【剣娘】果し合いのその前に
紀藤トキ
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シナリオID:2295
オープニング
エドゥノーグの街に滞在しているホムンクルスのマリアは、日課の訓練を終えた後、むふーッと、鼻息を漏らした。表情こそ変わっていないが、満足げな様子がわかったのか顔見知りの探索支援ギルドの係官が声を掛ける。
「どうした? 御機嫌じゃないか、お嬢ちゃん」
「うん。鍛錬が、成った。たぶん」
彼女の中にある記憶、マリア自身が『前の自分』と呼ぶ少女が生前の十数年、脳内で繰り広げていたイメージトレーニングと、その姉が動いて見せていた動作の記憶に、自分の動きが追いついたらしい。『前の自分』がブランにこれなら勝てると判断するラインを超えた、ということでもあった。いつもならば鍛錬の後に迷宮へ向かう事もあるのだが、マリアは少し迷ってから今日は自分を甘やかすことにした。つまり、サボリである。
「何、しようかな。美味しい物を食べに行く。服を選ぶ。石を磨く。日向ぼっこ。あと、何があるかな……?」
修行の合間に冒険者かつ人生の先輩たちに色々と聞いた、やりたい事を指折り数えてみる。マリア自身、ブランに負けるつもりは無いのだが、どれも負けたら二度と楽しめない現世の楽しみである。それに美味しい物と一口に言っても、甘い物から滋養になる物、珍しい物と多岐にわたる事を最近の彼女は知っていた。服も色々あるのだろうし、磨かねばならない石は幾つもあるし、日向ぼっこはどこでやっても良い。となると、時間はいくらあっても足りず、うかうか死んでもいられないだろう。
「……だから『前の自分』のお願いは、半分しか聞かない。ごめんね」
そう口に出すと、頭の中で不快な記憶が暴れ出した。死にたい。消えたい。もう嫌だ。許せない。溢れる負の感情を、マリアは表には出さず噛み殺す。
実の所。ホムンクルスであるマリアは二つの依頼に従って動いていた。ブランの指示は、『剣の腕で彼を超える事』だ。最初に『貴方を殺せばいいという事か』と聞いたのはマリアで、頷いたのはブランである。もう1つは、『前の自分』からの『恨みを晴らして死にたい』という願い。両方解決するには、ブランを殺した後で自ら死ねばいい。そう考えていたマリアに、冒険者達が色々な楽しい事を教え込んだ。その結果、死にたくなくなったマリアは、『前の自分』へのせめてもの義理として、彼女のブランへの恨みは晴らそうと思っている。
「うん。ちゃんとブランは嫌な思いをするよ。『前の自分』も納得する、ようにする」
そう言えば、内心の大波は少し収まった。もうすぐ、全てが解決する。そうしたら、その後は何をしようか。
「……それより先に、今日は何しよう?」
主体性の薄い彼女がじっくり考えた結果。エドゥノーグの探索支援ギルドの併設酒場で、費用彼女持ちの宴会をやろうと思いついたのがその日の昼。果たして、どれほどの人が集まるのか。費用は出すにせよ準備はできるのか。その辺は全くノープランのホムンクルスは、(宴会の準備とはダンジョンに材料を取りに行く事かな)などと考えていた。
「どうした? 御機嫌じゃないか、お嬢ちゃん」
「うん。鍛錬が、成った。たぶん」
彼女の中にある記憶、マリア自身が『前の自分』と呼ぶ少女が生前の十数年、脳内で繰り広げていたイメージトレーニングと、その姉が動いて見せていた動作の記憶に、自分の動きが追いついたらしい。『前の自分』がブランにこれなら勝てると判断するラインを超えた、ということでもあった。いつもならば鍛錬の後に迷宮へ向かう事もあるのだが、マリアは少し迷ってから今日は自分を甘やかすことにした。つまり、サボリである。
「何、しようかな。美味しい物を食べに行く。服を選ぶ。石を磨く。日向ぼっこ。あと、何があるかな……?」
修行の合間に冒険者かつ人生の先輩たちに色々と聞いた、やりたい事を指折り数えてみる。マリア自身、ブランに負けるつもりは無いのだが、どれも負けたら二度と楽しめない現世の楽しみである。それに美味しい物と一口に言っても、甘い物から滋養になる物、珍しい物と多岐にわたる事を最近の彼女は知っていた。服も色々あるのだろうし、磨かねばならない石は幾つもあるし、日向ぼっこはどこでやっても良い。となると、時間はいくらあっても足りず、うかうか死んでもいられないだろう。
「……だから『前の自分』のお願いは、半分しか聞かない。ごめんね」
そう口に出すと、頭の中で不快な記憶が暴れ出した。死にたい。消えたい。もう嫌だ。許せない。溢れる負の感情を、マリアは表には出さず噛み殺す。
実の所。ホムンクルスであるマリアは二つの依頼に従って動いていた。ブランの指示は、『剣の腕で彼を超える事』だ。最初に『貴方を殺せばいいという事か』と聞いたのはマリアで、頷いたのはブランである。もう1つは、『前の自分』からの『恨みを晴らして死にたい』という願い。両方解決するには、ブランを殺した後で自ら死ねばいい。そう考えていたマリアに、冒険者達が色々な楽しい事を教え込んだ。その結果、死にたくなくなったマリアは、『前の自分』へのせめてもの義理として、彼女のブランへの恨みは晴らそうと思っている。
「うん。ちゃんとブランは嫌な思いをするよ。『前の自分』も納得する、ようにする」
そう言えば、内心の大波は少し収まった。もうすぐ、全てが解決する。そうしたら、その後は何をしようか。
「……それより先に、今日は何しよう?」
主体性の薄い彼女がじっくり考えた結果。エドゥノーグの探索支援ギルドの併設酒場で、費用彼女持ちの宴会をやろうと思いついたのがその日の昼。果たして、どれほどの人が集まるのか。費用は出すにせよ準備はできるのか。その辺は全くノープランのホムンクルスは、(宴会の準備とはダンジョンに材料を取りに行く事かな)などと考えていた。
解説
エフィミアがエスタルで仕事をしている間に、被保護者のマリアは遊びたいようです。
夕刻に宴会をするのは確定ですが、別に酒とつまみが主体でなくともお菓子が並んでも問題ないです。
下記より、前半と後半に最大1つづつの番号を選んでくださると私が楽です。
■前半
マリアが事前準備をするのを手伝います。
といっても基本的な宴会準備は酒場の人がやってくれますので、誰も準備せずとも問題は無いです。
マリアはどれか一つについていきますが、基本的には大勢に呼ばれた所へ行きます。
1:迷宮飯(材料)
何か食べ物を迷宮で取って来たい場合は、「どんなものを取って来るか」を指定してください。
それを所持していそうな敵を設定したうえで、取って来れたか結果を難易度判定します。戦闘描写はしません。
入手手段のプレイングは、誰かに譲って貰ったり、売ってるのを買うとかでも良く、それ相応に判定します。
欲しい食べ物は『何か甘酸っぱくてキラキラ光る奴』位の適当さでもいいですが、その場合は探索支援ギルドで調査する事になるでしょう。
2:買い物
お菓子を買ったり、酒を買ったり、迷宮で得られない物を手に入れてくる選択肢です
マリアを着せ替えたい方はこちら。買う時について行かない場合は、宴会の前に着替えます。
特に入手で難しい判定などは無いですが、滅茶苦茶珍しそうなものとかは判定するかもしれません。
3:その他
それ以外の何か。
■後半
1:飲む食う
宴会なので当然の行動です。なお、はしゃぎ過ぎて酒場に迷惑をかけた場合は成功度が落ちます。
全席貸しきりで来るもの拒まずなので、冒険者や職員も一緒に呑んでいる事でしょう。
たまにエフィミアがそういうことをやるので、現地の人は慣れています。
2:作る
なんか厨房でつまみなど作りたい場合はこちら。前半で取ってきたものなどを利用しても良いです。
3:その他
それ以外の何か。
もしも番号を選んでなくとも、プレイングを読んで割り振る感じで描写いたします。
マスターより
【剣娘】タグはこの次のシナリオではマリアはブランと決闘します。
場合によってはマリアが出てくるこれが最後のシナリオに成る……筈だったのですが、ここまでの流れでマリアが負けて死ぬ可能性はほとんどなくなりました。
このシナリオで何かすれば負ける可能性がちょろっとあがることはありますが、ひっくり返ることは多分無いでしょう。
なので、殺し合いの事前シナリオとしてはだいぶ暢気なお話です。
これまで彼女の面倒を見て頂いた方も、なんかふらっと酒場に来たら宴会だったという人も、のんびり楽しんでいってくださいませ。
リプレイ
唐突なマリアの思い付きに応じて集まった冒険者達は6名。そのうち3名は食材を探しにダンジョンへ向かうようだ。
「宴って言ったら肉だよなあ? 今から行って帰ってこれる所ってあんのかねえ?」
「せっかくだから、ボクは何か珍しい物を取ってこようかな。取るのが難しい奴とか、鮮度が大事な奴とか」
ナハシュとアルマ・ヴァレンタインがさっそくギルドの職員に質問を投げている。往復で午後一杯となるといかに授恵者の健脚でも上層が限界だ。
「んー、他と被るのも面白くないし。それなら植物系かねぇ……」
鍛冶師でもあるサイラスが実益を兼ねるなら金属が取れる場所なのだが、浅い場所だと金属ゴーレムは滅多にいない。採掘で採れるのも屑石がほとんどである。ナハシュが肉類、アルマは新鮮な水棲生物を狙うようで、食卓の彩を増やすならば野菜か。
「今日は、ご協力ありがとう、ございます」
「ううん。マリアさんも人並み? にやりたい事が出てきてて、なんだか嬉しくなるねー」
「あれだな、なんか普通の奴っぽくなった。前はもっと辛気臭いツラしてたよな」
「うん。最初に会ったときと比べて余裕っていうか、程よく力がぬけたのを感じる!」
依頼人のマリアが挨拶に来ると、アルマとナハシュも気さくに応じる。あまり顔の表情が変わらないのはともかく、内面の表情はずいぶんと豊かになったと、リディリディ・トゥラ・イェレミースは安堵していた。ナハシュの言を借りれば、辛気臭い顔をしていた頃のマリアは死に呼ばれていそうに見えていたが。
(……いえ、そもそも私が心配しなくても、きっと彼女は生き続けるという選択を選んだことでしょう)
と、マリアと言葉を交わす面々、見守る面々を見て納得する。
「今日は楽しく過ごしましょうね! 実は楽しみすぎてあまり寝ていないのですが!」
「楽しみだと、眠れない? ……少し、わかる」
マリアとは名前が似ている故、最初から親近感の強かったマリイ・パルティス。街中へのお出かけは前から楽しみだったようで、随分前のめりである。
「服とか買いに行くんだってね。俺は荷物持ちで付いていこうかな」
「私も、お酒など見てから途中で合流しようと思います。お店はどちらへ行くのですか?」
「はい! 可愛い服のお店は外せないと思います!」
ヨル・スレイマンはマリアが自分で決めた事であれば、是非をつたえようとは思わない。戦いに向けた姿勢も、その前に気分転換をしようという考えもなるがままにと考えている。リディリディはせっかくなのでギルド併設の酒屋には無いような質の良いお酒を買い足すつもりだ。美味しい物を食べて飲めば、彼女と同じようにマリアも楽しい時を過ごせる筈。そんな何気ない楽しみこそが生きる力や動機となると、リディリディは思う。そんな周囲と言葉を交わしていたマリアは、隅で地図とにらめっこしていたサイラスへふと目を留めた、
「……疲れてる? 平気?」
「あ゛ん?」
初対面で怖がられたと思っているサイラスは、一歩引いた所で関わらないようにしていたのだが、マリアの側から寄って来た。彼女にとってせいぜい怖い、悍ましい存在であろうと睨みつけるも、あまり効果は無いようだ。
「怖いって言ってたくせに寄って来るの何なの」
「怖い? 別に怖くない、けど」
マリアが恐れているのはどちらかといえば死や痛みといった概念で、人に対する恐怖はない。宝石を抉る話をしていたナハシュにさえも、会話の中身にこそ怯えはしたものの、後に引きずっている様子は無かった。大柄なサイラスが近づいて来た際に驚きはしたが、すぐに見た目ほどの脅威ではないと安堵していたという。それはそれで失礼な話ではあった。
(んー。……今更、勘違いでしたって言われても? こっちはそのつもりだったしなあ)
「私は、ご飯を取りに行ってくれるのにお礼。ありがとう」
マリアは礼を述べたかっただけらしく、微妙な顔のサイラスを残して去っていく。
●
リブラネスタには及ばないかもしれないが、エドゥノーグにも探索者向けのちょっとした贅沢やお洒落の店は多い。リディリディを質の面で満足させる程には良い酒も揃っていた。量についてはドワーフ王国に頑張って貰おう。
お昼過ぎで小腹も空いていたマリイのお誘いでマリアは、服飾店へ行く前に屋台広場に寄っていた。
「屋台のご飯は美味しかったですか? 夜の事もありますし、お腹も八分目くらいにしておきましょうか」
「うん。でもデザートは別腹だって、エフィミアが言ってたから」
「エルフが皆そうと言う訳ではありませんけれど、あの人はそうなのですね」
最後にもう一品、食べようか悩んでいたところでリディリディが合流する。甘味にそこまで惹かれない彼女が気の無い返事を返す間に、ヨルもぶらぶらと戻って来た。服を買いに行くまで荷物持ちは要らないだろうと、アクセサリを見に行っていたらしい。
「欲しい物、と言っても特にないようだったからね。俺が選んだのだけど、どうかな?」
「ありがとう?」
受け取ったものの、武骨な戦闘用アクセサリと違ってつけ方がわからないらしく、マリイが後ろに回って髪を纏める。
「髪の色が深い青だから、海の青が合うかと思った」
「マリアさんの髪は長くて綺麗な青色ですし、服も白色か、薄めの色にすると映えそうですね」
「淡い系統でまとめて白のフリルとか、可愛い感じの服も良くないですか?」
ヨルの言葉に、マリアの髪へ目を向けていたリディリディが頷いた。マリイも自分の好みを取り混ぜつつ、そう意見を言う。当人は髪の色が服選びに関係がある事もピンと来ていないようだが。ピンと来ていないといえば、歳の差はあれ異性からの贈り物という事もまだ意識していないのだろう。
「もうすぐ暑くなるからね。そしたら海水浴に行ってみるのもいいかもしれない。夏の海の青はとても綺麗だ」
「夏で色が違うの? 私の髪は、海の色? 空の色?」
ヨルにそう言われてこてんと首を傾げる。そもそも、マリアの良く知る海の景色はヴィントダンジョンなので、普通の海とは言い難い。それでも、後で見たい景色が彼女に出来ればいいと、ヨルは思った。
「さて、この後は服も買うんだろ。折角だ、うんとお洒落をするといい」
金の瞳に青の髪。偶然ながら、リディリディの髪と瞳の互い違いである。ならば淡い緑なども似合うのかもしれない。真っ白というのもそれはそれで。などと店員も交えた女性陣が姦しい。並んでいない服が奥にあるのも、同業のマリイからすれば当然なので良さそうな物を出してもらう。
「私は可愛いのが好きですが、シンプルなのも良いですね! 長く着れるので間違いないです」
「自分の服を選ぶのは苦手ですが、他の人のを選ぶのは存外楽しいですね」
アレコレ選び、時に着せ替えながらマリイとリディリディが楽しげに言う。荷物持ちでついてきたヨルは、リディリディの酒も預かっていた。2人に振り回されるかと思ったマリアが、マリイに促されて時折自分の意見を口にしているのを見て目元が緩む。
「今日は、荷物を持ってくれてありがとう。あと、2人は色々服を選んでくれて、ありがとう」
女性としてはまだまだ少ない位です、とマリイは言っていたが一回で買う量としては十分多い。マリアは薄青の涼し気なワンピースに着替え、その前まで着ていた装備だけを持っている。つまり残りは全てヨルが持たされていた。
「いや。戦士はそれくらい利己的であるほうがいいと思う。今のマリア君はとても綺麗だ。胸を張っておいで」
「次に来る時は私の服も選んでくれると嬉しいです」
「あ、私も選んでみて欲しいですね。ぜひ!」
リディリディとマリイへは、死んでしまえば果たせるか分からないけど、と律儀に断ってからマリアは頷く。少女にまた一つ、先を望む約束が増えた。
●
迷宮へ向かった3人は、速度優先で狩場へと向かう。肉を狙ったナハシュは随分前に訪れた迷宮チキンの階層へ。この季節にはチキンはいないが、雌鶏は見つかった。味も悪くないし数もいる良い狩り場ではある。
「いける範囲ではこいつらがおススメって言われたけど、ホントかねえ」
あとは蛙。面白い味のする変種の蛙の話もちょっと惹かれたのだが、夜までに獲れるか微妙らしい。ついでに道中でキノコを拾ったり、樹の実を拾ったり、俊足を活かして採集に余念がない。
「エビ……? カニ……?」
アルマもマジカルポケットを活かそうと、鮮度が重要な魔獣の情報を聞いていた。狙うは彼女と同じくらいのサイズの甲殻類だ。見た目はエビっぽいのだが、左右にステップするし泡を吐く。
「この泡が美味しいとか、変だよねー?」
泡を吹かせてさっとボウルで回収。家事道具の中にあった物なのでそこまで大きくはないが、調理法も聞いてきたのでそれで足りるだろうと予測もつく。
「あ、むしろここでソースにして、それを持って行った方が良かったりして」
殴る→泡を吹く→回収して逃げる→調理して保存、最初に戻る。災難なループが三周くらいで魔獣は力尽きた。仮称カニエビの身も貴重な食材故、抱えて大急ぎで戻る。
「あー、噛みついて来るキャベツって動物なん? 植物なん?」
分類の難しさはともかく、サイラスは一面のキャベツ畑っぽいフィールドで奮闘していた。このキャベツ、成熟すると鋭い刃で噛みついて来るのだが、完熟の直前が一番野菜として美味しいらしい。調理人としての目で食材を見わけつつ、旨い奴は丁寧に収穫し、敵は無慈悲に殺戮する。たまに足元から殺人ウサギが不意打ちを仕掛けてくるのも返り討ちだ。
「……こいつら、ちょっとカッコ悪くない? まあ、使いどころはあるかもだけど」
自分のスキルの幻影に活かそうと考えてみる。キャベツ魔獣で相手を攻撃するのは、嫌がらせにはなるだろうか。ウサギの見た目は子供受けしそうな愛らしさだが、再現できるのは攻撃だけなのが難しい所だ。キャベツ畑の次のフロアはキュウリやトマトの畑らしい。
「時間までにどれだけ採れるかねえ」
ここも、どちらかと言えば速度と時間の勝負となっていた。
●
かくて、宴の時が来る。幾人かは調理人として厨房へ向かい、自分で作るより食べさせてもらう派のリディリディとナハシュはお洒落着マリアと共にテーブルへ。普段彼女が世話になっている職員やら、知り合った冒険者が三々五々集まりだし、たまたま居合わせてラッキーな者も店内を覗き込む。
「揚げ物とか焼き物とか、野菜と肉とで適当に作ってるから、取っていくなり食べていくなりご自由に」
「カニ? エビ? みたいなのとお肉の串揚げ、泡のソースで召し上がれ」
カロリーと栄養豊富そうな料理をサイラスとアルマが並べ出し、酒場の料理人もあれこれ作り始めた。
「買い物や他の奴と合わせたらだいぶ豪華になってるんじゃねえか? 飯が派手なのは好きだぜ!!」
「俺もテールスープを仕込んできたから、後で振舞うよ」
「お、あれか。いいねえ」
ヨルの言葉に、ナハシュがにかっと笑う。互いに火酒を注ぎあい、周りの面々へも遠慮なく飲むよう声を掛けた。
「さっき、屋台では食べられませんでしたからね。デザートも楽しみにしていてくださいね?」
「あ、マリイさん、お酒注ぐね!」
下準備を一段落させたマリイが卓へついたところへ、アルマが火酒を注いでゆく。なお、主催のマリアは飲める年齢では無かったらしい。リディリディは手酌でワインを注いでいる。
「それじゃああらためてー……マリアさん宴会開いてくれてどうもありがとー!」
「準備を手伝ってくれて、ありがとう」
コク、と頷くマリアは自分が音頭を取らねば始まらないと気付いた様子は無い。そんなことだろうと思ってアルマがそのまま乾杯の合図を出し、もぐもぐタイムが始まった。
「うんうん、新しい服もすっごくよく似合ってるよ!」
「そうですね。他の服もお似合いでしたよ」
「単色も良いのですが、色々使った服も素敵でしたね」
アルマの誉め言葉に、いま着ている以外にもまだあるのだとリディリディとマリイが応える。今日はヨルが贈った髪飾りにあわせて青のコンセプトで揃えたのだそうだ。
「んじゃあ、俺は厨房戻ってワイン煮でも作って来るわ」
「ん。ありがとう。これも美味しい」
「あー。それは敵に勝つって言って、語呂合わせで縁起がいい奴な」
引っ込もうとするサイラスへ、一品づつ味わっていたマリアが礼を言う。いい素材でもあれば鍛冶をしても良いと思っていたサイラスだが、さすがにギルドの脇でとんかんする訳にもいかない。もしも意中の素材が出ていたら、一度宿に引き上げねばならず時間的に料理までは手が回らなかっただろうか。
「どれも、美味しい」
「宴会、楽しめているようで、何よりですね」
リディリディほど大食漢ではないが食いしん坊ではあるようで、マリアはたくさんあるメニューの制覇に余念がない。今はヨルのテールスープを味わっていた。好みはあれど、食べれない物は無いタイプのようだ。
(今日という日を楽しめたことは、きっと力になると思います)
とリディリディが考えている横で、マリイが意を決した様子でマリアへ話しかけていた。
「マリアさんが良ければ、私と友人になってもらえないでしょうか」
「友人。友達? リディリディの言っていた、繋がり。うん、私は良いよ」
悩むまでも無く頷く辺り、『自分が死んでしまった後』を気にしていたあの時とは、心持が違うらしい。やはり前向きになれたようだと聞いていたリディリディは思う。
「はい、答えはすぐじゃなく……っていいんですか! じゃあ、じゃあ、もう一度ぎゅーっとしても良いですか?」
「うん……。むぎゅう」
想定していた返事と違ったマリイは随分はしゃいだ様子だった。彼女を抱きしめると安心するというマリイに身を委ねつつ、マリアは決闘の先を思う。僅かに漏れた戦意に気づいたのか、ナハシュが声を掛けた。
「なあ、こいつはブランとやって勝つ前祝いなんだろ? 買った後にまた戦勝祝いとかするのか?」
「戦って勝つ、前とか後にお祝いするの?」
「するする。なあ?」
「剣闘士は戦う前に御馳走で適度に腹を満たす。そして次もまた生を謳歌しようという英気を養う」
ナハシュに話を振られて、ヨルは過去を思い出しつつそう応じた。マリアの勝利を信じ望んではいるが、勝負は終わるまで分からない。それはアルマやマリイも同じで、だから誰も勝てとは言わない。生きて帰れとも、直接は言わない。
「ブランさんとの果たし合いがんばってねー!」
「貴女はきっと大丈夫……どうか、心のままに」
「ん。わかった」
コクリ、と頷くマリア。色々と準備は整った。……のだが、ここからさらに待たされるとは、この時の彼女は思いもしていなかったのである。
「宴って言ったら肉だよなあ? 今から行って帰ってこれる所ってあんのかねえ?」
「せっかくだから、ボクは何か珍しい物を取ってこようかな。取るのが難しい奴とか、鮮度が大事な奴とか」
ナハシュとアルマ・ヴァレンタインがさっそくギルドの職員に質問を投げている。往復で午後一杯となるといかに授恵者の健脚でも上層が限界だ。
「んー、他と被るのも面白くないし。それなら植物系かねぇ……」
鍛冶師でもあるサイラスが実益を兼ねるなら金属が取れる場所なのだが、浅い場所だと金属ゴーレムは滅多にいない。採掘で採れるのも屑石がほとんどである。ナハシュが肉類、アルマは新鮮な水棲生物を狙うようで、食卓の彩を増やすならば野菜か。
「今日は、ご協力ありがとう、ございます」
「ううん。マリアさんも人並み? にやりたい事が出てきてて、なんだか嬉しくなるねー」
「あれだな、なんか普通の奴っぽくなった。前はもっと辛気臭いツラしてたよな」
「うん。最初に会ったときと比べて余裕っていうか、程よく力がぬけたのを感じる!」
依頼人のマリアが挨拶に来ると、アルマとナハシュも気さくに応じる。あまり顔の表情が変わらないのはともかく、内面の表情はずいぶんと豊かになったと、リディリディ・トゥラ・イェレミースは安堵していた。ナハシュの言を借りれば、辛気臭い顔をしていた頃のマリアは死に呼ばれていそうに見えていたが。
(……いえ、そもそも私が心配しなくても、きっと彼女は生き続けるという選択を選んだことでしょう)
と、マリアと言葉を交わす面々、見守る面々を見て納得する。
「今日は楽しく過ごしましょうね! 実は楽しみすぎてあまり寝ていないのですが!」
「楽しみだと、眠れない? ……少し、わかる」
マリアとは名前が似ている故、最初から親近感の強かったマリイ・パルティス。街中へのお出かけは前から楽しみだったようで、随分前のめりである。
「服とか買いに行くんだってね。俺は荷物持ちで付いていこうかな」
「私も、お酒など見てから途中で合流しようと思います。お店はどちらへ行くのですか?」
「はい! 可愛い服のお店は外せないと思います!」
ヨル・スレイマンはマリアが自分で決めた事であれば、是非をつたえようとは思わない。戦いに向けた姿勢も、その前に気分転換をしようという考えもなるがままにと考えている。リディリディはせっかくなのでギルド併設の酒屋には無いような質の良いお酒を買い足すつもりだ。美味しい物を食べて飲めば、彼女と同じようにマリアも楽しい時を過ごせる筈。そんな何気ない楽しみこそが生きる力や動機となると、リディリディは思う。そんな周囲と言葉を交わしていたマリアは、隅で地図とにらめっこしていたサイラスへふと目を留めた、
「……疲れてる? 平気?」
「あ゛ん?」
初対面で怖がられたと思っているサイラスは、一歩引いた所で関わらないようにしていたのだが、マリアの側から寄って来た。彼女にとってせいぜい怖い、悍ましい存在であろうと睨みつけるも、あまり効果は無いようだ。
「怖いって言ってたくせに寄って来るの何なの」
「怖い? 別に怖くない、けど」
マリアが恐れているのはどちらかといえば死や痛みといった概念で、人に対する恐怖はない。宝石を抉る話をしていたナハシュにさえも、会話の中身にこそ怯えはしたものの、後に引きずっている様子は無かった。大柄なサイラスが近づいて来た際に驚きはしたが、すぐに見た目ほどの脅威ではないと安堵していたという。それはそれで失礼な話ではあった。
(んー。……今更、勘違いでしたって言われても? こっちはそのつもりだったしなあ)
「私は、ご飯を取りに行ってくれるのにお礼。ありがとう」
マリアは礼を述べたかっただけらしく、微妙な顔のサイラスを残して去っていく。
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リブラネスタには及ばないかもしれないが、エドゥノーグにも探索者向けのちょっとした贅沢やお洒落の店は多い。リディリディを質の面で満足させる程には良い酒も揃っていた。量についてはドワーフ王国に頑張って貰おう。
お昼過ぎで小腹も空いていたマリイのお誘いでマリアは、服飾店へ行く前に屋台広場に寄っていた。
「屋台のご飯は美味しかったですか? 夜の事もありますし、お腹も八分目くらいにしておきましょうか」
「うん。でもデザートは別腹だって、エフィミアが言ってたから」
「エルフが皆そうと言う訳ではありませんけれど、あの人はそうなのですね」
最後にもう一品、食べようか悩んでいたところでリディリディが合流する。甘味にそこまで惹かれない彼女が気の無い返事を返す間に、ヨルもぶらぶらと戻って来た。服を買いに行くまで荷物持ちは要らないだろうと、アクセサリを見に行っていたらしい。
「欲しい物、と言っても特にないようだったからね。俺が選んだのだけど、どうかな?」
「ありがとう?」
受け取ったものの、武骨な戦闘用アクセサリと違ってつけ方がわからないらしく、マリイが後ろに回って髪を纏める。
「髪の色が深い青だから、海の青が合うかと思った」
「マリアさんの髪は長くて綺麗な青色ですし、服も白色か、薄めの色にすると映えそうですね」
「淡い系統でまとめて白のフリルとか、可愛い感じの服も良くないですか?」
ヨルの言葉に、マリアの髪へ目を向けていたリディリディが頷いた。マリイも自分の好みを取り混ぜつつ、そう意見を言う。当人は髪の色が服選びに関係がある事もピンと来ていないようだが。ピンと来ていないといえば、歳の差はあれ異性からの贈り物という事もまだ意識していないのだろう。
「もうすぐ暑くなるからね。そしたら海水浴に行ってみるのもいいかもしれない。夏の海の青はとても綺麗だ」
「夏で色が違うの? 私の髪は、海の色? 空の色?」
ヨルにそう言われてこてんと首を傾げる。そもそも、マリアの良く知る海の景色はヴィントダンジョンなので、普通の海とは言い難い。それでも、後で見たい景色が彼女に出来ればいいと、ヨルは思った。
「さて、この後は服も買うんだろ。折角だ、うんとお洒落をするといい」
金の瞳に青の髪。偶然ながら、リディリディの髪と瞳の互い違いである。ならば淡い緑なども似合うのかもしれない。真っ白というのもそれはそれで。などと店員も交えた女性陣が姦しい。並んでいない服が奥にあるのも、同業のマリイからすれば当然なので良さそうな物を出してもらう。
「私は可愛いのが好きですが、シンプルなのも良いですね! 長く着れるので間違いないです」
「自分の服を選ぶのは苦手ですが、他の人のを選ぶのは存外楽しいですね」
アレコレ選び、時に着せ替えながらマリイとリディリディが楽しげに言う。荷物持ちでついてきたヨルは、リディリディの酒も預かっていた。2人に振り回されるかと思ったマリアが、マリイに促されて時折自分の意見を口にしているのを見て目元が緩む。
「今日は、荷物を持ってくれてありがとう。あと、2人は色々服を選んでくれて、ありがとう」
女性としてはまだまだ少ない位です、とマリイは言っていたが一回で買う量としては十分多い。マリアは薄青の涼し気なワンピースに着替え、その前まで着ていた装備だけを持っている。つまり残りは全てヨルが持たされていた。
「いや。戦士はそれくらい利己的であるほうがいいと思う。今のマリア君はとても綺麗だ。胸を張っておいで」
「次に来る時は私の服も選んでくれると嬉しいです」
「あ、私も選んでみて欲しいですね。ぜひ!」
リディリディとマリイへは、死んでしまえば果たせるか分からないけど、と律儀に断ってからマリアは頷く。少女にまた一つ、先を望む約束が増えた。
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迷宮へ向かった3人は、速度優先で狩場へと向かう。肉を狙ったナハシュは随分前に訪れた迷宮チキンの階層へ。この季節にはチキンはいないが、雌鶏は見つかった。味も悪くないし数もいる良い狩り場ではある。
「いける範囲ではこいつらがおススメって言われたけど、ホントかねえ」
あとは蛙。面白い味のする変種の蛙の話もちょっと惹かれたのだが、夜までに獲れるか微妙らしい。ついでに道中でキノコを拾ったり、樹の実を拾ったり、俊足を活かして採集に余念がない。
「エビ……? カニ……?」
アルマもマジカルポケットを活かそうと、鮮度が重要な魔獣の情報を聞いていた。狙うは彼女と同じくらいのサイズの甲殻類だ。見た目はエビっぽいのだが、左右にステップするし泡を吐く。
「この泡が美味しいとか、変だよねー?」
泡を吹かせてさっとボウルで回収。家事道具の中にあった物なのでそこまで大きくはないが、調理法も聞いてきたのでそれで足りるだろうと予測もつく。
「あ、むしろここでソースにして、それを持って行った方が良かったりして」
殴る→泡を吹く→回収して逃げる→調理して保存、最初に戻る。災難なループが三周くらいで魔獣は力尽きた。仮称カニエビの身も貴重な食材故、抱えて大急ぎで戻る。
「あー、噛みついて来るキャベツって動物なん? 植物なん?」
分類の難しさはともかく、サイラスは一面のキャベツ畑っぽいフィールドで奮闘していた。このキャベツ、成熟すると鋭い刃で噛みついて来るのだが、完熟の直前が一番野菜として美味しいらしい。調理人としての目で食材を見わけつつ、旨い奴は丁寧に収穫し、敵は無慈悲に殺戮する。たまに足元から殺人ウサギが不意打ちを仕掛けてくるのも返り討ちだ。
「……こいつら、ちょっとカッコ悪くない? まあ、使いどころはあるかもだけど」
自分のスキルの幻影に活かそうと考えてみる。キャベツ魔獣で相手を攻撃するのは、嫌がらせにはなるだろうか。ウサギの見た目は子供受けしそうな愛らしさだが、再現できるのは攻撃だけなのが難しい所だ。キャベツ畑の次のフロアはキュウリやトマトの畑らしい。
「時間までにどれだけ採れるかねえ」
ここも、どちらかと言えば速度と時間の勝負となっていた。
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かくて、宴の時が来る。幾人かは調理人として厨房へ向かい、自分で作るより食べさせてもらう派のリディリディとナハシュはお洒落着マリアと共にテーブルへ。普段彼女が世話になっている職員やら、知り合った冒険者が三々五々集まりだし、たまたま居合わせてラッキーな者も店内を覗き込む。
「揚げ物とか焼き物とか、野菜と肉とで適当に作ってるから、取っていくなり食べていくなりご自由に」
「カニ? エビ? みたいなのとお肉の串揚げ、泡のソースで召し上がれ」
カロリーと栄養豊富そうな料理をサイラスとアルマが並べ出し、酒場の料理人もあれこれ作り始めた。
「買い物や他の奴と合わせたらだいぶ豪華になってるんじゃねえか? 飯が派手なのは好きだぜ!!」
「俺もテールスープを仕込んできたから、後で振舞うよ」
「お、あれか。いいねえ」
ヨルの言葉に、ナハシュがにかっと笑う。互いに火酒を注ぎあい、周りの面々へも遠慮なく飲むよう声を掛けた。
「さっき、屋台では食べられませんでしたからね。デザートも楽しみにしていてくださいね?」
「あ、マリイさん、お酒注ぐね!」
下準備を一段落させたマリイが卓へついたところへ、アルマが火酒を注いでゆく。なお、主催のマリアは飲める年齢では無かったらしい。リディリディは手酌でワインを注いでいる。
「それじゃああらためてー……マリアさん宴会開いてくれてどうもありがとー!」
「準備を手伝ってくれて、ありがとう」
コク、と頷くマリアは自分が音頭を取らねば始まらないと気付いた様子は無い。そんなことだろうと思ってアルマがそのまま乾杯の合図を出し、もぐもぐタイムが始まった。
「うんうん、新しい服もすっごくよく似合ってるよ!」
「そうですね。他の服もお似合いでしたよ」
「単色も良いのですが、色々使った服も素敵でしたね」
アルマの誉め言葉に、いま着ている以外にもまだあるのだとリディリディとマリイが応える。今日はヨルが贈った髪飾りにあわせて青のコンセプトで揃えたのだそうだ。
「んじゃあ、俺は厨房戻ってワイン煮でも作って来るわ」
「ん。ありがとう。これも美味しい」
「あー。それは敵に勝つって言って、語呂合わせで縁起がいい奴な」
引っ込もうとするサイラスへ、一品づつ味わっていたマリアが礼を言う。いい素材でもあれば鍛冶をしても良いと思っていたサイラスだが、さすがにギルドの脇でとんかんする訳にもいかない。もしも意中の素材が出ていたら、一度宿に引き上げねばならず時間的に料理までは手が回らなかっただろうか。
「どれも、美味しい」
「宴会、楽しめているようで、何よりですね」
リディリディほど大食漢ではないが食いしん坊ではあるようで、マリアはたくさんあるメニューの制覇に余念がない。今はヨルのテールスープを味わっていた。好みはあれど、食べれない物は無いタイプのようだ。
(今日という日を楽しめたことは、きっと力になると思います)
とリディリディが考えている横で、マリイが意を決した様子でマリアへ話しかけていた。
「マリアさんが良ければ、私と友人になってもらえないでしょうか」
「友人。友達? リディリディの言っていた、繋がり。うん、私は良いよ」
悩むまでも無く頷く辺り、『自分が死んでしまった後』を気にしていたあの時とは、心持が違うらしい。やはり前向きになれたようだと聞いていたリディリディは思う。
「はい、答えはすぐじゃなく……っていいんですか! じゃあ、じゃあ、もう一度ぎゅーっとしても良いですか?」
「うん……。むぎゅう」
想定していた返事と違ったマリイは随分はしゃいだ様子だった。彼女を抱きしめると安心するというマリイに身を委ねつつ、マリアは決闘の先を思う。僅かに漏れた戦意に気づいたのか、ナハシュが声を掛けた。
「なあ、こいつはブランとやって勝つ前祝いなんだろ? 買った後にまた戦勝祝いとかするのか?」
「戦って勝つ、前とか後にお祝いするの?」
「するする。なあ?」
「剣闘士は戦う前に御馳走で適度に腹を満たす。そして次もまた生を謳歌しようという英気を養う」
ナハシュに話を振られて、ヨルは過去を思い出しつつそう応じた。マリアの勝利を信じ望んではいるが、勝負は終わるまで分からない。それはアルマやマリイも同じで、だから誰も勝てとは言わない。生きて帰れとも、直接は言わない。
「ブランさんとの果たし合いがんばってねー!」
「貴女はきっと大丈夫……どうか、心のままに」
「ん。わかった」
コクリ、と頷くマリア。色々と準備は整った。……のだが、ここからさらに待たされるとは、この時の彼女は思いもしていなかったのである。
マスターコメント
勝つよ勝つよ大丈夫! などと安請け合いする人が居ない辺り、皆様冒険者ですね……!
マリア的には敗ける気がしないと言うか、ブランは自分を勝たせたい筈なので自分が勝てる状況にならなければ応じないと思っていました。理屈は正しいのですが生死を掛けているにしては甘ちゃんです。
ここまでの皆様のお陰で、喜怒哀楽のうち、マリアは喜と楽を自分の身につけました。怒や哀はまだ前の『自分の記憶』の中で見た事があるだけなので他人事ですが、まあ無くても前向きに生きていくのには特に困らないですね。
なお、諸般の事情でエフィミアはスイーツの旅に出てしまいました。決闘で昔の仲間かホム子のどちらかが死ぬと分かっていると、さすがのエフィミアも先を急ぎたくなかったようですね。というわけで、次回は来月位になると思います……。
ご参加ありがとうございました!
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜8人
2022年07月07日 13時54分32秒 公開
大成功
参加者
ヨル・スレイマン
- サイラス
ナハシュ
- イェレミース トゥラ リディリディ
マリイ・パルティス
アルマ・ヴァレンタイン
相談掲示板
No.1
リディリディです。 その・・・、よろしくお願いします。 今回はあまり話し合うことはないでしょうが、私は2でお買い物を考えています。
No.2
サイラスだ、よろしくなー 前1後2の予定
ヨル・スレイマンだよ。宜しく。 結構迷っているけど現時点では2のつもりかな。 楽しい日になるといいね。
宴会と聞いて!!!!! ナハシュだ。今んとこ両方とも1の予定でいる。よろしくな。
暑さでぐでーしてたらもうこんな時間に…ギリギリだけどみんなよろしくねー 前半はダンジョンで食材探しと後半はそれで何かを作るつもりだよ
遅くなりました!よろしくお願いします! 私もどちらも2に参加しようと思います!楽しく過ごしましょう!