詳細なくして商才あらず
椿油
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シナリオID:1945
オープニング
●ロスガリアって薔薇の紋章結構あるよね
同盟都市の一つ、フロルゾンの一角に構えるはローズベルト商会。その当主であるジェラルダ・ローズベルトはある事に気付き悩んでいた。
「そういえば、うちってブランド品と言える物なかったわよね?」
目の前には商会のモチーフである、薔薇をモチーフにした商品がいくつかある。売れ行きはそこそこ良いのだが、いまいちパンチに欠けているのである。
「ジェラルダ様、これなんかどうでしょう」
ジェラルダより年寄りに見えて実はジェラルダより若い、ヒューマンの老婆がジェラルダにベルトを持ってきた。
「あーそうそう、ローズベルト商会の薔薇を拵えたその名もローズ・ベルト……ってそんな感じだからブランド品が出来ないのよ!! 見なさい婆や、この品の数々を!」
ドドン!!
薔薇の模様の入ったクローゼット、通称「クローズット」。
薔薇の香りが楽しめてダイエットも出来る球、通称「薔薇ンスボール」。
薔薇の風味溢れつつ様々な味が楽しめる甘味、通称「薔薇エティクッキー」。
――全て、駄洒落である。
「……これじゃあ満足できないわっ!!」
当主として納得のいく品は無かった。というのもあるし、駄洒落&安直ネーミングしか出来ない自分が許せなかった。名付けを別の人に頼めばいいというのはノーコメント。彼女がローズベルト商会で一番強い決定権を持つ存在なのである。
「ネーミングに頼らないちゃんとした商品が作りたいけど、ネーミングは購買意欲に直結するのよ。あぁぁ矛盾が生じる~!!」
頭を抱えるジェラルダ。あまりにも商会の紋章に頼りすぎた商品もいかがな物か、と――。
「しかし、このままではジェラルダ様の思う通りのブランド品が出来ないのでは……婆やは悲しいですよ」
よよよと泣く、ジェラルダお仕えの老婆。ホニャララ歳。
「そうね。ネーミングだけ業者に委託っていうのも癪だわ。それに商品のニーズもいまいち満たせてないみたいだし。……ニーズ? そうだ、今のニーズって言ったら冒険者もあるじゃない!」
ジェラルダはエルフである。時間感覚に乏しい彼女は、すっかり冒険者という存在が生まれた事を忘れていた。
「冒険者の顧客向けに、欲しい物を冒険者達本人からリサーチするのよ!! ついでに冒険者に商品の名前を付けてもらいましょう!! それなら大歓迎だわ!!」
拳をぐっと握り、ジェラルダの目は再び輝き始めたのだった。
同盟都市の一つ、フロルゾンの一角に構えるはローズベルト商会。その当主であるジェラルダ・ローズベルトはある事に気付き悩んでいた。
「そういえば、うちってブランド品と言える物なかったわよね?」
目の前には商会のモチーフである、薔薇をモチーフにした商品がいくつかある。売れ行きはそこそこ良いのだが、いまいちパンチに欠けているのである。
「ジェラルダ様、これなんかどうでしょう」
ジェラルダより年寄りに見えて実はジェラルダより若い、ヒューマンの老婆がジェラルダにベルトを持ってきた。
「あーそうそう、ローズベルト商会の薔薇を拵えたその名もローズ・ベルト……ってそんな感じだからブランド品が出来ないのよ!! 見なさい婆や、この品の数々を!」
ドドン!!
薔薇の模様の入ったクローゼット、通称「クローズット」。
薔薇の香りが楽しめてダイエットも出来る球、通称「薔薇ンスボール」。
薔薇の風味溢れつつ様々な味が楽しめる甘味、通称「薔薇エティクッキー」。
――全て、駄洒落である。
「……これじゃあ満足できないわっ!!」
当主として納得のいく品は無かった。というのもあるし、駄洒落&安直ネーミングしか出来ない自分が許せなかった。名付けを別の人に頼めばいいというのはノーコメント。彼女がローズベルト商会で一番強い決定権を持つ存在なのである。
「ネーミングに頼らないちゃんとした商品が作りたいけど、ネーミングは購買意欲に直結するのよ。あぁぁ矛盾が生じる~!!」
頭を抱えるジェラルダ。あまりにも商会の紋章に頼りすぎた商品もいかがな物か、と――。
「しかし、このままではジェラルダ様の思う通りのブランド品が出来ないのでは……婆やは悲しいですよ」
よよよと泣く、ジェラルダお仕えの老婆。ホニャララ歳。
「そうね。ネーミングだけ業者に委託っていうのも癪だわ。それに商品のニーズもいまいち満たせてないみたいだし。……ニーズ? そうだ、今のニーズって言ったら冒険者もあるじゃない!」
ジェラルダはエルフである。時間感覚に乏しい彼女は、すっかり冒険者という存在が生まれた事を忘れていた。
「冒険者の顧客向けに、欲しい物を冒険者達本人からリサーチするのよ!! ついでに冒険者に商品の名前を付けてもらいましょう!! それなら大歓迎だわ!!」
拳をぐっと握り、ジェラルダの目は再び輝き始めたのだった。
解説
冒険者向けの、ローズベルト商会のブランド品を一緒に作ってみましょう!
【出来る事】
・提案する&ネーミングを考える
提案だけでも大歓迎です。ローズベルト商会は紋具以外なら大体なんでも作れます。
・サンプルを作ってみる
自力で作れる方は持ち込んでみたり、ローズベルト商会開発部門の方々と一緒に作る事ができます。
・試食、試用してみる
ジェラルダからコメントが貰えます。プレイングに対応文があればジェラルダと会話できます。
・既存の商品を使ってみる
商会に傾向という物は無く様々作っていますが、試してみる価値のある品ばかりです。
上手くアイテム開発出来たらローズベルト商会で販売が開始されます!
【NPC】
ジェラルダ・ローズベルト(エルフ/女性/150歳)
ローズベルト商会の当主。元々ローズベルト商会はヒューマンの家系でしたが、百数十年前から彼女が継いでいます。先代はとうの昔に居ません。元々先代にお仕えしていた婆やもそろそろ……。お婿さん募集中です。
※アイテムが欲しい方は、職人通りで実際にアイテムとして販売させるのは難しいので、既存のアイテムのオリジナル化で対応して下さい。
マスターより
椿油です。皆で商会に欲しいアイテムを紹介できるイベントシナリオです。
遠慮せずにどんどん提案してみましょう! ジェラルダが拾ってくれます。ちなみに彼女はツッコミも出来ます。
皆様のアツいプレイング、お待ちしております。
リプレイ
●こちらローズベルト商会
突然のジェラルダの発想に集まった5人の冒険者達。
フレイヤ・サンライズは興味ありげに早速提案を話し始めた。
「へぇー、便利なものを作ったりするんだ。じゃあさ、じゃあさ、こういうのもどう? ポケットに入るくらいのコンパクトで、遠くの人と話ができてついでに文字にしてやり取り出来ておまけに見ている景色を絵にする機能付いてたり絵をかいたり時計としても灯りとしても使えたりあとついでにお支払いとかも」
「出来ればそれは来世に期待してもらった方がいい内容ね」
ジェラルダはスルーせずに丁寧にコメントした。
「うん、だと思った。じゃあ、冒険者が長期外泊するのに便利な、小道具一式が入ったポーチみたいな物はどうかな?」
「小道具一式、良いわね。具体的には?」
フレイヤが挙げたのは、手鏡・ブラシ・洗剤・マット・刃物・爪切り・容器等々。
「とにかく全部セットで統一した道具だとおしゃれじゃない?☆ ローズベルトブランドみたいな?」
「ふむふむ、身だしなみを整えるのは重要だものね!」
手元の紙にメモしていくジェラルダ。
「女性向けに化粧道具も入れるとか。ベルクも化粧してあげよっか?♪」
「いや、断る」
――少し間を置いたのち。
「……寝袋はどうだろうか。底面は頑丈な爬虫類系魔獣の鱗等で覆って、畳みやすく破れにくい物を」
ベルク・オスマットは頑丈な寝袋を提案した。
「魔獣の鱗で作れば確かに破れにくいかもしれないわね! 材料の調達に冒険者を要する可能性はあるけど、充分イケるわ」
「正直単独で旅するとなると嵩張るような荷物は少ないほうがいいからな。やはりちょっとした洞窟などに入って広げられる寝袋があると助かるのだが、安物だとちょっとした小石だとか岩肌とかで破れてしまうからな」
「ええ、嵩張らないのは商品として重要よ。耐久性もローズベルトブランドに相応しい上質な物に出来れば最高ね。ワニ革が一番かしら?」
ジェラルダは手元の紙に『ワニ革 冒険者ギルドに依頼』とメモしていた。
「ワニ革か。寝袋として販売できる量のワニが居れば良いんだが」
「抜かりないわ。婆やがもうアテを探してるから」
気づいたら、すぐ隣に居たはずの婆やが忽然と姿を消していた。もしかしてあの老婆、実はシノビなんじゃないだろうか。
「私からなんだけど、ペーパーナイフはどうかしら?」
エデル=マグノリアの提案はペーパーナイフ。タイムリーな提案であった。
「便乗商品って訳ね?」
ジェラルダはニヤリと笑った。
「ちょうど、まだ高価ではあるけれどレターセットが売られ始めたし。今まで手紙に縁がなくてペーパーナイフを持っていない人も居そうじゃない?」
「そうね、需要はこれからどんどん出てくるはずだわ」
頷くジェラルダ。
「材質は金属だけじゃなく、木も使えるみたいよ。高級志向なら螺鈿や彫金で細工をすればいいし。なるべく安価にするならシンプルにして……そうね、ワンポイントに誕生花を小さく彫っておくとか。で、名入れも可能にして。これならプレゼントにも喜ばれるんじゃないかしら?」
エデルの提案に、ジェラルダはグッドサインを送る。
「良い発想力ね! 実用的かつプレゼント向け商品。アリアリのアリよ!」
「で、名前は……誕生花+名入れの商品にのみだけれど。《想花のペーパーナイフ》とかどうかしら?」
「ええ、良いわ。プレゼントの定番商品にしましょう」
レタラ・スマリはさらなる紙を求めた。
「屋外でも自由にスケッチ出来るよう、裏表紙にある程度硬さのあるスケッチブックが欲しい」
「硬さは重要よね。膝で抑えても曲がらない方がいいわね」
使用用途をある程度理解しているジェラルダ。時間感覚は乏しいが観察眼は確かだ。
「紐で綴ったり、リング状の留め具で紙を束ねて、必要に応じて破ったり捲ったりするのが容易になれば尚良いと思う。紙は高級紙が良いが、紙質をより安価なものに変えてクロッキー帳として気軽に使えるようなタイプのものもあると良いと思う」
「2タイプ用意するって事ね? 破りやすい上で下手に破片状に破れたりしない、取り外しやすい物が良いかしら」
「そうなるな。ペンとインクは持ち運びし易いよう、小型にして一つのケースに入れて纏められたら良いだろうか。ケースに薔薇の意匠を取り入れられれば、ブランド品としても箔がつくのでは?」
「薔薇の意匠はポーチとかもそうだけど、勿論全部に入れるわよ!」
ドヤ顔を決めたジェラルダ。レタラは少し考え込んでいた。
「……で、ネーミングか。《ロゼ・スケッチブック》に《ロゼ・クロッキーブック》でどうだ。……安直過ぎる、か?」
「さすがね! 貴方はうちのネーミングをバッチリ理解しているみたいね」
「それは誉め言葉と受け取っていいのか?」
レタラは訝しんだ。
「ネーミング……。いや、俺も人のことは言えないからな……。剣にも馬にも名はつけられない方だ」
だわはネーミングに関して一言。が、そこで鞘を見たジェラルダの余計な一言が放たれる。
「じゃあブルーソードシアンドラゴンでどうかしら?」
「ドラゴンはどこから来たんだ」
「何となくよ」
閑話休題。
「ふむ、そうだな……。旅人としてほしいものといえば『エーテルで火じゃなく光をつけたり消したりできるランタン』だろうか」
「紋具はうちではちょっと難しいわね」
「そうか。それなら、携帯しやすい調理器具セットとか。1〜2人用のコンパクトなサイズというのはあまり見掛けなくてな。一人旅を始める時、街で調達するのに苦労した」
「やっぱりセット商品がニーズあるみたいね」
サラサラとメモしていくジェラルダ。
「鍋と小型のケトルと火打箱、ついでにお皿のセットってところかしら?」
「まぁ、そんな感じだな」
●サンプルを作ろう
「お待たせしましたジェラルダ様、ワニ革を調達して来ましたよ。一個だけなら試作できるかと」
あっという間に婆やがワニ革を抱えて戻って来た。やはりシノビ疑惑が加速する。
「ありがとう婆や、さぁまずは小さい物から試作しましょう!」
「一緒に試作してもらえると助かる。……不器用でな。自力では作れない」
だわの調理器具セットをまず作る事に。開発部門の方々が鍋とケトルの型を作り始めていた。
「具体的なサイズは……女子も持ち運べる位が理想かしらね?」
「そうだな。男ばかりが使うとも限らない」
型に熱々の金属をジュワーと流し込み、鍋とケトルは開発部門の方々があっという間に作っていく。
「浅皿と深皿、どっちが良いと思う?」
ジェラルダはだわに問う。
「コンパクトさで言えば浅皿、重ねやすさで言えば深皿だろうか」
「一応、両方用意してみるわね」
小道具を入れるポーチは、開発部門の裁縫担当が繕っていく。
「入れる物のサイズは凡そで測ったから、試しに市販の小道具を入れてみましょう。市販の物が入ればうちでも中身は開発できるわ!」
ジェラルダは裁縫の仕上がりを待つ間、ペーパーナイフの方を見に行く。
「順調?」
「試作は出来ましたぜお嬢!」
鍛冶と彫金を担当する開発部門のマッスルな男性が答える。ジェラルダがそっと手に取ると、思わず笑みがこぼれた。
「――最高の出来よ!」
試作のペーパーナイフには、スイレンの花が掘られていた。
スケッチブック&クロッキーブックの方は、紙を作る所からなのでやや時間がかかりそうだ。
「出来る頃合いは……寝袋と同じ位かしら?」
寝袋は婆やがせっせと縫っていた。やはり只者では無さそうだ。
「すぐに出来ますよジェラルダ様、わたしゃローズベルト開発部門の古参ですからね」
ペンケースも鍛冶担当があっという間に作っていった。
●何という事でしょう
そして夜。全ての試作品が無事一日のうちに出来上がった。何という速さ。
――まず、ベルク提案の耐久性と畳みやすさを重視した寝袋。試しに下に尖った物を置いて、負荷をかけてみる。いわゆる負荷テストだ。
「はい、もっと――更に――ストップ! うん、これで破れなければ大丈夫そうね」
「凄いな。奇襲を受けて寝袋ごと岩に激突したとしても破れなさそうだ」
ベルクはローズベルト商会の技術力に感心していた。それでもって、畳みやすく仕上がっている。
「流石だわ婆や」
「ほほ……それ程でも。なに、5~60年程培ってきた技術の結晶でございますよ」
婆やは一体何歳なのか。
続いてレタラ提案のスケッチブック&クロッキーブック。試しに1頁破いてみる。リングから上手くペリペリと外れる音が快感だった。
「こんな感じでどうかしら。背表紙硬くなってる?」
「丁度いい。一日で出来たとは思えないな」
「厚みはこの位……っと」
ジェラルダは大量生産に向けてメモしていた。ちなみにレタラや他冒険者が驚いていた事だが、ローズベルト商会、なんと開発部門の中に紙漉き担当も居るのである。そりゃあ一日で完成する訳だ、と思っただろう。
「割と何でもありね……」
エデルも感心していた。
ペーパーナイフも金属製と木製の二種類が出来上がっていた。
「両方とも素敵ね。このスイレンは?」
「ああそれ、あたしの誕生花よ」
ジェラルダの誕生花はスイレンであった。
そして試しにクロッキーブックの一部をペーパーナイフで切り取ってみたが、切れ味は申し分ない。あえて言うなら、木製の方が少しザラザラと切れるぐらいだろうか。
「うーん、質を揃えるには木材を変える必要がありそうね……」
これもジェラルダが大量生産向けにメモしていた。
調理器具セットは、浅皿と深皿の二種類が出来上がった。全て収納してみると、あからさまに高さが違う。
「やはり、浅皿なら高さは取らないな」
「そうね。深皿は重ねやすいけど、嵩張るわ。浅皿を採用しましょう」
「で、ネーミングか。《ちいさなべ》とか」
だわのネーミングに一瞬固まったローズベルト商会の面々。
「……。だから、俺も人のことは言えないと言っただろ」
「良い名前よ!」
褒めたのはジェラルダだけだった。命名権を握っているだけあったようだ。
小道具ポーチは、見事に用意された全部の小物が入るサイズに仕上がった。
「目測通りね!」
「中の小道具も大量生産するんだよね?」
「勿論よ」
「凄いなぁ、財力無いと出来ないね」
フレイヤも感心だ。そもそも、ローズベルト商会には資材が蓄えてあるのだった。
「財力もそうだけど、コネがあって今があるのよ!」
コネは大事。神代の歴史資料にもそう書いてある。
「この寝袋、入ってみてもいいかしら?」
エデルは耐久力のある寝袋に興味を持った。
「どんどん試して頂戴! 改良するから!」
ジェラルダの言葉に甘えて、寝袋へ入ってみる。寝心地は普通の寝袋とほぼ同じだ。
「うん、寝袋って感じね。これで耐久力が凄いのだから素晴らしいわ」
「寝心地がもう少しよくなったらいい、とかあるかしら?」
ジェラルダの質問に、エデルは寝ながらうーんと考え込んだ。
「敢えて言うなら……強度が増した分、ちょっと背中が硬いかも? まぁしょうがない点かもしれないけれど」
「それは困ったわね。綿でも入れようかしら?」
ジェラルダはメモに「ワニ革・綿」と記した。
●結論を言うと
「今回の件で、ニーズはまだまだ世の中に沢山あるって事が分かったわ! それと問題点もいくつか見つかったから、試作に試作を重ねる必要がありそうね」
婆やにお礼のお菓子を用意させつつ、ジェラルダはまとめに入った。
「そうだな。ワニ革だけでは寝心地が悪くなるという事も分かった」
ベルクは、次なる試作に期待を寄せつつお菓子を受け取った。
「ただ、小道具ポーチと調理器具セットは商品化まで遠くはないわ。小物は結構得意なのよ。スケッチブックとクロッキーブックも問題は特にない。ペーパーナイフは木製だけ要検討、かしら」
「スッと切れる木材、探すのが難しそうね」
エデルはお菓子を受け取りつつ、どんな木材があったかを考えていた。
「ロゼ・ブックシリーズが出来るのを待つ事にするよ」
レタラもお菓子を受け取りつつ、完成を楽しみに待つのだった。
「この調子ならすぐ出来そうだな。……本当に早いからな、ローズベルト商会。驚いた」
「楽しみに待ってるね!」
だわとフレイヤがお菓子を受け取った所で、婆やはぺこりと礼をした。
「本日はジェラルダ様の我儘にお付き合い下さりありがとうございました。また何か縁があればご協力下さいませ」
「ちょっ、婆や! 我儘じゃなくて調査だから! ……ともかく。うちの商品をご贔屓に、ね!」
ジェラルダはウィンクをして冒険者達を見送ったのだった。
突然のジェラルダの発想に集まった5人の冒険者達。
フレイヤ・サンライズは興味ありげに早速提案を話し始めた。
「へぇー、便利なものを作ったりするんだ。じゃあさ、じゃあさ、こういうのもどう? ポケットに入るくらいのコンパクトで、遠くの人と話ができてついでに文字にしてやり取り出来ておまけに見ている景色を絵にする機能付いてたり絵をかいたり時計としても灯りとしても使えたりあとついでにお支払いとかも」
「出来ればそれは来世に期待してもらった方がいい内容ね」
ジェラルダはスルーせずに丁寧にコメントした。
「うん、だと思った。じゃあ、冒険者が長期外泊するのに便利な、小道具一式が入ったポーチみたいな物はどうかな?」
「小道具一式、良いわね。具体的には?」
フレイヤが挙げたのは、手鏡・ブラシ・洗剤・マット・刃物・爪切り・容器等々。
「とにかく全部セットで統一した道具だとおしゃれじゃない?☆ ローズベルトブランドみたいな?」
「ふむふむ、身だしなみを整えるのは重要だものね!」
手元の紙にメモしていくジェラルダ。
「女性向けに化粧道具も入れるとか。ベルクも化粧してあげよっか?♪」
「いや、断る」
――少し間を置いたのち。
「……寝袋はどうだろうか。底面は頑丈な爬虫類系魔獣の鱗等で覆って、畳みやすく破れにくい物を」
ベルク・オスマットは頑丈な寝袋を提案した。
「魔獣の鱗で作れば確かに破れにくいかもしれないわね! 材料の調達に冒険者を要する可能性はあるけど、充分イケるわ」
「正直単独で旅するとなると嵩張るような荷物は少ないほうがいいからな。やはりちょっとした洞窟などに入って広げられる寝袋があると助かるのだが、安物だとちょっとした小石だとか岩肌とかで破れてしまうからな」
「ええ、嵩張らないのは商品として重要よ。耐久性もローズベルトブランドに相応しい上質な物に出来れば最高ね。ワニ革が一番かしら?」
ジェラルダは手元の紙に『ワニ革 冒険者ギルドに依頼』とメモしていた。
「ワニ革か。寝袋として販売できる量のワニが居れば良いんだが」
「抜かりないわ。婆やがもうアテを探してるから」
気づいたら、すぐ隣に居たはずの婆やが忽然と姿を消していた。もしかしてあの老婆、実はシノビなんじゃないだろうか。
「私からなんだけど、ペーパーナイフはどうかしら?」
エデル=マグノリアの提案はペーパーナイフ。タイムリーな提案であった。
「便乗商品って訳ね?」
ジェラルダはニヤリと笑った。
「ちょうど、まだ高価ではあるけれどレターセットが売られ始めたし。今まで手紙に縁がなくてペーパーナイフを持っていない人も居そうじゃない?」
「そうね、需要はこれからどんどん出てくるはずだわ」
頷くジェラルダ。
「材質は金属だけじゃなく、木も使えるみたいよ。高級志向なら螺鈿や彫金で細工をすればいいし。なるべく安価にするならシンプルにして……そうね、ワンポイントに誕生花を小さく彫っておくとか。で、名入れも可能にして。これならプレゼントにも喜ばれるんじゃないかしら?」
エデルの提案に、ジェラルダはグッドサインを送る。
「良い発想力ね! 実用的かつプレゼント向け商品。アリアリのアリよ!」
「で、名前は……誕生花+名入れの商品にのみだけれど。《想花のペーパーナイフ》とかどうかしら?」
「ええ、良いわ。プレゼントの定番商品にしましょう」
レタラ・スマリはさらなる紙を求めた。
「屋外でも自由にスケッチ出来るよう、裏表紙にある程度硬さのあるスケッチブックが欲しい」
「硬さは重要よね。膝で抑えても曲がらない方がいいわね」
使用用途をある程度理解しているジェラルダ。時間感覚は乏しいが観察眼は確かだ。
「紐で綴ったり、リング状の留め具で紙を束ねて、必要に応じて破ったり捲ったりするのが容易になれば尚良いと思う。紙は高級紙が良いが、紙質をより安価なものに変えてクロッキー帳として気軽に使えるようなタイプのものもあると良いと思う」
「2タイプ用意するって事ね? 破りやすい上で下手に破片状に破れたりしない、取り外しやすい物が良いかしら」
「そうなるな。ペンとインクは持ち運びし易いよう、小型にして一つのケースに入れて纏められたら良いだろうか。ケースに薔薇の意匠を取り入れられれば、ブランド品としても箔がつくのでは?」
「薔薇の意匠はポーチとかもそうだけど、勿論全部に入れるわよ!」
ドヤ顔を決めたジェラルダ。レタラは少し考え込んでいた。
「……で、ネーミングか。《ロゼ・スケッチブック》に《ロゼ・クロッキーブック》でどうだ。……安直過ぎる、か?」
「さすがね! 貴方はうちのネーミングをバッチリ理解しているみたいね」
「それは誉め言葉と受け取っていいのか?」
レタラは訝しんだ。
「ネーミング……。いや、俺も人のことは言えないからな……。剣にも馬にも名はつけられない方だ」
だわはネーミングに関して一言。が、そこで鞘を見たジェラルダの余計な一言が放たれる。
「じゃあブルーソードシアンドラゴンでどうかしら?」
「ドラゴンはどこから来たんだ」
「何となくよ」
閑話休題。
「ふむ、そうだな……。旅人としてほしいものといえば『エーテルで火じゃなく光をつけたり消したりできるランタン』だろうか」
「紋具はうちではちょっと難しいわね」
「そうか。それなら、携帯しやすい調理器具セットとか。1〜2人用のコンパクトなサイズというのはあまり見掛けなくてな。一人旅を始める時、街で調達するのに苦労した」
「やっぱりセット商品がニーズあるみたいね」
サラサラとメモしていくジェラルダ。
「鍋と小型のケトルと火打箱、ついでにお皿のセットってところかしら?」
「まぁ、そんな感じだな」
●サンプルを作ろう
「お待たせしましたジェラルダ様、ワニ革を調達して来ましたよ。一個だけなら試作できるかと」
あっという間に婆やがワニ革を抱えて戻って来た。やはりシノビ疑惑が加速する。
「ありがとう婆や、さぁまずは小さい物から試作しましょう!」
「一緒に試作してもらえると助かる。……不器用でな。自力では作れない」
だわの調理器具セットをまず作る事に。開発部門の方々が鍋とケトルの型を作り始めていた。
「具体的なサイズは……女子も持ち運べる位が理想かしらね?」
「そうだな。男ばかりが使うとも限らない」
型に熱々の金属をジュワーと流し込み、鍋とケトルは開発部門の方々があっという間に作っていく。
「浅皿と深皿、どっちが良いと思う?」
ジェラルダはだわに問う。
「コンパクトさで言えば浅皿、重ねやすさで言えば深皿だろうか」
「一応、両方用意してみるわね」
小道具を入れるポーチは、開発部門の裁縫担当が繕っていく。
「入れる物のサイズは凡そで測ったから、試しに市販の小道具を入れてみましょう。市販の物が入ればうちでも中身は開発できるわ!」
ジェラルダは裁縫の仕上がりを待つ間、ペーパーナイフの方を見に行く。
「順調?」
「試作は出来ましたぜお嬢!」
鍛冶と彫金を担当する開発部門のマッスルな男性が答える。ジェラルダがそっと手に取ると、思わず笑みがこぼれた。
「――最高の出来よ!」
試作のペーパーナイフには、スイレンの花が掘られていた。
スケッチブック&クロッキーブックの方は、紙を作る所からなのでやや時間がかかりそうだ。
「出来る頃合いは……寝袋と同じ位かしら?」
寝袋は婆やがせっせと縫っていた。やはり只者では無さそうだ。
「すぐに出来ますよジェラルダ様、わたしゃローズベルト開発部門の古参ですからね」
ペンケースも鍛冶担当があっという間に作っていった。
●何という事でしょう
そして夜。全ての試作品が無事一日のうちに出来上がった。何という速さ。
――まず、ベルク提案の耐久性と畳みやすさを重視した寝袋。試しに下に尖った物を置いて、負荷をかけてみる。いわゆる負荷テストだ。
「はい、もっと――更に――ストップ! うん、これで破れなければ大丈夫そうね」
「凄いな。奇襲を受けて寝袋ごと岩に激突したとしても破れなさそうだ」
ベルクはローズベルト商会の技術力に感心していた。それでもって、畳みやすく仕上がっている。
「流石だわ婆や」
「ほほ……それ程でも。なに、5~60年程培ってきた技術の結晶でございますよ」
婆やは一体何歳なのか。
続いてレタラ提案のスケッチブック&クロッキーブック。試しに1頁破いてみる。リングから上手くペリペリと外れる音が快感だった。
「こんな感じでどうかしら。背表紙硬くなってる?」
「丁度いい。一日で出来たとは思えないな」
「厚みはこの位……っと」
ジェラルダは大量生産に向けてメモしていた。ちなみにレタラや他冒険者が驚いていた事だが、ローズベルト商会、なんと開発部門の中に紙漉き担当も居るのである。そりゃあ一日で完成する訳だ、と思っただろう。
「割と何でもありね……」
エデルも感心していた。
ペーパーナイフも金属製と木製の二種類が出来上がっていた。
「両方とも素敵ね。このスイレンは?」
「ああそれ、あたしの誕生花よ」
ジェラルダの誕生花はスイレンであった。
そして試しにクロッキーブックの一部をペーパーナイフで切り取ってみたが、切れ味は申し分ない。あえて言うなら、木製の方が少しザラザラと切れるぐらいだろうか。
「うーん、質を揃えるには木材を変える必要がありそうね……」
これもジェラルダが大量生産向けにメモしていた。
調理器具セットは、浅皿と深皿の二種類が出来上がった。全て収納してみると、あからさまに高さが違う。
「やはり、浅皿なら高さは取らないな」
「そうね。深皿は重ねやすいけど、嵩張るわ。浅皿を採用しましょう」
「で、ネーミングか。《ちいさなべ》とか」
だわのネーミングに一瞬固まったローズベルト商会の面々。
「……。だから、俺も人のことは言えないと言っただろ」
「良い名前よ!」
褒めたのはジェラルダだけだった。命名権を握っているだけあったようだ。
小道具ポーチは、見事に用意された全部の小物が入るサイズに仕上がった。
「目測通りね!」
「中の小道具も大量生産するんだよね?」
「勿論よ」
「凄いなぁ、財力無いと出来ないね」
フレイヤも感心だ。そもそも、ローズベルト商会には資材が蓄えてあるのだった。
「財力もそうだけど、コネがあって今があるのよ!」
コネは大事。神代の歴史資料にもそう書いてある。
「この寝袋、入ってみてもいいかしら?」
エデルは耐久力のある寝袋に興味を持った。
「どんどん試して頂戴! 改良するから!」
ジェラルダの言葉に甘えて、寝袋へ入ってみる。寝心地は普通の寝袋とほぼ同じだ。
「うん、寝袋って感じね。これで耐久力が凄いのだから素晴らしいわ」
「寝心地がもう少しよくなったらいい、とかあるかしら?」
ジェラルダの質問に、エデルは寝ながらうーんと考え込んだ。
「敢えて言うなら……強度が増した分、ちょっと背中が硬いかも? まぁしょうがない点かもしれないけれど」
「それは困ったわね。綿でも入れようかしら?」
ジェラルダはメモに「ワニ革・綿」と記した。
●結論を言うと
「今回の件で、ニーズはまだまだ世の中に沢山あるって事が分かったわ! それと問題点もいくつか見つかったから、試作に試作を重ねる必要がありそうね」
婆やにお礼のお菓子を用意させつつ、ジェラルダはまとめに入った。
「そうだな。ワニ革だけでは寝心地が悪くなるという事も分かった」
ベルクは、次なる試作に期待を寄せつつお菓子を受け取った。
「ただ、小道具ポーチと調理器具セットは商品化まで遠くはないわ。小物は結構得意なのよ。スケッチブックとクロッキーブックも問題は特にない。ペーパーナイフは木製だけ要検討、かしら」
「スッと切れる木材、探すのが難しそうね」
エデルはお菓子を受け取りつつ、どんな木材があったかを考えていた。
「ロゼ・ブックシリーズが出来るのを待つ事にするよ」
レタラもお菓子を受け取りつつ、完成を楽しみに待つのだった。
「この調子ならすぐ出来そうだな。……本当に早いからな、ローズベルト商会。驚いた」
「楽しみに待ってるね!」
だわとフレイヤがお菓子を受け取った所で、婆やはぺこりと礼をした。
「本日はジェラルダ様の我儘にお付き合い下さりありがとうございました。また何か縁があればご協力下さいませ」
「ちょっ、婆や! 我儘じゃなくて調査だから! ……ともかく。うちの商品をご贔屓に、ね!」
ジェラルダはウィンクをして冒険者達を見送ったのだった。
マスターコメント
課題の残る物はあったものの、商品開発は無事成功しました。
課題は次回ローズベルト商会が依頼を出した際に解決される予定です。
またのご参加をお待ちしております!
イベントシナリオ普通 報酬:多い5 / 4〜25人
2022年02月20日 11時32分30秒 公開
大成功
相談掲示板
ヒーラーのエデルよ、よろしくね。 無事に最低限集まってほっとしたわ。 頑張りましょう。 私は商品提案をする予定よ。
レタラだ、宜しく頼む。 今のところはオレも商品提案の予定だ。
だわと呼んでもらえれば。……よろしく頼む。 ……んん。何か提案しようと思っているが、何にするかな。 差し支えなければ、試用の一環じゃないがエデル達の提案品も見せてもらうつもりだ。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 我も提案かな? 長期野外行動に適した寝袋の類いなどが欲しい(我欲)
私はペーパーナイフを提案予定よ。 提案したあと、もし猶予があれば皆で試用しあいっこしてもいいかもしれないわね。
俺は1人旅で使いやすいような1〜2人用の調理器具セットを提案予定だ。 寝袋とペーパーナイフも良いな。楽しみにさせてもらおう。
フレちゃんだぞ☆ 私も提案かな~ ポケットに入るくらいのコンパクトで遠くの人と話ができてついでに文字にしてやり取り出来ておまけに見ている景色を絵にする機能付いてたり絵をかいたり時計としても灯りとしても使えたりあとついでにお支払いとかも出来たりする道具が欲しいな~(絶対無理です(