【黒雨】灯火は再燃するか
北織 翼
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シナリオID:1028
オープニング
白い鳥が飛んでいる。海から山へ……エラトゥーン都市同盟の内陸側へと飛んでいく白い鳥の姿に、ああ、また夢を見ているのだと、預言の魔女オペラは悟る。
異変は、フェアドゥキア平野の一角で起こっていた。
――ザァァァァァァ……。
雨が降る。しかし若葉に落ちる雫の色は黒く、異変が起こっている事は一目瞭然だった。
バシャ、バシャ、バシャ。
水飛沫を上げて進むのは、異形の怪物クリーパー。クリーパーの周囲だけ局地的に降っている、その黒い雨を浴びた木はやがて枯れてゆく。
クリーパーの進む先にあった畑の芽は次々と萎れ、雑草までも黒く染まって枯れてしまう。その範囲はクリーパーの進行と共に広がるばかりだ。
「畑が……!」
「な、なんだアレは!?」
クリーパーの降らせる黒い雨を見た農民達が騒ぎ出す。すると雨は農民達にも降り注ぎ……。
「ぺぺっ、なんだこのあ……っ!?」
「ぎゃああっ!?」
――しばらくして、辺りは静けさを取り戻す。黒く枯れた作物の山、黒い雨に濡れた建物の残骸。そして……びしょ濡れになって力尽きて倒れた人々の屍の上に、雨は、降り注ぐ――。
「農作地が広がるフェアドゥキア平野に、周囲を無差別に襲撃するクリーパーが現れるのじゃ」
踊る子熊亭に集まった冒険者達に、オペラは予知夢の内容について語った。
「クリーパーは『黒い雨』で周囲を攻撃しながら移動するのじゃ。これが複数バラバラな方角へ移動し、広範囲に被害を振りまこうとしておるのじゃ」
頭の痛い話じゃ、とオペラは溜息をつく。
人々への被害は勿論、畑にまで被害を及ぼすというのが厄介だ。春野菜の収穫は終わった畑がほとんどだろうが、夏野菜の収穫はこれから、秋野菜はまだまだ育ち始めたばかりだろう。オペラの予知夢が現実になれば、今後の食生活にだって影響を及ぼすかもしれない。
「クリーパーの数を考えると、冒険者の方も人手が欲しいのじゃ……どうか皆で手分けをして、此度のクリーパーに対処して欲しいのじゃ」
皆の未来のためによろしく頼むのじゃ、と、オペラは頭を下げた。
●消えかける灯火
フェアドゥキア平野の一角に、長閑な農村のようなファーツという街がある。
オペラの予知夢で黒い雨の襲来を知ったファーツの有力者である老翁は、黒い雨の降雨範囲外にある宿屋を臨時の避難所とし、住民たちを避難させていた。
避難してきた住民の中に、ヘルマンという酪農家の男性とその家族がいた。
彼の家族は妻と一人息子のレオンだが、このレオンという幼子は生まれつき体が弱く病気がちである。
レオンは此度も熱を出しヘルマンに抱えられながら避難してきたのだが、慣れない環境のせいかいつもより重症だ。
「レオン、レオン……」
妻は何度も息子の名を呼び頬や頭を撫でてやるが、レオンの口からは苦しげな喘鳴しか聞こえない。
「先生、息子の様子がいつもと違う。ここまで酷ぇのは初めてだ」
避難所には、ファーツに唯一の診療所からも医師が避難してきており、幾度となく世話になっているヘルマンは医師の姿を見つけるなり縋りついた。
一家をよく知る医師はすぐにレオンを診察したが、彼はヘルマンに険しい顔を見せる。
「持病をこじらせてしまったようだ。ここまでになると、いつもの薬では何の効果もない。まして子供の体力だ、あとどれほど持つか……。こういうこともあろうかと思って数日前に薬売りに新しい薬を届けてくれるよう頼んでおいたのだが……」
レオンのために発注した薬が届く筈だった矢先に黒い雨が降るという報せが入り、医師は薬を運んでくる商隊の到着を待たずに避難せざるを得なかった。
とはいえ、商隊の者たちはこうした不測の事態には慣れたもので、客相手にはまめに文を送ったり宿屋の小間使いを雇ってひと足早く知らせたりと何かと状況を知らせるノウハウを持っている。
しかし、今日になってから商隊からは何の連絡もない。
「昨日、隣町の宿に入ったという文は届いた。何事もなければ、街道を通って今日の昼過ぎには届く筈だったのだが……」
医師の言葉にヘルマンが続ける。
「隣町とここを繋ぐ街道は一本だけで、裏道なんてものはねぇ。商隊が街に入ってこねぇのは、街道を通れねぇからだとしか考えられねぇ」
商隊たるもの、道中の賊を多少相手取るくらいの度胸と技量は持ち合わせている。
仮に街道で賊に襲われたとしても、相手にもよるだろうが返り討ちにするか逃げ切るか、はたまた予め護衛を雇うなり上手く交渉して賊に平和的にお引き取り願うなりは出来るものだ。
そんな商人たちが街道を通れない理由など、この状況ではひとつしか思い当たらない。
「街道に『雨降らし』が出やがったか……」
ぽつりと呟くなり上着を手に取ったヘルマンの腕を医師が強く掴んだ。
「駄目だ! 君ひとり街道に行ったところで何になる? 君にもしものことがあったら妻子はどうなる!? 冷静になれ!!」
「――っ!!」
ヘルマンは声にならない声を上げ、崩れ落ちるようにして床に膝を着く。
●灯火は守れるか
その頃、ヘルマンの推測どおり商隊は街に入りたくても入れない状況にあった。
お世辞にも開発が進んでいるとは言い難いファーツの街を近接都市と繋ぐ街道はただ一本、しかもその街道上に黒い雨を降らせるクリーパーが出現しているのだから。
商隊の者たちは今自分たちが何を運んでいるのか、そしてそれがどれほど重要で価値のあるものなのかは把握している。
しかし、明らかに「死ぬ」と分かっていて黒い雨の中を通るかと言われれば、答えは否だ。
自分たちは黒い雨に打たれて死ぬ、商品はこの場で朽ち果てる、商品がファーツに届く見込みはない……何一つメリットがない選択などするわけがない。
とはいえ、約束の品を約束の期日に納品して信頼を勝ち取れなければ、次の発注はない。
ここでただ引き返せば人としては生き延びられても商人としては死ぬのだ。
商隊の商人たちは話し合い、数人を選抜し最寄りの冒険者ギルドに駆け込ませた。
レオンの命の火が消えるか、それとも再び温かく燃え続けるかは、冒険者たちの活躍に懸かっている――。
解説
マスターより
リプレイ
冒険者たちは走る、ただ一本の街道を。
(救う手立てがあるのに届けられない歯痒さ……関わる誰もが辛いだろう)
ロイ・アウレアは仲間たちと駆けながら奥歯を噛みしめた。
聞けば幼子の命が懸かっているという、悠長に構えてなどいられない。
一行を先導するのは、五感を総動員させて頭上から俯瞰して周囲を見渡せるヨル・スレイマン。
街道の状況を確認しながら走るヨルは、道沿いの草原が不自然に枯れていることに首を傾げる。
まるで巨大なドット柄にも見える草の枯れ具合。
雨を降らせながら移動しているのならば、移動したルートの草も枯れていておかしくない。
草を枯らす存在が移動を繰り返しながら局地的に雨を降らせているせいだろうか。
(移動中は雨を降らせず、移動した先で止まって降らせる……という動きをしているように見えるんだよね……それってつまり、雨を長時間降らせ続けることが出来ないということなのかな?)
ヨルのこの推測が的を射ていたと分かるのは、もう少し先のこと。
「……はぁ」
(我ながら面倒な性分になっちまったもんだ)
ヨルの後ろを走るディレイン・オールドケイジの口から洩れたのは小さな嘆息。
何も知らなければ今頃惰眠を貪っていたのだろうが、薬の運搬を邪魔されていると知っては黙ってはいられない。
(まぁ、ここまで来たら仕方ないよなぁ)
仕方ないと思う割には視線は真っ直ぐ目指すべき方向に向いていた。
●
「ウワァ気色悪い……」
降雨範囲外に避難している荷馬車を発見したヨルは、間もなくげんなりした顔で足を止めた。
前方で巨大なムカデのようなクリーパーが大量の足を蠢かせながら黒い雨を降らせているではないか。
しかも、ムカデのような風貌の割には這うような動きはせず、人間のように体を立たせている。
(虫ダメってわけじゃないけど、これは精神的にクるね……いやいや、集中集中)
「さて、全力速攻撃破で行こうか」
ヨルが気を取り直して一声を放てば、冒険者たちは淡い光に包まれる。
解き放たれたエーテルに後押しを受け、ロイが弓を構えた。
敵の挙動を一瞬たりとて逃すまいと澄ました耳は雨音とムカデの足のざわつきを捉え、走らせたエーテルの波動はその位置を如実に知らせる。
身の丈程もある弓が静かに、しかしキリキリと撓る。
……それはまさに一瞬。
空を裂いたロイの矢はムカデの肩口に刺さり、鏃から迸るエーテルが敵を捕らえた。
藻掻くムカデを見つめるパルドとウォーゼルに、
「あちらさんがどの程度動けるかは分からんが、とことん邪魔してくれるかい?」
とディレインが近づき、二人の知覚が明敏になるよう順番に術を施す。
「ありがとうございますっ」
「よし、行くか」
ウォーゼルはディレインに手短に礼を言うと、研ぎ澄まされた知覚に自信を得てパルドとともにそれぞれ敵の左右に一気に加速して回り込んだ。
(本格的にクリーパーと戦うのは初めてだなぁ……しかも、子供の命が懸かってるなんて……)
ウォーゼルの構えた弓が眼前で小刻みに震える。
(参ったな、緊張してるみたいだ……時間がないっていうのに……)
嫌でも焦りと不安が込み上げてくるが、ウォーゼルはディレインの支えや遠く対面で構えるパルドの存在を強く思いながら深く深呼吸した。
(こんな時こそ冷静に、だ。まず、この雨は厄介だね……これ以上は近付かずに、確実に相手の逃げ道を狭める……!)
パルドの一射と息を合わせるようにウォーゼルはエーテルを纏った強力な矢を射掛ける。
二人の矢を食らいその射線から逃れようと動くムカデは、「そうなるべく仕向けられている」ことに気付いていない。
そう、パルドらが追い込んだ先にはサイラスがいた。
サイラスはパルドたちの矢に追い立てられたムカデに一気に肉薄するが、そこは黒い雨のテリトリー。
じわじわと命を蝕む雨粒に防御を固めて耐えるサイラスも徐々に力を削がれていく。
しかし、そんなサイラスの視界の端にはディレインの姿がばっちり映っていた。
(ハリス君のいる辺りは……ああ、届かないな。あっちはヨル君に頼んじゃおう。というわけでこっちは俺が頑張るかね)
ディレインは広範に術を発動させ、近くにいるサイラスやパルドらに活力を与える。
力を取り戻し、雨を降らせている間のムカデが攻撃を受けても然程大きな動きを見せないことに気付いたサイラスは、策を巡らせてハリスに
「今のうちに回り込め」
と指で方向を指示した。
「分かりました! 隊商の皆様はご自身の安全を保って下さい! 黒い雨は我々がここで晴らします!」
ハリスはそう言いながら商人たちの前を駆け去ると、エーテルを収束させて纏いながら、サイラスの策を最も効果的に生かすべく彼の対面――ムカデの背後に立つ。
(ムカデに似ているなら意外とあれも頭が急所かもしれないな……)
サイラスとハリスの動きに注意しながら、ロイはムカデの頭を狙い再び矢を撃ち込んだ。
続くようにヨルも光の矢を射ると、ムカデは甲高い叫び声を上げる。
やはり頭部が弱点なのだろうか、危機を感じたのかムカデは突然目にも止まらぬ速さで冒険者たちの包囲を抜けようとする。
「絶対に逃しません。ここで処します!!」
ハリスは全身から咄嗟に光を放ち、突然の光に目を眩ませたムカデが僅かに怯んで速度を落とすとその隙に強烈な一撃を叩き込む。
ふと、そこでヨルはいつの間にか黒い雨が止んでいることに気付いた。
何時止んだのかと振り返り、恐らく凄まじいスピードで逃げようとし始めた時だったと思い当たる。
蹌踉めきながらも包囲を抜けたムカデを見て、ヨルはついさっき立てた己の推測に確証を得た。
恐らくこのクリーパーは溜め込んだ力で一定程度の雨を降らせることが出来るが、その力を使い果たすと再び力が溜まるまでの間雨を生成出来なくなる個体なのだろう。
「全く、往生際の悪い奴だ」
包囲を抜けたムカデにサイラスは剣を振り抜き衝撃を飛ばし、ロイは周囲に目まぐるしく視線を向け、膝丈ほどの草が密生する辺りを警戒した。
(あそこに逃げ込まれるとこちらも足を取られかねないな……)
「ルプス、行け」
ロイが愛狼のルプスに命じると、ルプスは草地に飛び込み、ムカデをサイラスのいる方向に押し戻すようにして吠え立てる。
ルプスを警戒しながらじりじりと下がるムカデを見てロイが
「サイラスさん、そっちに行きますよっ」
と声を張り、パルドはまだ明敏な状態を維持出来ている知覚を頼りにムカデの位置を掴みルプスを援護するかのように後方から矢を射た。
徐々にサイラスのいる方向に押し戻されてくるムカデ。
「まー早期撃破に越したことはないよね。容赦はいらない」
ヨルがサイラスの守りの力を強めようと、淡く透明な光で彼を包み込む。
ヨルの心強い支援を受け、サイラスはムカデを間合いに捉えるなり切っ先を突きつけた。
「覚悟しろ、がっちり捕まえてやるぜ」
張り巡らされたのは気迫か、それとも殺気か。
サイラスの前で途端に身動き出来なくなったムカデに冒険者たちは畳み掛ける。
ムカデの左側から、ウォーゼルが反対方向にいるパルドと目配せしながら加速して踏み込んだ。
得物を弓から短剣に持ち替えて切り付けると、反対側からパルドも同様に短剣を手にして刺突を繰り出す。
「逃がさない、速攻で片を付けてやる」
(こっちは子供の命が懸かってる、時間との勝負なんだ)
パルドが巧みな動きで距離を取ると、続いてハリスが背後からムカデに研ぎ澄まされた鋭い一撃を入れた。
(こっちが押しちゃいるが、油断は出来ないよね……)
「サイラス君、やっちゃって」
ディレインはサイラスを透明な光で包む。
攻めの力を得たサイラスは、
(百足をミミズに変えてやるか……)
と剣を振りかぶった。
「巣に捕まれば百足だって蜘蛛の餌だものなぁ……逃がさないぞ?」
飛び散る幾本ものムカデの足。
ムカデは痛みと怒りを滾らせ上半身を鞭のように振り回すと、背後のハリスを突き飛ばすようにして後退し、冒険者たちから距離を取り動きを止める。
(もしかして、雨の予兆……!)
「皆さん、雨が降るかもしれません!」
ウォーゼルの警告にある者は急ぎ距離を取り、またある者は防御の構えを固めた。
●
動きを止めたムカデはやはり再び黒い雨を降らせ始めたが、離れた位置で弓を構えるロイがまたも矢を放つ。
(薬を待っている子は今まさに命を削られてる――)
「――この程度で怯んでられない」
ロイの決意を乗せた矢は風を纏いぐんと加速、ムカデの下半身を貫いたところに
「逃がしません!」
とウォーゼルが威圧的な声を張り上げ弓を引いた。
力強く射出された矢を受けると、暫くして雨を降らせる力が尽きたのかムカデはまたも高速移動を始める。
「ハリス君、あっちだ」
頭上からの俯瞰状態の視界でムカデの位置を捉えたヨルがハリスに声を張ると、今度はハリスが全速力で追いつき得物を構えた。
「雨は本来、大地に恵みをもたらすもの。斯様な雨はこの世にあってはならない」
ハリスの周りの空気が一気に剣呑なものに変わったような気がした。
(決して離れず、この特級の害獣を釘付けにします!)
ムカデを懸命にその場に留めさせるハリスのために、ヨルは彼にも光を纏わせ守りの力を上げると、ついでに軽く癒しの光球も放る。
その場に縫い止められたかのように動けないムカデに、パルドは全速力で駆け間合いを詰めた。
構えた短剣は眩い光を放ち、それはまるで一刻も早く子供を救いたいというパルドの心を映し出し燃え上がっているかのようにも見える。
光迸る剣閃がムカデの上半身に走ってその体を切り裂く。
冒険者たちが苛烈に攻め立てる中、特にサイラスは容赦がない。
(様子見てても、雨を降らす力をどこに溜めてるか分かったものじゃない。なら、狙うのは一つだよな?)
「蜘蛛の次はお前だ」
サイラスは視線をムカデの下半身を支える足に落とし、さもそちらを狙っているかのように見せかけて剣の刃を素早く上に向けた。
(思考を殺してから反応を殺してやろう。毒腺とか表皮とか顎とか、諸々寄越せ)
直後、ムカデの頭部目がけた重い一閃が叩き込まれる。
濁った声で悲鳴を上げ仰け反ったムカデを見てウォーゼルが全速で駆けた。
ムカデの肉体を蝕まんとエーテルを纏わせ水平に振るう短剣が一瞬鮮烈に光る。
燃ゆるは剣か、心か、幼子の命の灯火か――全てを懸けた光る剣筋が更にムカデの体をぐらつかせた。
今こそ決着をつける時とばかりにディレインがハリスの近くに移動した。
「俺も最後まで手を抜かないよ? というわけでハリス君、どーんと行こうか」
ディレインはサイラスの時と同様に攻撃の力を増す術をハリスに施す。
「はい!」
ディレインの後押しを受けてハリスが勢いよく踏み込んだ。
「死を呼ぶ雨など降らせてはならない……故にここで斃します。我等ターミルの誇りに懸けて!!」
耳を劈くような絶叫。
冒険者たちは思わず身を固くしたが、それはムカデの断末魔。
やがて、黒い靄が徐々に空に紛れて消えるようにクリーパーの骸は崩れ落ち、姿をなくした。
●
ムカデが消え、黒い雨が止む。
あれほど降っていたというのに、体はおろか路面も草原も乾いていた。
「お、水たまりもなくなったね。これなら荷馬車も動くか」
泥濘んで車輪が動かなくなる恐れを懸念していたディレインだったが、路面の状況を見て安堵する。
ウォーゼルもディレインと一緒に街道の状況を確認し、とりあえず目視出来る範囲に危険が潜んでいないかどうか急いで確認した。
とはいえ、のんびりはしていられない上に、この先の道中でまた何者かの邪魔が入らないとも限らない。
「これ以上途中で足止めを食らったら拙い。オレも護衛として同行するよ」
ロイが商隊の商人に護衛を申し出た。
彼の中で、故郷の商隊と目の前のそれが重なって見えたのだろう。
間に合ってほしい、助かる命ならば助かってほしい、面に表れずとも急く気持ちは誤魔化せない。
「急ぎましょう。村の皆様が待っています!」
「付近の安全は確保出来ました! それに護衛もあれば道中も安心です。俺も付いていきます、さあ、急いでっ!」
ハリスとウォーゼルもそれに加わり、ウォーゼルが行くとなれば当然パルドも連れ立つ。
「薬さえあればどうにかなるなら、どうにかしないとねぇ、そりゃあ」
ディレインも薬を待つまだ見ぬレオンの容態が気になるのだろう、自然と足が彼らに向いた。
一方、現場に残ったヨルは
「ギルドで見てもらえば何か分かるかもしれないしね……」
と、雨の影響で枯れてしまった草を摘みバックパックに入れた。
しかし、サイラスの方は憮然とした面持ちでムカデが消えた辺りに佇む。
(消えちまったら何も持って帰れないじゃないか……)
死骸が残れば使えそうな部位を持ち帰れそうなものなのに、被害をばらまくだけばらまいて消えるとは……ムカデの奴め、どういう了見か。
内心腹は立つが、サイラスは街に向かった荷馬車と仲間たちの背中を見送りながらひとつ息を吐いた。
(とりあえず、やることはやった。ここから先にはにわか医療能力持ちの仕事はなかろうが、間に合うことを祈るとするか)
ムカデを撃破してからそう時の経たぬうちに、商隊は無事に避難所の前に到着した。
「お礼とかとりあえずいいから早く持っていってあげて、ほらほら」
ディレインに急かされた商人はぺこりと軽く頭を下げると薬を手に避難所に駆け込んだ。
胸の張り裂けそうな思いで商隊の到着を待ち続けていた医師とヘルマンは礼も挨拶もそこそこに早速レオンに薬を飲ませる。
暫くして、再び商隊と冒険者たちの前に姿を現したヘルマンは、今にも泣き出しそうな顔をしながら大柄な体を深く折った。
「お前さんたちのお陰で、息子は一命を取り留めた。先生の話じゃ、明日には目を覚ますだろうが、あと少し届くのが遅かったら助けられなかったと……。お前さんたちには何と礼を言ったらいいか……ありがとう、本当に、本当に……っ」
その先はもはや言葉にならなかった。
「ああ……良かったぁ……」
ここまで思いの外緊張していたのだろう、ウォーゼルは突然腰が抜けたかのようにその場にへたり込む。
「大丈夫かっ!?」
慌ててパルドがウォーゼルの腕を取り持ち上げた。
「ははっ、安心したらどっと来たよ」
そう返しながらも、ウォーゼルは笑顔でパルドに拳を差し出す。
「ともかくお疲れ様。あの子の命が助かって、本当に良かったね」
「ああ」
相手が幼馴染みだからこその笑みを浮かべながら、パルドはウォーゼルの拳に自身の拳を当てる。
改めて親子を救った充足感と子を深く想う親の愛情に、冒険者たちは心からの微笑みを刻むのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準7 / 4〜7人
2021年06月26日 20時23分57秒 公開
相談掲示板
シーフのパルドだ。よろしく。
出発はまだ確定してないけど、ひとまず挨拶を。 シーフのウォーゼルです、よろしくお願いしますね。
はいどうも。ヒーラーのディレイン・オールドケイジだ。よろしく。 人が集まることを願って、相談を進めていこうか。 雨を続けて降らせることはできないみたいだから、その間に叩けってことかね。 回避が高いみたいなんで、なるべく装備を命中寄りにするとして… スキルも命中を上げる輝腕をみんなに使うとしようか。 回復と、余裕があれば防御アップもするつもりだけど、威力の高い雨を何度もくらうとジリ貧かねえ… できるだけ与えるダメージの大きい選択肢をとっていきたいところだね。
ヒーラーのヨル。宜しく頼む。 >一見して二足歩行するムカデのような風貌 だいぶ気持ち悪いなぁー! >戦闘 ディレイン君が輝腕を持っていってくれるなら、俺は行動阻害の破砕脚を持っていこうかな。 タイミングによっては逃げに対してもある程度効果があるかもしれないし。 あとは可能なら攻撃に寄せたい。回復も何かは用意しよう。 相手が一体だと、戦い方は単純に包囲っぽくしたほうがいいのかなあ。 端から逃げるつもりでいられるのはある意味厄介だね。
わ、人が増えてる!出発確定ですね。改めてよろしくお願いします。 命中アップや回復、行動阻害などどれもとても心強いです。 所持金やSPがあまりないため装備やスキルは後でになりますが、できる限りの準備ができればと思います。 雨がかなり強力なようなので、おっしゃる通り、止んでいる間に叩くのがよさそうですね。雨の範囲は不明ですが、弓などで範囲外から狙えないか試してみようかと。 包囲して逃げづらくするという案もよさそうです。 もし、包囲するという事であれば、疾風足で移動力を上げれば回り込めるかもしれません。 あとは、雨が止んだら接近して脛撃で回避低下を狙えたらいいなとか、今のところ考えています。 ムカデなのに二足歩行なんですね…。 足を狙ったら少しは動きが鈍くなるかな?可能であれば回避が下がってる時などに部位狙いもしてみようと思います。
No.6
サイラスだ、よろしくなー とりま殺界使おうか?魔法攻撃タイプか物理タイプか分からんの割と怖いけど 正直最鈍足だろうから逃げ回られるの凄くしんどいし、雨1、2回くらいで済ませたいし(さっさとやったりフォローしたりしないと隊商遅れるから。) 面倒だけど百足のパーツ考えるとそこそこ硬いと良いなぁ…
出発確定か。よかった。改めてよろしくな。 初戦闘で勝手が分からないことも多いから、経験者が多いのは心強い。 命中アップとかもすごく助かる。 スキルはオレも脛撃持ってくつもりだ。 縛糸刃(束縛)と迷ったけど、駆け出し冒険者が付与できるかは賭けな気がした。 包囲も賛成、疾風足で回り込むよ。
あのフォルムででかい、ってのがなあー… 見てて楽しくないし、やっぱりさっさと倒しちゃいたいよねえ。 包囲するようにして、でも囲みのゆるいとこがあれば、そっち方向に逃げるよう誘導できるかねえ。 雨降り後にヨル君とサイラス君に足止め担当してもらえるなら、俺はその間にヒーリングオーラで範囲回復しようか。 パルド君とウォーゼル君の脛撃で回避を下げたところを、みんなでボコボコにしちゃう、って感じかな?
シューターのロイ・アウレアです。 まだ枠があったので、駆け込みさせて頂きました。 雨の合間を狙い短時間決戦、囲い動きを抑制する、命中をあげておく。 先ずはこの3点で、流れに合せられるかな? 足りない点、気つける点を教えて貰えると助かります。よろしくお願いします。
駆け込みの参加失礼致します。 百足は一応は益虫の区分ですが人を害するならば情けは無用。速やかに処しましょう。 攻撃の予備動作は分かりやすく、連発できず準備中は逃げ回るようですからウォーリアの移動妨害や吹き飛ばしが有効に作用しそうですね。 私の行動としては ・雨の範囲がクリーパー中心の一定範囲であれば吹き飛ばしで位置をずらし巻き込み防止 ・逃げ回られないよう殺界での捕縛や吹き飛ばしでの位置調整 といった所でしょうか。
ムカデって本来益虫なんだ⋯⋯あの見た目で⋯⋯。 とはいえ今回の雨は作物も枯らすらしいしね。早めの駆除が肝心だ。 認識は、ディレイン君とロイ君のまとめで相違ない。 殺界があるなら、包囲は万一の逃走防止程度で良さそうだね。とても助かる。 サイラス君とハリス君が殺界を持っていくなら、俺は回復の方を重めにするか、防御バフを持っていくのに切り替えよう。 俺とディレイン君が手分けするようにしておけば、包囲で多少バラけても回復はどちらかで対応できそうかな。 回避低下付与もありがたい。攻撃を確実に当てて、できるだけ速く倒し切れるといいね。
おっけーおっけー。 ヨル君が防御バフ持ってってくれるなら、俺も攻撃スキル増やせそうだ。