【泳冥】濁流の底【求和】
崎田航輝
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シナリオID:1899
オープニング
レッドラントの一端に位置する小さな屋敷。
その静かな部屋で――ヒゼンベルク伯爵は冒険者達へ声を零していた。
話は無論、クロックワードが関わる陰謀の事。
「……予想が、当たる形となってしまったな」
ヒゼンベルクは言いながら声音を静める。
冒険者達がソームダリアから持ち帰った情報――それを知って、少なからず心を痛めているようでもあった。
陰謀の中心にクロックワードがいる事が、確かだと判ってしまったからであろう。
それでも、落ち込んでいる暇がないのだともまた、理解しているようだった。
今がレッドラントの行く末を決める分水嶺なのだから。
「こちらもやるべき事を、やるしかない。クロックワードを、止めるんだ」
●計画
ヒゼンベルクは前回の情報を纏めたものを、改めて取り出す。
そこにあるのは、判明したクロックワードの内乱計画であった。
計画によれば――ソームダリアからの出兵に機を合わせて、王国南西から寄り子領地へと、賊の軍が押し寄せてくる事になっているという。
この賊の多くは各領地への移住者として扱う事になっているらしい。
その上でこの軍に大規模な争いを起こさせる事で……あくまで「メルべ家管轄内の出来事」という形にする狙いなのだろう。
無論、実際の領民にも犠牲が出る事に疑いない。
大きな被害と責任、その全てを寄り子領地と当主のヒゼンベルクに被せる事で……一時的に近隣一帯を機能不全にさせる算段のようだ。
「一度争いが始まってしまえば、情報は混沌としていくだろう」
クロックワードはそれに紛れて不都合な情報を抹消。その上でソームダリアの勢力を紛争の只中にぶつけるつもりだ。
つまりは自作自演。
本物の争いでもある為、被害は多く出るだろう。
それでもソームダリア勢力は順当に、内乱を鎮圧する事になるはずだ。
全てが終わる頃には、寄り子領地とメルべ家の采配を握っているのはクロックワード、という訳である。
「ただ、この計画が全てクロックワードによるものではなさそうだ」
現在、クロックワードは何らかのマインドコントロール下に置かれているのか……影にいる何者かの指示に諾々と従っているようだと推測されている。
「実際は、その人物が計画を牛耳っているのかも知れない」
或いは、メルべ家の管轄地を焦土のようにした上で……クロックワードを操り人形にして、思い通りの統治を始めるつもりなのかも知れない。
だとすれば、尚更これを放置する事は出来ないという。
「今、ソームダリア勢力は出兵直前だ」
一方、南西の方向で動きはない。
どうやらクロックワード達は先んじて、訓練などを行う名目で、寄り子領地に近い場所に駐留する予定となっているようだ。
“偶然”、内乱を鎮圧できる丁度いい場所にいた、という状況を作る為だろうか。
「その状況が出来上がった後で、南西勢力が動き出すんだろう。僕らがやらなければいけない事は、そうならぬようにクロックワードを止める事だ」
無論、争いなく止められれば理想だが――
「そうはいかないだろうな」
政治を動かすには時間が足りない。
メルべ家や他の誰かが止めようとしても、“内乱の犠牲”として片付けられてしまう可能性が高い。
つまり、クロックワードには出兵を止める理由がない。
だからこそ皆に頼みたいのだと、ヒゼンベルクは頭を下げる。
「僕もソームダリアへ同行し、投降の呼びかけは行うつもりだが……クロックワードは、応じないだろうな」
出兵が始まってしまったら、後の戦いは任せたいと、ヒゼンベルクはそう言った。
とはいえ、敵は大軍だ。
冒険者達だけではどうにもならないが――ヒゼンベルクはそれには光明があるのだと言う。
「敵の全てを相手にする必要はない」
この作戦は既にギルドと共有されており、別働隊として動く冒険者も協力してくれるという。
具体的には、戦力の先鋒である碧闘剣士団の中心メンバーは、ハンツ男爵に協力する面々が対応する。
鍛冶師ソルスもまた戦力を従えて出兵に加わるようだが――そちらもまた別口の依頼から合流してくれた冒険者達が向かうと言った。
「貴方達にも、同行してくれる戦力がいる」
それはヒゼンベルクの祖父に動員してもらった兵力だと言う。
「僕はメルべ家にも味方がいない状態だったが……何とか祖父とは連絡が取れた。今まで貴方達が集めてくれた情報を説明して、信じてもらったよ」
その兵力が、敵の雑兵を抑えてくれるだろう。
「だから貴方達は……クロックワードの捕縛に注力を」
無論、それでも油断は出来ないだろう。
クロックワードは体力的には不調なようだが、仕事はずっとこなしてきていた。
おそらくは黒幕の手先のような存在が手助けをしていたものと思われる。
戦場にもそういった存在は同行するだろう。
「きっと手練だろう。最大限の警戒をしておいて欲しい」
●声
――貴方は誰よりも優しい人だ。
――だから、心を悩ませてしまっているのですよ。
心の水面に触れて、奥深くまで入ってくるような声を思い出す。
クロックワードは――それを意識すると不思議と精神が楽になる心地がした。
いつから、自分はこんな気分になったろう。
分からない。
それでも、言われたとおりに動けばメルべ家は救われる。
多分、それが真実なのだ。
今は、それを信じたい気持ちだった。
だからクロックワードは……考える事をやめる。
今はただ、朦朧とした心が示す先へ。
「さあ、行こう」
出兵までは、間もなくだった。
解説
マスターより
リプレイ
ヒゼンベルクの勧告は拒絶された。
地鳴りの如き足音と、怒号にも似た鬨の声と共に――ソームダリア勢力は出兵を始めようとしていた。
その景色に歯噛みするヒゼンベルクに、ナタリア・フィッツジェラルドは目を向ける。
「ヒゼンベルク卿、今はまだ己が無力を責めるには早いです」
「……だが」
「まだ事が起きた訳では無い。クロックワードを止めるには寧ろこの瞬間こそが、逃してはならぬ好機です」
「ええ、この争いは停止させられるはず」
祭棍を握りながら、ロゼットも戦場へ視線を走らせる。
「彼を止めて……その裏にいる存在さえ、明らかにできれば」
「暴いてやるさ。裏で誰が糸を引いていようとな」
ハヤト=ガラン=ヴォルファングが言葉と共に見据える先では、既に多くの敵兵が進軍を始めていた。
だが、焦らない。敵味方が入り乱れてゆく中で、レティシア・レインフィールも悪戯に動かず勢力最奥の動きを窺っていた。
そして――
「皆様、あちらを」
西側を指す。
正面での衝突を避けるように、そこへ馬車を中心にした集団が出てきたのだ。
ルチル・プルメリア・グレイハーツは視覚を研ぎ澄ませ、箱馬車の窓から内部までもを素早く観察する。
「間違いないね。クロックワードだ」
同時に、護衛らしい数人が他の兵とは毛色が違うらしいとも見て取っていた。
情報を聞きながらバーネット・フォーサイスはへぇ、と呟く。
「本当に護衛かどうかも、怪しい所だが。まぁ――」
纏めて制圧しちまえば大丈夫だろう、と。
言いながら奔り出せば、頷いてヴィナスもそれに続く。
ここからは、一刻の猶予も無いのだから。
「行こう」
「うん!」
ララベル・サン・ディーベルもまた頷いた。
この争いも、黒幕の存在も。放っておけば多くの人々に被害が及んでしまうだろう。
「――させないから」
思いと共に、ひた走る。
「私たちはメルべ家、ヒゼンベルク伯爵の使者よ。投降しなさい!」
荒野を駆けながら、ロゼットは敵兵へ呼びかけてゆく。
皆が応じてくれるとは思わない。それでも無為な戦いを一人でも思い留ませる事が出来れば、と。
ただ――クロックワードを取り巻く集団こそ、一切の態度の変化を見せない。
寧ろこちらに敵意を見せるように武器を構え始めていたから。
「……戦うしか、無いようですね」
レティシアは一度目を伏せるが、後は凛然と。
聖歌を紡いでエーテルの波動を広げ、皆の能力を向上。同時に牽制代わりの魔矢も放って剣士達の足元へ突き刺した。
それに一瞬、敵陣が前進を緩めると――その隙に迅風の如く駆けるのがハヤト。
爆発的な脚力による縮地で弓士へ間合いを詰めながら……まずは閃光塗弾をマスクの男達へ投擲。強烈な光で目を眩ませる。
その間に逆側の弓士へ迫るのがララベルだ。
ハヤトやレティシアへ弓を引こうとしていた者へ、ひらりと宙を舞うように肉迫すると――
「狙わせない……これでもくらえ!」
回転しながら細剣での刺突。
一人の腕を穿って矢を取り落とさせると、そのまま二撃目、三撃目。流れるような連撃でその一人を気絶させていた。
傍にいる弓士が反撃を目論むが、その頃にはルチルが弓に矢を番えている。
鏃の先に凝集させるエーテルを、鋭いまでに輝かせて。
瞬間、放たれた一矢は豪速で飛翔。破裂すると共に強烈な衝撃波を生み出して弓士二人に深手を負わせた。
「もう少しだね」
「後は任せて」
言って走るヴィナスも、直後には敵の面前。はっとする相手に、回避する間断を与えず……双剣を奔らせて意識を奪い去った。
それでももう一人の弓士が矢撃を返すと、反対側の弓士もまた、そちらへ射線が通る位置へ動こうとする。
――が。
「テメェらの相手はこの俺様だ!」
その眼前へ跳躍するのがハヤト。
速度のままにくるりと廻り、まずは踵落としで一人の弓弦を断ち切ってみせる。
残りの二人には受け身を取られるが――それでも打撃と斬撃はしかと見舞った。
この間に、レティシアが祈りと歌声で癒やしの輝きを顕現。ヴィナスを中心に温かな感覚で包み込み、体力を持ち直させる。
「これで戦線は問題ないはずです」
「それじゃ、攻撃を続けよう」
言ったルチルが残る弓士へ射撃を重ねていくと……ララベルやハヤトも連撃。弓士を素早く打倒していった。
時を同じく、敵陣の前面へ向かうのはバーネットとナタリア、ロゼット。
居並ぶ剣士達が、弓士へ向かった冒険者達に目を向ける前に――まずはバーネットが杖へと魔力を収束させて。
「行かせないさ」
その塊を放ち、重力場を発現。下方に強烈に引きつける重力で、剣士全員の動きを鈍らせてみせる。
だけでなく、バーネットは同時に光の槍を生み出して射出。中央の一人へ命中させ、弾けた燦めきで更に自由を奪った。
その一人と剣士達は……自由の利かなくなった体で容易に前進も出来ない。
そこへナタリアが大鎌を振るい、魔力を放って一人の体力を削ると――ロゼットもまた距離を詰めながら魔力を煌めかせていた。
「今からでも武器を捨てて下がりなさい」
もし躊躇いを感じるのならば、と。
そうは勧告を続けるが……それでも剣士達は退く様子を見せず、声だけを返す。
「我らはクロックワード様の尖兵となって戦うだけだ」
「……聞く耳は持たないか」
ナタリアが呟くと、ロゼットも「ええ」と呟いて。直後には形成した矢を放ち、負傷した一人へ撃ち当てて意識を奪い去った。
「ま、倒さなきゃいけないなら……やるだけだな」
バーネットも言いながら光球を眩く明滅させている。次の瞬間にはその全て飛ばして剣士達を巻き込んでいった。
総崩れになってゆく敵陣、だがバーネットは油断しない。
「奴らが動くぞ」
視線の先はマスクの男達。
杖を持つ彼らは、濃密なまでの魔力を揺蕩わせてこちらに狙いを定めていた。
強力な魔法使いであろう。だが……こちらはそれを見越して一箇所に固まらず、間合い自体も可能な限り保っている。
それが功を奏し、届いた攻撃は魔弾の二発のみで――標的となったロゼットも自身をエーテルの輝きで纏い、衝撃を抑え込んだ。
それでも浅いダメージとは言えないが……直後にはナタリアが翳した刃に刃紋を浮かべ、魔力を治癒の輝きに昇華していた。
注がれたその燦めきは、優しく撫ぜるようにロゼットに溶け込んで――体力を回復させる。
「大丈夫か?」
「ええ、ありがとう」
答えたロゼットは健常。直後には剣士達に攻め入り、棍を振るって一人を打倒していった。
剣士達も反撃に出るが――ロゼットは防御姿勢も取りつつ自身での回復も続けて凌ぐ。
「こいつで最後だ」
と、その頃にはバーネットが再度光球を雨と注がせて……残る剣士達を気絶させた。
●光
場に残る敵はマスクの男達だけ。
馬車を囲う位置にいる彼らへ、ララベルは素早く視線を奔らせていた。
(……)
感じるのはやはり、他の兵士とは異質な存在感。交わす目線で、単純な戦いの策以上の事を確認し合っているようでもある。
故にこそ。
「好きにはさせないよ!」
ララベルは高々と跳躍して一人の面前へ。流星の如き連続の剣撃を加えていった。
その一人は初撃はバリアで軽減させたものの、残った傷は浅くない。直後にはハヤトもそこへ疾駆し――零距離から強烈な飛び蹴り。
「うるぁ! まだ終わらねぇぜ!」
相手がよろめけば、そこへ更に逆の足で回し蹴りを叩き込み……回転力のままに三撃目。忍刀の横一閃で腹部を抉って打倒した。
そして残る三人を巻き込めると判断すれば……ナタリアが無数の光弾を形成。眩い衝撃にその全員を包み込み込んでゆく。
男達はそのダメージをエーテルバリアで軽減させていたが――それこそ、ナタリアの狙い通り。
「今だ」
「了解」
応えたヴィナスがその一人へと肉迫。
バリアを張れぬようになったタイミングで斬撃を加えて体力を削り取ると――同時にルチルも引いた矢の先で狙いを定めていた。
瞬間、放たれた矢が生み出した衝撃の塊が直線上の敵二人を襲う。直撃によるダメージは重く、そのうちの一人がふらつくと――
「任せてくれ」
と、バーネットが光の弾を発射。剛速の燦めきでその一人を気絶させた。
残る二人がハヤトとララベルへ魔弾を放ち、深い衝撃を加えてくるが……それを捨て置くレティシアではなく。
「すぐに、癒やします」
紡ぐ清廉な歌声で、太陽の光にも似た温かな輝きを招来して。傷を薄らがせ、体力を回復させていた。
その間、僅かに後退しようとする箱馬車へ――ロゼットが魔矢を発射。車輪を壊す事でその機動力を奪っている。
するとその馬車の扉が開いて、ロゼットははっとした。
クロックワードは未だ若さすら残す青年だ。
顔立ちは精悍で、メルべ家の血を引くには相応しい見目をしている、はずだったけれど。
(やっぱり……)
そこに現れた姿に、ロゼットは思う。
「君達は、僕らの敵だな。ならば、討つ」
言って剣を構えるその姿には、確かに戦意はあった。
だが相貌に血の気は通っておらず、立ち居は不安定。言葉は借り物のように薄弱で、どこか心と乖離しているようなものに聞こえた。
ナタリアは素早く視線を走らせ、マスクの男達をまだ即座には倒せないと判断。
すると光の塊をクロックワードの足元に生み出して――それを柱として形成。クロックワードを内部に閉じ込める形を取った。
これでひとまずは、巻き込まずに済む。
「そちらは頼む」
「ああ」
バーネットが応えて皆と共に敵に向かうと……ロゼットは戦況を観察しながらもクロックワードへ向いた。
「私達はただ争いに来たのではありません。この戦いは多くの犠牲を生む事になる……ヒゼンベルク様の思いもあって、それを止めに来たのです」
「ヒゼンベルク……ああ、兄さん――そうだ。兄さんのため、メルべ家を救うためにこの戦いは行われるんだ」
クロックワードは言葉は返すが、まともな問答にはならない。
呼吸の浅さと、眼球の動きも見れば……薬物中毒のような症状だとロゼットには判った。
と、それを見たマスクの男の一人が――矛先をクロックワードに変える素振りを見せる。
無論、クロックワードは光縛に守られてはいる。それでもレティシアはさせまいと、魔矢を発射。まずは弱っていた一人を倒した。
そしてもう一人へは、ルチルが矢弾で濃煙を形成。視界と射線を封じきる。
同時にルチルはエーテルの波を走らせ、煙の中の敵の位置をつぶさに把握してもいた。
「後方へ退避しようとしてるよ」
「なら、邪魔させてもらうか」
言ったバーネットが煙の後へ。姿を現した敵へ、魔力の塊を放ってみせた。
マスクの男はバリアでそれを軽減するが――次にはハヤトもまた追いつき、連撃。
「少し寝ててもらうぜ」
背と脇腹に痛烈な蹴撃を与えて体勢を崩させると……間断を作らず一刀。縦に振るった刃で意識を奪ってゆく。
光縛封が消える頃になると――
「今、助けます」
ロゼットが手を翳し、聖なる輝きを生み出した。
「癒しの神よ、彼の者の心身をあるべき姿に戻し給え!」
柔らかな光に包まれたクロックワードは……少しずつ、だが確実に、僅かな震えと動悸を収めていくように――呼吸を安定させる。
「僕、は……」
そして戦場にこだまする幾つもの剣戟の音と声に、初めて意識を向けたように。
「僕が、この争いを――」
言ってその手から剣を落としていた。
「周囲に怪しい影はなかったよ」
戦場から僅かに離れた荒野。
辺りを見て回ってきたララベルが、皆へ報告する。
バーネットは頷きながら、捕縛した男達を見下ろした。
「何か知ってるならこいつらって事だな」
言いながら……クロックワードにも視線を向ける。
クロックワードは暫しの間、砂地に座り込んでいた。初めはただ立ち尽くしていたが――それすら出来なくなってしまったように。
意識が健常に戻った証左でもあるのだろう。自身が何をやってきたのか、それを初めて正しく理解したのだ。
「僕は民を道具に……あまつさえ、その生命を……」
苛むような呟きと共に、その手はゆらりと剣へ伸びる。
それが判っていたから――ルチルはその手を掴み、ロープで縛った。
「悪いね」
「……」
クロックワードは一瞬だけ、抵抗しようとした。
けれどすぐに留まり、また俯く。
それを見守っていたナタリアは、ふと気づいて馬車の方を見る。
「……微かに異臭がするな」
「この前調べた時のものと同じかも」
ララベルも言って、馬車の中を覗いた。
すると、そこに植物由来のものと思しき粉末の入った袋がある。
ナタリアはそれを注意深く調べた。
「麻薬、か」
精製の度合いから見て、珍しいものや特別高価なものではないだろう。ゴールディならば見つけるのも難しくない程度のものだと思われた。
「これ自体は、緩い幻覚と判断力の低下を齎すだけだろうが――」
「言葉巧みに人を操る能力があるやつなら、これを利用するだけで洗脳出来る、って事かもな」
ハヤトはそう声を零す。
そういう人物が裏にいたという事だ。
レティシアはそっと、クロックワードに視線を合わせた。
行われた事実が消える訳ではないけれど――と。
「真に領民や兄君の事を想うのでしたら、どうか全てをお話しして……これからもそのお力を伯爵様の為にお使い下さい」
それが貴方に出来る、償いなのですから、と言い添えて。
クロックワードは静かに、けれど確かに頷いて。一言ずつ話し出す。
「……遊学中に、出会った人物がいた」
自身を“賢人”と名乗る、そんな男に話しかけられたのだという。
その男は学問を知り、洒落に通じていた。そして弁舌が巧みだっただけでなく、クロックワードの憂いも理解した。
「兄さんが当主である事に、不安を抱く人は多くいた。兄さんの能力以上に、その事が領地を不安定にさせる」
クロックワードは兄を信頼していた。だから現状が歯痒かった。
“賢人”はそこへメルべ家を救う道を示した。最後には皆が幸せになる、と。いつしか正気を失ったクロックワードは、その意のままに動いた。
マスクの男達を尋問していたルチルが目を向ける。
「こっちの証言と同じだね。裏にいるのは“賢人”らしい」
「ああ、こいつらはその差し金だ」
バーネットもエンパシーを発揮して、彼らの証言が嘘ではないと確認していた。
「……今、その人物はどこに?」
レティシアが減刑嘆願も含め、条件を提示して情報を求めると――彼らは迷っていたが最後には言った。
「メルベ家だ」
「……領主邸、ですね」
レティシアは呟く。
即ち、ヒゼンベルクを追い出した後の伯爵邸。本家とも言えるレッドラント中枢だった。
「クロックワードを後ろ盾に、そこで好き勝手やるつもりだったのかもな」
ハヤトの言葉に皆は見合う。
無論、させるつもりはない。その為にも――皆はクロックワード達を連れ、一時戦場を離脱してゆく。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2022年02月17日 17時02分49秒 公開
相談掲示板
ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 投降の呼びかけや説得は無駄だろうから、全力でぶつかっても問題ないと。 クロックワード卿に関しては、あらゆる点でPL情報になるだろうが。 薬物中毒ともなれば、サンプルの類があれば回収して分析してみたいところだ。 製法もそうだが、原材料からして由来が植物性か魔術関連かで話は変わってくる。 あとは感情の波を読み取る上でエンパシーもか。 捕縛ともなれば箱馬車に揺さぶりをかけるように仕掛けて、彼の側から武器を取らざるを得ないように仕向ける形か? 光縛封は捕縛なり箱馬車の進路妨害にと、有用かもしれない。 また、言葉のみによる説得は効かないとなればアンチ・サイに加えて強度の高い解呪や聖別が有用だろうな。 全解除:8のサルベーションオールが有効なのかもしれないが、コモンブラッドの必要性にかられてOrbを使ってしまったから、恥ずかしながら私は未収得だ。
ヒーラーの神官戦士ロゼット、参加したわ。よろしくね。 生命と物魔防を上げる耐久型で、前衛で壁役とかしてるわ。 箱馬車は、敵が御者をしていたなら戦闘になった時点でもう 御者は居ない、逃走する可能性は低いと思って良いのかしら。 授恵者の攻撃で車輪の破壊が可能なら、敵にしても私たちを 無力化しないと逃げられないと判断した、という感じ? 参加枠が埋まるとしても人数的には不利ね…。 正面からあたると敵後方から範囲の魔法・射撃が雨あられだし、 リスクがあっても分担して、敵剣士を迂回か突破してマスクや 弓士を叩かないと危ないかしら。 >サルベーションオール 習得はしているわ。とりあえず申告だけ。
ごきげんよう。 ヒーラーのレティシア・レインフィールと申します。 皆様、よろしくお願い致します。 状況的にはロゼット様が仰るような形でしょうから 馬車に関しては車輪の一部か馬と繋げている部分を破壊されれば 馬車での逃亡は防げそうでございますね。 >方針 最優先事項はクロックワード様を捕縛し 黒幕の方の存在を明らかにする事でございますね。 なるべく無傷での無力化が望まれておりますけれども ナタリア様が仰るように光縛封を利用しての捕縛や進路妨害等は有効かと存じます。 他の敵に関しては特に生死等の指定はございませんが 基本的には全員倒し、生きていらっしゃれば捕縛の方向となりますでしょうか? ただ、逃亡を図った者に関してはクロックワード様捕縛に支障が出ない範囲内で 阻止される程度の方がよろしいかもしれません。 >薬物中毒 サルベーションオールは私は未習得ですけれど 必要であれば習得は可能でございますね。 既に挙げられているアンチ・サイや解呪、聖別も有効かと存じます。 >戦闘 ロゼット様が仰る通り、人数的にはこちらが不利ですので 序盤はクロックワード様捕縛の為の布石を打ちつつ 確実に敵の人数を減らす事が重要となりますでしょうか? そうなりますと、エーテルバリア持ちのマスクの殿方よりも 剣士や弓士の方々を狙った方が良さそうなのですけれど 範囲攻撃持ちを完全に放置されるのも危険ですので牽制でエーテルバリアを消費させ 使い切ったであろうタイミングで集中攻撃を仕掛けられるのもよろしいかもしれません。
参加者が埋まったわね。 シーフ3名、ヒーラー3名、キャスター1名、シューター1名と。 >敵の生死 レティシアの言うように基本的には倒して、生きていれば捕縛かな。 彼らも側近なら、黒幕についての事情聴取には役立つと思うわ。 中毒状態のクロックワード様は、記憶がアテにあるか分からないし。 >薬物中毒 じゃあ「サルベーションオール」を私が持っていきましょうか。 現状これが最上級だし、射程もあるからクロックワード様が姿を 見せた時点で使用できれば、本人と無用な戦闘は避けられるかも。 >戦闘の方針 今回はウォーリア不在だから、私は壁役としてスキルを 近接戦重視にして、まず敵剣士の対処にあたりましょうか? ヒーラーは多いから回復の心配はあまりいらなさそうだし。 この辺はレティシア、ナタリアとの配置相談かな。
キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >方針 クロックワード・メルベの捕縛が最優先事項ではあるが、捕縛を妨害されないためにも、 最低限馬車周辺のカバーに回れない程度には、敵戦力を削っておいた方が良いな。 まぁ、逃走の恐れが無いのなら、周辺の敵を制圧してから捕縛に動いても良いとは思う。 考えすぎかもしれんが、最悪口封じのために黒幕側の敵がクロックワード・メルベを始末、 なんてことも有るかもしれないし。 >薬物中毒 バッドステータス状態とはあるから、スキルによって解除できる可能性もあるな。 とはいえ、その辺を使うかどうかは、ヒーラーの面子に任せる形になっちまうが。 >戦闘 可能なら敵の範囲攻撃持ちを最優先で撃破したいが、 マスクの男達はエーテルバリアを持っているか分、耐久力がちょっと高めになるから、 序盤のうちに確実に敵の頭数を減らすなら、剣士とか弓士を集中的に狙うのは有りだな。 範囲攻撃に関しては、ある程度分散する事で巻き込まれる人数は最小限に出来るだろうし。 とはいえ、それだとこっちの連携も阻害されるから、序盤に頭数を減らしたら、 最低限剣士には抑え役を付けて足止めし、マスクの男とか弓士に狙いを絞っても良いと思う。
>対クロックワード サルベーションオールに関しては、ロゼットの世話になる形だな……申し訳ない。 では改めて私からは医療薬学Lv5とアンチ・サイ、解呪3、光縛封にサイドヒール改を持ち込んでみよう。 炸光矢然りメテオライト、タイダルストリーム然り、敵は範囲攻撃には事欠かない事だ。 ただ相談の流れ次第では、迅速に敵を無力化したいというならサイドヒールをブルーフレアに置き換える事も考慮に入れる。 >戦闘 といっても、エーテルバリアに関しては確か代償25だったそうだから、生命力重視のアセンでも無い限り乱用は出来ないはず。 ましてや付近に回復スキルの使い手が居る訳でも無し。 これに関しては馬車の周囲にマスクの男が4人居るから、代わる代わるで防御を担う形になりそうか。 黒幕が口封じに現れる可能性も浮上すれば、スケープセイントも選択肢のうちか?
言い忘れたが、私は戦闘に関しては魔法攻撃主体。 祭刀や短杖、メテオライトや魔弾などで遠近両用という構成だ。
情報屋のルチルだ。 いよいよ大詰めって展開になってきたね、これは。 >方針 本命であるクロックワードを捕縛する手筈を整えつつ、数の有利を減らすという方針に異論はない。 範囲攻撃に巻き込めば車輪の破壊も狙えそうだね。 特に遠距離攻撃持ちは早めに潰して射程の有利を確保しておきたいね。 マスクの男たちは少々タフだから、こちらから狙いを付けるのはやや難易度が上がるが煙幕で妨害をかけてよさそうじゃないかと。 剣士と弓兵は馬車から距離を取った布陣、射程的にはキャスターの方が狭いはずだから…個人の動きとしては先ず弓兵の処理。 次いでマスクの男達の妨害・処理になるかね。 >クロックワード バッドステータスの解除で会話ができる方向に持ち込めればクロックワード自身の捕縛は容易いが、敵がどの程度忠実な部下かわからないしね。 洗脳が解ける兆候が見えたら、彼の犠牲を厭わない戦法に切り替えてくるかもしれない。 だから解呪するならすぐ傍に確保できる人員を置いてからがいいだろう。ヒーラーも多いし、スケープセイントの持ち込みも一考に値すると思う。
挨拶が遅くなってごめんね。 シーフのヴィナス、よろしく。 俺も方針に異論ないよ。 ルチルの懸念は俺も思った。 商人からの借り物の場合、クロックワードの監視役も兼ねてると思うし、いざという時は殺害に動くか、自死するよう仕向けるのではないかと思う。 俺はBS付与による援護や捕縛に動くよ。 >スケープセイント 俺も一考の価値あると思う。
なら私が、スケープセイントも用意しておきましょうか? ヒーラーの中で最大生命は私が高めだし、前に出る分、 クロックワード様との距離(射程)も詰めやすいでしょう。 仮行動予定 (主に剣士の抑え役、クロックワード様のBS解除・口封じ妨害) 特性1:サルベーションオール 特性2:スケープセイント 他:エーテルブロー、魔矢、輝甲(など検討中) >ハウリング・オブ・ブルーフレア 仮に使うなら、誰が、いつ、は決めておいた方が良いと思うわ。 シーフとか行動順が早いから開始早々に散開しちゃいそうだし。 >ルチル そうね。シューターには先に弓士を削って欲しいかな。 >バーネット ルチルが先ず弓士、バーネットが先ず剣士、としておく? もちろん頭数を減らしたら、マスク男に切り替えるとして。
サルベーションオールのみならずスケープセイントまで……ロゼット様、感謝致します。 もし他にご用意をされたい特性スキルがございましたら 可能な範囲内で私も対応を致しますので、ご遠慮なく仰って頂ければと存じます。 ただ、現時点で確実に習得出来ますのはサルベーションオールだけなのですけれども……。 (予定日通りに依頼が返却されたらスケープセイントも可能に) >索敵 そういえば、クロックワード様を中心にした戦力は南ソームダリア近辺の争いを避け 東か西の荒野に出てくるものと予想されておりますけれど どちらの荒野に出撃されるのか、私達の方で索敵を行う必要がある可能性がございますね。 ただヒゼンベルク様のご意思により敵の出兵前に攻め込むことは予定されておりませんし 味方兵力も、敵が出兵してから動き始めるとの事ですので それを踏まえて考える必要がございますけれど……。 恐らく偵察なら攻め込む事にはならないかと存じますが 他に思い付くものですと、超視覚での確認となりますでしょうか。 >クロックワード様 確かに、正気に戻られましたら口封じをされる可能性がございますね。 そして既に挙げられております通り、確実にお守りするにはスケープセイントが有効かと。
>ハウリング・オブ・ブルーフレア 人数差の不利を少しでも補えるよう、僭越ながら私の方でご用意をさせて頂きますね。 現在の皆様の装備でしたらINI順は以下のようになりますけれど ロゼット様の仰るように作戦上、タイミングのご相談は必須でございますね。 ヴィナス、ハヤト、ララベル>レティシア>バーネット、ナタリア>ルチル>ロゼット(敬称略) >撃破優先度 各自の射程や攻撃力等によって優先度は変わりますけれど 基本的にはあと少しで倒せそうな方がいらっしゃれば最優先で狙ってもよろしいかと。 あと、ナタリア様の仰るようにエーテルバリアには代償がある点と 加えてラウンド毎に一回までの使用制限がございますので 積極的に範囲攻撃に巻き込む事で使用を誘導し 使用された同ラウンド内での集中攻撃で撃破を狙うのもよろしいかもしれません。 >個人 まだ相談や調整の段階ではございますが 特性はハウリング・オブ・ブルーフレアはほぼ確定で 残り一つはロゼット様と調整されない場合はヒーリングオーラを検討しております。 ロゼット様やナタリア様が現時点で宣言された行動を考慮致しますと 私は基本的には回復を中心とした動きになりますかと存じます。
>レティシア 気遣いありがとう。特に無理はしていないから大丈夫よ。 実際、習得したは良いけど使う機会なくて困ってたとこ(汗) 私は回復に手が割けないから、引き受けてくれると助かるわ。 ブルーフレアはありがたく。効果を受けてから動くわね。 定番だと戦闘最初の1ラウンド目かな。 >南ソームダリア近辺の争いを避け、東か西の荒野に出てくる …とあるから兵同士の衝突が起きるまでは、 クロックワード一行の位置を掴むのはちょっと難しいかな、と。 衝突に巻き込まれないように、味方兵士の後ろから荒野を見張って 衝突を避けていく一行を見つけたら、抑えに行く感じかなって。 「超視覚」か「天眼」とかは見張りに活きるかな? あとは、あらかじめ左右に張っておいて見つけたら合図を出すとか。 戦闘メインで良いのかなと思ってたから、それぐらいの想像ね。
反対もなさそうだから最初は弓兵狙いと行こう。 スケープセイントやブルーフレアの用意もありがたい……ここはどうにも他を頼るしかないからね。 >索敵 荒野だからペットによる偵察のメリットは薄そうだな…。 捜波があるし、超視覚の準備はできるからこちらで対応しようと思うよ。
>方針 個人個人の行動で多少違いはあると思うが、ざっくりとした方針はこんな感じか? ・範囲攻撃対策で、可能な限り味方同士の密集を避ける ・序盤は剣士と弓士を優先して攻撃し敵の頭数を減らす ・頭数を減らしたら最低限の抑えを残して馬車へと戦力を集中 ・マスクの男を排除した後、クロックワードを確保する >個人行動 それじゃあ、俺は序盤に剣士を削った後、頃合いをみてマスクの男の方、 或いは対応しきれていない弓士を狙う様にしよう。 スキルは足止め用のグラビティフィールドとスネアージャベリン、 範囲攻撃用にメテオライト2を用意するのと、念のための捕縛用に光縛呪、 あとは黒幕について尋問する時用に、エンパシーを持っていくつもりだ。
おーっす! 遅くなっちまってすまねぇ! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 諸々の方針は理解したぜ! レティシアのブルーフレアを掛けてもらったら突撃かますことにすんぜ!! 効率を考えたら弓士>マスクな感じで攻撃することになるだろーからな。 まず弓士を潰してから臨機応変に動くイメージでいんぜ!
(PL新型コロナウィルス感染してしまい、倒れてます。 一言の仮のまま出発する可能性濃厚です。 申し訳ないですが、よろしくお願いします)
ヴィナスはお大事に。まずは身体最優先で、静養してね。 駄目元で、ヴィナスには手薄な部分の加勢をって入れておくわ。 >バーネット 方針ありがとう。大丈夫と思うわ。
ヴィナスの後ろの方は流行り病にかかってしまったか……それは災難だ。 私からも、お大事に。 ロゼットも、何から何まで感謝を。 レインフィールがブルーフレアを使うというなら私はサイドヒール改を持って行こう。 エーテルバリアはラウンドごとに1回まで……となれば咄嗟にそれを使わざるを得ないくらいには火力、あるいはハッタリが求められそうな感が。 欠点を補うためのローテーションともなれば、全員そろって使わざるを得ない風にするというのは良さそうだ。 なのでこちらからもメテオライト3を用意する。 あとはその後の攻勢において、ダメもとになるが今は狙わない別の奴にスリップ関連を付与出来れば体力が削れる分、更に後の攻勢において手番が楽になるかもしれん。 総じて私がやる事といえば敵の範囲攻撃への立て直しにサイドヒール込みでの回復、クロックワード卿の捕縛に光縛封、彼への解呪やアンチ・サイを試み、だな。 あれこれ手を尽くしても手ごたえなしなら、サルベーションオールが頼みの綱だ。
バーネット様、方針の纏めをありがとう存じます。 私の方からも特に問題点は見受けられませんので問題は無いかと。 (ヴィナス様の件は了承致しました。お大事になさって下さいませ) >索敵 ルチル様、ご対応感謝致します。 ロゼット様の仰るような動き方になる可能性もございますが 念の為、備えはあった方がよろしいでしょうから……。 >個人 私は回復を中心にしつつ、隙を見て魔矢で援護を致しますね。 そしてバーネット様がエンパシーをご用意されるようですので 私は残留思念感応での情報収集を行わせて頂きます。
(ヴィナスの背後の件は了承した。お大事に、だ) バーネットは方針のまとめ感謝する。助かるよ。 情報収集系の汎用スキルは他が用意してくれているから、超視覚と天眼で索敵に振らせてもらおう。 後は保険に、マスクの男達へ手が回らない時や口封じの防止に煙幕での攪乱も備えておく。