【聖祭】魂の星を探して

白葉うづき

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シナリオID:1716

オープニング

●魂の星
『かの湖には星が降る。
 降り落ちた星は水底で輝き、時間を掛けて次第にこの世に馴染む。
 馴染んだ星は魂の形となり、湖から出て現世へ戻りゆく』

 これは、イェルノー荒野を旅した冒険家が現地人に話を聞き、残した手記の一つ。
 流れ星は一度その湖に落ちてから魂の形を作り、外へ出る。
 湖の周辺は変わった石が多いため、この話から『湖の周辺には自分の魂が元々入っていた星がある』とされている。
 これを「魂の星」と呼び、贈り物や大切なものとして祀る風習があったそうだ。

●不思議なものを探しに
「これから目指すのは、『銀湾星の湖』っていう場所」
 
 辺境都市ヴェルクリエ。冬が訪れたこの街にも雪が降り、古くて新しい街並みも白化粧が施されていた。
 白く染まる建物の一つ、夜明け前の冒険者ギルドの前で、依頼の説明のためにヴィンツ・ラッテが言葉を紡いでいく。いつもの軽装ではなく、耳垂れ帽子にしっかりしたコートと暖かそうな服装に包まれていた。

「場所は辺境都市群から北、イェルノー荒野西でシルトラース帝国まではいかないくらいかな、たぶん! んー、文献からある程度の場所は掴んでいるけど、人によってあった、なかったと意見が分かれる場所らしいんだよね。それを今回見つけて調査に行きたい。それがオレからの依頼!」

 情報はそれだけだろうか。さすがに少ないとヴィンツも思ったのか再び口を開く。

「今回の地域には未開の荒野もあって、あんまり調査は進んでいないところだけど色んな逸話があるんだよね。幻の村がある、独自進化したクリーパー、あるいは魔獣が跋扈してる、足を踏み入れたものは戻らない異界の扉があるとか。村はありえなくはないけど、クリーパーや異界の噂は未知の場所への恐怖から生まれる噂の線が考えられる。ただ荒野も北部に行き過ぎると極北から魔獣とか流れてくることも考えられるから、気持ち程度に留めておいてくれたらいいんじゃないかな。
 行程としては、行きと帰りで一週間ほどを見てる。ある程度のルート取りとか湖の調査はオレがするから、敵を見つけた時の対処法とか道中のことはお任せしていいかな。
 ふふ、厳しい冬に行くなんて馬鹿らしい? その為にお金出してるから頼まれてほしー! ……え、長話で寒かった? ごめんね、あっためてあげよっか!」

 楽しげな笑顔を浮かべ、さあ出発とヴェルクリエを発つ。辺境都市群の北は真っ白に染まり、東側に広がる海はまだ暗い。反対側にある山々の間から朝日が差し込み、白い大地を照らし出した。

「キレーだね。この旅も、こんな景色がたくさん見られたらいいね」

 そういって無邪気な笑顔を浮かべる。
 朝日を背にしているせいか、彼の片瞳がひときわ眩しく輝いて見えた。

解説

●目標  ヴィンツ・ラッテの護衛、および『銀湾星の湖』の発見 ●銀湾星の湖  辺境都市群の北、イェルノー荒野西にあると言われる、流れ星が降るという噂のある湖。  底が淡く光り、辺りに散らばる石も淡く光って見える。石はさまざまな色、形をしており、湖とその周辺は色とりどりに輝いてみえる。  湖自体見える者と見えない者がおり、本当に存在するか定かではない。 ●旅の行程  辺境都市群からイェルノー荒野西へ、そのまま北に上っていきます。  道中は雪原や丘が続きますが、わずかながら森や林も存在します。  片道二日ほどの道程です。 ●NPC  ・ヴィンツ・ラッテ(触れられなければ最低限しかリプレイに登場しません)  ヴェルクリエの技術者で授恵者。いつもはこういった調査は一人でさっさと行って帰ってきてしまいますが、今回は気まぐれで皆さんを連れてきた模様です。興味を引かれたものには食いつき無遠慮ですが、放っておけば基本的には無害です。  戦闘が発生した場合、キャスターとして参加してくれると思います。 ●備考  雪原の旅と美しい景色を観に行くシナリオの予定です。戦いも方針次第で発生するかもしれませんが、メインではありません。  『●魂の星』の言い伝えについては道中でヴィンツが教えてくれますが、知っていても構いません。

マスターより

お世話になっております。白葉うづきです。 聖霊節ですね! この時期はテンションが大変上がりますね! 初のミドルシナリオとなります。 寒い場所を旅して美しい景色を見たり、美しい場所でのんびり過ごしましょう。 何かご質問・雑談があればヴィンツが掲示板にてお答えします (出発間際だとお返事が間に合わない可能性があります)。 皆さんのアニエピカライフが素敵なものになりますように! ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。

リプレイ

●未知へ出発!
 行く先には、光を放つよう輝く雪原が一面に広がっていた。依頼だからこそ浮かれはしないが、この胸の高鳴りは誰も止めることが出来ない。大地に白く息を吐き、アンネエルカは笑顔を浮かべて振り返った。

「ヴィンツさん、素敵な冒険へのお誘いをありがとう!」
「はいはーい! どういたしまして!」
「あ、わ、私も……」
「なーに?」
「ひぃ!? い、いいいえ、あの、なな、なんでもないでし!」
「えー! なになになーに!」

 自分より長身であるはずのヴィンツ・ラッテが下から覗き込み、小さく跳ねたララノアが後退る。なお聞こうとする青年にヴィンツさん、と声が割り込んだ。

「私も同行出来て嬉しいです。雪原の旅はあまり経験がありませんからね」
「銀の世界の大冒険! どんな景色が待っているのでしょうか! ワクワクしますね!」

 この季節、この地域の旅はあまり経験がないというイズレンディル・パラリム、雪原の冒険に心をときめかせるエルナ・クルプファルツも楽しげに未知への期待を口にする。

「それに、目指すはあるかどうかも分からない『銀湾星の湖』……! これはロマンの香りがしますよ……! 聞いたことがありましたが、どんな場所なんでしょう!」
「キラキラ光る湖らしーよ!」
「へえ。石とか、苔が光るのかもしれないね」
「好奇心が疼きますね! お土産に『魂の星』も持って帰りたいです!」

 興奮気味に話すレイヤ・ダライ=カホールにヴィンツが答え、ヴィナスが目的地だという湖に想いを巡らす。レイヤの友人であるミニビヒモーの影に隠れていたララノアも、湖が気になるとこくこく頷いた。

「星が降って魂の元になるのか……ロマンチックなお話だね」

 空に輝く星が魂である、と考えた人々なのだろう。人によって見えたり見えなかったりというところも不思議な魅力を感じる。

「僕にも見えるかな。見られると良いなぁ。ね、クルトもそう思うでしょ?」
「そうだな。……顔が緩んでる」
「え、そう?」
「ハーヴィが好きそうな話だしな」

 頬を緩く揉むハーヴィを見ながら、クルタルは頷く。姉や彼女が好きそうな綺麗な話、という自分の見立ては正解だったらしい。

(魂の星が降る幻の湖……か)

 存在するかどうかわからない物を探しに行く。それはまさしく冒険のようだ。ふかふかとした耳と尻尾を震わせ、クルタルは瞳を細めた。

●気まま雪旅
 陽が昇った雪原を冒険者たちは歩いていく。白く眩しいそこへ肩に栗鼠を乗せたエルナが足を踏み入れると、靴が雪へ埋まると同時に雪を踏みしめる軽い音が幾度も繰り返され、彼女は楽しげに雪の上でステップを踏んだ。

「歩く場所歩く場所新しい雪ですね! サクサク音がします!」
「はしゃぐ気持ちはわかるけれど、先に行ってしまわないようにね」
「ヴィナスさんが踏み固めてくれているから歩きやすいわ。私も出来るだけやっているけれど、コツはあるのかしら」
「私も知りたいです! 長い旅路になりますから知識を蓄えませんと。ね、エクレアさん」

 レイヤが振り返ると、ミニビヒモーがのそりのそりと歩いていた。レイヤの物はもちろん、皆から預かった荷物を乗せている。その横でヴィンツがエクレアさんの歩き方を真似していた。

「大人数での旅は特に慣れない地だと心強いですね! 景色も楽しむ余裕がありますし」
「ああ、そうだな……あんたも含めて頼りがいがあるよ。手が必要なら言ってくれ」
「クルトも頼りにしているよ。……真っ白な景色が続くね。本当に見渡す限り」
「天気もいいですし……夜もたくさんの星が観えそうでし」

 イズレンディルやハーヴィ、クルタル、ララノアも景色を楽しみ雪原を歩く。起伏の少ない雪原を歩き、数時間歩いたところで木々の生えた平地となだらかな丘が見えてくる。

「そろそろ休憩を挟もうか」
「そうしましょう! 夜の用意も出来そうね」
「おや、休憩と木材の調達でしょうか。私も行きますよ」
「俺も行く」

 ヴィナスとアンネエルカ、イズレンディルやクルタルが木を集めに行った後、エルナは周囲を眺め両手を合わせる。

「椅子が無くては休憩もしづらいですね! どうでしょう、皆さんが戻ってくるまでに雪を固めて簡易的なものを作ってみるのは!」
「それはいいかもね。腰を下ろすだけでも違うと思うし」
「雪の椅子……! 作ってみたいでし!」
「雪を集めて、そこを固めるイメージでしょうか!」

 ハーヴィが答え、ララノア、そしてエクレアさんを労わっていたレイヤも良い考えだと賛成、かき集めた雪で椅子を作り始めた。
 木々の状態を確かめながら、イズレンディルは雪の積もる木へそっと手のひらを寄せる。いくつかの木々を巡り、検討を付けたものを皆へ共有していく。

「こちらと、そちらの木も枯れているので、力を貸してもらうには良いかと思います」
「まあ、ありがとうイズレンディルさん! やっぱり出来るだけ自然を壊したくないものね」
「へえ……ただ木を集めるにも、色んなこと考えてるんだな」
「あくまで余裕がある時にはなると思うよ。出来るだけ、という気持ちじゃないかな」
「あ、必要な分だけ集めたら、このロープにまとめてもらえるかしら!」

 手分けをして薪を集め、それをヴィナスがまとめあげる。御礼を告げたアンネエルカは夜空色のバッグを取り出し、口を開く。――中には星空が煌めいていた。アンネエルカは薪の束をひょいと持ち上げると、皆の見ている前でその中へと納めてしまう。

「! 不思議な鞄ですね!」
「そうなの! 実家の仕立て屋で作った、魔法の鞄なのよ。素敵でしょう! 入れられる数や大きさは決まっているけれど――」

 アンネエルカの鞄について会話を重ねながら、一行は来た道を戻っていく。途中でクルタルは近くに流れていた雪解け水を汲み、イズレンディルは枯れた木に笑いかけた。

「森の友人に感謝を。また機会があればお伺いしますね」

 皆のいるところへ戻ると、人数分の粗削りな雪椅子が用意されていた。

「お帰りなさい! 薪は集まりましたか?」
「ああ、今日はこれで足りるだろうね。ところでこれは?」
「あ、あの、椅子でし!」
「クルトもお疲れ様。座ってみてほしいな」
「おう……ん、大丈夫みたいだ」

 エルナにヴィナスが応じ、ララノアが説明するとハーヴィがクルタルに薦める。腰を下ろしてみると、冷たくはあるが案外しっかりと座れた。

「お湯もあるからどうぞー!」
「まあ、ありがとう! どうしたの?」
「ハーヴィさんのピュアウォーターを、生活魔法の火で温めたんです!」
「オレも協力した! えらいー?」
「ふふ、偉いですよ。皆さんもありがとうございます」

 レイヤがカップを配り、アンネエルカやイズレンディルがそれを受け取る。褒められたヴィンツは嬉しそうにくるくるとまわっていた。
 しばらく休憩を挟んだのち、再び雪原の旅へ。一日目、日中での冒険はそうして緩やかに過ぎていった。

●雪で色々してみよう
「そろそろ日が暮れそうですね」
「あら、それじゃあ今日の野営場所を決めないと!」
「! そ、それではいよいよ……!?」
「周りに洞穴は無いようだし……」
「カマクラ作りですね!」

 今回、野営時には皆でカマクラを作ってみよう、と事前に相談がされていた。エルナの案内で作る場所を決めればいよいよ。ララノアが控えめな視線で皆を見回す。

「どこから始めたら良いので?」
「雪を集めて、形を作ってーって感じです!」
「役割分担をしたほうが良さそうですね」
「私は力仕事をするわね!」
「お手伝いします!」
「僕は形作りかな。水を使えばかなり強度も出ると思うよ」
「わ、私は……」
「私たちと形作りは如何ですか?」

 レイヤが基本的なカマクラについて説明し、イズレンディルにアンネエルカ、ハーヴィが加わった。ここから作成開始だ。

「ある程度まとめて持っていく方が良さそうかしら」
「ですね! 雪もそんなにさらふわではないようですし、固すぎず軟すぎず、の絶妙な力加減が必要です!」
「ふふ、任せてちょうだい! エルナさんにも負けないよう頑張るわ!」
「私ももりもり頑張りますよ!」

 アンネエルカとエルナは作業を始める。積もってから時間が経っているせいか、表面が溶けて固めにはなっているが、その分持ち運びには便利そうだ。

「アンネエルカさんは、カマクラ作りの経験はあるんですか?」
「いいえ、初めて。だからとってもわくわくしているの!」
「新しい経験っていいですよね! 何をするにも新鮮でときめいちゃいます! 今夜の星空もとっても楽しみですけど!」
「! 私も楽しみなの! お揃いね」

 会話を交わしながら集めた雪を自分の背丈ほど積み、固める班へと渡していく。形作り班では、イズレンディルが全体を見ながら雪を出来るだけ成形、ララノアとハーヴィがそれを使って土台を作り、出来たところからレイヤが生活魔法で出した水やクルタルから貰った水で固めていった。雪と雪の間を水が流れ、表面がゆっくりと凍っていく。

「こういう感じでいいのでしか?」
「はい、良いと思います! 皆さんが寝られるくらいの広さが必要ですから」
「いくつか作れれば良かったかもしれないけれど、旅の最中だしね」
「ちゃんと凍っているでしょうか……あ、冷たい! けれどカチカチですよ!」
「わ、すごい! 思っていた以上に丈夫に出来るものなのですね!」

 手伝いをしていたララノアが、半分以上できたカマクラに入ってみる。積んでいる時や、入る時に触れた雪の壁は凍るほどに冷たかったが。

「暖かいでし……!」

 カマクラの中は驚くほど暖かかった。雪の思い出がララノアの中で更新され、思わず口元を綻ばせた。

「あっちは順調みたいだな」
「そうだね、楽しそうに作業してくれてありがたいよ。水を頼めるかな」
「ああ」

 カマクラ作業の傍ら、ヴィナスは手伝いのクルタルと夕食の準備をしていた。ハーヴィからマジカルポケットに詰めていた食材を預かり、寒い夜でも温まるようにと考えてスープを作っていく。

「頼まれてた食材の整理もあらかた終わったから、見てもらえると助かる。一応今日も併せて七日以上は持つようにできた、と思う」
「ありがとう。やっぱりご飯を美味しく食べられるのは、楽しい旅をする上で大切だからね。……そうだ。もし夕食が余った場合、ハーヴィの収納に入れられるか少し聞いてみてくれないか」
「了解。任せとけ」

 夕食を作り終わる頃、カマクラの方で大きな歓声と拍手が聞こえる。クルタルは目を瞬かせると、瞳を緩めて皆を呼びに行った。

●空に溢れるのは
 皆で夕食を食べながらたき火を囲み、今日の旅を振り返る。雪原の旅に慣れている者が少なく、また今日は何事もなかったため寒さと景色について話が弾んだ。食べ終わって明日や湖の話にも派生した後、エルナが大きな声を上げた。

「皆さん、上! 空を見てください!」

 上に向かって伸ばされた指につられるよう、空を見上げる。
 ――空に幾千もの輝きが瞬いていた。
 視界いっぱいに遠くで、近くでちかちかと明るさの異なる星が光っている。
 夜の空も暗いだけではなく、淡い輝きが川のように空を流れていた。
 圧倒されたエルナが、見上げたまま雪原に倒れ込む。クルタルが白い息を吐き、ハーヴィも瞳を細めた。

「はー……綺麗ですね!」
「光や大気の塵……そういう遮るものがないと、星はずいぶん綺麗に見えるらしいが……予想以上だな」
「うん……本当に綺麗だね」
「皆さんも横になって星を観てみませんか!」
「賛成です!」

 レイヤも倒れるように雪原に横たわる。イズレンディル、アンネエルカやハーヴィ、クルタルがそれに倣い、ララノアも恐る恐るといった調子で雪に体を横たえた。背中はひやりと冷たいが、さっきよりも星が瞬いているように見える。アンネエルカも美しい光景にほう、と息を吐いた。

「ひあ……! すごい、誰かが宝石箱をずべーんと広げてしまったのでしょうか……」
「まあ、素敵ねララノアさん! 本当にそのくらい美しい空だものね」
「空全体が輝いていますね……星は美しいだけではないのも、凄いところだと思います」
「あ、位置で自分が何処にいるか分かるんですよね!」
「ええ、そうですよ。ふふ、といってもこの距離では変わりないと思いますが」

 レイヤと会話しながらイズレンディルは瞳を細め、星を視界に映す。移動した分だけ空が動いているように見えた。空を眺めていたクルタルはハーヴィ、と呼びかける。

「なんだったか、ほら、星だったか星座だったか、ひとつひとつにオハナシがあるんだろ?」
「ん、そうだね、星にはそれぞれ物語があるんだ」

 頷いたハーヴィは空に手を伸ばす。そのまますっと星を差し、空に描かれた形を指先で辿った。

「星同士を線で結んで見立てるんだ。ここには人、ここには物……といった具合にね。昔の人達はそこに世界を見出したんだ。それに占いと星は古くからご縁があってね、星から吉凶を見るんだよ」
「星に、世界を……」
「地域によってその物語も違うよね。まるで人の数だけあるみたいに!」
「ハーヴィ、ついでにこの先占ってみたらどうだ?」
「はは、いいかもしれないね。この旅で目当ての湖が見られるか占ってみよっか」
「占いは気になりますね! よろしければ、後で星座のお話もしませんか?」
「わ、私も気になります……!」
「もちろん、構わないよ」

 ララノアとイズレンディル、ヴィンツにハーヴィ、クルタルが星について話をしている傍ら、エルナとレイヤ、アンネエルカも盛り上がっていた。

「エルナさん、どうしたの?」
「スノーエンジェルを作っていたんです! こうして、両手足をぐいぐい動かすんですよ!」
「わ、羽根が生えたみたいになりましたね!」
「本当! 面白いわ!」

 手足を動かし、雪の上にいくつも形を作る。星の話を終えた面々も後でそこに加わったりと、静かな冬の夜は賑やかな声に包まれていた。

 夕食後、仮眠をとっていたヴィナスは初めの見張りへと名乗りを上げる。同じ時間に担当となったイズレンディルと、アンネエルカの淹れたココアを手にしばし星を眺めた。

「皆、唯一の宝石だね。……星の詩人は、今頃寝てそうだな」

 それはいつでも傍にあるはずなのに、気付かないこともある。ただ、一度輝きに魅せられればもう見えなくなることはない。天空に光る、唯一の輝き。宝石。ヴィナスは無意識の内に自分の瞳を軽く覆い、小さく口元を緩めた。

●湖への道
 雪原の朝焼けを眺め、朝食を終えた皆を呼び集めたヴィンツは、一人ひとりに棒状のものを渡していく。

「これは、もしや杖ですか!」
「あったりー!」

 ぴんときたレイヤの言葉に笑顔で頷く。ここからはヴィンツもあまり行ったことがない場所らしく、これを杖として地面を突きながら移動するのが安全だそうだ。ヴィンツはクルタルへ楽しそうに視線を向ける。

「そっちのキミが心配してたように大きな溝も白で覆い隠されているかもしれないからね」
「そうか……これなら事前に気付きやすいか」
「ヴィンツさんは雪の旅に慣れてらっしゃるのですね」
「色んなとこ行くし、雪も好きだから! 旅エルフさんはあんまり雪旅しないんだっけ?」

 イズレンディルたちが話す傍ら、二日目の旅がスタートする。今日は風が強く、積もった雪も撒き上がることで視界もよくなかった。けれど旅を続けられないほどでもない。

「ううう、さ、寒い……! エクレアさんの毛皮が羨ましい、……ああ、あったか、あぅ!?」

 レイヤが暖を求めてエクレアさんに埋もれようとするも、よっぽど体が冷えていたらしい。寒がるエクレアさんに小突かれ、レイヤは渋々ブランケットで体を包む。
 途中、一度雪のように真っ白な狼に襲われかけたが、いち早くララノアとエルナ、アンネエルカが気付き、遠距離からイズレンディルとレイヤ、ハーヴィの魔法が蹴散らした。

「さて! 注目ですよ皆さん!」

 午後の休憩中、レイヤが皆の前に立つ。その手にはパウンドケーキが乗せられていた。

「我が神の教えの一つ、『週に一度はケーキなどを頂くこと』を皆さんにお勧めします」
「け、けーき?」
「これは長い旅の最中にもゆとりを持つことが大切だと説いていて――おっと、食べたり飲みながらお話しましょう!」
「まあ、美味しそう! それでその神様って?」
「他にはどんな教えがあるのですか?」

 彼女の力説に好奇心旺盛な人々が食いつく。同行しているメンバーはほとんど知識に貪欲で、彼女のケーキ談義は思った以上の盛り上がりを見せた。

「視界もまだ悪いけれど、目的の方向には向かっているのかな」
「その辺りに関しては信頼するしかないかもね、彼しか目的地を知らないのだから。ヴィンツ、平気かい?」
「もっちろん! 心配?」
「少しね」
「ふふ、わかった。これまで進んできた地形は今のところ冒険譚の記述から大きく外れていない。かかる時や日数、方角も問題ない。ねーリスのエルフさん!」
「はい、バッチリですよ!」

 ハーヴィとヴィナスの問いに答えながら、エルナとヴィンツが太鼓判。午後から風も止み、薄く積もった雪を踏みながら今日の野営地に到着した。一度作ったからか、二日目のカマクラ作りはあっという間だった。

「眠れない夜はホットミルクを片手に夜空を見上げたりするのだけれど、満天の星空は本当にすごいのね……いつまでだって眺めてられそう」
「本当に! ロマンがありますよね!? すごい寒いですが、でもそれもいいんです! アンネエルカさんのココアも美味しいですし!」
「ふふ、良かった!」

 レイヤとアンネエルカと交代し、エルナとララノアがブランケットに身を包んで不寝番へ。

「本当に落ちてきそう……あ!」
「! 本当に落ちましたね!? あの湖に落ちたのでしょうか!」
「山の向こうに落ちていきました……! わ、私……ずっと森に引きこもっていましたので、世界のイロイロなものを見て、触れたいと思うのです……」
「わかります! 想像するとワクワクしますよね!」
「エルナさんもでしか! 知らないこと、もっと知りたい……」

 二人は目指す湖について話を続ける。尽きない話を静かな星空が見つめていた。

●銀湾星に光る
 到着! と叫んだ青年が立ち止まり、皆は一様に瞳を開く。
 ――林を抜けたそこに美しい湖があった。
 周りの地面が雪の下でぼんやりと光り、氷が薄く張った湖の中も淡くさまざまな色が煌めいている。まるで水の中にある星空を間近で見ているような、不思議で神秘的な輝きが水底に広がっていた。
 幻の湖がどうしてすぐに見つかったのか。皆が顔を見合わせる中、ヴィナスはヴィンツに瞳を向ける。

「ヴィンツは知っていたんだね」
「その方がドキドキするでしょ? ここは元々、オレや皆なら見える場所だったんだよ」

 悪戯っぽく笑った青年はそのまま走って調査に行ってしまった。レイヤやエルナが湖の傍まで走り寄り、感嘆の声を上げる。

「すごい……! 本当に七色に光ってますね!」
「幻想的な光景ですね! ここに私の魂の入っていた星もあるのでしょうか!」
「探してみましょうエルナさん!」

 嵐のようなテンションの傍ら、アンネエルカは周囲を見回したあと静かにその場へしゃがみ込む。触れた石を拾ってみると、それは深い夜空色で星のように金色が輝いていた。傍らには宝石のような緑や金、澄んだ青、赤と金が入り混じったような輝きを見つけて手の中に収めてみる。

「これを贈ったなら……例え離れていても、想う心はいつでも貴方の傍にあるって。そんな気持ちを伝えられるんじゃないかしら」
「ええ。見た目が美しいのも心惹かれますが……自分、もしくは誰かと近しいものだと感じられます」

 イズレンディルも膝をつき、目に留まったものを拾い上げて優しく雪を払う。鮮やかな赤色は複雑に模様を描き、まるで花のようにも思えた。

「クルトもどうかな。不思議な気分を味わえるよ」
「ん、」

 魔法を使い、光る湖の上を歩いていたハーヴィがクルタルに声を掛ける。

「考えごと?」
「まあな。ここにあるのは、自分の魂が元々入っていた星、って言われてるんだよな」
「うん」
「じゃあ……俺がよく見るあの夢は、お空の上で経験したことなのかもしれねーな、なんて」

 クルタルは瞳を細める。ほとんど思い出せない、けれど頻繁によく観る奇妙な夢。それは、この身体の前の入れ物の記憶なんじゃないだろうか。考え込んでいると手を引かれ、湖の上に引っ張られる。身体が強張ったが、その足は水面に着地した。

「夢は無意識下の願望や過去の経験を元に見ることもある」

 小さく笑ったハーヴィは頷いてみせる。

「だから、クルトの言う空の上の経験っていうのもあり得るかもよ? なんてね」
「……はは。ま、考えても仕方ないよな。夢は夢、言い伝えは言い伝えだ」
「ふふ。それじゃ、ここでしか出来ないことを楽しもうか」
「ああ。……綺麗だな」

 湖をゆっくり眺めながら、二人で水上を歩いていく。水上には途中でエルナとレイヤ、アンネエルカとイズレンディルも加わった。湖の周りではヴィナスが腰を下ろし、美しい光景と静かな時間を楽しんでいる。

(ここが流れ星の落ちる湖……)

 空に昇った魂が地上に還り、また生まれる場所。
 自分の魂もここから生まれたのだろうか。オババ様のカケラも、もしかしたら。
 ララノアはきゅっと口を引き結んで眉根を寄せる。昔の温もりを思い出してしまうと、今の寒さがありありと感じられた。この世界での旅を続けている間にいつか、いつかまた。
 瞳を閉じ、ララノアは薄く唇を開く。そして静かな旋律が流れ出した。
 星(魂)の歌。命が奪い奪われ繰り返す世界。
 寂しくて悲しい景色の中でララノアは祈る。全ての魂が、幸せになれますように――

「あ、いた! ララノアさん!」
「ひゃい! どうしたのでしか!」
「また皆で星を観ようというお話になりまして! ……泣いてました? 大丈夫です?」
「あ、は、はい! ……ここがあまりにも綺麗、で」
「本当に綺麗で不思議な場所ですよね! この前見た流れ星も魂を乗せてきたのでしょうか、空に還る時は何に乗っていくのでしょう!」

 世界にはまだまだ不思議が一杯ですね! とエルナは踵を返し、それをララノアも追っていく。
 湖は、夜になるとさらに輝きを増したように見えた。まるで空にいる仲間たちに、還る場所はここだと呼びかけるように。

マスターコメント

お疲れ様でした! 雪の旅と美しい湖、楽しんでいただけたでしょうか。 気に入った石があれば持って帰っても構わないだろう、とのことです。 また不思議な旅に皆さまを案内出来ればと思います。 MVPは記録には残りませんが、楽しんでくださった皆さまへ。 ご参加いただきありがとうございました!
ミドルシナリオ

ミドルシナリオ普通 報酬:多い8 / 6〜8人

2021年12月23日 22時05分25秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ヴィンツ・ラッテ

    やーやー!今日は集まってくれてありがと! 目指すはイェルノー荒野、銀湾星の湖。 本当にあるかどうかわからないものを探す旅路だ、あまり気張らず雪原の旅を楽しんでいこう。 さて、今回の冒険はどんなものが見られるかな。どんなことが起きるのかな。 一人旅じゃないってことも結構ワクワクしてるんだ。 楽しくって胸の弾む旅をしよー!

  2. レイヤ・ダライ=カホール

    レイヤ・ダライ=カホールです。よろしくお願いしますね! 銀湾星の湖…!これはロマンの香りがしますね…! 片道二日となると、野営の準備も要りますね!寒いしいろいろ準備しなくちゃ…楽しみです! 荷物が嵩張りそうです、荷車はないけどビヒモーの“エクレアさん”がいるので、一緒に連れて行って、荷物を運んでもらおうかと思っています。

  3. ヴィナス

    ヴィナスだよ、よろしくね。 防寒と野営の準備は確かに要りそう。 あとは、(綺麗な景色眺めるの最優先だけど)交代で火の番兼ねた不寝番とかかな。 雪原歩くとなると体力使うし、寝られる時は寝たいよね。

  4. イズレンディル・パラリム

    エルフのキャスター、イズレンディル・パラリムと申します。 幻想的な雪原の旅ですね。 皆さんよろしくお願いしますね。 ・期間は行きと帰りで一週間ほど ・ルート取りや湖の調査はヴィンツさんが実施予定 ・敵発見時の対処や道中の対応は私達にお任せ レイヤさんが仰る通り野営の準備は必須ですね! 寒さも考えるとやはり焚火は絶やさずに不寝番でしょうか。確かに徹夜は翌日が大変になりますし、交代にしたいですね。 他には合間合間の料理も必要になりますし、休憩する時の備え等もあると良いかもしれません。 考えてみるとやる事は様々ありますね。

  5. エルナ・クルプファルツ

    顔出し遅くなりました……! エルヴンシューターのエルナです!皆さまよろしくおねがいしますね! 銀世界の冒険!どんな景色に出会えるかワクワクですね! イズレンディルさん情報まとめありがとうございます! レイヤさんの言うとおり野営は大事ですね! 洞穴などの風雪を凌げそうな所があれば利用していきたい気もしています! その場合は動物さんの巣になっていないかも調べないとですが!

  6. ハーヴィ

    キャスターのハーヴィだよ、よろしくね! とっても寒そうだけど一面の銀世界を見られるだけでもう楽しみ! 野営準備は確かに必須……! 焚き火が生命線になりそうだし、交代制には僕も賛成。 洞穴が見当たらない時は雪山の影とかで野営する感じかな? 穴を掘ってかまくら作ったりするのも手かも。 僕自身はあんまし便利な汎用スキルやアイテムを持ってないんだけど、生活魔法で火を起こしたり、ピュアウォーターでみんなの飲み水を出したりは出来るよ。

  7. クルタル

    ヒーラーのクルタルだ。よろしく頼む。 この時期だと冬眠中の獣を起こしてしまったり、冬眠前で蓄えに出ている獣と出くわしてしまったり…はありそうだな。野営にも気を遣う必要がありそうだ。 聞き齧りなんだが、雪穴は意外と暖かいらしいな。雪の断熱性がどうの…という。吹きさらしよりは、雪穴を掘るのは良いかもしれない。

  8. イズレンディル・パラリム

    洞窟やかまくらは良さそうですね! 皆さんで雪穴にこもるというのは、何だかとても楽しい気持ちになりそうですね。ふふ、野営が楽しみになってきました。 雪原、ですと現在位置の確認も適宜していくと良いかもしれませんね。 スキル位置感覚があれば大丈夫そうですし…夜に星の位置で確認をするのも有用そうです。 と言いつつ、本音の半分ほどは雪原で星を見上げてみたい、というだけですね!

  9. レイヤ・ダライ=カホール

    かまくらみたいなのはいい案だと思います。 寒い風が防げればだいぶしのぎやすくなるかも。 それになんだか楽しそうです! 雪原で星!そういうのもいいですね! 寒いけどきれいな星空が見れそう。

  10. ハーヴィ

    雪原の下、満天の星空を見上げるなんてロマンチック! 寒い時ほど空気が澄んで夜空が綺麗だものね。良いなって思うよ。 かまくら作るんなら、表面固めるのにもピュアウォーターがきっとお役立ちだね。持ってくよ。 中で暖を取りながら、みんなでお話なんて出来たら楽しそうだなって思ったり!

  11. アンネエルカ

    遅くなってしまってごめんなさい、 ウォーリアのアンネエルカよ、アンネって呼んでくれても大丈夫。 どんなに素敵な景色が見れるのか…想像するだけでももうドキドキしてしまって。 皆と楽しく過ごせたら、さらに嬉しいわ!どうぞよろしくね。 わずかながら、ってことではあるけれど途中にある森や林で 焚火用の木を拾ったりした方がいいのかしらね

  12. エルナ・クルプファルツ

    カマクラ!いいですね!みんなで中でお話するのも楽しそうです! 満天の星空を見上げるのも素敵です!ハーヴィさんも言っているように寒いほど空気が澄んできれいなお星さまが見られますからね! 遮るもののない一面の星空を想像するだけでワクワクしますね! 位置感覚Lv5なので持っていきましょう! もう一つは道中の警戒用に超聴覚にしようかなと思っていたりする感じです!

  13. イズレンディル・パラリム

    ふふ、よかったです。ではかまくらを作って星見もして、ですね! ピュアウォーターの水があればかまくらはしっかり固まりますね。 道中の飲み水にもなりますし助かります! アンネさんもよろしくお願い致します! 焚火は結構な量の木材を使用しますからね、出来るだけ拾っていきたいですね! 私も木材拾いお手伝いしますね。植物共感をもっていきますので、枯れ木や倒木がある場所を見つけたいです。 エルナさんは位置感覚ありがとうございます。Lv5はすごいですね!頼りにさせて頂きますね。 私は幽体離脱で上空から周辺を確認出来るようにしますね。あまり回数は使えないので、湖を探す時に使うようにしてみます。

  14. ヴィナス

    かまくらや位置関係はお願いするとして……、木を拾うのは俺も手伝うよ。 それと、ショートスリーパーあるんで、夜の火の番は少し長めにとれるよ。 あとはお料理かな、こういう場所でもスープくらいなら作れると思うし、日中歩いてたら温かい食べ物で一息つきたいからね。

  15. レイヤ・ダライ=カホール

    それじゃあわたしは生活魔法とサバイバル知識を持っていきますね! 道中いろいろ役に立つはずです!

  16. ハーヴィ

    あ、生活魔法はレイヤさんが持って行ってくれるんだね! それじゃあ僕は先に出したピュアウォーターと、マジカルポケットにしようかな。 食材をぎゅぎゅっと詰め込んで持ってくよ。でも料理は苦手だからヴィナスさんや他の人にお任せで!

  17. クルタル

    了解した。俺は……どうしようかな。湖はどうにも「ある」「ない」で人々の意見も分かれているようだし、幸先いいように、幸運の星でも…… あとは、クレバスに落ちてしまった時のためのロープだとか、あとは毛布だとか、か。 スキルレベルは高くないんでどこまで役に立てるかはわからないが、よろしく頼む。

  18. ヴィンツ・ラッテ

    ふんふん、カマクラかー楽しみだね! 冬の夜空は幾千の星が見えるだろう。綺麗だと眺め空に輝いていた星は地上に落ちてもなお綺麗なのかな?それを調べるのも楽しみー! 出発まで一日を切ったね。忘れ物はない?キミの心に未知を楽しむ用意はできてる? それなら出掛けよう!キミたちの物語にまたひとつ違った彩りを添えに!

  19. ララノア・グラヌローザ

    はぅはぅ…ぅぅぅ…ご挨拶がギリギリになってしまいましゅた…(しくしく しゅみませんでし…ヒーラーのララノアでしっっ ぇとぇと…かまくらさんでございましか…初めてにございましっ ぁ…でもお邪魔にならぬようお手伝いしつつ隅っこにいましので(がばちょ礼 湖が見える方と見えない方がいると…何か条件があるのでしょうか…(ふむ ひ、ひとまず超視覚はお持ちして、索敵などに役立てたいなと…た、たてばいいな… がんばりましっ!えっおー(ぐっぐっ

  20. エルナ・クルプファルツ

    いよいよ出発日ですね! 位置感覚任されました!リスさんと一緒に道中の警戒頑張りますね! 幸運の星!いいと思います!冒険には運も大事ですからね! 食材や調理もありがとうございます!そちらはお任せしますね! カマクラを作ってみたり!星を眺めるのを楽しんだり!こっそりスノーエンジェルも作ってみたり! 楽しい冒険になりそうです! ではでは、皆さま現地ではよろしくおねがいしますね!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0