背徳の村は紅く
コースケ
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シナリオID:1752
オープニング
リザードマンの少年ランドにとって、バーンズ村が世界の全てだった。
修行に励む大人達。
村を守る村長と戦士。
共に育てられた兄弟達。
雨風を凌ぐ住居。
征竜への祈りを捧げる祭壇。
そして卵を孵し子供の世話をする女達。
そこは竜に到らんとする者が集まるリザードマンの集落だった。
他に価値観の基準は無く、いずれお前も修行者になると教えられたランドは何の疑問もなく過酷な仕事に励み、恵まれた体格を見込まれ戦士の技を叩き込まれた。
ある時、エアという娘が連れて来られた。
「ランドは外を見たいと思わない?」
エアはランドによく声をかけてきたが、ランドは(何でそんなこと聞くんだろう?)と取り合わなかった。ある日それを見た戦士がエアを連れて行った。
暫くして見かけたエアはランドから視線をそらし去ろうとし、足をもつれさせ倒れた。顔には痣があり、血の臭いもしたから折檻を受けたのだろう。
(邪魔をするからそうなるんだ)
なぜか胸がちくりとした。
●少女の目に映るもの
奴隷の少女エアにとって、ここは異様な集落だった。
働かない大人達。
村長と横暴な戦士。
拐われた卵とリザードマンの子供。
今にも倒れそうなあばら家。
生贄の血が付く祭壇。
そして暴力で脅され働かされる自分たち。
スラムで暮らしていたエアにとって、ゴロツキなどの犯罪者は馴染みのある存在だったが、この村のリザードマンは根本から違っていた。
修行者は瞑想に耽るばかりで他に何もしない。子作りさえしないため、他所から拐った卵を孵し子を育て、労働力とするのだ。
子供も適性がないと判断されれば奴隷として売られ、時には征竜へ生け贄に捧げられる。しかも、彼等はその遺骸を食うのだ。食料が不足した時など、適性のある子供でも征竜に捧げられた事もあった。
何より恐ろしいのは、彼等がそれらの行為を竜になるための試練と信じきっていることだ。
卵の窃盗も同士を救出する行為。生け贄の子供は徳を得てより竜に近づいた状態で転生し、奴隷として過酷な生を送ることも魂を磨く行為とされ、全てにおいて疑問を抱くことは許されない。
焦点の合っていない目を見るたび、少女の背に冷たいものが走る。
「ランドは外を見たいと思わない?」
リザードマンの少年に声をかけたのは、彼が年が近かったのもあるが、他と違う目をしていたからだった。
スラムの犯罪者の様にギラギラした目や、集落のリザードマンのように狂信に染まった目でなく、熱を帯びぬ冷めた目。
もしかしたら自分を連れ出してくれるかもしれない。そんな淡い期待はすぐに握り潰された。ランドに声をかけていたところを見られたエアは、戦士達に暴行を受けたのだ。
戦士たちだけが、エアがよく知る欲望と暴力に酔う者の目をしていた。
「これで逃げる気なんて無くなるだろ?」
笑いながら砕かれた足はまともな治療も受けられず、エアは走ることも困難になった。
●来訪者
何でも屋のオッターは、ディズルの集落からリザードマンの卵が消えるという事件の手がかりを求めて大湿地帯の集落を回っていた。
「それじゃあ、ここは無事なんすね」
「ああ。卵は盗まれておらぬ」
村長に案内を受け、孵化場を訪れたオッターはここも無駄足かとため息を付く。
「……あ。失礼すよね。卵が無事なのに」
「構わぬよ。だが、瞑想の邪魔にならぬよう、早々に立ち去るが良い」
「(あちゃー。気を悪くさせたかな)そうさせて貰います。気を付けて下さい。ラスリャマスの残党が何か企んでるかもしれないんで」
「心配には及ばぬよ。ここは征竜様の加護がある故」
村長と話すオッターを、エアは物陰から見つめていた。
(折角のチャンスなのに……!)
助けを求めても戦士に捕まってあの男ごと殺されるだろう。エアは助けを求める文を書き、木の皮に包んだ饅頭をランドに渡す。
「お願い、あの男にこれを渡してきて」
「何でさ?」
「愛想よくしないとここがおかしいって思われるでしょ?」
そういうものかと頷いたランドが饅頭を持っていく。
「何してる?」
「エアがこれ持っていけって。愛想よくしないと怪しまれるから」
「饅頭か。変なもん入ってねぇだろうな」
戦士は饅頭をぱくりと口に入れる。
「何だよ。いつもの不味ぃヤツじゃねえか」
ペッと吐き出した戦士はもうひとつの饅頭を割き、中に何も入ってないことを確認するとランドを解放する。
(危なかった……)
村を後にするオッターを見送る村長に、黒鱗のリザードマンが声をかける。
「よろしかったのですか? 今からでも始末して来ますが」
「不要だ。行方不明となればそこに何かあると宣言するようなものだ。それに、エンパシーで探ったが奴は我々の事を疑ってもおらぬよ。精々ラスリャマスなどという脱落者の影を嗅ぎ回っておれば良い」
「……承知」
「……何だこれ?」
村を出たオッターは、饅頭を包んでいた木の皮の異変に気付く。そこには拙い字で『たまごどろぼぅ いけにえ たすけて』と刻まれていた。
●大酋長
「何という事だ……!」
報告を受け、ギシュム氏族の族長、アシムベート・グリオウは身体を震わせていた。
「ラスリャマスの残党の仕業かと思っておれば、同胞がこの様な事をしておったとは……!!」
「お止めください!」
飛び出していこうとするアシムベートを側近たちが止め、怒気を漲らせたアシムベートが吠える。
「では同胞の過ちで命を奪われる子を捨て置けというのかっ!!?」
「そうは言っておりません。まずは内情を調べねば子や卵の無事も保証出来ず、罪人を捕り逃しましょう!!」
「……ムゥ」
側近の言葉に止められたアシムベートは、大きく息を吸うと腰を落とす。
「それで、どれ程かかる?」
「3……いや2週間ほどかかりましょう」
「その間に子が贄に捧げられるやも知れんぞ?」
「されど、確実に事を成さねばより多くの犠牲が出ましょう」
難しい顔をしているアシムベート達に、住居の隅で様子を見ていたオッターが声をかける。
「ギルドに依頼を出すのはどうすかね? 冒険者ならもっと早く動けると思うんすけど」
●燃える村
「どうしてこんなことに……!」
集落に点在する住居から火が上がっている。
エアがあの男に助けを求めたことを奴隷仲間に話したところ、戦士に密告されてしまったのだ。それを聞いた戦士達は村を見限る事を決め、証拠隠滅の為に火を放ったのだ。
「早く片付けてずらかろうぜ!」
「金目のものを忘れるなよ!」
「エア、てめぇこんなとこに居やがったのか!」
足の不自由なエアはすぐに見つかり、戦士長の前に引き摺り出される。
「大それた事してくれやがって。お陰で竜への道が遠退いちまったじゃねぇか」
「……ってる」
「ん?」
「あんた達は間違ってる! 征竜ってのは世界を守ってるんでしょ? そんな征竜があんた達みたいな勝手な奴らに力を貸すわけ無いじゃない!」
「……言ってくれるじゃねぇか。おい、ランド。お前この女と仲良かったな。殺せ。そうすりゃ征竜様もこの罰当たりな女と仲良くしてたお前の罪を赦してくれるだろうぜ」
話を振られたランドがビクリと身体を震わせる。だが、再び戦士長に促されてゆっくりと剣を振り上げる。
「嘘、お願い、ランド。やめて……!」
剣が振り下ろされ、血飛沫が散った。
解説
マスターより
リプレイ
バーンズ村の調査に来た冒険者達が見たものは、集落中から上がる煙と炎だった。
「火事です!! 動ける方はすぐ村の外へ避難して下さい!!」
緑鱗のリザードマン、ハリス・アル・ターミルがサウンドボマーにより拡大した声で避難を呼びかけ、同じくリザードマンのフェイサル・セイフは、ビッグオウムで降下するときに見えた少女が倒れる村の中央へ急ごうとする。
そこに二人組のリザードマンの男が現れる。それぞれ剣と槍で武装しており、ハリス達を警戒している。
「何だお前ら?」
「私はターミルのハリスと申します。こちらは友人のフェイサル。遠目に煙を見て駆け付けました。消火に手を貸しますので、溜池などありませんか?」
それを聞いた男達は視線を合わせ、武器を構える。
「チッ、忙しいときに現れやがって」
「消される訳にはいかねぇんだよ!」
叫びながら槍を突き出し、剣で斬りかかって来るが、ハリスは征竜奉楯でそれを捌き、押し返して距離を取る。
「向かってくるということは、やはり後ろ暗いことをしていたのですか……」
「……実の所腹の探り合いは苦手だったのだが――どうやら、わかりやすい方針に切り替えたか」
呻くハリスの隣にフェイサルが立ち、ダマスカス鋼の祭刀を抜いて二人組と対峙する。
「そこまで分かってるなら尚更生かしておけねぇな」
「てめぇらも火にくべてやるよ!」
「フェイサル殿、一人頼めますかな」
「では教育してやるとしよう。力を振りかざすという事がどういう事か――」
再び向かってくる二人だが、最初の一合でハリスとの実力差に気付けていない時点で結果は明らかだった。一人は槍に変形させた開墾の竜爪に貫かれ、もう一人は祭刀で袈裟懸けに斬られ絶命する。
「……お前達のそれは戦いでなく暴力だ。 ――次の生では戦いを通じ魂を磨く道が開けんことを」
フェイサルは短い祈りを捧げると、村の中央を目指し走り出した。
●はみ出し者
(本音は鏖に来たんだけどなー)
一人別行動をしていたサイラスは、住居の中に倒れる村長の死体を見て胸中で独りごちる。
関係を断ったとはいえ、かってこの村で育ったサイラスにとって、ここはそういうところなのだ。
だが既に集落は燃えており、村長もこの有様で肩透かしを食らった気分だった。
サイラスは柱を斬り倒し、崩れる住居に埋もれる死体に視線も向けず背を向ける。
「…………」
一度だけ火の回る畑に目をやるが、すぐに興味を失って立ち去る。
やがて住居全体に火が回り、村長の死体も炎に呑まれていった。
●説得
「あのくそ親父……」
村が炎上する光景にバンビの原風景がフラッシュバックする。ゴブリン美少女化計画村なる場所で生育された彼女は、父親を名乗る人物が放った火でそこを失ったのだ。
「ええい、嫌なこと思い出させやがって!」
苛立ちを口にしながらも、バンビは素早く行動を開始する。
「証拠隠滅の為に自分達の村を焼いたのか……」
一方、リザードマンの情報屋、ルチル・プルメリア・グレイハーツは被った頭蓋骨の下で口を歪ませる。相棒の栗鼠に集落を走らせて状況を把握したのだ。
「同胞がその様な非道を働くとは信じたくありませんけれど……。事実であるなら早く卵や子供達を保護しませんと」
リザードマンのキャスター、スィーリーンのオレンジの瞳にも燃える村が映っていた。
「急ごう。下手人がどこに居るか分からない以上、卵の確保に努めるべきだ」
ルチルの言葉にスィーリーンが複雑な表情で頷く。この状況に数名の冒険者では出来ることも限られる。全てを救うことが出来ない以上、優先順位を決めなければならない状況だった。
「貴様ら何者だ!?」
そこへ現れたリザードマンの男が声を上げる。後ろには五人の戦士見習いを連れており。全員が武器を持っていた。戦士の集団と運悪く鉢合わせしたらしい。
「まあいい。目撃者は生かしちゃおけねえからな。ガキども、こいつらは征竜様の敵だ。殺れ!」
「おっと、そんなスピードじゃ俺の相手にはならんぜ?」
男は見習い達をけしかけて来るが、見習い達が動くより早くバンビは呪文を完成させていた。雷光が召喚され、巻き込まれた見習い達の足を止める。
「子供達にまで歪んだ思想を植え付け手駒として使うなんて、リザードマンとしての誇りは無いのですか!」
「くそっ、こいつら授恵者か!? おい、そいつらを止めておけ。死んでも通すな!」
スィーリーンが怒りの声を上げるが、旗色が悪いと見た戦士は見習いを盾に逃走を図る。
「待ちなさい!」
「本当に腐った連中だね」
ルチルは冷たい声で呟くとアーバレストの引鉄を引く。放たれた太矢により左胸を射抜かれた戦士が倒れる。
そしてリーダーを倒され、動揺の走る見習い達へ話しかけた。
「お前達は騙されているよ。そも、竜への修業は悪戯に命を脅かす事ではない。自他共に恥じぬ行いこそが魂を磨き上げるのさ」
ルチルの演説が子供達の内面を揺さぶる。手応えありと見たルチルは演説を重ねる。
「祭壇の周りに小さなリザードマンの頭蓋が並べられているのを見た。ああして命を捨てる行いをおかしい、死にたくないと思うならまだ生きていられる。ここから離れるんだ」
スィーリーンも、使い捨てられる子供へ自らの想いを伝える。
「貴方達は、貴方達を守りもせず逃げる大人が正しいと思いますか? 貴方達はもっと自分を大切にしていいんです。命を投げ出すのはもっと広い世界を見てからでも遅くありません、私達と一緒にここを出ませんか?」
カラン、と音を立てて一人が武器を落とす。それに続いて一人、また一人と武器を捨てルチルとスィーリーンに質問を投げてくる。
「征竜さまに命を捧げなくていいの?」
「私、外に出てもいい?」
これなら大丈夫だと判断したルチルとスィーリーンは武器を下ろす。
一方、脅威が無くなったと見たバンビは走り出していた。リザードマンの集団に居辛かったというのもあるが、スィーリーン達は子供の対応で暫くは手を取られるだろう事から、一人でも先行するべきと判断したからだ。
「俺は先に卵を押さえるぜ!」
●救える命、救えぬ命
ハリスとフェイサルは、村中央の手前でサイラスと合流する。
「サイラス殿、やはりこの村は悪しき村でした。油断なさらぬよう」
「そちらはどうだった?」
ハリスに続くフェイサルの問いに、サイラスはいつもの飄々とした様子で答える。
「問題ないよ。戦士は一人殺ったし、他の生存者もいないから」
「何と! その戦士とやらが殺害したのですか!? 同胞を手にかけるとは!!」
鱗を逆立て怒るハリスに、サイラスは黙って村の中央へ走る。
「あそこに!」
フェイサルが指す先、血溜まりの中に少女が倒れていた。そして、シーフらしい軽装のリザードマンが戦士見習いの子供3人を引き連れてこちらへ向かってくる。
子供の一人が持つ剣には、未だ乾かない血が付いていた。
「おい、征竜様の為にコイツらを殺せ。ランド、奴隷一人殺ったくらいで呆けてんじゃねぇぞ!」
ランドと呼ばれた血に濡れる剣を持つ少年がびくりと震えるが、それでもその少年はハリス達に向かってくる。
「子供に手を汚させるとは、凡そ人の所業でなし。ならば獣として処すまで!」
怒れるハリスがチャージングで間合いを詰め、ランドを盾で弾き飛ばし立ち塞がる。
「何やってんだランドォ! もっと死ぬ気で向かっていけ!」
シーフがハリスに連続で切りつけながら叫び、ランドもチャージングでハリスに迫ると剣を燃え上がるように輝かせ振り抜く!
「素質は十分と見ますが、未だ研鑽が足りません!」
ランドの渾身の一撃をハリスは余裕を持って受け止める。続く見習い二人の攻撃もあえて受け、効果が無いことを示してランド達を一喝する。
「私は未だ修行中の身なれど、道を誤った者の刃に倒れる様な鍛え方はしておりません! 貴殿達はまだ若い。まだ引き返せる筈です。征竜様もそれを良しとするでしょう」
その声に見習い達に動揺が走る。だが、そこへ踏み込んで来たサイラスが刺築を放つ。分身による攻撃は、シーフとランドを含む見習い達を貫き、4人のリザードマンは血飛沫を上げて倒れる。
「サイラス殿!?」
「どういうつもりだ!?」
ハリスとフェイサルが非難の目を向けるが、当のサイラスは平然としている。
「こいつらも加害者だもん」
「しかし、洗脳されている子供まで……」
「それより奴隷の娘はいいの? 手遅れかもしれないけど」
サイラスの指摘に、フェイサルは少女へと駆け寄る。微かにだが脈があったため急いでヒールを施す。
「何と酷いことを……」
少女の身体にはあちこちに虐待を受けた痕があり、特に左足は歪に曲がっていた。栄養状態も悪く、身体は痩せ髪もぼさぼさだった。
傷はそこまで深くはないが、動脈が傷ついているため出血が酷い。
「(傷が浅いのは使い手が未熟だったのか、或いは……)ハリス、サイラス。私は手が放せぬ。しばし任せて良いか?」
頷くハリスを見てフェイサルは少女をマントでくるみ、そっと抱え上げて安全な場所へ運ぶ。
「そいつも殺した方が良くね?」
二人の見習いは絶命していたが、授恵者のシーフとランドはまだ息があった。サイラスはランドの方へ向かうが、少女を診ていたフェイサルが止める。
「倒れた者の命まで取る必要はない。後は大酋長に任せれば良かろう」
「けど、ここで育ったなら生きてると同じ事するよ?」
「……この傷には太刀筋に迷いがある。この娘を斬ったのがその子供なら、本意では無かったのだろう。それなら更正の見込みはある」
「あっそ。じゃあ、こっちは見込みないから構わないよね」
そう言ってサイラスはシーフにエクセキューションを振り下ろした。処刑剣を元にした剣に断ち切られ、首がゴロリと転がる。
「サイラス!」
フェイサルが叫ぶが、サイラスは悪びれる様子もない。慌てて二人の友人であるハリスが間に入る。
「二人とも落ち着いてください。サイラス殿、何か理由があるのではありませんか?」
「……俺もここで育てられたんだよ。だからここの連中の性根はよく知ってる。生かしとくと録な事にならないよ」
「何と! ……しかし、サイラス殿は非道なことはしていないでしょう?」
「俺は捻くれてるし縁切ったからね。こんなアホな奴らのやることなんて絶対真似しないよ」
サイラスの言葉に驚く二人。そこへ、ルチルのラトが走り込んできて必死に何かを訴えて来る。
「これは……何かあったようです。ここは合流すべきでしょう」
「まあいいや。他を逃がすのも癪だし行こう」
サイラスとハリスはラトの後を追って走り出し、フェイサルは少女を診るために残る。
「二人とも早まるなよ!」
●逃走
「思ったより敵も迅速だった訳だ」
孵化場へ到着したバンビと、ラトの目を通してルチルが見たものは卵を持ち出す戦士長達三人のリザードマンの姿だった。
バンビは魔法での殲滅しようとしたが、ラトを通してルチルがそれを止める。3対1では返り討ちや逃げられる可能性が高い。ハリス達とも合流する必要があるだろう。
「ぐぬぬ……」
物陰から様子を伺いながらバンビが唸る。仲間はまだ到着しない。
今回依頼を受けたメンバーは殆どが重装備で足が遅く、最も足が早いフェイサルは少女の治療で間に合いそうもない。
先手を取ることも出来ず相手に好きにさせることに苛つくバンビだが、まだ集合には時間がかかりそうだった。
●導き
「気が付いたか」
ランドが目を開くと、見知らぬリザードマンの男が顔を覗き込んでいた。
「頼みがある。あの娘を村の外に連れていってやってくれ」
男の示す先にエアがマントに包まれ寝かされていた。
「でも、エアは僕が……」
「やはり君か。望んで斬ったのか?」
男の言葉にランドは頭を振る。
「戦士長にやれって言われたから……」
「よいか。ここで育った君には難しいかもしれぬが、ものの善し悪しを考え、自身がそれを善しと思うことを行うのだ。たとえ周りが違うと言ってもな。他人に言われるままに行動しても、己の魂は磨かれぬぞ」
そう言うとかって不名誉を行い部族を追われた男は立ち上がる。
「何処へ行くの?」
「善しと思うことを行いに」
●追跡
「へっ、悔しそうな顔してやがる」
「卑怯者とか言ってるが誰が相手するかよ」
湿地に浮かぶ小舟の上でウォーリアが笑い、テイマーが船を大鼠に引かせながら相槌を打つ。
「……様子がおかしい」
戦士長の言葉に岸を見ると、冒険者達が水上を地面のように走って向かって来ている。
「こんな事もあろうかと保険を用意してたのさ!」
バンビは当然のように先手を取ると、雷光を召喚し大鼠を足止めし魔弾を放つ。
それはウォーリアに止められるが、スィーリーンが光球でウォーリアとテイマーを攻撃し、その隙にハリスとサイラスがチャージングと焔翼で船に乗り込む。
「戦士長はどこだ?」
サイラスがいつの間にか消えていた戦士長の行方を問うが、返ってきたのは水中に潜んでいた戦士長からの暗殺撃だった。だが、不意討ちを警戒していたサイラスは看破も合わせギリギリでそれを見切る。
「誰かと思えば生意気だったガキか。見違えたな。いい髪色になったじゃねぇか」
「ここ出たお陰であんたの攻撃を見切れる位に成長したからね。ていうか、こんな村で燻ってるからいつまで経っても竜になれないんじゃない?」
「囀ずるなガキ」
挑発しながらサイラスは殺界で移動を封じ、信仰を否定された戦士長が不可視のエーテルを纏い姿を消す。
「姿を現しなさい!」
戦士長のいた空間へスィーリーンがフリーズボルトを放つが手応えは無い。範囲魔法でなぎ払えば当たるかもしれないが、卵を巻き込む恐れがあった。
(不味いかもなー)
先程の不意討ちを見切ったサイラスだが、実際は幸運によるところが大きく、再度の暗殺撃を避けれるかは微妙だった。
ハリスとバンビが倒したウォーリアとテイマーに殺界で止めを刺し、再び殺界を展開し刺し違える覚悟でエクセキューションを構える。
そこへ、飛来した太矢が空間に突き刺さり、エーテルが戦士長を蝕んで動きを鈍らせた!
「間一髪だったね」
矢を放ったルチルが骸骨の下で息を吐く。ハイディングは見破れなかったが、捜波を連発して戦士長の位置を掴み、そこへ全力の矢を放ったのだ。
位置が分かれば戦士長一人では冒険者達の相手ではなく、集中攻撃を受け倒れることになる。
「最後まで癪に触るガキめ――」
戦士長が最後に見たのは、振り下ろされる処刑の刃だった。
●悪徳の終わり
卵は無事に回収され、生き残った子供達はギシュムの集落で保護された。
捕らえられた大人達には処罰が下されるだろう。
そして保護された奴隷の少女は一命を取りとめた。
冒険者達はアシムベート・グリオウ直々に報酬を渡され、大いに感謝されたという。
――こうしてバーンズ村は廃村となった。
マスターコメント
ショートシナリオR難しい 報酬:多い6 / 4〜8人
2022年01月04日 11時58分35秒 公開
相談掲示板
No.1
サイラスだ、よろしくなー すでに村に火がついてる件について(救助依頼だから時間制限増えたような物では?) とりま卵確保するにも何個あるか分からん様だから運搬方法も考え無いと行けないかねぇ?卵確保狙いと分かれば子供含めて人質…物質?に使われそうだし 戦闘に関しては火事場泥棒と勘違いされてありそうだなぁと。後最初見習いの子達けしかけてきそう。 まあやるなら逃げるの大好き戦士長の不意打ちとシューターの鼠はどうにかしないと厄介そうだね。 (リクエストシナリオに参加ありがとうございます。 とりあえず村を焼くことだけ考えて頼みましたので、子供達とかの生死に俺は感心ございません。というか依頼で救助指定されて無い人に関しては他の皆様が助けようという意見でなければ寧ろ積極的に仕留めた方がいいかな?と考えております。)
キャスターのスィーリーンと申します。 よろしくお願いします。 同胞がその様な非道を働くとは信じたくありませんけれど…… 事実であるなら早く卵や子供達を保護しませんと。 ビッグオウムで訪れたという事は、荷馬車等の準備は出来なさそうですね。 集落に元々ある馬車か荷車が使えればいいのですが。 その、卵を盗む際に使っていたかも知れないと思いまして。 子供達をけしかけられた際は、 アーケインテンペスト改などで動きを鈍らせ 捕縛し易くしようと思っています。 大人の方々は……説得出来れば良いのですけれど、 無理なら倒すのも致し方ない、でしょうか。
新たな生命の未来を摘み、我欲のために利用する…許し難き蛮行です。 ディズルに生きる者として、絶対に防がねばなりますまい。全力を以て排しましょう。 >職業構成(敬称略) ウォーリア:3(サイラス、ハリス) シューター:1(ルチル) ヒーラー:1(フェイサル) キャスター:2(スィーリーン、バンビ) 機動力のあるシーフの方がいないのはやや痛手ですが、バランスは良いですね。 敵の火力はそう高くはない筈なので、前衛はサイラス殿と私で十二分に務まるでしょう。 ルチル殿の偵察能力やスィーリーン殿、バンビ殿の魔法は応用性が高く取れる戦術も広い。 フェイサル殿の光縛封があれば敵を縛ることも、卵を守ることも出来るかと。 もちろん回復も心強いですが、1人に任せるのはやや不安かもしれませんね。 キャスターの方でヒールが使えるようならば補助としてあると助かるかもしれません。 >救出手段 確かに馬車の持ち込みは困難ですね。 スィーリーン殿の言うように集落に存在するものを鹵獲するのが賢明でしょうが…。 無ければ卵はバックパックや担架にロープで固定か緩衝材を詰めて運ぶ事になるでしょうか。 マジカルポケットに入れれば比較的安全ではありそうですね。 ただその場合、術者が気絶しないよう細心の注意を払う必要がありますが…。 >救出対象 最優先は卵の確保です。これだけは確実にせねばなりません。 こちらは移動力と隠密性に長けたシーフを欠いていますから、これが最も困難かと。 授恵者のランドは多少手荒にしても死ぬことはないでしょう。 ただ、他の子供達はスィーリーン殿の言うように丁寧に扱うべきでしょうね。
連投失礼を。 >敵 彼奴らは逃がしてはならない。全員ここで、直ぐにでも殺すべきと思っております。 躊躇なくこのような暴虐を働く輩を逃せば、また何処かで同じような犠牲が出るでしょう。 ラスリャマスの残党と無関係であると知れた以上、情報のために生かす意味もない。 最悪でも戦士長なる者は絶対に仕留めねばなりますまい。 奴が窃盗の主犯です。残された者では警備を強化した集落からの強奪は困難のはず。 熟練のシーフのようですが、足さえ殺すことができれば我々の敵ではないでしょう。 しかし追い詰められれば子供や卵を盾に取るくらいは平気でするはずです。 そうなる前にスキルで釘付けにするか、救出対象の安全を確保することが肝要ですね。
フェイサル・セイフ、剣を少々使うがヒーラーだ。今回も宜しくお願いする。 ……さて、依頼の段階ではあくまでも調査という話であったが。どうやら隠し通すのは止めたようだな。 であれば確かに、容赦も慈悲も不要だ――ましてや「戦士」を名乗り、剣を手に取り向かって来るのなら。 >戦闘 村の周囲の地形を確認したが、特別な手段を用意しない限り移動に適した道は我々の到着地点より伸びる一本のみなのだな。 逃走時に火を放つとは野盗の如き手口だが、連中が何か「金目の物」を運び出そうとするのなら、 自然とこちらに対して突破を図って来るのではないか、と思える。 ……或いはこの時に子供達や末端の兵を使い潰して、敵の首領や"荷物持ち"が他からの脱出を試みるのかもしれんな。 >救出 向かって来る子供達に関しては、可能であれば助けたい所だが何かしら手は必要だな。 難しいようであれば、残念だが卵をこそ優先し、脅威として排除する選択も覚悟せねばならないだろう。 ただ……今回の依頼の発端になったという内通者の少女――いや、情報提供者と言うべきか。 彼女(エア)の事は多少の無理をしてでも優先的に保護すべきではないかと思う。 道義的な意味でもそうだが、このような状況では内部の事情を説明できる人間は殊更に貴重な筈だ。
No.6
戦士長に関しては奇襲と逃走特化だし、姿晒し次第ウォーリアの何方かが殺界で捕まえるのも手だろうなって。出来ればそれで戦士とかも捕まえられると尚良。 「ラウンド最後に射程内に存在しているすべての敵を対象に、近接物理通常攻撃を行うことができる。」だから攻撃しないも選べるだろうし。 後は説得とかに話術や扇動あると場所把握とかし易いかもね。戦士狩と救助で分けるとかするなら救助側に欲しい感じ。逆に戦士狩る方は鼠と戦士長対策で看破とかあると良さげ?
情報屋のルチルだ。 クラスはシューター。よろしく。 さて、既に火の手も上がっているようだし救出は時間との勝負か。特に情報提供者の少女は生存していたとしても急いで処置しなければ手遅れの可能性が大だね。 一先ず相手の動きを見て先回りする意味でも栗鼠を偵察に送るつもりだ。 相手からすると卵を持ち逃げできなくても最悪主要メンバーが逃げ延びさえすれば他所で同じ事ができる。特に、最も見失えば厄介な戦士長の姿は捉えておきたい。 それに現状村から出る手段は陸路の一本道だけのように見えるが、長年居着いていた者しか知りえない抜け道の存在も否めないしね。 >戦闘 生け捕りにしても大した情報が出る見込みはなし、負傷した味方を助けようとするなど殊勝な相手にも見えない。であれば子供以外は殺していいな。 見習い戦士の子供達はできれば生還させたいが、敵の性格上肉壁や捨て駒として運用する事も容易に想像できるね。 彼らの生存に気をかけ過ぎると肝心の目標を取りこぼす危険もある。まあ、近接武器で峰打ち程度に留めて後は手出しされないように大人達をきっちり抑えておくが妥当かね。 アーケインや光縛封で足止めをすれば、敵の思い通りに機能させず子供達の対処もできそうでいいと思うよ。 戦士との戦闘と卵や戦意なき者の救出で人手を別けるべきという話だろうか? それなら賛成さね。遠距離攻撃手段がメインだし、アタイはそっちに回って構わないよ。
>質問 さて、案内役に聞きたい事があるのだが。 Q.ビッグオウムから降りられる位置は村の出入口でもある一本道で固定か? 村内へ直接降下するのは不可能か?
案内役のオッターだ。 急な荒事になってすまないけど、アシムベート酋長の意向なんで何とかして卵と子供は保護してやってくれ。 Q.ビッグオウムから降りられる位置は村の出入口でもある一本道で固定か? 村内へ直接降下するのは不可能か? A.一本道で固定だな。 本来は偵察のために村から離れた所に降りる予定だったのを、村から火が上がっているのを見て出来るだけ近くに下ろして貰う事にしたんだ。 ギルドとゴールディとの約束でビッグオウムと御者を危険に晒すことが出来ないんで、これ以上近くへ下ろすことは不可能だし、低空飛行して村の中へ飛び降りるような事も出来ないと考えてくれ。
んー。一本道で固定っていうのは正確じゃ無かったかもな。すまねぇ。 望めば入り口付近より遠い場所に下ろして貰えるし、安全な距離が取れるなら村の周囲に下ろして貰う事も出来るぜ。その場合は湿地に飛び降りる事になるだろうけど。
No.11
分けるのはそんな感じかねー(戦闘と保護) んで戦闘側行きたいなぁと。シーフ鎧マジカルポケットに武器収納で保護側も有りかなーとは思ったが、まあ折角殺せるなら行きたいし、なんか無事改造終わった戦士の一断と多少の会話で下手なアレよりヘイト集められると思うしねー
オッターは返答ありがとう。 ウォーターウォークを使えば湿地方向からの侵入も手段として入ってくるか。 卵の回収と救助の方に回ると言ったがマジカルポケットが取得できない。 バックパックに全て収まり切れるか不明瞭でもあるし、一人はマジカルポケット持ちが回収に回ってくれれば助かるね。
では、場違い勘半端ない俺がマジカルポケットで運搬要員になりましょう。
出発が迫って来たな。 では私は、ひとまず向かって来る敵の対処にあたるサイラスらの補助に回ろう。 非授恵者の兵であれば、殺害を避けるよう意識しなければ私でもどうとでもできる筈だし…… 味方への回復は密に行うので、一秒でも早く片付けて捜索に加わるとしよう。 ……子供の兵に関しては本当に「余裕があれば、可能な範囲で」となってしまうだろうがな。 或いは戦士を名乗る連中に、命が惜しくば下がらせろとでも迫ってみるか? 後は……そうだな、先に述べた情報提供者の少女もそうだが。 誰か助けたい者を見つけた時は、生きている内に連れて来てくれれば手は尽くそう。 このような状況下では、火事の現場から遠ざけるだけでも一苦労だろうがな。
>班分け 現在の表明状況を見るに、このような形でしょうか。 ・戦闘班 サイラス(攻撃)、ハリス(防御)、フェイサル(回復) ・保護班 スィーリーン(魔法)、バンビ(運搬)、ルチル(偵察) では、一旦軽く流れを纏めさせていただきます。 >依頼の流れ 降下地点ですが、相談が十分ではないと思われますので一先ずデフォルト地点を想定致します。 それを踏まえてお読み頂ければ。 1:降下前に村の全体図を超視覚を持つフェイサル殿が確認・全員に周知 2:降下後は戦闘班と保護班に分散 3:戦闘班はハリスのサウンドボマーで全域に存在を周知、囮となって敵を足止め 4:保護班はその隙に卵を捜索・保護 5:卵の安全を確保でき次第合流、残存戦力を倒す 6:敵戦力全滅ないし逃走後に救助活動 追加事項があればできるだけ確認致しますのでご指摘願います。 >対戦士長 油断ならぬ相手ですが、サイラス殿の技に思う所あれば引きずり出せるかもしれませんね。 閃光塗弾などがあれば逃走や隠密状態を阻止できるかもしれません。私は携行していきます。
ハリス様は纏めを有難うございます。 私は保護の方で、先に言いましたとおりBS付与で動きを鈍らせるのが主になると思います。 出来ればランド様や見習い戦士の方々への説得も行えたら、と。 一応ヒールも用意しましたのでいざという時は回復も行えます。
班分けは問題ないが、保護と避難誘導を並行して行うつもりだったな。 緊急性のある事態だし、戦闘可能な敵勢力を全て排除した後に救助活動をする余裕は少ないんじゃないかと。 戦士長や通報をした少女の安否……集落の中でも速やかに対処が必要な案件だね、この辺りはアタイの栗鼠が見つけたらすぐに報告するつもりだ。 その場に居なければ栗鼠のジェスチャーなりで伝えるさ。