フリードリヒの密命
影絵 企鵝
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シナリオID:1922
オープニング
オーデンヴァルト子爵フリードリヒの住むお屋敷。ミネルヴァ・フィーギルは客間のベッドに寝っ転がり、小机に載せた羊皮紙の束をぱらぱら開いていた。
「うーん……あんまりピンとこないなあ……」
黙々と書面を眺めていたミーナが出し抜けに口を開く。戸を開けたフリードリヒが、呆れた顔で彼女の傍まで歩み寄ってくるところだった。ミーナはその身を起こすと、笑みを浮かべて婚約者を見上げる。
「ねえフリッツ。次はどこに行けばいいと思う?」
屈託ない表情の彼女に、フリッツは溜め息を零す。
「だらしないぞ、ミネルヴァ。書状に目を通すなら机に向かってくれ」
「うるさいなあ。別にいいでしょ、ちょっとくらい」
フリッツに早速窘められてご機嫌斜めのミーナ。どさっと布団に倒れ込んだ彼女を見下ろし、フリッツはさらに続ける。
「あと、遠出はしばらく待ってくれ。しばらく忙しくなりそうなんだ」
「忙しくなる?」
「そうだ。北部の山脈からクリーパーが湧き出したんだ。そのままオセール子爵領に向かってる」
オセール子爵領はヘーゼル伯領のすぐそばだ。
「でも来てるのはオセールのところなんでしょ? どうしてフリッツが忙しくなるのよ」
「オセールはまともな軍を持ってない。とても勝つ見込みはないね。上に立つトゥレーヌ伯も同じだ。そうなれば必然的にクリーパーを相手するのは僕達って話になる」
「なるほどね……でもトゥレーヌ伯はあなたのお父さんを敵視してるじゃない。フリッツが手を差し伸べたって、納得すると思えないんだけど」
ミーナはベッドを降りる。
「それはそうだ。一応援軍を申し出たが、案の定断ってきた。……素直に受け取っておけばいいものを」
フリッツが肩を竦めると、ミーナはべっと舌を出した。
「一回やられないとわかんないんでしょ。それに付き合わされる村人や兵士はかわいそうだけど」
「そのかわいそうな人々をむざむざ死なせるのも寝覚めが悪いんだ」
「で、私に構ってられないからとりあえず大人しくしとけってことね。……まあ話はわかった。そのクリーパー騒ぎが落ち着くまでは家にいるわ」
ミーナが小さく笑うと、フリッツもようやく相好を崩した。
「それで頼むよ。……シャルガネを出た商人達がもうすぐこちらに着くそうだ。お金は渡すから、ギルドから適当に護衛を雇ってティロールまで連れて行ってやれ」
「はぁい。じゃあフリッツも頑張って」
●混乱の村
その頃、君達は一団を組んでオセールの小さな村へと急行していた。フリッツの依頼で直接集められ、『村人を避難させろ』と密命を受け取っていたのである。丘の向こうからは軍鼓のような鈍い音がずんずんと響いてくる。クリーパーが立てているであろう威嚇の音だ。その音が村まで響くたびに、村人達は震えあがる。悲鳴を上げながら家の中へ引き籠ったり、家財を掻き集めて村から逃げ出そうとしている。
君達が村の中へ辿り着いても、ほとんどの村人が気付いていない。自分の事に必死になるばかりで、冒険者達に目をやる余裕など無さそうだ。
「……助けに来てくれたのか?」
それでも、一人二人くらいは冷静な者がいた。彼らは君達の下に駆け寄り尋ねる。
答えを返す前に、君達はフリッツの言葉を思い出していた。
●フリードリヒの密命
「今回の皆さんに依頼したい仕事は村の救援です。場所はオセール領の北端の村。付近でクリーパーの出現が報告されており、一両日中には村へ到達すると思われます」
居室に集めた君達に、彼は立て板に水を流すように話す。部屋の真ん中に置かれたデスクの上には、リーンエス北部の地図が広げられていた。チェスの駒をいくつか手に取り、彼はずらずらと並べていく。
「詳細は不明ですが、いずれにしてもオセール子爵がこの襲撃を跳ね除けられるとは期待していません。彼らの財政基盤は脆弱で、常備軍は持っていないのです。まず返り討ちに遭うでしょう」
それがわかっているなら救援に向かわないのか、そう君達の一人が尋ねると、フリッツは首を振る。
「素直に応じてくれればそうするところですが、彼は援軍を拒否しました。元々我々と彼らの関係は良くないのです。向こうが必要ないと言った以上は引き下がる他ありません。そうしなければ彼らはむしろ私達による大きな侮辱と受け取るでしょうから」
フリッツは黒いナイトを手に取り、白いポーンを次々に突き倒していく。
「まあ、結果が見えているのに何も手を差し伸べないというのも気分が悪いので、皆さんに手伝っていただきたいのです。村人を助け、確実に避難させてください。ツォレルン家の者に避難民の迎え入れの準備をさせていますから、他に手がないのならこちらまで連れてきて構いません」
「あと、余裕があるなら戦場も偵察してきてください。掻き集めた戦力が全滅すれば、強情なオセール子爵も常備軍を有する我々に泣きつかざるを得ないでしょう。その時に備えて、どの兵科を送るべきか考える必要がありますから」
「では、よろしくお願いします」
解説
マスターより
リプレイ
集まってきた村人は五人。イズル・M・ヴォルゴールはそんな彼らを見渡して頷く。
「遠くにクリーパーが見えてるので来てみた。急いで逃げよう」
「急いでったって……どいつもこいつも泡食っちまってさぁ」
筋骨逞しい男が唸る。ヘレン・ワーグナーは鞄からざら紙を取り出すと、すたすた村の中へと踏み込んでいく。
「つべこべ言わない。手を貸すから……さっさと村の様子を教えて」
「お、おう」
間延びした喋り方のわりにきびきび歩く。そんな彼女に戸惑う村人を横目に、エフィルミアはヘレンへと駆け寄る。
「私は敵の様子を見てくるね。避難の準備はお願い」
「りょーかい。じゃあそっちはよろしく……」
エフィはヘレンと目配せすると、そのまま畦道をひた走って森の向こう側を目指す。キリクもその後を追いかけた。
「僕も一緒に行くよ。観察なら得意だからね」
「よろしくお願いします。既に戦いも始まっているはずですし、急がないと」
サイラスとアウレーリア・フォン・ネーベルベルクは馬車で村の中へと乗りつけ、村人達の回収へと向かう。愛用の鎧はマントで隠して、行商人を装いながらサイラスは一人の老人へと近づいていく。彼は旅嚢へ家財を詰め込んでいるところだった。危機下にあっても幾らか落ち着いている。サイラスは彼を足掛かりとする事にした。
「なあ、あんた。家族はどうしたんだ。一人っきりで逃げる用意してたって、いつまで経っても終わらないんじゃないか?」
「そんな事はわかっとる。しかしどいつもこいつも腰を抜かしとるんだ。泣いてるチビを黙らせることも出来んまま自分まで泣き出すような始末でな。……わしにしてみれば、こうして逃げる時間があるだけまだましだと思うんだが」
「まあな。あんたの言う通りだ」
適当に首肯しつつ、サイラスは老人へと近づきその肩を叩いた。
「ちょっと家に案内しろ。何とかしてやる」
「はあ?」
粗末な家具が並んだ家の中、一組の家族が寝具の影に隠れて縮こまっていた。ますます激しさを増す雄叫びのような音に、幼子はいつまで経っても泣き止まない。親二人はその口を塞ぐのがやっと、家の中で震え続けていた。
「もしもし、諸君」
そこへ誰かが踏み込み、いきなり声をかける。二人は息を呑み、弾かれたように振り返った。太陽のように眩い光がその眼に飛び込んでくる。
「恐れる事は何一つない。その足で立ち、村の外へと逃げたまえ」
サイラスは両手を広げ、村人達へと言い放つ。その頭の後ろからはまさしく光輪のように眩い光が放たれている。突然現れた闖入者に、家族はぽかんとする。
「今から言うものをすぐに用意するように。そしたらすぐに村の中心に集合だ」
「……あんた、ナニモノ?」
母親が首を傾げる。サイラスはにやりと牙を剥き、さらに光を強めた。
「通りすがりの光る人だ」
サイラスが手を尽くして恐慌状態に陥った村人を回収している間に、エフィとキリクは戦場を見下ろす丘の上に辿り着いていた。黒い巨大な蛸のようなクリーパーがオセール子爵の軍勢と対峙していた。遠目に軍勢を眺めたエフィは溜め息を吐く。
「まともな備えが出来ているとは言えませんね……」
兵士の大半は擦り切れた革の鎧に、粗末な木の盾やら手入れの行き届かない得物やらを手にしている。
「慌てて徴発した兵士に有り合わせの武器を渡したか、貧乏な傭兵団を雇ったか、そのどちらかでしょうか」
「あの大きさのクリーパーを相手するなんて冒険者でも結構骨が折れるのにな。あれじゃ殺されに行くようなもんじゃないか」
エフィの言葉にキリクも頷く。口吻から吐き出される鈍い咆哮に、軍勢も及び腰だ。戦意に満ちているのは蛸型のクリーパーだけである。
「あ、動きます!」
エフィが叫んだ瞬間、大量の足を蠢かせ、一気にクリーパーが軍勢目掛けて押し寄せた。軍勢を背後から見守る兵士が一人、慌てて隊列を組むように叫ぶ。軍勢は横隊を組んで槍を構える。蛸はしばらく一体だけで軍勢へと迫っていたが、不意にその足元から人型の化け物が次々と生えてきた。化け物は次々に槍を構え、蛸と共に軍勢へと襲い掛かる。
「……え、何だかいきなり大量の兵士みたいなのが地中から……」
キリクは咄嗟に戦場へと手を翳し、エーテルの波動を走らせる。一気に軍勢との人数差を覆したように見えたクリーパー側の増援だが、捜波を当ててみれば、なるほどクリーパーの数は相変わらず蛸一体のままだ。
「いや、これクリーパーの足か? なんだこいつ!」
「足を目の前にいる兵士に擬態させている、ということですか……?」
兵士へ変化した足を前線に立たせ、オセール軍目掛けて一気に突き進む。軍勢は迎え撃とうとするが、すっかり腰が引けている。恐れを知らないクリーパーとは差が歴然だ。あっという間に武器を叩き落とされ、最前線の兵が次々に餌食となっていく。目の前の敵を仕留めた軟体の兵士は、そのまま本来の姿に変化し、死体を絡め取って本体の口元へと引きずり込んでいく。あっという間の出来事に、軍勢の士気は砕けた。数人の蛮勇ある傭兵を残して、残る兵士は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。蛸は兵士を追いかけるように、ずるずると平地を這いずり回る。エフィは眉を顰めた。
「まずいです。今すぐにでもこっちに向かってきてしまいます
「少し下がろう。皆に状況も伝えないと」
キリクは弓を手に取り、木々の影に身を隠しながら少しずつ後退する。兵士が村の方まで走ってくるついでに、蛸まで村へと向かってきた。エフィもキリクの後を追いかけながら、強く念を込める。
――イズルくん、敵がこっちに向かってる。もう間もなく村まで辿り着くかも!
――わかった。出来るだけ急ぐ。
イズルはエフィからの報告を聞くと、森の端から踵を返して村へと戻る。村人達は徐々に広場へ集まり、子供や老人は馬車へ続々と乗り込んでいるところだった。相変わらず眠たげな顔で音頭を取っているヘレンへ駆け寄ると、かくかくしかじかを彼女へ伝える。
「ふうん……それはちょっと良くないかもね……」
「集まった村人はこっちで点呼を取る。ヘレンはまだこっちに来てない人がいないか探してくれないか?」
「わかった……行ってくる」
ヘレンは手を振ると、地図を見ながら走る。村の隅に位置する小さな民家。村人が数人、その扉を代わる代わる叩いていた。
「こんなところに籠ったって何ともなんねえぞ!」
「馬車で逃がしてくれるってよ!」
「うるさい! 来るな! お前らのせいで見つかるだろ!」
家の外と中の言い争い。ヘレンは村人達の背後からひょっこりと顔を出した。
「どうしたの?」
「ここの奴が出て来ないんだよ。逃げるより隠れた方が安全だと思ってんだ」
「えぇ……?」
ヘレンは呆れたように溜め息を吐くと、扉を軽く叩く。
「ねえ、早く出てきてくれない? あなた達で最後なんだから」
「うるさい! 出ていったって追いつかれて殺されるだけだろ!」
明らかに気が立っている。話は出来そうにも無く、ヘレンは肩を落とした。
「あぁ……はいはい、いくよー」
ヘレンは鞘に納めたままの大太刀を掲げると、力任せに扉を殴りつける。閂代わりの箒が弾け飛び、扉が地面に倒れ込んだ。部屋の隅で縮こまっている夫婦を見つけると、彼女はずかずか近寄り両肩に纏めて抱え上げてしまった。
「やめろ! 離せ!」
「あなた達の言うことを聞くのが私の仕事じゃないんだよね……」
ぼんやりと応えながら、彼女は馬車へと村人を放り込んだ。眼を白黒させている彼らに向かって、別の村人が荷物を投げ込んで黙らせる。ヘレンは辺りを見渡し、イズルに尋ねた。
「村の人は全員集まった?」
「問題なさそうだ。とりあえず出発させよう」
イズルが馬車の縁を叩くと、馬が嘶き歩を進める。その後には旅嚢を背負い、縄で縛った干し肉をぶら下げた村の若者達が後に続く。救出作業は今まさに佳境だったが、簡単に事は運ばない。
「イズルくん! ヘレンちゃん!」
エフィの声が村に響く。振り返ると、得物を持ったエフィとキリクが駆け戻ってくるところだった。その後を追うように、敗残兵と蛸のクリーパーも突っ込んでくる。クリーパーのこの世ならざる姿を見て、思わず村人達は震えあがってしまう。ヘレンは太刀を抜き放つと、村の出口を指し示した。
「ここで立ち止まられても邪魔だから、早く行ってくれる……?」
「俺達がアレの足止めをする。その隙に逃げろ」
「は、はい」
二人の静かな気迫に押され、村人達は再び歩みを進める。それを見送り、ヘレンは早速敵に対峙する。
「ぬるぬるして気持ち悪い……」
こっそり悪態をつきながら、ヘレンは太刀を一気に振るう。放たれた衝撃波がクリーパーへと襲い掛かる。蛸は触腕を兵士に擬態させ、衝撃波を受け止めた。蛸が一瞬動きを止めた隙に、村まで駆け戻ったキリクが転回して弓を引く。
「これでどうだ!」
山なりに飛んだ矢は触腕を飛び越え、蛸の頭に突き刺さる。鏃から溢れ出したエーテルが蛸を僅かに怯ませた。二人の慣れた身のこなしを茫然と見ていた敗残兵達は、縋るように二人へと駆け寄った。
「助けてくれ! みんな食われちまった!」
「そんな情けない声を出すな。君たちは敵からこの村を守るんじゃないのか?」
イズルは兵士を諭そうとするが、兵士は何度も首を振る。
「そんな事を言われたって、俺達はいきなり敵が出たから来いって言われただけで……無理に決まってるだろ、あんなバケモノと戦うなんて!」
今度は兵士が狂いかけていた。とても頼りになりそうにない。イズルは顔をしかめる。
「……わかった。ならせめて、村人が安全なところまで逃げるのを手伝ってくれ。戦う以外にも人を守る事は出来るぞ」
兵士の襟元を掴むと、イズルはそのまま村人達の方へと兵士を投げ出す。蛸は急に唸り声を上げ、今度は頭の後ろ側の触腕を変化させる。弓持つ兵士に変化した触腕は、墨の弾を次々にイズル目掛けて放った。墨の雨はイズルへ容赦なく降り注いだが、彼は癒しのエーテルをその身に流し込んで耐える。
「躱すのは難しいが……これくらいなら耐えられる」
蛸は触腕をくねらせ、ずるずると突き進んでくる。サイラスは盾を構えると、蛸の攻撃を正面切って受け止める。
「なるほどな。お前もこっちの事を真似しようってわけだ」
槍を突き出した兵士は、すぐさま蛸の腕に姿を変えてサイラスを絡め取ろうとする。サイラスは素早く身を翻すと、槍を振り下ろして蛸の足を切りつける。肉が一瞬裂けたが、肉はすぐさま結びつき、再び兵士を象った。
「殴り合いにはそれなりに強いってわけだ」
サイラスは槍を振り上げ、その切っ先から金の鶏を呼び出す。その鶏はそのまま尻尾を振るい、金の卵を蛸へ向かって放つ。蛸は卵を払いのけようと腕を振るうが、砕けた卵から飛び出したエーテルが蛸の足をぐずぐずに溶かした。蛸は怯んで足を引っ込める。
「そうか。魔法はそれなりに効きそうだな」
サイラスは身を翻すと、金の卵をもう一発蛸に浴びせてやった。
家や井戸を薙ぎ倒しながらずるずると進軍を続ける蛸。冒険者達は一歩一歩と退きながら、蛸を村の中に押し留めていた。
――村人達は安全圏まで避難したよ!
エフィのテレパシーが遠くからイズルへ飛んでくる。イズルは頷くと、戦槌を地面へ鋭く叩きつけた。蛸の足下から六角形の光の檻が飛び出し、その本体を閉じ込める。蛸は脚を絡めて檻を外そうとするが、簡単には動かない。
「よし、今のうちに退却するぞ!」
イズルは槌を掲げて叫ぶ。冒険者達は武器を収めると、一直線に村の出口を目指して走る。クリーパーはようやく檻を引き剥がしたが、低い咆哮と共に冒険者達を見送るしかないのであった。
●面子のために
村人達を乗せた馬車と共に、冒険者一行はツォレルン家の守るノイバッハ城へと辿り着く。城門の前でフリードリヒに出迎えられた彼らは、事の顛末を話した。それを聞いたフリッツは、少し難しい顔をする。
「兵士と全く接触せず、とはなりませんでしたか」
「接触が不味い事は承知している。故にあなたの名前は出さなかった」
イズルが応えると、フリッツは小さく首を振った。
「兵士はそれで騙せても、その報告を聞いたオセール卿は作為を感じるでしょう。たとえ貴方達が“本当に”たまたまそこにいたのだとしても」
片手の二本指をくいくいと曲げ伸ばししてみせる。キリクは口を尖らせた。
「でも僕達は村人を助けただけだぞ。何か問題あるのかよ」
「与えられた土地を守る事こそ貴族の本分。勝手に手出しするのは、『お前は貴族に相応しくない』と言っているようなものです。それは我らを非難する材料の一つになる」
「はあん。政治って難しいな……」
キリクは首を傾げる。サイラスも肩を竦めた。
「そんなに警戒するのなら、最初から手助けしなくても良かったんじゃないか。他所の村が潰れても、あんたにとっちゃ痛くも痒くもないだろ」
それを聞いたフリッツは、どこか自嘲的な笑みを浮かべた。
「義を見てせざるは、と血が叫ぶのですよ。……難儀なものですが」
彼はちらりと背後に目を向ける。城に掲げられた旗の中では、騎馬が一頭、片側から盾を支えていた。その意匠は、どことなく何かが欠けているような印象を抱かせる。
「……いずれにせよ」
彼は改めてエフィ達に向き直る。
「彼らも為す術なく村を一つ潰されては救援要請を出さずにはいられないでしょう。こちらも準備を整えねばなりません。生徒会長殿、敵の特徴などをお伝え頂きたい」
「はい」
エフィは懐から一枚の絵を取り出す。蛸のクリーパーの特徴を簡潔に纏めたものだ。
「これが今回現れたクリーパーです。大量の触腕を自由な形に擬態させることが出来て、その力で敵はオセール軍を纏めて迎え撃っていました」
「なるほど。敵は多勢に多勢を以て対抗してくると」
「ええ。ですから、私達冒険者が裏から回って本体を叩こうと思います。その間、敵の注意を引き付けられる軍勢を用意してほしいんです」
「そちらの勢力の中でその役目を果たすのに最適なのは、精鋭の有翼重騎兵団だろう。正面で組み合っている間に、俺達がクリーパーに致命傷を与える。それでどうだろうか」
イズルもエフィに調子を合わせて訴える。二人の意見を黙って聞いていたフリッツは、やがて城の方へ振り返って手を掲げる。
「……だそうです。兄貴殿、出番ですよ」
「委細承知だ、フリードリヒ」
城門が開き、十人の騎士が鎖帷子を鳴らしながら冒険者の前へと進み出る。騎馬の鞍には、鷲の翼を模した派手な羽根飾りが取り付けられていた。
先頭に立った精悍な顔立ちの男は、揚々と旗槍を掲げる。
「冒険者達よ、全て我らに任せておけ! 我らの戦い、しかと眼に焼き付けるがいい!」
つづく
マスターコメント
ショートシナリオ易しい 報酬:標準6 / 4〜8人
2022年02月27日 22時44分40秒 公開
相談掲示板
No.1
サイラスだ、とりあえず最低人数は揃ったなー さて ぶっ殺す(非推奨) 様子見 L兵隊を助ける(戦闘有、ちょっと大変) L村人守る(冷静とカリスマとかコミュ系鍵?) L偵察(戦闘と並行か最初から隠密) となるのけ? 兵隊さんのアレはぶっちゃけまともにやり合ってサッと撃退すると泣き付かせたい依頼人からすると戦力そのままで微妙?でも回復特化のヒーラーとかなら兎も角時間かかると兵隊が死ぬ可能性高い。何よりこの場合撃退とか殺せない理由が無いと不信感に繋がらん? 出来れば物魔どっちに強いかとか調べたいなぁ 村人はアレやな。まず冷静な人とか見つけて、恐慌してる人とかには交流のある人伝いか初対面なの吹っ飛ばす様なレベルのコミュ仕掛ける、混乱中の人には何が必要か伝えたり、何か精神を整理させる手段。 偵察は隠密と五感系とかになるのか?土地の植物とか地質によっては騎兵辛いとかあるかもなーということでその辺も。まあバレないのが1番重要。調査バレたら?火事場泥棒的な感じで大変な事に。つか戦闘してんだから助けろで睨まれる 全部やる? 討伐不可は人足りないで誤魔化せる可能性あるけど、だからって耐久型執着付与だと被害が減るぶん兵隊さんの数の暴力で敵が死んでの可能性がある。(多分無いけど万が一) でも軍壊滅したら兵隊雪崩れ込むから村救助がどうしようもなくなるかなぁと 村人の方は強引に引き込める何か欲しい。後動き回る必要考えると早く冷静な人とか混乱収めた人捕まえて数揃えたい。 偵察も少数になるから 人手が欲しいかなと
ヒーラーのイズルです。よろしく。 とりあえず、思いついたところだけ。 とりあえずフリードリヒ殿の依頼は『村人を避難させろ』なので、そこは優先順位第一位で行きたい。 依頼人の名は最後まで伏せておくのは当然で。 倒せない、敵を追い返せるか不明な以上、俺は兵士は放置希望で。 兵士が村まで逃げてきた時に姿を見られたら「助けてくれ」って言われるかもしれないから、それを口実に戦うのも有りかな?とは思う。 『兵士の応戦で敵の攻撃方法を観察し、兵士逃亡と入れ替わりに他の情報を回収する威力偵察』を提案として出しておく。 しかし、「・全てを救いたいならたまには強硬手段も必要。」とは言われてるので、自分たちを「通りすがりの冒険者」と偽ったりするなら助ける(一緒に戦う)のもいいかもしれない。 その兵士達に村の救助を手伝わせて、自分達は全員で威力偵察も出来るかもしれないな。 偵察の人数は、できれば1~3がいいんじゃないかとは思う。 村で救助する人を、村の冷静な人と冒険者の人数で対にしておくと対応しやすいと思う。 あと、100メートル程度しか効かないとはいえ相互連絡にテレパスはあってもいいと思う。 長文、申し訳ない
シューターのキリクだ、よろしく。 目的はあくまで村人を助ける事で、クリーパーを僕達で倒すと子爵に兵を出してもらえなくなるのか。政治って難しいな。 >どうやって接触するか 通りすがりの冒険者って風を装うのが一番簡単な手だな。 イズルも言ってるけど、兵士と一緒に救助したり偵察に行ったりするのが自然な動きかなと。
ウォーリアのヘレン・・・よろしく。 村の人を逃がすのと、偵察もついでにできればって感じの依頼なんだね・・・成程。 冷静な人達を説得して、恐慌状態の人達に逃げるよう働きかけてもらうのがいいのかなーって。混乱状態の人は逃げるつもりだけはあるみたいだから、こっちで逃走手段と経路用意してあげればなんとかなりそうだし・・・。
キャスター、アウレーリアです。宜しく。 そうねぇ……どれくらい政治的にやるかの問題だと思うけど。 フリッツの立場で言えば、オセール兵には多少被害が出ても問題ない。 寧ろ壊滅してくれた方が話が早いから、敗走までは放置で良いのでしょうし。 村人だけ助けられれば、最低限の目的は達成だわ。 けれど兵士まで全員助けたいんだったら、積極的にクリーパー戦へ介入することになる。 避難誘導のことも考えれば全員で戦闘は出来ないし、足止めって感じかしら。 その間に兵士は態勢立て直して、自分で撤退してもらうのが楽で良いけれど。 それってフリッツの狙いから外れるし、上手く撤収できちゃうとオセール子爵が調子に乗るかも。 私は先に村人を救助しながら、死人はいない(少ない)が無傷とは言えない程度までオセール兵が消耗するのを待って、「見かねて」「自衛の名目で」「やむなく」撤退を支援するくらいが落としどころかなぁ、とは思っています。
シーフのエフィルミアです!よろしくお願いしますっ。 第一優先は「村人の救助」ついでに「偵察」ですね!了解しました! 私も『兵士の応戦で敵の攻撃方法を観察し、兵士逃亡と入れ替わりに他の情報を回収する威力偵察』はいいと思います! 兵士から助けを求められたという大義名分があれば、堂々と敵と戦えますし! 人手も欲しいので逃げてきた兵士が救助を手伝ってくれるなら助かりますねっ。 私は捜波が使えるので、要救助者の位置や敵の配置は把握出来ると思います! 得られた情報はテレパスで共有出来たらいいですかね?
これから参加者増えるかわからないけど、 うまく文章をまとめられないので、箇条書きっぽく思いついたことを追加で。 ・俺はアウレーリアさんの「見かねて」「自衛の名目で」「やむなく」は賛成。 ・ヘレンの発言で、村の半分は引きこもってるけど、残りは逃げる意思があるからアドバイスしたらすぐ行動してくれそうだと思った。 ・村人の説得は地の利と顔がわかるってことで冷静な村人を中心にしたほうが効率よくなる? ・老人の10人は、いざとなったら冒険者が背負ったりして運んだほうがいい? ・「状況把握には偵察が不可欠。」らしいから、偵察は今の人数でも一人は出したほうがいいと思う。 ・救出と偵察の宣言 ・「サブ任務の兵科設定」は、どれを推薦するか「相談を重ねて意見を統一するといいですよ」とMSが言ってるから意見のすり合わせをしたいです。
No.8
とりあえず冷静な人が近寄ってきたりしてるし冷静な人に協力求めるのは難しくないねと。 村人優先、壊滅して兵が村まで来た時とか状況に合わせて「見かねて」「自衛の名目で」「やむなく」撤退支援でええのけ?全体としては。 馬車とかあれば持ち込んだ方が良さげだなぁと。10人老人を必要に応じて背負うより、我先と乗せろ乗せろ騒がれてでも足あった方が。 偵察はシーフか隠密隠蔽得意な人が行く方が良いのではと。 まあ宣言は救助側行くかねぇ。自衛の為に向かうかは微妙。 出撃兵科はぶっちゃけ土地と敵ステータスのPL情報落とし込みして判断するでええと思うが。 要するに討伐時に壁が欲しいか火力が欲しいか対応力が欲しいかなんだろうけど、俺はどれでもいいやと。武器持ち換えればいいし
私も「見かねて」「自衛の名目で」「やむなく」撤退支援が良いと思います! 馬車はあると助かりますねっ。足があった方が撤退がスムーズに進みそうです! 私は馬車は持ってないので、おまかせする形になっちゃうのですが…! >役割 それでは私は偵察に行きましょう! 隠蔽状態で敵の攻撃方法を探ろうと思いますっ。 それと捜波で敵の擬態した足を見破れるかやってみようかと! 多数の敵がいるのではなく、兵に擬態する足を持った一匹だけと確定したいです! 物理攻撃に弱いか魔法攻撃力に弱いかは、撤退支援時に攻撃して把握する感じですかねっ。 取得した情報は随時テレパスで伝えるようにします。 >サブ任務の兵科設定 ステータスまでは明らかにして、本体を叩く魔法攻撃力高めの班と 敵の擬態した足に耐える防御高めの班がいると安心かなっと! 勿論回復役も要りますね!
俺も救助側で行こうと思う。 俺も馬はあるけど荷馬車はない。その場にあるの利用する目的で連れてくのはいいかもしれない。なくても人一人なら乗せれるし。 他の依頼で使って、ちょうどいましたって体でいけると思う。 一応足止めに光縛封を持ってく。敵が村に入る寸前か逃げる時の足止め程度に使う。 情報収集してる間は使わない。 テレパスは乗せる。 戦場と村じゃ離れてるだろうから、間に誰か入って経由する必要ありそうだけど、出来る限り届くように努力する。 >兵科設定 落とし込みできなかったら、おすすめできないのはわかる。 俺は「有翼重騎兵団」を仮に押しとくよ。 俺たちは装備替えればどうにでもなるけど、向こうはパックで出してくるわけで、 次回参加者がキャスターばっかりになったらあまり良くないだろうし。
じゃあ、私も救助側で・・・。 羊皮紙とペン、後探索系のスキル積んで、避難ルートを構築しようかな……。その方が迅速に逃げられると思うし。冷静派も説得しやすいでしょ。
避難ルート→村の外、戦場から反対側にあたる箇所へ列になって集合してもらい、 混乱状態の人に手で持てる物以外は持たないように呼びかけ、地図上の避難場所に集まるよう伝え整列させる。冷静派を先頭から順に等間隔で列間に入ってもらいつつ戦場から反対側へ避難、村人間で体調変化や問題が起きたら情報共有をしてもらう。避難中に動けなくなる人がいた場合は周囲で助けるよう伝え、列後方に下げる。ヘレン自身は殿を務める。 こんな感じで避難ルート立ててみたけど、問題とか別の方法あったら言って・・・。
出撃兵科のところを思いっきり見逃していました…(土下座) 私も「有翼重騎兵団」を推しますね! 騎兵団に無数の足を抑えて貰って、冒険者が本隊を叩く方がやりやすそうなのでっ。