【帝国】ヴェルターゼン奪還戦 旧市街編

革酎

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シナリオID:1150

オープニング

●工房と職人達の町
 帝国南部都市ヴィントは一大軍事都市である。
 その周辺には衛星小都市、或いは衛星市街が環状に散在しており、そのうちのひとつが工房街ヴェルターゼンだ。ヴィントから見て東北東に位置し、半日程度、馬車で旧街道を突き進めば簡素な外壁に挟まれた街門に到達することが出来る。
 帝国崩壊前のヴェルターゼンはその呼び名の通り、多数の工房が半数以上の路地にひしめき合う職人達の町であった。各種紋具工房や商業用道具工房、生活雑貨工房等の他、木材や金属材を扱う資材加工工房等も充実しており、この町そのものがひとつの巨大工房という様相を呈していた。
 勿論食料を買い求めることが出来る市場や初等教育学級もひと通り揃っており、ひとびとは安定した生活を送ることが出来ていた。
 人口はおよそ5000人程。小都市としては中程度の規模といえるだろうか。市街の中央を河川が貫通している為に生活用水の確保には事欠かず、地盤は強固且つ水はけの良い平地の為、市街形勢条件としては上等の部類に入る。
 だが、市街そのものの構成は少々特殊だ。中央部は数十年前に区画が新たに整備され、新市街と呼ばれるようになった。この新市街には工房職人の中でも師匠クラスの熟練者が多く住み、また一方では工房経営者、或いは帝国の役人等が多く住んでいた。工房の所在地も、大半がこの新市街に置かれている。
 一方、新市街を囲む形で旧市街が外縁部を形成している。こちらは下級職人や農耕従事者、一般の商店経営者等が多く生活しており、昔ながらの下町の風情が残されていた。
 新市街と旧市街では町並みの構造そのものが著しく異なり、新市街は整然、旧市街は雑然という言葉がぴったりと当てはまり、実に対照的な光景を見ることが出来た。
 だが帝国崩壊直後、このヴェルターゼンも他の都市や町と同じくクリーパーや魔獣の侵攻に見舞われ、今は無人のゴーストタウンと化している。
 そこでヴェルターゼン奪還の為に立ち上がったのが、ロモズ歩兵団であった。
 ヴィント奪還戦を契機に、帝国南部各地でその他の小都市や町、村、集落といった生活圏の奪還戦が相次いでいる。ヴェルターゼン攻略も、それら生活圏奪還戦の一環として進められる運びとなった。

●奪還計画
 旧街道からヴェルターゼンを望む小高い丘の上に攻略拠点を置いたロモズ歩兵団は、幾つもの天幕を張り、ここを臨時駐屯地として運用することにした。
 中央の天幕が指令所とされ、ロモズ歩兵団長リーヴァー・シュランドル帝国子爵が常時詰めている。
 その傍らには専属秘書カレンディアの姿もあった。
「ウォレス伯爵への連絡はついたか?」
「はい。伯爵閣下からは麾下の私兵団をヴェルターゼンに派遣し、周辺のクリーパーや魔獣等の一掃に動いて下さる旨のご回答を頂いております」
 ウォレス伯爵からの返書を読み上げるカレンディアの声を受けて、リーヴァーは満足げに頷いた。
 次いで、その視線が指令所の中央に陣取る大卓上へと落ちた。
「新市街は街路も整備されているし、各区画面積も広い。となると中型クリーパーが徘徊していると見た方が良さそうだな」
 大卓上に広げられたヴェルターゼン見取り図の新市街部分を、リーヴァーは手にしたペンの柄先でこつこつと軽く叩いた。
「重兵と弓兵を多めに投入した方が良さそうですな」
 大卓の対面から図面を覗き込んでいるのは重兵2番隊長のアーギス・マーレイ。新市街は頑丈な建物も多く、少々派手に暴れたところで損壊等の被害が出るのは少ない、と見ている。
「逆に旧市街は路地が複雑に入り組んでいる上に、古い建物が多い。乱戦には不向きだな」
 遊兵1番隊長ディーグ・ディオロンが丸太の様な豪腕を組んで、低く唸った。旧市街では遊兵を主力として投入した方が良さそうだ、と野太い声で続ける。こちらは恐らく小型クリーパーが多数徘徊しているだろうから、局地戦的な市街戦になることが予想された。
 ここでリーヴァーはカレンディアに振り向いた。カレンディアには国境付近の町カーケルスの冒険者ギルド支部で、ヴェルターゼン奪還戦の為に冒険者の援軍を募らせておいた。
「まだ多くの冒険者が検討中とのことで、明確な参戦回答はありません」
「まぁ良いさ。作戦開始までに駆けつけてくれれば、それで良い。歩兵団各隊長及び副長、臨時兵長にも召集はかけてあるな?」
 それは勿論、とカレンディアは頷き返す。尤も、彼ら全員が招集に応じる必要は無い。新市街も旧市街も、歩兵団の全兵力を投入出来る程の広さは無い。いずれも多くて10~15個部隊までだろう。
「攻略順は旧市街からだ。まずは外堀を埋める。新市街はその後だ」
 戦闘開始は翌早朝。
 リーヴァーは全兵団員に対し、今夜はゆっくり休むようにと指示を出させた。

解説

状況:  PCの皆様はヴェルターゼン旧市街攻略戦に参加する主要戦力として、戦闘開始当日の朝に街門前に集結しているところからスタートとなります。  ロモズ歩兵団遊兵隊が主力となり、重兵隊と弓兵隊がその補佐として後方を固めます。  戦闘は主に狭い路地を中心とした市街戦で、場合によっては低い建物の屋根の上や屋内ということもあり得ます。視界が悪い為、エーテルを感知して接近して来るクリーパーの方が先にこちらを発見する確率が高いことを念頭に入れて臨んで下さい。  尚、投入された歩兵団各隊は基本的にはNPCの隊長若しくは副長が率いてきていることになっていますが、参加PCがロモズ歩兵団各隊の隊長、副長、臨時兵長の称号を持っている場合は、代わりに自身が率いる隊を連れてきているということにして、自隊の指揮を執ることも出来ます。 敵:  小型クリーパーが旧市街のそこかしこに潜んでいます。正確な数は不明ですが、町の規模を考えると、多くても30~40体程度と考えられます。  強さも戦闘能力も一切不明ですが、経験を積んだ冒険者なら後れを取ることは無いでしょう。  寧ろ敵は、視界と自由な立ち居振る舞いを阻害する地形だとお考え下さい。 NPC:  主なNPCはリーヴァー・シュランドル帝国子爵とロモズ歩兵団遊兵1番隊長のディーグ・ディオロンです。

マスターより

 皆様、こんにちは。  連動【帝国】の事後シナリオをご提供致します。  今回は帝国南部地方の小都市のひとつ、工房街ヴェルターゼンの奪還戦です。  同時期にリリースされる新市街編とは戦闘開始タイミングが微妙にずれていますので、いずれのシナリオにも同時参加が可能です。  どうぞご検討下さいませ。

リプレイ

●旧市街北区制圧戦
 朝霞が町全体を覆い尽くしている。
 工房街ヴェルターゼンの中央を貫く川面から、白い靄が立ち昇っていた。東の空から射し込む陽光にきらきらと映え、それはまるで極北で見られるダイヤモンドダストを連想させる様な輝きを放っていた。
 うっすらと漂う純白の帳は、下町の風情を残す旧市街の狭い街路にも静かに満ちている。
 帝国崩壊後、ひとの気配が絶えて久しい無人の街――だがこの日、極限に近しい大音量で放たれた甲高い声を皮切りに、戦いの火蓋が切られた。
 ヴェルターゼン旧市街北区の、とある民家の屋上物干し場で、遊兵2番隊長トゥーリが敢えて自らを囮にするかの如く、クリーパー発見を知らせる叫びを放ったのである。
「クリーパー発見! 人型2メートル級、路上8体、屋内若干数!」
 直後、長屋状に連なる低い民家の屋根の上を、複数の弓兵達が駆け寄ってくる。弓兵3番隊長ノックス・マグナ率いる屋上火力部隊だ。
 この周辺のクリーパーはいずれも地上の街路か屋内に屯しており、屋上にはほとんど姿が無い。新市街を闊歩している中型クリーパーを警戒しているのかも知れないが、この状況はノックスにとっては好都合だった。
「さぁ、皆さん、機動力を重視して積み重ねてきた訓練の成果を発揮する時ですよ」
 遊兵にも劣らぬ程の身体能力を発揮して、弓兵3番隊は高低差のある屋根の上を身軽に駆け抜けてゆく。大弓の様な強威力の弓を敢えて廃し、機動力と短弓の速射力を前面に押し出した戦術を採用したノックスの隊は、ヴェルターゼン旧市街という狭く足場の悪い戦場に於いてこそ、その威力を最大限に発揮する。
 局地戦に於いて最大火力を追求するならば、このスタイルこそが最善だというお手本の様な部隊であった。
 トゥーリ率いる遊兵2番隊も負けてはいない。事前に何度も検討を重ね、この旧市街に於ける最適解ともいえる隠密索敵戦術を隊員達に徹底していたトゥーリは、自らの叫び声で己を囮にすると同時に、隊員達には陰を走らせ、小型クリーパー共の隙を衝く戦術を取らせていた。
「乱戦になった時に状況把握に役立つのは、やっぱり音だからね! 敵を見つけたらその場所を皆に教えるからね。よろしく!」
 自隊員達にはあらかじめ、その様にいい含めておいた。遊兵2番隊の面々はトゥーリの計画通りの位置取りで展開し、人型2メートル級クリーパーの背後へと廻る。
 全7班に分割された遊兵2番隊による後背攻撃と、屋根の上から矢の雨を降り注がせる弓兵3番隊の火力を浴びた8体のクリーパー共は、トゥーリが陣取る民家前のやや開けた井戸広場に向けてじりじりと圧力をかけられ、獰猛に唸りながら一箇所へと押し込まれてきた。
 その時、井戸広場の別の屋内から、3体のクリーパーが弾き飛ばされる様な勢いで押し出されてきた。
「市街戦はお肌に悪いのでまずあじという啓示がございましたッ! そして早期にこの町を手に入れるのが吉と出ておりますッ!」
 重兵7番隊長フリーダ=ブロムヴィストの気合に満ちた声。彼女が率いる重兵隊は屋内での掃討戦に入っており、その鍛え抜かれた突進力でクリーパーを袋の鼠に叩き落とした訳である。
 都合11体のクリーパーが一箇所に押し固められた。あとはそこに弓兵3番隊と遊兵2番隊が同時に無数の鏃を叩き込むのみであろう。
「この区域の掃討戦に、余り時間をかけるつもりはありません。一気に片付けましょう」
 ノックス自身も強威力の矢を文字通り矢継ぎ早に次々と撃ち込んでゆく。11体の人型クリーパーは奇怪な雄叫びをあげつつも、ものの数十秒でその全てが塵と化して消えた。
「袋叩きにされる覚悟もしていたのですが、逆にボコっちゃいましたね。これも啓示にあった通りです」
 屋内索敵用に用意していた手鏡で火照った頬をぱたぱたと扇ぎながら、フリーダは誇らしげに胸を張った。
 正直なところをいえば、索敵能力には乏しい重兵だけでは、この狭くて入り組んだ旧市街での戦闘は極めて不利であったが、遊兵達の先導と巧みな索敵技術に相当助けられ、その破壊力を遺憾無く発揮することが出来ている。だがそれもフリーダにいわせれば、啓示が彼女に与えた先見の明ということになるのだろうか。
「さぁそれでは、次なる制圧戦に参りましょう」
「弓兵3番隊も他の遊兵隊の支援に移行します」
 フリーダとノックスはそれぞれ異なる方面に、自隊員らを率いて走り去ってゆく。残った遊兵2番隊もトゥーリの指揮のもと、新たな戦闘区域を求めて移動を開始した。
「さ……次はここだね」
 屋上物干し場に集まってきた各班長達に、地図上のとある箇所を指差した。そこには他隊の支援は無いが、敢えて未捜索の場所を攻めることで、無駄な重複を防ごうという意図があった。
「さ、行くよ。倒し漏れが無いように細かく見て行かなくっちゃね」
 トゥーリのやや弾んだ声に、7人の臨時班長達も引き締まった顔で頷き返した。

●旧市街南区の拠点
 トゥーリ、フリーダ、ノックスの隊が旧市街北区に蔓延る小型クリーパーを順調に掃討しつつある頃、新市街を挟んで反対側の旧市街南区では重兵6番隊長アリア・ティーダ率いる重兵隊がいつもの様に工兵としての技量を発揮し、南区攻略拠点ともいえる橋頭保を確立しつつあった。
「やっぱり新しい制服ってのは、気持ちも引き締まるな」
 帝国カラーの赤を基調としたアリア専用の隊長制服は、堅実堅固たる重兵6番隊の落ち着きをそのまま体現した様なデザインだ。そのアリアの指示に従い、6番隊の重兵達はかつて地域の交流場として使用されていたであろう公会堂を臨時の市街戦陣地として見定め、一気に補強を進めた。
 内部には3体のクリーパーが徘徊していたが、大盾持ちの防御担当と片手剣持ちの軽機動攻撃担当のふたり一組の班で屋内包囲戦を展開し、一体ずつ確実に仕留めていった。
 勿論アリアも己の技術で隊員達を支えはしたが、基本的には隊員達自身の力でクリーパー共を始末した。
 以前であれば考えられない様な話だが、今や難民兵達は自らの力でクリーパーに対抗し得るようになっていたのである。
 臨時拠点の設営をほぼ終えたところで、重兵6番隊副長のウォーレン・バスクが二階の窓際に佇むアリアの傍らへと駆け寄り、旧市街東地区の制圧に動いていた遊兵4番隊が一時帰投の為に引き返してきた旨を告げた。
「東地区では9体の討伐が完了、とのことです」
「うひゃあ、ロイ君の隊だけで? そりゃあ凄いや」
 アリアは目を丸くしながら階段を駆け下り、遊兵4番隊長ロイ・アウレアの隊を迎え入れた。
 ロイや副長ジリアン・コルヴァ、そしてその部下達は一様に疲れた表情を見せていたが、同時に満足げな笑みも浮かべていた。
 アリアとウォーレンが遊兵4番隊の目覚ましい戦果を素直に称賛すると、ロイとその部下達は互いに顔を見合わせて誇らしげに胸を張った。
「特訓の成果が出たってところかな」
 勿論、それだけではない。ロイは視界の利かない市街戦に最も適した戦術を考案し、部下達に徹底させた。その指揮能力が無ければ、これだけの数のクリーパーを討滅出来る筈も無い。
 今回遊兵4番隊は五つの班に分かれ、相互補完し合う配置を取りながら常に走り続ける機動戦闘を心掛けた。いずれの班も孤立することなく、敵発見時は必ず勝てる戦力が揃うまで決して無理をせず、そして討伐完了後には速やかに屋内を移動し、最短ルートを駆け抜けて少しでも多くの敵を斃し続けた。
「回復手段が品切れになる前に撤退する。早々の帰還が嫌なら負傷禁止だからな」
 ロイの冗談交じりの指示を、隊員達は完璧に守り抜いた。その結果として、隊単独で旧市街東区のクリーパーをほぼ壊滅に追いやったのは称賛に値する。
 遊兵4番隊はこれまで培ってきた経験に加え、ロイという頼りになる存在が何より大きい。今回の戦果も当然の帰結といえるのかも知れない。
「うぉーい、ちょっと邪魔するよー」
 不意に街壁側の路地から、完全武装姿のサイラスが弓兵10名を引き連れて臨時拠点の防衛ライン内側へと姿を現した。
 重兵6番隊が制圧した公会堂の高い屋上から周囲を俯瞰し、弓兵達の配置を見直したいというのである。
 サイラスは臨時兵長として彼ら10名を本作戦下での部下として指揮していたが、俄編成とは思えぬ程の練達ぶりを発揮し、街壁方向のクリーパーを4体、討伐することに成功していた。
「ここ、狼煙も置いてあるかな」
「あ、適当に持ってって」
 アリアの指示でウォーレンが取り出した幾つかの煙玉を受け取ったサイラスは、休憩モードに入っているアリアとロイに歩を寄せ、互いの戦果を報告し合った。
「それにしても、案外エフレムさんショックって無かったよな。そっちの方が驚きだ」
 サイラスはロモズ歩兵団員の間にエフレム大逆の衝撃が尾を引いているに違いないと推測していたが、意外にも彼等は然程に気にする素振りは見せていなかった。
「それはそうだろうな。彼らにとってはエフレムは雲の上の存在……これがもし団長だったら、完全に瓦解していただろうけど」
 さもありなん、とロイは感慨深げに頷く。
 ロモズ歩兵団員にとっては団長リーヴァー・シュランドル帝国子爵と、各隊の隊長及び副長が最大の拠り所なのであろう。エフレムの件は確かに衝撃ではあったが、かといって悲嘆に暮れる程の精神的打撃を与えるまでには至っていない。
 ロモズ歩兵団には進むべき道、目指すべき光が明確となっている。悲しんでいる暇は無い、というのが彼らの心を常に前向きにさせていた。
 それからしばらくして、ジリアンとウォーレンが公会堂屋上からの地形情報を持って降りてきた。手書きの地図を受け取ったサイラスは、次に自らが率いる弓兵達をどこへ配置すべきかを即座に判断した。
「南区は、あと5、6体ってところかな」
 大きく伸びをしてから、もうひと踏ん張りだとサイラスは自らに気合を入れ直し、10名の弓兵達を率いて臨時拠点を飛び出していった。

●後続戦闘へと繋げ
 旧市街北区、東区、南区で着々とクリーパー討伐が遂行されてゆく中、西区では遊兵6番隊長ナハティガル=ラー率いる遊兵隊が遊兵4番隊にも劣らぬ活躍を見せていた。
 今回、ナハティガルは平隊員だった卑華王(ピカオウ)を副長に抜擢していた。この英断が、吉と出た格好である。
「お前が必要と判断したならば、独自裁量で動いて貰って構わない。これからも期待しているので、頑張ってくれ」
「ヴィハァァァァッ(お任せ下さい。商取引は信用第一でございますから)」
 本人はあくまでも商売人を自認しているが、この西区制圧戦で見せた卑華王の統率力と個人戦闘力は、実に目を見張るものがあった。事実上、遊兵6番隊では強力な授恵者がツートップ体制を敷くことになったといっても良い。
 隊の半分を卑華王に任せたナハティガルは、残る半数を率いて索敵と撃破を繰り返す市街戦を地道に敢行していった。2名で一組の10班編成とした機動力の高さも相まって、クリーパー討滅は想定以上の早さで進んだ。
 遊兵6番隊でも矢張り、単独で敵と接しないことが徹底された。必ず勝てる状況を創出すること――戦術指揮に於いては、最も重要な観点である。
 ナハティガル自身は己の高い戦闘力を発揮して単独でもクリーパーを数体討ち斃していたが、彼以外の隊員は飽くまでも訓練された一般人に過ぎない。隊としての原則は、いわば彼らの命綱でもあった。
 そして隊の方針は見敵必殺。討ち漏らしなど生じる筈も無かった。
「上下水道が通っていなかったのは幸いだったな」
 巨大な嘴に手足が生えた様な形のクリーパーを超人的な脚の速さと高威力の三段連撃で仕留めたナハティガルは、改めて古い街並みをそっと眺めやった。
 場所は街壁方面に近い裏通り。
 その時、少しばかり北寄りの位置で何かが爆発する様な衝撃音が響き渡った。誰の仕業なのかは、大体察しが付く。
 それからしばらくして、遊兵8番隊長アウレーリア・フォン・ネーベルベルク率いる遊兵隊が姿を見せた。この隊は二個分隊に編成を分け、街壁沿いを時計回りに走る格好で掃討戦を進め、各隊が見逃した細かな敵を虱潰しに叩いてきたのである。
 ナハティガルは敵の出現が止まったところで一旦戦闘の手を止め、新市街攻略戦の参考の為にと旧市街制圧戦に於ける敵の種類、能力、個体数、出現場所、そして行動パターン等をメモに書き留めていたが、そこへ遊兵8番隊がぶつかる形となった。
「あら……6番隊と出会ったということは、一周し終えたってことね」
 街壁沿い周回戦闘では、アウレーリアはルート作成から前後衛交代、情報共有、接敵時の対応、戦闘後の相互連絡を全て隊員達自身にやらせてきた。アウレーリア自身は隊を俯瞰する位置で監視し、状況に合わせて自らの火力を投入するにとどめていた。
「小型クリーパーはあらかた討滅完了というところかしら……なら次は、新市街攻略隊の為の露払いと拠点設営かしらね」
 アウレーリアは工房通りへと連なる一本の大通りへと視線を転じた。旧市街掃討戦は、アウレーリアが思っていたよりも早く、最後の仕上げに入ろうとしている。
「今後も類似の作戦が続くかもね……ノウハウを纏めておかないと」
 懐からメモを取り出したアウレーリア。その帳面には、今回の作戦で得られた情報がびっしりと書き込まれている。同じようなことを考えたものだと、ナハティガルは苦笑を禁じ得なかった。
 両隊はひとまず旧市街西区を東西に貫く大通りへと引き返した。丁度そこへ、ディーグ・ディオロン率いる遊兵1番隊に随行する形で、ロイとフリーダ、ノックス、トゥーリといった面々がそれぞれの副長を従えて西街門方面を目指していた。
 アリアは南区の拠点を維持し、何かあった時の対応の為に残っているとの由。
 フリーダはアウレーリアの顔を見るなり、お肌は大丈夫でしたか、などと妙な質問をぶつけてきた。
 何のことかと小首を傾げていると、フリーダは市街戦はお肌に悪い啓示が云々と意味不明な台詞を並べ立ててきたのだが、よく分からないアウレーリアは、取り敢えず大丈夫だと適当にお茶を濁した。
「しかし物凄い声だったな。ここからでもよく聞こえたぞ」
「えぇー、そんなに大きかった?」
 ナハティガルに水を向けられ、トゥーリは軽くはにかんだ笑みを浮かべながら頭を掻いた。アウレーリアも、お陰で多くの敵が炙り出されて自隊の前に飛び出してきたと苦笑を向けた。
「あ……サイラスさんもいらっしゃたんですね」
 ノックスが、傍らのロイと顔を見合わせる。
 リーヴァーは西街門前でサイラスからいち早く報告を受けている最中だった。
「諸君、ご苦労だった。これで外堀は埋まったな」
 次は新市街攻略戦。まだまだ、戦いは終わらない。

マスターコメント

 お疲れ様でございました。  各隊、実に的確で効率的な運用が出来ていたと思います。考え抜かれた指揮内容と無駄の無い個人戦闘方針から、旧市街攻略戦は完璧且つ早期完了という結果を迎えることが出来ました。  続く新市街攻略戦に向けて、大きな弾みとなったことでしょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2021年07月17日 10時32分54秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. No.1

    サイラスだ、よろしくなー とりま時間差戦闘との事かつ、同じMSさんだから新市街側行く人とその部下の負担は減らしたいねぇ。こっちの方が先だし。 で、俺は副長試験結果来ないと弓兵借りるか重兵指揮するか決められんね。 戦闘としては索敵手段用意してアンブッシュ減らす、狭い路地中心との事で射線厳しい、隊展開は難しい事意識して動く必要があるかな? とりまうちは透視とか使って動こうかなと。

  2. ロイ・アウレア

    ロイ・アウレアです。宜しく! >主に狭い路地を中心とした市街戦 今湧いてるイメージですがスラム街が浮かんでいて地図にない建物もありそうだな…と。 それでも、市街地なので元になる地図はあるだろうから 出発地を決め、そこから手分けし、塗り潰すようにクリーパーを探したいと思ってますがどうでしょう? 今予定してる汎用は【サーマルアイ】と【超聴力】又は【透視】 後はホークアイか捜波を攻撃スキルとの組み合わせで選ぶつもりです。 サイラスさんへ 革酎MSは執筆が早いので大丈夫と思いますが もし届かなくても臨時兵長の肩書をお持ちなので好きな方をお借りできると思ってますよ。

  3. No.3

    当落で回せる人員固定になるか選択出来るか変わるのさね俺は。今君のイイヒトとか受かって俺落ちたから、安心して建物内中心に潰すなら重兵を、外中心なら弓兵借りていけるが。

  4. ナハティガル=ラー

    遊兵6番隊隊長、シーフのナハティガル=ラーだ。 今回は宜しく頼む。 >主に狭い路地を中心とした市街戦 >地図 OPでリーヴァー団長達がヴェルターゼン見取り図を広げていたので、 申請すれば写し位は入手出来るかも知れない。 基本的には索敵⇒撃破⇒索敵...を繰り返す形になるだろうから、 地形把握用に【探波】を持って行くつもりだ。 その他は【超嗅覚】【暗視】等を予定している。

  5. フリーダ=ブロムヴィスト

    重兵7番隊隊長、ウォーリアのフリーダです。 よろしくお願いします。 重兵という事で機動力に欠けますし、捜索メインであれば建物内を中心に、 外メインなら弓兵の護衛が中心になるかと思われます。 とりあえずは皆様の行動次第でしょうか?

  6. ノックス・マグナ

    弓兵3番隊長のノックスです。 よろしくお願いします。 私は自身の隊を率いて屋根上に上がり、そこから屋根上にいるクリーパーに射撃を行い屋根上を制圧したいと思います。 これによって頭上からの不意打ちを防げるのではないかと。 まあ屋内にいる可能性はあるので窓には気をつけて欲しいところですが。 上記の行動では協力して動くということが難しいとは分かっているのですが、どうしても弓兵隊を率いたいのでご容赦下さい。

  7. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    遊兵8番隊長、キャスターのアウレーリアよ。 歩兵団に関われるのは久しぶり、どうぞ宜しくね。 我が隊の基本運用は、隊員が目となり私は拳。 接敵報告のあった場所に爆炎やメテオライトを降らせに行くのが私の仕事よ。 私自身の配置は、屋根上などの高所になるでしょう。 【超視覚】とかを持っていくけれど、私の索敵力はそんなに高くないわ。 いっそ他の人や部隊にも頼ってしまおうかな、とは思っています。 それと、【透視】を使う人は「原則、戦闘中に使用することはできない」点に注意してね。

  8. リーヴァー・シュランドル

    旧市街の地図だが、各隊それぞれ数枚ずつの写しを配布していると思って貰って結構だ。

  9. ロイ・アウレア

    >リーヴァー団長 地図の配布ありがとうございます。参考にします。 1点質問させてください。 Q:旧市街には下水や地下道は有りますか? 地図には無いが《現地にはあるかも知れない》と 《有る》では、準備が変わるので教えて頂きたいです。 (本文中にありましたら、見落としてます。申し訳ない。) それと、遊兵1隊では手に余る数を発見したら狼煙かラッパか…あるいは伝令か まだ決め兼ねてますが、近くの隊に応援要請をさせて下さい。 お手数掛けますが、宜しくお願いします。

  10. ロイ・アウレア

    連投申し訳ない。 【透視】の件、ありがとうございます。 突入前の確認に使うので大丈夫です。でも気を付けますね。

  11. アリア・ティーダ

    第六重兵隊、隊長のアリア。 ヒーラーですっ。宜しくだねっ! ボクの部隊も、フリーダ氏と同じ様に隊員と一緒に屋内掃討をメインで。 地図も貰えるなら、有利に戦えそうかな? 積極的に観測や要所要所を確保・補強していって、必要ならば アウレーリア氏の部隊に観測情報を提供できる…かも?

  12. リーヴァー・シュランドル

    >ロイ隊長 上下水道は旧市街にも新市街にも無い。 余程の大都市か、先進技術をふんだんに取り入れている様な都市でもなければ、上下水道は存在しないと思って貰って良い。

  13. リーヴァー・シュランドル

    >ロイ隊長 あと、地下道も無いから、心配無用だ。

  14. トゥーリ

    トゥーリだよ、ロモズ歩兵団としては遊兵2番隊の隊長をやってるよ。 よろしくね! 運用としては機動力重視の一撃離脱戦法が中心になるかな? 捜索中心の隊と連携して、地形的な要所を確実に確保する感じを考えてるよ。 ●所属隊のまとめ ・重兵  アリアさん、フーリダさん ・弓兵  ノックスさん ・遊兵  アウレーリアさん、ナハティガルさん、ロイさん、トゥーリ ・選択できる  サイラスさん

  15. No.15

    そういやあれ制限あるのかぁ。それに地下も水道もないならサーマルアイだけでいいかな。ありがと。 屋内2、対空1いて他の人は捜索撃破メインだしいつも通り弓兵借りるかねぇ。 連携して動くのは最初だけで、制圧した建物とかの上に陣取らせて外の敵や対空支援にまわってもらうかねー。

  16. ロイ・アウレア

    地下道・下水と無い件、了解しました。 リーヴァー団長、ありがとうございます。 >それと、遊兵1隊では手に余る数を発見したら ここは同行の皆さんへのお願いのつもりで書きました。 判り難い文章で申し訳ない。 遊兵4番隊も、基本的には索敵・撃破を繰り返す予定です。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0