お医者様でもシグモルの湯でも
コースケ
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シナリオID:2005
オープニング
パンクリアース学園。昨今は何かと騒動の多い場所ではあるが、元は騒動がなかったかといえばそうでもない。頻度は違えど大小様々な事件は起きていたし、現在、学園の農場で起きている言い争いは過去から続くある意味伝統的なものであった。
「クロード! 貴方、サウゼル竹を畑に植えるなんてどういうつもりよ!?」
「ははは。よくサウゼル竹を知ってたなリエル」
「今朝見たらウチの花壇に筍が林立してたから調べたのよ! というか、ここを竹林にする気!?」
クロードと呼ばれた少年は特殊作物研究部(通称:特作研)の部長であり、それに食って掛かっているリエルという名の少女はガーデニング愛好会(通称:庭愛会)の会長である。
どちらも少人数の部活であるため、割り当てられた1つの区画を分割してハーブや作物を育てているのだが、やれそちらの方が日当たりが良いとか、やれ収量が悪かったのはそちらの植えているハーブに虫除け効果があるからなど事あるごとに言い争う間柄であった。
「というか、お前の所のイグノ薄荷がウチの畑を侵食して来た時、『植物が根を伸ばすのは当然じゃない。そちらの畑まで伸びた分はそちらで対処して貰えるかしら? 折角だからハーブティーなど嗜んでは如何? そうすれば少しは貴族らしい振る舞いも身に付くのではなくて? オーホッホッホ』と言ってたのは誰だったかな!?」
「うっ、よく一言一句正確に覚えてたわね」
「あの時の言葉をそっくりそのまま返すぞ。花壇を竹林にしたくなかったら、頑張って対処するんだな。そうだ。頭を下げれば手伝ってやらなくもないぞ?」
「ぐぬぬ。誰が貴方になんか頼むものですかー!!」
●その日の夜
「ああもう、クロードの奴ー!」
「……その結果がこれですの?」
女子寮の部屋には、筍料理が大量に並んでおり、同室で友人のマルグリットが呆れた目でそれを口にするリエルを見ていた。
「なにも全て食べなくても良いのではなくて?」
「実家が裕福じゃないから食べ物粗末にしない癖が付いてるのよ。それに、残すのは負けた気がしてヤなの!」
マルグリットはため息を付くと、リエルの向かいに座る。
「少し手伝ってあげますから、次からはもう少し素直になりなさい? 元はと言えばリエルがイグノ薄荷の育成を失敗したのが切欠でしょう?」
「……ううっ」
そう言って筍のグラタンを口に運ぶ。焦げ目の付いた筍の青い香りが鼻を擽り、濃厚なホワイトソースとほろ苦い筍が意外とマッチしていた。コリコリとした食感も口を楽しませてくれる。
「あら、美味しい。大樹海の物と言うからもっとえぐみが強いものかと思ってましたのに」
「本来はそうなんだけど、土壌と気候によって味が変わるらしいわ。顧問の先生も誉めてた。あんな憎らしい奴なのに、こんな美味しいもの作るなんて納得行かないわ!」
(お子様ですわねぇ。いつもクロードの事ばかり話している自覚はあるのかしら?)
マルグリットは心の中で嘆息し、苛立ちを食欲で発散するリエルを眺めていた。
●同時刻、男寮
「リエルの吠え面、お前にも見せてやりたかったぞ!」
「……で、その結果がこれか」
ドヤ顔で語るクロードを無視し、友人のフィリップはドカ盛りされた筍のソテーに目を落とした。とても二人で食べきれる量ではない。
「サウゼル竹って生育が早くてな。畑が竹林にならないよう間引いてやる必要があるんだよ」
「自分の方が被害受けてるじゃないか。付き合わされる僕の身にもなれよ」
「まあそう言うなって。あの顔思い出せばこのくらいペロッといけると思うんだよ」
言いながらソテーに手を伸ばすクロードを、フィリップは半眼で睨みつける。
「僕は見てないし、そもそもそんな嗜好は持ってないんだけど。と言うか、そろそろ気持ちを伝えないと手遅れになるよ?」
「気持ち? 何の?」
「好きなんでしょ? リエルちゃん」
「は、はぁ!? ななんで俺があいつなんかを……」
あらかさまに動揺するクロードに、フィリップは更に切り込む。
「この前リエルちゃん告白されたらしいよ?」
「はあっ!? 何処のどいつだ!?」
「気になるんだ?」
ニヤ付くフィリップにハッとした顔をしたクロードは、ごにょごにょと言い訳をするが今更である。
「いや、俺はあんなのを好きになる奴がいるんだと思って……」
「はいはい。お互いこの学園にいるのもあと一年でしょ? 後悔しないようにね?」
言いながら2人はソテーを口にし……
「苦っ! 何だこれ!?」
「クロード、これ君が作った? 何をしたの?」
「いや、素材の味を確かめるためそのままソテーしたんだけど……」
「君は二度と料理作るなー!」
●深夜
「ああもう、まだ喉がいがいがする……」
「お互い大変ですわね」
寮を抜け出したフィリップを迎えたマルグリットは、気付かれないようお腹をさする。大丈夫。出ていない。
二人はクロードとリエルをくっつけようと密かに共同戦線を張っていたのだが、一向に進展しない二人に頭を抱えていた。このままでは本当に停滞したまま卒業を迎えかねない。
「それで、お姫様の方は?」
「体調を崩してベッドで唸ってますわ。それ以外は相変わらずですわね」
「こっちも焚き付けてみたけど、燃え上がらずに燻ってる感じだよ」
「自覚のあるなしは別として、本心では憎からず思っているのは確かなのに、当人たちに進める気がないのが歯がゆいですわね」
二人揃ってため息を付くと、様々な案を出し合うがこれといったものは出てこない。
「どこかに生徒会長みたいに上手くいく方法はないかなあ」
「それですわ!」
「え、何が?」
「生徒会長と同じ冒険者に依頼を出しましょう! 私達で駄目なら、第三者に頼れば良いんですわ!」
「なるほど!」
こうして、深夜テンションの勢いでギルドに依頼が出されたのだった。
解説
マスターより
リプレイ
特作研のエリアはサウゼル竹が半分、残りを様々な作物が植えられている。あちこちに筍が伸び、駆除しきれないイグノ薄荷がそこかしこから芽を出していた。
庭愛会のエリアはイグノ薄荷が絨毯のように地面を覆い、背の低い果樹と草花は薄荷に埋もれてしまっている。そしてこちらも筍が顔を出している。
「これは何と言うか……」
翡翠の園と称されるヴェルジー伯爵家領で、美しい庭園に慣れ親しんだジュスト・ヴェルジーにすれば、目の前の光景を庭園と呼ぶのは憚られた。薄荷はともかく、生えている筍の違和感が尋常ではない。
「こうなる前に薄荷位は駆除出来なかったのかな?」
「先輩が卒業して会員が私の他にいなくて……」
ジュストの婚約者でもあるディオール伯爵家の令嬢、ローザリカ・L・ディオールの言葉に、リエルが縮こまって答える。チラチラと二人を見ているのは何か言いたいことがある様だが、伯爵家の令息令嬢相手に言い難いのだろう。
「もしかして勧誘かい? 僕としては、淑女からのお誘いとあらば喜んでお受けするけど?」
「本当ですか!? それなら……」
「ちょっと待ったー! そこのリエルはロクに庭園の管理も出来ない不器用で庭愛会は貴方の益になりません! 是非特作研に!!」
「ちょっとクロード、横から入って来ないでよ!?」
顔を付き合わせてぎゃいぎゃい言い合う二人に、一同は状況を再認し、どうしたものかと顔を見合わせる。
(……わっかりやすいなぁ、アレ)
この場の最年長である海神・江流は、二人のやり取りに何とも言えない気持ちになっていた。眩しい。とはいえ、いつまでも眺めている訳にもいくまい。
「時間が無くならない内に作業始めるぞー?」
●作業開始
「LAの方ですか!? 本業の方に来て貰えるとは助かります!」
エル=バ=ノイアンが所属するというロスガリア農業協同組合(LA)の名を聞き、クロードが感激した様に前に出る。
今日のノイアンは肌を出さない服装にポケットの付いた前掛けと長靴、手袋を着用しており、麦わら帽と首に巻いた手拭いが熟練の農夫の様相である。
「竹と筍と薄荷が貰えると聞いて来たのだ」
ノイアンと逆に、高い露出と獣の頭骨を被り、鍬を担いだゴブリナのストレガ・L・リベルガストラは農場を歩き回り、足の裏で僅かに先を出した筍を探り当てると手際よく掘り出し、短剣でカットした欠片を少し齧って頷く。
「原産地のものはえぐみが強く固くて食用には向かないが、環境でここまで変わるとは興味深いのだ」
「分かって貰えますか! 南島の肥料を撒いて土壌を改良するとえぐみが減るんです。肥沃な王国の土地ならストレスなく伸びて固くもならないので、後は地下茎の問題を解決出来れば有用な作物とならないか研究中です」
「成程。他の地方の植物を王国で育てれば同じ様に化けるかもしれないのだ」
「そうなんですよ! 王国の土地は肥沃で大量生産が出来るだけでなく、色々な可能性を持っている筈なんです!」
ストレガの言葉にクロードが反応して研究の内容を語りだし、ストレガもそれに意気投合している。
(成程。こういう人物か)
王国の農業事情と、特別作物研究部の見識や練度を確かめる機会として参加したナタリア・フィッツジェラルドは、クロードの特性を見抜いて思案する。
学生で植物の品質を改良する能力は評価するが、野放図に竹を植えまくった結果、惨憺たる有様になっているのは頂けない。
だが、将来学園に教職員として就職したいという野望の為には、点数稼ぎのロビー活動も重要なのだ。ナタリアは伸びた筍に触れ植物共感で状態を確認する。
「ふむ。やはり土壌が良いから成長が早い様だな。放置すると数ヵ月で竹林に成りかねんから処置は急いだ方がいい。それでは何からやろうか?」
「まずは薄荷を刈って、果樹を移植しようか。それが済んだら竹の伐採と薄荷の根の根絶だね」
ジュストが示した手順に従い、一行は薄荷を刈り筍を掘る。収穫した薄荷と筍はストレガの分を確保し、残りをローザリカが小食堂に卸す手配をする。
農作業に慣れたノイアンとクロードが中心となって果樹を掘り出し、竹の伐採は江流とナタリアが担当する事となった。
●はにーとらっぷ?
「竹はすぱっと武器で切ればいいかな。腕試し腕試し」
サウゼル竹は強靭だが、エーテルの通った武器なら簡単に切り倒されていく。
「にしてもこれは、シャルガネでいうタケザイク、ナガシソウメンでもやってみようという気でもあるのか?」
「そうですね。春に筍が採れ、それ以外の季節も加工品の材料としても使えるからと部の後援者がくれたのが始まりなんです」
クロードによると、サウゼル竹はOBでもある後援者が持ち込んだものらしい。
「ところで。筍を大量に摂取して体調に異変はないか? リエル嬢が寝込んだ程のブツなのだ。君にも異常が起きていないか気になっていたのだ(ずいっ)」
「い、いえ別に何とも?」
「そうか? 顔が赤いが、熱などあるのではないか?(ずずいっ)」
挙動が怪しいクロードだが、普段接することのない年上の女性、しかも豊満な体を無頓着に寄せられては、健全な十代としては無反応ではいられない。
「!?」
それを見て目を丸くしているリエルを横目に、ローザリカもクロードへ声をかける。
「失礼。筍を小食堂に持っていきたいのだが、手伝って貰えないだろうか?」
「あ、ああ! それは俺が持ちます!」
「では手を貸して貰えるだろうか……おっと?」
ローザリカが(わざとらしく)足を取られ、クロードがそれを受け止めた。
「すまない。助かったよ」
「いえ、怪我がなくて何よりです。この辺りは竹の根が出ているので注意を呼びかけるべきでした」
「こちらの不注意だ。気にしなくていい。ここを出るまで手を貸して貰えるだろうか?」
「…………」
ローザリカの手を引いて畑を出るクロードを見るリエルの目が冷たい。その隣でジュストもローザリカを同じ目で見ていた。
●べいくどらいすけーき
「薄荷の根は土に火を入れるなり熱湯をかけるなりしたいところだが、これだけの土にそれをやるのは大変だな……」
「それなら俺の出番かな。土を一ヵ所に集めて貰えるかな?」
思案するノイアンに、ジュストが杖を掲げる。
「咲き誇れ、燃え盛れ……!」
放たれた緋衣草の魔法により、深紅の花弁が集めた土に降り注ぐと、その熱を内部に伝えて根を焼いてゆく。通常の魔法は一瞬で効果を終えるが、緋衣草は持続する効果もあるため根の焼け残りは無いだろう。
「凄い! 授恵者ってこういう事も出来るんですね! やっぱりぜひ庭愛会に入部をお願いします!」
リエルの称賛の眼差しに、ジュストもにこやかに応じている。今度はクロードとローザリカが凄い目をしていた。
「さっきから彼、会長に近すぎるとは思わないか。ほら、初対面であんなに笑みを交わして……」
「ディオール様の婚約者ですよね? リエルもそんな男を勧誘するなんて……」
ローザリカが耳打ちし、クロードも苛立ちに実家の爵位を忘れている。そして他の面子は遠巻きに眺めていた。
(そろそろ止めた方が良くないか?)
(止めろノイアン。下手に触れれば火傷じゃ済まないぞ)
(というか、互いへの当て付けでクロード殿とリエル殿に親しくしてるのだ?)
(うむ。互いにチラ見してはレイルとサンウッドへの接し方が過剰になっていくな。……あ。とうとうディオールが動いた)
「婚約者殿? 流石に本来の目的から外れ過ぎてはいないかね?」
「うん、今回はそういう依頼だから。だから、その、冬が逆戻りしてきたような視線は止めてほしいな、ロゼ」
笑顔のローザリカに、ジュストは後退しそうになるが思い止まって弁明する。少々逸れてしまった自覚もあるので視線は甘んじて受けるべきだろうし。
「君こそクロード殿と距離が近過ぎじゃないか? 俺はリエル嬢に指一本触れてないんだが」
だが、口をついて出たのはそんな言葉だった。それにローザリカは目を細める。
「おやおや。婚約者殿は僕と彼が気になるのかい? 大丈夫。君を放っておく気はないし、二人に余計な勘違いをされては困るからね。仲の良さを証明するためにも受け入れてはくれるよな?」
先程から青い顔で此方を見ているクロードとリエルを一瞥し、ローザリカは艶華扇を振り上げた。
●すま~いる
昏倒したジュストをナタリアと江流が運び、ローザリカもそれに付き添って行ったため残りメンバーで作業を続ける事となった。
竹の根は周りに南瓜を植えることで養分を奪い、地下茎を枯らす事をノイアンが提案する。
「ここを連作年限のないカボチャ畑に変えてしまおう。カボチャおいしいし」
「そんな方法があるんですね?」
リエルが感心してノイアンの手元を眺め、ノイアンは南瓜の苗を植えながら今後を指導する。
「カボチャが育って養分を吸い上げるまで時間がかかる。それまでカボチャの世話と筍の駆除は二人に任せた」
「「えっ!?」」
リエルとクロードも声を上げるが、ノイアンは苗の周りの土を固めると二人に向き直る。
「嫌がらせにしては少々度が過ぎる植物であるから仕方ないな? 責任を持ってふたりに管理をお願いしよう」
「う。でもイグノ薄荷があんなに育つとは思わなくて……」
「サウゼル竹も肥料変えたらあんなに伸びるとは……」
どちらも故意ではなかった為か、はたまた先程のもやもやのせいか納得いかない様子だが、そこへ竹筒を火にかけていたストレガも声をかける。
「どちらの植物も対策せずに直植えしたらいけないというのがわかったと思うのだ。他の植物が育たなくなり、根っこ1つたりと駆除をしなければならなくなるのだ。とゆか範囲外の農場に被害出るのだ。問題行動を起こしてお互い部を潰したいのだ?」
「「そんなつもりは……」」
行いを自覚したクロードとリエルがしゅんと項垂れ、ストレガは改めて二人に共同作業を提案する。
「同じく植物を愛するなら相手を尊重して、これは部の共同作業とするのだ。罰をかねて二人でしっかり育てるのだ。スマ〜イル」
ストレガは人差し指で口角を上げて笑顔を作る。ノイアンも横で頷いており、二人は渋々ながら共同作業を了承する。
「丁度いい具合に炊けたから飯にするのだー」
ストレガが竹筒を短剣で割ると、中には筍ご飯が詰まっており、醤油と竹が混じり合った香りの湯気に労働後の胃がくぅと鳴る。
「美味い! こんな食べ方もあるんだな。アクも気にならなくて全然イケる!」
「ホント! シャルガネ風の味付けで食べ飽きてた筍でも気にならないわ!」
「美味いな」
「うむ。後で他の皆にも持って行くのだ」
クロードとリエルが笑顔で顔を見合わせるのを見て、ストレガは満足気に頷く。やはり食は万世共通の幸福なのである。スマ~イル。
●覚悟
寮に戻るクロードを江流が呼び止める。
「警戒しなくていい。派閥は関係ない話だから」
「すみません。つい……」
周りに探りを入れたところ、レイル男爵家は寄り親が王党派であるためそれに従っており、紫百合の剣であり、王国民でない平民の自分が警戒されるのは仕方の無いことだろう。下級貴族だからこそ、そういった動向に気を配らなければいけないのも分かる。
「クロードさんは今5年なんだろ。後1年しかないじゃないか」
「……はい」
その言葉はクロードだけでなく、自身にも刺さるものだ。
「学園生でなくなってしまえば、貴族として自分の家に戻るんだろう。領地も遠く、今のように会えるなんて事は一切なくなっちまうんだ。溢れた水は盆には戻らない。覆水盆に返らず。シャルガネの諺だよ」
「……」
黙り込むクロードだったが、その胸中は様々なものが渦巻いていた。
ジュストと話すリエルを見たときの胸が締め付けられる様な感覚。
筍ご飯を食べたリエルが自分に笑顔を向けた時の高鳴り。
そして、おそらく自分と似た、いやより遠いところを見ている目の前の青年。
「…………江流さんは、手が届くと思っているんですか?」
「仮に玉砕するにしても、俺は今年でやり切ると決めたんだ」
思わず絞り出した問いに、江流はまっすぐ答えを返す。
「そう……なんですね」
「ああ。年上で男なんだから、爵位の差をひっくり返せるくらい格好良くリードしてやりなよ」
「……」
そう言って去る江流の背を、クロードはじっと見つめていた。
●その花言葉は
リエルの部屋のドアがノックされる。
「ナタリアさん?」
「失礼するよ。預かりものを頼まれたのと、少し話がしたくてね」
そう言ってナタリアは二枚の書類と、一鉢の鉢植えをリエルに差し出す。
「これは……入部届け!? それにビオラ?」
そこにはジュストとローザリカの名前が記されており、鉢植えにはピンクのビオラが咲いていた。
「騒いだ事を反省しているのだろうが、謝って弱味を見せる訳には行かないのだろうな。他人事ではないが、貴族とは面倒なものだ」
「気にしてないのに……」
「ヴェルジーが花言葉がどうとか言っていたが、私はその辺り疎くてね。どんな意味があるのかな?」
「ピンクのビオラは確か……!?」
途端にリエルが硬直する。
「え、ええ?? じゃあ『本来の目的』とか『そういうアレ』って……まさかマルグリット!」
「ははは。彼も中々粋なことをする。どうやら気付いた様だね」
「待って急に……困る」
赤や青に顔色を変えるリエルに、ナタリアは察して声をかける。
「憎まれ口を叩き合える学友が身近にいるというのは良い事だ。学び舎を巣立ってから時が経てば、あの頃こそ充実した光景だったと想いを馳せるものかもしれないが、そうなってからでは遅いのだ。時間は限られるが、後悔せぬよう励みたまえ」
「どんな顔で会えばいいのよぅ……」
脱力して机に伏すリエルの呻きを背に、ナタリアはそっとドアを閉じた。
●後日、農場にて
「お、おはよう」
「あ、ああ。おはよう」
ぎこちない挨拶を交わし、二人は南瓜に水を撒き始める。
「「あ、あの!」」
しばらく無言だったが、同時に声をかけまた黙り込む。
「「…………」」
やがて、水を撒き終え、筍を掘って作業が終わった所でクロードが口を開く。
「……すまなかったな。サウゼル竹のせいで庭園がこんなになって」
「私こそイグノ薄荷で迷惑かけてごめんね」
「「…………」」
再び黙る二人だが、リエルがクロードの手の筍を見て口を開く。
「良かったら何か作ろうか?」
「え、良いのか?」
「うん。ストレガさんに教わってレパートリー増えたから、試食に付き合ってよ」
そんな二人を眺め、胸を撫で下ろす影がふたつ。
「長かったですわ……。肩の荷が降りたような寂しいような複雑な気持ちですけれど」
「分からなくも無いけど、あの二人だからまだ安心出来ないんじゃ無いかな」
「そうですわね。竹が枯れてしまうまでに、別の会う口実を作った方がいいかしら?」
暫くは目が離せなさそうな二人であった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2022年03月30日 09時42分51秒 公開
相談掲示板
おや、早速成立か。よかった。 ノイアンだ、よろしく頼む。園芸関連の部があると聞いてやってきたんだが…ん?何?ままならない2人を近づける…? …そうか。どれほど役に立てるかはわからないが、やってみよう。 【質問】 ところでオッター、早速で悪いんだが… この部活は学園生でなくても(聴講生でも)入れるんだろうか?
ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 農業という分野であれ、研究部門と聞いて参じた。 繁殖力が高いブツを野放図に植えまくって……ナガシソウメンの季節にはまだ早いだろうに( それともシャルガネ由来のタケザイクを皆で作りましょう、とでもいうのか?
早々と集まってくれてありがとうな。 昨日の地震とかでトラブルがあれば運営の方へ言って貰えれば対応してくれるそうだからまずは身の安全を優先してくれ。 質問の回答だが、 https://world-guide.alpaca-connect.com/world0/5/15/ 設立条件と入部条件 クラブ設立には、最低限、代表在校生1名を含む合計3名以上の部員登録が必要となります。 入部条件には、代表在校生の承認を受けた上で、学業成績が全体の4分の1以上であることが求められます。 聴講生の場合、部員の人数に含むことは許可されていますが、あくまで平部員扱いです。 …とあるから聴講生でも入部は大丈夫だぜ。
満員おめでとう。そうか6人だったか オッターも回答感謝する。ワールドガイドに載っていたか…!付与できる称号はひとつのみだからどちらか選ぶことになりそうだな。もう少し悩んでみよう。
学園生のジュストだ、よろしく。 イグノ薄荷とサウゼル竹、どちらも厄介だね。 他に植えているものがあるなら薬を撒くわけにもいかないし、地道に駆除するしかないけど……あ、今回の主目的は駆除じゃなくて二人の仲を進展させることだっけ。 クロードとリエル嬢、二人も駆除作業にあたるのなら俺はリエル嬢の作業を手伝うなり傍で親し気に話すなりすれば後押しになるのかな、と。
なんともまあ頭の痛い話というか、なんというか。 ……同じ学園生のローザリカだ。僕にも何か手助けできるといいんだが。 間引いたあとの薄荷と竹の子については小食堂あたりに引き取っては貰えないだろうか。 小食堂側は食材を労せず手に入れ、部と愛好会は名と恩を売れる。 そんな提案をして問題ごとに寄り添い、信頼を得つつ…… 本題の方に踏み込めたらと思っているよ。 リエル君へ近づく男がいるようだし? クロード君の方をそれをダシに突くとしようかな。
1年の海神江流だよ。今回は宜しくね。 クロードさんは5年か…なるほど(何かを諦めた顔 1年なんてあっという間だからな。 若者がどこかで後悔しないようにおじさんも協力したい所。 表向きの話とはいえ、そっちはそっちでちゃんとやらにゃいかんのだよね? 焼く訳にもいかんし、薄荷と竹は根から引っこ抜いていくしかないかな。 切っただけで駆除になるなら苦労しない筈だし。
江流、元気を出せ。自分がもう後悔する側に回っているように聞こえるぞ。俺たち(比較的)年長者がしゃっきりしなければ(ぽんぽん …(フラグが立った気配を察知) わかった。俺はこんな顔だから、令嬢の前に出るのは、怖がらせるかもしれないしな。クロードのほうに回ろう。 さて、薄荷に竹…か。除草剤で駆逐できるなら楽だが、そうではないからな、これらは。地道な作業が必要になるだろうが、それは任せてくれ、コツを知っている。 使えそうな竹があればなにか作ってみてもいいかもな。竹筒で飯を炊いてもいいし…おや、彼女(ストレガ)がいるじゃないか。これは昼食は期待できそうだ。
あぁ、いや、後悔とかそういうのではないのだが。 「ちっ、庶民が」とか言われる脈があるなとか(脈とは。 俺もクロードの側に回る感じになるかなぁ。あまりかぶるようなら調整考えますが。 さておき、頑張るのはやぶさかではないんだが、薄荷は横に広がると聞いたんでまだいいんだが、竹の根って何メートルくらい掘れば抜けるんだろか。 下手すると地面に大穴開けないと駄目なのでは。とちょっと思ってしまった。 ノイアンがいい案持ってそうだから期待しちゃってもいいんだろうか。
ああ、なるほどな。 まあ、俺たちにこんな依頼が出るくらいだ。そう悪印象は抱かれていないだろう。 おっとすまない、肝心の処理の仕方を書いてなかった… 薄荷は根ごと掘り起こせばいい。薬剤が最も手っ取り早いが、そうするとその後しばらく農業にしろ園芸にしろ、使えなくなってしまうから、個人的には避けたいな。 掘る深さは、4〜50cmもあれば十分だろう。掘り起こした土は火を入れるなり熱湯をかけるなりしたあと干して処理をする。
問題は竹なんだが…地下茎の位置が2mほど。掘り起こすのはかなり骨が折れる作業になるだろう。 竹の処理も薬剤の使用が効果的だが、これも土を痛める。今後を考えると穏便に済ませたい。 そこで、だ。ウリ科、ナス科の植物を植えて、竹が育つための養分を先に吸い上げて枯らしてしまおうという作戦だ。今の時期ならミニトマト、きゅうり、ピーマンだが、これらは輪作年限がある。そこでこの、カボチャの苗の出番だ(輪作年限なし)。 竹は残らず伐採し、皆の賛同と本人らの許可さえ得られれば、このカボチャの苗を植えたいと思う…カボチャはいいぞ。
……なんでそう人を害虫を見るような目で見るかな(肩を竦めて苦笑し)。 しかしノイアン殿は随分と農業について詳しいものだ。 大変頼もしい。 俺も提案してくれた方法に則って薄荷の処理を手伝おう。 勿論ロゼが言うように有効活用できる分は活用するに越したことはないけれど。 南瓜に関しては両部の同意が得られれば俺は異存ないかな。
……なるほどなるほど。 やはり専門家(?)の知識は頼もしい。 カボチャを植えるのにも異論はないとも。必要なら手も貸そう。 対応する人物について、先にクロード君を突きたいと宣言してはいたが、 嫉妬心などを煽るための行動を取った後はリエル君の方へ行くとしようかな。 ……これで、偏りもそう気にはならないかな?
おっと、聞き捨てならないことを拾い逃した。 そのような目で見たつもりは無かったが。 ふらふらと飛び回っている自覚があるとは驚きだ。
そうだよな、竹の根はかなり深かったと記憶してたから。 2mの深さの穴を竹1本ごとに開けていくと、それはそれで農地として使い物にならなくなりそうだ。 ノイアンが言ってくれた案が通用するならそれが良さそうに思うな。 かぼちゃは俺的にはいいんじゃないのかなと。一応、部の両名に確認取ってやれればよさそう。 竹の処理の方がんばりますかね。
遅くなったのだ。ストレガなのだ。よろしくなのだ。 ぶっちゃけ筍と薄荷貰いにきたのだ(本当) 処理は出ている通りでよさそうだし、竹と薄荷は業者に引き渡すでいいのだ。 あとはうむ、筍ご飯作るのだ。 竹は竹炭にしてやるのもよさそうなのだ。
っと、明日出発だったか。ストレガもよろしく。間に合ってよかった。 皆も話を聞いてくれてありがとう(背後も農業や園芸が好きなんだ) ではクロードやリエルたちの許可を得られたらカボチャを植えていくとしよう。…二人がお互いの気持ちに気づいたら、共同作業、なんてこともできるかもしれないな? 二人とも土いじりの勝手はわかってるだろうし。