『銀』対『緑』
馬車猪
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シナリオID:1722
オープニング
『銀嵐』の雄叫びが大気を揺るがした。
知性がないはずの異形の樹木が確かに怯え、しかし立ち塞がる邪悪は楽しげに笑う。
「噂通りの帝国軍に始めて会えたな」
血で濡れたハンマーを構え直す速度は異常だ。
エフレムよりずっと下ではあるが、精鋭数人がかりでも勝てるかどうかという強敵だった。
しかし戦うしかない。
『銀嵐』の背後には、避難途中の帝国人が数え切れないほどいるのだ。
鎧を押し上げるほど怒張した筋肉から速度を引き出し、一呼吸のうちに複数の斬撃を急所へ送り込む。
「だが」
邪悪の瞳から力が抜ける。
気管や太い血管を切断するはずだったのを、身じろぎする程度の動きで浅い傷でとどめる。
そっと押すほどの速度でハンマーを前に出す。
かすかに触れた剣から悲鳴のような音が響く。
単純に強い腕力が、疲労状態にあるとはいえ音に聞こえた『銀嵐』の剣を防いだ上で圧倒しようとしていた。
「仲間が悪かったな」
ハンマーが加速する。
『銀嵐』は考えるより早く飛び退いたが、気配を消し奇襲を仕掛けた元同僚達が巻きこまれる。
良質な鎧も鍛えた体も圧倒的な速度と重さに対抗できず、ただの死体に変わり地面へ転がった。
「あなたっ」
避難民の中から、避難民とは思えない元気さと意思の強さを感じさせる声が響く。
「来るな! お前はっ」
『銀嵐』は振り返らず、しかし強く意識して声の主を邪悪から隠すように動く。
それは邪悪が何度も見たことがある、邪悪が何度も作り上げてきた悲劇の1つ。
けれど夫婦の眼光の強さは見たことがないほど強く、そして輝き方も違うよう感じられた。
「中指様、帝都方面から大型クリーパーが接近中です」
「時間切れか」
隙を見せないまま『銀嵐』から距離をとる。
役目の最中に強者と出会えたのは幸運だったが、決着がつく前に次の役目が始まってしまうのはどうにもやるせない。
(子供……違うな。別の要素か。己より強くなりうる後継者、か?)
メドゥの指先幹部『緑の中指』の消息が途絶え、ゴブーナという傭兵が活動を始める少し前の出来事である。
●
帝国軍との待ち合わせの場所に現れたのは、薄汚れた姿の案内人であった。
「お前かよ」
「にーちゃんひさしぶりー」
帝国から逃げ出す途中で授恵者として目覚め、帝国難民キャンプで生きるために戦い多数の冒険者から教えを受けた少年は、今では帝国の危険地帯で稼ぐ案内人だ。
「リットお前帝国軍に就職したのか」
「仕事もらってるだけだよ。けどにーちゃんなんでこんな寒いとこに。俺の耳に届くくらい活躍してんだからどこでも仕事あるだろ?」
帝国は難民キャンプがあった場所よりも寒い。
この時期は寒さに慣れているリットも分厚い防寒着が必要になるほど寒く、たぶんゴールディ出身のハヤト=ガラン=ヴォルファングにはキツイとリットは思っていた。
「俺にも事情があるんだよ」
「ふーん」
リットは特に気にせずしゃがみ込んで石を動かしている。
スラム育ちの発育不十分でも既に中堅授恵者だ。
圧倒的な腕力で石を筆として扱い、固い地面に雑な地図を刻み込む。
「それじゃ説明するぜ」
幼さも雑さも消え、命がかかった仕事をする男の顔になる。
「このあたりにあるはずの街や村を回って、動ける人や価値のある物を回収してくるって仕事だ」
「詳しい情報は」
「ある訳ねーよ。俺の所に回ってくるのは危ねー土地に最初に乗り込むような仕事ばっかりさ」
主にそういう仕事で生きているリットは、愚痴は言っても卑屈さは一切ない。
「男の顔するようになったじゃねぇか。用意はできてるな?」
「ねーちゃんやにーちゃんに鍛えられたからな」
リットの背後で大柄なビヒモーが立ち上がり、リットが説明を忘れている特大荷車へ向かっていった。
●
「新種のクリーパーが現れたかな。地形が変わっている」
「この破壊跡は師匠のハンマーだと思いますが」
メドゥの指先に属する賊達が、緊張感の欠片もない顔で帝国都市だった廃墟を眺めている。
1人は緑髪のゴブリン。
もう1人は新人冒険者と説明されたら納得してしまいそうな風貌の若者だ。
「そうか? そうだな」
「私が殺す前に呆けないでくださいよ。で、師匠。今回の役目はその『銀嵐』の始末か勧誘ですか?」
「既にいないと思うよ。気配が弱い」
「師匠の弱い強いの判断はあてになりません」
若者はエーテルリンク済みのペットから情報を受け取る。
瓦礫を利用したバリケードの内側に、実りの薄い畑と疲れた男女の姿が見える。
帝国からの脱出を諦めここに籠もっていたのか、一旦脱出してからここに戻って来たのかは分からないが、魔獣やクリーパー相手の防戦で消耗している。おそらくそろそろ限界だ。
「子供はいるか? 妊婦でもいい」
「建物の中にいたら分かりませんよ。……子供じゃないですが子供サイズの、これは魔獣ですね。警戒の薄いバリケードに忍び寄って少しずつ破壊しているようです」
どちらも善人では絶対にない。
だが、己の快楽のために殺す種類の外道でもない。
「強い魔獣がいたら間引いておく」
「だから師匠の強い弱いは……待って下さい。南から何か来ます」
「冒険者か!」
はしゃぐゴブリンを、弟子を自称する若者がじっと見つめていた。
●
冒険者がうけた依頼は有用なものの回収。
目的地は書類上は既に放棄された都市とその周辺。
ぎりぎりで生き延びている人々がいることも、メドゥの指先構成員が徘徊していることも、帝国軍は把握できていない。
解説
マスターより
リプレイ
「周りをお猿さんが囲ってるのに中にもっ?」
元気一杯な声が村人に届くより早く、視界を塗りつぶすのに痛みを残さない光塊が通過する。
小柄な猿達が1度か2度痙攣してその場に崩れ落ちる。
「冒険者で分かるかな? ヴァイセントラフ砦の方からきたよ!」
サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブの華やかさよりも、村の戦力とも魔獣とも次元の違う身のこなしが村人の目に焼き付いた。
よほど運が悪いときを除いて魔獣の攻撃は一切通用しない。
村人達では後先考えない全力攻撃でも届かぬ攻撃を3倍近い頻度で繰り出し、バリケードを乗り越えてきた猿魔獣を1体ずつ確実に仕留めていく。
(なんかめっちゃ多い! スキルの手数足りるかなっ!)
村人を怯えさせないよう声には出さないが、冒険者の側も勝つのは確実でも依頼成功には苦労していた。
「さて、有用なものの回収に来たわけだが、猿共が暴れるどころか戦闘音か」
ベルク・オスマットも50メートルほど離れた場所に着地する。
空を駆け上がるがごとき移動術は、統制のとれた軍勢でもない限り止めることは不可能だ。
猿魔獣の姿はほとんどなく、荷物はまとめたが逃げようにも逃げられない女子供が十数人いた。
「人的資源も有用なものだから依頼に反することはないな」
エーテルを加速に使い、もともとの速さがさらに上になる。
毒の性質を持たされたエーテルが小柄な猿を襲う。猿は翻弄されている間に毒がまわってそのまま倒れた。
「ビヒモーが牽く大型荷車も来ている。そこを越えて200メートルだ」
ベルクは凄まじい速度で戦っているのに声は平静だ。
小柄さに不安を感じた村人も、その声に落ち着き同胞と助け合いながら村からの離脱を開始する。
(北から聞こえる戦闘音は別物だな)
猿に止めを刺したベルクは警戒を強め、次の戦場へ向かった。
(帝国の人材回収の仕事を手伝えば親父達の情報が集まるかと思って来てみりゃ)
ハヤト=ガラン=ヴォルファングは一直線に村へ駆ける。
彼もまた圧倒的な速度を持ってはいるが、バリケードを乗り越えるのには時間がかかるので村人よりも敵を狙う。
(まずはあの猿共を蹴散らさねぇとだな!)
闘気が爪と刃を赤く染め、猿魔獣の急所を抉り引き裂いた刃がぬらりと光る。
「『銀嵐』の旦那?」
バリケードのわずかな隙間からハヤトを見た村人が髪と体の動きを見て涙を浮かべ、しかし体格が違うことに気付いて混乱していた。
(お父さんの手懸かりが見つかってよかった)
ララベル・サン・ディーベルはハヤトの幸運を喜ぶ。
胸の奥に小さな痛みを感じても、表情にも剣の扱いにも反映させはしない。
「数は多いけど、集落に手出しはさせないよ!!」
ダマスカス鋼の細剣が高速で突き出され、ほぼ同等の速度で引き戻される。
そのたびに急所から大量の血を噴き出して猿の形をした魔獣が倒れる。
一撃一撃が重武装ウォーリアに匹敵する威力であり、攻撃の頻度は手数を重視した高レベルシーフのそれだ。
足も速い。
魔獣が数体で迎撃しようとしても迎撃が始まる前に半数は倒してしまうので、魔獣は逃げるか危険な賭けをするしかなくなった。
「うん、そうくるよね」
一時散開してから、この場の生き残りのほぼ全てでララベルを狙う。
攻撃と機動に優れたララベルの防御はレベルの割に平凡で、囲まれて叩かれたら最低でも重傷になるはずだった。
「光塊圧殺」
細剣を核に光の塊が膨れあがる。
手数は反映出来なくても、一撃の威力が重いララベルが使うと凶悪な範囲攻撃と化す。
「纏めて潰れろ!」
光が侵食する。
半分も包囲できていなかった猿魔獣達の中心に光塊が到達。魔獣の肌も肉も骨も貫き内臓ごとぐちゃぐちゃにする。
見ていた村人が茫然自失するほど凄惨な光景だった。
地面を砕く音が南から近づいてきた。
大柄なビヒモーと大型荷車だ。
「魔獣は絶対に通さない。みんなは車に向かって!」
安堵で倒れそうになった大人を子供が一生懸命ひっぱっている。
(お父さんか……僕もいつか両親に会えたらいいな)
ララベルは気力を振り絞り、村人を安心させるため明るい表情を浮かべていた。
くん、とハヤトが鼻を微かに動かした。
記憶にある臭いだ。
北に向き直ると、街の残骸の向こうにハンマーを振るうゴブリンが見えた。
「そいつ等をサッサと片付けりゃ相手になってやんぜ!」
ハヤトと比べると目も耳も悪いのに、曖昧だった表情が獰猛な笑みに変わった気がした。
●
「リット! 大事な仕事だからな! ビヒモーと荷車しっかり守るんだぜ!」
ギャメルは白い牙を見せてにやりと笑い、自身よりも背と年齢が高いリットにお兄ちゃんぶる。
「風下なのはどうしようもないけどよ、敵の接近が見やすく、こちらの姿はわかりにくい場所。それが目安だ」
「そんな都合の良い場所ねーよ!」
「分からなけりゃ勘でいい」
経験で上回るギャメルは、リットの頭の出来を考えて指示の水準を下げる。
「荷車とビヒモーを分離すりゃ場所の選択肢が広がる。どうにもならなくなる前に動け。それと」
閃光塗弾を押しつける。使い方はここにくる前にしつこいほど説明している。
「これもいざって時使え。がんばれよ!」
ギャメルはビヒモーから飛び降り、こちらへ向かって来る村人へ声をかけた。
「帝国軍のもんだ。勝手にヒール使うから驚かないでくれよ」
このままでは砦まで運ぶ途中で死にそうな村人もいる。
亜人ゴブリンには絶対に浮かべられない理知的かつ陽気な笑みを意識して浮かべ、頭は冷静に思考させて限られた治療スキルを効率的に使う。
「ごぶりんさんありがと! でも肌赤くないよなんで?」
「そりゃハヤトのお袋さんかもな。親父さんを助けてて偉いぞ坊主」
自身より背の高いヒューマンの頭を撫でる。
長い間風呂も入れなかったので酷い状態だ。
しかしギャメルは頼り甲斐のある兄貴分に徹し、もちろん敵への警戒も怠らない。
(あいつか……)
北を見て、時間稼ぎのため危険を冒すことに決めた。
「おや、お前さんもこっちに来たのかぃ?」
ギャメルとは対照的に、治癒ではなく技で困難に立ち向かっているのがパヴェル・A・サムルガチェフだ。
見事に鍛えられた体で優雅に、そして力強く舞う。
立ち上るエーテルが紫電と化して形をつくり、二角馬として地面に降り立ち颯爽と駆ける。
最も獲物が多い場所を狙った猿魔獣は、驚きはしたが止まらない。
が、至近距離を駆け抜けた馬がもたらす雷の気配を浴び、移動の速度が魔獣の意思とは関係なく激減させられる。
「また逢ったねぇ」
「相変わらず独自色が強いな」
バーネット・フォーサイスはパヴェルと比べれば普通のキャスターだ。
なお、種類としては普通であっても格は非常に高い。
ただの光弾で無傷の猿魔獣の腹を貫き背骨を砕き、光弾を多数ばらまくと全て命中させて直前の光景を弾の数だけ量産する。
「荷物は後で回収する。今は命を優先しろ」
優しさはギャメルに任せてバーネットは村人に厳しく接する。
わずかな財産を一時的にとはいえ捨てるよう言われた村人は不満に思い、しかし分かり易く圧倒的な魔力を振るうバーネットに逆らうことはできずに荷物を捨て荷車に上がる。
(良く判らん所に送られるのもまぁ、俺らが評価されてる証って事かね。兎にも角にも、漁って積んで持ち帰るとしますか)
主目的は地面にあるわずかな物資ではない。
人口という、一度失えばなかなかもとに戻らない資源だ。
「なんだ?」
口に出したときには行動を終えている。
投擲した青白い光槍は、北から必死に逃げてきた大きな魔獣に突き刺さって大ダメージを与えた上移動力を奪う。
大きな魔力と高度な付与技術を兼ね備えていなければ不可能な戦果だ。
「情報がない依頼ってのは厳しいねぇ。退路の確保は任しときなぁ」
パヴェルは2メートル近い三叉棍を手足の延長のように操り、毒の属性を帯びさせたエーテルを大猿魔獣に叩き込む。
魔獣は移動できない。
少し離れるだけでパヴェルは自らを治療することができるので、真正面から戦えば多少は苦労するはずの魔獣を簡単に倒せた。
(ハヤトの旦那の親御さんかぁ。どんな男なのか気になるねぇ)
村人が『銀嵐』のお子さんじゃないかと熱心に話している。
(うぉっ、豆粒みたいな大きさに見える。やっぱり依頼をこなして経験を積んだシーフってぇのは早いな)
連携しようとぼんやり思っていたが、シーフ達の速度も移動用スキルの性能も圧倒的だ。
「これじゃぁ追いつけねぇや……。ははっ」
今度は片腕が半ば砕けた大猿魔獣が来た。
バーネットが足止めしてくれたので攻撃を担当する。
呼び出したのは多数の光弾だ。
バーネットに迫る威力で大猿も猿も逃さず命中させて、それ以上村人に近づけさせない。
「帝国でこれ以上好き勝手させるものか!」
アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトの斬撃が大猿の頭蓋を砕いて止まらず胸まで切断してするりと抜ける。
鋭撃2は使っているが、ほとんど通常の物理攻撃力だけでこの光景。
反撃の拳を受けても平然としているのもあわせて、重武装ウォーリアらしい戦いぶりだ。
「北に1人……いや2人か」
既に戦いが始まっているようだ。
飛び抜けて強力な授恵者の気配が1つに、それと比べれば弱いが十分強くしかし隠れているのが1つ。
「ここは任せた。……リットもな」
胸騒ぎがする。
撤退が苦手なことは分かってはいるが、手を貸さない方が危険と直感して北へ駆けた。
●
「どりゃぁぁぁぁ!!!!」
サフィラの戦い方は柔軟だ。
脛当と鉄靴で守った足で蹴飛ばし、大猿の体勢が崩れたところで短爪のついたガントレットの指先で脇腹を抉る。
「んんっ?」
追撃して仕留めるつもりだったのに猿は倒れたまま動かない。
その背中に、ハンマーによる穴が開いていた。
「にゃ? 緑の髪に大きなハンマー……。もしかして指名手配のゴブーナちゃん!?」
「ちゃん呼ばわりは何十年ぶりかな」
言葉の響きが消える前にサフィラがバックステップで移動。直前までサフィラの上体があった空間をハンマーが通過する。
「聞いてたのより狙いが正確だね。そう言えばここで何してるのかなっ? あの集落の人達を狙ってる感じじゃないけどっ!」
「そこは倒して聞き出すと言って欲しいな」
ゴブーナにとって、サフィラの弁舌より戦闘力と伸び代の方がずっと魅力的だった。
「何故こんなことをする!」
アルベルトに何本もの矢が命中しているのに効いていない。
十分な物理防御と豊富な生命を削り切るのは一部の例外を除き時間がかかる。
時間がかかればアルベルトに追いつかれて両断される。帝国騎士という身分に相応しい、敵にするには恐ろしい存在なのだ。
授恵者は肩をすくめて北へと駆け出す。
上司を見捨てることを何とも思っていないので、アルベルトは少しだけ困惑してしまった。
「今度はやられた分きっちり倍返しだ!」
授恵者のことはアルベルトに任せ、ハヤトはゴブーナ1人に意識を集中させる。
「前回は私の負けだろう?」
「ぼけるのは倒れてからにしろ!」
初撃のパンチも第2撃の忍刀もフェイントに使う。
猛烈な加速からの拳でゴブーナの喉を狙うが、前回戦ったときより髪の毛1本分浅い。成長しているのだ。
成長したはずのゴブーナは反撃せず、目を開けたままとまどっている。
「もしかして子か孫か? 剣を捨ててからの方が強かった『銀嵐』の」
「息子だよなんで孫になるっ」
ハヤト達冒険者に向けるほどの興味を持っていなかったからだ。
それが分かるので怒り、怒りを動作の乱れではなく威力の向上にのみ向けゴブーナを削るが削りきれない。
(メドゥの指先幹部だな)
これほどの強さの授恵者がこれまで無名など、それ以外の理由はまず考えられない。
ベルクは常にゴブーナの死角へ移動し、ゴブーナが攻撃したときのみ足を狙ってしかける。
目的は殺害ではなく牽制だ。
予備動作なしの石突きでの一撃が来る。
作戦と集中で回避を高めていなければ、腕一本を引きちぎられていたかもしれない攻撃だ。
ベルクは焦らず怯えず回避し、味方の支援に徹した。
「強いがこの程度なら!」
アルベルトは授恵者を追うのは非現実的と判断し、威力偵察を行うことにした。
彼にしては珍しく防御優先の構えから、十分に必殺技といえる威力と精度の斬撃を送り込む。
(骨が……エーテルか!)
皮膚と筋肉を貫通したのに骨を断てない。
特殊な能力ではなく、高レベル授恵者の頑丈さだ。
ハンマーが真横に振り回される。
威力は通常の攻撃と変わらない。だがアルベルトを掠めた一撃は鎧と中身に甚大な被害を与え、エーテルを使い加速しなければ追い撃ちからの即死が有り得る状況だった。
「まさか、こんな所でまた遭遇するとは……最近はどうにも巡り合わせが悪くて叶わんな」
バーネットはため息を我慢する。
ゴブーナに深手を負わせたのは素晴らしい。
戦いが終わっても生きるつもりがあるなら、撤退するのが一番確実な選択肢になるからだ。
「報酬分は働くさ」
青白い光を槍の形にする。
精緻なエーテル操作と付与技術により、当たればエフレム級の授恵者でない限り必ず効く攻撃だ。
エーテルを使った強引な回避。
バーネットは気にした様子もなく第2、第3のスネアージャベリンを叩き込む。
2本目も躱されるがゴブーナの目に焦りが浮かぶ。
3本目は回避する余裕も防御する体力もなく、体を貫かれて移動速度が0に近くなった。
「ゴメンだけど時間切れ! また今度ねっ!」
サフィラが閃光塗弾を投げつける。
炸裂するより早く、光の六角柱がゴブーナごと閉じ込める。
「臆病者は強者に用はねぇんだ。じゃーな」
ギャメルはゴブーナが向けていた評価する視線を頭から追い出し、皆を促し撤退を開始した。
●
「勇敢なる同胞たちに敬意を、貴殿等が守った民は必ず我らが砦まで守る、どうか安らかに眠れ」
ベルクはバリケードの内側を高速で確認してすぐ南へ走る。
もう追いつけないことを悟ったゴブーナが落ち込んでいるが無視だ。
「入れ違いかぁ……」
村人に聞き込みを行ったララベルは残念そうだ。
ハヤトの両親が村にいたのは分かったが、離れた後のことは分からない。
「ここまで来れば大丈夫か」
「なーにーちゃん。また背ぇ伸びたの?」
「筋肉はついたぞ。リットは……」
アルベルトは改めて背を比べて渋い表情になる。
「肉は食べているな?」
「最近は干し肉ばっかりだけど食べてるよ。食べる?」
差し出してきたのをアルベルトが断ると、リットは今のうちに寝ておくと言って揺れる荷台の上でいびきをかき始める。
「足りないのは規則的な生活……もか?」
リットは育つと思いたいが、育った後のリットが思い浮かばない義兄であった。
マスターコメント
ショートシナリオR普通 報酬:少ない8 / 4〜8人
2022年01月01日 06時58分28秒 公開
参加者
相談掲示板
ヒーラーのギャメルだぜ! よろしくな。 『銀嵐』っていうと、ハヤトの父さんか。 元避難民をばっちり保護できれば、手がかりも得られるんだな。頑張ろうぜ! 初期位置が放棄都市からちょいと離れてんのな。 すでにシューターに気づかれてる。オレらの初期位置から200m進んだ先のどっかにペットがいそう。 基本的には移動力のバラツキではぐれないよう、足並みそろえて進むのが良さげに思うけど……。 高機動力の人に速度を落としてもらうのはもったいない気もするし、ペットの視界で追いきれなくするよう班を分けるってのもありか。 みんなはどう思う?
いけねー!! 小集落そのもののサイズを勘定に入れてなかったぜ。 オレらの初期位置から捜波も届かない距離に敵のペットがいるって状況は変わらねぇ。 ペットにはシューター本人の汎用スキルは適用されねぇってルールだ。 天眼やサーマルアイとかで見られてるわけじゃないってのが、ちょっとは救いだな。
おーっす! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、みんなよろしくな!! 『銀嵐』の二つ名で呼ばれてんのが俺の親父の可能性は高ぇがまだ確証がねぇんだよな。 今回の避難民達や元帝国兵達を救出することで何か情報が手に入ればいいんだが… んで、まずは猿共を蹴散らさなきゃなんねーがゴブーナ達がどう動いてくるのかはまだわからねぇ状況だもんな? まずは小せぇ猿共から数を減らすには早く集落に辿り着ける脚(移動力高)のある面子は先に駆けつけちまっても良いんじゃねーか? そんで後から他の面子も追い付いたら合流してそれぞれ猿(小):猿(強):ゴブーナ達をどう相手取るかって感じで決めとくのが良いかと思うがみんなの意見はどうだ? ま、ゴブーナ達に関しちゃスルーするって選択肢もなくもねーが恐らく顔を合わせちまったら殺り合うことになるだろーとは思ってんぜ。
にゃ!シーフのサフィラだよっ! みんなよろしくねっ! うーん…また『銀嵐』の名前が出てきたねっ 奥さんもいっしょに居るみたいだしもしかしたらって感じかなっ? なんにせよ!帝国兵の人達をゴブーナから保護しないとだねっ! にゃ、流れとしてはハヤトの作戦は良さそうだねっ。ゴブーナを足止めするならスタテックフィールドとか光縛封で抑えてしまうのもアリかなって思うけど、どうかなっ?
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 ゴブーナは無視でよかろう。 むしろ暴れて大猿を押さえて貰えるなら面倒が減る。 ただゴブーナがPL情報だから暴れているのを見に行かない理由作りが必要だろうが。
初期位置から移動力ごとに進んでく感じだな。OK! オレの移動は4だ。一応、威力を落として移動5にもなれる。 存在がPL情報のゴブーナとの遭遇を回避するなら、索敵して気づいたら逃げるとか? オレはできれば戦いたくねぇぜ……。救出対象の保護を優先したいしな! ……ビビッてるとかじゃねぇぞ? 仮に戦わなきゃなんねぇ状況があるとすりゃ、ゴブーナがターゲットをサルから救助対象に変更した時だ。 冒険者に戦いを促すためにさ。 あ、そうだ。救助対象も大事だが、運搬を担うリットとビヒモーにも万が一のことがあっちゃいけねぇ。 小集落が戦場になってるのがわかり次第、風下の離れた場所でひっそり待機してもらって、ゴタゴタが片付いたら呼びにいこうぜ。 リットとビヒモー側に敵が回らねぇよう、サルの動きには注意だな。
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 俺も、ゴブーナは放置に一票だな。 猿魔獣(強)対策に専念するかな。
キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >方針 状況把握って意味でも、先行して小集落に向かう面子が居るのは良いと思うが、 全員が各々の移動力で動くとなるとバラバラに行動する事になりそうだから、 始めは先行して小集落に向かう面子、ビヒモーに歩調を合わせて後追いする面子、 ぐらいの分け方で良いんじゃないか? そもそも、1kmも離れていると小集落の状況もなんて判らないだろうし、 先行した面子が小集落で戦闘中って事を把握次第、後追いの面子も可能な限り全速力で 移動して、救援に駆けつける流れになるんじゃないか? >リット 戦闘中は、なるべく安全圏でビヒモーの守りについてもらう形で良いと思う。 >ゴブーナ 始めはそのまま猿魔獣(強)を処理してもらうとして、その後遭遇してからどうするかだな。 全員が合流して相対するなら、まぁこの面子なら倒せないまでも撃退する位は出来るだろうが、 少人数で遭遇したのなら、その時点では交戦回避が無難か。 個人的にはまぁ、今回頑張って仕留める方向でも良いとは思ってる。
キャスターのパヴェルだ。 ハヤトの旦那の親父さんの手がかり、 見つかるんなら全力でかからねぇとなぁ。 >ゴブーナ (PL情報を参照するのであれば) 放置でいいんだが、あちらさん(ゴブーナ)が どうしてくるか解らんからなぁ。 戦いへの血が騒いじまってる様な気もするし。 集落をほったらかしてこっちに向かってこられちゃ 貯まったもんじゃねぇ……今んところそこが悩みの種だ。 >ギャメルの坊主 ん。いい線はいってるとおもう。 んだが……ゴタゴタが終わったあとに ビヒモーを呼ぶのじゃぁちょっと遅すぎやしねぇかい? 俺としちゃ「どさくさに紛れてビヒモーを集落に寄せて助け出す」 方も提案するが、そこら辺はお前さんらの意向次第だな。
(足元にいる相棒の猫を抱き上げながら) こう話してる間によ、頭の中で 落とし穴を掘る とか 盲目の旅人の振りしてビヒモー連れて集落へ向かう とか よく分からねぇ事も思い浮かんだが、聞かなかったことにしてくれ。
ウォーリアのリットだ! よろしくな! 質問があったらできるだけ答えるぜ(回答可能なのは行動前に分かることで、しかもリットが知っていること限定です)
>方針 ふんふん。 細かくバラける利点はそこまでなさそうだし、バーネットが挙げてくれた先行する班とビヒモー班って分け方に賛成しとくな! >ビヒモーを集落に寄せる 迅速に人を助けたいって気持ちはわかるし、せっかくのパヴェルの意見なんだが……。 戦いが収束しねぇうちにビヒモーと馬車を集落に寄せるのはリスクがデカい気がするぜ。 えっと、理由は……。 特大荷車は大きい分、逃げ足の速度がそんなに出ないと思う。 荷車が使えない状況に陥ると、長距離移動が困難な人を依頼終了後に砦に連れてく手段がなくなる。これはマジでヤバイ。 パヴェルの案で良いなって思う部分もあるぜ! 動けない人を一ヶ所に集めて冒険者の力で守りやすいってところだ。 パヴェルの方法を詳しく聞けば、そっちの案のメリットももっとよくわかるかも!
んん。俺もなんとなく思った程度なんでよ、よく考えておきてぇから提案したって次第さ。 移動力稼ぐと打たれ弱いのが、心元ねぇし、班を分けるなら荷台の護衛に当たるぜ。 >戦闘中に、ビヒモーを寄せるメリット ざっくりと考えると ・相手の気をそらしてる間に人員を載せることができる。 ・戦力が分断されるため、追ってきた敵を処理することで優先順位がわかりやすくなる。 ・潜伏時間が短くなるため荷台側の護衛の効率があがる ってえところか。 デメリットは猿やゴブリナに目をつけられちまったら手間がかさむ。のと移動速度から逃げ切るのは難しいってとこだな。
ビヒモーを寄せるかどうかは戦術次第でどーすっか決める感じが良さそうか? 【質問】 リットに聞きてーんだが、この集落ってのはどのくれぇの広さになってんのかわかるか? ゴブーナ達とのご対面にどのくれぇ時間がかかる可能性があるのかを確認しときたくてな!
僕はシーフのララベル・サン・ディーベル。 遅くなってごめん、みんな、よろしくね! ハヤトのお父さんの手掛かり探すの僕も頑張るよ!! 先行とビヒモーに合わせて一緒に動くのに分けるなら、僕は移動力5あるし、先行を希望させて貰うね。
【回答】 家は少ないけど畑もバリケードの中だから結構大きめだぜ。 猿魔獣相手にバリケードは役に立たねーかもしれねーけど、家の中に立てこもったら時間を稼げる……かなぁ。自信がねーや。
>リットとビヒモー 個人的には、集落周辺の制圧が終わってから呼び寄せる方が良いとは思う。 今回は時間的な制約は無いんだし、敵もゴブーナを除いて俺らで対処できる奴らだから、 移送の障害になる奴らを徹底的に叩いた後、ゆっくり人や物を運ぶ形で良いんじゃないか? >個人行動 俺も移動力5を確保しようとすると大分軽装になるし、今回は後追いの方だな。 スキルとしては足止め用のグラビティフィールドと、スネアージャベリン、 後は範囲攻撃を持ち込みつつ、ゴブーナと交戦する場合に備えて魔霞は用意しておく。
意見ありがとうな。となると……。 「完全に叩いた後に寄せる」方向が無難か。 俺の案は一端伏せて(無しにして)、ギャメルの坊主の案を優先してくれ。 ややこしくてすまねぇ。 >ゴブーナの対処 確信はねぇって前提で聞いてくれ。 出来りゃぁ此方、ないし救護対象に攻撃がいっちまっても 「極力回避」「弱体させていなす」って感じにゃできねぇかな。 無理なら仕方ねぇけども。 >バーネットの兄ちゃん ん。また世話になるねぇ。宜しくなぁ。 お前さんが弱体の術(スキル)重視となりゃぁ、 回復多めで固めようと思ってる。
>ビヒモー&護衛リット そーだな、バーネットも言ってるが特に時間の制約がなさそーだから全部片付けてから難民護送に移るって感じでいいんじゃねーかと俺も思うぜ。 っつーことで脚の速い面子で先行、猿(小)を駆逐しつつ後続が合流したら猿(大)も含めて撃退って流れでいいか? 難民の護衛任務廻る面子がいても良さそうだよな。 誰もいなきゃビヒモーを離れたとこに待機させてリットに難民護衛に回って貰うのもありかもと思ってんぜ。 猿共の撃退が終わったらゴブーナの相手をしても良いかとは思ってんぜ。 あいつも流れの傭兵みてーだし、親父やお袋の事知ってる可能性もあるかもしんねーと思ってな。
しばらく顔を出さなくて申し訳ありませんでした。 作戦の流れは概ね理解しました。 猿魔獣を全滅させたら、ゴブーナの弟子(自称)に向かいたいと思います。 ゴブーナは極力無視で行動します。 難民護衛をリット君にお願いする案には賛成です。
では足の早い組で先行して駆逐ということで了解した。 ゴブーナは基本無視でこっちに来るか作戦後に余裕があれば対応ということで
パヴェルは案を出してくれてありがとなっ! 自分以外の発想や視点って自力じゃ得られないもんだから、相談で色んな意見が出るのって良いなって思ってるぜ。 ハヤトもこの依頼でご両親の手掛かりつかめると良いな。 >個人行動 最初は荷車と同行。 集落では救出対象の保護優先。魔獣への攻撃手段も用意しとくぜ! ゴブーナとは積極的に戦わない。 ってな方針で動いてみるな! サフィラが言ってくれた、光縛封を足止めに使うのは良いだろうな。 積極的にゴブーナを足止めしにいくってより、偶然遭遇しちゃった時の撤退時間稼ぎ用だ。 超嗅覚で不穏な臭いを嗅ぎ次第、リットとビヒモーに離れて待機するよう頼んでみるか。 サルがオレらをすり抜けて荷車側にいかねぇよう注意して立ち回るつもりだぜ。
にゃ!流れは了解っ!あたしも猿(小)殲滅の先行組に入るねっ! >ゴブーナ んー、話かけられそうだったら話をしてみたいなぁって思うけど戦わなかったらどっか言っちゃうんだよねぇ…使えそうなら【話術】で話しかけてみるねっ!
>ゴブーナ対応 色々と意見が出てるから、一応方針をまとめとくな! ・猿魔獣撃退までは基本的にゴブーナに対しての攻撃行動はとらない ・魔獣撃退に役立つようならそのままゴブーナも利用する ・猿魔獣撃退後の対応は各自に任せる 基本スルー方針 ベルク、ギャメル、アルベルト、パヴェル 戦闘もOK方針 ハヤト、バーネット、サフィラ 未定 ララベル
ありがとさんなぁ。 あと1時間だ。悔いのねえようにしとこうな。