【呪輪】その憎悪は連鎖する

岩岡志摩

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シナリオID:1406

オープニング

●経緯
 大陸西部に広がるフィルエス大森林――正確にはその南東部一帯では、木や草が枯れる奇妙な現象が続いている。
 この大森林が広がる一帯の気候は穏やかで、ここで暮らす氏族の大半は農耕や牧畜を行うことなく、自然の恵みを糧として生活していた。
 過去形なのは、この木や草が枯れる現象が収まる気配を見せず、そうした生活も難しくなりつつあるためだ。
 この事態を憂慮した『灰火の守部』グレイオンスが、森が枯れる原因を探ると共に、動揺するエルフ達をケアするため、様々な依頼を冒険者ギルドに持ち込み、調査を行ったのは皆様も知るところだろう。
 ギルド職員アルヒ・ラスカスもそうした依頼に応じ、冒険者達と共に森が枯れる被害が特に大きいとされる地域よりもさらに奥地にある、ムーセルの里への調査を実施した。
 そこで冒険者達は腐り果て、今にも朽ちそうな里の現状を目の当たりにした。
 ――そこに生息する複数の植物型魔獣、そして道化師ロコの存在も含めて。
 そして冒険者達は里にいる植物型魔獣を撃破し、里に生存していたエルフ達を全員救助することに成功していた。
 救助されたエルフ達は、全員衰弱が激しかったものの、今は適切な治療を受け、容態を回復しつつある。
 冒険者達と共にエルフ達を救出したアルヒには、その場にロコがいたことが気がかりだった。
 あの時ロコは植物型魔獣と交戦する冒険者達には一切手を出さず、撃破されても動じることなくあっさりと退いた。
 その後の継続調査で、周辺にいたロコの手駒と思しき魔獣達も姿を消したとの報告が届いている。
 それらの報告や、ムーセルの里での言動から判断する限り、ロコは大森林やエルフ達を脅かすことに加担しているだろうが、元凶とまでは言えない。
 これまでも帝国難民キャンプ絡みの事件や、【蠱毒】絡みの事件にロコの暗躍が確認されているものの、ムーセルの里で見たような植物や胞子を操っていたのかと言えば、疑問符が付く。
 そしてその原因と、ムーセルの里にいたロコは何らかの繋がりがある。
 アルヒは『灰色の守部』より追加で出された依頼内容や、現時点までに判明していることを確認しながら、そんなことを推測していた。

●道化師再び
 ――エルフ達を救出したムーセルの里周辺で、植物型魔獣達が蠢いている。
 ――冒険者には、これを少しでも撃退してほしい。
 そんな依頼を斡旋したアルヒは、依頼に応じ集まってくれた冒険者達と共に、再びムーセルの里へと向かう。
 その途上の森では、以前よりも広範囲の森が枯れ始め、周囲には生物が腐った時に発する甘酸っぱい臭いがたちこめ、胞子めいた何かと共に漂っている。
 そしてアルヒが予測した通りの存在が、この腐り始めている森の中にいた。
「やはりいたか、道化師」
 アルヒは眼前に現れた道化師――ロコに声をかける。
「答えを期待してはいないが問おう。この周囲には何体の植物型魔獣がいる?」
「確認した限りですが、ピンジ(キノコ型魔獣のこと)が12体ほどデス」
 意外なことに、ロコはアルヒの問いに答えていた。
「私が申し上げル区域の中でなら、貴方がたの行動は見逃しマショウ」
 その後のアルヒからの質問にも、ロコは淡々と応じる。
「なぜお前はあの魔獣達に手を貸す? お前がメドゥの指先だからか?」
 アルヒが見たところ、ロコはこの現象を引き起こす黒幕に協力はしているようだが、積極的とは言い難い。
「ソレもありますガ、あの方とはエルフに対する感情が私に近いからデス」
 ロコはあっさりと自身がメドゥの指先に属していることを認めた。
 そしてロコもまた、エルフ達を憎悪していることも。
「お前はなぜエルフ達を憎むんだ? それも罪のないこの大森林の――」
 そこまでアルヒが言ったところでアルヒ、そして周囲の冒険者達はとっさに武器を構える。
 眼前の道化師の雰囲気が、明らかに変わっていた。
「……罪ガ無イ? アレダケノ所業ヲシテオイテ……罪ガ無イ……?」
 ロコの握っていた木の実らしきものが、ぱきりと砕ける。
 仮面と装束に抑え込まれているが、ロコが示したのは苛烈なまでの憤怒だった。
 だがそれも一瞬のことでロコは仮面に手を当て、感情をしまい込む。
「嗚呼、失礼。つい感情を出してしまいマシタ」
 平坦な、冷血性すら感じさせる声音でロコはアルヒ達に謝罪する。
「私はフェンヌ様より大切なことを教わりマシタ。その恩義がございマス」
 エルフ達から見ればフェンヌは罪人だろうが、ロコにとっては恩人のようだ。
「そしてフェンヌ様はエルフを憎んでおられますが、私が憎んでいるのは『全ての種族』デス」
 ――そして、それだけのことを貴方がたはしてイル。知らないとは言わさナイ。
 それだけ言うと、ロコは待機させていた魔獣達と共に、その場から姿を消した。

●やること
 今回皆様にやってほしいことは、ある一定の範囲内に存在する植物型魔獣達を撃退することです。
 ロコとその配下にあたる魔獣達は退きましたが、アルヒはロコがこちらを監視していると判断しています。
 ロコと交戦することも考慮されましたが、動物型魔獣を使役する以外の能力は未知数な部分が多く、今の状況で敵を増やすのは危険と判断されました。
 そのため、ロコが指定したとされる範囲内に存在する植物型魔獣達を撃破するという形になります。
 今回敵として想定されるのは、キノコ型魔獣のピンジ12体ですが、皆様の事前探査によってその位置は全て特定されています。
 ムーセルの里にいた同種とは異なり、移動するため区域外へ逃げられる前に、速やかに撃破するのが妥当な行動と言えるでしょう。
 森を腐らせていると思われる因子と胞子を振りまくピンジとの関連は、現在調査中ですが無関係ではないはずです。
 1体でも多く植物型魔獣を倒し、森の腐敗を防ぐことができるよう。
 どうか皆様のお力添えをお願いいたします。

●???
 ここにある花園は『彼女』が作った。
 花の名を教えてくれたのも、『彼女』だった。
 『彼女』は私達にいろんなことを教えてくれた。
 けれど私達には『彼女』に自分の言葉を伝えられる術がない。
 それでも『彼女』は楽しそうだった。
 『彼女』は私に護ってほしいと願ったこの場所が好きだと言っていた。
 この場所を守り抜くことができたのなら。
 ――少しでも『彼女』は喜んでくれるだろうか?

解説

●目標  キノコ型魔獣ピンジを6体以上撃破する  副目標:森林地帯への被害拡大を防ぐ  登場  ピンジ×12  傘があるキノコめいた外見の植物型魔獣。サイズは小型。  物理攻撃にあわせて、毒の付与など特殊攻撃を主体とする。略称『茸』。  胞散  メインアクション、リアクション扱い。胞子を吹き出し、自分を中心に直径4へクスの範囲の全ての対象に物理ダメージを与える。  毒による瞬間的なダメージの他、スリップ(強度2)のBSの付与判定を行う。回避は不可能。  ただし同じ植物型魔獣には無効。  ロコ  過去に【CP】【蟲毒】などで暗躍を続け、各地に災厄をもたらした道化師。  メドゥの指先に属している模様。能力は未知数。フェンヌのことについてはOP内で話したこと以外、口外するつもりはない。  PL情報:下記見取り図の外で皆様を監視中。皆様がロコに対し攻撃を加えない限り、ロコも攻撃せず手出ししない。         アルヒ・ラスカス  今回唯一の増援。皆様の指示に従う。使用スキルはヒールと解呪。  状況  フィルエス大森林の奥まった場所にある里ムーセルへと続く林道の1つ。現地時刻は正午で快晴。  宙に何かの胞子が漂っているが、視界を遮るほどではなく皆様の行動には支障なし。  以下は戦闘が想定される場所の簡易見取り図。1マスあたり10×10m。  皆様は下記見取り図内の範囲内なら、どの地点からでもスタートできる。重複も可。  ↑北   ABCDEFGHIJK  1森森森森   森森森森  2   ▼森  ←▼森森  3森 森 森森   森森  4森   ▼→    森  5森 森森森     →ムーセルの里  6 ▼→      森森  7森森 森森森▼→  森  8森森 森森森  ▼ 森  9森  森 森森森森森森  森:鬱蒼と茂った森林。見通しが悪く通行には不向き。  ▼:ピンジ。1個あたり2体。

マスターより

 ムーセルの里での救出、お疲れさまでした。  里のエルフ達が生還できたのは、皆様冒険者のご尽力によるものです。  今回は里の周囲にいる植物型魔獣の数を減らすことができるよう、ご協力をお願いいたします。  OP内●???の部分はPL情報かつロコの本質に関わる話ですが、ここでの『彼女』はフェンヌのことではありません。  そしてこれもPL情報ですが、ロコがフェンヌから教わったものは一般的な植物の育て方です。  ロコにとってはそれが大切なことであり、フェンヌに協力する理由になります。  PC情報とするには情報を落とし込む作業が必要となりますが、ロコと戦闘になった場合は難易度が1つ上がります。  ご不明な点がございましたら、出発36時間前まででしたらアルヒが答えられる範囲は答えます。

リプレイ

●開戦
 ムーセルの里に至る林道で、冒険者達はキノコ型魔獣『ピンジ(以下茸と略)』との交戦を始める。
(オレにも恩や護るものが有る。火の粉は払わせて貰う)
 北西方面に陣取るロイ・アウレアは内心そう呟くと、アルヒ・ラスカスより借りた布で鼻から下を覆い、エーテルリンクを結んだ栗鼠に分身を作らせ、先行させる。
「胞散の範囲からは常に避けるように動くのが必須だよな」
 栗鼠と視聴覚を共有したロイは、まず東方向にいる茸へ宿り木の杖を向ける。
「今なら茸をまとめて攻撃できそうだ」
 そう判断したロイはタイダルストリーム2を発動。
 杖の先が発光し、ついで轟音と共に巨大なエーテル光の波が衝撃波を伴い、ロイの前方へと放たれる。
 光の奔流に呑まれた茸達は全身を砕かれ、その身が四散する。
「ロコ、テメェは後回しだ!」
 南東方向で茸達を待ち受けていたナキルは、姿を消したロコを一度思考から排除する。
「ピンジは殲滅する。一体も逃がさねェ!」
 そう吠えたナキルは、南方面の茸に向けチャージングを行使し移動力を上げる。
「テメェには取って置きを打ち込んでやるぜッ!」
 胞子をばら撒かれる前に茸を討つため、ナキルは出し惜しみをしない。
 既にエーテルブレードを行使して射程を延ばしたナキルは、茸に向け紫電一閃を発動。
 エーテル光を纏ったダマスカス鋼の大剣が真横に一閃し、力と速度を兼ね備えた鋭い一撃が茸の身を上下に断ち割り、2つに割れた茸は地面に転がり、絶命する。
「メドゥの指先というのがよくわかんねぇが、まぁロクな奴らではないんだろうな。ロコもそういう輩の一員ってわけか」
 シグルド・オルセンもまたロコに対して思うところはある。
「まぁ何にせよ、この場をどうにかしてる間は手を出さないってことなんだろう」
 そう考えながらシグルドはナキルを援護すべく、シーザーロアを行使。
 シグルドよりエーテルを叩きつけられ、感情を刺激された茸が胞子を振りまくも、胞子が届く範囲にナキルもシグルドもいない。
 茸の胞子が散ったところで、シグルドは衝撃波2を行使。
 ダマスカス鋼の槍が打ち下ろされ、その先へと見えざる衝撃波が迸り、茸の身を引き裂いた。
「手を出さねぇなら、まぁとりあえずは放置だ」
 身を裂かれて胞子を撒く茸との距離を保ち、シグルドはロコをひとまず黙殺した。
「味方の援護を行いつつ、ここから狙えるピンジを各個殲滅していくぞ」
 セリオス・オーガストはムーセルの里へと抜ける林道の東側に陣取ると、天眼と超視力を駆使して周囲を見渡す。
 近場にいる茸は北に2体、西に2体、南西方面に2体。そして南方面はナキルが1体撃破したので残りは1体。
「あとは西側の奥に2体がいるのか? 逃がしたり森への被害を増やしたりしないように気を付けるとしよう」
 およその位置を把握したセリオスは、ナキルの後背を突こうとする茸達を標的に定め、ラピッドショットを行使。
 ダマスカス鋼の短弓より矢を放つ響きを立て続けに鳴らし、宙を飛び渡った2射はそのまま茸2体の身を貫いた。
 射抜かれた2体の茸は瀕死となり、胞子を撒いて悶絶するも、撒かれた範囲に冒険者達の姿はない。
「まだピンジがこれだけの数残っているとは。このまま放っておくことは出来なさそうだな」
 ライナ・フレイヴァルツは北東にいる2体の茸を討つため攻撃に適した位置を探し、フロマーシュ・ダイヤドロップも後に続く。
「かの道化師が再び動いているのですね……」
 フロマーシュはロコのことが気がかりだったが、今は優先すべきことがある。
「森やそこに暮らすみんなの為にも、これ以上の被害が出るのを止めないと!」
 ライナもフロマーシュも、周囲にいる茸達が森の腐敗に何らかの形で関わっていると分析している。
「全滅させる事が被害拡大を防ぐ事に繋がる。まずはピンジを掃討させることを考えよう」 
 ――敵とは距離を置く。
 ライナは茸より離れた位置からの攻撃を心掛けている。
「これより敵を引き寄せます!」
 フロマーシュも口元にバンダナを巻き、胞子を吸い込まぬよう予防処置をとった上で、シーザーロアを行使。
 エーテルを叩きつけられた茸がフロマーシュへと攻撃の矛先を向け、胞子を撒き散らす。
 フロマーシュは重点硬化を行使して、ひらめく白衣の盾やダマスカス鋼の甲冑に輝くエーテルを収束させ、瞬間的に防御を上げてダメージを軽減する。
 ここでライナはフロマーシュが巻き込まれないよう位置を調整した上で、タイダルストリーム3を行使。
 突き出されたイノセントロッドの先より、エーテル光の奔流が放たれ、茸達を包み込む。
 光の中で茸の身は微塵に砕け、宙にその破片が飛び散っていく。
「アルヒさん。マーシュへの治療を頼めるか?」
 ライナはアルヒにフロマーシュの治療を頼み、アルヒは要請に従いフロマーシュの治療に向かう。
「私は近隣のウォーリア組に対して支援ができる位置をキープし、周囲の状況把握に努めましょうか」
 東方面の守りにつくグレイブ・ヤードは、茸達の攻撃範囲内に入らないよう用心しつつ、周囲を見渡す。
 この頃には生き残った茸達が胞子を撒き散らし、冒険者達への抵抗を見せていた。
 茸の胞子を浴びてしまった仲間達に無銘祭祀刀を向け、グレイブはサルベーションを行使。
 祭祀刀の先より抵抗力を瞬間的に高める力を持つ光が放たれ、仲間を蝕む毒を祓っていく。
「胞子を避けるのは不可能でしょうし、食らうこと前提であれば治せば済む話です」
 グレイブは胞子の毒を祓った後も、ヒール3を駆使して仲間達への治療を続けていった。

●殲滅
 北東側の敵を片付けたライナとフロマーシュは、看破スキルを駆使しながら中央に残る茸達への攻撃に移る。
「ライナ様やアルヒ様が襲われないように敵を引きつけ、カバリングで守ります!」
 フロマーシュは味方の守護を宣言すると、カバリングを行使。
 ひらめく白衣の盾を掲げたフロマーシュがライナと茸の間へと割り込み、その攻撃を防ぎ止める。
「残った敵も討伐します!」
 フロマーシュが一気に距離を詰め、闘気槌2を行使。
 光の塊を纏った鉄の大剣が振り下ろされ、その一撃を浴びた茸達は損傷を負い、胞子を撒き散らす。
 フロマーシュは毒への抵抗に成功するもダメージを負ったところで、光輝くエーテルの波動がフロマーシュや近くにいた冒険者達を包み込み、その身を癒していく。
「直接的ではなくても、間接的な邪魔の使用は色々ありますしね」
 それは味方の治療や支援に尽力するグレイブのヒーリングオーラだった。
 グレイブは毒を受けた味方には解呪3やサルベーションを、ダメージが蓄積した味方にはヒール3を行使して、味方の戦闘を支えている。
(キノコという特性を考えると死んだ木や太めの枝、幹に傷のついた木は注意した方がいいかもしれませんね)
 その一方でグレイブは、胞子から茸が再び現れることを警戒している。
 ――考えすぎならいいのですが。ヤドリギではなくキノコという点がね。
「ありがとうございます、グレイブさん」
「多少の無理や無茶は押し通させましょう。やりたい様に暴れなさいな」
 フロマーシュがグレイブに礼を述べると、グレイブはそう言って周囲の味方の背を押す。
 グレイブの言葉に続き、茸達の退路になりうる空間に鉄の壁が構築され、立ちふさがる。
「そちらに行かせるつもりはないぞ。逃がすつもりもない」
 合流を果たしたライナのアイアンウォールだ。
「アルヒさんには引き続き回復と毒の解除をお願いして、私は攻撃に専念しよう」
 ライナはアルヒに味方の治療を要請すると、超聴覚で周囲に漂う微かな音を拾い上げる。
 茸達が互いに距離を取り、それぞれ別方向に動き始めているのを察知したライナは、フロマーシュが痛打を浴びせた茸達を捕捉するとメテオライトを行使する。
「戦闘が終わった後は、森の調査に専念しよう」
 ライナの呟きと共に、その周囲から無数の光弾が顕現し、茸達へと降り注ぐ。
 光弾の乱打を浴びた茸達は全身を貫かれ、生命を断たれ倒れていく。
「敵が里に向かうことは避けられたようだな」
 セリオスは天眼と超視力によって、ライナのアイアンウォールが里への進路を塞ぎ、茸達が撃破されたのを確認すると、残る茸達の掃討にかかる。
「離れたと思ったら、再び集まったか。好機だな」
 セリオスは先程ラピッドショットで射抜いた茸達に向け、炸光矢3を行使。
 弓弦を鳴らしてエーテルを籠めた光の矢が撃ち放たれ、茸達のただ中で無数の光の破片と化してばら撒かれ、茸達を押し包む。
 既に瀕死だった茸達は光の破片に身や生命を削られ、絶命して沈黙する。
「しっかし、北側はかしましいなーっと」
 南側ではシグルドが軽口を叩きながらもナキルと連携し、茸を追い詰めている。
「これ、全滅させなくても、森に被害が出ないように撤退するくらいに追い詰めれば良いってことだよな?」
 シグルドはこの依頼の達成条件が敵の全滅ではなかったことを思い返し、そう推測しながらも、シーザーロアを行使。
 シグルドからのエーテルを叩きつけられ、敵意をシグルドに向けた茸が胞子をばら撒き、シグルドは重点硬化をさらに行使。
 輝くエーテルをダマスカス鋼の盾やダマスカス鋼の全身鎧に収束させ、一時的に防御を向上させたシグルドは、茸の攻撃を防ぎながら、ナキルへと攻撃を繋ぐ。
「俺は大丈夫だ、ナキル。そのまま始末を頼む」
「了解だ。今そいつを仕留める」
 ナキルの力強い声が響くと共に、チャージングを行使したナキルが一気に茸へ肉薄する。
「テメェらは着実に駆逐してやるぜッ!」
 叫びと共にナキルは強打2を行使。
 ナキルのダマスカス鋼の大剣が、威力を重視した一撃と化して振り下ろされ、茸の身を斜めに断ち割った。
 切断面から体液を撒き、茸は仰向けに倒れて絶命し沈黙する。
 そして残る茸2体も、北側よりロイの追撃を受けていた。
「胞散の範囲からは常に避けながらだったが、大丈夫そうだな」
 栗鼠やその分身と視聴覚を共有するロイは茸達を見逃すことはなく、その退路へと回り込むことに成功していた。
「これから範囲攻撃を行います。敵の周囲から一時退避をお願いします」
 ロイは別の方向から集まってくる仲間達に向け警告を飛ばし、退避を見届けたところで爆炎2を行使。
 ロイより巨大な炎弾が撃ち放たれ、茸達のただ中で炸裂すると、爆発音が巻き起こる。
 爆炎が噴き上がり、爆風を浴びた茸達はまとめて薙ぎ倒され、微塵に砕けた茸達は四散してその姿を消した。

●相克
 茸達を殲滅した冒険者達は、次の作業に移る。
「……前にも潜んでいた敵を見落としちまったからな……チェックは入念にしとこうぜ」
 ナキルの発言と共に、冒険者達は他にも敵が潜んでいないか、周囲の調査に乗り出す。
「胞子で汚染した場所があれば、除去する必要がありそうだ」
 セリオスは茸の撒いた胞子から次の茸が生じる危険性を指摘し、フロマーシュが賛意を示す。
「私は透視と看破を使い、怪しい木の実が埋められていたりしていないかも調べます」
 フロマーシュは被害を生じさせる要因になりそうなものを捜索すべく、透視と看破スキルを駆使して現場となった区域を調べ始める。
「そうだな。今回の場合だと、胞子が濃いのはこのあたりか」
 セリオスはアルヒから手頃な容器や道具を借り受けると、不審な点がないか調べていたナキルと共に、胞子が付着した箇所を除去していく。
「私はこの森の現状を調べてみる。不自然に生命力が偏っていたりしないだろうか」
 ライナもまた植物共感を駆使して、周辺に残る植物に対し共感覚を働かせる。
 その結果、この場が植物が生育するにはやや思わしくないことを把握したライナは、超聴覚も駆使して周囲に散らばる微かな音に耳を傾け、調査を進める。
「このピンジ達は木の実から育てたのか?」
 誰もいない空間にライナが声を掛けると、風が周囲を通り過ぎ、葉の擦れる音と共にロコが再び姿を現す。
「育てたのはフェンヌ様デス。私は存じマセン」
 ライナからの問いに、ロコは淡々と応じる。
「テメェは後回しだと言ったはずだ。余計な真似はするんじゃねェぞ」
 ナキルは何かあればすぐ迎撃できる姿勢をとり、他の冒険者達と共に警戒を緩めない。
「皆様、不意打ちにはご用心下さい。何かあれば私も加勢します」
 フロマーシュもライナに協力する形で調査を行いながら、ロコの挙動にも注意を払う。
「俺も手を出さないようにしておく。何かやってくるようなら対応するが、攻撃されない限り反撃はしない」
 セリオスも自衛以外の手出しはしないと明言し、除去作業に戻る。
「また会ったな」
 まずロイがロコの相手を務める。
「同族でも恨みや諍いはある。起こるべくしてや……知らずにも……」
 エルフ同士でも憎悪が生まれることを、ロイは知っている。
 ロイに続き、シグルドもロコと相対する。
「お前さんの気持ちが悪かどうかなんて俺には決められんが、こうする理由があるのだろ」
 ――そしてここでは手を出さない理由も。
「俺は戦いたいとかではないんだが、お前さんと話はしてみてぇな。どういう想いでここにいるのか、とか」
 シグルドの語りかけに、ロイも加わる。
「聞かせて欲しい。一体何が? オレ達はお前の大切な何かを奪ったのか?」
 2人の問いにロコはこう答えた。
 ――家族も隣人達も故郷も、何もかも奪われた。
 だから復讐すると。
 だが冒険者達には心当たりがない。
 ここでグレイブが静かに告げる。
「貴方だけが知っている事を前提に話されたところで、知った事ではありませんよ」
 その言葉にロコの動きが止まる中、グレイブは冷静に言葉を継いでいぐ。
 ――罪の自覚も理解も知識もないものに罪を問うたところで、贖いですらありはしない。
 それは只の敵意であり害意であり、悪意でしかない。
 ――故に知った事ではない。
 復讐を謳うならばその正当性を。その理由を謳い上げなければならない。
 相手に罪を突きつけ、その愚かさを。その所業を。伝えた上で贖わせなければいけない。
「それに罪なき者などこの世にいませんよ。貴方もよくわかっていらっしゃるように」
 グレイブの指摘に、ロコは腹を抱えて笑いだす。
「仰るとおりデス。これからはそういたしまショウ」
 笑い終えたロコはある場所のことを語り、懐から布めいた何かを取り出すと、冒険者達へ放り投げる。
 冒険者達が一瞬その布へと意識を向ける間に、ロコは再び姿を消した。

●結果
 ロコの撤退を確認した冒険者達は調査と除去作業を再開し、ある程度目途がついたところで帰還する。
 冒険者達の尽力によって、ムーセルの里周囲に茸が再度現れる確率を、少しでも減らすことができたと思いたい。
 なおロコが残した布にはこう書かれていた。
 ――愚か者どもに死を。
 ――ハイアルヴよ。大森林よ。永遠なれ。

マスターコメント

 今回ですが、敵であるピンジを全滅させたこと、再発防止に努める行動が多かったことなどから大成功としました。  皆様のご尽力で、ムーセルの里周囲の脅威も減らすことができました。  ロコにつきましては、今後その闇や狂気が明らかになってくると思います。  このたびはご参加下さりありがとうございました。  また機会がございましたら、よろしくお願いいたします。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準7 / 4〜8人

2021年09月23日 21時42分37秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. フロマーシュ・ダイヤドロップ

    ウォーリアのフロマーシュ・ダイヤドロップと申します。 以前の依頼で暗躍した道化師がまた動いたのですね… 今回は敵の数が多いですので、取り囲まれないように気を付けないといけませんね… ともあれ、沢山の相手であっても全力でお守りしていきますのでっ!

  2. ライナ・フレイヴァルツ

    キャスターのライナ・フレイヴァルツだ。 これだけの数のピンジがいると離れて胞子を避けるというのは少々難しそうだな。 道化師ロコに手を出さなければ向こうも手を出さないと。 ふむ…人数が揃えば戦いの選択肢も幾分出てくるかもしれないが、 情報が少ないうちから戦うのは得策ではない…か? 一先ずピンジにだけ集中したほうがよさそうだ。 >アルヒさんへ 共に戦ってくれるようで心強い、助かるよ。 ところで、どの場所から始めたりするのは決まっているのか? それとも此方で指定すべきか?

  3. アルヒ・ラスカス

    アルヒだ。今回はよろしく頼む。 >ライナ殿 こちらこそよろしく頼む。 みんなが好きな場所からスタートできるように、私のスタート地点は今のところ決まっていない。 場所を指定してくれるなら、それに従いその場所から始めるつもりだ。

  4. グレイブ・ヤード

    多少ではありますがお手伝いなどを ヒーラー、グレイブ・ヤードです。 怪しいものですがよろしくお願いしますね

  5. シグルド・オルセン

    ウォーリア、シグルド・オルセンだ。よろしく頼む。

  6. ライナ・フレイヴァルツ

    最低人数が揃ったようだな、グレイブさんにシグルドさんもよろしく頼む。 ある程度まとめて話し合うとしよう。 〇今回の目的 ・植物型魔獣ピンジを12体討伐すること ・森林地帯への被害拡大を防ぐこと この二つになる。道化師ロコについては今回は見送る形が良いかもしれない。 戦闘が終わってもロコがいるようなら、 戦闘はせずに何かしらの情報を引き出せそうな会話をするくらいが良さそうか? 〇相談点 ①それぞれどの位置からスタートするか。  私個人としては、A2かC9かG1あたりで考えている。 移動しているピンジから撃破していけば区域外に逃げられる心配はなさそうだ。 人数の面もあるし、アルヒさんを含めて2人~3人でまとまって動いても良いだろうな。 幸いなことにヒーラーも二人いるのでそれぞれ2つのグループに振り分けたとしても 何とかなるはずだ。 ②森林地帯への被害拡大の防ぎ方  漠然とした感じの目的だが、腐敗の進行度を調べることや他に植物型魔獣がいないか調べること、後は何か手掛かりになるものがあるか探すこと。 この辺りを捜索すれば次なる被害を防ぐためのきっかけになるのではないだろうか。 〇余談 植物型魔獣は、フェンヌ無しでも生み出すことができるのだろうか? この辺りにいるピンジはどうやって生まれたのだろうと少し気になったんだ。 案外、道化師ロコが握っていた木の実が関係あるのかもしれないな。

  7. フロマーシュ・ダイヤドロップ

    これで依頼成立ですね! グレイブ様もシグルド様もありがとうございます! というわけで、よろしくお願いいたします! 私もひとまず今回はロコとの戦闘は見送り 森への被害を押さえつつ、ピンジ殲滅に専念する案に賛成したい所でしょうか? 会話をする場合は、万が一に備えてすぐ庇えるよう警戒はするかもしれません。 ライナ様が出していただいた開始位置ですと、敵の背後や側面から向かう形で開始、という感じでしょうか? もしG1開始ですとD2とI2、2つのグループとの戦闘になりそうですし それも踏まえてこちらも1人ずつよりは2~3人ずつに分かれた方がよさそうです ウォーリアも2人いますし、もし大丈夫でしたら 私はライナ様と行動したいですが、よろしいでしょうか? 被害拡大防止については、魔獣捜索はできそうですし、 私はひとまずそちらで動いていく予定です。 植物型ですし、ひょっとしたら成長しきっていない相手もいるかもしれませんし… ライナ様が言ったように、木の実が関係あるとしたらその可能性もありそうな気がしますっ。

  8. ナキル

    「ナキルだ、遅参だがよろしく頼むぜ!! ロコってのは、今回は無視…だな?それはオレも仕方ねェと思うぜ… どっかでまた見付けた時は、今日の分もツケ殴りだ。 >スタート地点 ある程度、こっちで立ち上げられるんだってんなら… 確かに、ある程度班で動くのも良いな。 移動してるピンジから優先的に叩くってなら 班分けの要所を「ヒーラーが各班に1名」ってコトにするなら 横5列の、北班と南班で考えるのもアリかな? ピンジが森に接触して、森林が破壊されるってぇ心配はねぇってコトでいいのかわからねーから オレは「I7」あたりからスタートして一番、外野に行きそうなピンジ(G7)から叩きに行こうと思うぜ!」

  9. シグルド・オルセン

    フロマージュがライナと組むなら、自然とアタッカーであるナキルとタンクの俺が組む方が良いだろうな。 あとヒーラーだが、グレイブはどうする?むっさい男連中で組むか、女子二人の方に行くか。こういうのはノリで決めちまおう。 ロコはとりあえず放置な。了解。 ナキルが「I7」ってんなら、俺は「I6」が良いかね。 マスは10m×10mと意外と広いし、二人で一マスで動くこともできそうだな。

  10. グレイブ・ヤード

    >ロコについて 私としては面識もほぼないのでよくわからないものではありますが こちらから関わるのはやめておくにしても、 何らかの「自分のスタンス」は決めておいた方がいいかもしれません。 あちらから接触しないとも限りませんしね。 攻撃はしないとはいえ口撃をしないとは言ってませんし 一方的に言われ続けるのもいやでしょう? なお私としては 「自分が知ってる事を相手に当然のように求めても知るわけもないでしょう」 という感じです。 異種族であればなおさらに。 自分で知って貰うための努力も行動もせずに一まとめにされた所で知ったことではありませんから。 >組み分け そうですね、男女の分け方が面倒もなさそうです。 >行動について ウォーリア二名が前にいるのであれば支援のみを考えますか。 回復と状態異常解除を準備しておきますよ

  11. ライナ・フレイヴァルツ

    セリオスさんも来てくれたのだな。心強いよ、よろしく頼む。 なるほど北側と南側か。分担して倒すのにはちょうどよさそうだ。 そしたら私・マーシュ・アルヒさんはI4からスタートしようか。 移動中のI2・E4、そしてD2のピンジを目標に攻撃していこうと思う。 〇I4付近でスタート(北側ピンジ担当) ライナ・フロマーシュ・アルヒ (ウォーリア1・キャスター1・ヒーラー1) 〇I7付近でスタート(南側ピンジ担当) シグルド・ナキル・グレイブ (ウォーリア2・ヒーラー1) 現状はこのような形になるな。 セリオスさんにはバランスを見て北か南かを選んでもらえればと思う。 >ロコについて 挑発はしないようにしたいが、挑発に乗らないように気を付けたいところだな。

  12. グレイブ・ヤード

    私はk7辺りが初期位置として妥当でしょうかね? 人員がいるに越したことはありませんね、何事も 所で目標として6体以上ですが 別に、皆さん全滅させるおつもりで構いませんよね?

  13. ナキル

    「>シグルド お、今回もよろしく頼むぜ!!コレなら遠慮なく攻撃に専念できそうだな! 「I8」の敵の動き次第かなって思うけど、まーそんな極端に離れてるワケじゃねーし、何とかんなんだろ! >グレイブ 全滅させる気満々だったぜ!! 支援も頼りにさせて貰うな!…あと、そうか、ロコから話しかけてくる場合も想定はしとくべきか… …一応考えとくか… >ライナ あぁ、そっちの方が仮にギリギリで参戦しても解りやすいかとな そっちはよろしく頼むぜ!! >セリオス お、セリオスも久しぶりだなー! っと、そっちも色々考えてくれてるかも知れねェけど… 個人的には「G5~I5」をオススメしとくぜ! そこだったら「D2」のピンジ以外なら射線通るかもだし、一番射程を活かしやすいんじゃねーかと思ったぜ! 移動する敵と同スクエアにさえ居れば、強行突破されねェ限り抜かれねーし 「D2」と「I8」のピンジの「移動方向」には警戒だな! 「I8」に関してはオレは天眼で何とかなると思ってる。 のと、標的を倒した後の、森の調査はした方がいいかもな 前に擬態してるヤツを見逃しちまったし!ま、ココはロコが邪魔じゃ無ければってのも出て来るけどよ。」

  14. ナキル

    「>グレイブ ワリ、見落とした!「K7」って森じゃねェ…? でも、そのヘンで良いと思うぜ!開始後にも動けるしな」

  15. グレイブ・ヤード

    >K7 まぁ目立つつもりもないですしね。 負傷もなければ周囲警戒に注力できますし そういえば、「キノコ」という特性でふと気になったので 終了後に死んだ木や幹の傷ついたもの、太めの枝を念のため調べてみようかと思います。 胞子まいてますしね

  16. フロマーシュ・ダイヤドロップ

    セリオス様も参加していただけるのですね! ご助力ありがとうございます! 私はライナ様とアルヒ様と共にI4から出発して、北側を担当ですねっ。 かしこまりましたっ! シーザーロアとカバリングを駆使して、お二人を守ってまいりますのでっ! 私は皆様を守る事を優先しますので深追いはしませんが、 可能でしたらすべて討伐、でしょうか? ロコ側から声をかけられた場合も、追いかけたりはせず落ち着いて対処したい所です。

  17. セリオス・オーガスト

    ・・・・ん、ぎりぎり参加で顔出せずじまいで済まん。シューターのセリオスだ、よろしく頼む。 とりあえずロコはかかわらないようにするで了解した キノコ退治に専念するとする。 <ナキル そうだな。I5当たりなら大体の敵を狙えそうなのでそこに位置して支援するとしよう

  18. ロイ・アウレア

    シューターのロイ・アウレアです。宜しくお願いします。 完全な飛び込みで申し訳ないが、前回の縁でロコが気になるので参加させて貰いました。 ヒール持参でA2スタート 火力不足で追い込まれるようならB3-4へと逃げ打ちしつつ ピンジを森の中央へ誘き寄せるように動いて、A2から外に出さないように注意しようと思う。 (そのまま皆さんの方へ引き寄せる事に成るかも知れません) 物理攻撃にあわせて、毒の付与とあるので、魔法攻撃で向います。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0