闇の中の三つ巴

霧柄頼道

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シナリオID:1034

オープニング

●
「さあ、悪党ども! きびきび歩くだ!」
「いてっ……クソ、引っ張るなよ!」
 武器を帯びた粗末な身なりの、十数人ほどのヒューマンのグループが、後ろ手に縄で縛り上げられた数人の男ヒューマンを連れ、山道を進んでいる。
「よそもんが今まで村で好き勝手やりやがって、ほんと許せないだよ!」
 武器を持ち、田舎なまりの口調で喋っているのは、リーンエス辺境の村に住まう若者達だ。
 ある日彼らの村へ、食い詰めたあまりに助けてくれとこいねがってきた浮浪者の一団。
 涙を流し、地へ伏せ、泡を吹いて喚き立てる有様を哀れに思い、一度は親切心から家を貸し、食料を与えて住まわせたものの――一団は徐々に無法者としての本性を現し、増長。
 盗みや恐喝、あげくには殺人にまで手を染め、恐怖をもたらすようになったのである。
 そこで村の若い衆が立ち上がり、力を合わせて無法者どもを捕縛。
 罪を裁いてもらうべく、領主の町まで山を抜け、護送する運びとなったのだった――。
「こうして捕まえた以上、もうおしめぇだ! これから領主様んとこ連れてって、裁いてもらうじゃきに!」
 ほどなく一行は、深い洞穴へ踏み込んでいく。
 ぽっかりと開いたこの穴は一本道の洞窟となっていて、山の出口付近まで一気にショートカットする事ができるのだ。
「お、おい、暗ぇじゃねぇかよ……」
「松明を持って来てるべ。悪党のくせにびびってんじゃないだよ」
 村人達がここを通るのは初めてではない。
 何事か領主へ頼み事がある際は、決まってこの近道を利用していた――。
 ――瞬間、奥に見えていた外の光を遮るようにして、何者かの集団がこちらへ突っ込んで来たではないか。
「ど、どっひゃー! 骨の化けもんだべー!」
 その正体はヒューマンのアンデッド、スケルトンであった。
 奴らは詰め寄って来るなり、錆びた得物を振り回し、村人達を襲い始める。
「えらいこっちゃ! 後ろの出口から逃げばべひゅっ!?」
 身を翻した村人の首筋に、いつの間にか背後へ忍び寄っていたスケルトンがナイフを突き立て――生暖かい鮮血が噴水よろしく吹き出し、壁や天井を凄惨に染め上げる。
 スケルトンの群れは前方のみならず、今しがた入って来た入り口側からも迫っていたのである。
 いわゆる挟み撃ち。戦闘訓練も受けていない村の若い衆に大した抵抗はかなわず、行われるのは一方的かつ陰惨な殺戮だ。
「まさかこの骨ども、俺らが前に金目の物目当てで強盗してやった旅芸人の一座か!?」
「なっなにーっ! ってこたぁお前らのせいじゃねえだか!?」
「ふん、知るかよ! ともかくこの混乱なら逃げられそうだぜ! あばよってなもんだ!」
「あっこら! 待つだよならず者どもめィ! 逃げちゃあいかんぜよー!」
 さらにさらに、無法者達はどさくさに紛れて器用に縄をほどき村人の武器を奪い、四方八方散り散りへ逃走していく。
 こうして村人らはスケルトンによって皆殺しにされ、無法者の何人かはうまく逃げ延び、野へ解き放たれてしまった。
「イエーイ! これで自由だっ! また悪い事しまくるもんねー!」
 瞳を希望に輝かせ、胸を張って山を駆け下りていく彼らの頭上を、白い鳥が飛び去っていった――。

●
「勇敢な若者達が村を荒らしていた無法者達を護送する最中、スケルトンに襲われ、多くの犠牲が出てしまうのじゃ」
 冒険者ギルドに集まる冒険者達へ、預言の魔女オペラは予知したままの内容を語っていた。
「しかも無法者達は脱走を果たし、またあちこちで悪さをし始めるじゃろう」
 これをみすみす見過ごすわけにはいかない。村の者達を救出するのはもちろん、隙をついて逃げようとする無法者達を取り押さえる必要がある。
「現場となる洞窟はまっすぐな一直線で、そこまで長くもなく、まず迷う事はないじゃろう」
 オペラは紙に洞窟の地形を簡単に描く。出入口は前後方向にある二つのみであり、中央部へ行くほど壁の幅や天井は高くなってくるが、特徴といえばそれくらいだ。
「山道には他に目印もなかったから、ひとまずこの洞窟へ向かえば、確実に一行と出くわせるじゃろう」
 洞窟の出入り口は二か所なので、全員で一か所から突入して一点突破を図るも良し。
「あるいは人数を分けてそれぞれの出入り口から踏み込み、挟撃するなどの一工夫もアリじゃな」
 内部は光差さぬ暗闇に覆われている上、村の若者、スケルトン、無法者の三つの勢力が入り乱れる混戦となる。しっかり状況へ対応していこう。
「若者達の運命はおぬし達の手へ委ねられた……彼らを首尾よく救い出し、無法者どもに対しては世の中甘くないという事を、思い知らせてやるのじゃ!」

解説

●勝利条件  村の若者達の救出。及び無法者集団の逃走阻止。 ●スケルトン  かつて旅芸人の一座として方々を巡行し、貧しい人々を芸で楽しませて来ましたが、無法者集団に襲撃されて金品を強奪され、女子供関わらず全員なぶり殺されました。  証拠隠滅のため、遺体は切り刻まれて洞窟の中へ打ち捨てられましたが、憎悪と無念のあまりアンデッドと化し、それぞれ得意だった曲芸の名残を使い生者を無差別に襲います。 ・敵の行動 めった刺し:ナイフジャグリングの名残か、錆ついたナイフで斬りつけます。威力は普通ですが流血を付与する、近距離単体物理攻撃。 石投げ:ボールジャグリングの名残か、近くに落ちている小石を拾って投げつけます。威力は普通ですが執着を付与する、遠距離単体物理攻撃。 鞭攻撃:動物使いだった名残か、ボロボロの鞭で薙ぎ払います。威力は普通ですがまれに移動阻害を付与する、中距離範囲物理攻撃。 ●村の若者  正義感が強く、タフで肝の据わった、村では腕自慢の若い衆です。  多少は喧嘩慣れしていますが、武器や防具はお粗末で戦力と呼ぶには頼りなく、放っておけばスケルトンや無法者達の手に掛かって死んでしまいます。  勝利条件的に無法者達の捕縛に関して生死は問いませんが、村の若者達は彼らを生かした上で、法の裁きを受けさせるつもりではあります。 ●無法者  金! 酒! 女! こそを世界の全てとしている、刹那を謳歌する半分バルバロイな犯罪者集団です。  盗賊や詐欺師として他者から物品を盗み、食い詰めれば哀れな貧者を装ってどこかのコミュニティへ寄生し、次第に横暴を振るい支配・搾取しようとします。  スケルトンが襲撃して来たら、まずは自分を縛る縄をほどき、それから可能であれば武器を奪い、てんでんばらばらに逃げようとします。  阻止するには魔法を使ったり、脅したり、昏倒させたり、強烈に縛り直すなどで対応しましょう。  戦闘能力は村の若者より平均して低いですが、素早さと移動力は一つ抜けて高く、あらゆる行動に対して躊躇いがありません。

マスターより

 霧柄頼道です。よろしくお願いします。  罪もない人を苦しめてはばからぬ、自分さえ良ければいいという悪人達……。  彼らのためにまた多数の犠牲が出ようとしています。村の若者達を助け、悪人達へ鉄槌を下しましょう!  スケルトン達もまた被害者……戦いの後は、彼らを弔ってあげるのもいいかもしれません。

リプレイ

●
 予知にあった山へ足を踏み入れる、冒険者達。
 周囲一面は緑が生い茂り土も柔らかいが、不穏な静けさが漂っている――。
「予言でトラブルが防げるなら、しっかり対応しなくちゃだね!」
 トゥーリは光源として持ち込む予定の道具を確認し、捕縛用の改造ロープをぴんと両手で張った。
 予言こそ便利だが、実際の事件を防げるかどうかは自分達次第。気を締めなければ。
「そりゃこんな洞窟で起こる出来事なんざ、予知能力がなけりゃ誰も気づきもしねえやな。運のいい連中だ」
 ナハシュとセリオス・オーガスト、アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトの三人は洞窟出口側から突入する手はずだ。
「このあたりから洞窟の裏へ回り込もう」
 セリオスが横道を指す。ここで入り口突入班とは一時別れ、山を大きく迂回するのだ。
「悪へ立ち向かう勇敢な村人達……必ず全員救って見せるぜ。それにスケルトンも本当は、人を恨み続けるのは辛いはず……眠らせてやろう」
 しかし、無法者どもには凄惨な死を――と拳を握るアルベルト。連中には、この手で裁きを下してくれる。
「デス! 初めての戦闘デス……あい頑張るデス!!」
 入り口突入班のあいではあるが、今回の作戦では直接踏み込まず、敵の逃亡阻止や、撃ち漏らしの撃破といった支援行動が目的だ。
 最前線を張るわけではないので、そこまで危険はないはずだが、初の実戦には違いなく――気合を入れながらも、少女の面には緊張の色が見て取れる。
「いいですか、あい。今回は慣れない事をするのですから無理はしないように」
 そんなあいの身や心情を案じ、ローリー・R・テイワズは道すがら、何かと声をかけ続けていた。
 自身を守ろうと奮起してくれるのは嬉しいが、気持ちが前のめりになるあまり、勇み足をしないか心配である。
 しかも普段使わない弓を用いる上、持ち場では実質一人――もしも何かあれば、自分を含む他の仲間のカバーも間に合うまい。
 けれど、ローリーには人々を救わなければならないという役目がある。あいをフォローするためだけに、そちらを疎かにはできない――。
「デス! ローリー、あいは大丈夫デス!」
 ローリーを振り返り、笑みを見せるあい。今はその言葉を信じ、託す他はなかった。
「さあ、覚悟はいいかい? ……突入するよ」
 いよいよ洞窟へ辿り着き、ルチル・プルメリア・グレイハーツはぽっかりと口を開ける入り口を前に、そう仲間達へ呼びかける。
 早い段階で接敵した場合に備えて夜煌石の首飾りを身に着け、明かりとなる光球も生成済だ。
「――行こう! 助けられる命と逃げ出す悪人がいるのなら……放ってなんて置けないから!!」
 ララベル・サン・ディーベルは仲間達と頷き合い、足を踏み出す。
 空気の冷たい、広々とした洞窟内。
 奥の方からは松明の明かりがぼんやりと見え、狼狽したような声も響いてくる。
 若者達と無法者どもの周囲を、生者を妬みしスケルトン達がすでに取り囲みつつあった。
 急がなければ。ララベルは村の若者達が持つ松明の光を目印として、一気に急加速した!

●
「助けに来たよ、村の人達!」
 突撃したララベルはこちらに背中を向けているスケルトンめがけ、素早い三連撃を見舞い斬り倒す。
 一陣の風さながらに包囲の輪を崩すや、両者の間へ立つ形でスケルトンを阻み、村人達のための退路を作り出してのけた。
「何だか知らねぇが、こいつは逃げるチャンスだぜぃ!」
 無法者達はニヤリとほくそ笑み、そろそろと離れようとするも――ララベルは見とがめ、剣先を突きつけた。
「何か骨達にも恨まれてるみたいだし、この先は通せんぼだよ」
 無法者の一人がララベルの警告に悪態で返し、これ幸いと入り口側へ駆け出す。
 直後、暗闇の奥より飛来した一矢がその無法者の膝へ突き刺さって、つんのめるように転ばせた。
「通せんぼだって言ってるだろう?」
 もがく無法者を見下ろし、冷たく言い放ちながら歩み寄るのは、その矢を射ったルチルである。
 どれだけ追い詰められようと、こういう手合いはどこまでも生き汚い――ゆえに暴力で阻止させてもらった。
「ワタシ達は冒険者! 助けに来たからもう大丈夫だよっ!」
 狼狽える村の若者らへは、スケルトンを打ち払いながら突っ込んだトゥーリが声をかけ、安心させる。
 味方である証拠として、松明の代用になるランタンや夜煌石の首飾りを貸し渡し、彼ら自身の身を守るようお願いした。
「もう一つ頼めるかな? この人達を見張っておいて欲しいんだけど」
 改造ロープも渡す。無法者達が自力で拘束をほどけるのは予知で分かっているため、若者達にはこれを用いて厳重に縛り直し、監視へ回ってもらいたいのである。
「了解しただよ! そこの隅へみんなで移動するべ……何か異変があったらあんた達を呼ぶだ」
 若者が強く頷きを返すが、横で話を盗み聞いていた無法者達はさっさと逃げ出し始め、暴れるスケルトンも交えて混乱が広がりつつあった。
 矢先、無法者達の動きが止まる。いつの間にか周囲にはエーテルの光が張り巡らされており、それに触れるや否や、身動きが取れなくなったのだ。
「ここを通すわけには、いきませんね」
 ローリーである。大剣をしっかりと握りしめて意識を集中し、発動した殺界によって、敵集団の一角を押しとどめていた。
 入り口側を出ようとしていた無法者はいくらか食い止めたが、それでも悪運の強い一人の突破を許してしまう――。
「……来たデス!」
 外部に立ち並ぶ木の樹上にはあいが潜伏しており、走り出してきた無法者の姿を認めるや、背丈よりも大きな弓を構えて狙いを定める。
「デスデス、ローリーと一緒に練習した……弓をくらえデェース!」
 目をすがめて神経を研ぎ澄まし、息を止め、反動に備えて歯を食いしばり――枝を足場としながらも安定した姿勢から、渾身の一射を撃ち出す!
 一直線に虚空を裂き、不意を突く形で飛び出した矢は、無法者の足の甲と地面をまとめて縫い付け、見事その場へ釘付けにして見せた。

 その頃、出口側から突入したナハシュは、入り口側からの脱出を諦めた数人の無法者達を相手に得物を振るい、矢継ぎ早に脚部を切り裂く事で移動を封じて回っていた。
「ひゅー! 派手にやってんなぁ!」
 さらに壁歩きで天井へ上がり、そこから天眼も交えて戦況を観察する――と、その目が遠くの、ある一点の場所で止まる。
「……おい、セリオス! そっちに悪巧みしてる奴が行ったぜ!」
 ナハシュの警告通り、無法者の一人が、村の若者から奪った剣を突き付けて人質に逃亡を図ろうとしていた。
「おいクソども! こいつの命が惜しけりゃ俺達を見逃……ぐわぁっ!」
 わめく無法者の腕を、セリオスの放った矢玉が正確に射貫き――拍子に、握られていた剣が取り落とされる。
「こっちだ」
 すかさず二の矢をつがえつつ、セリオスが言葉少なに呼びかけると、解放された若者は慌ててセリオスの後ろへ逃げ込んで来てくれた。
「皆さん。俺が来たからにはもう安心だ!」
 一方アルベルトは逃げ惑う村の若者達の護衛を引き受けつつ、味方が到着した事を告げて落ち着かせている。
「早く避難するんだ。無法者は逃がさないから安心してくれ」
 話の途中でやおらに大剣を構えるや、襲ってきたスケルトンを振り向きざまに一閃。
 上半身と下半身を泣き別れさせ、活動の停止したその屍を粛然と見下ろす。
「……ある意味、貴方たちも被害者……せめて苦しまないように倒すぜ」
 数瞬、まぶたを閉じて黙祷。一呼吸の後には、再び最前線へその身を投じていく――。

●
 うろんな足取りの生ける死者達が狙うは、捕らえた無法者を見張る村の若者集団だ。
 そのただ中へルチルの狼が果敢に踏み込み、軽やかに走り回ってスケルトンを撹乱する。
 作り出された隙に乗じ、ララベルも駆け出した。
「喰らえ、疾風三連突!!」
 スケルトンらの眼前へ飛び出すや、先頭の敵へ向けて疾風の如き刺突を連続で繰り出す。
 頭部、肩、腰――それぞれの部位を突き砕いて迅速に仕留めるが、手応えはむなしく、胸にはどこかやりきれなさが残る。
 見過ごす事はできないが、彼らもまた悪人の食い物にされた犠牲者なのだ。
 と――ララベルの双眸が、こそこそ逃げにかかる無法者の背中を捉えて鋭くなる。
「絶対に逃がしはしないよ! 君達は裁きを受けなきゃいけない!」
 スケルトンの集団は一旦仲間に対応を託しつつ、壁歩きを利用して回り込み、無法者の逃げ場を塞ぐ。
「その鞭は厄介そうだ……早めに倒させてもらうよ」
 ルチルはアーバレストを構える。元は猛獣使いだったらしいスケルトンが振るう鞭だが、軌道は鈍く荒く、リンクしている狼は右に左に躱して捉えさせない。
 遠目に観察するルチル自身と、狼の視界から、もっとも効果的な射線が通るタイミングを見出し――矢を射出する。
 エーテルの込められし一発はスケルトン集団へ飛び込み、盛大に破裂。四方へ弾ける衝撃が、敵勢を吹き飛ばした!
「こっちだよ、こっち!」
 トゥーリは敵の分断と逃走阻止を兼ね、計2ラウンドをかけて連続で敷いた光縛封とエンライトを合わせて囮となり、スケルトンを誘き寄せていた。
 ローリーの殺界があれば、光縛封がなくなる切れ目のラウンドもカバーできる。それを期待しての動きだ。
「当たらないよっ……それ!」
 次から次へと襲い来る斬撃を、高い反応速度でもって回避しつつ――敵の態勢が崩れた間隙を突いて肉薄し、光塊を纏わせた槍を真っ向から叩き込んで打ち払う。
「早く助けてくれ!」
 洞窟の外では、あいに足を撃ち抜かれた無法者が、他の無法者へ助けを求めていた。
「デスデス、悪い事はいけないデス! こらしめてちゃんと反省するデス!!」
 無法者が救助のため駆けつける瞬間を見計らい、あいはとどまる事なく矢をぶっ放す。
 中には勘の良い無法者もいるのか、村の若者から奪った手槍をあいのいる樹上へ投げ込んでくる。
 あいは素早く太い枝の先から中空へ身を投げ、エアーライドを駆使して木から木へと移動を続け――敵の視線を切ると同時に枝葉の合間へ身を隠し、息を潜めて隠密に努める。
 そうして敵が背を向けた刹那――その膝裏へ狙い定めて矢を撃ち込み、機動力を奪う。
「デス……ローリーはあいが絶対守るデス!」
 洞窟の入り口側へ近い位置にいるローリーは、時たま外から聞こえるあいの元気そうな声に、胸をなでおろしていた。
 むしろ、危険なのは自分の方――と大剣を振るいながら気を引き締める。
 戦闘経験が浅い事に加え、この暗さと混戦状態。持ち場を守るにしても、スケルトンと無法者へ気を配らなければならないのは実に骨が折れる。
「押し寄せる数が多くなって来ました……どなたか助勢下さると助かります!」
 次々と敵と切り結びながらも、積極的に状況を伝え、必要なら助けを願う。
「任せな」
 ルチルが後ろからヒールを飛ばし、積み重なりつつあった消耗を回復させてくれた。
 これならまだまだいける!

 石を持ったスケルトンが、腕を振りかぶる。人を楽しませるために培った芸だろうに、今ではただ生者の息の根を止めるためだけの無造作さだ。
 投げ込まれた石を、セリオスは半身をねじる事でかわした。そのまま流れるように弓を掲げ、弦を引き絞り――エーテルの光輝を一矢へ収束させていく。
 力が限界まで高まったと同時に解き放つ。流星の如き軌跡が闇を散らして突き進み、敵を穿ち抜いた。
 倒れるスケルトン。戦いが始まってから相当数の敵を倒し、残りももうわずかである。
「オラァ!」
 ナハシュが疾駆し、スケルトンの懐へ瞬時に潜り込む。
 敵に鞭を使わせぬよう、間合いへ入ると共に得物を連続で奔らせ、両の腕部を斬り飛ばす。
 背後で気配がしたのでとっさに身を低めると、頭上を別の敵が投げた石が通り過ぎていった。
 ナハシュはそこから半身を脱力させて傾け、地面の上を滑るように側転しながら離れ、態勢を立て直す――。
 アルベルトは、この期に及んで逃げ延びようとする無法者達へチャージングを用いて追いすがり、追い越した瞬間に殺界を発動していた。
「さて……覚悟はできているな?」
 エーテルによって動けなくなる無法者を見据え、アルベルトは宣告する。
「俺はお前らに【法の裁きを受けさせる】なんて生温いことは言わない。生まれたことを後悔させるような最期をくれてやる」
「こ、この悪魔め!」
「ふん、お前たちの様なクズからそう呼ばれるのはむしろ光栄だな」
 アルベルトは大剣を水平に薙ぎ、無法者達の首を叩き落とす。
「お前等はそれだけのことをしたのだからな……」
 目を見開いた表情のまま地へ転がる無法者の頭を一瞥し、怒気とともに吐き捨てた。

●
 最後のスケルトンが打ち倒され、戦闘は終わった。
「冒険者さん達、おかげさまで助かっただよ~」
 村の若者達は何名か負傷者は出たものの、誰も欠けておらず、礼を述べてくれた。
「デスデス、良かったデスローリー! どこも怪我してないデスっ?」
 あいが洞窟から姿を見せたローリーへ駆け寄り、飛びつくように勢いよく抱き着く。
「私は大丈夫です。あいこそ、無事でよかったです。それにとても頑張ったとか」
 ローリーが労いの意味も込めて柔らかく微笑むと、あいもぱっと顔を輝かせ、大きく笑った。
「デェース! あい、大活躍だったデス!」
 一方、無法者集団は一人二人が逃げた以外、死亡者を除き全員捕まり、何かわめいている。
「テメェら冒険者にも、村のクソどもにもッ! 必ず牢屋を脱走して、目にモノ見せてやっからな!」
「俺様は町の偉い人にコネがある。賄賂を握らせりゃ逃がしてくれるだろ、ギャハハハ!」
「馬鹿は死んでも治らないと聞くが……救われないね」
 ルチルはため息をつく。別段正義を気取るつもりはないが、この連中が救いようのない悪であるというのは理解できる。
 連行するためにも、嫌な仕事ではあるが一応治癒してやっていた。
 トゥーリも村人達へヒールをかけながら、ルチルと同意見だと頷く。
 そしてこの後無法者達の人相書きを作り、近隣のギルドや領主の町へ配って警戒を促す事とした。
 ララベルは手の空いた仲間とともに近くの空き地に墓を掘り、スケルトン達を埋める。死者を弔い、せめて安息を願う。
「ほとんどは朽ちて……金目の物はねぇか」
 ナハシュも遺品を拾い集め、同じ墓穴へ供えてやった。
 無法者が再度逃げようとする可能性はないとは言えない。
 よって、空気的に無法者を殺すタイミングではないが放置もできないアルベルト――と、念を入れたいセリオスは、一緒に領主の町まで赴く事にする。
「このクズどもが少しでも妙な真似をしたら……」
「その時は始末しよう」
 頷き合う二人。無法者達はニヤニヤとこちらを嘲笑っている。
 こうして一行は無事に山を下り、領主へ無法者達を引き渡す事ができたのだった――。

マスターコメント

 お疲れ様でした。  三つ巴の混沌とした戦場……その全てに連携して対応するお姿はお見事でした!  これで犠牲になった旅の一座の魂も、救われるでしょうか。  ちなみに、たまにあの山へは、村人達が彼らの墓参りのため、訪れるようになったようです。  無法者達も、ひとまず牢屋で大人しくしているみたいです。領主様は善良な人なので、しかるべき罰を与えてくれる事でしょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2021年06月28日 08時07分09秒 公開

成功

相談掲示板

  1. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 ある意味犠牲者であるスケルトンは苦しみを与えないように速やかに倒して弔うとして・・・腐れ外道の悪人共には生まれてきたことを後悔させるような苦しみを与える必要があるな。法の裁きなんて甘すぎる。法の裁きを受けさせるまでもない。俺が裁きを下すぜ!

  2. ララベル・サン・ディーベル

    僕は、シーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、よろしくね!!

  3. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    情報屋のルチルだ。よろしく。 無法者の処遇は…まあ、村人の意見に合わせるつもりではあるがどうしてもこの場で処罰を与えてやりたいって言うなら止めないよ。 さて、挟撃かあるいは一方向からの侵入かと提示されているがここは挟撃で攻めた方がいいだろう。 どちらか片方だけだとスケルトン達と真っ先に村人達が接敵する羽目になったり、無法者達の動きを封じるには距離が開き過ぎる。 村人達よりもスケルトンと接敵して倒す側、逃げ出す無法者を捉えて村人達を保護する側と別れて攻め込んだ方がリスクを減らせるだろう。 幸い敵の戦闘力は高くないから人数を分けた上でのデメリットはあまりなさそうだ。

  4. ナハシュ

    シーフのナハシュだ。よろしく。 そうだな、個人的には無法者も纏めて始末する方が面倒もなくていいと思うが、その辺は程よく合わせるぜ。要は逃走を許さなければ構わねえんだろ。 攻め方は同じく挟撃で賛成だな。片方開けてっと、追うのが面倒そうだしよ。 もしくはこんだけ人数がいるなら、双方の入り口に1~2人待機しておいて、残りで内部突入してもいいかもしんねえな?そしたら乱戦中無法者をそこまで意識しなくても、後ろでとらえりゃいい感じにならねえかね。

  5. セリオス・オーガスト

    ・・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む 俺も挟撃でいいと思う。無法者どもを逃がさないようにするのも目的の一つだしな とりあえず無法者に関しては行動にためらいがないとあるから、平然と仲間を見捨てたり囮に使いそうだな・・・

  6. あい

    デス!あいはあいデス、よろしくデェース! デスデス、あいは高いとこで隠れて、弓で狙うデス! 挟撃?もりょーかいデェース!

  7. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    1,2人ぐらいだと内部である程度捕縛に集中しないと逃がす可能性があるね。 セリオスも指摘してるんだが連中、それこそ逃げるためなら仲間の犠牲も厭わないだろうし。 油断した所にまとめて範囲攻撃を撃ち込む事もできるが敵の動きが完全に予測できない状態でそれはやや心許ない気がするな。 出発まで後一日だ。そろそろ分担を決めた方がいいね。 とりあえず村人と無法者に近い側から入って無法者の狙撃、ペットで村人の安全確保をやるつもりだ。 それと内部は暗いから汎用スキルや照明を用意していく必要があるな。 エンライトで照らすのも考えたが光があるとスケルトンの注意を引いてしまうし、無法者から目立たない方がいいから使用は控えておく。 それとウォーリアであるアルベルトかローリーにお願いがあるのだがどちらかが無法者相手に『殺界』を使ってもらえれば大変助かる。 抜けようとした相手も自然と進行ルートが制限されるだろうし。 === 〈村人&無法者側〉 ・ルチル 〈スケルトン側〉

  8. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    俺は、スケルトン側から行かせてもらうぜ。 >グレイハーツさん 俺が『殺界』を使用しようか? 〈村人&無法者側〉 ・ルチル 〈スケルトン側〉 ・アルベルト 因みに、戦闘では以下の通りに行動させてもらうぜ 指摘事項やツッコミがあれば遠慮無く言ってくれ あと、無法者は容赦なく斬るつもりなんでよろしく。 毎ターン攻撃集中状態で行動 無法者に対しては逃亡ルートを『戦略眼』で先読みし、道の狭いところで『殺界』を使用して待ち受けておく スケルトン単体には『紫電一閃』、『鋭撃2』を使用 複数の敵を攻撃できるチャンスがある場合は『闘気槌3』を使用 複数の敵を巻き込むポジションを取る 敵に近づくとき『チャージング』を使用 仲間との連携を重視

  9. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ※連投申し訳ありません スキルや装備は、他シナリオの行動提出の関係で組み換え済みなのでご了承ください。 仮プレイング提出時のスキル・装備は問題ないはずです。

  10. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    あ、よく見れば予言の内容読み違えてるな…すまない。 双方向からスケルトンが出現している。間違えが起きないように村人から見ての入口側、出口側とするか…。 それとローリーには村人が入って来た側…つまり入口側で【殺界】を展開して欲しいが頼めるだろうか? アルベルトは【殺界】の使用ありがとう。これでスケルトンも巻き込めば万々歳さね。 ただ、やはり無法者を取り押さえる人員が外で待ち構えるだけだと人手が足りないってのは変わらずだ。 【殺界】を双方に展開できる状態を作れるなら、やはり内部で逃がさないようにするのがいいだろう。 (書き換え) === 〈入口側〉 ・ルチル 〈出口側〉 ・アルベルト

  11. ナハシュ

    何で洞窟の外で待機して、みたいな話になってんのかと思ったら、普通に付近が抜けてたんだな。すまねえすまねえ。 洞窟内部で完結するのは賛成だし、両側に殺界があんなら漏れもそこまで気にする必要ねえか。そんならとりあえず出口側に行っておくぜ。 〈入口側〉 ・ルチル 〈出口側〉 ・アルベルト ・ナハシュ

  12. トゥーリ

    内容、確認したよ! 出口側を殺界で封鎖するなら、入口側をワタシが光縛封で閉じ込めるね! (ローリーさんの確認が間に合わなかったときの保険だよ) 〈入口側〉 ・ルチル ・トゥーリ 〈出口側〉 ・アルベルト ・ナハシュ

  13. ローリー・R・テイワズ

    ギリギリで申し訳ない 今回はよろしくお願いします 入口側に殺界があると両側が封じられるといった形ですね 了解です。私も入口側に行っておきます ただ、装備等が十分とは言い難い気もしますのでもしもの時はフォローいただけるとありがたいです 〈入口側〉 ・ルチル ・トゥーリ ・ローリー 〈出口側〉 ・アルベルト ・ナハシュ

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0