鳶を狩る鴉
影絵 企鵝
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シナリオID:1095
オープニング
ある日のこと、一台の馬車が森の中の道を進んでいた。中に乗っていたのはレナという名のお嬢様。とある商家の令嬢で、今日はまた別の商家と友誼を結ぶため、嫁に入るところだった。親は自らの威信を示すため、白馬二頭立ての白い馬車を用意し、彼女の座る席の後ろには、高価な品物を大量に積んでいた。家の未来が掛かった一大事だから、当然護衛だって付けている。
しかし、それを突け狙うその日の盗賊達もまた、並大抵ではなかったのだ。
ひゅっと飛んだ矢が、いきなり馬の目を射貫いた。馬は悲鳴を上げながら仰け反り、そのまま隣の馬にぶつかり一緒になってどうと倒れ込んだ。バランスを崩した馬車も一緒になって倒れ、辺りに財宝がばらまかれる。周りを固める護衛は、突然の事にその場で固くなった。
「今だ、やれ!」
盗賊達の群れが一斉に茂みから飛び出し、護衛達へと襲い掛かる。不意を突かれた護衛は、一人は首を刎ねられ、一人は胸を一突きにされ、次々に倒れていく。
「はっはぁ! へなちょこめ!」
巨大な手斧を担いだ男は飛び出すと、目の前の兵士目掛けて斧を振り上げる。兵士は槍を構えてその一撃を受け止めようとするが、斧の一撃は槍を叩き折り、兵士を真っ二つに下ろしてしまった。
「へっ。ただの人間が授恵者に敵うもんかよ!」
肉の塊になった兵士が辺り一面に転がる。既に一帯が死臭に満ちていた。
「くっ……」
何とか起き上がった御者は、財宝の山の中から鳩の入った鳥かごを引っ張り出し、中から鳩を解き放つ。周囲の惨劇もどこ吹く風、鳩はどこかを目指して一目散に飛んで行った。それを見送る間もなく、御者は背中を一突きにされて死ぬ。盗賊は亡骸を踏み越えると、馬車の扉を引っ剥がし、中で縮こまっていた令嬢を覗き込む。
「へっへっへぇ。こんにちはお嬢ちゃん」
「いやぁ!」
令嬢の絹を裂くような悲鳴が、森の中に虚しく吸い込まれていった。
●令嬢を救え
ギルドの集会所に集まった君達。その目の前には、つい先日ギルドに加入したばかりの少女、ミネルヴァ・フィーギルが立っていた。小遣い稼ぎのために、受付のような仕事も兼任しているらしい。
彼女は事件のかくかくしかじかを話すと、君達を見渡す。
「……ということがあったらしいです。鳩が戻ってきて商家の人が異常を悟ったところに盗賊の使者がやってきて、娘は預かったから財産を寄越せと迫ったとか。娘の婚姻が成らなければ家の信用を潰す。けれども盗賊の言う通りにしたら家が傾く。そんなわけで私達に助けを求めたようですね」
彼女は紙を一枚手に取って広げる。そこには小さな砦の簡単な見取り図が描かれていた。
「盗賊団は森の近くにある、打ち棄てられた砦に陣取っているようです。名前は『ブラックカイト』。五人の授恵者を中核として、殺しや盗みの凶悪な行為を繰り返しています。往来の平穏を取り戻すためにも、人質の救出のみならず、ここで盗賊団を叩きのめしておきたいですね。混戦になるでしょうから、人質の安全の確保にまずは注意を割く必要がありそうですが」
彼女は見取り図を畳むと、君達へと一歩踏み出した。
「任務の概況はこんな形です。でもって、折り入って皆さんにお願いがあるのですが……」
今まで大人しくしていたミーナの眼に、ほんの少し悪戯っぽい光が宿る。しかし、悪を許さないという確たる正義感もまた、全身に満ちているのだった。
「今回の戦い、ちょっと私に先陣を切らせていただいてもいいですか。決して皆さんの悪いようにはしませんから」
●鴉はここにあり
砦の中で、たった一人捕らわれたレナは下卑た男達に取り囲まれていた。恐怖によって足がすくみ、とても動くことが出来ない。
「別嬪だなあ。今まで大切に育てられてきたんだなぁ」
けらけら笑いながら、盗賊はレナの白い肌を覗き込む。レナはただ口をわなわなさせた。恐怖のあまり悲鳴も出て来ない。
「手はつけんじゃねえぞ。人質の無事を保証してやるからこそ、脅しもちゃんと効くってもんだ」
「わかってますぜ、頭。こいつをやるのは奴らが約束を守らなかったらだ」
「手は付けなきゃいいんだよな? じゃあ匂いは嗅いでいいんだよな?」
一人の男が欲深な笑みを浮かべて尋ねる。頭領は頷いた。
「いいぜ。それは好きにしな」
早速男はレナのうなじ辺りに顔を埋めた。
「あー、すっげえ……」
「ひっ」
蝶よ花よと育てられたレナにとって、全てが未知の脅威。彼女は正気を失いそうだった。
「神よ。神よ、どうか……」
そんな時、フルートの音色が砦の中に響き始めた。男達は誰からともなく声を潜め、音の出所を探る。吹き抜けの上だ。一斉に振り返った彼らの視線の先に立っていたのは、鴉の風切羽根を派手にあしらった帽子を被る男装の麗人――ミーナが立っていた。笛の演奏を止めると、彼女はおもむろに男達を見下ろす。
「やあやあ。寄ってたかって女の子をいじめるなんて、いかにも人間のクズって風情ね」
「誰だお前!」
「わからないなら教えてあげる!」
ミーナはその身を翻すと、マントの懐に手を突っ込んで小さな木札を階下一面にばら撒く。男が一つ手に取ると、そこには月桂樹の枝を咥えた鴉が黒々と焼き付けられていた。
「私の名前はミネルヴァ・フィーギル! 悪を貫く鴉とは私のことよ!」
彼女は高らかに自分の名前を叫ぶと、右手を力強く突き出しポーズを決める。下から見上げる盗賊達はぽかんとしていた。
「……ふざけてんのか?」
「そんなことないわ。本気も本気、大真面目に……」
急にミーナは欄干を乗り越え、盗賊の群れ目掛けて飛び降りる。盗賊が身動きを取れない間に、一人の頭を力任せに蹴っ飛ばす。吹っ飛ぶ男を見届けながら、彼女は剣を抜いて大見得を切った。
「ふざけてんのよ!」
「どっちだ!」
いきり立った盗賊達が一斉に武器を構える。ミーナも肩を揺らしながら剣を構え、盗賊を挑発する。
「さあさあ、かかってきなよ! まとめて相手になってやる!」
「舐めやがって!」
盗賊達が剣を振るう。ミーナはその場で跳び上がってその一撃を躱すと、一人の肩を蹴りつけて盗賊達の頭上を取った。
「捕まえろ!」
「鴉が捕まるわけないでしょ!」
ミーナは敵の頭や背中を踏みつけにしながら砦の宙を飛び回り、そのまま壁に張り付き全速力で走り出す。短弓を構えた男達が、一斉に矢を番えた。
「狙え! 好きにやらすんじゃねえ!」
放たれた矢は、しかしミーナに追いつけない。壁伝いに砦の端から端まで走り抜けた彼女は、空中で身体を捻りながら最後の矢を躱し、とうとうレナの目の前に降り立った。ミーナはレナを縛る縄をバッサリと解き、不敵に笑う。
「女と思って馬鹿にしてんでしょ」
「ちっ」
斧を構えた頭領が舌打ちする。短剣を構えた盗賊二人が、頭領の脇を固めながら尋ねる。
「頭、この女はやっちまっていいんだよな?」
「ああ。好きにしていいぜ。俺達に喧嘩を売った事、死ぬまで後悔させてやれ」
「やれるもんならやってみな」
ミーナは目尻を吊り上げ、低い声で啖呵を切る。レナはそっと彼女の袖を掴み、恐る恐る彼女の横顔を見上げる。
「ミネルヴァ、さん……」
「大丈夫よ。貴方は“私達”がちゃんと守ってあげる」
彼女は微笑む。ミーナは盗賊に向き直ると、剣を構え直した。
ミーナが一暴れしている間に、君達は予定の配置に辿りついた。後は動き出すだけだ。
解説
マスターより
リプレイ
真っ先に敵陣へ飛び込んで盗賊達へ啖呵を切り倒したミーナ。群がる盗賊の攻撃をレイピアでいなし続ける彼女を見ながら、キリアン・フィッツジェラルドは呆気に取られていた。
(これが初陣……)
猟兵へ鞍替えした彼にとっては信じられないくらいの猪突猛進ぶりだが、この機を逃す手はない。回廊に立ち、窓から戦場の様子を窺う。ミーナとその周りの様子くらいしか目視できないが、捜波を持つ彼にとってはそれで十分だ。弓を手に取り、弦をギリギリと引き絞る。
「さて。始めましょうか……」
盗賊達が剣を抜き、ミーナをじっと取り囲む。令嬢を庇うように立ち、彼女はじりじりと後退りする。一人ならともかく、レナを背負ってしまった以上自由には動けない。完全に逃げ場を塞がれてしまった。鼻血を垂らした男が、にやりと笑う。
「さっきはよくもやってくれたな?」
「さあ? ……とりあえず、上見たらどう?」
ミーナが切っ先を上に向けると、それにつられて男が宙を見上げる。刹那、石の欄干を飛び越えたクローリカが、刃に光を纏わせながら突っ込んできた。
「はっ!」
彼女が光の刃を地面へ突き立てた瞬間、エーテル光が床を素早く走り、盗賊達の足下に絡みついた。慌てて後退りしようとするが、光は鎖のように男達の足を縛り付け、動きを封じた。
「ミネルヴァさんにも、レナさんにも手出しはさせませんよ」
「てめぇ……」
男達はやぶれかぶれでクローリカへ切りかかろうとするが、窓から鋭く飛び込んできた光の矢がその肩を掠める。背後に突き刺さった矢は破裂して光の破片と化し、男達へと襲い掛かった。
「ぐおっ」
「そこだっ!」
クローリカは一気に力を解き放ち、光を纏った剣を振り抜く。エーテルの塊を叩きつけられた盗賊達は、鞠のように吹き飛び、ガラクタの中に突っ込んだ。
「くそっ……勝手やりやがって!」
男は剣を振るって唸る。クローリカは剣を構え直し、ミーナと共に並ぶ。
「行きますよ、ミネルヴァさん」
「はい!」
「ふふっ。隠れても無駄だよ」
シルヴィア・A・カペルは鉄扇を振るい、小さい光の粒を空へとばら撒く。男達が気付いてももう遅い。シルヴィアが扇をぱちりと閉じると、光の粒が踊りながら盗賊の群れへと襲い掛かった。テーブルや椅子を盾に身を庇おうとする彼らの前に、シルヴィアは悠然と姿を現した。
「さあ、囚われのお姫様を助けに来たよ」
「また来たぞ!」
「あいつもやっちまえ!」
盗賊達は弓を構え、シルヴィアに向かって矢を放つ。彼女はコートを翻して矢を躱し、再び扇を広げて光の粒を放つ。
「やれやれ。品がないのは好ましくないね」
光の雨を降り注がせ、彼女は凛と言い放つ。
「かかってきなよ。相手になってあげようじゃないか」
盗賊の怒号が砦中に響き渡る中、海神・江流はこっそりと砦の影に忍び込む。天眼の力で砦の天井から様子を窺い、彼は素早く走り出した。盗賊の視界から逃れるように壁を走る。一人が振り向こうとした瞬間、江流はさらに足を速め、目の前に立っていた盗賊を蹴っ飛ばしながらレナの傍へと駆け寄った。
「君がレナさんかな。助けに来たんで、もうちょっとだけ我慢してね」
「てめえ!」
「逃がすか!」
盗賊達はいきり立ち、江流へと押し寄せようとする。江流は素早く周囲に目を走らせ、最も安全な逃げ道を割り出す。
「ちょっと飛ぶから、暴れないで捕まっててな」
「え――」
レナが声を上げる間もなく、江流は令嬢を抱え上げ、脚にエーテルを纏わせ一気に飛ぶ。盗賊の肩を蹴っ飛ばしながら砦の中を飛び回り、窓の目の前に降り立つ。
「人質は助けた。さっさと片付けようぜ」
「よーし、行くぞ!」
エルゼリオ・レイノーラは刃と盾を擦り合わせて光を纏わせ、そのまま真正面から砦の中へと突撃した。
「えーい!」
目の前に立っていた盗賊を盾で殴って突き飛ばし、そのまま剣をもう一人の背中目掛けて振り下ろそうとする。振り返った男は何とかその一撃を受け止め、冷や汗を流しながら叫んだ。
「こっちだ! こっちからも――ぎゃっ」
「ミーナさん、お待たせ!」
剣の柄で盗賊の頬を殴りつつ、エルゼリオはミーナへ手を振る。ミーナは眼を丸くすると、急いで盗賊達の横をすり抜け、彼の傍へと馳せ参じる。
「よくぞ参られた! さあ刮目して見よ! 彼こそは麗しき騎士、エルゼリオなるぞ!」
ミーナは懐から紙吹雪を取り出すと、ぱっと宙に投げる。ひらひら舞う一片を切り裂いて、エルゼリオは堂々と言い放った。
「盗賊ども、全員大人しくお縄につけ!」
「うるせえ! 死んだって捕まらねえよ!」
頭領は叫ぶと、斧を振り上げ彼に襲い掛かった。その一撃を盾でいなしながら、エルゼリオは力強く叫ぶ。
「第一、信頼される盗賊ってなんなのさ? 非道に手を染める奴に容赦する事なんて絶対にないよ!」
「金さえ払えば赦してやる! それが俺達の流儀だ!」
斧で辺りの瓦礫を振り払い、頭領が吼える。
「そんな俺達を邪魔するお前達は赦さねえけどな!」
●切った張ったの大騒ぎ
シーフが二人、揃って江流の方へ押し寄せる。人質を取り返そうという魂胆だ。江流は二振りの剣を抜き放つと、先にやってきたシーフへと対峙する。
「ここから先は、通さないってな」
その身を躍らせながら、三度連続で切りつける。盗賊は剣で受け止めようとするが、勢いを殺しきれずに大きく仰け反った。江流は勢いに乗って敵の懐へ潜り込むと、敵を踏み台にしながら軽やかに跳躍、レナの正面へと舞い戻った。江流の鮮やかなステップに、盗賊達は咄嗟に身構え、じりじりと後退する。
その背後に立っていたクローリカは、再び光る刃を地面へ突き立て、エーテル波を足元に走らせた。
「捕まえましたよ。今です!」
「ありがとう! ボクに任せて!」
エルゼリオは剣を振るうと、左足を前に突き出し、剣の柄を右の頬へと押し当てる。彼が気合を入れた瞬間、刃の先にエーテルの光が集結した。クローリカの殺界に縛られた盗賊達は、エルゼリオの方へ振り返るので精一杯だ。
「行くよ!」
一度沈み込んだ彼は、鋭く飛び出し剣の切っ先を盗賊の頭に炸裂させる。男は悲鳴を上げる間もなく吹き飛び、テーブルの台板に叩きつけられてぴくりとも動かなくなる。エルゼリオは剣を振るってエーテルの光を払い、不敵に笑う。
「“雄牛の角”の一撃……ってね?」
「てめえ!」
弓を手にした盗賊がいきり立ち、鏃にエーテルを纏わせた矢を放つ。エルゼリオは盾を掲げてその一撃を受け流し、砦の真ん中で盗賊と渡り合うミーナへ叫んだ。
「ミーナさん、あいつらをお願い!」
「承知!」
ミーナは盗賊射手目掛けて走り出した。盗賊の間を掻い潜り、椅子やテーブルの上を跳ね回る彼女だったが、不意に椅子を一つ踏み外し、思い切り彼女は引っくり返る。
「うわっ」
転んだミーナの身体が宙に浮く。クローリカは息を呑んだ。
「ミネルヴァさん!」
「へっ! 馬鹿が!」
盗賊達はいきり立ち、武器を振り上げながらミーナへと押し寄せる。
「……なーんて!」
ミーナは猫のように体を捻り、軽やかに地面に降り立つ。ついでに足元の紐を思い切り引っ張った。埃の被った紐が急にぴんと張り、襲い掛かった男達が次々にすっ転んだ。起き上がろうとする男達の頭を次々に蹴っ飛ばしながら、クローリカは溜め息をつく。
「元気があるのはよろしいことですが……あまりひやひやさせないでくださいよ」
「わかってますって」
ミーナはただにこりと笑うのだった。
一方、シルヴィアは扇を畳んで静かに軍刀を抜き放つ。彼女の瞳と同じ真っ青な刀身が、窓から差し込む光を受けて輝いた。狙うはシーフ。正面切って冒険者と対峙するのは不利と悟ったか、乱戦に紛れ、物陰に隠れて味方を狙おうとしている。
「させないよ。君達の相手は私だ」
颯爽とシーフの傍へと駆け付けると、淡い光を纏った刃を振り抜き、蝕むエーテルを叩きつける。シーフの身体は、一瞬張り詰めた弓のように仰け反った。
「ぬあっ! ……てめぇ」
息も絶え絶えになりながら、シーフは逆手に持った短剣を突き立てようとシルヴィアへ迫る。彼女は敵の手首を捉えて一撃を受け止め、軍刀を片手で握り直す。
「君みたいなのに好きにされるわけにはいかないからね。さっさと倒させてもらうよ」
彼女は鋭く刃を振り抜く。脇腹に深い一撃を喰らったシーフは、その場に力なく倒れ込んだ。肩に巻いていたロープを取ると、彼女はさっさとシーフの腕と足を縛り上げる。
「さて、このまま一気に片付けようか」
背後から矢が飛んでくる。紙一重で躱したシルヴィアは、軽やかな足取りで盗賊達との間合いを取り直した。
「一気に片付けるよ、皆!」
彼女の激励の声は、狭い砦の中に入り乱れる皆に伝わる。キリアンも砦の中へと乗り込み、ミーナが立っていた通路の上から戦場を見下ろしていた。冒険者の重い一撃に打ちのめされ、数人の盗賊が床に倒れ伏していたが、狭い中で敵味方が入り乱れているのは相変わらずだった。
(この乱戦状態では、一人一人撃ち抜いていくしかありませんか)
キリアンは弓を構える盗賊に狙いを定め、次々に矢を射かけていく。肩と膝に矢を受けた一人は、呻きながらその場に崩れ落ちる。それを見たもう一人が、吹き抜けの上に立つ彼に向かって反撃の矢を放った。彼は咄嗟に身を伏せて躱すと、再び身を乗り出して弓を引く。その鏃に意識を集中させ、エーテルの光を纏わせる。
「上と下の撃ち合いで、負けようはずがありません」
風を切って放たれた矢は竜のように唸り、盗賊の肩口に鋭く突き刺さった。肉が抉れ、鮮血が舞う。目を大きく見開いて、盗賊は抉れた傷を見て悲鳴を上げる。その声を聞いた他の盗賊達も意気を削がれ、一斉に逃げ腰となる。
「化け物だ……こいつら化け物だ!」
「逃げろ!」
一斉に入口へと殺到する盗賊達。しかし、次々に放たれた衝撃波が、彼らの行く手を遮った。ひっくり返ったテーブルの脚に飛び乗った江流は、剣を担いでじっと盗賊達を見下ろす。
「君達みたいなのに恨みを買うと後が面倒だからね」
「逃がしはしないよ。君達は然るべき場所に引き出さないとね」
シルヴィアも切っ先を挑発的に揺らす。二人の気迫に気圧され、足が止まる盗賊達。その隙を見逃すことなく、キリアンは再び矢を番える。エーテルの集中した鏃が、今度は激しい火花を散らした。
「これで一網打尽です」
放たれた矢は、盗賊達の足下に突き刺さって破裂する。光の破片は盗賊達の身体のあちこちに突き刺さり、彼らは揃って情けなくひっくり返った。
手下達を一網打尽にされ、頭領は舌打ちする。斧の柄を弄びながら、彼はアーテミシアを睨みつけた。彼女の気勢に捉えられた下っ端もまた、あっという間に叩きのめされ、半死半生の状態で床に伏せていた。
「くそっ……怖気づきやがって」
「盗賊が真っ向勝負で戦士に勝てるかよ。魔法を使えるようになって出直して来な」
アーテミシアは斧を振り回して担ぎ、ぎらぎらと闘志を剥き出しにする。
「……と思ったけど、もうそンな機会はねえな」
「舐めてんじゃねえぞ、小娘!」
頭領は斧にエーテルを纏わせると、肩に担いで力任せにアーテミシアへと突っ込んでいく。アーテミシアは斧の刃を蹴って頭上高くまで振り上げると、そのままその身を躍らせ、頭領の足下へ一撃叩きつける。エーテル漲る男の身体を打ち砕く事こそ出来なかったが、それでも頭領はその場でたたらを踏み、がっくりと崩れ落ちた。
「纏めて火葬してやるから安心しな。悪党」
「うるせえっ!」
頭領は斧を力任せに振るう。しかしアーテミシアはさらにその上から斧を叩きつける。斧の刃は砕け散り、脳天に容赦ない一撃を受けた頭領は、どうと力なく倒れ込んだ。
「……ぬるいんだよ、ったく」
かくして、一つの盗賊団が冒険者の手により壊滅したのであった。
●お嬢様の目指すもの
戦いを終え、シルヴィアは早速ロープを手に取り盗賊団を縛り上げていく。こっぴどくやられた盗賊達は、ほとんどが虫の息だ。そんな彼らを尻目に、エルゼリオはレナの両手をそっと取る。
「大丈夫?」
「は、はい。ちょっと擦りむいただけですから」
「良かった。レナさんが無事で」
安堵の溜め息を零しつつ、くるりとミーナの方に向き直る。明らかに困り顔だ。
「でも……ミーナさん、一人で突撃しちゃうからビックリしたよ。キミって、何処かのお嬢様なんだっけ?」
「はい。フィーギル家の者です」
「フィーギル……あ、あの家の」
洞窟の竜と対峙したことを思い出しつつ、彼は溜め息を零した。
「とにかく、心臓に悪いから、もっと慎重に頼むよ……」
「善処します」
ミーナは悪戯っぽく目を輝かせ、ぺこりと頭を下げた。ミーナの笑みを見てやれやれと肩を竦め、クローリカは盗賊の方へと眼を戻す。
「さて……これらはどこに引き渡しましょうか」
「そこそこ広い範囲で襲撃を繰り返していたようですし、伯爵辺りに引き渡すのが妥当でしょう。然るべき措置を下してくれるはずです」
ミーナが言うと、アーテミシアはつまらなそうに欠伸をする。
「面倒くせえな……まとめて始末してやっても良かったんじゃねえか、こんな奴ら」
「まあまあ、一人も逃がさず捕まえられたんだし、それでいいじゃないか」
江流がふらりとやってくると、彼はちらりとミーナの表情を窺う。
「見事なデコイ役お疲れさん。おかげで大分自由に動き回れた」
「どうもありがとうございます」
江流に向かってミーナは屈託ない笑みを浮かべる。戦いが終わっていくらか落ち着きは取り戻しているが、それでも眼はまだぎらぎらしている。江流は肩を竦めた。
「それはそれとして、名前が売れすぎると別のトラブルもあるから気を付けてな」
「でも私は少しでも覚えをよくしたいんです。そうすれば、そのうち我らの家門に便宜を図ってくれる方が現れるかもしれませんし」
ミーナはけろっと言い放つ。江流は思わず苦笑いした。
「いや、ほんとにさ。こういう連中から恨みを買うことの多い商売だからね……」
縛られた盗賊が僅かに身じろぎし、小さく呻いた。
「そんな事はわかっています。冒険者になると決めた時から覚悟している事ですから」
彼女は帽子を脱ぐと、鴉の羽根をそっと撫でる。
「要は、買った恨みよりもたくさん、恩を売っちゃえばいいってことです。そうすれば、窮地の時も誰かが助けてくれるかもしれませんしね」
「なるほど。君はそういう方針なんだね」
シルヴィアは穏やかな笑みを浮かべ、そっとミーナに手を差し出す。
「改めて、私はカペル家のシルヴィアだ。また会うことがあればよろしくね」
「ええ、よろしくお願いします。シルヴィア様」
ミーナは手袋を履き替えると、静かに彼女の手を取るのであった。
おわり
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2021年07月12日 22時16分21秒 公開
相談掲示板
どうも、シューターのキリアン・フィッツジェラルドと申します。 ミネルヴァ氏が派手に名乗り口上をあげた事で敵は全員彼女に注視、僕らは潜伏状態とありますね。 やる事といえば、兎に角動き回っての攪乱主体で、直接敵に打撃を与えるような事は殆どないと。 とはいえ彼女が余り調子に乗りすぎると、狭い空間に敵が密集している事もあり混戦になりやすく、ないしは敵が人質を突きつけるという事になるのも厄介です。 吹き抜けがあり、回廊へと繋がる出入り口と通路があり、シューターは陣取りやすいようですね。 レナ氏がどこの部屋に囚われているのかが分かれば、見張りの連中を先んじて狙撃出来るものですが。 汎用スキルは連絡用にテレパス、壁越しの相手把握にサーマルアイを持っていくつもりです。
すみません、言い忘れた事がありました。 行動としてはレナ氏の見張りの狙撃の他には僕からも捜波で情報支援というのは固まってますが。 もう1つの特性スキルはどうしましょうか…… 特殊部隊の突入→制圧さながらに、煙幕弾でも持っていきましょうかね?
シルヴィアだ。今回はよろしくね。 いやはや、ミーナは面白いお嬢さんのようだ。戦闘開始時私たちが全員潜伏状態になっているなら、敵への不意打ちやレナ達への接近もしやすそうだね。 キリアンは捜波と情報共有感謝だ。敵の位置が把握できるのは有難い。 >レナの居場所について 砦跡(半径2ヘクス程度の正方形型空間)に盗賊達とミーナ、冒頭でミーナに庇われたレナがいるようだ。ミーナは動き回って敵を攪乱するようだから、レナの安全確保のためにも護衛役は必要だね。流れ弾が当たらないように守らないと。 >盗賊 授恵者五人も厄介だけど、一般人のミナにとっては一般盗賊も厄介。其方の対応も必要になりそうだね。あるいは一般盗賊はレナ護衛班にお願いして、盗賊対応班で早めに授恵者五人を撃破するか……授恵者は与ダメージ系スキル偏重らしいから搦手でBSを仕掛けてみたいな。 >救出作戦(初手行動) 盗賊対応班が派手な不意打ちをして注意を引き付けている間に、レナ護衛班がレナに接近する、とか? 戦闘開始時ミーナが注目を集めてるってことは、後ろのレナも盗賊達の視界にいる状態だろうし……あと、障害物が転がってるから移動すると音で気づかれるかもしれないという心配もある。気づかれる前に一つ大きな攻撃でもしておきたい。ここは皆と要相談で。 煙幕はその中に入った仲間も命中が低下するのかな? 持っていくなら連携で使うとかかなぁ……それこそ初手で目立つとか。 >個人行動 今のところは盗賊対応希望。最初は識別範囲攻撃のメテオライトで派手に行こうかな。その後は命中低下かスリップを仕掛けたいと思っている。
あ、一般人はミナじゃなくてレナだね。誤字失礼(
シーフの海神江流だよ。今回は宜しくね。 ミーナさんが目立ってるみたいだし、その間にレナさんに接触できるといいんだろね。 俺もシーフだから【疾風足】と【壁歩き】で盗賊団をパスしてレナさんの保護に回ってみようかな。 背中にレナさんが隠れるように立てば、まぁ、壁くらいにはなるんじゃないかなと。 問題は、最初の段階でレナさんの座標が割れてないってトコかな。 自分で捜波・改を持ってもいいんだけど、キリアンさんがやってくれるなら、テレパスでも持って探知した情報を共有出来たらいいんだろかね。
ヒーラーのエルゼリオ・レイノーラです。 初めましての人も、そうじゃない人も、今回はヨロシクね! >レナさん レナさんの座標は【天眼】があれば、割と直ぐに特定できそう。 本格的な乱戦に突入する前に、彼女の身柄を確保&一旦安全圏まで避難させないと流れ矢に当たっちゃいそうだよね。 >一般盗賊 主な武器が剣・弓って事らしいから、レナさんの安全を考慮するなら、護衛班とは切り離した方が良いかも? >授恵者5名 布陣的には、ウォーリア(頭領)が壁役として前方に構え、シーフ×2が遊撃、シューター×2が後方から射撃支援…って感じを想定してる。 一般盗賊は弓での射撃支援が多めになりそう…かな? >担当 ボクは盗賊対応班を希望するね。 (※敬称略) ●護衛班 海神・江流 ●盗賊対応班 シルヴィア・A・カペル エルゼリオ・レイノーラ
ウォーリアのクローリカです、よろしくお願いします。 ミネルヴァさん、初陣からお元気ですねぇ。 私も盗賊の対応に行きたいと思います。ウォーリアは私だけのようなので、前に出て盾になりますよ。 念のため、ミネルヴァさんの事もカバーリング出来る位置取りにいようと思います。 ●護衛班 海神・江流 ●盗賊対応班 シルヴィア・A・カペル エルゼリオ・レイノーラ クローリカ
ウォリアーのアーテミシアだ。よろしくな 盗賊対応が埋まってるなら護衛にするか。ちょっと離れてシーザーロア使えば一般盗賊なら簡単に切り離せるだろ。 そうなるとカバリングできねえが、そっちは任せるわ
エルゼリオ、分担の纏めをありがとう。授恵者五人の布陣についても同じ意見だ。敵のシューターと、弓を持った一般盗賊が回廊へと繋がる出入り口を陣取ろうするかも、とも。 キリアンが捜波で情報支援してくれる、江流がシーフのスキルでレナの保護に向かってくれる、クローリカが盗賊対応班とミーナの盾役になってくれる、アーテミシアがレナの護衛、かつ一般盗賊の対応もしてくれるのも了解だ。 >天眼 天眼があればすごく助かるね。レナの座標も特定できるし、持って行ってくれる人がいたら有難いよ。出来れば護衛班の誰かが良いのかもしれないけど……何せ取得に3SPかかるという冒険者泣かせのスキルだから、先に誰か既に持ってる人がいないか聞きたいな← >レナ エルゼリオが言ってくれているように、出来れば本格的な乱戦に突入する前に安全圏まで避難してもらいたいね。アーテミシアは盗賊達も相手取ってくれるし、江流にお願いしても良いかな? 江流とレナだけ護衛班・盗賊対応班から切り離した位置になるイメージ。一般盗賊も10人いれば厄介だし、私がメテオライトを使った後に江流とレナ、又はアーテミシアと合流、連携して護衛するのもOKだ(その場合、私が護衛班に変更になる) ●護衛班 海神・江流 アーテミシア (シルヴィア・A・カペル) ●盗賊対応班 エルゼリオ・レイノーラ クローリカ (シルヴィア・A・カペル) (誤字で一回消したよ。ごめんね)
>天眼 あぁ、それなら既に所持しているから持っていこうか そっちがあれば無理にテレパスなくても大丈夫だろうか? >レナさん 安全圏ってのを何処に構えるのかでちょっと動きが変わりそうだね。 入り口方向となると、盗賊達の集っている中を突破する必要ができちまう気がするんで、臨機応変に行けるように上手くプレ作っておきたい気もするかな。 入り口方向に逃がすなら、退路確保はご協力お願いしたいかな。 …でも【疾風足】と【壁歩き】使って担いで逃げればどうにかなるかな?
シルヴィの動きのあたりを拾いそびれた。 シルヴィが割と自由に動けそうなポジションに見えるから、どっちにも行ける感じの構えなら、先に出した退路確保とかお願いしちゃってもいい? そしたら、レナさんの退避先をある程度確約できるかなとか。 どうかな?
>天眼 江流が持っていってくれるなら有り難い。是非よろしく頼むよ。 天眼があるならテレパスは持っていかなくても大丈夫だと思う。勿論持っていってくれれば嬉しいけど、他に有用そうなものがあればそちらで良さそうだ。 >江流 了解だ。メテオライトを連続使用しつつ、入り口方向に退路を確保してみよう。いざという時はレナと君の盾になるよ。多分君はレナを担ぐ事になるだろうから。江流もアーテミシアも、改めて同班よろしくね。 ●護衛班 海神・江流 アーテミシア シルヴィア・A・カペル ●盗賊対応班 エルゼリオ・レイノーラ クローリカ
OPを見直してみれば、既にレナ氏はミネルヴァ氏によって解放済のようですね。 であれば気を付けるべきは、彼女が攪乱に注力しすぎてレナ氏の守りが疎かにならないように、でしょうか。 更に言えば「"私達"がちゃんと守ってあげる」の言葉からするに、僕らは事前に打ち合わせをしていた事にも。 なので煙幕弾については取り下げます。授恵者になりたてである以上、余計な事をして彼女の足を止めかねません。 僕は人数配分的に、盗賊対応班にしましょうか。 攻撃の優先順位は弓持ちですね。 狙撃ポジションについての狙撃や捜波による支援主体ですので、どっちにしようか迷いました。 ●護衛班 海神・江流 アーテミシア シルヴィア・A・カペル ●盗賊対応班 エルゼリオ・レイノーラ クローリカ キリアン・フィッツジェラルド
>盗賊対応(案) ウォーリアは倒すのに時間掛かりそう&シーフは回避高そうなんで、 出来るだけ効率良く攻撃を当てて行きたいよね。 それで案の1つとして考えたんだけど―― クローリカさんに【殺界】で盗賊達の通行を阻止して貰ってる間に、 ボクが【祈雷2】、キリアンさんが狙撃で複数纏めて攻撃…とかって動きはどうかな? とりあえず、一考して貰えると幸い! >スキル 今の所、持って行くスキルは 特性:祈雷2・ヒーリングオーラ アクション:ヒール・解呪2・輝刃3・エーテルブロー3 汎用:天眼・戦術眼 ――の予定だよ。
とうとう天眼を取得したよ……! >スキル という訳で今の所持って行く予定のスキルは、 特性:レナと江流を追う盗賊の足止め用に光縛封、シーフ対応者へレゾナンス・オブ・ヴァロー アクション:回復用のヒール、初手と退路確保用のメテオライト、搦め手の毒撃と衝撃刃 汎用:情報共有用の天眼、シーフ対策の看破 ……だよ。 明日出発か。皆、現地ではよろしくね。
>エルゼリオさん 了解しました、殺界を盗賊の中心部で使用し動きを封じます。 次のターンは闘気槌で足元を崩そうと思います。
>クローリカさん ありがとう!頼りにさせて貰うね☆
>エルゼリオさん 了解です。プレイングでも炸光矢使用と組み込んでおきました。 他にも貫通衝撃射も組み込んでますので、状況に応じて使い分けるつもりです。
>キリアンさん ありがとう!宜しくお願いします☆