕の覚えのある授恵者達である。
「この向こう側ですね……まず一体は、任せて下さい! 頑張って抑えます!」
先頭を走るハルハン・ツァガーンナルが、自身の身長よりも長いハルバードを小脇に抱える構えで叫んだ。
ポラスロー駐屯所は砦という程の規模は無いものの、高さ二メートルを超える木柵が周囲をぐるりと囲み、更には二階建ての詰所もある為、冒険者達から見て駐屯所の向こう側に居る三体の中型クリーパーは、すぐにはその姿を視界に捉えることが出来なかった。
しかし激しい戦闘音と警備兵達の叫び声は、よく聞こえる。戦場はもう、目と鼻の先だ。そして駐屯所東側の平地を迂回したところで、いきなり全長四メートル程の巨人が三体、足元の警備兵達を相手に大暴れしている姿が現れた。
「いきますよー! 空間爆砕ドカーンです!」
ツァガーンナルが手前の中型クリーパーに接敵するよりも早く、ルアンナ・ミュラーが術式発動の態勢に入った。敢えて大声で叫んだのは、巨人の足元で奮戦している友軍に知らせる為だ。
その中には幾つか、見知った顔もあった。
「大きいのが来るぞ、一旦退け」
「巻き込まれたら怪我どころじゃ済まないよ!」
元帝国魔導院エスタル支部長のクライス・アクバーと、元ロモズ歩兵団長のリーヴァー・シュランドルがほぼ同時に叫んだ。
ポラスロー駐屯所の責任者である帝国軍警備隊長グリウス・ラーケンはふたりの声を聞くや、すぐさま部下達に後退を指示する。
足元の敵が一斉に距離を取ったところで、三体の巨人型クリーパーは追撃には移らず、手近の構造物に対する破壊の為に長い腕を振り回し続けていた。
宣言通り、ルアンナの放った不可視の衝撃波が巨人共を大いにぐらつかせた。それでもすぐに倒れないのは、矢張り中型としての耐久力が為せる業か。
「先制パンチとしては上出来ね……後は一体ずつ、確実に仕留めていきましょう」
最も近い個体に炎の檻で足止めを仕掛けたアウレーリア・フォン・ネーベルベルク。身動きが出来なくなったところへ長い得物を携えたツァガーンナルが立ちはだかり、盾役としてその動きを封じた。
一方、最初に一発大きいのを叩き込んだルアンナは、別の個体に雷の槍を叩き込んで、こちらも同様に動きを封じた。
その足元に、驚異的な接敵能力を誇るベルク・オスマットが駆け込んでゆく。目にも止まらぬ三段連撃をお見舞いして、着実に巨人の機動力を潰した。
そこで漸く、見覚えのある顔が近くに居ることに気付いた。
「あれ? ヌロブア殿に、ロモズのリーヴァー元団長殿か……これはまた何ともいえない組み合わせだな」
「あの人馬さん、顔馴染み? んじゃ、後でゆっくり紹介してね」
ルアンナとベルクの攻撃で機動力を失った個体の正面に、リーヴァーが盾役として廻り込みながらベルクに軽く笑いかけた。ベルクは勿論と頷き返しつつ、残る一体の足元へと駆け込んでゆく。
「団長サマ、居たんだ」
前衛達のすぐ後ろに張り付く形で飛び込んできたアルマ・ヴァレンタインだが、リーヴァーはその呼び方はもうやめろと、長剣を振るいながら苦笑を返してきた。
アルマとしても、今は場合が場合だと積もる話は後回しにして、まずは仲間達のエーテルを劇的に向上させる術の発動に専念した。
今回駆け付けた冒険者達の中では、治癒師はアルマひとり。つまり、回復と防御支援は全てアルマの両肩にかかっているといって良い。ここで戦闘以外のことに意識を廻している余裕は無かった。
●一体目、撃破
「お前の相手はボクです! よそ見はさせませんよ!」
ルアンナとアウレーリアの強力な魔法攻撃を浴びて、後衛に長い腕を伸ばそうとしていた個体に対し、ツァガーンナルが猛然と吠えた。
もともと長身のツァガーンナルが、更に己の身長を超える長得物を振り回すことで、四メートル近い巨人の上半身付近にも近接攻撃が余裕で届く。その特性を活かした接近戦術は、強大な魔法攻撃を繰り出すルアンナとアウレーリアへの注意を逸らすには十分な威力を発揮した。
既にアウレーリアがこの個体の防御力を削ぎ落しており、ツァガーンナルの武器でも打撃が加えられる状態になっている。魔法攻撃との相乗効果もあり、冒険者達が最初に狙いを定めた個体は、早くも瀕死の呻きを漏らしていた。
その時、三体全ての下半身に連撃を叩き込んで機動力を損なわしめたベルクが後退してきた。どうしたのかとアウレーリアが問いかけると、ベルクは一旦戦域を離脱し、他に同様のクリーパーが徘徊していないかを確認してくる腹積もりだという。
「あの三体は北東方面から近づいてきたという話だった。クリーパーは同種同色同士で群れる習性があるから、仮に他にも居るとすれば、その方角を捜索し、近づかれる前に手を打つべきだろう」
「一理あるわね。街道沿いは結構お掃除した心算だけど、まだこういうのが徘徊してる以上、移住民を安全に送り届ける為には少しでも多くのクリーパーを駆除しておく必要があるから」
アウレーリアの賛同を得た上に、クライスやリーヴァーからも是非見て来いとのお墨付きを貰っていたベルクは、軽く頷き返してから足早に北東方面へと駆けていった。
結果として戦力をひとり欠いた格好となったが、強力な魔法攻撃術を誇るクライス、アウレーリア、ルアンナの三人に加えて、前衛としてはリーヴァーとツァガーンナル、治療と支援にアルマという面々が揃っている。
既に一体を仕留めつつある現状に於いては、ベルクの離脱は然程には痛くないだろう。
「私はそろそろ二体目……リーヴァーさんが抑えているあの個体に着手しますね!」
ツァガーンナルに呼びかけてから、ルアンナはリーヴァーの背後へと走った。二体目の個体はまだ然程の火力を浴びておらず、その耐久力は健在である。ここでルアンナの魔術が敵の防御力を削ぎ落とせば、盾役のリーヴァーでも前衛火力としての役割を果たすことが出来るだろう。
最後の三体目については駐屯地の警備兵とクライス、ヌロブアといった面々が対処に廻っている。ベルクが下半身に痛打を加えていた効果もあり、今や完全に包囲戦へと入っているから、こちらは今少し、時間的に猶予があると見て良さそうだった。
やがて一体目が、ツァガーンナルの接近戦による打撃とアウレーリアの強力な火炎魔術の前に屈した。その巨体が音を立てて崩れ落ち、動かぬ骸と化した。
アウレーリアはそのままリーヴァーとルアンナの支援に入るが、ツァガーンナルは少し治療が必要だ。
「オッケィオッケィ! すぐに治してあげるからね!」
アルマは強力な治癒師だ。日頃の言動はいささか奇天烈な方向に傾くこともあるが、治癒師としての技量は信頼出来る。
たちどころに、ツァガーンナルの負傷は癒えていった。
「団長サマの方は、放っておいても大丈夫みたいだね……ってことは、あっちの警備隊の皆さんが抑えている方に廻った方が良いかも」
「同感ですね。クライスさんとヌロブアさんが前衛に廻っているのも、余り宜しくありません。ボクが盾に入ります!」
アルマに頷き返してから、ツァガーンナルはハルバードと盾を構えた独特の姿勢で、三体目の正面へと駆け込んでいった。
それまでは魔力で防御を固めて盾役となっていたクライスと、機動力で敵の注意を引き付けていたヌロブアの二段構えで敵の攻撃を封じていたのだが、ツァガーンナルの参戦でこの両名とも、本来の極大火力に集中することが出来る様になる。
中型クリーパーは確かに手強い相手だが、この陣容ならば過度に恐れる必要も無いだろう。
●完全勝利
ツァガーンナルがクライスとヌロブアの為の盾役に入る一方、アウレーリアはルアンナと共にリーヴァーが抑えている個体への攻撃火力として参戦した。
「そういえば団長……じゃなかった、リーヴァー様が前で戦ってるのを見るのは、もしかしてこれが初めてじゃないかしら?」
ロモズ歩兵団時代のリーヴァーは専ら、後方で全体指揮を執ることが多かった。アウレーリア自身も、リーヴァーが敵の攻撃の矢面に立っている姿を見た記憶が無い。
「へぇ、そうなんですね……あんなに細身で盾役というのも、凄い話ですけど」
ルアンナの目から見ても、リーヴァーは着飾れば立派な貴族令嬢だ。それが巨人の目の前で高い機動力を発揮し、その注意を引き付け続けている。同じ盾役でも物理的な防御力で耐えるのではなく、機動戦術で回避しながら敵を引き付けるタイプなのだろう。
であれば、敵の認知能力、即ち視界への攻撃がリーヴァーの助けになると踏んだアウレーリアは、その頭部付近に魔術や閃光塗弾を叩き込む戦術に出た。
その発想は、功を奏した。件の巨人は相変わらずリーヴァーにのみ攻撃の手を加えようとしているが、アウレーリアの術に陥り、その命中率は極端に落ちている。
回避盾タイプのリーヴァーには、アウレーリアのこの支援は非常に理に適っていた。
と、そこへヌロブアの強烈な矢が背後から襲い掛かってきた。ツァガーンナルが盾役となって三体目の面倒を見る様になった為、ヌロブアは攻撃に専念出来る様になった訳だが、彼の矢を射る手の速さは脅威的で、三体目のみならず、リーヴァーが抑えている二体目に対しても容赦無く攻撃を叩き込んで来る。
そこにルアンナとアウレーリアが、畳みかける様に攻撃魔法を集中させた。
アウレーリアの紅蓮の炎と、ルアンナの巨岩弾の炸裂、そしてヌロブアの一撃必殺に近い威力の矢が次々と襲い掛かり、二体目の巨人も轟音を響かせてその場に崩れ落ちた。
これで残るは一体。
戦闘終結の目処は、大方のところで立ったといって良い。
「さぁ、あと一体だよぉ! 気合入れていこー!」
ツァガーンナルを治癒術で支援し続けていたアルマが、号令をかけた。
警備兵達も距離を取って矢の攻撃に切り替え、徐々に残る一体の耐久力を削りつつある。そこへルアンナとアウレーリアの火力が加われば、もうほとんど勝負あったも同然だ。
リーヴァーがツァガーンナルとは反対側、三体目の個体の背後へと廻り込み、長剣を振るい始めた。アルマがツァガーンナルの治療に入る間は、リーヴァーが回避盾として敵の攻撃を受け持つ。
その間にもルアンナの光弾とアウレーリアの火炎魔術は絶え間なく、残る一体の巨人の耐久力をひたすら削り続けた。
長期戦を望まないクライスとヌロブアも、一気呵成にそれぞれの攻撃を叩き込む。ふたりは巨人の上体を貫く一撃をタイミング良く撃ち込んでいった。
「あと、ひと息……!」
回復したツァガーンナルがリーヴァーに代わって、三体目の正面へと廻り込んだ。
残り一体となった巨人は、獰猛に吠えながら長腕を振り回す。が、その攻撃がツァガーンナルに届くことはなかった。
ルアンナとアウレーリア、それぞれが放った魔法攻撃が巨人の息の根を止めた。三体目の中型クリーパーは、既に斃された他の二体と同じく、轟音を響かせてその場に崩れ落ちた。
同時に、警備兵達の間から歓声が沸いた。
彼らだけでは絶望的ともいえた恐るべき強敵が、全て地に屈したのである。
辺境の片田舎で、然程に守りも厚くない駐屯所を突如襲った悪夢は、こうして退けられた。警備兵達が浮かべる笑顔は喜びというよりも、無事に生き残ることが出来たという安堵の色が強かった。
●意義深い邂逅
それからしばらくして、ベルクが引き返してきた。
幸い、同系の中型クリーパーはどこにも居なかった。途中、何体かの別系統の小型クリーパーと遭遇することはあったが、いずれもベルクの敵ではなかった。
ベルクが東門を抜けると、ポラスロー駐屯所の練兵場では負傷した警備兵達の応急手当が行われていた。
その一方でアルマが駐屯所の調理場を借り、持参した肉や干物に加えて駐屯所に備蓄してあった食材をも借りて、ちょっとした宴の準備を進めていた。
クライスと面識の無い冒険者はここで漸く、かつての草人狩りの中心人物と知己を得たことになる。
そして同時にクライス自身も、人馬の特異個体ヌロブアと改めて顔繋ぎが出来た、という訳だ。クライスも過去に人馬騒乱の報告書は目に通していたが、こうして特異個体と交友を深めるのは初めての経験だった。
「ねぇ団長サマ、こないだのカルケルーア・ロモズでの宴会の時、何かやらかしてなかった?」
先日行われたロモズ歩兵団での歓送会では、アルマは見事に酔い潰れてしまっていた。あの時、何か粗相をやらかしたのではという不安感が、頭の片隅に残っている。
リーヴァーは大丈夫だと笑いながら、同時に、団長サマ呼ばわりはもうやめてくれと重ねて懇願した。
「そうね、折角団長職なんて重責から解放されたんだもの……それでリーヴァー様、クライス様とご一緒で、このご時世にまさかぶらり旅、でもないでしょう? 南に何か、お心当たりでもおありなのかしら?」
アウレーリアに問われたリーヴァーは、クライスに視線を流した。今のリーヴァーは単にクライスのお供に過ぎないということが、この一瞬のやり取りですぐに理解出来た。
クライスは、隠す様なことでもないからということで、アウレーリアの疑問に答えた。
「幽界樹を斃す為のヒントを探して廻っている。俺はエスタルに出現した奴しか知らんからな。そこで実際に同種個体が現れたヴィントとダルトートを見て廻り、その出現現場から得られる物が無いかを探るつもりだ」
「それってつまり……幽界樹打倒の為の必殺紋具を考えてみようというお話ですか?」
ルアンナが身を乗り出して訊いた。
クライスは、そういう方向になるだろうなと否定はしなかった。
「例えば伐採を楽にしたり、それ以外の方法でやっつけようってことですよね?」
魔術師であるルアンナは興味津々だったが、クライスは静かにかぶりを振った。
「単に斃すだけなら、既にヴィントやダルトートで実績はある。打倒法は余り問題ではない。寧ろ厄介なのは、奴にどうやって近づくかという点だ」
クライスは暗に、幽界樹周辺に漂っている黒い霧を何とかしなければ話にならない、と語った。
今はその対策をどうするかに重点を置いて探っている最中だった。
「確かに……近寄れなければ、ひと太刀浴びせることも出来ませんしね」
接近戦が商売のツァガーンナルも、成程と頷き返す。
その時ベルクが、ヌロブアの紹介は済んだのかと問いかけてきた。
「エスタル奪還戦以前に生じた人馬騒乱の際に、我らに味方してくれた縁のある御仁だ。あの時、ヌロブア殿が急を知らせてくれなければ、ここは危なかった」
そうだったのか、とクライスは驚きの表情。
ヌロブアとクライスはここで改めて、お互いに尊敬し合う良き友となれそうな予感を抱いた。
マスターコメント
皆様、お疲れ様でございました。
中型クリーパーは全て無事に討伐出来ました。
そして何よりクライスとヌロブアが、お互いに戦友として認め合うことが出来たのが、今後非常に重要な意味を持ってきます。その場に居合わせた皆様は、もしかしたらとても意義深いものを目撃したことになるのかも知れません。
さて、次回は別の敵が少し絡んできます。今後もお付き合い頂けますと幸いです。
ショートシナリオ普通 報酬:標準5 / 4〜5人
2022年07月30日 17時18分58秒 公開
大成功
相談掲示板
ウォーリア、ハルハン・ツァガーンナルです!よろしくお願いします!
キャスターのルアンナです。 さーて、派手にやりますかー!
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 新特性のお試し予定だよー
キャスター、アウレーリアです。宜しく。 魔法が効きやすそうだから、火力でぶっ飛ばしていきましょう。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 私も新特性の試し台にするとしようか。
出発間近ですね。 動きとしては、クライス・アクバーとヌロブア、両名に一体ずつ任せて、ボク達で残る一体、でしょうか ひとまず、ボクは一体はシーザーロアで引き付けて、後衛に向かわせないよう頑張ります!