【魂禍】強襲! 蜘蛛熊魔獣

紀藤トキ

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シナリオID:1740

オープニング

●
 後の歴史書に“辺獄戦役”と記されるシグモル火山の異変は、その日初めて記録の上に登場した。
 しかし、その前兆は既に表れた後……。

●
「聞いての通り、シグモル火山の地下、“辺獄”と呼ばれる地にクリーパーが大量に現れ、魔獣と争っている。
 このクリーパーは、殺した相手の魂を喰らい、自分の力に変えてしまう厄介な力を持つ。クリーパーが魔獣と争うのは、その魂を我が物とする為だ。放置すれば今にも地下を平らげ、地上をも貪り尽くす程の怪物となるだろう。
 元来コイツは、私が封じていた存在なのだが――」

 さる冬の日、幾つかの仕事が冒険者ギルドに依頼された事を、歴史的な事件として当地のギルド員が伝えている。
 その理由は、依頼主が神様だったからだ。

「倒さず封印した理由は単純だ。奴は私でも倒し切れなかった。だから封じる他なかったのだ。ところで、肝心の依頼内容だが」
 少女の姿をした火神(ボルガニスク)は口元に弧を描き、事も無げにこう続けた。
「このクリーパーを、倒して貰う。最終的にはな。だが、方々の妙な動きも無視出来まい。従って、まずはこれら全てに対処し、戦果を挙げて来い。……期待しているぞ?」

●
 ボルガニスクの依頼が出されてから程なく。シグモル火山の集落間を固まって移動していた集団が、問題の魔獣の群れの1つに行きあったのは随分運が悪いケースだった。

「ひゃあ。神様、お助けぇ……!」

 荷馬車の陰で丸くなる行商は、奪還成った帝国と王国の間でのんびり交易していれば良かったのになぜこんなところに来てしまったのかと後悔し、護衛についた冒険者4人のリーダーは自分達の運の悪さにため息をつく。普段はヴィントでダンジョンに潜っている少年少女達だったのだが、たまには目先が変わってよいかと火山への護衛を引き受けたのがこの始末だ。

「足音、凄く多い! 暴れると危ないから、馬を逃がして!」

 耳を澄ませたシーフの声に、悲鳴を上げる行商人。リーダーのウォーリアが放馬したと同時に、前方の丘の向こうから蜘蛛足の魔獣が姿を現した。土地柄か荒っぽい事に慣れている者も多いらしく、行商人以外は自分の身は自分で守るつもりのようだ。シグモルの武僧らしき姿は無言のまま鉄棒を姿勢良く構え、旅の老人が杖を持ち直すと、付き添いらしきフード姿の少女も剣を抜く。商人よりは余程に肝が太いようだ。

「ビビって動けない奴が少ないのは助かる、けど」
「あれはアラクネ……? いや、でも」

 連れの様子を見ていたリーダーの横で、ヒーラーの少年が首を傾げる。アラクネであれば上についているのは人の上半身の筈だが、この魔獣に生えているのは熊。蜘蛛と熊の混ざったキメラのような物だろうか。驚いていると似たような姿が2つ、3つと続いたので、合成された実験生物だとかではなくちゃんとした生き物ではあるのだろう。横幅も縦も巨大な魔獣が6体に対すれば腰も引ける。

「一匹ならともかく多すぎる。今から逃げれる奴だけでも逃がすか? でも、相手の足の方が早い……」
「いや、命拾いできたようだぞ、若いの」

 リーダーが手立てを迷った瞬間、老人の落ち着いた声が耳朶を打った。

「後方から、誰か人が来ていますね。……おそらくは冒険者でしょう」

 これまで無言だった武僧の声は、思ったよりも若く性別は読めない。それよりも言葉の内容の方が大事ではあった。

解説

シグモル付近で魔獣討伐の依頼を受けた皆様は、移動中に襲われている一団を見つけ加勢に入った! ……というような感じの導入になります。 少年少女の交戦開始時点で、皆様とこの集団の距離は300mほど離れています。 NPCはそれぞれ強さや行動条件などが決まっており、怪我人や死人の数が成功度に影響します。 2人死ぬか4人重体くらいで普通成功の想定です。魔獣討伐ができないと失敗になりますのでご注意を。 ●地形 周囲は特に何もない道と荒野で多少の起伏があります、火山性の大地なので概ね岩場で、植物は草が生えている程度です。 大まかにいって、蜘蛛熊+冒険者達 20m程離れて行商人 50m離れて皆様 という初期配置です。 行商人は荷馬車の近くで震えています。冒険者PTと武僧、老人と娘はやや冒険者が前にいますが10m程度の範囲に固まっています。 ●敵 蜘蛛熊魔獣 ×6 でかいのでヘクス定員を2枠分占有します。なんと下半身に蜘蛛の頭部もついており、熊の上半身と合わせて2回攻撃します。 おしりから出る筈の蜘蛛の糸は(上半身が邪魔なせいか)口から吐くという変化を遂げました。 攻撃手段は熊クローの薙ぎ払い(中)、熊トゥースの噛みつき(強)と、高命中の毒蜘蛛糸(ダメージ毒と行動阻害)、蜘蛛足の突き(弱)。 移動手段は走る以外に、移動や攻撃に困るとサブアクションとメインアクションを消費してジャンプ移動します。 他の行動ができませんが落下体当たりは攻撃扱いです。移動速度は彼らが走って逃げた場合に全員は逃げきれない程度です。 ●味方 出稼ぎパーティ4人組は「うっかり探索者ミアちゃんと無くした剣」に登場した面々です。 シーフハフビのソプラノちゃん以外はヒューマンで、リーダー戦士のアルト君、キャスターのテナちゃん、ヒーラーのバズ君。 戦力的には駆け出しを脱して今は20Lv程に成長しました。声は届くので頼んで納得すれば言う事は聞いてくれます。 一緒にいる寡黙な性別不明武僧、旅の老人と付き添い少女の戦力は不明です。 行商人の戦闘力はゴミです。馬は賢く逃げており、戦闘終了後に勝手に戻ってくるつもりで遠くで様子を見ています。

マスターより

紀藤です。 コンシューマゲームによくあるNPCを護るミッションって面倒くさいですよね。 というわけで、戦闘メインの依頼なのですが、他にもあるかもしれません。 難易度的に想像していただける程度にはNPCが死にます。 年末の私用で少し執筆予定を伸ばしておりますが、特に体調に問題がなければそこまで掛からない予定です。 皆様のクレバーなプレイングをお待ちしております。

リプレイ

 冒険者ギルドの手配した馬車で移動中の冒険者達が遠目に様子を伺ったときには、旅の一行と魔獣は接触寸前だった。距離はおよそ300m。御者が急がせる間に、冒険者達は情報を収集する。

「冒険者っぽい人達が4人、それ以外が4人。――蜘蛛熊魔獣が6体か」

 俯瞰した視野からエルゼリオ・レイノーラが状況を概括した。一行の多くは視覚や聴覚を強めていたり、エルゼリオ同様に天眼や戦術眼で事態を把握しつつある。

「後ろの1人は戦闘力の無い、行商人か何かのようだな」
「旅慣れていないのか、取り乱しているようですね」

 セリオス・オーガストが、守るべき急所を見出すと、セロンガード・シュタインドルフが懸念を口にした。中年手前の男は頭を抱えて蹲ってしまっており、事態に対処できていないのは明らかだ。

(おそらく、いつもと違う事をしようとしたのでしょう。そういう時には極端な結果が待っている物です。良い結果にできるよう、我々が動かねばなりませんね)

 その行商人への距離50m地点。冒険者達が馬車を飛び出す寸前にアルマ・ヴァレンタインが支援を掛け、エーテルの青い輝きが一同を覆う。

「ボクもすぐに追いかけるよ。先を急いで!」

 スキル行使の分、到達が遅れると踏んだ彼女の声に、同じヒーラーのエルゼリオが頷き返す。今の所けが人は出ていないが、初手で癒しの手を伸ばせるのは彼一人だ。

「おっと、コイツはピンチってやつか。急いだほうが良さそうだが……、間に合うかな?」
「ひゃああ、お助けっ!」

 アーテミシアの強化した視力なら、行商人の表情まで見える。移動用のスキルを二重に重ね、出しうる全力で突き進む彼女はその横を風のように通り過ぎ、一気に前線の4人組の場所まで到達した。キオルティスとララベル・サン・ディーベルの2人も疾風の如き足で行商人の場所まで駆け抜ける。

「あの4人、知ってる子達かも! 護りながら戦ってるけど苦戦してるみたい、急がなくちゃ!」
「セリオスの合図で煙幕が張られる。視界が塞がっても慌てないように伝えないとね。……そこの方、助けに来たよ!」

 そのまま前線へ走り込むララベルと別れ、キオルティスは商人へ声を掛ける。少年少女は既に戦闘の魔獣と交戦中だが、魔獣は巨体故に全頭が戦いに加わっている訳ではない。濃煙炸矢を番えて弓を引き絞ったセリオスは、前線迄聞こえるように声を張り上げた。

「煙幕で敵の視界を塞ぐ。そちらで利用してくれ」
「では、私も」

 息を合わせてセロンガードも煙幕を張る。冒険者4人と交戦中の2体、その脇を左右に分かれて抜けようとしていた敵の眼の前を煙が閉ざした。全力で走っていたエルゼリオが武僧と老人、娘のいる位置に辿り着く。

(3人とも、素人とは思えないけれど……)

 受けに回っているのが武僧と老人。娘は自然体で立っている。「行け」と老人の声がしたと同時に、少女が煙幕の中へと切り込んだ。

「む?」

 想定外だった様子の武僧だが、自分の立ち位置は変えない。

(チャージングを用意しなかった分、出遅れたか。だが、この距離なら)

 少し手前で足を止めただわは、前方を睨む。煙幕の先の相手は見えない。中央で戦う4人にララベルが割って入り、5人で食い止めている相手の片方は既に少年が挑発しているようだ。

●
 一足先に前線へ辿り着いていたのは、アーテミシアとララベルの両名だ。

「さぁ蜘蛛熊、お前達の相手は僕だ!」
「貴方は、あの時の!」

 先輩冒険者の素性に声で気付いたらしいヒーラー(バズ)がホッと息をつきつつ、傷を受けたウォーリア(アルト)へ回復を飛ばす。2対4で互角か多少不利な状況、ララベルの登場で逆に相手を押し返せるチャンスと見た。本来ならヒットアンドアウェイで間合いを外して戦うスタイルのララベルは、攻撃後にあえて足を止めて1体の注意を引き付ける。攻撃寄りで回避が高い訳ではないララベルでは身をかわすにも限度があろうが、稼ぐのはそう長い時間でなくとも良いと踏んだ。

「――そこの冒険者さん達! 後方の行商人さんの避難誘導をお願い…!!」
「こいつ以外にあと4匹いるんだ。数を減らさないと」

 エルゼリオがそう声を掛けたが、既に目の前の相手に挑発を入れている事もあり少年少女も簡単にスイッチはできないようだ。ならばとアーテミシアがエーテルを叩き付ける。

「これでこっちに向いただろ。ベルの側のもう1匹は……」
「俺の受け持ちだな」

 だわが同様にエーテルをぶつけ、強制的に注意を自分へ向けた。今のうちに、と促された少年少女は僅かに逡巡を見せるも、旧知で自分達より格上のララベルがいる事で納得したのだろう。わかった、と頷いて踵を返す。これでこの場は2対3。

「毒にやられてるんだね。ボクが癒しておくよ」

 盾を構えて備えるエルゼリオが、すれ違いざまに顔色の悪いウォーリア(アルト)を解呪する。驚いたように礼を言い、4人は馬車まで後退した。エルゼリオがBS解除を担当したので、アルマはヒールでヒーラー(バズ)が追いつかなかった傷を癒していく。

「ありがとうございます」
「大丈夫だよ。しっかり頑張ったね!」

 礼を言うヒーラー(バズ)に、アルマは笑顔で頷いた。前衛2名がギリギリで抑えている状況では、ヒーラー1人ではどうしても限りがあるのだ。

「商人さんの事はお願いできるかな? よし、それじゃあ……」

 行商人を本来の護衛へ委ね、キオルティスが前へ視線を向ける。馬車の近くには先に煙幕矢を撃ったセリオス、セロンガードとアルマが駆けつけており、突破されたとしても人数的に十分対処できるはずだ。その時、アルマがハッとした表情で警告の声を上げた。

「何か蹴る音がした! 煙の向こうから、飛んでくるよ!」

 視界を塞がれた魔獣は狙いを定めて飛んだわけでもなく、煙幕を飛び越えた先には誰もいない。体当たりの目標がおらず、彼らとしては貴重な手番が空振りになる。他方、相手が飛び上がる事も想定していた冒険者達にとっては絶好の機会だった。セリオスが双つ矢を放ち、2体の敵の蜘蛛の胴へ撃ち込む。セロンガードは別の1体へエーテルをまとわせた矢を放ち、加重により相手の身軽さを奪った。

「これは、運が良かったですね」

 急に増えた体重に着地がうまくいかず、バランスを崩した様子に口角をあげる。起き上がって体制を立て直すまでに、別の敵を叩いても良いし、そのまま畳みかけて押し切るのも良い。どう動くかの選択肢が自分の側にあるというのは良い状態だ。

「最後の1匹、片側の足が無いよ。やっぱり、そうすると動きにくくなるんだね」

 同じ事を狙っていたアルマがまず気づく。もたつく感じで飛び出してきた4匹目の後ろ脚が断たれていた。その分飛び上がった高度は低く、それに合わせるようにキオルティスが地を蹴る。相手の背後へ跳躍し、落下の勢いをつけて刺し貫こうという寸法だ。

(とはいえ、俺はこいつほど重くはないんだよね)

 力は質量×加速度故、キオルティスが体重を乗せても巨体の魔獣のような破壊力は出ない。その分剣先の一点へ重みを集中し、背に乗りつけると驚いたように熊の顔が吠えた。首を回して背後を見ようとしたところで、煙幕から駆け出してきた小柄な影が剣を振るう。キオルティスに気を取られていた熊の頭部があっさりと飛んだ。

「おっと、これはレディの戦いをお邪魔したかな?」
「……別に」

 答えたのは年若い少女の声。熊の首から赤い血が噴き出て、蜘蛛が足を折る。どうやら熊の方が本体らしいと、目ざとくアルマが周囲に告げた。

「どうやら、私達の出番は無さそうですね、ご老人」
「そのようだな」

 ここまで様子を見ていた武僧がそう言い、老人も頷く。聞いていたエルゼリオは、それならば4人の冒険者と一緒に行商人の護衛に回って欲しいと言い、2人は頷いて同意した。

「戻れ。もうこれ以上はお前の修行にもなるまい」

 老人が声を掛けると、少女はキオルティスを一瞥し「助太刀、感謝」と述べてから他へ合流した。前線では、冒険者4人組からアーテミシアが引き継いだ敵を、背後に回ったララベルと挟み撃ちにしていた。

「ベル、隙は作ったぜ!」
「ありがと、アーシア。喰らえ、烈風三連突き!」

 既に手負いだった魔獣は為す術もなく攻撃を受け、反撃の機会もなく斃れる。

「……っ。重い。中々やるな」

 もう1体を引き付けただわは、熊の爪の振り下ろしを剣の腹でいなしつつ、敵の力をそう評した。自分の力量を持っても受け流しきれず、だが耐えきれぬ程ではない。敵を倒したララベルとアーテミシアに「これは俺一人で大丈夫だろう。他の敵を頼んだ」と請け負うと、首肯した2人は煙幕を抜けた敵へ目を向けた。

「オレも1匹、抑えとくぜ。ベルは数を減らしてくれ」
「わかった!」

 セリオスの矢が突き立った敵の片方をアーテミシアが挑発し、もう一方へララベルが突っかかる。向かってきた2人へ、蜘蛛の口がかっと開いた。液体状の糸が噴射されネバネバとまとわりついてくる。

「くそ。これくらい必要経費だっての!」
「お尻の糸に注意って思ってたら、口から出てる!!」

 悪態をつきつつ、 シールドガントレットで受けたアーテミシア。ララベルはギリギリで見切って回避した。倒れた魔獣に深々と刺さった細剣を引き抜いたキオルティスは、セロンガードの矢で崩れた体制を立て直しつつあるもう1体へ向かう。これ以上前に出ては前線が混雑すると見て、エルゼリオはその場を動かず魔矢を叩き込んだ。

「弱っている敵から叩くぞ」

 それが狩りの心得だとばかりに、セリオスが鋭い一射を送り込む。確かに戦術的に見ても、もう一体減らして敵が3体になれば万全だと判断し、セロンガードも同じ相手へと矢を向けた。4人がかりの攻撃を受けた、魔獣が絶命する。だわとアーテミシアは反撃を受けつつも危なげない。糸に気を取られたララベルは爪の攻撃を受けて、よろめいた。軽装のシーフには一撃が重い。そこへ、アルマのヒールが届いて一息つく。

「もう大丈夫……! 念のため、もう少し離れようか」
「し、しかし馬車の積み荷が」
「念のためだから!」

 生命が大丈夫そうとみると欲が出た行商人の位置を、アルマが提案して少し下げる。それぞれ正対した仲間が抑えてはいるが、万一ジャンプして来ても一足では届かないだろう。もしそうなっても待機している少年少女や備えているセロンガードとセリオスが食い止め切れるはずだ。

「抑えは俺が変わろう。ララベルさんは攻撃に回ってもらった方が良さそうだからね」
「ありがとう! よし、ここからは本気で行くから!」

 回避に優れたキオルティスが相手の正面を受け持ち、ララベルが遊撃に戻った。

「次は……」
「戦士の御二方が引き付けていない、1体を狙いましょう」

 セリオスにセロンガードが声を掛ける。護衛と言う任務を主に考えれば、フリーな敵から叩くのが本道だ。スイッチしたララベルがそのまま側面を切り抜け足を断ち、吠えた熊に矢が刺さる。苦し紛れに糸を吐こうとした蜘蛛の口をキオルティスの細剣が貫いた。これで、4体目。残る2体は通常なら逃げ出す戦況なれど、シーザーロアの効果がある限りその選択肢が取れない筈だが。

「む、執着が解けた」
「チッ、こっちもだ」

 折り悪く、2体とも同時に正気に戻る。さほど長くない間に倒された仲間を見て、危険を察した蜘蛛足が跳躍の為に力をためた。しかし、冒険者達は焦らない。実に6名が戦術的な思考を凝らし、味方の持てる攻撃手段から考えれば同じ結論に辿り着く。

「1体へ集中攻撃だな」
「残る1体が逃げても、私が重力矢で足止めを」

 だわがそう言葉に発し、セロンガードが備えを口にした。ララベルとキオルティスも、逃げる蜘蛛へ背後から追いつく足を温存している。この局面から、魔獣が逃げ切れる可能性は万に一つもなかった。

●
「誰も死ななくてよかったじゃねぇか。お前ら、よく粘ったな」

 誰か亡くなっていた時には、遺品や埋葬の心配もしていたアーテミシアが豪快に笑う。守り切れてよかった、とだわも静かに安どの吐息を漏らしていた。なお、離れていた馬は、ギルドから冒険者達の移動手段として供与されていた馬車の御者が気を利かせて回収している。助かったことを実感し、今頃になって腰が抜けたらしい行商人の為に、血なまぐさい場所から少し離れて休憩をとることになった。

「せっかくの休憩だけど、さすがに演奏するわけにはいかないね」

 魔獣もまだいるかもしれないし、とキオルティスが残念そうに言うと、ララベルと談笑していた4人組も残念そうに頷く。どうやら彼らは程々に楽の音が好きなようだった。それなら、と宿では詩人の歌を聞くこともあるララベルも一緒に、音楽談議にしばし花を咲かせる。

「皆様お強い。ボルガニスク様の為に参じましたが、私もまだまだ修行が足りないですね」
「貴方達は何者なんですか…?」

 エルゼリオが問うと、武僧は見た目通りにボルガニスクの信者であるという。腕は磨いているが授恵者ではないので、戦う際にはいつも命がけだとのこと。本人的に死への恐れも無いようなので、前に出さずに戦いを終えたのは正解だったかもしれない。中性的ながら男性である辺り、日常のお悩みでもエルゼリオと話が合いそうな人だった。老人と少女は旅の武芸者だと言い、孫娘の修行中だと告げる。流れで冒険者4人組も、ヴィントのダンジョン探索者だと自己紹介した。

「ほう、ヴィントに迷宮とな? 知らぬ間にそのような物ができていたのか。お前の修行にそこを使うのも悪くはないな」

 目深にかぶったフードの奥で、小さく頷いたような気配があった。少し離れた場所では、見事なコンビネーションを見せていたセリオスとセロンガードは大勢の会話の輪に加わらず、周囲を警戒している。

「……熱い」
「苦しそうですが、火山はこんなものではないそうですよ」

 セリオスの方は単なる人見知りだ。セロンガードは辛そうな顔で離れていく彼の様子についいつもの癖で声を掛け、熱いのが苦手なだけと聞いてホッとしたようだった。

(何か、苦しい事があるならと思いましたが……)

 さすがに火山の熱相手では、励ましの言葉にも力が無い。そこへ魔獣の死骸を見ていたアルマが、残念そうに首を振って戻ってくる。

「毒があるし、食べられそうにないね」
「食べる、ですか?」

 行商人が信じられない言葉を聞いたように目を見開くも、アルマは何もおかしなことを言っていないというように微笑んだ。世の中には食べれるのに食べられていない物がたくさんあるはずだ、と言われるとそんな気もするが、しかしあれは食べたくないな、と少年少女達も首を振る。それが合図になったように、休憩時間は終わりを告げた。報告の必要ができた冒険者達は、行商人一行と一緒に街まで戻る事にする。

「それは助かります……。いや、死ぬかと思いました」

 思い出したように身震いし、慣れぬ事はするものじゃないと行商人はぼやいた。

マスターコメント

早期に辿り着いた人が多かった事と、敵が突破して弱い人を攻撃する手段を潰していた事の双方が功を奏し、誰も死ぬどころか大きな怪我もなく切り抜ける事が出来ました。 また、初手煙幕で目の前を塞いだのは、守るべき対象が不用意に突っ込むのを止める意味でも良い手でした。 という訳で、今回の死にやすい担当は授恵者でない行商人と武僧の2名です。 4人組と老人と少女は授恵者なので、万が一があっても即死はしませんでしたので、実質はその2名を護れるかどうか。行商人は皆さん気に掛けてくれていたので死にそうもなく、武僧はワンチャンあるかな? とも思いましたが判定してみたらノーチャンスでしたね……。 MVPはその煙幕を発した方と、相手の脚を確実に止める手段を有し使用タイミングも適切であった方へ。 この度はご参加ありがとうございました。
ショートシナリオ

ショートシナリオ難しい 報酬:標準8 / 6〜8人

2022年01月04日 12時29分34秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. だわ

    ウォーリア、だわと呼んでもらえれば。よろしく頼む。 ……ん。討伐依頼だが、人命保護が最優先だな。 まずは自衛手段の無さそうな行商人の保護を急いだ方が良いように思う。万一 狩りやすい獲物と認識されれば一撃で殺されかねない。 他の奴らは短時間の自衛程度はできるといいが、怪しそうなところから加勢に入るのが良いだろうか。……老人と少女あたり、自衛能力が気になるところだな。 こちらは初動としてチャージングを使って急行するつもりだが、それだけでは間に合わないだろうから遠距離からの牽制等があればありがたい。辿り着き次第シーザーロアは入れるつもりだ。 ……交戦にあたっては毒蜘蛛糸が厄介だろうな。封じるとまではいかずとも、何か抑える手立ては無いものか。火とか、何か……。

  2. セリオス・オーガスト

    ・・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む まずは保護優先でいいと思う。犠牲者が出ると成功判定も下がるようだしな その場合は前衛が先行して注意を引き付け、シーザーロアとかで行商人たちのほうに行かないようにしながら後衛がとりあえず保護して避難させる。 避難させるまで前衛が時間を稼いで安全が確保されたら討伐という感じだろうか?

  3. アーテミシア

    ウォリアーのアーテミシアだ。宜しくな。 まあ足の早いやつがダッシュで駆けつけつつ、冒険者連中に時間稼ぎをやらせるしかねえな。 ウォリアーはチャージングとシーザーロアはほぼ必須…って二人だけか。オレの移動力は2しかねえからちょいと時間がかかりそうだな…

  4. だわ

    こちらは重鎧装備だと移動3、軽鎧装備なら移動4になる。 ウォーリアとしての役割を考えると少し悩むが、今回は移動4装備でひとまず先行して時間稼ぎに加わろうかと考えているところだ。 ……守りを下げて機動性を取るようなものだから正直なところ長く持ち堪えられはしないだろうが、移動1の差で目の前で死なれたくはないのが実情だ。 アーテミシアが到着したら分担を頼みたい。

  5. セロンガード・シュタインドルフ

    シューターのセロンガードです。 今回はよろしくお願い致します。 状況的には、護衛対象を守りながら防御体勢を構築し、そこから相手の手数を徐々に減らす流れになりそうですか。 ジャンプ移動が少々厄介ですね。行動を阻害するのも骨が折れそうです。 煙幕を張った後に後退してもらい、交代する形で前線の維持でしょうか。ぴょんぴょん飛ばれないように、グラヴィティボルトを持って行きます。

  6. アルマ・ヴァレンタイン

    ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 急行したいけど頭を越される危険もあって悩ましー… ひとまず開幕にぶるーふれあの支援はかけたいかなと もう一枠を敵が物理型っぽいのでNPC保護に光縛封か 最後の保険にダメージを肩代わりをするすけーぷせいんとで考えてるよ

  7. キオルティス

    シーフのキオルティス。キオでもルティスでもお気軽に。 今回は宜しくね。 移動については俺は問題無しな感じかな。 大抵は移動5をキープ。無理でも移動4。 その上で疾風足かホライゾナルジャンプで2倍に出来ると思う。 …ので、NPCと共闘して時間稼ぎなり、一般人の保護なり何なり 割と色んな形で使えるかなー…と。 敵のジャンプ移動は確かに厄介だけど、敵死角から撃ち落とせれば こっちも多少の落下ダメージは期待出来るかもしれないね。 敵の落下体当たりが有効なら。 巨体ってことはそれだけ落下時に重力が掛かってる…ってコトだしね。 とは言え、敵が着地姿勢に入るまでに落下させられれば…の話だけど。

  8. ララベル・サン・ディーベル

    僕はシーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、よろしくね! 僕も移動力5あるし、疾風足やホライゾナルジャンプで移動力もあげられるから、全力で冒険者達の所に駆け付けて、加勢に入ろうと思うよ。 >敵の落下体当たり 落下地点に先の尖ったものとか仕掛けられたら、逆にダメージ与えられそうかもね。

  9. だわ

    こちらで予め脚を狙ってダメージを蓄積させておけば、万一跳ばれた時に撃ち落とすにしても上手く着地される可能性を減らせるだろうか。 ……ところで、どこを狙えば討伐できるんだろうな。熊の心臓か、蜘蛛の頭か……? まあ、戦術眼を持ち込む予定だから手応えで分かってくることを期待しよう。

  10. アーテミシア

    とりあえず全力チャージで近づいてシーザーロアの範囲に入り次第かます感じか。 ジャンプはぶっちゃけ回避できなくなるから的だな。着地後すぐには動けないだろうし、ある意味攻撃チャンスかも。 何人かは回り込みながら移動して、冒険者連中と合流させるって手もある。向こうも少しづつ引きながら迂回してこっちに合流させられれば死ぬ確率は減るか。

  11. エルゼリオ・レイノーラ

    ヒーラーのエルゼリオ・レイノーラです。どうぞヨロシクね! >移動 ボクは移動力4だから、サブ+メインで移動力12。 1ラウンドで蜘蛛熊+冒険者達の10m後方までは到達出来るかな? >保護 周囲は特に何もない道と荒野で避難可能な安全圏は無さそうだし… ボク等で蜘蛛熊魔獣×6を抑えてる間に、行商人やその他の保護対象には後退して距離を取ってもらう感じになるのかな? いっその事、冒険者PTに保護対象の避難誘導をお願いしちゃっても良いかも。 >戦闘 特性:サイドヒール改 アクション:ヒール2/解呪2 現状では上記のスキルを持って行く予定。 その他は検討中~。

  12. だわ

    移動力4(移動系スキル無し)の場合、4ラウンド目でメインアクションを移動に使えばサブアクションを残して射程6mに入れそうだ。射程6はヒールやシーザーロアの間合いだな。 アーテミシアの案を聞いて思ったが、冒険者達に後退してもらってこちらとの距離を詰めればその分早く合流できるというのはあるな。 後退速度が早すぎると魔獣の跳躍移動を誘発しそうな気もするのが難点か。 全員到着したら行商人達を逃がす隙を作りたいところだが、こちらで6体の相手をするのが厳しければ魔獣の数が減るまで冒険者達に加勢してもらうというのもありかもしれない。 戦ってもらうということは死傷のリスクもあるわけだが……見ての通りの強敵だろうから討伐失敗の懸念も残る。

  13. アルマ・ヴァレンタイン

    脚の片側だけ潰していけたらバランスが取れなくなって 飛んだり追いかけたりしにくくー…なったらいいんだけどねー ひとまず行動予定は前の通りでスケープセイントで行商人さんとかカバー あとは効くか分からないけど閃光塗弾持ち込んでみたり 怪我の度合いが軽くなりますようにで医療・薬学セットでプレに入るねー

  14. だわ

    明日出発だな。 俺個人の動きとしては、前述の通りまっすぐ急行した後シーザーロアを入れ、全員合流するまでまずはとにかく時間を稼ぐつもりだ。どれだけ通用するかは分からないが、魔獣の脚を狙ってみよう。 全員合流したら、そうだな。エルゼリオの提案通り、冒険者PTを逃がすついでに避難ついでに行商人達の誘導を頼めたらいい。こちらにはおそらく余裕はないだろうからな……。 そういった方針で準備しておく。

  15. アーテミシア

    とりあえずオレはさっき行った感じで突っ込んでいくかねえ。あとNPCに一番近い奴から相手する感じだな。 ただシーザーロア積みでヒールが積めなくなったから継戦力はちと落ちるか。 余裕があれば誰か一人でも撤退する連中に着いていった方がいいかもな。余裕があれば。

  16. だわ

    撤退する奴らに1人ついていくとすれば、シューターかシーフの誰かに頼むことになるだろうか。 恐らくウォーリアとヒーラーは前線を抑えるために離れられないと思う。

  17. セリオス・オーガスト

    そういえばこちらと向こうの距離は10へクスだから一応前衛が間に入るまで間に合わない可能性も考えて先に濃煙作弾でも撃っておくべきか。視界を塞いで時間を稼げれば御の字だし

  18. エルゼリオ・レイノーラ

    >行動 ボクは1ラウンド目は移動に費やして、蜘蛛熊+冒険者達の10m後方(行商人の10m手前)で盾を構えて防御を固める予定だよ。 2ラウンド目以降は、後方に蜘蛛熊が向かわないように進路を塞ぎつつ通常魔法攻撃や魔矢で攻撃。全員合流後は冒険者PTに行商人達の避難誘導を要請してみるね。 >スキル 特性:ハイパーヒーリングオーラ/サイドヒール改 アクション: ヒール2/輝刃3/魔矢/解呪2 上記のスキル構成で行こうかと思ってるよ。

  19. だわ

    ああ。mとhexを混同していたことに気付いた。出発前に気付けて助かった……。 そう考えるともっとシンプルなのか。移動力3に落としてチャージングを外してもシーザーロアを撒きながら2ラウンド目には到達できるな……。 ん。その分継戦能力に振っておく。

  20. キオルティス

    >セリオスさん えっと、この時間だし見てるか分からないけれど。 濃煙作弾撃つなら、あちらにも此方にもタイミングが分かるように 発砲してくれると有難いかも。 そうじゃないと、いきなり周囲の視界が遮られたNPCチームや 俺たちの初手の動きに影響があるんじゃないかな…と。 >個人行動 とりあえず商人の許まで一気に駆け付けて、避難の提案。 その後はNPC冒険者たちに加勢して時間稼ぎかな…と言った感じ。 あとは何か蜘蛛熊ならではの弱点と思われる部分を叩いていきたいな、と。

  21. セリオス・オーガスト

    <合図 ん、了解した。 ではあらかじめ一言言ってから撃つようにしておくな

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0