賽子の女神の質問
空色みなも
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シナリオID:1916
オープニング
●
誰にも負けない最強の力が欲しいか。
そのような問いに、貴方ならどう答えるだろうか――。
●
「と、いうわけで遊戯をやるよ!」
宿の食堂に響き渡ったのは、シリス・アローゼアの声だ。
シリスは都市同盟の小さな町、エルタ・リコにある女神の賽子亭を営む女主人であり。
今日も冒険者たちをお小遣い付きで誘って、卓上遊戯をしようとしているところだ。
「今からやる遊戯のルールはとても簡単だよ。基本は質問に答えると同時に、他のやつらに多い回答を予想する――それだけだ」
シリスはテーブルにタイルの山を積み上げながら、遊戯の説明を始める。
「例えば『親しい人が真心こめて作ってくれた料理が口に合わなかったとして――?』みたいな質問がこうしてあって、それに対する選択肢も二択で示される」
今しがたセッティングされたタイルの山から、シリスは一枚をめくり、そこに書かれた質問を読み上げる。
そのタイルを見ると、確かに『A:誤魔化して味を誉める』『B:味は誉めない』という二つの選択肢も記されていた。
「参加者たちは全員、この質問に対する回答を正直に選んで、カードで伏せておくんだ」
シリスに配られた二枚のカードに目をやると、なるほど、それぞれ表にAとBが書かれている。
「さらにもう一組、予想用のカードがあって、これで『自分以外の参加者で多い方の回答』を予想する。それが当たれば一点で、最後に点数が多ければ勝ちって寸法さ」
シリスは裏面の異なる二枚のカードを改めて配ると、それらが多い回答の予想に使われることを説明した。
「とはいえ、勝ちにこだわるあまり他の人の予想を外す回答をする遊戯じゃないからね。質問に答えることでコミュニケーションをとる意味合いが強い遊戯だし、肩の力を抜いて正直に答えておくれ」
茶目っ気を出して片目をつぶったシリスの長い耳で、いつものように賽子の耳飾りが揺れていたのだった。
誰にも負けない最強の力が欲しいか。
そのような問いに、貴方ならどう答えるだろうか――。
●
「と、いうわけで遊戯をやるよ!」
宿の食堂に響き渡ったのは、シリス・アローゼアの声だ。
シリスは都市同盟の小さな町、エルタ・リコにある女神の賽子亭を営む女主人であり。
今日も冒険者たちをお小遣い付きで誘って、卓上遊戯をしようとしているところだ。
「今からやる遊戯のルールはとても簡単だよ。基本は質問に答えると同時に、他のやつらに多い回答を予想する――それだけだ」
シリスはテーブルにタイルの山を積み上げながら、遊戯の説明を始める。
「例えば『親しい人が真心こめて作ってくれた料理が口に合わなかったとして――?』みたいな質問がこうしてあって、それに対する選択肢も二択で示される」
今しがたセッティングされたタイルの山から、シリスは一枚をめくり、そこに書かれた質問を読み上げる。
そのタイルを見ると、確かに『A:誤魔化して味を誉める』『B:味は誉めない』という二つの選択肢も記されていた。
「参加者たちは全員、この質問に対する回答を正直に選んで、カードで伏せておくんだ」
シリスに配られた二枚のカードに目をやると、なるほど、それぞれ表にAとBが書かれている。
「さらにもう一組、予想用のカードがあって、これで『自分以外の参加者で多い方の回答』を予想する。それが当たれば一点で、最後に点数が多ければ勝ちって寸法さ」
シリスは裏面の異なる二枚のカードを改めて配ると、それらが多い回答の予想に使われることを説明した。
「とはいえ、勝ちにこだわるあまり他の人の予想を外す回答をする遊戯じゃないからね。質問に答えることでコミュニケーションをとる意味合いが強い遊戯だし、肩の力を抜いて正直に答えておくれ」
茶目っ気を出して片目をつぶったシリスの長い耳で、いつものように賽子の耳飾りが揺れていたのだった。
解説
●目的
女神の賽子亭で開催される遊戯に参加し、会を盛り上げること。
●状況
みなさんはシリス・アローゼアに遊戯の相手を依頼されました。
会を楽しみましょう。
●ルール
偶数人数で遊戯を行います。
中央のタイルの山をめくると、質問と二択の選択肢が現れるので、もし二つに一つしか選ぶことが許されない状況と仮定して、自身の選択がAとBのどちらに近いかを回答用のカードで伏せます。
同時に、自分以外の参加者にAとBどちらの回答が多そうかを予想用のカードで伏せます。
全員が伏せ終わったらカードを公開し、自身が何故その回答を選んだのかを語り合います。
また、予想が当たっていた参加者たちに一点が入ります。
全ての質問を終えた後、最も点数が高い人が勝利です(同点は勝利を分け合います)。
が、勝ち負けにこだわる遊戯ではないので、他の参加者の予想を外そうとしながら質問に回答するより、正直に回答することを心がけてください。
●四つの質問と選択肢
質問1「親しい人が真心こめて作ってくれた料理が口に合わなかったとして――?」
回答A「誤魔化して味を誉める」
回答B「味は誉めない」
質問2「次の内、どちらかというと欲しいのは――?」
回答A「不眠不休で活動しても平気な体」
回答B「ゆっくり寝ることのできる時間」
質問3「誰にも戦いで負けることのない最強の力を今すぐ対価なしに手に入れることができるとしたら――?」
回答A「貰う」
回答B「貰わない」
質問4「人類の暮らす世界が永遠に続き、その中で自分一人だけが永遠の命を手に入れることが可能として――?」
回答A「手に入れたい」
回答B「手に入れたくない」
●プレイングの書き方
自身の質問の回答と簡単な理由を四つ分、分かるように書いてください。
加えて、他の人の回答で多いものの予想を四つ分、分かるように書いてください。
もしプレイングに抜けがある場合、マスターのアドリブでPCの回答と予想が捏造されますのでご注意ください。
●プレイング例
【回答】
1:A「~だから」
2:B「~だから」
3:A「~だから」
4:B「~だから」
【予想】
1:A 2:B 3:A 4:B
●人物
▽シリス・アローゼア
女神の賽子亭の女将で、今回の遊戯の発起人。
偶数人数で遊戯を行う必要があるため、集まったPCたち(白紙プレイングは遊戯に参加しなかったことになります)の数が奇数なら人数合わせで遊戯に参加します。
マスターより
お世話になっております、空色みなもです。
はい、用意された質問に答えていくことで掘り下げられるPC像があると思っちゃったんです。
関連NPCにシリス・アローゼアが紐づけられています。
相談掲示板では基本的に出発48時間前までに行われた質問に回答します。
皆さんのPCを深掘りするプレイングをお待ちしております。
リプレイ
●
シリス・アローゼアの呼びかけで、テーブルの周りには五人の冒険者が集まっていた。
「面白そうな遊戯をされると聞きまして!」
これまでも女神の賽子亭の遊戯にときおり参加しているルアンナ・ミュラーは、今回も遊戯が開催されると聞きつけ飛び込んできたようだ。
「へぇ、こんな遊戯もあるんだな。たまにはこういうモンに乗ってみるのも一興か。さて、他の奴らはどんな答えを出すのかねェ」
ギャンブル好きなヴァンゲルス・ロッドは、予想が当たるも外れるも運次第な遊戯に惹かれてか、配られたカードを興味深げに眺めている。
「まぁ、あくまで自分の考えとして、ということなのでしょう? それでよければ、このような問いでもお答えできるでしょう」
素顔を隠したグレイブ・ヤードの表情は読めない。
その奥に秘められたグレイブの考えとは、どのようなものであろうか。
「遊戯といっても、テーマに沿って語るのが主という事なのだ。では私の演説を聞かせるのだ」
ストレガ・L・リベルガストラは知を追い求める者として、この機に語り聞かせたいことがある模様だ。
「気楽な遊戯ということだ、楽しめればそれでいいだろう」
ベルク・オスマットにとっては、あくまでこれも遊戯として楽しむことが目的のようである。
「五人集まったっていうことは、あたしが入ればちょうど六人で偶数だね? じゃあ、遠慮なく混ぜて貰おうかね」
こうしてうまい具合に人数が揃ったのを見て、シリスは嬉々として遊戯に混ざることにしたのだった。
●
「それじゃあ、例としてめくったタイルからそのまま遊戯を始めようじゃないか」
シリスが指し示した先には、例示に使われた『親しい人が真心こめて作ってくれた料理が口に合わなかったとして――?』の質問タイルが鎮座していた。
「Aが『誤魔化して味を誉める』で、Bが『味は誉めない』ですね。なるほど、それなら――」
ルアンナはしばし考える素振りを見せた後、手にしたカードから一枚を、そっとテーブルに伏せる。
他の参加者たちも同様に、一枚ずつカードを自らの前に置いた。
「自分の答えは置いたね? じゃあ、さらに予想のカードも伏せておくれ」
「今回の面子なら大凡こんなモンだろうかと予想しているが、さてどうなるか。他の奴らの答えも楽しみだ」
シリスに促され、ヴァンゲルスが予想用のカードをスッと前に出す。
ニヤリと笑んだその顔は、こんな時でも勝負師のそれだ。
「カードが揃ったみたいだし、まず予想は置いといて、全員分の答えを開けてみようかね。それじゃあ――オープン!」
テーブルに並んだカードを見回したシリスの号令で、参加者たちは回答用のカードを一斉に表にした。
「私はAですね。料理の味がただ『口に合わない』だけなら味覚の違いということなので、味が悪いというわけじゃないと思うんです」
ルアンナはタイルに書かれた細かな表記にも気づき、そこから自身の考えに繋げたようだ。
「ただ、誰が食べてもアウトなレベルなら正直にこれはダメだと言います。そういう場合でもAを選んで良かったんですよね?」
「ああ、あくまでどちらかというと自分の考えに近い答え、を選んでくれたら大丈夫さ」
ルアンナの判断に、シリスも太鼓判を押した。
「それにしても、あとは全員がBなんだね」
そしてシリスが驚きの声を漏らした通り、ルアンナを除いた五人は、全てBのカードを出していたのだった。
「口に合わないにしても、作ってくれたこと自体は嬉しいことを素直に伝えるからな」
「あたしも似たような考えさね。味じゃなくて、込めてくれた真心を褒めればいいのさ」
ベルクが口にした回答の理由に、シリスが同調してうんうんと頷いている。
「これは相手が親しい人間だからこそだ。嘘を言っても本心はどっかしら滲み出ちまうモンだからな、俺が親しいと思うような人間がそこに気付かないとは思えないね」
ヴァンゲルスは親しい間柄では本心は誤魔化せない、という観点に注目したようだ。
「ま、だからって貶すようなこともしねぇけどな。俺の口には合わねえってだけで、他の奴らはまた違うだろう? それと味は褒めねぇが、他の部分で褒められそうな部分がありゃ、そこは褒めるぜ。例えば色合いだったり、盛り付け方だな」
こうしてみると、ヴァンゲルスの示した考えにも、これまで他の参加者が出した理由に近しい部分もある。
「親しさのレベルでも変わるでしょうが、親しいからこその感謝は伝えこそすれ、味についての誤魔化しはよくないと思います。好みはそれぞれですからね。好きじゃないものを差し出されるのは気持ち的にも負担になりますし、伝えることがお互いの理解になるかと」
グレイブが着目したのは、誤魔化さずに真意を伝えた方が、親しい者の間で互いの理解になる、ということだった。
もしかしたらであるが、信用に足る間柄であれば互いに己を晒し合うものだ、という考えでもあるのかもしれない。
「料理人である私は、それが善意であっても不完全な調理の危険性を指摘する。嗜好に合わないだけなら善処するが、メシマズはハッキリ言う。真心や愛で味は覆せない。最悪、食中毒で死ぬ事もあるから」
そしてストレガが述べたのは、自身が料理人であるという自負からくる意見だった。
「真心に応えるならば悪い点を指摘し、善導する事。それでいて努力点を褒める事なのだ」
料理を作った人を正しく導くこと、それがストレガからの真心なのである。
「いやあ、本当に色々な考えが聞けて面白いね。それじゃ、予想のほうもオープンしてみようじゃないか」
そこでシリスからの号令。
未だ伏せられたままだった予想用カードの内容が明らかになった。
全員にとってBが正解となる中、見事それを予想できたのはルアンナ、ベルク、ヴァンゲルスの3人だった。
「私の他は思いやりとかで気を配る人が多いかとも思いましたが、思いのほか忌憚ない意見を言うものなんですね」
自身の回答はBであったが、予想としてAのカードを置いていたグレイブが意外そうな呟きを漏らす。
人の考えはそれぞれで分からないものではあるが、案外、感性として通じ合う場合もあるのかもしれない――。
●
二つ目の質問は『次の内、どちらかというと欲しいのは――?』であり。
その回答候補は『A:不眠不休で活動しても平気な体』『B:ゆっくり寝ることのできる時間』であった。
この回答が――割れた。
答えとしてAを選んだのはベルク、ヴァンゲルス、シリスの三人。
そしてBを選んだのがルアンナ、グレイブ、ストレガの三人である。
「帝国復興で忙しい時期だからな。休まず働ける体が貰えるものなら欲しいものだ」
ベルクがそう語ったように、やはり大きな目標に向かっていると、休んでいる暇などないと感じるものなのだろうか。
数多くの者が帝国復興に携わり、身を粉にして働いているのを思えば、ベルクがその答えに至るのも無理のない話ではある。
「そりゃ答えは簡単だろう。ヒューマンの生には限りがあり、世の中にゃ俺の知らねェモンが無数にあるからな。寝る暇なんざねえだろ」
ヴァンゲルスの回答は、限られた時間の中で己の好奇心を満たすためのもののようだ。
「エルフだって許された時間は無限じゃないんだ。できるものなら夜通し遊戯がしたいからね」
そういう意味では、シリスのこの回答も似たような方向性かもしれない。
「パン屋の朝は、早い……」
そのように語って脱力したルアンナは、パン屋を営む中で、たまにはゆっくり眠りたいと思う機会が多かったのだろう。
いつも早起きして、お客様のために香り高いパンを焼く――お疲れ様である。
町の人々の朝食は、そんなルアンナに支えられている。
「休める環境、眠ることができるだけの時間の余裕。自分でなくてもいいというものは、とても周囲にとって良いものだと思います。どんなものにも代わりがあっていい」
グレイブの言うように、休める時間があるということは、無理に起きる必要が無いということだ。
そういう世界を得るという意味でも、休息できるという環境はかけがえのないものである。
「睡眠欲は生物の最大欲求。そして最も無防備になる時間。安全に眠れる時間と場所は大事。睡眠とは記憶と心の整理の時間なのだ」
知を追うものとして、ストレガの意見はここでも大いに含蓄があった。
普段から様々なことに考察を重ねていればこそだろう。
そして一通りの回答が揃い、予想もオープンされた。
半々に回答が割れたため、自身の回答と逆の選択肢を予想した者が正解となる。
その正解者となったのは、ベルク、グレイブ、シリスの三人であった。
●
三つ目の質問タイルに書かれていたのは『誰にも戦いで負けることのない最強の力を今すぐ対価なしに手に入れることができるとしたら――?』であった。
選択肢としては『A:貰う』『B:貰わない』が示されている。
こちらはAを選んだのがヴァンゲルス。
シリス、ルアンナ、ベルク、ストレガ、グレイブの五人はBを選んでいた。
「なにせ鍛錬の手間が省けるからな。その分の時間をもっと興味のあるモンに向けられる、だろ?」
ヴァンゲルスのこの答えから察するに、ヴァンゲルスにとって戦いは何らかの目的を達成するための手段に過ぎないのかもしれない。
運を天に委ねるギャンブルによる勝負と、戦闘はまた別物なのだ。
「あたしは戦いのほうも勝つか負けるか分からないからこそ、っていうのはあると思うんだよね」
一方でシリスは、戦闘に対してもその過程を重視しているようだった。
「私はなんとなく面白くない気がするので、ですかね」
ルアンナはもとより戦いに強い興味があるわけではないようだ。
戦いよりも、大事なことが遥かに多いのかもしれない。
「対価無しというが、貰ったが最後。絶対に力に溺れて腐り果てるだろう。ある意味、その未来こそが対価と言えるだろうな」
ただより高いものはない――ベルクの言うように、何かを手に入れるということは『変化』である。
手に入れるものがなんであれ、自身が変わってしまうことによって失われた未来は、その対価と言えるかもしれない。
「過ぎたる力は身を滅ぼす。単純な筋力、魔力の量であれば、それを必要とする状況であるかどうかだ。ただの獣を倒すのに山を消し飛ばす程の力が必要だろうか? 強火だけで料理はできないのだ」
こういう話にも、ストレガは料理を絡めて自身の考えを説明した。
料理に対するこだわりが人一倍なのだろう。
「その力に目をつけられ、面倒事に巻き込まれる事もあるだろう。そもそも最善の策とは戦わずして勝つ事なのだ」
やはりストレガにとっても、戦いはあくまで手段に過ぎないのだろう。
そこから導き出される答えが、ヴァンゲルスとは異なる側になるのも、また面白い事実であるが。
「それはきっと、とても不自由な生き方になると思います。最強ということは、結果が分かっているということです。どんな状況でも確約されている未来がある。そこに恐れはなく、ただ決まりきったことがある。そんな状況を楽しめるような精神は、私にはないので」
この意見も、グレイブが『あるがままの命』を尊ぶからこそかもしれない。
そして予想は誰にとっても正解がBとなる中。
正解者はベルクとヴァンゲルスの二人となった。
●
最後となる四問目は『人類の暮らす世界が永遠に続き、その中で自分一人だけが永遠の命を手に入れることが可能として――?』だ。
回答候補は『A:手に入れたい』『B:手に入れたくない』であり、実際の回答は――なんと、全員がBを選んでいた。
「知ってる人が年老いて死んでしまうのに、自分だけずっと生き続けるなんて耐えられません!」
ルアンナはそうした状況を想像してしまったのが、目をぎゅっとつぶって身震いをする。
「あたしはただでさえエルフでそういう可能性があるからね……さらにそれ以上って考えちゃうと、ね」
シリスも似たような理由でBを選んでいたようだ。
「人類が永遠に続こうが、そこに生きる人は常に替わり続ける。親しくなった者たちに置いて行かれる――それが永遠に続くなど、ごめんこうむる」
そしてベルクも同じような状況を考えていたらしい。
置き去りにされる恐怖とは、ここまで人を畏れさせるものであったのか。
「永遠なんて全く興味ないねぇ。変化が無い人生なんてつまらねぇだろ。短い生を存分に楽しんでこそだと俺は思うね」
そうした中でも、ヴァンゲルスは自分自身の面白みという着眼点から、永遠の命を否定していた。
「不死とは停滞である――というのが『ストレガ』が継いできた論で、私もこの論を継ぐ」
自らの名は世代を越えて受け継がれてきたものであり、それとともに思想も継がれてきたと、ストレガは語る。
「生物はいつか死ぬのが理――それがゴブリンロードでも。長生きはするものであるし『ストレガ』は同胞がより長く生き残る為に知識を蓄え善導するのが命題であるが――」
そこで、永遠に生きていては知識を次代に継ぐ必要がない、と言葉を繋げるストレガ。
「だが知識にも記憶にも限界がある。進んでいく世界の中、停滞した価値観と知識を抱いて、ただ生きているだけの老害と化すだろう。だから『ストレガ』は不死を無価値と見做したのだ」
そう、継ぐという『ストレガ』の営みを否定する永遠の命を、ストレガは否定し返すのだ。
「生命はいつか終わるからこそ、色々な感情――想いを育むもの、と思います。何かを残したい、何かを伝えたい、自分はいづれ終わるから、と」
グレイブの思いは一貫している――だから自然なる命こそ尊いのだ、と。
「それがなくなり、膨大な時間だけが目の前にあったら。多分、私は世界を呪い、その永遠を壊したくなるでしょう――永遠が永遠であることを確かめるために」
同時に、グレイブは不自然な命の危うさを説いたのであった。
そして最後の予想発表。
正解が誰にとってもBとなる中、それを予想できたのは――。
ルアンナ、ベルク、ストレガ、ヴァンゲルスの四人であった。
●
「なかなか哲学的な問いが多かったな。ある意味、おのれを振り返るにはちょうど良かったが。とはいえ最後の問いはやはり、永遠の命など考えるだけで怖気が走るな」
遊戯を終えた冒険者たちが歓談を始め、ベルクも自らの感想を口にする。
「予想の点数は誰が一番、多かったのでしょう? 私は2点でした!」
正解の証として獲得したチップを、ルアンナは見せびらかすようにして自慢する。
他、ストレガが1点、グレイブが1点、シリスが1点、ヴァンゲルスが3点で――。
「ふむ、そういえば我が4点か?」
「わあ、すごい! おめでとうございます!」
全ての予想が的中したベルクが優勝となり、それを聞いたルアンナがパチパチと手を叩く。
それに釣られ、他の参加者たちもベルクの勝利を祝ったのだった。
シリス・アローゼアの呼びかけで、テーブルの周りには五人の冒険者が集まっていた。
「面白そうな遊戯をされると聞きまして!」
これまでも女神の賽子亭の遊戯にときおり参加しているルアンナ・ミュラーは、今回も遊戯が開催されると聞きつけ飛び込んできたようだ。
「へぇ、こんな遊戯もあるんだな。たまにはこういうモンに乗ってみるのも一興か。さて、他の奴らはどんな答えを出すのかねェ」
ギャンブル好きなヴァンゲルス・ロッドは、予想が当たるも外れるも運次第な遊戯に惹かれてか、配られたカードを興味深げに眺めている。
「まぁ、あくまで自分の考えとして、ということなのでしょう? それでよければ、このような問いでもお答えできるでしょう」
素顔を隠したグレイブ・ヤードの表情は読めない。
その奥に秘められたグレイブの考えとは、どのようなものであろうか。
「遊戯といっても、テーマに沿って語るのが主という事なのだ。では私の演説を聞かせるのだ」
ストレガ・L・リベルガストラは知を追い求める者として、この機に語り聞かせたいことがある模様だ。
「気楽な遊戯ということだ、楽しめればそれでいいだろう」
ベルク・オスマットにとっては、あくまでこれも遊戯として楽しむことが目的のようである。
「五人集まったっていうことは、あたしが入ればちょうど六人で偶数だね? じゃあ、遠慮なく混ぜて貰おうかね」
こうしてうまい具合に人数が揃ったのを見て、シリスは嬉々として遊戯に混ざることにしたのだった。
●
「それじゃあ、例としてめくったタイルからそのまま遊戯を始めようじゃないか」
シリスが指し示した先には、例示に使われた『親しい人が真心こめて作ってくれた料理が口に合わなかったとして――?』の質問タイルが鎮座していた。
「Aが『誤魔化して味を誉める』で、Bが『味は誉めない』ですね。なるほど、それなら――」
ルアンナはしばし考える素振りを見せた後、手にしたカードから一枚を、そっとテーブルに伏せる。
他の参加者たちも同様に、一枚ずつカードを自らの前に置いた。
「自分の答えは置いたね? じゃあ、さらに予想のカードも伏せておくれ」
「今回の面子なら大凡こんなモンだろうかと予想しているが、さてどうなるか。他の奴らの答えも楽しみだ」
シリスに促され、ヴァンゲルスが予想用のカードをスッと前に出す。
ニヤリと笑んだその顔は、こんな時でも勝負師のそれだ。
「カードが揃ったみたいだし、まず予想は置いといて、全員分の答えを開けてみようかね。それじゃあ――オープン!」
テーブルに並んだカードを見回したシリスの号令で、参加者たちは回答用のカードを一斉に表にした。
「私はAですね。料理の味がただ『口に合わない』だけなら味覚の違いということなので、味が悪いというわけじゃないと思うんです」
ルアンナはタイルに書かれた細かな表記にも気づき、そこから自身の考えに繋げたようだ。
「ただ、誰が食べてもアウトなレベルなら正直にこれはダメだと言います。そういう場合でもAを選んで良かったんですよね?」
「ああ、あくまでどちらかというと自分の考えに近い答え、を選んでくれたら大丈夫さ」
ルアンナの判断に、シリスも太鼓判を押した。
「それにしても、あとは全員がBなんだね」
そしてシリスが驚きの声を漏らした通り、ルアンナを除いた五人は、全てBのカードを出していたのだった。
「口に合わないにしても、作ってくれたこと自体は嬉しいことを素直に伝えるからな」
「あたしも似たような考えさね。味じゃなくて、込めてくれた真心を褒めればいいのさ」
ベルクが口にした回答の理由に、シリスが同調してうんうんと頷いている。
「これは相手が親しい人間だからこそだ。嘘を言っても本心はどっかしら滲み出ちまうモンだからな、俺が親しいと思うような人間がそこに気付かないとは思えないね」
ヴァンゲルスは親しい間柄では本心は誤魔化せない、という観点に注目したようだ。
「ま、だからって貶すようなこともしねぇけどな。俺の口には合わねえってだけで、他の奴らはまた違うだろう? それと味は褒めねぇが、他の部分で褒められそうな部分がありゃ、そこは褒めるぜ。例えば色合いだったり、盛り付け方だな」
こうしてみると、ヴァンゲルスの示した考えにも、これまで他の参加者が出した理由に近しい部分もある。
「親しさのレベルでも変わるでしょうが、親しいからこその感謝は伝えこそすれ、味についての誤魔化しはよくないと思います。好みはそれぞれですからね。好きじゃないものを差し出されるのは気持ち的にも負担になりますし、伝えることがお互いの理解になるかと」
グレイブが着目したのは、誤魔化さずに真意を伝えた方が、親しい者の間で互いの理解になる、ということだった。
もしかしたらであるが、信用に足る間柄であれば互いに己を晒し合うものだ、という考えでもあるのかもしれない。
「料理人である私は、それが善意であっても不完全な調理の危険性を指摘する。嗜好に合わないだけなら善処するが、メシマズはハッキリ言う。真心や愛で味は覆せない。最悪、食中毒で死ぬ事もあるから」
そしてストレガが述べたのは、自身が料理人であるという自負からくる意見だった。
「真心に応えるならば悪い点を指摘し、善導する事。それでいて努力点を褒める事なのだ」
料理を作った人を正しく導くこと、それがストレガからの真心なのである。
「いやあ、本当に色々な考えが聞けて面白いね。それじゃ、予想のほうもオープンしてみようじゃないか」
そこでシリスからの号令。
未だ伏せられたままだった予想用カードの内容が明らかになった。
全員にとってBが正解となる中、見事それを予想できたのはルアンナ、ベルク、ヴァンゲルスの3人だった。
「私の他は思いやりとかで気を配る人が多いかとも思いましたが、思いのほか忌憚ない意見を言うものなんですね」
自身の回答はBであったが、予想としてAのカードを置いていたグレイブが意外そうな呟きを漏らす。
人の考えはそれぞれで分からないものではあるが、案外、感性として通じ合う場合もあるのかもしれない――。
●
二つ目の質問は『次の内、どちらかというと欲しいのは――?』であり。
その回答候補は『A:不眠不休で活動しても平気な体』『B:ゆっくり寝ることのできる時間』であった。
この回答が――割れた。
答えとしてAを選んだのはベルク、ヴァンゲルス、シリスの三人。
そしてBを選んだのがルアンナ、グレイブ、ストレガの三人である。
「帝国復興で忙しい時期だからな。休まず働ける体が貰えるものなら欲しいものだ」
ベルクがそう語ったように、やはり大きな目標に向かっていると、休んでいる暇などないと感じるものなのだろうか。
数多くの者が帝国復興に携わり、身を粉にして働いているのを思えば、ベルクがその答えに至るのも無理のない話ではある。
「そりゃ答えは簡単だろう。ヒューマンの生には限りがあり、世の中にゃ俺の知らねェモンが無数にあるからな。寝る暇なんざねえだろ」
ヴァンゲルスの回答は、限られた時間の中で己の好奇心を満たすためのもののようだ。
「エルフだって許された時間は無限じゃないんだ。できるものなら夜通し遊戯がしたいからね」
そういう意味では、シリスのこの回答も似たような方向性かもしれない。
「パン屋の朝は、早い……」
そのように語って脱力したルアンナは、パン屋を営む中で、たまにはゆっくり眠りたいと思う機会が多かったのだろう。
いつも早起きして、お客様のために香り高いパンを焼く――お疲れ様である。
町の人々の朝食は、そんなルアンナに支えられている。
「休める環境、眠ることができるだけの時間の余裕。自分でなくてもいいというものは、とても周囲にとって良いものだと思います。どんなものにも代わりがあっていい」
グレイブの言うように、休める時間があるということは、無理に起きる必要が無いということだ。
そういう世界を得るという意味でも、休息できるという環境はかけがえのないものである。
「睡眠欲は生物の最大欲求。そして最も無防備になる時間。安全に眠れる時間と場所は大事。睡眠とは記憶と心の整理の時間なのだ」
知を追うものとして、ストレガの意見はここでも大いに含蓄があった。
普段から様々なことに考察を重ねていればこそだろう。
そして一通りの回答が揃い、予想もオープンされた。
半々に回答が割れたため、自身の回答と逆の選択肢を予想した者が正解となる。
その正解者となったのは、ベルク、グレイブ、シリスの三人であった。
●
三つ目の質問タイルに書かれていたのは『誰にも戦いで負けることのない最強の力を今すぐ対価なしに手に入れることができるとしたら――?』であった。
選択肢としては『A:貰う』『B:貰わない』が示されている。
こちらはAを選んだのがヴァンゲルス。
シリス、ルアンナ、ベルク、ストレガ、グレイブの五人はBを選んでいた。
「なにせ鍛錬の手間が省けるからな。その分の時間をもっと興味のあるモンに向けられる、だろ?」
ヴァンゲルスのこの答えから察するに、ヴァンゲルスにとって戦いは何らかの目的を達成するための手段に過ぎないのかもしれない。
運を天に委ねるギャンブルによる勝負と、戦闘はまた別物なのだ。
「あたしは戦いのほうも勝つか負けるか分からないからこそ、っていうのはあると思うんだよね」
一方でシリスは、戦闘に対してもその過程を重視しているようだった。
「私はなんとなく面白くない気がするので、ですかね」
ルアンナはもとより戦いに強い興味があるわけではないようだ。
戦いよりも、大事なことが遥かに多いのかもしれない。
「対価無しというが、貰ったが最後。絶対に力に溺れて腐り果てるだろう。ある意味、その未来こそが対価と言えるだろうな」
ただより高いものはない――ベルクの言うように、何かを手に入れるということは『変化』である。
手に入れるものがなんであれ、自身が変わってしまうことによって失われた未来は、その対価と言えるかもしれない。
「過ぎたる力は身を滅ぼす。単純な筋力、魔力の量であれば、それを必要とする状況であるかどうかだ。ただの獣を倒すのに山を消し飛ばす程の力が必要だろうか? 強火だけで料理はできないのだ」
こういう話にも、ストレガは料理を絡めて自身の考えを説明した。
料理に対するこだわりが人一倍なのだろう。
「その力に目をつけられ、面倒事に巻き込まれる事もあるだろう。そもそも最善の策とは戦わずして勝つ事なのだ」
やはりストレガにとっても、戦いはあくまで手段に過ぎないのだろう。
そこから導き出される答えが、ヴァンゲルスとは異なる側になるのも、また面白い事実であるが。
「それはきっと、とても不自由な生き方になると思います。最強ということは、結果が分かっているということです。どんな状況でも確約されている未来がある。そこに恐れはなく、ただ決まりきったことがある。そんな状況を楽しめるような精神は、私にはないので」
この意見も、グレイブが『あるがままの命』を尊ぶからこそかもしれない。
そして予想は誰にとっても正解がBとなる中。
正解者はベルクとヴァンゲルスの二人となった。
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最後となる四問目は『人類の暮らす世界が永遠に続き、その中で自分一人だけが永遠の命を手に入れることが可能として――?』だ。
回答候補は『A:手に入れたい』『B:手に入れたくない』であり、実際の回答は――なんと、全員がBを選んでいた。
「知ってる人が年老いて死んでしまうのに、自分だけずっと生き続けるなんて耐えられません!」
ルアンナはそうした状況を想像してしまったのが、目をぎゅっとつぶって身震いをする。
「あたしはただでさえエルフでそういう可能性があるからね……さらにそれ以上って考えちゃうと、ね」
シリスも似たような理由でBを選んでいたようだ。
「人類が永遠に続こうが、そこに生きる人は常に替わり続ける。親しくなった者たちに置いて行かれる――それが永遠に続くなど、ごめんこうむる」
そしてベルクも同じような状況を考えていたらしい。
置き去りにされる恐怖とは、ここまで人を畏れさせるものであったのか。
「永遠なんて全く興味ないねぇ。変化が無い人生なんてつまらねぇだろ。短い生を存分に楽しんでこそだと俺は思うね」
そうした中でも、ヴァンゲルスは自分自身の面白みという着眼点から、永遠の命を否定していた。
「不死とは停滞である――というのが『ストレガ』が継いできた論で、私もこの論を継ぐ」
自らの名は世代を越えて受け継がれてきたものであり、それとともに思想も継がれてきたと、ストレガは語る。
「生物はいつか死ぬのが理――それがゴブリンロードでも。長生きはするものであるし『ストレガ』は同胞がより長く生き残る為に知識を蓄え善導するのが命題であるが――」
そこで、永遠に生きていては知識を次代に継ぐ必要がない、と言葉を繋げるストレガ。
「だが知識にも記憶にも限界がある。進んでいく世界の中、停滞した価値観と知識を抱いて、ただ生きているだけの老害と化すだろう。だから『ストレガ』は不死を無価値と見做したのだ」
そう、継ぐという『ストレガ』の営みを否定する永遠の命を、ストレガは否定し返すのだ。
「生命はいつか終わるからこそ、色々な感情――想いを育むもの、と思います。何かを残したい、何かを伝えたい、自分はいづれ終わるから、と」
グレイブの思いは一貫している――だから自然なる命こそ尊いのだ、と。
「それがなくなり、膨大な時間だけが目の前にあったら。多分、私は世界を呪い、その永遠を壊したくなるでしょう――永遠が永遠であることを確かめるために」
同時に、グレイブは不自然な命の危うさを説いたのであった。
そして最後の予想発表。
正解が誰にとってもBとなる中、それを予想できたのは――。
ルアンナ、ベルク、ストレガ、ヴァンゲルスの四人であった。
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「なかなか哲学的な問いが多かったな。ある意味、おのれを振り返るにはちょうど良かったが。とはいえ最後の問いはやはり、永遠の命など考えるだけで怖気が走るな」
遊戯を終えた冒険者たちが歓談を始め、ベルクも自らの感想を口にする。
「予想の点数は誰が一番、多かったのでしょう? 私は2点でした!」
正解の証として獲得したチップを、ルアンナは見せびらかすようにして自慢する。
他、ストレガが1点、グレイブが1点、シリスが1点、ヴァンゲルスが3点で――。
「ふむ、そういえば我が4点か?」
「わあ、すごい! おめでとうございます!」
全ての予想が的中したベルクが優勝となり、それを聞いたルアンナがパチパチと手を叩く。
それに釣られ、他の参加者たちもベルクの勝利を祝ったのだった。
マスターコメント
お疲れ様でした。空色みなもです。
このたびは当シナリオにご参加頂き、誠にありがとうございました。
皆さんそれぞれの考えが見え、マスターとしても大変おもしろくプレイングを拝見いたしました。
また皆さんにシナリオ参加して頂けるのを心よりお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ショートシナリオ易しい 報酬:標準5 / 4〜5人
2022年02月14日 10時52分24秒 公開
大成功
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