【人馬】ケンタウロスVSワイバーン

おおくまねこ

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シナリオID:1973

オープニング

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「全く、嘆かわしい。誇り高き帝国が、亜人(ケンタウロス)なんぞと手を組むとは。ああ、貧すれば鈍するとはまさにこのことよ!」
 老人はシルトラース帝国の現状を憂いていた。かつて帝国はリーンエス王国と並び、世界最強の国家であった。否、あと三十年もあれば帝国はかの王国をも打ち破り、シルトラース帝国は名実共に世界の覇者となっていただろう。少なくとも、老人はそう信じていた。

「今、『左腕』めの作戦の影響でケンタウロス共は弱りきっておる。今こそあの馬ども駆逐するチャンスじゃというのに。なぜそれが分からぬ! ああ、やはりあの裏切り者の息子(レイウェスト)など、とうてい皇帝の器ではないわ! バルディオンもバルディオンじゃ! ケンタウロスと共闘じゃと! 帝国人が何人奴らに殺されたか忘れたか! 幾つの村落が蛮族共に滅ぼされたか覚えておらんのか! そのザマで賢猪将軍などとは片腹痛いわ! 耄碌(もうろく)しおって!」
 
「ヨゼフ皇帝亡き今、帝国はもはやないものと諦観しておったが……。真なる皇帝が生きておったと分かった以上、話は別じゃ。いずれこの土地には皇帝が帰還される。もはやバルディオン達だけには任せておけぬ。かくなる上は、儂が老骨に鞭打って出るしかあるまいて。今こそゴミ共を一掃し、後顧の憂いを断つとしよう。この土地は、人類の導き手たるヨゼフ皇帝の土地なのじゃからな!」

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「バルディオン将軍。作戦会議中失礼いたします。早急にお耳に入れておきたい話がございます。セロ殿から手紙を預かっております。詳しくはこちらに」
「斥候のセロからだと? 分かった、その手紙、預かろう」
 ただならぬ様子で会議室に駆け込んできた部下の言葉に、バルディオンは頷いた。セロとは、古老派ケンタウロスの大部族を見張っていた斥候(シューター)の名だ。彼が手紙をよこすとは、古老派のケンタウロス達に何か動きがあったのだろうか。シャーマンのレミーラを指導者とするあの部族は、帝国軍と冒険者の聖地への進軍は黙認するということで話がついていたはずだが。バルディオンは一旦会議を中断すると、セロの手紙に目を通した。そこには、以下のような内容が書かれていた。

「古老派ケンタウロス達の集落に向かう魔獣の群れあり。かつてない規模。多数のケンタウロスの死者が出ることが予想されます」

「ふむ……」
 バルディオンはしばし沈思黙考した。交渉こそ成立しているものの、ケンタウロスはかねてより幾度も帝国に攻撃を仕掛けてきた『亜人』であり、基本的には敵対勢力である。住処を追われたケンタウロスが帝国に南下してくるのは問題だが、ケンタウロスと魔獣が勝手に殺し合う分には、帝国が介入する必要性は全くないと言っていい。ないのだが――。

「魔獣の群れがケンタウロスの群れを通過し、そのまま帝国まで南下してくると問題だな。一応、冒険者ギルドに依頼を出しておけ。依頼の内容は『帝国まで南下して来そうな魔獣の退治』でいい。それ以外のことの判断は現場の冒険者に任せよう」
「御意」

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『レミーラ族長! 空を見て下さい! 飛竜の群れです!』
『ワイバーン……! それも八体! この大事な時に! 女子供はすぐに避難させな! 戦えるやつは全員アタシについてこい! あいつらを集落に近づかせるな!」

 赤い飛竜の接近に気付いたレミーラはただちにケンタウロスの若者達を率い、ワイバーンの迎撃に向かった。
『アタシが先頭の奴に一発ぶちこむ。そしたらすぐに――』
『おっと、そうはいかんぞ。ケンタウロスのババアよ、お前には儂の相手をしてもらおうか』
 レミーラが杖を振り上げた瞬間、とてつもない熱量の火球が横合いから飛来し、レミーラを襲った。しかし、レミーラは並外れた反射神経と脚力で、火球を回避した。

『ゴブリン・ロード……! なんだってこんなところに! この飛竜共もお前の差し金かい!?』
 レミーラは不意討ちを仕掛けてきたゴブリンロードへとケンタウロス語で問いかけるが、当然答えはなかった。答える代わりにゴブリン・ロードは短杖をレミーラへと向け、陰惨な笑みを浮かべる。

『お前達亜人にはここで消えて貰う。ここは偉大なるシルトラース帝国の土地なのじゃなからな。さあ、ワイバーン達よ! このゴミ共を焼き尽くすのじゃ!』

 ゴブリン・ロードの纏うただならぬ妖気(エーテル)に、ここが己の死に場所であることを直感したレミーラは、一瞬だけ後ろの一族を振り返り、こう口にした。

『皆、聞きな! あのジジイ(ゴブリン・ロード)の相手はアタシがする。お前達はワイバーンから集落を守れ! ランラン。アタシが死んだら次の族長はお前がなりな。人間贔屓(びいき)な所は気に入らないが、部族でアタシの次に頭が回るのはお前だ。どんな手を使ってもいい。必ずジド・ルゥとの約束の土地を取り返せ』

解説

目標:帝国に南下しないようワイバーンを殲滅する。 注意事項:魔獣を倒す手段などの詳細の判断は現場の冒険者に委ねられている。 状況: ・冒険者達は帝国東部(古老派ケンタウロスの集落のすぐ近く)に飛竜の群れが出現したという一報を聞き、討伐に赴きます。 ・冒険者達がケンタウロスの集落に到達した時点で既にワイバーンは集落に到達しており、ケンタウロスの集落は炎上中。ケンタウロスの戦士達は非戦闘員を逃がそうとワイバーンと交戦しています。 ・魔獣の群れを率いてきたゴブリン・ロードはケンタウロス達の指導者であるシャーマン・レミーラと平原を疾走しながら交戦中です。レミーラはなるべくゴブリン・ロードを集落から引き離そうとしていますが、ゴブリン・ロードはある程度距離を開けると集落を攻撃しようとするそぶりを見せます。 ● 登場NPC 謎のゴブリン・ロード ゴブリン・ロードの老人です。高速移動の魔法を習得しており、レミーラ族長と高機動戦を行っています。 戦闘力は非常に高いです。 移動力:8(魔法で地面を滑るように移動します) 手にした短杖から爆炎の魔法や補助魔法を操ります。 魔獣『ブラストワイバーン』 ×8体 『メドゥの左腕』によって強化されている飛竜型魔獣です。集落の四方を囲うように配置されています。 火炎弾を吐きながらケンタウロス達と交戦しています。 レミーラ 古老派ケンタウロスの指導者である高齢シャーマンです。実力はゴブリンロードと拮抗していますが、今回は非戦闘員を大量に抱えている集落の防衛しながらの戦いの為、劣勢です。 また、知能は高いものの、人類の言語は習得しておりません。 杖と『呪術』(ケンタウロス式の魔法)で戦います。 ランラン この部族でレミーラ以外唯一の特異個体です。片言ですが人類の言語を習得しており、意思疎通ができます。ケンタウロスの戦士達を指揮し、魔獣の群れを抑えています。メイド服を着ているので他の個体と区別することは容易いでしょう。ちなみに部族内の地位はレミーラに次ぐナンバーⅡの序列のようです。 弓と投槍で戦います。 移動力:7 ケンタウロスの戦士 約50体 弓や投槍で武装したケンタウロスの戦士です。全員がレベル一桁の授恵者並の戦闘力を有していますが、ワイバーンの群れ相手だと分が悪いようです。 ケンタウロスの非戦闘員 約40体 ケンタウロスの老人や子供です。足は速いのですが、ワイバーンが邪魔で逃げあぐねているようです。

マスターより

こんにちは。おおくまねこです。今回は前回に引き続き、古老派ケンタウロスの集落が舞台となります。冒険者が果たすべき依頼は『魔獣の殲滅』なので、魔獣(ブラストワイバーン)さえ殲滅できれば依頼は成功となります。しかしそれ以上の結果を望むのならば、それ相応の死闘となるでしょう。皆様のご参加をお待ちしております。

リプレイ

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 暴れ回るワイバーン達の脅威に、ケンタウロス達は混乱を極めていた。すでに食糧庫にも火が回っており、もはやこの集落を捨てて逃げる他はない瀬戸際なのだが、8体のワイバーン達が妙にバランスよい位置取りで集落を包囲しているせいで逃げるに逃げられないのだ。もはやこれまでか、とケンタウロス達に諦観のムードが立ち込めた時――。

「ランラン! 南の方から武器を持った人間達が近づいてくる!」
『くそ! 俺達にトドメを刺しに来やがったのか!』
『待って! あれは……』
 集団の中に見覚えのある獣人やハーフリングが混ざっていることに気付き、ランランはケンタウロス達を制止した。
「我々は味方だ!……レミーラ殿がいないな?」
 全力疾走でケンタウロスの集落に駆け付けたベルク・オスマットは以前見かけた族長ケンタウロスがいないことに気付いた。
「まさか既に……いや、あそこか! 何だあの変態的な動きをするゴブリンは?」
 ベルクはひとまずワイバーンを捨て置き、集落から離れた所でゴブリンと交戦しているレミーラの救援に向かった。

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「うへー。またワイバーン……しかも八匹もかよ……」
 赤い飛竜達の位置を確認しながら、ゴルバルディアはぼやいた。
「だけどセリオスもいるし、頑張らなきゃな」
 ドォン!
 ゴルバルディアはワイバーン達の注意を引きつけるべく、尻尾で地面を叩きながら砲撃音のような爆音を鳴り響かせた。ワイバーン達の注意が一瞬こちらに向き、近くにいた二体がそのままこちらに向かって突っ込んできた。
(チッ。誘導できたのは二体だけか)
 ゴルバルディアは舌打ちし、飛竜達を迎撃する為に短剣と盾を構えた。
 ドン!
 その時、極太の光がワイバーンの一体を撃ち抜き、地上に叩き落した。セリオス・オーガストがワイバーンの一体を撃ち抜いたのだ。
「俺達は味方だ。今の内に退避しろ」
 セリオスはケンタウロス達に呼びかけた。言語は通じなかったが、非戦闘員のケンタウロス達はワイバーン達の包囲網が欠けた隙を突き、一目散に草原に向かって駆けて行く。

「ギャオオオオーン!」
 先ほど墜落した個体が怒声を上げた。セリオスの狙撃で手痛いダメージは受けたが、撃破には至っていなかったのだ。
(バスターアロー一発では仕留められんか。手強いな)
「一体仕留めたらもう一体引き寄せる。盾役は頼んだぞ、ゴルバルディア」
「ああ、任せろ!」
 チロチロと炎を吐きながら睨み付けるワイバーンと対峙したセリオスは一瞬だけ番(つがい)に視線を送ると、二射目を放つべく弓に渾身のエーテルを注ぎ込んだ。

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「このワイバーン共……野生の群れではなく、人に使役されているのか?」
 奇妙なほど統率が取れているワイバーンの動きにテテリカは訝しんだ。八体の飛竜達は集落を包囲するよう布陣し、連携してケンタウロス達を攻撃している。野生の魔獣にしては、あまりにも統率がとれすぎている。

「指揮官は……あれか?」
 眼にエーテルを集中させ、周囲の様子を探ったテテリカは、集落から少し離れた場所でケンタウロスの老婆と異常に素早い動きのゴブリンが激しい戦いを繰り広げていることに気付いた。事前に聞いていた特徴からして、ケンタウロスの方はこの部族の長だろう。
「相手は……ゴブリン・ロードか? オニフスベ、あのケンタウロスの援護を頼む」
 テテリカの友である白いゴリラはレミーラを援護するべく、ゴブリン・ロードの方へと駆けて行った。
「俺はワイバーンを足止めせねばな」
 テテリカは近くで暴れていたワイバーンとケンタウロスの戦士の間の空間を狙い、弓から光弾を発射した。発射されたエーテル弾は空中で弾け、煙幕となってケンタウロス達を包み込む。ワイバーンはエーテルの煙幕でケンタウロスの姿を見失い、クンクンと鼻を鳴らしている。

「ワイバーン退治のための諸々の裁量は、俺らに一任されているんでな。ケンタウロス達と争う必要もサラサラ無いし、引率の爺さんを一緒にぶちのめしても、問題無いって事だ」
「あれ楽しそうだよね~、私もやってみたいなー。けどただ滑ってるだけじゃん、私だったら四回転アクセルとか決めちゃうんだけどね。センスないよね~」
 バーネット・フォーサイスとフレイヤ・サンライズもゴブリンを目指して走っている。ちなみにフレイヤが言っているのは、ゴブリンの大地を滑るように移動する謎の移動術のことである。

「ワイバーン! 貴様らを殲滅する!!」
 アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトは吠えながらワイバーンの一体へとエーテルの斬撃を飛ばした。渾身の一撃はワイバーンの一体を深く傷つけたが撃破には至らず、ワイバーンはアルベルトに反撃するべく突進してきた。
「ギャオオオーン!」
 アルベルトはワイバーンの火炎を受けて苦痛に顔を歪ませた。かなりの威力だが、あと2発ぐらいはなんとか耐えられそうだ。

『人間達が何体か体抑えてくれてる! 今の内に!』
 ランランは非戦闘員たちに退避を呼びかけつつ、ケンタウロス達を指揮してワイバーンの一体に集中攻撃を仕掛けた。しかしワイバーンにはケンタウロス達の攻撃は足止め程度にしかなっていないようだ。

「ランランさーん! 助けに来ましたー!」
 ベルク達に続いて集落に突入したアリッグ・レイダーは顔見知りのメイドケンタウロスに呼びかけた。

「感謝シマス、援護シテクダサイ!」
「すぐに負傷者の手当てをします! 負傷者は燃えていない遮蔽物の陰に退避をするように言って下さい!」
 アリッグは叫びながら、すぐにケンタウロス達にヒーリングオーラを飛ばした。癒しの光がケンタウロス達の傷を治癒していくが、アリッグが治癒できたケンタウロスは全体の割合としてはかなり少ない。ワイバーンが集落の七か所に散っているせいで、ケンタウロス達もかなり広範囲に散ってしまっているのだ。

(これは全員は助けられねーな。せめて通訳のランランさんだけでも死なせないようにしないと……)
「ランランさん! ここにケンタウロスを集めて下さい! 戦力を分散すれば犠牲が増えるばかりです!」
 超視覚で戦況を悟ったアリッグは少しでも死者の数を抑えるべく、ランランに提案した。
「……ワカリマシタ!」

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「何者か知らぬが、さっさとこの地より立ち去れ!」
 ベルクはレミーラを庇うように位置取りし、ゴブリンへと鉤爪を向けた。
(なんじゃ? いつの間にやら、怪しい連中が集まって来ておる。帝国兵ではないな。冒険者か)

「ゴブゴブ! ゴブゴブ!」
「……言葉が通じぬか。こいつは亜人種(ゴールディ出身ではないゴブリン)か?」
 ベルクは舌打ちする。帝国による聖地奪還作戦を目前にしたタイミングでの、ワイバーンの群れによる古老派ケンタウロス集落の襲撃。あまりにもタイミングが良すぎる。メドゥの指先が糸を引いていると考えるのが自然だが……。

(そいつは亜人じゃない! 亜人のフリをしたゴールディ出身のゴブリンだ!)
 
 オニフスベ(ゴリラ)の聴覚でゴブリン・ロードの言葉を聞いていたことに加え、亜人語適性を持っていたテテリカはそのことに気付いたが、ベルク達とはあまりに距離が遠すぎた。

「この地より立ち去ってもらうぞ!」
 ベルクは鉤爪で斬りかかった。だが、ゴブリンは老体に似合わぬ機敏な動きで攻撃を難なく躱した。
『どうやら、味方のようだね!』
 レミーラはゴブリンがベルクの攻撃を躱した直後の隙を狙い、杖を向けた。するとゴブリンの細い腕から血が噴き出した。

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「セリオスには傷つけさせない!」
 ゴルバルティアはセリオスに吐きかけられた火炎を身を挺して防いだ後、セリオスが傷付けたワイバーンの足に短剣をお見舞いした。避けた鱗から血が噴き出すが、まだ絶命には至っていない。彼女から少し離れた所では、テテリカと、冒険者の意図を察して加勢してくれた帝国の斥候(セロ)が遠方のワイバーンを戦力が厚い箇所に引き寄せんと矢で誘引をしている。
「ギャオオオ!」
 無傷のワイバーンの吐いた火炎がゴルバルティアを襲ったが、ゴルバルディアはひらりと火炎を躱した。
(厳しい戦況だが……一人でも多くのケンタウロスを生き残らせてみせる)
 セリオスはゴルバルディアからなるべく離れないよう努めながら、有効射程内ギリギリにいたワイバーンに矢を放った。

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 ベルクの鉤爪をひらりと躱し、お返しとばかりにベルクへと火球を放つが、ベルクはエーテルで反応速度を高め、ゴブリンの火球をなんとか躱した。
(こいつ、速い! 滑るように移動しているように見えるのは、魔力で僅かに宙に浮いているからか!)

「ちわーす! センスないゴブリン! オイルと石鹸持ってきたけど浮いてるのかー。チッ。じゃあフリーズボルト」
「通りすがりの亜人とは思えないが……ともかく倒させてもらおうか」
 追い付いてきたフレイヤとバーネットは氷結弾(フリーズボルト)と足止めの魔法(スネア―ジャベリン)をお見舞いしたが、ゴブリンはその両方を回避した。冒険者達の背後ではオニフスベが集落を背にし、ゴブリンを近づけさせまいと威圧感を放っていた。

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「ギャオオオ!」
「うおおおっ!」
 ブラストワイバーンの爪がアルベルトの鎧を軋ませ、引き裂いた。しかし、アルベルトは裂帛の気合で意識を保ち、ワイバーンへと反撃する。アルベルトの渾身の一撃がワイバーンの翼を切り裂き、ついに二体目のワイバーンを絶命させた。しかし、その数秒後アルベルトも意識を失い、地面に倒れた。

「オニフスベ、一旦下がってくれ」
 テテリカは焼けるような痛みに耐えながら自身にヒールをかけた。想像以上にあのゴブリンは手ごわい。オニフスベはゴブリンの火球一発で戦闘不能寸前にまで追い込まれてしまったのだ。
(こちらの戦況もあまりよくないが、まだ俺が倒れるわけには行かない)
「ギャオオオ!」
 テテリカは後ろに下がり、ワイバーンの火炎を回避した。

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(しつこい奴らじゃの)
 ベルク、フレイヤ、バーネットはゴブリン相手に攻めあぐねていた。ゴブリンはベルクに匹敵する速度で動き回っているため、こちらの攻撃がまるで当たらないのだ。唯一レミーラの呪術らしき攻撃はたまに命中しているが、ゴブリンはまだまだ余力を残していた。
「ぜえ、ぜえ……」
 レミーラの方は冒険者が加勢してからは負傷は増えていないながらも、呼吸が乱れていた。全力疾走しながら呪術を連発することは、高齢の彼女にかなり負担がかかっているのだろう。
「ゴブゴブ!」
「チッ!」
 ゴブリンは雄叫びと共にバーネットへと大火球を放った。バーネットは咄嗟にエーテルのバリアーに身を包んだが、火球は容易くバリアを貫通し、バーネットに大ダメージを与えた。
(とんでもない威力だな……!)
 バーネットはすぐに自身にヒールをかけた。なんとか意識は保てる程度には回復したが、ダメージは深い。もう一発くらえば戦闘不能に追い込まれるだろう。

「くそ、一か八かだ!」
 バーネットはピンを抜いた閃光塗弾をゴブリンに向かって投げつけた。反応が間に合ったベルクとフレイヤは咄嗟に目をつぶった直後に缶が破裂し、白い閃光がレミーラとゴブリン、そしてオニフスベの視界を塗り潰した。

「ぐおおおおっ!」
「今だ!」
 その隙を見逃さず、冒険者達はゴブリンへと集中攻撃を放った。ゴブリンは咄嗟にエーテルのバリアを張り、ベルクの攻撃を弾いたが、続くフレイヤとバーネットのフリーズボルトと魔弾を受け、口から血を吐いた。

「ゴブゴブ!」
 ゴブリンの老人は唸り声を上げ、聖地の方向へと消えていった。

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「ここから先には行かせんぞ」
 セリオスは集落から逃げて行く非戦闘員達の背後に陣取り、ワイバーンに矢を射かけた。既に多くの犠牲が出ているが、だからといって諦めるつもりはない。

「ここは、俺達が抑える! みんなを早く避難させるんだ!」
 テテリカによって治療され、意識を取り戻したアルベルトはワイバーンを切り裂きながらランランへと叫んだ。

「残るワイバーンは僕達が倒します! 非戦闘員の方々は早く脱出を!」
 アリッグは戦士ケンタウロス達の回復治療を続けながら、必死に叫んでいる。ワイバーンが火を吹くたびに負傷者が大量発生するため、ヒーラーは大忙しだ。余裕があれば気絶しているアルベルトの蘇生も行いたいのだが、今ここを離れるわけにはいかなかった。

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 ゴブリンが撤退した後しばらくして、ついにワイバーン達は冒険者達によって殲滅された。

「引いたか。……あのゴブリンは何者だったのだ?」
「恐らく亜人ではない。人類文明を知るゴブリンだ」
 生き残ったケンタウロス達の避難が終わった後、テテリカは冒険者達にゴブリンの言語がおかしかったことを話した。その後、ベルクはゴブリンロードの血痕に触れ、残留思念の感知を試してみた。

(伝わってきた感情は炎のような狂信――『偉大なる帝国』への執着。そして、自身を含めた亜人種全てへの憎悪か)
 ただ、あのゴブリンが皇帝ヨゼフから直接何か命令を受けていたわけではなさそうだ。過激派末端の暴走である可能性もある。
「――いずれにせよ、奴の身元を特定できるよう手配をせねばな。それと……早急に帝都に居られるだろうイダ様にお会いせねばならないようだ」

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『レミーラ族長! ご無事でしたか!』
『ランラン! お前も生きてたのかい。……何人生き残った?』
『正確な人数はまだ。戦士は3割ほどしか残っていません。ですが非戦闘員は約半数が生き残りました』
『そうかい……』

 ランランの言葉に、レミーラは肩を落とした。思わぬ救援によって部族の絶滅こそ免れたが、犠牲はあまりに大きかった。

『彼らにはなんと伝えますか?』
 ランランは少し離れた所でケンタウロス達の負傷者の手当てに協力している冒険者達の方を見た。
『この人間達がいなければ集落は壊滅していただろう。よくお礼を言っといておくれ。そして、この場にいる8人と一匹を我らの友として認めるとも』
『分かりました!』

 ランランは長老レミーラからの言葉をそのまま冒険者達に伝え、『貴方達との友好ノ証デス』と前置きして獣の爪のアクセサリーを渡した。いつの間にか参戦していた帝国の斥候セロは戦いが終わった後、すぐにまた姿を消していた。
「ランランさん、僕達は貴方達の味方です。何か用があれば猫の人(セロ)に言って貰えれば、僕達にも伝わります」
 アリッグはそう言って、ちゃっかりセロを巻き込んだ。彼が加勢してくれた理由は不明だが、このケンタウロス達の部族の監視が任務らしいので連絡係に使うぐらいは問題ないだろう。

「じゃーねー!」
 ぶんぶんと元気にケンタウロス達に手を振るフレイヤ。ちなみに彼女が戦闘に使わなかった大量のオイルはケンタウロスに燃料として提供され、喜ばれた。

「マタ、アイマショウ。人類ノ友ヨ!」
 冒険者たちはケンタウロスに見送られ、バルディオンに結果を報告する為にヴィントへと引き返していった。

マスターコメント

ケンタウロスの犠牲は大きかったものの、討伐目標のワイバーンは全て撃破。族長レミーラと特異個体のランランも生存し、冒険者達と古老派ケンタウロスの間に絆も生まれましたので、結果は成功とさせていただきます。 ただし、まだ人類全てがケンタウロス達に認められたわけではありません(聖地を襲ったメドゥ勢力も『人類』ですし、ケンタウロス達と帝国とは長い間争ってきた歴史があります)。ここから先どうなっていくのかは今後の冒険者達と帝国の人々次第でしょう。人馬の事後シナリオ期間はまたこの部族を扱うシナリオを出す予定です。お疲れ様でした!
ショートシナリオ

ショートシナリオ非常に難しい 報酬:標準8 / 4〜8人

2022年03月16日 01時23分42秒 公開

成功

相談掲示板

  1. テテリカ

    テテリカ、シューターだ。よろしく頼む。 主目的はワイバーンの殲滅だな。また、レミーラの持つ情報は重要そうだ。 主目的を果たしつつ、レミーラ生存に助力。 というのが全体方針についての俺の意見だ。 ……人馬の非戦闘員まで助けるかは、現時点では保留。 非常に難しいとされる依頼だ。薄情だが、目的を取捨選択する必要もあるかもしれないな。 俺自身は弓矢でワイバーンを攻撃。 移動力8に調整したゴリラのZOC効果で、敵ゴブリンロードの移動妨害。 というような戦闘行動を検討している。

  2. アリッグ・レイダー

    参加するか悩みましたが、ヒーラーもいないようなので……。 ヒーラーのアリッグ・レイダーと申します。 皆様よろしくお願いします。 基本的方針はテテリカさんの言うのに僕も賛成ですねー。 レミーラさんだけでなく、我々と意思疎通がある程度できるランランさんの護衛も大事かな。 前回、こちらの集落に立ち寄った時に彼女は非常に人気のある方とわかったので、そういう意味でも この方の生き残りはケンタウロスの戦士の士気にかかわってくると思います。 特に彼らは数が多いので、実力は低いと言えど、ランランさんを通しての協力は必需だと思います。 戦いは数だよ兄貴!と誰かが言ってましたし( 非戦闘員に関しては、僕はできるだけ助けたいと思いますねー。 ただ逃がすにしても「どうやって逃がすの?」という問題がありますね。 単に逃げ道をふさぐワイバーンを倒しただけでは、ゴブリン・ロードの指揮次第では、 他のワイバーンが逃げ道ふさいだり、逃げ道に火炎弾を放って一網打尽とか、最悪の事態が考えられますし。 何にしても一番厄介そうなのがゴブリン・ロードですかね? こいつの補助魔法って、間違いなくワイバーンにも使ってきそうですし、 何とか引き離せないですかねー? 今のところ、こちらの集落に立ち寄ったことがあるのは、ベルクさんと僕だけですかね? だとしたら、ランランさんを通して何かを伝えるなら僕かベルクさんがいいかな?

  3. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 今回俺は、『衝撃刃3』でブラストワイバーンの撃墜を狙う予定だ。 余裕が有ればゴブリンロードの攻撃も狙うぜ。 ランランは当然だがレミーラの生存にも全力を尽くすのは俺も賛成だな。 ケンタウロスの非戦闘員も可能な限り救出したいな

  4. ベルク・オスマット

    シーフのベルクだ、よろしく頼む。 数少ない友好勢力の救援だ。 長や幹部(ランラン殿)の救援ができれば友好関係にさらなる前進が見込めるな。 東部地域の安寧にもつながる重要な案件になりそうだ。 ……襲っているゴブリン・ロードが過激派の皇帝狂信者と思われるのが頭痛の種と不安要素だが(額に青筋) とりあえず我はレミーラ殿の救援に行こうと思う。

  5. セリオス・オーガスト

    ・・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む。 とりあえず俺はワイバーンの駆除に向かう予定だ。 あとはケンタウロスたちにこっちを攻撃されないように最初にランランに声をかけてこちらが敵でないことを伝えたほうがいいだろうな。その上で共闘するのが一番か ゴブリンロードのほうはこのままだとレミーラがやられそうだから二人ぐらい救助に行ったほうがよさそうだな

  6. バーネット・フォーサイス

    キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >方針 ひとまず、ワイバーンを駆除しつつケンタウロス達の援護ってのは共通認識で良さそうだな。 今回はワイバーンにせよゴブリン・ロードにせよ一筋縄じゃいかない相手だろうし、 ある程度分散して個々の敵に対応しつつ、可能ならケンタウロスの非戦闘員の退路を確保して、 なるべく早いうちに避難させるって流れになるか? 退路については、最低限俺らで残っている敵全てを抑えられる様になってから、 比較的危険性の少ない経路で逃げてもらうのが良いと思う。 >個人行動 それじゃあ、俺もゴブリン・ロードの対応に回るとするかね。 あの機動力は厄介だし、スネアージャベリンとかで足を封じてみようと思う。

  7. フレイヤ・サンライズ

    っへーい、フレちゃんだぞっ☆ 私もベルぽっぽと一緒にレミーラさん?とこいっきまーす! 出来ることはアシットブリットで物理低下して殴る!以上!

  8. ゴルバルティア

    ウォーリアのゴルバルティアだ、よろしくな 私はタンクとしてワイバーンに当たるぜ

  9. アリッグ・レイダー

    僕はケンタウロスの方の援護も考えて 対ワイバーンで動きますね。 とりあえず表明を纏めると、対応はこうですかね?敬称略です。 ・対ワイバーン テテリカ アリッグ アルベルト(余裕があればゴブリンも) セリオス ゴルバルティア ・対ゴブリン・ロード ベルク バーネット フレイヤ

  10. アリッグ・レイダー

    >声掛け 敵対の意思がない事を伝えるなら僕がやりますよ。 前回、この集落に立ち寄った一人ですし、ランランさんとは顔見知りなので。 協力すると言えばすぐに僕たちの意図を汲んでくれるはずです。 それと、ランランさんに協力してもらえるなら、ケンタウロスの戦士の人たちの動きも ある程度僕達で制御できそうな気もしますね。 なので、彼らにどう動いてもらうかも、考える必要があるかな? >方針 退路確保については、バーネットさんの言うようにワイバーンを抑えられるようになってから。 つまり、ある程度数を減らしてからが良いですかね? その間、非戦闘員の人たちが大人しくしててくれればいいですが。 ある程度分散するのは良いと思います。 ただ、ワイバーン1体にある程度攻撃を集中させて、早めに数を減らす事を考えた方が良いかなと思います。 例えば、ケンタウロスの戦士に協力してもらい、50人いる内の半数を 1体に集中させれば、早期に数を減らせるんじゃないかなと。 問題はゴブリン・ロードですかね……。 こいつが邪魔をしにやってくるのが一番厄介かなー。 テテリカさんが移動妨害をしてくれる他にも 何かしらの手段で、集落方面に手出しできないようにしたいですね。 レミーラさんと直接、意思疎通取るのが難しいのも厄介かな。

  11. テテリカ

    アリッグは纏めとランランへの声かけ役をありがとう。適任だと思う。 冒険者と人馬戦士で共にワイバーンを攻撃できるなら双方にとって有益だ。 対ワイバーン冒険者は五名。ワイバーンは八体と敵の方が数が多い。 ワイバーンの強さにもよるが、ここで人馬戦士と連携しなければ、魔獣殲滅の依頼目標を達成するのも難しそうに思える。 >分散か集中か 敵を抑える程度に分散しつつ、人馬戦士の手も借りて一体ずつ集中攻撃という流れか? 分散と集中のそれぞれの利点を活かした案だと思う。 ワイバーンは四方にいるが、単独行動の三名と二人組がそれぞれ四方に向かうことになるだろうか。 >ワイバーン 参加人数も満員になったし、人馬の非戦闘員も無理のない範囲で助けられると良いな。 彼らの動きにワイバーンが気を取られている隙に、敵を攻撃するのも一手か。 人馬を見殺しの囮にする意図はなく、あくまで攻撃の好機を逃さないくらいの意味だ。 意図的な囮扱いは人馬勢力の不信感を招くだろう。 俺個人は、精密射撃でワイバーンの翼の被膜や首の部分を狙ってみよう。 >ゴブリンロード 敵が比較的集落から離れている時を見計らい、ゴリラのZOCを発動しよう。 スネアージャベリンなどで移動力を減らす案も出ているな。

  12. バーネット・フォーサイス

    >ワイバーン ケンタウロスの戦士達との協力は必須だな。 連携、とまではいかなくても、最低限分担とかして抑えたい所だ。 ワイバーン2,3体でも戦士達のみで抑えて時間稼ぎが出来るなら、 その間に俺らがワイバーンを各個撃破、ってのが理想的な流れか?

  13. アリッグ・レイダー

    とりあえず問題もなさそうですし、 ランランさんへの声掛け、および協力連携のとりつけは僕がやろうと思います。 その上で、ケンタウロス戦士の動きの事を。 >ケンタウロスとの連携と攻撃 流れはテテリカさんの言うような感じで考えてますね。 四方のワイバーンの何れかをケンタウロス戦士の半数とランランさん、傍に僕が付いて一方のワイバーンに集中攻撃。 残り半数のケンタウロスの方は、それぞれ残り三方に別れ、ワイバーン対応の皆さんと共に戦うというイメージです。 まあ、そこまで確実に四方に対応しないとしても、 『ワイバーン1体に集中攻撃をする』という事は、数を減らす上で大事かなと思います。 指揮はランランさんがしてるので、ランランさんにお願いすれば、 戦士の方を動かしてもらうのも、難しいことではないと思います。 前回の依頼で、ランランさんは僕たちに協力的な方とわかってますしね。 利点としては、集中攻撃による早期撃破と包囲を解放する事ですかね。 デメリットは、残りのワイバーン対応に負担がかかることでしょうか。 上記行動に特に問題がなければ、僕がランランさんにお願いする予定です。

  14. テテリカ

    なるほど。俺はアリッグが挙げた流れに異論はない。 個別にワイバーンを抑えている間は敵の引き付けと守り重視で行動し、援軍が来てから本格的な攻撃に移るとしよう。 単独でワイバーンを抑える者は、回復術などの用意があると少しは安心できるな。 冒険者同士で別行動をすることが多くなるが、範囲が広そうなのでテレパスは微妙か……。

  15. アリッグ・レイダー

    さて、明日には出発ですので先に述べた 人馬戦士半数による『ワイバーン1体に集中攻撃をする』事をプレに入れるようにします。 また、個人行動として僕はランランさんの傍に常に付き、 超視力で敵や皆さんの状況を見て、ランランさんや皆さんに伝える事にします。 回復に関してですが、ヒールやヒール2を皆さんやランランさんに。 他は人馬の方たちに使う予定です。 特にヒーリングオーラは今回、人馬の方々に使う方がよさそうですので。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0