トマスと老人の遠い過去
紀藤トキ
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シナリオID:1588
オープニング
やる気の感じられぬ風情で、トマス・ダンテが呟く。先日、学園内で目立たずスタンスを明らかにせぬ方針を変え、積極的に意見を主張しつつ中立を保とうと考えた彼は、動き出す前に祖父に話をしに行った。代々中立を標榜する家系の嫡男としてふさわしくない行動を取っているのではないか。そう思い、叱られるつもりで向かった彼だったのだが、祖父は父以上に寛容だった。
『お前は若い。中立であろうとする意志さえ揺らがねば、過程などどうとでもなろう』
これまでのトマスの言動や、学園内で得た知己、冒険者との交友や政治討論部の設立などについて聞きながら、老人は怖い地顔で笑う。しかし、最後に一つだけ釘を刺していった。
『善悪と是非の別を、お前はまだ知らぬな。お前の父も、私も教えてこなかった故ではあるが危うい。……一つ、課題を出しておこうか』
そうして、言われたのが『曾祖父が家督を譲り、一線を引く事になった事件についての真相を調べよ』という事だった。祖父が当主となったのは、今のトマスとさして変わらぬ年頃だという。在学中にダンテ家を背負う事になった祖父が、どのような若者時代を過ごしたのかをトマスは知らない。
「リヴァマス老の一件、であろうが……。真相と言われてもな」
「ご隠居様がそうおっしゃるのであれば、何か知られていない事があるのでしょう」
むすっと腕を組んだトマスに、シオンが紅茶を淹れていく。タイコモは少し前まで図書館に籠って当時の記録を調べていたが、成果なしとの報告を残して仮眠を取っていた。カナンは扉の前で話を聞いてはいるが、あまり興味がないのか会話に入っては来ない。
「祖父がそう言うのなら、か。確かにそうではあるが……」
トマスが知る事件概要はさほど複雑な物ではない。ヘルベルト・リヴァマスの兄、近衛騎士ミヒャエルがパンクリアース学園内で帝国の留学生相手に刃傷沙汰に及んだというものだ。相手は即死。帝国との関係が決して良くなかった当時、最悪の事態への発展もあり得た。結局、ミヒャエルは処刑され、彼を近衛として使っていた姫、現在の王妹にあたるキャサリンは修道院へ送られる。嫡男の不始末を聞いたリヴァマス伯爵夫妻は自裁し、事件の背後に何があったのかを調べる道は途絶えた。
「……リヴァマス伯爵家は召し上げとなり、残る唯一の血縁であるヘルベルト・リヴァマスも罪を負う。それは妥当な判決だった筈だ」
帝国の大臣の長男というのは、王国で言えば上級貴族の嫡子を殺したようなものだ。就いていた職務も悪かった。理由がどうあれ、近衛騎士が王族同席の場で剣を抜き、他国の要人を殺害したとあれば罪は極めて重い。少なくともトマスの知識で言えば、連座での処刑も妥当な判決だった。しかし当時の王太子、現在の国王がそれに待ったをかける。学園内で署名を集めて父王に嘆願したのだ。結果として、リヴァマスの家名は存続の上でヘルベルトは政治犯とされ、死罪を免じて魔法使いの塔へ送られることとなった。
「……王家の者からとはいえ法の裁きへの口出しに異を唱え、曾祖父は職を辞して抗議を示した。……真相と言っても、それ以外の何があるのか」
「分からない事は知ってる人に聞けばいい。リヴァマス先生なら聞けば答えそう」
カナンの発言には一理あるが。
「……当事者の発言に信憑性はあるのか? そもそも、あの怠惰な老人に聞いて本当に真実を語るのか」
トマスはヘルベルト・リヴァマス老を好いていない。若くして事件に巻き込まれた無関係な少年であった。それは分かる。しかし、彼の生命を救った結果、ダンテ家は大きな影響を受けた。若かりし祖父の苦悩と、曾祖父の無念を思えば苦い顔にもなる。そして何より許せないのは、拾った生命をあの老人が有意義に用いていると思えない事だった。少なくともトマスの目から見れば、趣味の蛇の研究に精を出すただの変人だ。
「あとは、ご隠居様ご本人と、もしかしたらご当主様。タイコモ様の御父上もご存知かもしれませんね」
「うちの父は、ご当主様の許可もないのに話はしませんよ……」
もそもそと起き出してきたタイコモの言葉に、トマスも同意する。もちろん彼の祖父や父も語るまい。家族の口から聞いて教えてもらえるなら、課題などという言い方はしないだろう。
「あ、院長先生はどうかな」
「……王妹殿下か!」
カナンが何気なく言い、それは盲点だったとトマスは考え込んだ。犯人の近衛騎士ミヒャエルについては良く知っているであろうし、ヘルベルト老とも年が近い。カナンやシオンが育った孤児院の院長であり、ダンテ家が支援しているという関係性もある。問題は、場所が王都から離れたダンテ家の領地であるため気軽には行けない事だった。
「冒険者のように、あの巨鳥で飛んでいければ速いのだが……」
「ならば冒険者に依頼して書簡を運んで貰えば良いのでは? 過去の事件についてとはいえ、機密を暴くような話でもないでしょう」
もとより国家の機密になるような内容であれば、祖父も課題などとは言うまい。院長とて話せないことは話さないだろう。書簡を託せば、返事くらいは貰えるだろうか。
「ついでに、冬の前に色々手伝ってもらえばいいと思う」
「確かに。屋根や、牧場の柵を今年は見に帰れないかもしれませんね」
カナンとシオンが気に掛けている点も、依頼に含めればちょうど良い。手紙を渡すだけで依頼を出せば何事かと思われるが、別件のついでであればおかしなこともない、だろう。
「そうだな。特に漏れて悪い事があるような話でもない。冒険者達にはあの老人と懇意な者もいる筈だ。話を聞いて貰うのも良いかもしれないな」
自分ではどうしても、ダンテ家の側に立ってしまうが、リヴァマス老の側で見るのであれば別の見方もあるかもしれない。少々やる事も多くなるが一つ一つは雑事であろうから、依頼として問題にはならないだろう。冬が近づく前に気が付けたことは良かったかもしれないと思いながら、トマスはペンを手に取った。
解説
マスターより
リプレイ
「ご無沙汰しています。こちら、トマス様からです」
代表してゲルダ・クラインが院長へ書簡を手渡し、事情を簡潔に説明した。ララベル・サン・ディーベルも挨拶を交わし、子供たちへ手を振る。
「元気にしてた?」
にこやかな笑顔に、前に来た孤児院の先輩のつれて来た人だと思いだしたようだ。
「冬前に若い人が来てくれて助かるわ」
「……あの。後程、お時間をいただいてもよろしいでしょうか? トマス様とリヴァマス先生のことで、お伺いしたいことがありまして」
2人の確執が気にかかり、その原因を調べたことがあると添えたゲルダの申し出に院長は頷き、レティシア・レインフィールが時間は就寝前はどうかと提案する。相談の結果、一日の仕事を終えた後に修道院の一室で話を聞くこととなった。
「遅くまで人の気配があると、寝つきが悪くなりますからね」
と言われれば、そういうものかと一同も思う。
●
冒険者達は手分けして孤児院の手伝いに向かった。子供達の元へ向かったのは、コルネリウス・アーラとレティシアである。綺麗なエルフのお姉さんから勉強をしようと誘われた男子は照れもあるようで、仕事がある等と言って外へ飛び出していった。女子は貴族のお姫様であるレティシアに熱い視線を向けている。
「……地面を黒板代わりにしなくとも、大丈夫そうですね」
さすが王族の関わる孤児院という事か、レティシアが危惧していたような筆記用具の不足はないらしい。聞けば、できそこないの紙などを捨てずに回してもらったりもしているそうだ。
「傷んだ柵は他にないかな?」
「子供達が良く世話していますからな」
最初にぐるりと敷地を回ったシルヴィア・A・カペルは、交換すべき柵の目星をつけてきた。思ったより少ないと言えば、脱走しようと柵を壊すような畜獣はいないのだと、案内した修道士は誇らしげだ。最初は水くみを手伝っていたゲルダは、今は子供たちに交じって牧場の小石拾いをしている。
「随分心地良い場所なのですね。幸せそうで何よりです。あ、あなたのお子さんですか? 元気そうで素敵な鼻ですね」
動物交感で伝わってくる動物たちの幸せそうな感情に気をよくしつつ、リディリディ・トゥラ・イェレミースは畜獣の様子を見ていた。怪我をしているものがいないか、不快に思う事が無いか。動物に話しかける間は、人間社会にいる間の緊張もほぐれているようだ。絵になる綺麗な光景に逆に近づきにくく感じているらしく、ちょっかいを出してくる子もいない。勉強から逃げてきた男子が寄っていくのは、背格好が同じくらいのゲルダだった。
「なあなあ、こういう尖った石が駄目なんだぜ。良く見とけよな!」
「そうなんですね。牛さんが痛くならないように気を付けましょう」
ちょっと綺麗な同世代位に見えるゲルダにはお年頃の男子達も気おくれしないようだ。一方、屋根が傷んだ修道院へはナキルとリサ・ベイカー、ララベルの3人が向かっていた。
「雨漏りは、こことここか。あ、建物の図面みたいなのあるかな?」
「あちらで頂いてきました!」
建物の中から様子を聞いていたナキルへ、リサがつたない図面を手渡す。大工になりたい孤児の手習いらしく、汚しても構わないので持って屋根に上がっても良いそうだ。
「修道士さんの部屋の雨漏りは、向こうの屋根から来てるみたい」
ナキルの確認を受け、ララベルは透視を駆使して直すべき所を絞り込んでいく。男性陣が作業手順などを固める間に、リサが手際よく道具や資材を並べていた。
「作業にかかる前に、お昼にしませんか?」
今日のメニューは焼うどん。資材運びなどに向かうリサからやり方を伝えられ、一生懸命麺の生地を捏ねては伸ばしていた料理当番の子の鼻に、白い粉がついている。打ち粉をしてから折り、包丁で切る所はリサが手本を見せた。おっかなびっくり包丁を入れる子の、手を取って教えていく。
「ぜひ、肉うどんにしましょう」
自他ともに認めるお肉エルフである所のリディリディが持参したお肉を手にそう強く主張し、そういうことになった。皆が揃う頃に茹でて皿に取り、持参した醤油をスープの味付けに加えると、ふわりと漂う香りに子供だけでなく大人も唾を飲み込む。
「リディさんは大盛りですね!」
成長期男子と同じ量をリサに盛られたリディはさらにお代わりまでして、一部の孤児たちの敬意を集めていた。
●
「午後からは、護身の授業をしますよ」
体を動かすと聞いて、コルネリウスの言葉に興味を持った男子もいたようだ。午前と変わってレティシアは補助に回り、受け身や剣術などを教えていく。少し疲れた頃には、休憩がてらに座学。危ない場所を避ける事、助けを求める事の大事さなど護身の考え方をレティシアが伝える予定だ。修道院の屋根の上から眺めていたナキルが、青空教室の微笑ましい光景に頬を緩めた。
「おー……なかなか良い眺めだな。よし、気合入れて作業すっか……!」
バランス感覚を生かして高所を歩き、補修場所に合わせて部材を加工していく。実際の作業は建物の知識をもとにララベルが担当する分担だ。どんな大きさの木材が必要そうかなど、ナキルの指示を聞いてリサが走り回っていた。
「今は危ないから離れてて、修理が済んだら一緒に遊ぶから」
屋根の上からララベルが興味を持ったらしい子供へ声を掛け、大きな子へはリサが手伝いをお願いする。小さい子たちは護身教室へと案内した。
「あなたの調子も、良いようですね。土の事はわかりませんが……、何か不快なのですか? ふむ」
孤児院から出て生えている果樹に話しかけた後、畑の方へとリディリディは足を運んだ。植物交感で伝わってくるのも、陽光が気持ち良いだの他愛もないものばかりで、たまに不快そうな植物を見つけてしゃがみ込む。解釈が難しい植物の感覚を聞きつつ、茎でもない、葉でもないと探し回り、ついに根に虫がついているのを見つけて排除した。
「一生懸命に、ありがとうございます。あら、お顔に泥がついてしまっていますわ」
「あ、あの。ありがとう、ございます」
いつの間にか近くにいた院長にハンカチを差し出され、ちょっと迷惑に思いつつも言い出せずに受け取りちょんちょんと顔を拭く。老婆と言うには意外と若々しい顔を見て、そういえば年齢は同じ位なのだと思いだした。何か話をしなければならないのだろうか、と思うも特に思いつかない。
「……人間は、年長者への礼儀に欠けている気がします」
考え考え、口を突いて出たのはそんな言葉だった。トマスは一族の長者である祖父の命であるのに、この調査を尊重していない事が気に障っていたのだ。真実を知りたいのなら、自身かせめて腹心を遣わすべきで、冒険者のような他人に委ねてよい物ではないだろう、と彼女の良識が主張している。そんな内心迄読み取れる筈はないが、院長はトマスの事だと何となくは察したらしい。
「トマス君はそうと意識して貴女達にお願い訳ではないかもしれないけれど……。困った子ね」
特に返事が欲しかったわけではないので瞬き1つ。所在無げにそのまま持っていた汚れたハンカチを院長はひょいっと回収し。
「そろそろお茶の時間よ。よろしければ貴女もいかが?」
「いえ、その……、はい……」
もう畑は回りきってしまったし、断る理由も思いつかずに流されてしまう。院長が仕事中の農地や牧場へ声を掛けると、柵を直し終えたシルヴィアや教室が一段落したレティシアやコルネリウス、農地からはゲルダと子供達が集まってくる。
「少し、休憩しませんかー?」
リサが声を掛けたナキル、ララベルも屋根を降り、皆で英気を養ってから残る作業へ取り掛かった。
●
夕食の後片付けも済み、子供たちの寝かしつけも一段落したころ。修道院の一室に一堂は集まった。しっかり聞いておこうと思った学園生徒組だけでなく、ナキルも呼ばれている。こんな機会でもなければ話せないような昔の事だから、なるべく大勢に聞いて欲しいという院長の希望もあった。
(昔の事とはいえ、学園のコトを知っとくのは。いつかオレも学園生になる時きっと役に立つよな)
あるいは、生徒会長になどなってあたふたしている誰かの訳にも、知識は立つかもしれない。リサも知っておきたいという理由で、聞きに回るつもりだ。リディリディも昼ならば農場が気になって席を外しただろうが、夜であるならと端の席に座った。
(王太子とは人間の中では偉い人ですよね。その人が働きかけまでして救ったのは、果たして誰なのでしょう)
そんな程度の薄い興味は、無い訳でもない。実際に起きた事件についてを、院長が最初に説明する。
「……こんなお話だけど、他に何が知りたいの?」
まずは、とレティシアが問いかけたのは王妹キャサリンの当時の立ち位置。ヘルベルト・リヴァマスは3年先輩、トマスの祖父も同年で、事件まではどちらも何度か挨拶をしたことがある程度だという。ただ、ヘルベルトについては兄であるミヒャエルから弟の話を聞くことはあったので、間接的には知っていたらしい。事件後は双方ともそれに関連して会う事もあり、時々は書を交わすような関係になったという。シルヴィアが合わせて、留学生も含んだ関係を尋ねると院長は嫌そうな顔をした。
「私を王国にいる間の妻にと望んでいたわ。正妻じゃなくね。ミヒャエルは嫌っていたけど、当然でしょう」
「ミヒャエルさんと王妹殿下の間に特別な関係があったのでしょうか?」
意を決してコルネリウスが切り出した質問へは、懐かしそうに微笑する。
「恋心というか、憧れはあったわね。騎士っていうのは、娘心を奪う為にいるような罪深い存在だから」
あるいは政略結婚用の娘が妙な相手に惹かれぬよう、最初から信頼できて身分も弁えた良い男を視界内に入れておくのが狙いだったのかもしれないと院長は苦笑した。たとえそこに深い傷があったとしても50年と言う歳月で消えていると分かる表情だ。これならば、踏み込んで訪ねても問題ないだろう、とレティシアは思う。何か流れ弾を受けた気もしたが、気を取り直して事件の状況を尋ねた。
「事件についてもお伺いしたいのですが……」
「場所は、貴女達も使ったことがあるかしら。学園の舞踏会場の個室よ。休憩に使ったり、逢引なんかにも使われる場所ね」
「逢……」
明け透けに言う院長に、レティシアが絶句し、シルヴィアは面白そうな顔をする。その場にいたのは、近衛騎士ミヒャエルと院長、問題の留学生とその護衛の4名だったらしい。事件は何か意図があって生じたものでは、というコリネリウスの質問へ、院長は首を振る。
「そんなものじゃなくね。駄犬がとうとう待てを我慢できなくなっただけよ。あ。犬に失礼な物言いだったかしら」
模擬舞踏会の際に彼女が休んでいた所へ、招かれてもいない留学生が踏み込んできたのだという。その日もダンスを断られた腹立ちもあったのだろうし、酒もしこたま入っていたらしい。
「……斬ったら、どうなっか……解らねェヤツじゃなかったんだよなぁ……」
「そうね。ミヒャエルは愚かな私を守るために、自分がどうなるか分かっていて剣を抜いたのだわ」
ナキルの言葉に、院長は僅かに顔を曇らせてから表情を立て直した。留学生は、王が彼女を自由にする許可を出したと言い、結果としてそれは事実無根だったのだが。
「父は私を路傍の石の様に扱っていましたからね。ありそうな話と思ってしまって、それで色々と諦めてしまったの」
彼女が抵抗を諦めた時にミヒャエルが剣を抜き、阻止しようとした護衛を叩き伏せて留学生を斬ったのだ。そう顛末を聞いたナキルは腹が煮える思いがした。
(……騎士道は聞き学んでるから……そうだよな)
自分の知る彼女がそのような場面で、諦めて口も目も閉ざしたのなら。ナキルは自分が結果的に死ぬと分かっていても、動かずにいられないだろう。
「あれ? でもそれって、護衛なら職務に忠実だっただけなんじゃ?? やりすぎたのがだめなのかな……」
ララベルが首をかしげる。護衛は制圧できたのだから、留学生も殺さずに済んだのではないか、と。これまで静かに聞いていたシルヴィアが、合点がいったように溜息をついた。
「当時の政治状況ではその醜聞は表に出せまいよ。不幸な事故で受けた傷を理由にして殿下の御身を強請られれば、首を振れない事態も予想できた。……それを防ぐには、殺さざるをえなかったのだね」
判決は騎士の処刑と家名剥奪、一族の連座。それについてシルヴィアが院長の意を問う。
「私はミヒャエルに救われた側だもの。判決には不満だったし、抗議してくれて嬉しかったわ。感情としてはね」
「……今の国王陛下が、学園内で署名を集めて父王陛下に嘆願を出したのですよね」
「それがリヴァマス先生の生命を救い、当時のダンテ家当主が抗議の為に隠居を選んだ、と聞いているよ」
ゲルダとシルヴィアの言葉に、院長はそのとおりだと答えた。王族の不名誉に関わる事なので詳細は公開されなかったが、それでも噂は広がり、留学生の評判の悪さや裁きの正当性、個々の愛国心と騎士道の解釈などで学生達は揺れたのだという。彼らの感情が納得できなかったのも理解できると、シルヴィアは思う。
「ただ、語られていない事もあるわね。例えば、私の兄と一緒に署名活動の先頭に立っていたのはダンテ家の嫡子だったとか、ね」
「ダンテさんの御爺さんですか?」
予期せぬ言葉に、リディリディのへにゃっていた耳がぴくりと動いた。とすると、トマスの祖父が若くして後を継ぐ事になった理由や状況も変わってくる。
「なるほど……課題を出したトマスの祖父にリヴァマス先生への遺恨が無い訳だよ」
シルヴィアが納得いった顔で頷いた。夜も更け、少し寒そうな院長に慮って話はここまでとなる。翌朝、孤児院を後にする面々は思案顔であった。
●
「トマス様とリヴァマス先生との確執、良くない気がするんです」
「そうだね。トマスの隊長先生への気持ちが変わるといいけど……」
ゲルダとララベルは事実を知って思う事もあったようだ。コルネリウスは、善悪と是非の別について考えていた。善悪を定めるのは自分以外でも、是非を決めるのはあくまで己の心だ、と彼女は思う。それ故に。
「己の行為が『悪』と判断されたとしても……道理を通さなければならない時はあるのでしょう」
彼女の心は、リヴァマス老の兄にこそ沿っていたのかもしれない。その気づきを、トマスに伝えようと思うとコルネリウスは言う。レティシアも正義と悪が人によって変わる事を実感していた。
(それ故に、人も物事も自分の心でよく見定めなければならない。……お父様の教えを、私は守れているのでしょうか)
その自問に答える者はなく。往路よりも口数少なく一行は帰還の途に就き、トマスの手には無事書簡が渡ったのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2021年11月11日 23時04分45秒 公開
参加者
ゲルダ・クライン
コルネリウス・アーラ
リサ・ベイカー
レティシア・R・クラティアス
- イェレミース トゥラ リディリディ
ララベル・サン・ディーベル
ナキル
シルヴィア・A・カペル
相談掲示板
シルヴィアだ。今回はよろしくね。 >個人行動予定 50年前の事件の真相を聞き出す為にも王妹殿下にお話を伺うのと、屋根や柵の補修の手伝いが出来れば。時間に余裕があれば子供達に何曲か演奏したいと思っている。 事実関係以上の内容の聞き出し方は悩んでいるから、これから考えるつもりだ。
「ナキルだ…!よろしく頼むぜ… 真相、真相か…学園とかの話は興味あるけど…なんか、こう…まだ考えまとまらねぇな…! …力仕事に全振り…いや、それじゃ何時も通りでダメだな…もうちょい考えるぜ…(ぷすぷす)」 (PL:正直、CCミス。頑張ります。)
コルネリウスです、よろしくお願いします。 聞き出しについてはまだ考え中ですが、孤児と交流がしたいなと考えています。
No.4
えっと、リディリディです・・・。 よ、よろしくお願いします。 2世代前となると、ヒューマンにしてはかなり昔の話でしょうし、事情を掴むのは難しそうですね。 当事者のひとりである王妹のキャサリンさんから上手く聞けると良いのですが、聴取に関して私は自信がありません・・・。 キャサリンさんが冒険者もしくはダンテさんに好意的であれば、返答の書簡は頂けるかもしれませんが、直接事件のあらましを教えて頂けるかは疑問です。 私も何か出来ることがないかは探してみますが、今のところ大人しく農場や牧場のお手伝いに回ろうと思っています。
ゲルダです。 前回、リヴァマス先生の依頼でここの孤児院の誘拐計画を阻止’(【学乱】孤児院危機一髪!)したことがありますので、その際の話に絡めてお話を伺えるかな、と思います。 リヴァマス先生がトマス様を見守っていることと、それをトマス様に知られたくないと思っていること。トマス様がリヴァマス先生のことをよく思っていないこと。 以前から、少しだけ気になっていましたので、……差支えがなければという前置きのもとでお尋ねする形になるかなと。 孤児院の誘拐事件については、リヴァマス先生からの依頼だったということを含めて皆様にお伝え出来ると思いますので、もし必要でしたらプレイングにその旨記載いたしますね。
「>ゲルダ おぉ…すげぇ頼りになる…これがゲルダの姉ちゃん力か… ちょっと過去の報告書も読み漁らねェとだな… >考え中 所で、「ドゥジン教徒」って何かわからねェんだけど。得意分野の話題で興が乗ってる時なんかについでを装って聞いてくってのはアリかなって。 いや、触らねー方が良い話題ならアレなんだけどよ。 あとは…屋根の補修も高所は平気だし。柵の修繕も手伝えるし… …子供…勉強してるのか……オレより字とか上手そうだな…(ぐぬ) って、考えてたら全部はできねぇんだから絞らねーとな…絞らねぇと…。」
ごきげんよう。レティシア・レインフィールと申します。 皆様、よろしくお願い致します。 ゲルダ様、情報などを感謝致します。 面識のある方がいらっしゃるとお話がしやすそうで心強く存じます。 今回は孤児院の皆様のお手伝いを行いつつ 王妹殿下から事件の真相を伺うのが私達のお仕事になりますでしょうか。 あとは、トマス様にお伝えするかどうかも決められる必要がございますか……? >真相 お話を伺う事についてなのですけれど、勿論個別に行ってもよろしいのですけれど 質問の分担面などから、何人かで纏まってお話を伺うのもよろしいかもしれません。 それと、同性のみの方がお話がしやすい話題もございますから その辺りも考慮出来ますとよろしいでしょうか? 例えば、前回のご依頼では一泊されたようですので今回も宿泊されるようなら 就寝前に少しお時間を頂いてもよろしいかもしれません。 >ドゥジン教徒 ドゥジン様は絵画の神ですので、信徒の皆様は石や紙に絵物語をお作りになられておられるとか。 王妹殿下への話の切っ掛けになりそうですけれど 私は創作の知識はあまりございませんので、そちらは詳しい方にお任せしようかと。 >個人 子供達のお勉強のお手伝いか、もしくは修道女の皆様のお手伝いをさせて頂きます。 王妹殿下に対しては先程申し上げたようにお時間を頂けないかお願いを致しますので もし他に女性の希望者がいらっしゃいましたらご一緒出来れば、と存じます。
ゲルダさんは情報ありがとうございます。 報告書もさっと確認してきました。 真相や所感について、トマスさんに何処までお伝えするか、というのはある程度は決めておきたいですね。 >真相 そうですね、ある程度纏まって訪ねてしまった方が聞かれる側にも楽かなと。 私も初対面ですし、内容的にも聞くタイミングも大事かなと思いますから、一緒に過ごして打ち解けてからお話がしたいです。 >個人 私もレティシアさんとご一緒しても良いでしょうか? 子供達のお勉強のお手伝いをしたいのと、王妹殿下とお話するタイミングを何処かで見計らいたいと思っていましたので。
ゲルダは情報感謝だ。面識がある人がいると心強いよ。 トマスにどこまで伝えるかも出来れば決めておいた方が良さそうだ >トマスにどこまで伝えるか 個人的には真実と所感、両方伝えた方が今後のトマスとリヴァマスとの関係に役立つかなと思っているけど、皆の方針に合わせたい。 >ドゥジン教徒 絵画の神という事やどんな絵を描くかは知っているし気になってはいる……ただ王妹殿下と盛り上がれるほど詳しくは無いから私は言及は難しそうだ。あ、話題に触れること自体は有りだと思う。 >王妹殿下に纏まって訪問 纏まって訪ねる方が良いというのと、質問を分担した方が良いというのに賛成だ。 レティシア達が王妹殿下を訪問する時に同行させて貰いたいんだけど、良いかな?
No.10
ええっと、その・・・、話を聞く前からダンテさんに伝えると決めてしまう、ということは避けた方が良いのではと個人的には思います。 それはすなわち、返答の書簡ではなく私たち冒険者にのみ伝える所謂ここだけの話という事ですし。 ただ、これは各々情報を取得できた方の采配に依りますし、それこそキャサリンさんに直接聞きに行かない私が言える話でもないのですが。
>前回の依頼 では、プレイングに前回の依頼に関する情報共有について、記載させていただきますね。 >トマス様への伝言 こちらについてですが、今回の依頼範囲外になるかなと思います。 キャサリン様からトマス様にお渡しする返事には解説にある事実が書かれますし、今回の依頼の目的は「トマス様からのお手紙をキャサリン様にお渡しする」ということのみで、その後にトマス様と会話する機会はないかなと。 おそらく、今後トマス様とお話をする機会に今回聞いた内容を元に会話をしても良いよ、ということなのかなと思いました。
……と、思ったんですが。よくよく考えるとキャサリン様からのお返事をトマス様にお渡ししないとですね……! ええと、ですが、手紙に真実が書かれている以上は「真実を伝えない」という選択肢はないのかな、と。キャサリン様からの手紙をお渡ししないのは流石に……ですし。
>トマス様への伝言 あ……言葉が足りず失礼致しました。 勿論、お手紙を渡すのは最低でも行うのが前提となります。 問題は私達が得た更なる情報になるのですけれど ゲルダ様の仰るように今後彼とお話をさせて頂く機会があれば、という事でございましたら 王妹殿下にはお話を伺った際、トマス様にもお伝えしてもよろしいか 許可を求めるのがよろしいかもしれません。 >王妹殿下に纏まって訪問 コルネリウス様やシルヴィア様に同行して頂けますと大変心強く存じますので 私の方からもよろしくお願い致します。 >コルネリウス様 子供達のお勉強は人手がある方がより目が行き届きますので こちらでもご一緒出来ますと嬉しく存じます。 私はお勉強といえば読み書きと計算をイメージしていたのですけれど 護身も兼ねて少し戦闘についても学べるとよろしいのでしょうか……?
すみません、脱字のせいで意味が変わってしまうミスがありましたのでお直しです… >トマスさんへの伝言 そうですね、今回出来る事とやるべき事については、ゲルダさんやレティシアさんが仰っている認識で大丈夫そうですね。改めて確認ができて助かりました。 院長からの返答から先、より深く掘り下げられた内容に関してはトマスさんにお伝えしても良いか、というのは私も確認はしておきたいです。 >レティシアさん ありがとうございます。では、シルヴィアさんとご一緒に同行させて頂きますね。 子供達に関しては、レティシアさんが読み書き計算をメインに教えるのでしたら、私は護身をメインに、というように分担しても良いですね。私自身、護身のほうが得意でもあるので…。
>トマスへの伝言 手紙に書かれる事実関係はトマスに伝わるから、私達が得た更なる情報の取り扱いや所感は今後の依頼にて……という事なんだね。勘違いしていて申し訳なかった。皆、指摘ありがとう。 王妹殿下にお話を伺う時にトマスに伝えても良いか許可を取るというのも賛成だ。 >王妹殿下に纏まって訪問 快諾ありがとう。レティシアもコルネリウスもよろしく頼むよ。 >王妹殿下への質問 「女癖の悪い留学生が当時13歳の王妹に手を出そうとして近衛騎士に切り殺された」というのをまず聞いて、それを踏まえて質問していきたい……とは思っている。 ・帝国の留学生についての詳細(性格、心情等含む) ・帝国の留学生と王妹殿下、近衛騎士ミヒャエルの関係 ・最終判決について王妹殿下はどう思っているか ……ぱっと思いついたのはこの辺り。依頼を読み直して考えてみるよ。
「>レティシア お、補足サンキューな!へぇ、絵画の神サマ…か知らなかった…初耳だぜ… あー…伝承とかそー言うヤツ…か…?なんか、壁に描いて祀ってるのは昔見たことがあるな。 盛り上がれる程いくつも知ってるワケじゃないな…ふむ。 >女性 …あれ、オレしか男いねーのか……それじゃ、屋根の補修とか力仕事全般は気張るか。 >トマスへの伝言 手紙は手紙で完成形を、そのまま。だな。手紙の内容に口を出すのもアレだしな。 …背負うモンの種類の違いか…や、背負わされるモノか…。」
遅くなってすみません。リサです。 わたしは、どうしようかな… お話しを聞くというよりは、お手伝いかなと思ってます。 修道女さんたちとお話しとか、お昼作るの手伝ったりとか? 子供たちでお仕事してる子がいるなら、簡単な商業知識のお勉強とか? そんな感じで考えてますね。
>殿方 いえ、ナキル様も含めてお二方いらっしゃいますね。 屋根の補修や力仕事の類に関しては私は不得手ですので お任せ出来ますと大変心強く存じます。 >王妹殿下への質問 シルヴィア様の仰るように、先ずはお手紙に書いて頂いた事をお話して頂いた上で ご質問をさせて頂く流れで異論はございません。 私が思い付くものですとリヴァマス先生や トマス様のお祖父様との在学中のご関係になりますでしょうか。 特に先生は当時学生であり、お兄様が近衛騎士様であったのなら 恐らく交流はなさっておられたのではないかと……。 >コルネリウス様 ああ、確かにお勉強の方もそのように分担させて頂くのもよろしいですね。 メインでない方は補佐という形でもお手伝いは可能でございましょうし。 私は座学の方が得意ですので、コルネリウス様がよろしければ 護身の方をお願いしてもよろしいでしょうか……?
>個人行動 まだいろいろ悩み中ですが、農場や牧場で力仕事を中心にお手伝いできたらいいな、と。 あと、言い忘れてしまったんですが……院長先生への質問の際、わたしもご一緒しても大丈夫でしょうか? 情報提供者でもありますので、いたほうが良いかな……と。 質問内容については、……ごめんなさい、まだ、考え中で。纏まり次第ご報告しますね。
>力仕事 私はパワーはあるのですけれど、高いところが駄目なので屋根の上に登ることが出来なくて…すみません、ナキルさんにお任せしますね。 >王妹殿下への質問 私も質問内容はまだ考え中ですね…王妹殿下に手を出そうとした、と言っても斬り殺す程の理由があったのかとは思いますので、やはり周囲の関係性については可能な範囲で尋ねてみたいなと思っています。 >レティシアさん そうですね、ではそのように分担しましょう。 お勉強だと私は計算が少し苦手なので、レティシアさんが得意でしたらメインでお任せしたいです。 補佐も頑張りますので、護身の方はメイン担当、お任せください。
>王妹殿下への質問 リヴァマス先生やトマスのお祖父様との在学中の関係についての質問、良いと思う。王妹殿下と先生は元々交流があったのではないかと言うのもレティシアと同じ意見だ。 先日質問項目に「最終判決について王妹殿下はどう思っているか」と書いたけど、「最終判決とトマスのお祖父様の抗議についてどう思っているか」に変更させて貰うね。抗議自体、国内へ示しをつける為のものかもしれないと思って。現在の関係性も見えてくると良いな。
「>レティシア …二人…居たのか…!?…マジか…気付かなかったぜ… おう、任せとけっ!ちょっと木工得意なヤツからコツも聞いてくるぜ! >ゲルダ 屋根の方、片付けたらそっちも手伝うぜ! >コルネリウス おう、苦手なのがあるってのは仕方ねーモンな! こっちは高い所とか楽しいくらいだからよっ!気にせず任せてくれなっ! 屋根の痛み具合は雨漏れとかを聞き込みして作業するとして… …「斬った」理由か……なんか、その立場までは想像しかできねーけど ちょっと分かる気も…あぁ、わかる気がするな。(むう)」
>王妹殿下への質問 私も、手紙に書いて頂いた内容だけを斬った理由とするのは少々違和感がございますね。 仮にも王国騎士様であり近衛騎士様でもあったのなら 王妹殿下のみならず他の王族の皆様からの信も厚かったでしょうし……。 >ゲルダ様 勿論、ご一緒頂けますと私も助かりますので是非よろしくお願い致します。 質問は色々と悩みますね……何処まで踏み込んでもよろしいのだろうか、という意味でも。
ゲルダも一緒に来てくれるなら心強いよ。当日はよろしくね。 明日出発だから、改めて個人行動予定を。 >個人行動予定 ナキルが屋根の補修をしてくれるなら、私は柵の修繕の方に注力しよう。 王妹殿下への質問は先述した、 ・帝国の留学生についての詳細(性格、心情等含む) ・帝国の留学生と王妹殿下、近衛騎士ミヒャエルの関係 ・最終判決とトマスのお祖父様の抗議についてどう思っているか ……の予定だけど、分担や変更も勿論OKだ。 あとは……「何故陛下はリヴァマス先生の助命嘆願をしたのか」と聞いてみようかと考えている。「留学生が王妹殿下に手を出そうとした」という事実関係以上を聞き出すには工夫が必要だろうけど、斬った理由に繋がるかも。 明日の朝は相談卓を覗くのが難しいんだけど、今夜中は出来る限り覗くようにするね。
うーん、迷ったのですけど、 屋根の補修、前半わたしもお手伝いしますね。 補修用の材料を下からお渡ししたり、ですね。 途中からは、昼食のお手伝い… って、時間帯がわかってませんけど… 他にも時間があれば、子供達に商業知識を伝えられれば、と。考えてます。
「>リサ おっ、それはすげぇ助かるぜ、サンキューな! いや、ホント。一人で資材取りながら作業だと、ちっとしんどかったからなぁ」
>院長先生への質問 ご快諾ありがとうございます。お役に立てるように、がんばりますね! 質問の内容、現時点では……になってしまうのですが、学園で起きたという署名活動についてお伺いしようかな、と。 当時の空気といいますか……どのような流れで署名活動が行われたのか、その経緯について知ることができれば、当時のことを理解する手掛かりになるかなと思いましたので。