弔いの反旗
崎田航輝
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シナリオID:1272
オープニング
ギルドの一室で、冒険者達に口を開いたのは一人の青年だった。
依頼を持ち込んできた彼は、静かに、多くの事を思い出すように続ける。
僕は嫌いでした、と。
そして「今も嫌いかも知れません」と言ってから……力無い笑顔に寂しさを垣間見せた。
「でも、なくなったら悲しいものですね」
それが誰かに奪われたものなら一層だと、彼は語る。
●故郷
「“弓賊戦団”を聞いた事がありますか」
青年は冒険者達へそう続けた。
「僕は噂程度にしか聞いた事はありませんでした。数が多くて凶猛で――とても残忍らしいと」
それは数の力で村や街を襲う賊の一団。
いつだって圧倒的な力量差のある状況で襲撃を行うから、目をつけられれば最後、その人里にはただの一人も生き残らない――そう噂される集団だった。
青年の故郷は、その弓賊戦団に襲われた。
既に滅んでしまった村の跡を見つけて、初めてその事実を知ったのだ。
「仕事でその近隣にまで遠征してたんです。そこで村が襲われたらしいって聞いて……賊の正体だとか、そんな事は最初、考えられませんでしたけれど」
崩れた建物に、荒らされた畑。
命が蹂躙された跡の、淀んだ静謐。
それを見た時の感覚がただ忘れられないのだと、彼は言う。
「襲われてから長い時間は経過してなかったのでしょう。まだ何かが燃えたり、煙っていました」
生きた者は残っていなかった。
村には青年の父も住んでいたが、それも例外ではなかった。
「怖くて……そして何だか不思議でした。あったはずのものが全部なくなって、いたはずの人が命を奪われていて。空虚な気持ちって、ああいう事かも知れません」
それだけじゃなく。
父の遺体を抱きしめながら、涙が流れてきて……自分の中にとても悲しい気持ちがある事を知った、と。
「幼い頃は、故郷にいるのが嫌でたまりませんでした」
王国でも田舎に位置するその村は、都会の明るさや豊かさとは無縁だったという。
寂しい環境の中で、ただ糧を育てて食べるのに時間を使う。
幼心にそれが退屈だった。
「父は頑固で、怒りやすい性格でした。僕が農作業をサボっていると平気で手だって上げるんです」
母は都会から嫁いできた人だったけれど、そんな父との暮らしに耐えきれず……結局村から出ていった。
「僕も父が嫌いでした。そして、あの村での暮らしが。やれと言われてた農業だって、結局ろくな糧になりゃしない――それが事実でしたから」
だから彼は反抗的に育ち、故郷を好きになった事など一度もなかったという。
そして一人で巣立てるようになると、村を出て都会で働き始めた。
「都会もそこでの仕事も楽しかったですよ。だから……ざまあみろって思ってたんです。もう故郷の事を考えなくたっていい、って」
でも……と、彼は俯く。
「故郷なんてなくなったって、どうでもいいものだと思ってました。父の事だって……いなくなればいいって、何度思ったか。……それでも」
青年は人の手を借りて、故郷に墓地を作ったという。
間に合わせのものだから簡易の土山でしかなくて。遺体を埋め終わった時、そこに父がいるのだと思うと胸が締め付けられたという。
「あんな喪失感はなかった。心が引きちぎられたみたいで……ぽっかりと穴が開いたみたいになって」
二度と帰りたくないと思った故郷だった。
でも、それが失われた事が自分でも不思議なくらいに悲しかった。
「僕がそう思ってなかっただけで。あの村は、僕の多くの部分を作り上げていた」
それが初めて分かったのだ、と。
●依頼
「色んな雑事が済んでから……今更になって、寂しくなりました」
そして全てを奪っていった者達への怒りもまた、生まれたのだと彼は言った。
「誰かがやったのなら、その誰かに償いをさせなければいけない……そう思ったんです」
青年はそれから村を滅ぼした犯人を探し始めた。
「やり口の残忍さや、噂されているテリトリーから、すぐに弓賊戦団の存在は浮かんできました」
それでも分かりやすい証拠などはなかったという。
その上敵の力を考えると、田舎の小さな領地が容易に対応出来る相手ではない。だから領主すら賊探しに積極的になってはくれなかった。
だが青年は諦めなかった。故郷の墓地を作る際、細かなものでも保管しておいたのだが――それを調べ直した際に小さな矢の欠片を見つけたのだ。
「各地を回って、過去に弓賊戦団の襲撃を生き残ったという人を何とか見つけ出して……その矢の欠片を見せました。人数は多くないですが、皆頷いてくれました」
獲物に刺さりやすいよう、特殊な加工がされた矢。生き残った人々は、記憶に刻みつけられたようにそれを覚えていたのだ。
「潜伏場所も、正確ではありませんがおおよそ絞り切れています。数が多く、領地間の移動もしてない可能性が高いから……きっとここに」
と、彼は地図上、深い森林のある場所を指した。
そこに故郷を奪った者達がいる。
「これが僕の限界です。仇を取る事までは、僕には出来ない……けれど、あなた達ならきっと」
彼は頭を下げた。
「故郷が襲撃された時、もしそこに自分がいたら……そんな事をずっと思っているんです」
村を救うなんて出来なくても、せめて父だけでも助けられんじゃないか、と。
全ては終わってしまった事ではある。
けれど彼には後悔にも似たものもあった。
「出来るのは、あなた達に頼む事だけ……だから、お願いします」
●弓賊
鏃を研いで、沈む夕日に光を反射させる。
森の奥に造られた塔で、弓賊戦団首領の男――アーギィは一つ一つ、自身の武器を鋭く整えていた。
この一本一本が、獲物の命を奪う相棒になる。
だからアーギィはその為の労を厭わなかった。
と、そこに配下の男がやってくる。
「アーギィ様、次の作戦はいつに?」
「もう何日か様子を見る。……急ぐと足元を掬われる。前の襲撃も丁寧な仕事とは言い難かったのを忘れたか」
「……はっ」
配下は緊張混じりに背を正す。
アーギィの仕事はいつも抜かりなかった。
標的に選ぶのは必ず勝てる相手。略奪出来る物が少なくとも、確実な敵全滅を優先する。可能な限り証拠も残さない。
そしてヘマをするなら配下でもためらわず殺す。
虐殺と言える凶行を繰り返していながら、今だ王国内において団員の一人も捕まっていないのは、この徹底ぶりがあるからだった。
それでも同じ場所で成功を重ねれば、団員の気は緩む。それを最近、アーギィも実感していた。
「……そろそろ、どこかへ移らねばな」
領地間を移動するのは難しいが、それでもここは潮時だろう。
仕事自体は、どこでも出来る。
「……」
自身の力を使って、物と命を奪い尽くす事がアーギィのやりがいだった。
あらゆるものを奪えば、そこに何かがあったという歴史すら消えてゆく。残るのはただ蹂躙されたという事実だけ――それがアーギィにとっての征服だった。
そんな趣向に、弓は最適だ。
弱き者が持つと強くなる道具は、残酷な事に強き者が持つと一層強くなる。
慈悲のない力の雨を降らせて、救いのない現実を知らしめる。迅速に仕事を済ます事が出来て、自身は安全な距離にいられる。
だからアーギィにとって弓は最高の相棒だった。
「次は――」
どこの誰を穿とうか。
思案しながら、アーギィは武器の整備を続ける。その手は古い血にくすみ、穢れていた。
解説
マスターより
リプレイ
何処までも続くかに見えた深い森林。
その奥部、木立の向こうに確かに篝火の灯りが垣間見えていた。
(弓賊戦団。いましたね!)
塔と物見台。不気味に聳えるアジトを遠目に望みながら、エルナ・クルプファルツは皆へ小声を使う。
「……彼の話した通りのようだな」
頷くゴブリアも、観察しながら呟いていた。
脳裏に浮かべるのは――依頼者の青年に聞いた話だ。
『辛いとは思うが、仇を取るためにも覚えている限りを某に話してはくれまいか』
ゴブリアはギルドにて、青年へそう言った。
襲撃の仔細を知ることで、敵の集団としての練度、個々の腕前、多くの事が推察出来る。それに青年は頷き、多くを話してくれた。
『皆さんの力になれるなら』
どの程度故郷が略奪されたか。
村人がどれだけ抵抗したか、逃げようとしたか。
そして殺された人々の傷の位置や数、深さまで。彼も全てを知っているわけではない。だが知り得たその全てを真摯に伝えてくれた。
判ったのは、敵が目的の為には限りなく残忍になれる集団である事。
その手口と周到さも、アジトの造りに表れていた。
だからこそ、と。ララベル・サン・ディーベルも拳を握る。
「これ以上野放しには出来ないね」
あるのは純粋に、その敵を許せないと思う気持ち。
エルナも力強く頷いていた。
「何としても、ここで止めないとです!」
「……それじゃぁ、仇討の討ち入りと行きますか」
ケン・Z・ブラッドリーがその手に刃を握ると、アーテミシアも「ああ」と木々の間へ踏み出す。
「ゴミ掃除の時間だ。とっとと片付けねえと世間に迷惑だからな」
「おねえさんは向こうに回っておくわね」
と、エミリア・シバが北側へ向かえばエルナもそちらへ。リコリス・アデュラリアは頷いて、残る面々と共に南を狙える位置へ。
「では、作戦通りに」
その静かな声音を合図に、皆で動き始める。
「……」
物見台を望む位置につきながら、リコリスは一度だけ瞳を閉じていた。
想起するのは青年の言葉だ。
(故郷、ですか)
彼はそれを嫌いだと言った。
その気持ちがリコリスには判る。自身もまた多くの事を経験してきたから。
(私も、嫌いなのでしょう)
ただ、滅んだ時、どう感じるかはその時にならなければ判らないのだろう。
今確かな事、そして遣るべき事は。
「罪には、罰を」
目を開けて敵の姿を見据えると――リコリスは杖先に魔力を渦巻かせ始めた。
同時、腰元のランタンを灯したのはヨル・スレイマン。
「始めようか」
言うとそのまま物見台へと疾駆する。
夜の中で大きく目立つ光に、台上の敵はすぐに気づいて弓を構えてきた。が、ヨルにとっては予想通りの動き。
元より攻撃を仲間に撃たせない為の先行なのだから。矢が飛来する瞬間、ヨルは鎧にエーテルを纏わせて衝撃を耐えきった。
「これで問題ないね」
狙い通り、直後には後方からリコリスが焔を生み出し、眩き炎弾にして発射。夜闇が明るく染まる程に炸裂させ――物見台と共に賊二人を灼熱で覆い尽くす。
敵の呻きと共に、物見台がばきりと歪んだ。
次にはゴブリアがそこへ接近して木刀で一撃。傷ついた支柱を砕いて物見台を倒壊させた。
地面へ投げ出された賊は、苦悶に呻きながらも弓を取ろうとする、が。
「させねえよ」
黒マントをかぶって夜に紛れるアーテミシアが、至近に迫っていた。
賊ははっとするも、既に遅く。伸ばした手を、アーテミシアの斧が寸断する。
「……!」
「爆破で死んでた方が楽だったンだろうけど、まあ運が悪かったな」
滂沱の血を零しながら、賊はもはや武器を握れない。見下ろすアーテミシアは、今一度斧を振り上げ――その命を斬り潰した。
もう一人の賊は既に力尽きている。ただ、塔の賊もこちらに気づき始めたか、屋上の敵が下方へ矢を向け始めていた。
それでも夜闇の中では全員が正確な狙いを保てない。自然、灯りを持つヨルに攻撃が集まり――生まれた隙に、ケンが既にアジトへ走り出していた。
無論、ケンを狙う者も皆無でないが……ケンは盾を掲げながら、躊躇う事もなく一直線に進んで塔の扉を破った。
そして素早く視線を奔らせる。
「小賢しい事を考えてるぜ」
見ると敵は高所の小部屋とも言える場所に位置している。地面にいる敵の数が少ないのは、侵入対策だろう。
ただ、ケンは天眼で確かにその存在を捉えていた。
「見つけたか」
続くアーテミシアが言うと、ケンは「ああ」と仰ぐ。そこに、明確に他の賊と違う気配を纏う男がいた。
ケンは待ち望んでいたように目を見開く。
「見つけたぜ……てめぇがこいつらの頭だろう……なぁ……そうだよな!!」
南の物見台が焼ける頃、北のエルナ達も動き出していた。
(行きましょう!)
(ええ)
頷くエミリアは、南が騒然とし始めるタイミングで――夜風に紛れるように高速の疾駆。敵に気づかれぬまま物見台を駆け上がっていた。
「……!」
「遅いわ」
賊がはっとする頃には、エミリアは至近。
ただ静かに、そして鋭く、一閃、二閃、三閃。凶器を素早く奔らせ、その全身を切り裂いて打ち倒す。
二人目はとっさに弓を取っていたが――闇の中でエミリアを捉えられず。直後にはエルナが弓を引き絞って狙いを付けていた。
瞬間、射撃。這い寄る死神の如く、敵に意識をさせる暇も与えず……腹部を穿って崩折れさせ、そのまま意識を奪う。
「ありがとう」
「いいえ!」
二人が言って無事を確認し合うと……丁度そこでヨルが東の篝火を倒していた。
エルナも西の篝火を撃って処理すると――周囲の闇が一気に濃くなる。屋上の賊が大きくざわめく、その好機に塔へ駆けゆくのがララベルだった。
(一気に、昇る……!)
仰ぎながら地を蹴る様は、高速ながら軽やかに。
大地から吹き上がる一陣の風のように。外壁を駆けて登り、短時間の内に屋上に到達する。
突如眼前に現れた影に、賊らは惑った。その一瞬にララベルは賊の一人へ走り一閃、弓弦を断ち切ってゆく。
狙ったもう一人の賊は、ぎりぎりで弓を盾にしたが――
「まだまだっ!」
ララベルは止まらず連撃。くるりと旋転し、突き出した細剣で相手の手元を貫いてみせた。
●闘争
屋上が混乱に陥っているのが、地上からでも判る。
ヨルはそこを狙って祭刀を向け――淡く燦めく魔力を流動させていた。瞬間、明滅する矢を生み出し射出。賊の一人の腕を穿つ。
「ほらほら、こっちも見てくんなきゃ!」
ヨルの煽る言葉に、屋上の賊らは目を向けざるを得なかった。
結果として降ってくる矢は当然、強力だが……ヨルは守りを固め、回復を怠らず、体力を未だ保っていた。
「そっちからも、頼むよ」
「はい!」
と、応えて再度物見台に登るのはエルナだ。
自身の隠蔽を続け、未だ敵からは捉えられてない。その優位を保ったまま、矢を番えた弦を目一杯に引き絞っている。
既に探知用エーテルを奔らせ、敵の首魁らしき存在も塔内に確認していた。地上から仲間が向かう今となっては――
「ここを突破するのみです!」
瞬間、放った矢は視認も出来ぬ程に高速。違わず屋上の賊の一人を貫き、床に沈めた。
その屋上では、ララベルが眼前の賊を素早く撃破。二人目へと刺突を叩き込んで体力を削り取っている。
その賊は倒れた仲間の弓を拾い、反撃を目論む、が。
背後からその腕元が抉り裂かれる。壁を駆け上がってきたエミリアの攻撃だ。
「……!」
賊は苦しげに膝をつく。挟み撃ちの形に、不利を悟ったように毒づいた。
「……てめぇら、何なんだ。傭兵か。仇討ちか」
「……」
それにエミリアは明言を返さない。
自分が仇を取る、とは言えなかった。その心は、依頼者のものだと思うから。
ただ、エミリアは僅かに瞳を細めて。
「おねえさんはね、誰かから殺して奪い取るようなやつって嫌いなの。だから――」
――おねえさんが貴方達に狩られるほうの気持ちを教えてあげるわ。
刹那、突き出す凶器の一撃で賊の体を貫き、血の海に沈めた。
残る一人も抵抗姿勢を見せるが――
「そこまでだよ!」
ララベルが刃を突き出し、鮮やかな刺突。一瞬の連撃で体力を奪いきる。
そのまま塔内へ滑り込んだララベルは、高所の居住空間に賊二人の姿を確認。相手が攻撃してくる前に飛び降りて。
「そこだっ!」
流星を降らすが如く、零距離へ迫りながらの剣撃。不意の一撃によって一人を気絶させ、もう一人も続く二連撃で打倒した。
塔内の地上側では、賊が高所から矢を浴びせかけてきていた。
が――先陣のアーテミシアは引かず、逆にエーテルの塊をぶつけ返しながら己に注意を集めている。
矢の一撃一撃は重い。だがアーテミシアの防御力もそれに耐えきるだけのものがあった。
「こっちは問題ない」
「ああ」
と、応えるのはリコリスと共に塔へ入っていたゴブリア。
はしごを伝ってこちらを狙いやすい位置へ移動しようとする敵を見つけると――先んじてそのはしごを斬り裂いて落とし、機動を封じる。
同時に、盾となってリコリスへの矢撃を防ぐのも忘れない。
「今の内に攻められるか」
「ええ、ありがとうございます」
声を返すリコリスは、その杖に鮮やかな魔力を凝集させていた。
それから詠唱の旋律を口遊み、天地のエーテルを収束。眩い光球を形成し、その全てを雨の如く降らせていた。
光が弾け、熱が舞う。苛烈なまでの衝撃に、近場にいた三人の賊が一斉に穿たれて――その全員が倒れた。
賊達は動揺を浮かべながらも、尚距離を保って矢を撃つ。だがゴブリアはそこへ真正面から盾を構えて――
「踏み込む覚悟も無い矢など効かぬ」
鋭い衝撃を弾き返しながら、疾駆。
浅い位置にいるその敵へ、残るはしごを足がかりに肉迫すると――木刀を抜き放ち横一閃。弓弦を断ち切っていた。
賊は反撃に惑って行動が遅れる。その間隙にゴブリアは一刀。裂帛の剣撃でその賊を叩き伏せた。
その最中にも、上方にいる賊達の首魁――アーギィが矢を放ってきている。配下とは比べ物にならぬ鋭さに……しかし迷わず立ち向かうのがケンだ。
「さぁ狩りの始まりといこうじゃねぇか」
迫る矢は、構えた盾で逸らす。
無論、全てを防ぎ切る事は出来ず、腕や足元を鏃に掠められ鮮血を零す。ただ、それでもケンは止まらずに。
「その首狩ってやるからな……怖いならどんどん撃ってこいよ」
逆に喜色さえ浮かべながら――はしごを蹴り上がって確実に距離を詰めた。
アーギィは一瞬、迷いを見せる。だが屋上から侵入する冒険者もいて、引く事も出来なかったろう。
直後にはアーテミシアも別のはしごから跳んで――その面前に迫っていた。
「さあて、最後までキッチリ片付けねえとな。燃えるゴミも世間のゴミもよ!」
刹那、言いながらエーテルの塊を投射。その意識を無理矢理に引き寄せて留める。
その一瞬に、リコリスも眩く明滅する球状の光を発射。アーギィの体にまとわりつかせてその動きを鈍らせていた。
生まれた隙に、ケンが零距離へ。
「チェックメイトだ……もう逃さねぇぞ」
刃を突き出しながら、殺界を展開。アーギィのとっさに放った矢にも倒れず――反撃の一閃で足元を深々と斬り裂いた。
●決着
血溜まりを広げながら、アーギィは零した声に苦痛を交える。
そこへ、ララベルもひらりと舞い降りてきた。
「お前が首領か!」
「……、冒険者」
窪みのような横穴で、アーギィは小さく呟く。
追い詰められたと、既に理解しているのだろう。一歩下がりながら、機を窺うように口を開いていた。
「依頼で動く戦士。俺達を討つ事など、実りの多い仕事ではないはずだ。お前達自身は財も、故郷も、奪われはしていないのだから」
「仮にそうだったとしても。もう、貴方が助かる道理はないわよ」
そう声を落とすのははしごに足をかけているエミリア。
「そういう事だよ」
と、こつりと塔の床を歩むヨルもまた視線を上げる。
「俺は故郷のこととかよくわからないけど。まあ、奪う側なら奪われる側のこともよくわかるでしょ」
今回は君の負けだ、と。
言葉にアーギィは弓弦を強く引き、抵抗の姿勢を見せた。
が、その頃にはエミリアが跳躍。風に揺蕩うようにふわりと軽やかに回って――着地しながら連撃。膚を穿ち、抉り、鮮血を零させる。
そこへヨルが魔力で描いた矢を放ち、腕元を貫いてみせると――
「行けるかい」
「ええ」
そっと声を返すリコリスが、小さな魔法の光を閃光の如く瞬かす。刹那、強烈な魔弾となって飛翔したそれが、狙い違わずアーギィの肩口を貫通した。
流血と共に傾ぐアーギィ。そこへララベルは深く踏み込んでゆく。
「多くの命と平和を壊した罪、地獄で償え」
言葉と共に突き出す一閃は鋭く、腹部へ穴を開けた。
多量の血を流しながら、アーギィはそれでも弓を引こうとするが――アーテミシアはその体勢すら取らせぬまま一撃。振り下ろした斧で半身を抉り裂く。
「これで終わりだな」
「あぁ……最後にしてやる。これまでの罪を噛み締めて、その首おいて逝けやァァァ!!」
言いながら振り抜く、ケンの刃が――慈悲なくアーギィの命を断ち切った。
残る賊も、最後まで反抗の姿勢を貫いている。
が、ゴブリアがそれに揺らぐはずもなく――己をオーラで包んで矢撃を絶えぬくと、そのまま反撃の一撃。脳天を木刀で撃って打倒する。
「あと一人だ」
「任せて下さい!」
と、応えるのがエルナ。
賊がその姿を確認する間も無いままに……素早く塔の入り口から滑り込み射撃。鋭い風切り音と共に腹へ鏃を突き立て、最後の賊を倒した。
後に残ったのは深い静寂。
それが、敵が全滅した証左だった。
弓賊戦団はなくなった。
一行は戦果を持ち帰り、領主へも報告。森に潜む悪はなくなった事、一帯に平和が訪れるであろう事を告げて仕事を終えた。
そして――
「遺品があるなら墓前に供えてやると良い」
ゴブリアは塔から回収した略奪品を、依頼者の青年へ渡していた。
青年は深く頭を下げ、それらを見分し……村人の所有品と思しきものを一つ一つ、丁寧に選り分けた。
そこには多くの物があって――
「……父の物も、ありました。家族が、一緒だった頃の」
そう言ってから、彼は少しだけ泣いて――それらを墓に供えた。
墓地は静かだった。
もう、そこに以前の村の形はないけれど。
「皆さんのおかげで、少しは浮かばれた。それは間違いありません」
だから感謝を、と。彼は今一度頭を下げる。
冒険者達はそれに思い思いの言葉を返し――歩み出す。ゆるやかな風が吹いている。それは墓地に沈む静謐を撫ぜるような、優しい温度だった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2021年08月21日 23時15分06秒 公開
相談掲示板
人数は最低限には足りているようだし、準備を始めようと思う。 ウォーリアのゴブリアだ、よろしく頼む。 事実上は敵の名前以外は数も腕前も分からぬ、幸いにして敵に気が付かれずにアジト前までは辿り着いたところか。内部を調べつつ、敵の人数や配置、能力を探りながら隠密気味に事を進めるか。あるいは急襲して首領株の早期討伐を狙うか。 いずれにしても、物見台が多い、弓賊戦団というからには弓主体の攻撃であることは予想出来る。角度が付いた高所からの攻撃は射線を切るにしても厄介だな。
ヒーラーのヨル・スレイマン。宜しく。 アジト付近まで気づかれずに近付けたのは僥倖だね。初期位置は恐らく円形の外側、アジトからは20hexかな。結構距離あるな。 これだけ開けてたらバレずに全員アジトに到着するのは難しそうだ。 陽動で攻める人と隠れて近づく人に分かれつつ……みたいにするのがいいのかな。 リーダーの人危なくなったら逃げそうだし、早期討伐でも全然いいと思うけれど、前にも出てこなさそうだから他の族も順当に数は減らしていきたいね。 >時間 襲撃の時間は早めに決めておきたいか。 夜の場合、篝火を倒すなり火を消すなりすることで相手半分視界が奪えるのはいい感じだね。矢はどうしても降ってくるだろうし、単純に威力半減にはなる。
ウォリアーのアーテミシアだ。宜しくな。 17人いて半分が暗視持ちか。見張り台も完備されてるようだし、奇襲はよっぽど上手いことやらないと無理だな。 いっそ開き直って全員で突っ込ンだらどうだ? 物見台なんて二人しかいないンだし、無力化するのは簡単だろ。逆にこっちが物見台から攻撃してもいいしな
エルヴンシューターのエルナです!皆様よろしくお願いしますね! 物見台は南北それぞれアジトから10hexの位置にあるのですね! 魔法でもぎりぎり届きそうなので、【爆】魔法で吹き飛ばせば纏めて一掃できそうでしょうか! 全員倒すことを考えるなら、南北2班に別れるのも検討した方がいいでしょうか! 夜間なら実質動ける敵さんは半数程度ですし! >時間 全員が暗視を準備できるならというお話にはなりますが、ヨルさんの言うように夜間に襲撃するほうが良さそうでしょうか! 篝火は東西にしかないようなので、接近しつつこれらを破壊できれば暗視を持たない敵さんは実質無力化出来そうですね!
キャスターのリコリス・アデュラリアと申します。 ……よろしくお願いします。 >作戦 確かに【爆】魔法なら物見台ごと吹き飛ばす事は出来そうですね。 最終的に決定する作戦次第ではありますが 最大火力+【移動阻害(強度3)】での攻撃も可能です、とだけ。 あとは二班に分かれた場合、魔法での攻撃が合図にもなりそうですね。 >時間 エルナの言うように条件付きではありますが 夜間の方が有利に戦えそうではあります。 一先ず、暗視は必要であれば私は用意は可能です。
シーフのエミリアよ、最後の枠を埋めたのに挨拶が遅れてごめんなさい。 >時間 おねえさんも暗視持ってるから夜に行動するのも大丈夫よ。 >爆魔法で物見台 個人的にはやってみてもいいんじゃないかしら、と思うわ。 吹き飛ばせれば儲けものだし、だめでも2班に分かれる場合のようどうにもなるし >個人 上記の爆魔法をやるならその反対側 そうじゃなければ、どちらか片方から手番の操作と壁歩きと疾風足で 一気に物見台か屋上に上がって見張りを倒せたらとは思うわね。 安全と逃がさないようにするならまずは物見台かしら?
暗視の取得は問題ない。 物見櫓が木造なら、下手に授恵者を相手にするよりも土台ごと破壊した方が速いかもしれぬな。 【爆】は有効であるように思える。櫓が壊れずとも、梯子が使えなくなれば櫓の上の二人は行動が制限できるな。 全員が暗視(ないし、自前の光源)を取得する前提で考えるなら篝火は吹き飛ばしておいた方が良いな。単純に有効な射撃の回数を半分もしくはそれ以上に出来る。 >首領の逃走防止 どちらかといえばこちらが課題になりそうだな。 アジト周辺の戦闘範囲が広く、四方全てを監視しながら雑魚の討伐をするというのは難易度が高い。早めに捜波探波で首領の位置を確定させ、個人マーク気味に逃走警戒する方が成功率が高いと某は思う。 >行動 上の観点を踏まえ、南か北のどちらか一方から。 陽動とアジト急襲の二組に分けての襲撃を提案したい。 南北に別れると、単純に手数の密度が半分になる。 アジトをまたいで反対側から、直接の攻撃は来ないだろう。 一点突破気味に、アジトへ取り付くメンバーを支援する形が良いのではないか。
>作戦 では最初の魔法と同時に 予め決めた担当者が篝火を破壊するという事で良さそうですね。 ゴブリアの言う陽動とアジト強襲というのは 魔法を始めとした人目を引く攻撃で意識を向けさせた上で少数であると見せ掛け 逃亡よりも殲滅を選んだ隙を突き、後者が確実に仕留めていく、という事でしょうか。 その場合、強襲班の存在が露見した時点で 首領を始めとした者が私達が居ない方へ撤退を始める可能性があるので それまでに対処をする必要がありますね。 ……早期の内に首領、特に声を確認出来れば声帯模写で混乱を招く事も出来そうですが。 配下の声でも、場合によっては使えるかもしれませんね。 >首領対応 逃亡阻止もですが、戦闘についても注意が必要ですね。 配下は単体射撃のみですが、彼は単体三回攻撃や範囲射撃二種を使い分けるようですので。 範囲に関してはある程度分散して戦う事で対処するか あるいはBSで弱体化を図るかですね。
首領は逃げるのかね。それっぽいことは言ってるけど。一応射程内に入ればシーザーロアで逃げられなくすることも出来るだろうぜ。 ンで、どっちの物見台をふっ飛ばすンだ? オレはどっちでも構わねえけど。 後、アジトの内部が吹き抜けって事は、入った途端上から撃たれまくる可能性があるな。 飛び道具で反撃するか外から何人か突入した方がいいかもしれねえな
リコリスさんありがとうございます! 【爆】魔法よろしくお願いしますね! 南北どちらから攻めるのでも大丈夫な気がしますが、一先ずメインの攻め手は南側からという感じでよいのかなと思います! なので魔法で吹き飛ばすのも南側の物見台でよいかなと! 篝火は初期位置から全て破壊するのは難しいので、物見台到達位での破壊を視野に入れて動く感じになりそうな気がします! >個人 エミリアさんが逆……つまり北側の物見台の制圧に動いて下さるなら、私もそちら側からいこうかなと思います! エミリアさんが倒しきれなかった物見台の敵さんがいれば、そちらを見えない死神でスナイプしようかなと思っています! 一手で制圧出来ているようなら篝火破壊を狙ってみようと思います! その後は、首領さんを捜波で【マーク】しつつ、物見台上から屋根上の敵さんを攻撃していく動きになるかなと思います!
顔出しが遅くなってすまん。 ウォーリアーのケンだ 敵が暗視が使えるってんなら逆にそれを逆手に取れたら面白いかなっと こちらが暗視を使えないように装おって注意を引いてとかね 陽動と強襲を分けるなら南と北で別方向からのほうがいいんじゃないか? 同じ方向からだとバレる恐れがあるしな とりあえず俺は首領狙って突っ込んでいく形になりそうだな
僕はシーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、宜しくね! 暗視の準備は、僕も大丈夫だよ。 じゃあ僕はアジトの方に注目しておいて、陽動の攻撃が始まったら首領を逃がさない様にアジトに接近、状況次第で外側を壁歩きで登って上から入って屋上の敵を無力化でもしようかな(吹き抜けで狙われる心配ない様に)。
では、私は南側の物見台を敵も巻き込む形で爆炎2をぶつけますね。 超視覚と暗視を併用するので、恐らく狙いが狂う事も無いでしょう。 その後は爆炎2とメテオライト2を味方の巻き込み有無で使い分け 単体攻撃としては魔弾と魔法射撃を使用していく形になるかと。 スタティックフィールドは逃亡阻止の為の奥の手になりますので 基本的には多くの敵が効果範囲に入った時に使用しますが 他に移動阻害付与出来る者が居ないようなら 首領を確認後、彼を優先して他の敵も巻き込む形で使用します。 一応ヒールは用意しておきますが、あまり守りに入るとこちらが不利となるでしょうから 敵の数が多い内は自力でも回復出来るよう備えて頂けると助かります。
最初から南北で手を分けると手薄になるのはありそうだもんね。 とりあえず初手は南メインで了解した。 そしたらできるだけ目立つように、南側から攻める形で動こうかな。 ある程度矢を引き受けてしまえると良いだろうし。 首領へ対応する人も多くて心強い。それなら俺はその後は弓賊の敵数を減らしていくことにする。
ンじゃ、オレは物見台ふっ飛ばした後に突っ込んで雑魚の相手するか ただの弓なら大したダメージにもならねえだろうし。
南側の物見台を爆で破壊するなら、おねえさんは逆の北側ね。 エルナちゃんもよろしくね! 物見台が片付けば、屋上側のほうの加勢に行くと思うわ。 せっかく走って登れるし。