午睡はIFの世界で
馬車猪
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シナリオID:2273
オープニング
物心ついたときから違和感が消えなかった。
両親の愛。
豊かな領地。
恵まれた出会い。
優れた頭脳と頑健な肉体を兼ね備えた自分自身。
学園に入学したときには違和感は耐えがたくなり、必死に外面を取り繕っても大勢に心配される有様だった。
「私はなぜ……」
無意識に塔を見る。
自分自身と全く縁のないはずの隔離場所が、何故か懐かしく思えた。
●
ふがっ、と間抜けな息が自分自身の鼻から漏れる。
視界に入った腕は不健康に痩せこけていて、頬に張り付いた紙はエーテルに関する最新の論文だ。
午睡は終わった。
違和感は既にない。
好き勝手にやり過ぎて塔に閉じ込められ、閉じ込められても研究に邁進する己こそが現実だ。
親も友も己も全ては知識のためにある。
それが正しい。安心する。
「いや待て」
普段から一人なので独り言が多い。
「データや仮説の検証じゃなくてなんでフワッフワした夢を見るんだ」
夢の内容は急速に薄れていってはいるが、こんな夢の余韻などうまれてから一度も経験したことがない。
「まるでドゥジン神の筆……」
筆、紙、文字、出版物と連想が高速で行われる。
「まさかアレか? アレも筆の同類なのか? なんで神に関わるものが私の所に流れて来るんだ」
昨日運び込まれた論文の束の中から、文字も内容も拙いのに強烈な情念が籠もった冊子を取り出す。改めて見ると、加護っぽい何かも感じられる気がした。
非常に丁寧な手つきでそれを清潔な布で包む。
典型的いかれた研究者ではあるが神を軽んじはしない。
どれだけ影響力があるか理解してしまえる知性と知識を持っているからだ。
「研究大好きな私が創作大好きな神を怒らせたらどうするつもりだ。クソッ、こういうときだけは外部との接触が制限されているのがキツイな」
ため息をついて、冒険者ギルドに連絡するためコネを酷使することにした。
●
数日後の冒険者ギルド。
呆れるほど厳重に封印された箱を運んで来た職員が、興味を示した冒険者に説明を始める。
「みなさんはドゥジンの筆をご存じでしょうか」
パンクリアース学園でちょっとした騒動を起こしたアイテムだ。
「これは筆と似た性質を持ちます」
封印を解くと、現れたのは外見だけは普通の冊子だ。
ドゥジンの筆ほどの存在感はない。だが普通のアイテムではあり得ない雰囲気もある。
「現在の所有者が調べたところ、いくつかの条件を満たすと望む夢を見ることが可能だそうです」
条件1。夢の内容を冊子に書き入れること。
条件2。その内容が可能または可能であった人間が冊子の近くで昼寝をすること。
条件3。その内容が人倫に著しく反していないこと。
「今回紹介する依頼はこの冊子を使うことです」
正確には使用することでアイテムの能力を弱くさせるか失わせることが依頼だ。
フォルトゥナ学園長はドゥジンの筆を『全て』破壊させようとしたほど危険視していた。
所有者も神が関係しているかもしれない品を手元に置いておきたくないし、変な扱いをしてドゥジン神の怒りを買うリスクを冒したくもない。
だから冒険者に依頼されることになった。
「使えば使うほど力が薄れていくようですので、後4人から8人使えば無関係の人間が巻きこまれることもなくなると思われます」
望む夢を見ることができる、と聞けば便利なアイテムだと思えるかもしれないが危険もある。
「みなさんの精神力なら大丈夫とは思いますが一応注意して下さい」
夢から覚めても夢に戻りたい気持ちを一生抱えることになるかもしれないし、それ以上のことになる危険すらある。
「繰り返しになりますが、みなさんであれば危険はまずありません。ドゥジンの筆をもう一度使うと思って楽しんできてください」
冒険者でも授恵者でもない職員は、決してその冊子に触れようとはしなかった。
両親の愛。
豊かな領地。
恵まれた出会い。
優れた頭脳と頑健な肉体を兼ね備えた自分自身。
学園に入学したときには違和感は耐えがたくなり、必死に外面を取り繕っても大勢に心配される有様だった。
「私はなぜ……」
無意識に塔を見る。
自分自身と全く縁のないはずの隔離場所が、何故か懐かしく思えた。
●
ふがっ、と間抜けな息が自分自身の鼻から漏れる。
視界に入った腕は不健康に痩せこけていて、頬に張り付いた紙はエーテルに関する最新の論文だ。
午睡は終わった。
違和感は既にない。
好き勝手にやり過ぎて塔に閉じ込められ、閉じ込められても研究に邁進する己こそが現実だ。
親も友も己も全ては知識のためにある。
それが正しい。安心する。
「いや待て」
普段から一人なので独り言が多い。
「データや仮説の検証じゃなくてなんでフワッフワした夢を見るんだ」
夢の内容は急速に薄れていってはいるが、こんな夢の余韻などうまれてから一度も経験したことがない。
「まるでドゥジン神の筆……」
筆、紙、文字、出版物と連想が高速で行われる。
「まさかアレか? アレも筆の同類なのか? なんで神に関わるものが私の所に流れて来るんだ」
昨日運び込まれた論文の束の中から、文字も内容も拙いのに強烈な情念が籠もった冊子を取り出す。改めて見ると、加護っぽい何かも感じられる気がした。
非常に丁寧な手つきでそれを清潔な布で包む。
典型的いかれた研究者ではあるが神を軽んじはしない。
どれだけ影響力があるか理解してしまえる知性と知識を持っているからだ。
「研究大好きな私が創作大好きな神を怒らせたらどうするつもりだ。クソッ、こういうときだけは外部との接触が制限されているのがキツイな」
ため息をついて、冒険者ギルドに連絡するためコネを酷使することにした。
●
数日後の冒険者ギルド。
呆れるほど厳重に封印された箱を運んで来た職員が、興味を示した冒険者に説明を始める。
「みなさんはドゥジンの筆をご存じでしょうか」
パンクリアース学園でちょっとした騒動を起こしたアイテムだ。
「これは筆と似た性質を持ちます」
封印を解くと、現れたのは外見だけは普通の冊子だ。
ドゥジンの筆ほどの存在感はない。だが普通のアイテムではあり得ない雰囲気もある。
「現在の所有者が調べたところ、いくつかの条件を満たすと望む夢を見ることが可能だそうです」
条件1。夢の内容を冊子に書き入れること。
条件2。その内容が可能または可能であった人間が冊子の近くで昼寝をすること。
条件3。その内容が人倫に著しく反していないこと。
「今回紹介する依頼はこの冊子を使うことです」
正確には使用することでアイテムの能力を弱くさせるか失わせることが依頼だ。
フォルトゥナ学園長はドゥジンの筆を『全て』破壊させようとしたほど危険視していた。
所有者も神が関係しているかもしれない品を手元に置いておきたくないし、変な扱いをしてドゥジン神の怒りを買うリスクを冒したくもない。
だから冒険者に依頼されることになった。
「使えば使うほど力が薄れていくようですので、後4人から8人使えば無関係の人間が巻きこまれることもなくなると思われます」
望む夢を見ることができる、と聞けば便利なアイテムだと思えるかもしれないが危険もある。
「みなさんの精神力なら大丈夫とは思いますが一応注意して下さい」
夢から覚めても夢に戻りたい気持ちを一生抱えることになるかもしれないし、それ以上のことになる危険すらある。
「繰り返しになりますが、みなさんであれば危険はまずありません。ドゥジンの筆をもう一度使うと思って楽しんできてください」
冒険者でも授恵者でもない職員は、決してその冊子に触れようとはしなかった。
解説
●目的
IFの夢を楽しむこと
●状況
近くで寝ると好きな夢を見ることができるアイテムを利用して、好きな夢を楽しみましょう
午睡(お昼寝)の場所は、特に指定がなければ冒険者ギルド近くの宿の個室(冒険者1人につき1室)になります
●他
あれこれ警告風や注意書き風の内容を書いてはいますが特に気にする必要はありません
メドゥの指先入りするような闇落ちIF展開や、各国の実力者に喧嘩を売りにいくIF展開や、実は貴族の御曹司(御令嬢)だったんだよ的IF展開などを楽しむための依頼です
もちろんそれ以外もOKです
基本的に参加者ごとに別の夢を見ます
しかし双方が希望する場合は、2人(またはそれ以上の人数)が同じ夢を見ることも可能です
マスターより
リクエストありがとうございます
リプレイ
●
「あの馬鹿はどこだーっ!!」
憤怒の叫びが湿地の水面を揺らし、殺気に当てられた小鳥や小動物が身動きとれなくなる。
大酋長アシムベート・グリオウをここまで怒らせたのは黒髪のリザードマン。
現実で人を厭い竜化を目指していたはずのサイラスである。
「サイラスお前何をしたっ」
血相を変えて走り寄る年上の同僚に、長期の狩用装備で身を固めたサイラスが振り返る。
ストレスが少ないのか髪は黒々ふさふさだ。
「枕の下に本仕込むと夢が見れるって聞いたんだよね。アシムベート関連のドゥジンシがあったんで数冊こそっと」
「少しは加減しろ馬鹿! おい待て、まだ話は……」
若手の幹部候補としてもとんでもない悪戯小僧としても知られるサイラスは、言い訳を口にしつつ遠征に出発する。
(なんで俺が筋肉達磨夢にみないといけないのさ。大酋長も珍しい経験できて喜んでんじゃない?)
固い足場を選んで足跡を残さず、気配を周囲と同化させて獲物の所在地への行軍を開始する。
(でかいの2体くらい仕留めれば黙るでしょ)
直前の行いからは想像し辛いほど真面目な戦士の顔をしている。
夢の中の彼は、アシムベートへの強い信頼と部族への帰属意識を持っていた。
「んー」
目覚めの意識は明瞭でも心には困惑がある。
「まあそうなるだろうなって内容と心情だったね」
借り物の冊子にマッドから借りたインクで書き足し何度か仮眠をとってみる。
「楽しいんだろうけど、現実はそうならないし夢の方になる程ギシュム族は子供守ってなかったって結果が自分だし」
夢と現実の落差よりも非現実を夢とはいえ現実にしてしまうものの方に興味があり、夢の内容については悩みすらしない。
なお、冊子とインクについてはさっぱり分からず、本当に神が関わっているかもしれないと思った。
●
艶のある金の髪に宝石めいた切れ長の緑眼。
淡く微笑む表情は甘く、乙女が直視してしまえば情緒や価値観が狂ってしまうかもしれない。
にゃー。
ヴィナスは、自分自身が目の前にいることに気付いて珍しく混乱した。
しかも耳に届いたのは自身の声ではなく飼い猫の鳴き声だ。
「おれの今の中身は兄さんか」
虎猫と一緒にベッドに寝転んでいたヴィナスの体が、納得したようにうなずき四つ足で立ち上がろうとする。
にゃっ。
虎猫渾身の猫パンチが炸裂する。
とっさに爪を引っ込めたのは我ながら見事だと虎猫は思う。
「今の顔には毛がないんだぞっ」
なーっ! ふーっ! ぐるるるるっ!!
「兄さん、おれ何言ってるか解らないぞ」
(そうだろうねー、身体は俺だもんねー。……うるさい分かれ!!)
体は授恵者とただの可愛い猫だが気合いが違う。
体がヴィナスの猫はみっちり時間をかけて最低限の所作を学ばせ、ギルドへ知らせるため1人と1匹で歩き出す。
「いい毛並みだね。どうだい兄さん、猫ちゃん喜ぶよ?」
商人のおばちゃんがお高い食べ物を勧めてきてヴィナスが立ち止まり猫が不安定な箱の重なりに気付く。
にゃっ
一瞬遅れて猫がおばちゃんを庇うが猫のときより動きが鈍く、ヴィナスの動きも授恵者のときとは比べものにならないほど鈍い。
崩れる箱と互いがぶつかり、意識が薄れていった。
にゃー。
「夢だよな?」
今度は虎猫の可愛い顔が至近距離に見えた。
頭が痛いのと何か食べた気がするのは多分気のせいだ。
「俺達やっぱこのままがいいね」
とりあえず、美味しいものを食べに行くことにした。
目的地に着く前に、商人のおばちゃんが夢と同じ味の食べものを売っていたので購入した。
●
「予告時間が過ぎたわね」
貴族派貴族から派遣された警備員が不敵に微笑んだ。
「対決できなかったのは残念だけど勝ちは勝ちよ。……メイド達には負担をかけてしまったわね」
守り抜いた青い宝石を見上げ、そして始めて違和感に気付く。
光の反射が本物とは微かに違う。
「警戒を解くな! メイド達もその場を……」
はらりとメイド用のエプロンが落ちる。
仕事用の衣装に替わったクローリカが、悠々と天窓を開いて外へ出る。
「怪盗サファイア!」
「今回は少し苦労させられたよ。宝石の保管ケースに捕縛用の紋具なんてね」
右手に宝石を、左手に剥き出しの紋具を持ってそれぞれくるりと回す。
それがまるで最初からなかったかのように消えて、翼にも見える紋具が背中からばさりと広がった。
「待て!」
ホライゾナルジャンプで追ってもクローリカが屋根を蹴り飛び立つ方が早い。
機械仕掛けの翼が夜の風を捉え、悪徳の館からクローリカを引き離す。
「じゃあね。機会があればまた会おう」
館の主の顔は怒りで赤黒く染まり、出し抜かれた高位授恵者は別の理由で顔を赤くしていた。
「……という内容でした」
「前の持ち主の書き込みが混ざったのかもしれない。興味深いな」
ところで怪盗サファイアって何、と真顔で依頼人が尋ねていた。
●
若き侯爵令息と新進気鋭の傭兵。
現実なら苛烈な差別と陰謀と暴力が不可避の組み合わせだが役者も舞台もとてもきらきらしている。
「シルヴィア」
現実よりも押しも圧も強いエル=バ=ノイアンが、壁際にシルヴィア・A・カペルを追い詰める。
「俺のものになれ」
生命財産はもちろん人格も生き方も大事にする意思と能力が前提での強い言葉だ。
(侯爵令息としての俺……か。しかし……その、やはり夢だからだろうか。思うようには手足も口も動いてくれないな)
ノイアンの内心はこれだが外から見れば非常に強気な攻略対象である。
「周りに品行方正なお嬢様しかいなかったから、跳ねっ返りの私が物珍しくて熱を上げただけでしょう」
美しい傭兵の態度は冷静だが、瞳に滲んだ感情は冷静とは言い難い。
(いずれ後悔するのだし断るのが優しさ……と本人に言っても納得しては貰えないでしょうね。それでもちゃんと伝えるのは私なりの誠意。彼がいなくなってから少しだけ泣いて終わり)
表情が微かに歪んでいることに、シルヴィアだけが気付けていない。
「貴方の肩には領地と領民の命運が掛かっているのよ。私を囲う財と暇があったら、少しは領民に貢献したら?」
わずかな沈黙。
しかしそれは迷いではなく、獲物に自らの意を届けるためにタイミングを計っているだけだ。
「俺から言わせて貰えば、君も貴族という姿形を俺に当て嵌めて逃げているように見える」
逃れるシルヴィアを物理的には追わず、しかし意識は逃さない。
「領地も民も大切に思っている。彼らと俺の間には確かな信頼関係がある。だからこそ、領民が俺の幸せをどう考えてくれているか、知っているつもりだ」
ノイアンがこれまで積み重ねた行動が言葉に説得力を与え、真摯な瞳が相手の逃げを許さない。
「じゃあ、どうやって出自も分からない女を大切にするの。玉で飾った檻にでも入れる?」
夢の中のシルヴィアでは冷静さを維持できない。
表情は緊張を隠せず、声は怯えと期待で揺れている。
「財も暇も、注ぎ込むことで相手を大切にできるなら皆苦労しない。それは君もよくわかっているんじゃないか?」
ノイアンは改めて物理的な距離を詰める。
「美しい声で鳴く鳥を、籠に閉じ込めてそばにおくことで心満たされる者もいるのだろう。だが森の中で、河原で、その鳥が自由でいるからこそ美しいと思うのではないだろうか。……俺は何度でもその森へ足を運ぼう。それが俺の答えだ」
「……信じてあげても良いわ。けど、裏切ったら許さないから」
真っ直ぐな視線に心が揺らぐ。
傭兵はそっと目を閉じ、近づいて来る暖かさを待ち、そして……。
「っ」
目覚めても恥ずかしさで声を出せず、シルヴィアは枕に顔を埋めた。
直前までの光景は夢のはずなのに、唇に微かな熱が残っている気がする。
ノックの音が扉から響く。
響きが消えた後も扉の向こうの気配は立ち去らない。準備の時間が必要だと理解してくれているのだ。
シルヴィアは頑張って髪と表情と服装を整えてからドアを開いた。
「……シルヴィア」
ものいいたげな目で見られてしまった。
シナリオ担当はシルヴィアが10割だ。
「え、えっと……最近読んだ本を参考に……。侯爵令息の君も格好良かったよ」
主にしがみついたまま眠っている子猫が、寝ぼけたまま薄く目を開く。
「現実にあんな台詞がすらすら出てきたら苦労はしないな……」
「練習なら付き合うよ?」
子猫を起こさないようにそっと寄り添い、楽しそうに微笑んだ。
●
「ジュスト様、おやめください」
「何卒、何卒っ」
ディオール家の反応は異常であった。
ローザリカ・L・ディオールが学園にも冒険者ギルドにも姿を現さなくなり、ジュスト・ヴェルジーが手紙を送っても何の反応もない。
万が一未満の確率で心変わりがあったとしても、こんな不義理をするなどあり得ない。
だから直接出向いたのに、拒絶も説明もせずただ止めようとしているだけなのだ。
「すまない。気が逸った」
ジュストは人生最大級の自制心で焦りと恐れを押さえ込む。
恐れは振られるとかそういうことについてではない。死病やそれに匹敵する何かが彼女を襲ったのではないかと恐れているのだ。
(おかしいな)
冷静さを取り戻したジュストが、召使い達の異常の詳細に気付く。
何かを恐れ、助けを求める気配まであった。
「俺がすることが気になるならついて来て欲しい」
彼女力になるため決然と前へ進む。
侍女と執事達は、ジュストを止められなかった。
「くるなっ」
ドア越しの拒絶の言葉は、勢いだけ強くて中身は弱々しい。
ジュストは顔だけで振り返る。
大急ぎで戻って来たディオール伯爵が、断腸の思いでゆっくりと頷いた。
「入るよ」
鍵はかかっていなかった。
ベッドの上には絹のシーツが膨らんでいる。
ローザリカのはずだが輪郭が少しだけ違う。
ベッドへ近づき横に腰かけ、ジュストはシーツ越しにも震えているのが分かる彼女を見る。
「……帰って」
ジュストは彼女の想いを誤解せず、自らの想いを誤魔化さない。
「正直に聞かせて欲しい。背負うのが重いことなら、俺も一緒に抱えるから」
「嫌……っ」
彼女も熟練の授恵者だ。ただ触れようとしている彼を振り払うのは簡単だ。
なのにエーテルを攻撃的に変化させることはもちろん、手に力を込めることもできない。
「ロゼ」
「ジュストと同じでは、なくなってしまった。もう、一緒にはいられな……っ」
シーツがずれて見えたのは猫耳であった。
艶やかな毛並みも感情がすぐ出るのも可愛らしい。
腰から下のラインが微かに変化しているのは、ひょっとして猫尻尾だろうか。
(魔法薬か、それとも呪いの類? いや、考えるのは後だ)
はらはらと涙を零す彼女に、これまでと変わらない優しい瞳と手つきで接する。
リーンエス王国の貴族はヒューマンであることが大前提だ。
例外があったとしても一般には決してなれない。
(だから……だからっ)
彼からの手紙は読んでいない。
絶縁を言い渡されたりする内容だったら自分自身が保てる気がしない。
そんなわけないのに、侍女が運んで来た手紙に触れることもできない。
(私はっ)
それに何より、彼のことも両親の愛もハーフビーストという種のことも何もかもを軽んじて己のことばかり考えてしまう自分自身が嫌で、情けなくて仕方がなかった。
「どんな姿でもロゼはロゼだよ」
ジュストは落ち着くまで待ちはしない。落ち着かせるのだ。
「誰がなんと言おうと、俺の婚約者は君だけだ。見た目が急に変わったり、そのせいで将来に影響が出ることを考えたら誰でも怖くもなるさ」
じっとみつめ、へたりと折れた猫耳ごと彼女に微笑む。
「こんなに可愛い姿を他の奴には見せたくないけれどね」
涙を指で掬う。
「大丈夫、大丈夫だよ。俺は君のことを」
優しい言葉を繰り返す。
ローザリカの涙が熱いものに変わり、本人は意識していないがシーツの下の猫尻尾が機嫌良く揺れた。
ジュストが顔を近付け、優しく囁く。
いや、囁いたはずなのに意識も何もかもが薄れていく。
「私は……」
どんなに我が儘でも赦されないことだろうとジュストと、と口走ってしまったはずのに音が聞こえない。
「夢?」
目覚めると猫耳も猫尻尾もなく、顔の熱さだけが夢の中と一緒だった。
(彼は何を言いかけたのだろう)
気になって仕方がない。
いつもの調子で問い詰めようかと考え、まだふんわり記憶の中に残っている夢の内容を思い出して体温が上がる。
そんな彼女がいる部屋の隣の隣の部屋でジュストが目を覚ます。
「……夢でも言えなかったな」
あと一歩が、とてつもなく遠く感じられた。
●
攫われ、そこからは助けられ、運命に目覚めたのが正史である。
最初が違えばどうなるか、ちょっと興味はあったのだ。
「お嬢ちゃんかわいいなぁ、おじさんが売ってあげるよ」
ぐへへと欲に溺れた悪党がアルシエラ・ライゼルに手を伸ばしたそのときが分岐点だ。
「しぬがよい」
極限の集中と感情の爆発が殻を破って羽化させる。
アルシエラより10倍は太いビームが悪党を飲み込み家屋を1つ消し飛ばして遠くの山頂を欠けさせる。
それからはまさに激動だ。
「巫女様! どうすればいいですか!」
なんかヒューマン優先っぽい氏族が超人に分からせられている。
「伸びしろしか無い、自分で考えて」
鞭だとお尻が消し飛びそうなので猫じゃらしっぽいものでぺちーんする。
「ありがとうございますっ」
きびしー巫女の教えが浸透して、かなり良い子になっていた。
「我と共に来」
「やなこった」
なんかメドゥの指先幹部が来たのでぺちーんして分からせる。
『征竜様がお呼びです、至急お越し下さい』
ハイアルヴのお告げっぽいアナウンスがあったので「あとよろ」と言い残し瞬間移動する勢いで征竜の元まで飛ぶ。
運動不足でメタボがちなんだとかの愚痴を聞いたのはトップシークレットである。
その後もひたすら忙しい。
世界樹をてきとーに叩いて元気にしたり。
ボルガニスクに元気の出るシグモル芋を食べさせたり各地を回ったり。
ウィリアムとレイウェストがマナズィールしたっぽいお祭りも面倒見たり。
「やること多くない?」
と愚痴をこぼしてしまった瞬間電波が届いたので人の言葉として大勢に告げる。
「神は字数足らんって言ってる」
薄れていく夢の中の人々が、納得してアルシエラを送り出してくれた。
「うっ……あの時奴隷商人に捕まってなかったら……!」
アルシエラは完全に力を無くした冊子を冒険者ギルド職員へ渡す。
かなり苦悶の表情だ。
「考えすぎないことをお勧めします、美味しいごはんを奢ってあげますから気持ちを切り替えてください」
併設された酒場から非常に良い香りが漂ってくる。
「うん……」
アルシエラはいつも通りのマイペースな態度に戻り、依頼完了の手続きを済ませて食事に向かうのだった。
「あの馬鹿はどこだーっ!!」
憤怒の叫びが湿地の水面を揺らし、殺気に当てられた小鳥や小動物が身動きとれなくなる。
大酋長アシムベート・グリオウをここまで怒らせたのは黒髪のリザードマン。
現実で人を厭い竜化を目指していたはずのサイラスである。
「サイラスお前何をしたっ」
血相を変えて走り寄る年上の同僚に、長期の狩用装備で身を固めたサイラスが振り返る。
ストレスが少ないのか髪は黒々ふさふさだ。
「枕の下に本仕込むと夢が見れるって聞いたんだよね。アシムベート関連のドゥジンシがあったんで数冊こそっと」
「少しは加減しろ馬鹿! おい待て、まだ話は……」
若手の幹部候補としてもとんでもない悪戯小僧としても知られるサイラスは、言い訳を口にしつつ遠征に出発する。
(なんで俺が筋肉達磨夢にみないといけないのさ。大酋長も珍しい経験できて喜んでんじゃない?)
固い足場を選んで足跡を残さず、気配を周囲と同化させて獲物の所在地への行軍を開始する。
(でかいの2体くらい仕留めれば黙るでしょ)
直前の行いからは想像し辛いほど真面目な戦士の顔をしている。
夢の中の彼は、アシムベートへの強い信頼と部族への帰属意識を持っていた。
「んー」
目覚めの意識は明瞭でも心には困惑がある。
「まあそうなるだろうなって内容と心情だったね」
借り物の冊子にマッドから借りたインクで書き足し何度か仮眠をとってみる。
「楽しいんだろうけど、現実はそうならないし夢の方になる程ギシュム族は子供守ってなかったって結果が自分だし」
夢と現実の落差よりも非現実を夢とはいえ現実にしてしまうものの方に興味があり、夢の内容については悩みすらしない。
なお、冊子とインクについてはさっぱり分からず、本当に神が関わっているかもしれないと思った。
●
艶のある金の髪に宝石めいた切れ長の緑眼。
淡く微笑む表情は甘く、乙女が直視してしまえば情緒や価値観が狂ってしまうかもしれない。
にゃー。
ヴィナスは、自分自身が目の前にいることに気付いて珍しく混乱した。
しかも耳に届いたのは自身の声ではなく飼い猫の鳴き声だ。
「おれの今の中身は兄さんか」
虎猫と一緒にベッドに寝転んでいたヴィナスの体が、納得したようにうなずき四つ足で立ち上がろうとする。
にゃっ。
虎猫渾身の猫パンチが炸裂する。
とっさに爪を引っ込めたのは我ながら見事だと虎猫は思う。
「今の顔には毛がないんだぞっ」
なーっ! ふーっ! ぐるるるるっ!!
「兄さん、おれ何言ってるか解らないぞ」
(そうだろうねー、身体は俺だもんねー。……うるさい分かれ!!)
体は授恵者とただの可愛い猫だが気合いが違う。
体がヴィナスの猫はみっちり時間をかけて最低限の所作を学ばせ、ギルドへ知らせるため1人と1匹で歩き出す。
「いい毛並みだね。どうだい兄さん、猫ちゃん喜ぶよ?」
商人のおばちゃんがお高い食べ物を勧めてきてヴィナスが立ち止まり猫が不安定な箱の重なりに気付く。
にゃっ
一瞬遅れて猫がおばちゃんを庇うが猫のときより動きが鈍く、ヴィナスの動きも授恵者のときとは比べものにならないほど鈍い。
崩れる箱と互いがぶつかり、意識が薄れていった。
にゃー。
「夢だよな?」
今度は虎猫の可愛い顔が至近距離に見えた。
頭が痛いのと何か食べた気がするのは多分気のせいだ。
「俺達やっぱこのままがいいね」
とりあえず、美味しいものを食べに行くことにした。
目的地に着く前に、商人のおばちゃんが夢と同じ味の食べものを売っていたので購入した。
●
「予告時間が過ぎたわね」
貴族派貴族から派遣された警備員が不敵に微笑んだ。
「対決できなかったのは残念だけど勝ちは勝ちよ。……メイド達には負担をかけてしまったわね」
守り抜いた青い宝石を見上げ、そして始めて違和感に気付く。
光の反射が本物とは微かに違う。
「警戒を解くな! メイド達もその場を……」
はらりとメイド用のエプロンが落ちる。
仕事用の衣装に替わったクローリカが、悠々と天窓を開いて外へ出る。
「怪盗サファイア!」
「今回は少し苦労させられたよ。宝石の保管ケースに捕縛用の紋具なんてね」
右手に宝石を、左手に剥き出しの紋具を持ってそれぞれくるりと回す。
それがまるで最初からなかったかのように消えて、翼にも見える紋具が背中からばさりと広がった。
「待て!」
ホライゾナルジャンプで追ってもクローリカが屋根を蹴り飛び立つ方が早い。
機械仕掛けの翼が夜の風を捉え、悪徳の館からクローリカを引き離す。
「じゃあね。機会があればまた会おう」
館の主の顔は怒りで赤黒く染まり、出し抜かれた高位授恵者は別の理由で顔を赤くしていた。
「……という内容でした」
「前の持ち主の書き込みが混ざったのかもしれない。興味深いな」
ところで怪盗サファイアって何、と真顔で依頼人が尋ねていた。
●
若き侯爵令息と新進気鋭の傭兵。
現実なら苛烈な差別と陰謀と暴力が不可避の組み合わせだが役者も舞台もとてもきらきらしている。
「シルヴィア」
現実よりも押しも圧も強いエル=バ=ノイアンが、壁際にシルヴィア・A・カペルを追い詰める。
「俺のものになれ」
生命財産はもちろん人格も生き方も大事にする意思と能力が前提での強い言葉だ。
(侯爵令息としての俺……か。しかし……その、やはり夢だからだろうか。思うようには手足も口も動いてくれないな)
ノイアンの内心はこれだが外から見れば非常に強気な攻略対象である。
「周りに品行方正なお嬢様しかいなかったから、跳ねっ返りの私が物珍しくて熱を上げただけでしょう」
美しい傭兵の態度は冷静だが、瞳に滲んだ感情は冷静とは言い難い。
(いずれ後悔するのだし断るのが優しさ……と本人に言っても納得しては貰えないでしょうね。それでもちゃんと伝えるのは私なりの誠意。彼がいなくなってから少しだけ泣いて終わり)
表情が微かに歪んでいることに、シルヴィアだけが気付けていない。
「貴方の肩には領地と領民の命運が掛かっているのよ。私を囲う財と暇があったら、少しは領民に貢献したら?」
わずかな沈黙。
しかしそれは迷いではなく、獲物に自らの意を届けるためにタイミングを計っているだけだ。
「俺から言わせて貰えば、君も貴族という姿形を俺に当て嵌めて逃げているように見える」
逃れるシルヴィアを物理的には追わず、しかし意識は逃さない。
「領地も民も大切に思っている。彼らと俺の間には確かな信頼関係がある。だからこそ、領民が俺の幸せをどう考えてくれているか、知っているつもりだ」
ノイアンがこれまで積み重ねた行動が言葉に説得力を与え、真摯な瞳が相手の逃げを許さない。
「じゃあ、どうやって出自も分からない女を大切にするの。玉で飾った檻にでも入れる?」
夢の中のシルヴィアでは冷静さを維持できない。
表情は緊張を隠せず、声は怯えと期待で揺れている。
「財も暇も、注ぎ込むことで相手を大切にできるなら皆苦労しない。それは君もよくわかっているんじゃないか?」
ノイアンは改めて物理的な距離を詰める。
「美しい声で鳴く鳥を、籠に閉じ込めてそばにおくことで心満たされる者もいるのだろう。だが森の中で、河原で、その鳥が自由でいるからこそ美しいと思うのではないだろうか。……俺は何度でもその森へ足を運ぼう。それが俺の答えだ」
「……信じてあげても良いわ。けど、裏切ったら許さないから」
真っ直ぐな視線に心が揺らぐ。
傭兵はそっと目を閉じ、近づいて来る暖かさを待ち、そして……。
「っ」
目覚めても恥ずかしさで声を出せず、シルヴィアは枕に顔を埋めた。
直前までの光景は夢のはずなのに、唇に微かな熱が残っている気がする。
ノックの音が扉から響く。
響きが消えた後も扉の向こうの気配は立ち去らない。準備の時間が必要だと理解してくれているのだ。
シルヴィアは頑張って髪と表情と服装を整えてからドアを開いた。
「……シルヴィア」
ものいいたげな目で見られてしまった。
シナリオ担当はシルヴィアが10割だ。
「え、えっと……最近読んだ本を参考に……。侯爵令息の君も格好良かったよ」
主にしがみついたまま眠っている子猫が、寝ぼけたまま薄く目を開く。
「現実にあんな台詞がすらすら出てきたら苦労はしないな……」
「練習なら付き合うよ?」
子猫を起こさないようにそっと寄り添い、楽しそうに微笑んだ。
●
「ジュスト様、おやめください」
「何卒、何卒っ」
ディオール家の反応は異常であった。
ローザリカ・L・ディオールが学園にも冒険者ギルドにも姿を現さなくなり、ジュスト・ヴェルジーが手紙を送っても何の反応もない。
万が一未満の確率で心変わりがあったとしても、こんな不義理をするなどあり得ない。
だから直接出向いたのに、拒絶も説明もせずただ止めようとしているだけなのだ。
「すまない。気が逸った」
ジュストは人生最大級の自制心で焦りと恐れを押さえ込む。
恐れは振られるとかそういうことについてではない。死病やそれに匹敵する何かが彼女を襲ったのではないかと恐れているのだ。
(おかしいな)
冷静さを取り戻したジュストが、召使い達の異常の詳細に気付く。
何かを恐れ、助けを求める気配まであった。
「俺がすることが気になるならついて来て欲しい」
彼女力になるため決然と前へ進む。
侍女と執事達は、ジュストを止められなかった。
「くるなっ」
ドア越しの拒絶の言葉は、勢いだけ強くて中身は弱々しい。
ジュストは顔だけで振り返る。
大急ぎで戻って来たディオール伯爵が、断腸の思いでゆっくりと頷いた。
「入るよ」
鍵はかかっていなかった。
ベッドの上には絹のシーツが膨らんでいる。
ローザリカのはずだが輪郭が少しだけ違う。
ベッドへ近づき横に腰かけ、ジュストはシーツ越しにも震えているのが分かる彼女を見る。
「……帰って」
ジュストは彼女の想いを誤解せず、自らの想いを誤魔化さない。
「正直に聞かせて欲しい。背負うのが重いことなら、俺も一緒に抱えるから」
「嫌……っ」
彼女も熟練の授恵者だ。ただ触れようとしている彼を振り払うのは簡単だ。
なのにエーテルを攻撃的に変化させることはもちろん、手に力を込めることもできない。
「ロゼ」
「ジュストと同じでは、なくなってしまった。もう、一緒にはいられな……っ」
シーツがずれて見えたのは猫耳であった。
艶やかな毛並みも感情がすぐ出るのも可愛らしい。
腰から下のラインが微かに変化しているのは、ひょっとして猫尻尾だろうか。
(魔法薬か、それとも呪いの類? いや、考えるのは後だ)
はらはらと涙を零す彼女に、これまでと変わらない優しい瞳と手つきで接する。
リーンエス王国の貴族はヒューマンであることが大前提だ。
例外があったとしても一般には決してなれない。
(だから……だからっ)
彼からの手紙は読んでいない。
絶縁を言い渡されたりする内容だったら自分自身が保てる気がしない。
そんなわけないのに、侍女が運んで来た手紙に触れることもできない。
(私はっ)
それに何より、彼のことも両親の愛もハーフビーストという種のことも何もかもを軽んじて己のことばかり考えてしまう自分自身が嫌で、情けなくて仕方がなかった。
「どんな姿でもロゼはロゼだよ」
ジュストは落ち着くまで待ちはしない。落ち着かせるのだ。
「誰がなんと言おうと、俺の婚約者は君だけだ。見た目が急に変わったり、そのせいで将来に影響が出ることを考えたら誰でも怖くもなるさ」
じっとみつめ、へたりと折れた猫耳ごと彼女に微笑む。
「こんなに可愛い姿を他の奴には見せたくないけれどね」
涙を指で掬う。
「大丈夫、大丈夫だよ。俺は君のことを」
優しい言葉を繰り返す。
ローザリカの涙が熱いものに変わり、本人は意識していないがシーツの下の猫尻尾が機嫌良く揺れた。
ジュストが顔を近付け、優しく囁く。
いや、囁いたはずなのに意識も何もかもが薄れていく。
「私は……」
どんなに我が儘でも赦されないことだろうとジュストと、と口走ってしまったはずのに音が聞こえない。
「夢?」
目覚めると猫耳も猫尻尾もなく、顔の熱さだけが夢の中と一緒だった。
(彼は何を言いかけたのだろう)
気になって仕方がない。
いつもの調子で問い詰めようかと考え、まだふんわり記憶の中に残っている夢の内容を思い出して体温が上がる。
そんな彼女がいる部屋の隣の隣の部屋でジュストが目を覚ます。
「……夢でも言えなかったな」
あと一歩が、とてつもなく遠く感じられた。
●
攫われ、そこからは助けられ、運命に目覚めたのが正史である。
最初が違えばどうなるか、ちょっと興味はあったのだ。
「お嬢ちゃんかわいいなぁ、おじさんが売ってあげるよ」
ぐへへと欲に溺れた悪党がアルシエラ・ライゼルに手を伸ばしたそのときが分岐点だ。
「しぬがよい」
極限の集中と感情の爆発が殻を破って羽化させる。
アルシエラより10倍は太いビームが悪党を飲み込み家屋を1つ消し飛ばして遠くの山頂を欠けさせる。
それからはまさに激動だ。
「巫女様! どうすればいいですか!」
なんかヒューマン優先っぽい氏族が超人に分からせられている。
「伸びしろしか無い、自分で考えて」
鞭だとお尻が消し飛びそうなので猫じゃらしっぽいものでぺちーんする。
「ありがとうございますっ」
きびしー巫女の教えが浸透して、かなり良い子になっていた。
「我と共に来」
「やなこった」
なんかメドゥの指先幹部が来たのでぺちーんして分からせる。
『征竜様がお呼びです、至急お越し下さい』
ハイアルヴのお告げっぽいアナウンスがあったので「あとよろ」と言い残し瞬間移動する勢いで征竜の元まで飛ぶ。
運動不足でメタボがちなんだとかの愚痴を聞いたのはトップシークレットである。
その後もひたすら忙しい。
世界樹をてきとーに叩いて元気にしたり。
ボルガニスクに元気の出るシグモル芋を食べさせたり各地を回ったり。
ウィリアムとレイウェストがマナズィールしたっぽいお祭りも面倒見たり。
「やること多くない?」
と愚痴をこぼしてしまった瞬間電波が届いたので人の言葉として大勢に告げる。
「神は字数足らんって言ってる」
薄れていく夢の中の人々が、納得してアルシエラを送り出してくれた。
「うっ……あの時奴隷商人に捕まってなかったら……!」
アルシエラは完全に力を無くした冊子を冒険者ギルド職員へ渡す。
かなり苦悶の表情だ。
「考えすぎないことをお勧めします、美味しいごはんを奢ってあげますから気持ちを切り替えてください」
併設された酒場から非常に良い香りが漂ってくる。
「うん……」
アルシエラはいつも通りのマイペースな態度に戻り、依頼完了の手続きを済ませて食事に向かうのだった。
マスターコメント
お疲れ様でした。
ショートシナリオR易しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年06月29日 14時41分36秒 公開
成功
相談掲示板
No.1
サイラスだ、今回はリク主だなー まあもしもの可能性楽しむ依頼なのは読んで字の如くなので好きにすると良いと思うんだ。
ノイアンだ、お邪魔させてもらった。よろしく頼む。 成立ということも喜ばしいな。皆がどんな「もしも」を望むのか、楽しみにしている。
シルヴィアだ。今回はよろしく。 IFの世界か……興味深い。私も皆がどんな世界の夢を見るのか、楽しみにしているね。 (リクエスト主のサイラスに感謝を。参加させて貰うね)
夢がいっぱいのお部屋……お邪魔します。 軽率に神になりたい。よろしくね。
ジュストだ。 何だか面白そうな話だったからお邪魔させて貰ったよ。 それぞれ別の夢を見ることになるみたいだけれど、よろしく頼む。
ヴィナスだよ、よろしくね。 好きな夢かぁ。 どんな夢にしようかな。