【花戦】ハーレムごろし?~神との競泳(偽)編~

眞石ユキヒロ

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シナリオID:2134

オープニング

●
 最近のライリー・ベル(辺境都市群ギルド職員、兼、ドゥジン信徒)には以前のような勢いが無い。
 あれだけハーレムを潰せ、潰せとうるさかったのに、誕生日会以降、落ち着いている(敵意が削ぎ落とされたように見える)。
(職員として良い傾向ではあるが……っと!)
 辺境都市群冒険者ギルド職員、兼、授恵者のハーフビースト、ツェレンは水上都市アキュアリスタにて冒険者たちに交じり、マーマンの群れと交戦している。
 敵の打撃を受けながらも、容赦なく心臓を貫く。
 最後の一体を倒したところで、頭上から柔らかい声が降ってきた。
「こんにちは、僕はトーリ」
 桃色の髪と金色の瞳の美青年が、湖沿いに咲く大きな桃の木の枝に座っている。一瞬見とれてから、首を横に振る。
「ねぇ、この湖、とても綺麗だね」
 発言の意図を理解できず、ツェレンは黙り込む。何が言いたいんだ。そんなことは彼から聞きたい(恋人にでも語れば良かろう)。
「水浴びしたらとても気持ちよさそうだね。……そうだ、冒険者ギルドにこう伝えてくれないかな」
 無邪気に笑う青年の言葉はそよぐ風に乗り、ツェレンの大きな鹿耳に届いた。
 
●
「お帰りなさい、ツェレン先輩! マーマンの群れは無事に倒せたんですね!」
 辺境都市群冒険者ギルドのカウンターにて、ライリーは険しい顔のツェレンを満面の笑みで迎え入れた。
 群れ? なんとかハーレムじゃないのか、そこは。
「……どうしたんです先輩、怖い顔して?」
 何故そんなところに喪失感を覚えるのか。ツェレンは両頬をパチンと叩き、謎の感傷を潰してライリーを見据えた。
「トーリと名乗る青年がこう言っていた。『アキュアリスタではないくさをしようよ』と」
 ライリーの表情に影が落ちる。急な表情の変化にツェレンが息を呑んだ。
「はないくさ……トーリ……。信徒の間で噂にはなってたけど、本当にいたんだ……」
 その声音は、最近消えかかっていた敵意で彩られている。
 ツェレンは何故か安堵する自分にどうしようもなく戸惑ってしまった。
 
●
「緊急事態です! ドゥジン信徒最大の敵が現れました!」
 依頼板の前に立つライリーの叫びに冒険者や職員の視線が集まる。最近はコレが無くなって久しかったため、安堵する者も辟易する者もそれなりにいた。
「トーリという青年。聞けばアカネ様とウィリアム様を自分の嫁にすると一方的に宣言したそうですね!」
 トーリ×アカネやトーリ×ウィリアムが、自由なカップリング選択肢のひとつであれば、ライリーもここまで怒りはしなかった。
「これはカップリングの自由を奪う、ドゥジン信徒への反逆行為です! 到底許されるものではありません!」
 ライリーは叫ぶ。力の限り。
 余談だがドゥジン信徒が必ずしもカップリングを好むわけではない。そもドゥジンは統合された芸術の神だ。自由やカップリングの神ではない。
「よって辺境都市群冒険者ギルドは、トーリの作る身勝手なハーレムに徹底抗戦することとします! 皆様、水着の準備はよいですか!?」
 季節に似つかわしくない単語の登場に困惑する冒険者をよそに、ライリーは依頼板に文書を叩きつけ、高らかに宣言する。
「水上都市アキュアリスタの湖にて、トーリとの水泳大会が開催されます! 皆様、ふるってご参戦ください!」
 カウンター内のツェレンがため息を吐く。裏腹に胸は高鳴る。
(叱るところだぞ、ここは……!)
 冒険者ギルド側もトーリとのはないくさを推奨しているため、士気を下げるようなことは言えない。それもあるがしかし。
 なによりツェレン自身が叱る気持ちになれなかった。何なんだ、これは。
 
●
 深夜。アキュアリスタの湖を泳ぐ影がひとつ。
「うん、やっぱり泳ぐのは気持ちが良いね」
 大きな月に照らされながらすいすいと泳いで、湖の畔に腰を下ろす。
「そうは思わないかな? 僕の花嫁たち」
 背後の桃の木の下に、麗しい男女が二人。
 男(ウィリアム)はトーリの無駄のない動きを観察し、女(アカネ)は如何にして彼の技を冒険者に伝えるかを思案していた。

解説

●目標  ・水泳大会でトーリに勝つ     ●できること  ・水泳勝負   350メートル(70ヘクス)を泳ぐ。PCの勝負参加は1人1回まで。   一勝負につきトーリも含めて最大5人まで参加可能。1人でもトーリに先着すれば勝利。   同着の場合はINIの一番高い者が勝利。冒険者の勝利数がトーリの勝利数を上回れば成功。   それぞれに1ヘクスの広さのレーンがあてがわれる。他者のレーンでゴールした場合は失格。   トーリのレーンは必ず中央になる。   特定PCと一緒に勝負したい場合は【】を用いたタグを記載してください。同じタグの記載があれば一緒に勝負できます。      装備が水着のみ、あるいは水着+ペットのみの場合、INIと移動力が20%上昇。   それ以外を装備している場合はINIと移動力が30%低下。   スキルの使用、競技者同士の協力は可。攻撃、攻撃スキルは使用不可。   装備が使用条件のスキルが多いため、「装備するスキルの【使用条件】」に注意。   ペットは後述のサポートが預かるため、ペット必須スキルは使用不可。      ・参加者のサポート   勝負参加者へのスキルの使用、妨害などは不可。参加者もこちらに回れます。   飲み物やタオルや着替えを用意する、ペットを預かる、応援などができます。    ●敵情報(MA=メインアクション、SA=サブアクション)  ・トーリ   移動10 INI40 抵抗40   水着ですが上方修正は入りません。      ・トーリの使用技    ・花の眼     パッシブ。参加者全員の位置を把握。         ・花惑い     セットアップで発動。効果は1ラウンド。     1d6で3以下を出したPCの「【タイミング】MA、SA」スキル使用を封じる。         ・秘伝の泳法     1ラウンド目のMAで必ず発動。3ラウンドの間、自身の移動+3、抵抗+5。     重複しない。         ・此花散姫     MAで発動。自身の周囲3ヘクスのオブジェクトを除去。      ●NPC(※基本空気です)  ・キサキ・アカネ、ウィリアム・リーンエス   花嫁さんと花嫁さんになってしまった方です。     ・ツェレン   人数不足なら勝負に参加。   スキルはチャージング×2。  ・ライリー・ベル   サポート。    ●状況  ・湖   水は綺麗で見通しは良いです。   周囲には桃の花が咲き、食べ物やアクセの屋台も出て賑わっています。   冒険者が勝てば、トーリは花嫁の返還を考えてくれるかもしれません。

マスターより

 おはこんばんにちわ、眞石ユキヒロです。  タイトルは語呂を優先して競泳にしましたが全然競泳じゃない。戦泳ですよこれ。  私自身はトーリ×アカネもトーリ×ウィリアムも美味しいと思います!  しかしこれはカップリングの自由を取り戻すための戦い……!    それはともかくアカネさんと王子の力になりたい、夏じゃなくても水着を着たい、泳ぎたい、春夏秋冬イチャイチャしたいなど色んな理由でご参加頂いて大丈夫です!  ドゥジン? 知らんな? で全然オッケーです! 楽しい水泳大会にしましょう!  念を押しますが、特殊なルールなので装備やスキルの設定にはくれぐれもご注意くださいませ。  なお、水着を着用していなくても競技参加は可能です。装備無しの場合は普通に衣服を着用しているものとして処理します。    質問があれば冒頭に【質問】と書いて相談卓に投稿すればライリーかツェレンが答えられる範囲で答えます。

リプレイ

●水泳大会サポーターズ
 辺境都市群冒険者ギルドにて。
(俺は最近思う。ドゥジン神は、芸術の神じゃなく武神もしくは闘神、戦神じゃないかって)
 ヒューマン男性、リンタロウ・イナバと一緒のテーブルにつき書類に向かうヒューマン男性、イズル・M(エム)・ヴォルゴールは内心でこう呟いた。
 荒ぶるライリー・ベル(受付嬢)の姿が、その考えを補強する。
(湖で競走だと? ギルド主催で? 有力な授恵者がいっぱい来て? ゲストは王子様と東方の名物女将さん? 商売のチャンスじゃねーか!!)
 向かいに座るリンタロウは水泳大会のサポートに商機を見いだしていた。
(という本音はさておいて、勝てるようにサポートはきっかりやるぞ)
「ナア、運搬と着替え用の荷馬車はギルドから借りるか?」
 眼鏡越しに鋭い目を向けてくるリンタロウに、イズルも赤紫の大きめの瞳を細める。
「荷馬車は俺の方で手配できそうだから、他に借りたいものを考えよう。……そうだな」
「「ゲル!」」
 顔を見合わせたまま二人でハモって、頬を膨らませて笑いをこらえた。貸し出しリストの作成は順調に行われていく。
「……今度はコッチが持ち込むもののリストを作成しようか」
「それならいっぱいあるぜ! 何せ金糸雀堂(雑貨屋)を営んでるからな! タオルだろ、飲料水だろ……」
「それは頼もしいな。なら、俺は食材と、鍋と……あとは……」
「コッチで用意できそうなもんなら頼んでくれて良いぜ」
 辺境都市群冒険者ギルド主催の水泳大会にサポート参加すると決めた二人の会話は恙無く(つつがなく)進んでいく。
 
●出た意見がほぼ同じって、怖くね?
 一方、別のテーブルを囲む水泳大会競技参加者たちの意見は(大雑把にまとめると)ほぼ一致となった。
 アカネさんは助けよう(ウィリアムはくれてやってもいい)。
「……わたし的にレイウェストさまを花嫁にした事を根にもってます(王子が花嫁になって全然構わないです)けど、アカネさんまで巻き添えになるのは止めないとですね」
 こちらは赤いショートヘアと、揃いの色の大きな瞳が健康的な美を引き立てるハーフリング少女、トーラの弁。
 アカネのついでに助ける、くらいの心持ちである。
「まあ勝とうが負けようがどっちでも良いよな。俺目をつけられないし、王子の方に関わりたくないし。一方的に愛だと思うものを叩きつける奴と結婚しようが別に」
 こちらは赤い鱗と四本の角が凜々しいリザードマン青年、サイラスの弁。
 そんなことを言いつつも称号(二つ名)が「ウィルの感謝状」であることには突っ込むべきなのだろうか。
「ウィリアム殿下はトーリ殿に謹んで進呈しよう」
 こちらは艶のある銀髪と同色のきつね耳、大きく膨らんだふさふさの尻尾が美しいハーフビースト女性、ベルク・オスマットの弁。
 帝国の友邦であるドワーフ王国で支援の調整をしてくれたアカネ殿(恩人)。殿下(主君)に花嫁衣装を着せるなどしたウィリアム殿下(怨敵)。どちらが守るべき対象かは自明であった。
「私もトーリ×ウィリアム(男性二名の組み合わせ)はありと思いますの……。強引に攫われた筈なのにいつしか恋……ストックホルム症……駄目ですわね。本気で惚れさせる気概は見せて頂きましょう」
 こちらは長い銀髪をくるりとまとめた清楚なヒューマン女性、サシャ・テーリングの弁。
 ドゥジン信仰の闇に飲まれかけていたが、最後の最後で思い直した。
(ドゥジンダンジョンで(この前)は作られた存在だったけど生ライリーさんもテンション高いー。カップリングの自由とはいったい……うごごご! だけど)
 こちらは桃色の長髪と、彼女の一族において祝福の色である緑の瞳を持つ、ちんまりと愛らしいハーフリング少女、アルマ・ヴァレンタインの考え。
 もはや花嫁(人質)は関係ない。何も言わないということは両方を助けるつもりなのだろうが。
 金髪と恥じること無き豊満な肉体を持つエルフ少女、シルク・メイプルリーフ。
 桜色の髪が波打ち、新緑を閉じ込めた宝石の瞳を持つエルフ女性、エフィルミア。
 彼女たちは如何にしてトーリ(神を名乗る青年)に勝利するかの相談に夢中で花嫁(人質)の話に入っていなかったが、そこまで白熱するということは両方助ける気なのだろう。
 ウィリアムの人望はギリギリで保たれていた。
 
●大会当日:準備タイム
 辺境都市群、水上都市アキュアリスタ。
 『授恵者と神の水泳大会』会場である湖は楕円形であり、畔の緩い傾斜に設置された桟敷席を囲むように満開の桃の木が植えられている。
 その向こうには舗装された道があり、食べ物やアクセサリーなどの屋台で賑わっている。
 湖の長軸約三百七十メートル上にはロープが六本張られ、五つのレーンが形成されている。スタート地点にはスタート台が五つ、ゴールの向こうにはたき火とゲルが設置され、荷馬車が置かれている。
 主催である辺境都市群冒険者ギルドは司会者としてサウンドボマー持ち職員、審判として天眼持ち職員を複数名確保している。
 しかし大会の規模に対して、集まった人数は物足りない。あと三十分ほどで開幕だというのに空席が目立つ。
 たったの二回で決着をつける(戦いの回数が少ない)ことがその理由のようだが……。
 
「天気も良く、見事な水泳日和です! 準備運動はしっかり行わねばなりませんね」
 イズルとリンタロウが用意した更衣室(ゲル)でいち早く着替えを終えたシルクは、元気いっぱい、準備運動に励んでいた。
 艶やかな水着(布面積の極端に少ない白ビキニ)を着用し、全力で身体をほぐす彼女の圧倒的なフェロモン(せいなるちから)にあてられたカップルが、屋台の前で足を止めて彼女を凝視しはじめた。
 ヒューマンとしては背の高い影がひとつカップルに近づく。
「そこのお二人さん! 『授恵者と神の水泳大会』観覧チケット、当日券がここに二枚あるぜ!」
 かき上げた銀髪と、眼鏡の奥の金の瞳。精悍な肉体に簡素な水着(トランクス)。リンタロウだ。
 冒険者ギルドが捌ききれなかったチケットを引き取り、サポート業務の合間、目についた通行人に売りつけている。
「あそこで準備体操してるシルクも参加者だ。どうだ、見たくないか? こっから見るよりよっぽど迫力あると思うぜ! 授恵者と神のスゲー泳ぎ(戦い)」
 男も女も、シャルガネの赤べこのごとく首を縦に振って、チケットを買い取った。
 シルクの周りに水着に着替えた他の授恵者たちも集まってくる。
 赤い鱗にスポーティーな水着(黒褌)が映える、引き締まった肉体美のサイラス。
 白い肌を締め付けるようなオシャレな水着(黒の水着)が華奢な身体を流麗に見せるベルク。
 髪色に合わせたオシャレな水着(ピンクのチェック柄のワンピース)が清楚な雰囲気を引き立てるエフィルミア。
 長髪を水色のリボンでまとめ、オシャレな水着(同じ色のフリル付きワンピース)で愛らしさを強調するアルマ。
 髪に赤と黄色の花を飾り、オシャレな水着(パレオ付きの水玉模様の水着)で有り余る元気にしとやかさを添えるトーラ。
 艶やかな水着(水色と白のストライプのビキニ)の上に赤いパレオを纏い、普段は抑えている色気を存分にさらけ出すサシャ。
 美男美女(授恵者)が増えるほどに、目を奪われ足を止める通行人の数も増えていく。
(これなら一気に捌けそうだな! 荷馬車のとこに戻って、タオルと飲料水を配りやすいようにまとめる時間が取れそうだぜ)
 リンタロウはニヤリと笑うと「この大会の観戦チケットはまだ残ってるぜ!」と叫び、野次馬たちの興味を一気に引きつけた。

 ゴール付近の畔では、赤銅色の短髪が爽やかなイズルが生活魔法でたき火を熾し、荷馬車に積んだ鍋や赤ワイン、水やシナモンやクローブやリンゴを取り出していた。
 包丁を握った瞬間、ふと思いつく。
(この大会で事故が起きないとも限らないよな……)
 妨害有りの大会である。何が起きても不思議ではない。
 ホットワインならそう時間をかけずに用意できるだろう。ならば先に救助要員を探しておく。
 自分も誰かが負傷したときのためにヒール2や解呪2をマインドセットしているが、更に備えておけば、いざという時にも慌てずに済むだろう。
「ウォーターウォーク、スィフトスイマー持ちのキャスターはいらっしゃいますかー?」
 赤が映える聖職者のローブを大きく揺らし、イズルは立ち上がる。
 つい先ほどまでがらんとしていた観客席は、チケットを握りしめる客であふれかえっていた。
(これならいてもおかしくないよな。一応、ギルドの人にも声をかけておこう)
 帰ってきたリンタロウにたき火の管理をお願いし、イズルは観客席で手を上げる者へたちへと向かった。
 
 準備運動を終えたサシャが、鉢合わせたライリーに声をかけた。
「お疲れ様ですわ、ライリー。その、最近はどんな調子なの?」
 最近のライリーに元気が足りないと感じての発言だった。
 ライリーは誕生日に冒険者さんたちから貰ったばーすでーかあどを毎日読んで良い気持ちになっていると恥ずかしげに答える。
 サシャは穏やかに目を細め、小首をかしげた。
「安心しました。元気がないのではなく気持ちが落ち着いた、といったところでしょうか? 最近はあまりハーレムと言っていない様子でしたし」
 ライリーは自分が亜人・魔獣ハーレムを潰したがるのは結局八つ当たりだ、八つ当たりで人の戦意を煽っていいのかと言い、表情を曇らせた。
「少しずつ、楽しいことを増やしていきませんか? そうして過去の(そういった)悩みをゆっくりと薄めていきましょう」
 サシャの優しい提案に、ライリーの表情から曇りが消えていく。
 
 コースを目視で確認するエフィルミアの隣に突如、水着を纏ったトーリが突風を伴い現れた。
「わ! えっと、初めまして、エフィルミアです!」
「エフィルミア。春の宝石、かな? 雅な名前だね」
「ありがとうございます! ……じゃなくってですね!」
 エフィルミアはトーリに向き直り、右手を胸の前でぐっと握った。
「神様と勝負出来るなんて最高に面白いですね! シーフとして速さで負けるわけにはいきません! 本気でやりにいきますよ!」
「……楽しみにしているよ!」
 トーリは嘲りを含んだ笑みを返す。それからエフィルミアに背を向け、スタート地点に歩いていった。
 その背中にエフィルミアはより闘志を滾らせ、このコースを一番に泳ぎきるシミュレーションを開始した。
(問題は神様がどういう妨害をしてくるか、だよね……!)

●一回戦:選手紹介
「一回戦の参加者はシーフのトーラ様!」
 トーラがレーンの前に設置されたスタート台に上ると大きな拍手が起こった。しかしトーラは引き締まった表情のままだ。
「アキュアリスタの湖はわたしの庭も同じです。神様といえ、わたしのホームグラウンドで勝てると思わないで下さいね!」
 スタート台の前で不敵に笑うトーリに、びしぃっと人差し指を向ける。アキュアリスタ出身のトーラにとっては、この湖も勝手知ったる場所である。
 神(?)への大胆な宣戦布告に、観客のトーラへの声援が強まった。
「こんな雅な風景が庭なんだね。ちょっと羨ましいかな?」
 トーリは挑発するように口の端をあげ、目を細めた。
 観客が落ち着いたところでサウンドボマー発動中のギルド職員(司会者)は次の参加者を紹介した。
「ヒーラーのシルク・メイプルリーフ様!」
 シルクがスタート台に上ると、女性としては高い身長と豊満な肉体に視線が集まった。拍手喝采である。
「皆さん、暖かい拍手をありがとうございます! 精一杯勝利に貢献するつもりです」
 シルクの宣言に、観客がヒュウ! と指笛を鳴らして更に盛り上がる。
「神を名乗る謎の青年、トーリ様!」
 トーリは颯爽とスタート台に上った。
 突風が吹いて、トーリに与えられていた関係者席にキサキ・アカネとウィリアム・リーンエス(二人の花嫁)が登場した。
 風はすぐに止んだが、渦巻く桃の花が二人を取り巻き、簡単には近づけなさそうだ。
 トーリ、アカネ、ウィリアムの美しさに息を飲む者も、歓声を上げる者もそれなりにいた。
「ヒーラーのアルマ・ヴァレンタイン様!」
 アルマがスタート台にちょこんと上る。スタート台に乗ってもなお低い身長に「可愛い!」という歓声が殺到した。
「ありがとー! ボクも頑張るからねー!」
 自分に手を振る観客に、アルマは笑顔で大きく両手を振り返した。
「ウォーリアのツェレン様!」
 ツェレンは冒険者ギルドからすれば職員の一人(身内)だが、一応、様はつける。
 拍手や歓声、指笛に包まれて、一回戦の選手紹介は終わった。
 
●スタート!
「それでは選手の皆さん、準備はよろしいでしょうか? よーい……」
 司会者が手にした旗を天に掲げた。
「ドン!」
 スタートの合図が響いた瞬間、トーラ、シルク、アルマ、ツェレンをトーリの花惑いが襲った(桃の花の渦が包んだ)。
「なにこれー!? 【タイミング】メインアクション、サブアクション(何個かのスキル)の使い方、思い出せなくなっちゃった!?」
 アルマの身体のみが桃の花の渦に包まれたままになる。
 動揺する競技参加者や観客を尻目に、トーリは秘伝の泳法で移動と抵抗を上げ、真っ先に湖に飛び込んだ。
「絶対に負けません!」
 トーラは勢いよく飛び込み、クロールとスィフトスイマーでぐんぐんと速度を上げ、トーリを追い越していく。
 次いでツェレンが飛び込み、アルマも負けじと飛び込んだ。
(ふつーに泳いでも勝てなさそうだしトーリさんには申し訳ないけど)
 アルマにはそんな思いを抱えながらも用意した、周到な作戦があった。
 スィフトスイマーでトーリを追いかけて、マジカルポケットに仕舞っていた武器を取り出し、光縛封でトーリを閉じ込める。
 しかし自分を取り巻く桃の花に記憶を奪われたかのように一部スキルの使い方が思い出せない。
(まぁ、今は仕方ないよね)
 思い出せないものは一旦置いておく。アルマは全力でトーリを追い越した。まだチャンスは残っている。
 シルクもトーリの急加速に備え、スィフトスイマーを用いて全力で前を目指した。
 再び、冒険者たちを桃の花の渦が遅う。
(えっ、あれ!? スキルの使い方がわからなくなりました!?)
 今度はトーラとアルマの二名が一部スキルを封じられた(桃の花の渦に包まれたままになった)。
 トーリが猛スピードで泳いでいき、トーラも全力で食らいついていく。
 アルマだって負けてはいない。二人には追いつけないが、なかなかのペースで泳げている。
(そろそろ光縛封を発動するタイミングですか? トーリさんにも近づけそうですし)
 シルクは祈ったが、何も起こらなかった。光縛封を発動するためのヒーラー用武器(武器)を装備していないからだ。
(うっかりしてしまいましたね。ですが私も良い勝負ができていますし、このまま全力で泳がせてもらいます!)
 シルクはスィフトスイマーを発動し、トーリとトーラの勝負に食らいついていく。
「そこだー!! いけー!! まくれまくれ!!」
 声を張る者が湖畔に一人。リンタロウは額に汗して大きな旗を振り、授恵者たちを声で鼓舞する。
 トーリの花惑いが再び授恵者たちを包む。
(ある意味運が良いと思って良い、のかなー? でもボクも結構良い勝負ができてるんだよね。最後まで頑張るよー!)
 アルマは用意してきた光縛封、招霊呪怨縛、スィフトスイマー(スキルたち)に謝りながら全速前進する。
(絶対に、絶対に勝ちます! ここもわたしの庭ですから!)
 トーラが先手必勝とスィフトスイマーを用い、トーリに競りかける。
(神よ、どうか私の戦いを見守ってください……!)
 シルクもスィフトスイマーで二人を追いかける。
 全員がほぼ同時にゴール地点を越えた。

●
「どっちが先に着きました!?」
 湖から上がり、イズルが待つたき火に駆け寄りながらトーラは問いかける。あれだけの激しい水泳(戦い)の後でも、息切れひとつしていない。
「正面から見た感じだとわからなかったな。このあと発表になるだろう」
「そうですか。でもわたしは絶対にわたしが勝ったって信じています!」
 勝ち気な瞳を煌めかせるトーラに、リンタロウがタオルと飲料水を渡した。
「勝っても風邪とかひいたら困るからな。イズル、俺も隣で生活魔法を使って(火を熾して)水着を乾かせるようにしとくぜ」
 リンタロウは水着を吊すための簡易な物干し台をとりに荷馬車に向かう。
「トーラは十七歳だったよな。なら、アルコールを飛ばすとイマイチな味になるホットワインより甘酒の方が良いかな」
 リンゴとシナモン、クローブを入れたホットワインは弱火にかけられ、いいにおいを漂わせている。
「はないくさはシャルガネの祭り……のはずだし、甘酒はちょうど良いよな、うん」
 はないくさはシャルガネを中心に辺境都市群一帯で行われている祭りなので、その認識も間違いではない。
 イズルはレシピを確認し、鍋に水を入れ火にかける。
「ふかふかのタオルですね。有難く使わせていただきます」
 シルクが笑顔でタオルと飲料水を受け取り、トーラ、ツェレンと共に更衣室(ゲル)に入っていく。
 アルマだけは少し違った。
「ボクの半径十五メートル以内に入らないように気をつけてね!」
 パァン! と激しい音がして、無敵の金剛撥水ボディが発動した(アルマの体に纏わりつく水滴が弾き飛ばされ円を描いた)。
「じゃあ、ボクも着替えてくるね。イズルさん、リンタロウさん、どうもありがとー」
 アルマはリンタロウから飲料水のみを受け取り、何事もなかったかのように更衣室(ゲル)の中に消えていく。
 
●一回戦:結果発表
 リンタロウの熾した火で水着を乾かしながら、授恵者たちは結果発表を待った。
 二十歳未満のトーラ、シルク、アルマは甘酒を飲む。酒癖の悪いツェレンはライリーに強く勧められ、飲料水。
 二回戦参加メンバーはすでにスタート地点へ向かっている。
「結果発表です! 皆が気になる一着は~!」
 全員の手が止まる。張り詰めた空気に、待ち望んだ結果が響いた。
「トーラ様でーす! 四着までの僅差の戦いを先手必勝で見事に制しましたー! 二着はぁ~、トーリ様ー!」
 トーラが甘酒を置いて勢いよく立ち上がり、片手を天に掲げた。観客も参加者も、全員が喜びを露わにした。
「やりましたよ! これでアカネさんの返還に一歩近づきましたね!」
「確かに見事だったよ。でも、次はどうかな?」
 水を滴らせたままのトーリが気配もなく現れた。
 誰かが声をかける前にトーリは消え、次の瞬間にはスタート付近に現れた。
「二回戦も楽しめるといいよね、僕の花嫁たち?」
 口元だけで笑っているトーリに問いかけられたアカネは鋭い視線を返し、ウィリアムは困ったように笑った。

●
「じゃあ、ボクは屋台の食べ歩きを楽しませてもらうね」
「食べ歩きですか! 私も一緒によろしいですか?」
 『見えない胃袋』を心のどこかに抱えるアルマに、食いしん坊のシルクがついて行く。
 目指すは屋台! アルマが求めるはまだ見ぬ料理(ゲテモノ含む)。シルクが求めるは美味しいものをとにかくたくさん。
 イズルとリンタロウは、サイラスから預けられた大福という名の狼に手を焼いていた。
 サイラス曰く「ヤンチャだから気をつけてくれよなー」。今も乾かしている最中の水着に食らいつこうとしている。
 イズルが大福を全力で抱きしめて、水着への被害をゼロに抑えることに成功した。
 しかしこの狼、力が強い。
 
●二回戦:選手紹介
「二回戦の参加者はシーフのエフィルミア様!」
 エフィルミアがワンピースの裾をひらつかせ、スタート台に上る。
「皆さんの応援を無駄にはしません! 絶対に勝ちます!」
 上がる歓声に対し、エフィルミアは勝ち気な笑みで対応した。自分の魅せ方をよく理解している。男性客が「エフィルミアちゃ~ん!」と叫んだ。
「ヒーラーのサシャ・テーリング様!」
 サシャが踏みしめるようにスタート台に上る。清楚な外見に反する大胆な水着に、観客の興奮も高まる。
「勝利に貢献できるよう、できる限り努力させていただきます」
 ウィリアムとトーリ(本人たち)がいる場では信徒的発言はしない。ドゥジン信仰のマナーを守った上で戦いへの意気込みを述べる。
「皆様ご存じ、トーリ様!」
 スタート台に水を滴らせ、トーリは位置につく。
「ウォーリアのサイラス様!」
 ドシリとスタート台に上る。授恵者側参加者の黒一点に、女性の黄色い声が上がる。
「マジでか」
 頑張るなどとは言わない。これだけの歓声に晒されても、自然体であることがサイラスの強みであった。
「シーフのベルク・オスマット様!」
 ベルクはスタート台に上がらず、トーリに詰め寄った。
「トーリ殿、我が勝ったらアカネ様は諦めてくれぬか? ウィリアム殿下は謹んで進呈するから」
 単刀直入である。トーリはぷっと吹き出し、ウィリアムを見た。哀れみの表情で。
 向けられた視線にウィリアムはへらりと笑うだけだった。
 一応サシャは(信仰のあれこれはあるが)ウィリアムもかえしてもらおうという意見、エフィルミアはどちらとも言わなかったがやる気満々であることは付け足しておく。
 これ以上言葉を重ねると競技前にぐだぐだな展開になってしまう可能性があるため、二人とも黙ってはいるが。

●スタート!
「ベルク様、主張は理解できましたので、スタート台に上がってください!」
 司会が速やかな進行を促す。
 ブーイングが起こる。観客は二十六歳の美少女と自称神の美青年のやりとりをもう少し楽しみたいようだが、尺というものは存在する。
「我の主張を理解。それはトーリ殿もだろうか?」
 司会の催促も観客のブーイングもベルクは気にしない。目標に向けてまっすぐだ。
「考えないことはないよ。……考えないことは」
 ニヤリと笑うトーリの曖昧な答えにベルクは眉間に皺を寄せながらもスタート台に上った。
 勝てば良いだけだと覚悟を決め直しながら。
「選手の皆さん、準備はよろしいでしょうか? よーい……」
 司会者が旗を天に掲げた。
「ドン!」
 トーリの花惑いが冒険者に襲いかかり、エフィルミア、ベルクに纏わり付く。
 エフィルミアは幸運の星で振り直し(抵抗)を試みるが、一が出た(振り払えなかった)。
「邪魔するより泳ぐ方が話が早いであろう?」
 脳筋ではない、力量があるからこそ取れる作戦だ。
 ベルクは【タイミング】セットアップのスキル(先手必勝)を発動し、一番に湖に飛び込んだ。
 トーリは先ほどと同じように秘伝の泳法で自己強化を図ったが、ベルクにやや出遅れることとなる。
「ホライゾナルジャンプ! ホライゾナルジャンプの使い方は……あー、もう!」
 どうしても思い出せない。エフィルミアは腹を決め、「行きます!」と温度耐性を発動しながら飛び込む。
 サイラスはスィフトスイマーで他の三人をぐんぐんと追い越していく。
(全力移動。まあのんびりと)
 そんなことを思いながらも、現在先頭を行くのはサイラスである。
(出遅れてしまいましたが、これなら……!)
 最後に飛び込んだのはサシャ。持ち込んだダマスカス鋼の祭刀(武器)は移動を阻害したが、水泳スキルのおかげで想像よりは上手く泳げている。
 スィフトスイマーでトーリに詰め寄り、光縛封を発動した(祈った)。
 六角形の光の檻がトーリを閉じ込め、彼の移動を阻む。
 トーリはそれでも次の花惑いを発動する。今度は桃の花がベルクとサシャを取り巻く。
(なんですの、この感覚は? 頭の中から一部スキルの使用方法だけが消えてしまったみたい……)
(何があろうと躊躇わず進めば良いだけじゃ!)
 ベルクは動揺せずに先手必勝を用い、ゴールのみを目指す。トーリの先行を許す気は一切無い。
(これはもう実質、ベルクさんやサイラスさんとの勝負だよね?)
 エフィルミアもほぼ同時に先手必勝を発動し、更にスィフトスイマーで加速し一番を目指す。
 トーリは此花散姫で光の檻から色を奪い、塵みたいに崩した。それから移動を再開する。
(あのなんか誰だっけ? にプレゼントしてやるかー!)
 サイラスは隣を泳ぐトーリにエーテル流体弾を投げつけたが、すんでの所で躱されてしまった。
 役割は果たしたが、勝負はまだ続いている。花惑いに捕らわれたままのサシャも全力で泳いでトーリに並ぶ。
 次の花惑いはサイラスを包み込んだ。これで二回戦の参加者は全員、花惑い経験者になった。
(何これ? なんか、何個かのスキルの事考えると頭がぼんやりするっつーか……)
 ようやく花惑いから解放されたベルクは先手必勝を発動し、天駆(てんく)で太陽が照らす宙へ派手に跳び上がる。
「いけー! そのまま勝っちまえー!!」
(大丈夫じゃ。わらわは必ず勝利してみせる)
 大きな旗を振るリンタロウを横目で捉えながら大きく距離を稼ぎ、飛沫を上げて水中へ突き刺さった。
(私だって絶対に負けないよー!)
 続くエフィルミアも先手必勝とスィフトスイマーでベルクを追いかけてゆく。
(まだプレゼントは残ってるぜ、敗北ってのがな)
 サイラスがトーリの姿をチラリと確認しつつ全力で泳いでゆく。トーリは猛スピードでまくりを仕掛けている。
(これでは追いつけそうにありませんね。でもきっと皆さんが勝ってくれますから、大丈夫です)
 武器を持ったサシャは自らを傷つけないように注意し、優雅にゴールを目指した。

●
 畔に上がった冒険者を、たき火を囲むイズルとリンタロウが迎え入れた。
「ホットワインと甘酒を用意してあるから、落ち着いたら飲みに来てくれ」
「これ、タオルと飲料水な」
 イズルはサイラスのペット(大福)を抱きすくめたまま固まっている。その間にリンタロウは参加者に素速くタオルと飲料水を配っていく。
「イズルくんいつもサポートありがと!」
「リンタロウ殿も応援、感謝する」
「まずは祭刀を拭かないと……。とても重宝しますね、ありがとうございます」
 エフィルミア、ベルク、サシャが次々に感謝を述べる。
「見ててくれてありがとな。大福、結構暴れてた感じ?」
「……干してた水着に噛みつきそうになった」
 つまり直前で阻止できたということだ。
「大福、おれについてこい。更衣室(荷馬車)行くぜ」
 大福はわふっと鳴くと、力を緩めたイズルの腕から抜け出し、サイラスの後に続いた。
 エフィルミアはアルマが作った無敵の金剛撥水ボディゾーンの中心に立ち、周囲に警告した。
「今から水を飛ばしますので、十五メートル以内には立ち入り禁止です!」
 パァン! と派手に音を響かせて、エフィルミアが水分を弾き飛ばした。
 それからエフィルミアはベルク、サシャと連れたって更衣室(ゲル)に入った。

「ホットワイン、美味しいし暖まるね」
 イズルから差し出されたホットワインを口にしたエフィルミアがふわりと微笑んだ。
 サシャ、サイラス、ベルクもホットワインを飲み、温かなたき火を囲む。
 落ち着きのなかった大福は、サイラスの傍らで丸まって眠っている。
 イズルはリンタロウに甘酒を差し出した。
「応援もお疲れ様、だよ」
 虚を突かれたリンタロウは目を丸めて口を大きく開いた。
「お、おう! ありがとな!」
 代わりに飲料水を差し出してみる。
 和やかな空気を纏う冒険者たちを、濡れたままのトーリが遠くからじっと眺めていた。
  
●決着
 一回戦の参加者たちも、たき火の周囲に集まってきた。
 アルマとシルクは二人で買い込んだ大量の屋台飯を頬張っている。これで食べ歩きもしてきたというのだから驚きだ。
 トーラは結果が気になり、甘酒を何杯もおかわりしながらあちこちをうろうろしていた。
「結果発表です! 今大会の結末を左右する一着は~!」
 長い溜めが入る。桟敷席を埋める観客も、運営の冒険者ギルドスタッフも、競技参加者も全員が沈黙し、司会の次の言葉を待った。
「ベルク様です! 三着までを授恵者の皆様が独占し、トーリ様はなんと、四着です!」
 ベルクが勝利を噛み締めるように俯き、無言で拳を握る。
「たったの十五秒。しかし一瞬たりとも目の離せぬ戦いが繰り広げられた今大会もこれで閉幕となります! 観客の皆様。競技参加者様、サポート参加者様に盛大な拍手をお願いいたします!」
 司会が深々と頭を下げると、観客は割れんばかりの歓声と拍手と口笛と。とにかくあらゆる手段で音を鳴らし、授恵者たちを祝福した。
 授恵者たちも礼をしたり、手を振ったり、歓声で返したりとそれぞれの手段で観客に応えた。
 『授恵者と神の水泳大会』は、授恵者たちの大勝利で幕を閉じた。
 
●そして
「これでアカネ殿を諦めていただけるだろうか」
 自分たちを見つめていたトーリに、ベルクが声を投げる。
「ついでにウィリアムの返還も、少しは考えてあげるよ。じゃあね」
「ちょっと待て!」
 濡れたままの身体を翻したトーリにリンタロウが声をかける。
 背を向けたまま立ち止まるトーリに、リンタロウはタオルと飲料水を持って近づいた。
 タオルをトーリの方に引っかけ、リンタロウは照れを隠すようににんまりと笑う。
「神? にも施しといたらこの先良いことあるかもしれないしな」
「はないくさはシャルガネの祭りだろう? だから甘酒も用意したんだ。神の口に合えば良いけれど」
 イズルも甘酒の入ったマグカップを差し出した。
 トーリが振り返りざまに受け取り、一口飲んだ。砂糖と塩と酒粕と生姜(ジンジャー)の味がした。
「悪くないね」
 飲み干して、マグカップをイズルに返却する。トーリの笑顔を見たエフィルミアが思ったことを口にする。
「今の笑顔、競技前にしてた意地悪な笑顔と何か違いましたね!」
 トーリはリンタロウから飲料水を受け取り、何も答えず授恵者たちに背を向けた。
「じゃあね、力ある者たち」
 言葉と同時にトーリだけでなく、アカネとウィリアムも会場から姿を消した。
 アカネ(とウィリアム)は今この場ではかえしてもらえなかったが、自分たちがトーリに完全勝利したことは事実だ。
 今はそれを喜ぼうと、授恵者たちはマグカップで乾杯をした。それぞれに笑顔を浮かべて。

マスターコメント

冒険者の皆様、水泳大会にご参加頂きありがとうございました! 見事に二戦以上行い全勝したため、無事に大成功です! 今回は運ゲー要素が強かったため、一回戦、二回戦の参加者様からは思わずうなったプレイングの方、 逆にサポートの方は1D6で値が大きかった方をMVPを選出いたしました。 ちなみに私は今回水泳スキルのことをすっかり忘れていたため、水泳スキルをつけてきてくださった方には移動力を1おまけさせて頂きました。本当に申し訳ございません。 でもそれがなくても皆さん充分に速い上、作戦が完璧でした。よく考えて頂けてとても嬉しかったです。 改めて、ご参加いただきありがとうございました! 眞石ユキヒロでした。
イベントシナリオ

イベントシナリオ難しい 報酬:多い9 / 8〜25人

2022年05月09日 17時05分47秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. エフィルミア

    シーフのエフィルミアです!よろしくお願いしますっ。 ドゥジンとやらは良く分かりませんが、最速を決める勝負ならやらないわけにいきません! シーフの本気を見せつけてやりますよー!

  2. ライリー・ベル

    皆様、お集まりいただきありがとうございます。 辺境都市群冒険者ギルド職員、兼、ドゥジン信徒のライリー・ベルです。 当依頼の大成功条件は「トーリと2戦以上行い、全勝する」となっております。 くれぐれも装備やスキル、スキルの【使用条件】にはご注意くださいませ。

  3. トーラ

    シーフのトーラです。 ドゥジンについてはよく分からないですけど、アキュアリスタの湖はわたしの庭も同然です。 神様といえ負けませんよー! ライリーさんに質問です! 競技のスタートは、飛び込み台みたいなものから始まるんでしょうか? それとも、湖に入った状態からですか?

  4. イズル・M・ヴォルゴール

    ヒーラーのイズルです。よろしく。 参加者サポートで参加します。 温かい飲み物と、暖を取る火の管理を予定しています。 飲み物は甘酒とかホットワインとかにしようと思ってます。

  5. ライリー・ベル

    トーラ様、ご質問ありがとうございます! 【回答】 スタートは台からの飛び込みとなります。 こちらはメインアクション、サブアクション、どちらの扱いでも構いません。 どちらであっても(解説にある)装備によるINI、移動の能力修正の影響は入ります。 他にも何か気になる点がございましたらご質問くださいませ!

  6. トーラ

    回答ありがとうございます。 すみません。あといくつか気になる事が出てきたのでこちらもお願いします! Q2 ウォーターウォークやエアーライドなど、スキルを使って泳ぐ以外の方法でゴールを目指すのは反則でしょうか? Q3 水着着用or非水着装備でかかる補正の端数はどうなるでしょうか? Q4 トーリさまの移動10とは、サブアクションで泳げる数字でしょうか? その場合、メインアクションで20ヘクス移動できるということになるでしょうか?

  7. ライリー・ベル

    トーラ様 ご質問ありがとうございます。 A2 どちらも反則ではありません。 ですがゴールしたと見なされるのは「自分のレーンの水中で70ヘクス地点を突破した瞬間」です。 ですので、「ゴールすることが目的」の場合は70ヘクス地点突破前に水中に戻るよう調整をお願いします。 なお、一度も水中に入らない場合は水着等の装備によるINI、移動の補正はプラス、マイナス共に受けません。 一度水中に入ってからエアーライドなどで水上に出た場合などは装備が濡れているため、INI、移動のマイナス補正が反映される(水着のプラス補正は反映されない)のでご注意ください。 そして、トーリ……様のスキルは水上にいる相手にも有効ですのでその点にもお気を付けください。 A3 端数は水着or水着+ペットは切り上げ、それ以外着用は切り下げです。 A4 そのトーリ……通りでございます。 トーリ……様はメインアクションでは20ヘクス、サブアクションでは10ヘクスの移動が可能です。 「秘伝の泳法」を発動された場合はメインアクションで26ヘクス、サブアクションで13ヘクスの移動が可能になります。

  8. トーラ

    回答ありがとうございます! トーリさまの泳ぐ速度が予想以上に速いですね……。 妨害がない場合、トーリさまは3ラウンドでゴール出来ますけど、こちらも最速で3ラウンドになるので、INI勝負になってしまうんですよね。 ちなみにエアーライドで水上を走る場合、最速で3ラウンドなんですけど、花惑いで移動スキルを封じられると4ラウンド以上かかるので止めておきますね。INIも下がりますし。 とりあえずINIが高くて、かつ先手必勝の使えるシーフが水着を着て泳げばある程度の確率で勝てますけど、確実を期すか、それ以外の人が勝ちを目指すには誰かが妨害に回る必要がありますね。 確実なのはオブジェクト召喚でメインアクションを消費させることでしょうけれど、花惑いを免れて、かつトーリさまに届くオブジェクトを召喚出来る人が必要になるので、これも運になるでしょうか……(うーん) とりあえず、わたしは確実に勝てるよう水着+先手必勝で行きますね。 勝負が2回以上行われるならそちらでも負けるわけには行きませんし、どちらに出るかも宣言して置いた方が良いかもですね。 とりあえず、わたしは1回目に出場しようと思います。

  9. エフィルミア

    質問と回答ありがとうございます! トーリさん早すぎー!!ずるーい! 私もシンプルに水着+先手必勝で勝ちを狙いに行こうと思いますっ。 トーラさんが1回目に出てくれるので、私は2回目で行きますね!

  10. サシャ・テーリング

    ヒーラーのサシャです。お見知りおき下さいませ。 何かしら手立てを思いついてから挨拶も…と思いましたら、日が過ぎてしまいました。 残念ですがまだ思いつく事がありませんので、皆さまのお手伝いをさせて頂こうと思います。 私に出来る事がありましたらお申し付けくださいね。

  11. No.12

    シスターシルクです なるほど最初の3ラウンド【光縛封】でコースをふさげば勝利の目が出るということですね とりあえず【光縛封】1つは請け負いましょう

  12. トーラ

    そうですね。花惑いで封じられる可能性はありますけど、光縛封で動きを止めて此花散姫で解除を強いれば、メインアクション移動ができなくなるのでその分有利になる筈です。 ただ、最初のラウンドにINI40で13ヘクス進むので、スウィフトスイマーで距離を詰めないと届かなくなるので注意ですね。

  13. アルマ・ヴァレンタイン

    ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー それじゃあボクも水着とスィフトスイマー、あと光縛封を準備していくね 花惑いのスキル不能で事故る可能性もあるから妨害?めんばーも 1回目2回目のどっちかに固まって高確率で一勝をとりにいくか バラけて全勝大成功を狙うのとどっちがいいんだろー…?

  14. リンタロウ・イナバ

    キャスターのリンタロウだ、よろしく。今んとこはサポートに回るつもりだ。

  15. イズル・M・ヴォルゴール

    焚き火だけど、ゴールに当たる付近で設置して大丈夫? コースがオーバルでスタート・ゴールが同じ位置でも「ゴールに当たる付近」って書けばなんとかできそうだと思った。 あと、ゴール箇所が不明だから遠かった時の保険に馬つれてくけど荷馬車がないから、ゴールが遠くなると多くの荷物はそこまで運べない。 書き手の方がなんとかしてくれると信じる方向で。 遠くなるなら、タオルと着替え程度は運びたい。 あと、女子の着替えスペースも受けたいから、それに使えそうなゲルとか持ってる人いたら借りたいけど、プレイングで借りる旨記入でなんとか出来るって信じてみる。 基本、「書いたらなんとかなるって信じてみる」スタイルで挑むので、ダメだったときは申し訳ない。

  16. ライリー・ベル

    イズル様 ご質問ありがとうございます。 焚き火は大丈夫です。火の始末はしっかりとお願いしますね。 湖は楕円形で、長軸は約370メートルです。ゴール地点から最も近い畔までは約20メートルになります。 今大会には冒険者ギルドも力を入れているため、プレイングに記載いただければ荷馬車やゲルも貸し出します。 更衣室は男女別に用意する予定ですが、どなたかの所有物を使っていただいても大丈夫です。

  17. サシャ・テーリング

    皆さま、色々と質問して下さりありがとうございます。 状況が目に浮かんでまいりました。 ライリーさま、質問ですが トーリの使用レーンを一番端にして貰う事は可能でしょうか? 又は救助員と言う顔をして、湖の真ん中(レーンの境)に待機できますか? 光縛封の射程が短いのと、私では到底追い付ける気がしないので 予め先回りして、途中で足止め待機したいのですが レーンが遠いとそこまでですので…いっそお友達のキャスター様にお願いして 初手にスタティックフィールド系とか…とか悩ましいですわ。

  18. イズル・M・ヴォルゴール

    ライリーさん、細かい説明ありがとうございます。 色々できそうで良かったです。 でも、実は質問…じゃなくて、どっちかっていうと参加者の皆さんに聞いて…た…(顔覆い 暖取れる場所はゴール近くが便利だよね? あと、参加者サポートする人ってリンタロウさん以外にいますか? 人数少ないので色々手を出そうと思ってるから、仕事が被らないようにしたい。

  19. ライリー・ベル

    サシャ様 トーリ……様のレーン移動は不可ですが、トーリ……様の隣のレーンにという希望は受け付けます。 同じ回で3名以上が隣のレーンを希望した場合は1D6で高い値を出した人が優先的に隣になります。ご容赦ください。 トーリ……様は「花の眼」で参加者全員の位置を把握するため、救助員のフリは難しいですね。 スタートは全員同じ場所からでお願いします。

  20. ライリー・ベル

    イズル様 失礼しました! ……私はパセリ、私はパセリ……。あくまで冒険者の皆様の添え物……。でもパセリ美味しい……。デリシャス。 これだけではなんなので、他にも補足を! 競技中以外は、競技参加者以外の方も湖に入れます! レーンの中にさえ入らなければ好きに遊んでいただいて構いません。 屋台も充実しておりますので、そちらを見て回ることも可能です。 メインは大会ですが、楽しめる部分は楽しんでいってください!

  21. ライリー・ベル

    連投になって申し訳ございませんが、 当依頼は明日5/4 12時出発です。 改めて、プレイング・装備・スキル・スキルの【使用条件】のご確認をお願いいたします。 何度も念を押しておりますが、今回はルールが特殊ですので、装備とスキルの【使用条件】にはくれぐれもお気を付けくださいませ!

  22. エフィルミア

    イズルくん焚き火の用意ありがと! 泳いだ後のサポートもばっちりで助かるよー! あと少しで出発!皆で勝てるように頑張りましょー!

  23. リンタロウ・イナバ

    応援とタオル等の物資提供に回る予定、後は細々としたあれそれに回れたらと思ってる。向こうでもよろしくな。

  24. イズル・M・ヴォルゴール

    荷馬車、スレスレで用意できたので、それを女子更衣室に提供してます。 一応ゲルも借りれたらってことでプレに入れてあります。 文字数関係で手が行き届かないところが多いと思うので先に謝っておきます。 >ライリーさん いえ、気にかけてもらえて嬉しいです。丁寧な対応もありがとうございます。 パセリは美味しい。同意 >エフィルミア嬢 よろしくお願いします。がんばってくださいね。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0