【学乱】武闘派令嬢の実家探訪
馬車猪
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オープニング
「ジョセフ、あなたなんでここにっ!?」
パンクリアース学園において傲岸不遜な武闘派として知られるセニャ・リーラントが動揺している。
まるでいけないことが露見したときの父上のようだなと、健康運動部でダイエットに勤しむ令嬢達は考えていた。
「ねーさまっ!」
それが視界に入った瞬間、ふっくら令嬢達は大声をあげかかった。
だって似すぎているのだ。
きらめくピンク髪も、紫と金のオッドアイもセニャと全く同じ。
10年前のセニャだと紹介されたら納得してしまいそうな外見だった。
(隠し子!?)
(セニアーラ様は15歳ですよっ)
(醜聞が流れてしまうくらいに似過ぎていますわ)
令嬢達は普段の上品な微笑みを維持出来ず百面相だ。
とことこ歩いてきた幼児が、セニャに近付くほどに顔を輝かせる。
「ねーさまぁっ!!」
勢いをつけて飛び出す。
そのままなら体を床に打ち付け酷い目にあうはずだが、幼児は自身の無事を信じ切っている。
姉は凄いのだ。
今も、風のような速さで近づき優しく抱きとめてくれた。
「叔母上と呼びなさい。ここはリーラントではないのよ」
言葉は厳しいのに態度は甘い。
幼児はえへへと笑って、甘える子猫のようにセニャの胸元に頬をこすりつける。
「セニアーラ様」
未だ動揺している令嬢達を代表して、紹介して欲しいという思いを込めて公爵令嬢が呼びかける。
「失礼、お騒がせしました」
相変わらず完璧な礼だが、胸に抱いた幼児のせいで普段とは印象が全く違う。
「こちらはジョセフ・リーラント。次期リーラント伯爵で、私の甥です」
「ジョセフです!」
きりりと表情を引き締めると可愛らしさが強調される。
(甥……)
(男ぉ!?)
(新しい性癖の扉が)
ふにゃっ、と余所行き顔が崩れる5歳児を、セニャは慈愛の表情で見守っていた。
●家族の食卓
「なるほどそちらが」
貴族家庭の食卓に招かれたギルド職員が、平民にしては極めて洗練された所作で鶏料理フルコースを味わっている。
「ねーさま?」
ジョセフは久しぶりに会えた姉との時間を邪魔されてちょっと不満そうだ。
「冒険者ギルドの人間よ」
「むっ」
ねーさまに意地悪したら許さないぞっと、ハーブソースが口元についた顔で威嚇する5歳児。
冷血で知られた職員が、微かに顔を赤くして咳払いをした。
「取引相手ではあるわ」
セニャは、ソースを拭き取るメイドを凄い目で睨んでいる。
「家臣でも領民でもない有力な平民として扱えば良いの」
「うん! じゃなくてはい!」
とても素直だ。
武力や財力を使った威嚇や裏取引を多用するセニャの身内とは思えない。
「分かっているわね」
「御紹介頂き光栄です」
両者とも、必要がない衝突は避けたいという点では利害が一致している。
「どんなお仕事なの?」
紫と金の瞳が、真っ直ぐに見つめてくる。
偉そうだが実際に偉いのだ。
有力な伯爵家の継嗣という立場は、予備であるセニャより非常に強い。
「依頼人と冒険者の間の橋渡しです」
裏取りや事前や事後の準備まですることもあるが、5歳児に話すことでもないだろう。
「冒険者! ねーさまみたいに強いん……んんっ……強いと聞いたよ」
年齢の平均より知性が高い。
真っ当に育つことが出来れば、確実にセニャより賢くなりそうだ。
「戦いは状況次第です」
「そうね。数人がかりなら私が負けるでしょう」
強さに自信と実績があるからこそ見栄を張る必要がない。
(今ならだけどね。私が10年かけて得た力を2年もかからず越えそうな連中だし)
「うそっ」
ねーさま大好きなジョセフは信じたくない。
「力を正しく測るのが正しい判断の基本よ」
セニャは甘いが甘やかしはしない。
「一度冒険者を見ておきなさい。かなり強烈ではあるけど、報告書だけで知るより良く分かるわ」
職員に目配せする。
メイドへ平然とお代わりを頼んでいた職員は、高速で依頼票を書き上げメイドを介して領主家族へ渡す。
依頼人はジョセフ・リーラント。
依頼内容は、パンクリアース学園健康運動部貴族部室からリーラント伯爵領の中心都市への護衛。
正規文書用の難しい言葉を、セニャは当然だがジョセフも理解していた。
「ねーさま、いっしょに帰らないの?」
捨てられた猫のように落ち込んだ。
無意識に修正版の依頼票を書き始めようとした職員を、セニャが冷たい視線で制止する。
「これも人材を使う練習よ。冒険者ギルドはともかく、冒険者と敵対している訳ではないからジョセフの思う通りにしてみなさい」
本人は否定するだろうが厳しくも優しい母または姉の顔だ。
「はいっ!!」
現時点では、ジョセフ・リーラントは健やかに育っていた。
●地平線までハーブ園
それは蹂躙だった。
見た目より重く硬い杭が、5秒に3回の間隔で延々押し込まれては抜き出される。
オーガとセニャの体格は高さで倍近く、体積と筋肉量では10倍以上の差がある。
なのに授恵者であるセニャが大きなオーガを終始圧倒していた。
「邪魔」
ジョセフといたときにあった暖かさは皆無で、命あるものを平然と踏みつぶせる傲慢さと武力だけがある。
拳も蹴りも体当たりも、軽装のセニャに触れることも……いや、1度掠めたことはあるがいつの間にか傷が消えていた。
人間ではありえない太い骨に亀裂が生じる。
10を越える穴が開いた筋肉の奥、3つの致命的な穴が開いた骨に亀裂が増えて、ついに砕けた。
「手こずらせてくれたわね」
無残に転倒したオーガを見下ろす状況でもセニャは油断しない。
周辺の警戒は腹心とペットに任せ、油断も手加減もなく地に足をつけたままの猛攻を継続する。
不用意にリーラント領内部に侵入してしまった亜人は、セニアーラの追撃をかわせず苦しみながら息絶えた。
「終わったわ」
オーガ頭蓋から細剣を引き抜き、剣を振り血を地面に飛ばし宣言する。
「はい、先遣隊が後1時間ほどで到着する予定です。後始末と警戒は先遣隊に任せるということで?」
「それでお願い」
セニャは砂糖とレモンたっぷりの紅茶を受け取り水分補給。
地平線まで続く草原と、地平線近くに見える隊列をじっと見る。
稀にとはいえ強力な亜人が侵入するため本格的開発が始められない土地と、授恵者の増大に対応しきれていない私兵軍。
伯爵家の人数不足と並ぶ、故郷の深刻な問題だ。
「ここの牧童は気合いが入っていますね」
腹心が主君の内心に気付かぬふりをして報告する。
先遣隊のすぐ後ろに、元気な羊の群れとそれ以上に元気な牧羊犬と牧童の姿が見える。
「今年は羊肉も期待出来そうですね」
「そうね」
気分を切り替えることに成功したセニャは、以前冒険者が言っていたことと、何故か同じようなことを最近言い始めた領内有力平民を思い出す。
「草で殖産が出来るのかしら」
「父は自己資金で投資したいと申しておりました」
「調査を済ませてからしなさい」
派手な見た目とは逆に、セニャは堅実派だった。
●護衛依頼
「ジョセフ・リーラントです……じゃなくて、だ!」
冒険者を出迎えたのは、男性貴族用礼服を着ても可愛さの隠せない5歳児であった。
「おうち……じゃなくてリーラントの領都までの護衛をよろしく頼むぞ」
目も髪も顔立ちもセニャにそっくりな幼児が、好奇心にあふれた目を冒険者達へ向けていた。
解説
マスターより
リプレイ
知的なリザードマンを見たとき、紫と金の瞳に強い好奇心が浮かんだ。
「初めましてジョセフ・リーラント様、僕の名前はドローミと言います」
ドローミの挨拶は丁寧で、卑屈にも傲慢にもならない丁度良い具合だ。
上座の少年は微かにうなずく。
桃色の髪がふわりと揺れ、窓から差し込む光で宝石めいて輝いた。
(警戒しているのに顔には出さない、と本人は思っているようです。年齢を考えれば出来すぎですね)
ドローミは疑われているのに気付いていることを気付かせない。
「セニャ殿とご縁のある冒険者の一人です、今後ともよろしくお願いしますね」
ジョセフが無意識ににっこりとして、慌てて真面目な表情に戻そうとするがなかなか戻らない。
助言するはずの護衛兼メイドの授恵者は、可愛らしさに当てられてドローミの言葉が本当であることを知らせるのが背一杯だった。
「護衛にあたり、帰路の馬車の御者も代行させていただきます。途中短時間は休憩を挟みたいと思いますが、移動中は他の冒険者方々とご歓談くださいませ」
ドローミが1番真面目である。
水分補給や道中のトイレの準備など、非常に地味だが決定的に重要な事柄をリーラント領軍と打ち合わせている。
「ここでこれを飲むの?」
グラスで用意された薄い塩水に目をぱちくりさせる。
「はい。道中の休憩時以外は可能な限り飲食を避けるのが良いのです」
「どうして?」
責めるように聞こえないのは、受けた教育の成果というよりジョセフ本人の資質だろう。
「行儀が悪いからですね。整備された街道と良質の馬車があっても揺れます。つまり危ないです」
「うん、そうだね!」
納得した5歳児は、今度は大きくうなずいた。
さて、リーラント伯爵家は貴族派貴族である。
高位授恵者であるセニャがいて、部下に発言を許す寛大さもあるとはいえ非常に保守的だ。
次期伯爵であるジョセフも当然に保守的教育を受けている。
「いこう!」
だから貴婦人にはエスコートするのだ。
同世代の淑女が近くにいたら、極自然に誘ってしまうのである。
「ありがとうジョセフくん」
ヴィノニスの微笑みは完璧だ。
嫉妬と猜疑に満ちた刺すような視線が上は健康運動部の令嬢から下はメイドにまで向けられているが綺麗な笑みは陰らない。
「馬車の中での護衛は任せてね」
指先に感じる小さな指がしっとりもちもちだ。
ヴィノニスは、勝利の実感で自身の肌が10歳以上若返る気がした。
「ふふーん! 僕だって鍛えてるんだからねっ」
彼の体格は年相応だ。メイドが毎日徹底手入れしているので本格的人形に匹敵する完成度で美しい。
「ジョセフくんはセニアーラさんが大好きなのね」
「うん!!」
うきうきしながら馬車へ向かう5歳児を、産毛まで見逃すことなく記憶に焼き付ける26歳。
なのに、見た目だけは微笑ましい幼児カップルであった。
●
馬車の揺れは、馬車にしては非常に小さい。
作りが良いだけではあり得ないので、おそらく紋具が仕込まれているのだろう。
リーラント家の財力とジョセフへの期待が強烈に感じられた。
「ジョセフ・リーラント様、初めまして護衛を承りましたロイ・アウレアと申します」
ロイ・アウレアは馬を借りて馬車と並走させている。
黄金を思わせる髪と冴えた瑠璃色の瞳は、ヒューマンがエルフと聞いて思い浮かべる容姿をさらに上回っている。
「うん、よろしく」
ヴィノニスに構われているときでも挨拶は忘れない良い子である。
「あれは?」
そして目敏くもある。
ロイと縁を結んだの狼に気付いたのだ。
「森から着いてきてくれているルプスです。頼りになるんですよ」
金の瞳は穏やかで、黒い毛並みは良く手入れされている。
胸元を飾る金の飾り毛は華麗で観賞用の犬だと勘違いされそうだが、齢14に達する熟練の雄狼だ。
高速を活かした偵察を行うだけでなく、目立たぬよう動き馬車馬を警戒させないことまでする老練狼である。
「飼い狼?」
ジョセフがびっくりする。
「はい」
ロイが指示を出す前に、ルプスは器用に馬車と速度をあわせてじっとジョセフの目を見る。
その理知的なまなざしに、ジョセフは構いたくなってうずうずとした。
(叔母や家臣が可愛がる訳です)
ロイは子供の面倒も見るが護衛を優先している。
だから、馬車の数百メートル先から数百メートル後まで、冒険者以外の警備がついているのにも気づけている。
(護衛任務と書いて英才教育とか特殊教育と読ませる依頼ですか)
初めて見るものばかりで、5歳児はすっかり興奮していいるようだ。
馬車が止まる。
複数準備していた休憩所のうち、最も王都に近い場所だ。
借り物の軍馬の上で厳めしい顔をつくって犯罪を抑止するアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトは、見た目からは想像も出来ない精神状態にあった。
(ジョセフ君、かなり可愛いな。これは世の女性が邪な思いを抱くのもわかるぜ、俺も気を引き締めないとな)
暴走するなよとヴィノニスをちらりと見ると、そっちこそという冷たい視線が返ってきた。
「それにしても皆がジョセフさんを見る目がなんかあやしい……?」
馬車の中にいた3人目がアルマ・ヴァレンタインである。
依頼をうけたのは他の冒険者と同じだが、いつでも良いという条件の招待状を受け取っていたのはアルマただ1人だ。
ジョセフからも、有力平民以上、貴族未満の有識者として扱われていた。
「可愛らしいのは分かるけどー……うーん?」
先に降りたジョセフの手助けを断り自分自身で飛び降りる。
馬車から解放され、何の変哲もない風が気持ちよい。
「屈伸するなどすれば楽になりますよ、うがい・足踏み・遠くを見続けるなども効果的です」
「りゆうは分かる?」
ジョセフはドローミの言葉に素直に従いはするが疑問は即座にぶつける。
「今のところ経験則ですね。時間がたてばいずれかの学問が理由と理屈を見つけると思います」
ドローミは言葉を飾らず正直に応える。
「そっかー。ぼくが学園に行くころには分かるかな」
むん、と力こぶを作ろうとするが、服の上から見えるような大きさにはならない。
「筋肉を身につけるには、牛乳や豆を摂取することが必要だぞ」
大型金属装備を軽々着こなすアルベルトが言うと説得力がある。
「筋肉ほしい!! でもねーさま剣の練習許してくれないの」
「訓練始めるのが早すぎても遅すぎても効率悪いからねー……。ボクが知ってるのは牛や羊の飼い方だけど」
アルマは、さすがにぬいぐるみを渡すと怒られるかもと考えたがジョセフはアルマの荷物をちらちら見ている。
「メイドさん安全の確認はー……? いいの?」
セニャから予め許可が出ていたらしく、アルマは簡易ではあるがしっかりした竈を使ってホットチョコレートを準備する。
ジョセフの興味が、玩具から甘味に移った。
「少し休憩ね」
ヴィノニスはわざと薄いハンカチを選んで布越しにジョセフの唇を指で楽しむ。
形としてはチョコでべたべたの口もとを拭いているだけだが、邪心を持つ者達に狙いを見抜かれ、嫉妬もされていた。
「おねえさんは?」
「私は授恵者だもの。少しなら眠らなくても大丈夫」
別のハンカチを自身の太股にかける。
メイドの嫉妬の視線が心地良くもあった。
「うん!」
周囲で行われる牽制に気づけないまま、揺れで疲れ甘味で満足した5歳児がころんと横になってヴィノニスの太股を枕にする。
すぅすぅと小さな寝息を立て始めるまで、ほんの少しの時間で十分だった。
(継承順位第1位ですか)
依頼をうけた後、リーラント家について調べてみたセロンガード・シュタインドルフは大体の事情を把握した。
(第2位が歳の近い叔母でしかも高位授恵者。よくぞここまで素直に育ったものです)
学園では傲慢なセニャも、ジョセフの前では良い家族なのだろうか。
リーラント家を混乱に導こうとするなら、武力を使わなくても言葉の毒をジョセフの耳に入れるだけで良い。
伯爵という地位は、仲の良い肉親を邪悪に変えてしまうだけの魔性があるのだ。
それを分かった上で、形骸化したとはいえ帝国の諜報部門に属するセロンガードはそれ以上考えないことにした。
(国と身分と役目のしがらみは忘れて、今日は純粋に楽しむと致しましょう)
平和な寝顔をちらりと見て、セロンガードは気配を消したまま捜波の連続使用を継続する。
邪悪な企みを持つ者にとっては最悪の守りが、ジョセフのまわりに築かれていた。
●
これ以上ない……ジョセフをどうにかするなら大部隊か闇の底に棲む暗殺者が必要な守りを維持したまま、何事もなくリーラント家の本拠へ到着した。
貧乏そうな平民でも健康状態は良く、豪華な屋敷は極少数なのに上下水道や兵舎はしっかりしているという、かなり特徴的な町以上街未満だ。
「セニャ様も隅に置けませんわね。このようなかわいらしい隠し玉をお持ちだなんて」
バンビは鶏肉フルコースを平らげ、思考の速度が鈍るアルコールではなく綺麗な天然水を楽しんでいる。
「ぼ……私はかわいいという年齢ではないと思うよ」
真面目な顔をしているジョセフは、お菓子食べすぎを領主婦人直属部下に咎められてデザートなしの刑の最中だ。
(将を射んと欲するならまずは馬からですわ)
セニャとジョセフのどちらが馬になるかはまだ確定していないが、どちらかが馬にならざるを得ない。
王国において貴族の担う役割は多い。最低限の損得勘定が出来るなら、数が少なすぎるリーラント家内部で殺し合いは不可能なのだ。
「一局どうです」
駒を動かす慣れた手つきをすると、ジョセフがぱあっと表情を輝かせる。
「いいの? やったぁ!」
ねーさまテレパス使ってずるするから、という言葉が聞こえた気もした。
バンビは徹底した早指しだ。
手番が来てから即座に打つ以外の手加減はしない。
チェスから現実の状況を想定し解説することまでやっているので普段よりは弱い。
「あっ」
バンビの最初の攻勢を防ぎきった時点で気付く。
「早く決着がつくと、パンと金貨が少なくてだいじょうぶになる?」
「最速こそが最善ですわ」
兵士を1歩前へ。
4手先まで読んだジョセフが、にゃぁと可愛らしい悲鳴をあげた。
「そくどってなにー?」
うんうん唸るジョセフが時間稼ぎに別の話題を出す。
頭の使いすぎでほんのり桜色に上気した頬が可愛らしい。
「時間と空間の有効利用ですわ。……今ので分かります?」
「んんー、時間と広さと長さ?」
思考のセンスは間違いなくセニャより上だ。
バンビは新雪に足跡をつけることを楽しみつつ、5歳児に理解出来る言葉と表現を探す。
「時間と縦横高さですわ。個々の速度は同じでもこうすれば」
ジョセフ軍の右翼と左翼が無事なまま中央が決壊した。
左右からの救援は、王を狙うバンビ軍に追いつけない。
「まけました」
3手先の結果を覆す方法を見つけられず、ジョセフは悔しさとそれ以上の爽快さを感じながら投了した。
バンビは勝負の傍ら記していた譜面をサイドテーブルに置き、2戦目の準備を始める。
(いまから潜在的にスピード感覚を刷り込んでいくことで将来的にセニャ様へのよき理解者かつ、支援者となれるように仕込めばセニャ様も泣かずに済むでしょう)
ジョセフもわくわくして手伝おうとして、喉が渇いているのに気付いて2人分をメイドに指示する。
「電撃戦部?」
猛烈な勢いで敗戦回数を増やしつつ、ジョセフは徐々に腕を上げていく。
「ねーさまが言ってたのと違うよ?」
「よくあることですわ。今は健康運動部の側面が強いですもの」
「んー」
バンビの第一波を完全にしのぐ。
「僕なら学園じゃなくてこっちに欲し……いけど」
即座の第2波がジョセフの防御ごと攻勢準備を粉砕する。
「詳しく聞いても?」
「うんでももう1戦」
家宰により遊戯室から連れ出されるまで、ジョセフは熱中していた。
「チェスかぁ」
隣の部屋にいるセニャがため息を吐いた。
同席するのがジョセフのためになるかどうか悩んで結局顔を出せなかった。
「セニアーラ様はジョセフ様をとても大切にしているようですね」
ジョセフを寝室まで護衛して戻って来たセロンガードが、わざと気配を濃くするがセニャは気付かない。
咳払いをする。
仕方ないので武器には触れず殺気だけを飛ばすと、セニャは即座にその場から飛び退き細剣を構えていた。
「……もしかして呼んでいた?」
「はい、3度ほど」
「謝罪するわ」
セニャは軽くだか頭を下げてから椅子に座り直す。
急報が届き次第飛び出せるようしているので、楽な格好ではあるが細剣を1本帯剣している。
「可能な限り綺麗なままで、汚れと腐敗のない世界で生きていて欲しいのでしょう。単純に危険から遠ざけたいとだけ思うのならば、正直な話、我々も安全ではない。大きくなるまでとそれから必要になる事を効率よく教えているのですね」
「褒め言葉と受け取っておくわ。私の部屋は警備しなくて良いわよ」
冗談を飛ばして自分の部屋へ戻っていく。
セロンガードは、セロンガードに気づけなかったリーラント家隠密が落ち着くまでその場で待機している。
(一連の行動を見れば、セニアーラ様がどんな15年を過ごしたかの反証になるわけですが)
先代伯爵から今の伯爵に代替わりする際、大量の血が流れたのは既に知っている。
破綻した性格にはなっていないのだから常に暗い少女時代を送った訳ではないはずだ。
だがジョセフにああ接しているのだから、見たくないものも大量に見ざるを得なかったはずだ。
(それを私が指摘するのは野暮というもの)
セロンガードは親切心から隠密に警備の不備を教え、翌日に備えて休息するのだった。
●
「これをハーブ園というのはどうかと思うなー……」
アルマの言葉を聞いたリーラント領のお偉いさんは、聞こえないふりをしつつ内心同意した。なお、数がとても多い。
「今日は事前調査だよー……」
期待がかなり重い。
本格的な調査をするなら多額の費用が必要なので、今日は浅く素早く調査するだけのつもりだったのだ。
「むー」
実際にむーと唸っているのはジョセフだ。
唯一馬に跨がったままだが、乗っているのが子馬なのが悔しいらしい。
「お父上の領地や仕事ぶりを、紹介してくれないかしら?」
最初に出会ったときよりは活動的な服装の、冒険者としての戦装束姿のヴィノニスだ。
彼女の本性はまだリーラントの人々には気付かれておらず、幼げな淑女に見える彼女を微笑ましく見守る者までいた。
「うん!」
ジョセフは得意気だ。
大好きなおとーさんの業績を自慢出来るのが嬉しいらしい。
「平和な野原になったのは最近なんだよー。最近といってもぼく、じゃなくて私が生まれる前なんだけどね」
両手を振って地平線まで続く平原を示す。
人に飼われていない野生馬の群れが、危なっかしい5歳児を数秒見てから興味をなくして草を食み始めた。
「増えすぎた村をとうはいごー? することでぶたいをへらして、えっと」
セニャならテレパスで部下を使う場面だが、ジョセフは一生懸命考える。
「ねーさまが戦えるようになるまで時間と余裕をかせいだの!」
ヴィノニスは10分も1も聞いていない。
身の丈を超えた説明をしようとする5歳児の頑張りを楽しむのに集中している。
(一生懸命に頑張る姿がたまらないわ。それに)
距離が近い。
強大な存在に守られてきたので危機感が薄く、セニャに懐きすぎていて女性授恵者への警戒心も薄すぎるのだ。
「高い位置で説明した方が分かり易いと思うの」
ヴィノニスが大柄な馬に乗る。
「そーだね!」
ヴィノニスの言葉に素直に従ってしまい、逞しい軍馬の上へ嬉々として移動する。
「すごいっ」
ジョセフは遠くまで見えるのを喜ぶ。
ヴィノニスは落馬防止という名目で後ろからジョセフを抱く形で手綱を握る。
これ幸いと密着するヴィノニスに、ジョセフは特に恥ずかしがることもなく高い視点に夢中だ。
バウ、と言葉にすれば可愛らしいが、響きとしては壮絶に重々しい音が響く。
「ジョセフ様を中心に方陣を」
「だがそれではっ」
「敵は複数勢力います」
吠え声以前にエーテルリンクで把握していたロイは、ダマスカス鋼の魔弓を引き絞りながら新たな指示を受ける。
(分かった。犬魔獣はこちらで牽制するよ。ルプスはオークの群れを足止めだね……いやそこまでしなくていいから)
良く伸びた草と微かな高低差を活かして忍び寄ってきた亜人勢力に、老練な狼が死角から襲撃と離脱を繰り返すことで時間を稼いでくれている。
「元気だね」
表情は優しく、しかし弓の技は冷たく冴え渡る。
狼の襲撃で動揺したオークの群れが、斜め上方から光の破片に襲われ混乱した。
(物理的に守るだけなら簡単ですが)
セロンガードはわざと自らを目立たせる。
足を止めてから始まった猛烈な射撃は魔獣と亜人にとっての脅威だ。
利害が反するオークと犬魔獣が、全くの偶然で同時にセロンガードへと迫った。
「だめっ」
驚き、焦り、覚悟を決める。
子供の成長を汗のにおいで感じ取ったヴィノニスの笑みが深まる。
「ぼうけんしゃのえんごを!」
「それには及ばないわ。こう見えてわたしも戦えるのよ?」
リーラント領軍が反応するより早くヴィノニスは準備を完了していた。
射程ぎりぎりにまで迫った体格の良い亜人に、巨大な炎弾を突進させて群れの半ばを焼き払った。
(近づかせる訳にはいきませんね。刺激が強すぎる)
セロンガードはヴィノニスに感謝している。
知性を持つ生き物の断末魔や血や糞尿に触れるのは、5歳児にはまだ早すぎる。
焦ったオークと魔獣がセロンガードにぶつかる寸前、猛烈・強烈という表現でも全く足りない矢に襲われる。
無残に骨ごと引き千切られた肉が、ジョセフの視線を遮る草の陰に飛び散った。
セロンガードは声は出さずにハンドサインで領軍に指示する。
慌てて隊列が組み替えられ、ジョセフの姿が兵の隊列で隠された。
「ボク達が大勢で来たから大勢集まったんだろうけどー……」
敵襲を恐れはしないが規模には驚いている。
「この場所、大規模畜産業には向いていないんじゃないかなー……」
身軽な群れと牧童と牧羊犬なら回避可能な亜人も、肉の質を重視しつつ大量生産する牧場にとっては回避不能な難敵だ。
「なんですとっ?」
「そこをなんとか」
「ギルド長っ、あんた死ぬ気ですか飛び出さないで!」
アルマの発言に気付いたお偉いさん達が騒いで怒られている。
「広いなー……海ってこんな感じなのかなー……」
地平線まで続く平地で光弾を展開。
1つだけでも高位の前衛授恵者に匹敵する威力の光弾が、1弾1殺を現実のものとして子牛じみた大きさの犬魔獣を全滅させる。
「しかもこれー……」
生き残りのオークが怒りを押し殺して吠えた。
ジョセフという絶対に失ってはならないものを守る領軍は、追うことが出来ない。
もっともジョセフがこの場にいなかったとしても、非授恵者よりは強いオークに追い付き仕留めるのは不可能だったろう。
濃い緑の平原に白が混じる。
白く細い稲妻が逃亡中の亜人達を襲い、傷を一切与えないままその速度を激減させる。
「3班に分かれて追撃ですわ!」
バンビの命令に従い、領軍の若手がオークへ突撃。
地味だが良質な槍の穂先が、背中から内臓を貫き胸や腹から突きだした。
「でんこーせっか!」
これまでぱっとしなかった領軍若手の活躍を、ジョセフが我がことのように喜ぶ。
(冒険者をしている授恵者と比較するのは酷ですけど……本当にいまいちですわ)
バンビの採点は辛い。
しかし、王国の学生である健康運動部より、領民であり次期領主が友好的な授恵者達の方が自由に扱える。
(素材として魅力的なのが怖いですわ)
尊敬の視線を向けてくるジョセフに、曖昧に応えるバンビであった。
●
微睡む老狼の横で、黙っていれば超美形のロイと牧羊犬が戯れている。
草と土にまみれても美形度は変わらず、思いっきり遊んだ結果肌が艶々して見えた。
「たのしいの?」
ジョセフは思わず聞いてしまった。
こんな遊びを見るのは初めてなのだ。
「ふふ、ジョセフさんの方がオレより大人だね……だがもっと子供で居て良い時もある!」
とぅっ! とルプスを巻きこむ。
この野郎と不機嫌な感情をリンク越しにロイにぶつけ、しかし未熟者を鍛えるのもよいかと考え直して少し積極的になる。
「むー」
ジョセフは我慢出来る子だ。
少し寂しそうな表情をしてしまったことに気付いて、意識していつもの表情へ戻す。
(この子は大丈夫……いや、聞き分けが良すぎるかな)
エルフとしてそこそこ長く生きてきたロイは、最初に我慢しすぎたため歪んでしまった子も何度か見た。
「この子達は働き甲斐を感じているようですよ」
犬毛まみれになったロイが、牧羊犬を立たせて紹介する。
じっと見つめるジョセフの前で、序列を叩き込まれた犬達がお行儀良くしていた。
「いいですな!」
「早速とりかかりましょう!!」
うきうきする壮年以上の男達を、アルマが全身で制止しようとしている。
「投機になっちゃうから駄目! ボクは羊と草は分かるけど土木建築軍事は専門外だよーっ!!」
どの草がいつ頃どこに生えそうだとか、羊や鶏にどの時期何をどの程度食べさせたら良いかなどは相当な精度で分かる。
が、亜人や魔獣の襲撃を退ける方法やそのためにかかるコストの計算は専門外だ。
「絶対美味しいお肉になりますよね!」
ロイがうきうきして、牧羊犬が興味深そうにして、狼がじっと聞いている。
「話を混乱させないでよー……」
「でもここで何かするならこの子達が関係するよね?」
ロイは専門家ではない。
アルマが教えてくれる内容はハーブだけでなく凄く面白いが、人里から離れた場所で何が必要かは教えられる前から知っている。
「そうー……かな? かも」
群れから離れようとする羊を牽制して群れに戻す犬達を見てアルマも考えを改める。
「ちょっと待ってね。畜産業の体制を変えずに放牧の場所だけ変える場合はー……」
大きな板と紙を借りて地図を描き計算する。
「意外といける?」
「賃上げ要求に応えてあげてくださいね?」
ロイは、今より長距離走ることになる犬を思いやる。
「羊さんだけじゃ採算とれないかもー……」
だがまだ鶏がいる。
リーラント邸で食べた、質は良いもののそれだけな鶏肉を思い出す。
「鶏をここに連れてくるのは無理。鶏舎を建てるのも維持するのもお金がかかりすぎる……よね?」
各種ギルドの長が何度も首を縦に振った。
リーラント領軍はしっかり領民を守るが、日常的に展開すればその分税金が重くなるのだ。
「だったら暇なときに草を刈って鶏舎に運んで貰うのが現実的だと思う。ハーブ鶏として売り出すなら餌の配合を研究しないとだけど」
他にも殖産を頑張っている領地はあるはずだ。
アルマが知恵を貸しただけで急激に成長などあり得ない。
「結局お金が一杯必要になるんだよね。強いクリーパーの残骸なんかを撒いておくと警戒して獣除けくらいにはなってくれるかなー……?」
セニャがいるはずの方向をちらりと見る。
可能だとしても大量に必要になるはずだ。だがセニャがいれば……。
「アルマ殿アルマ殿」
「事業が軌道に乗りそうになれば現れる盗賊団には効きませんぞ」
非常に生臭い情報を伝えられ、アルマはげっそりしていた。
●
全高が1メートル違うと戦闘力は別次元だ。
力任せに振るわれる棍棒が、磨き抜いた剣の技を真正面から押し返して来る。
「コイツは」
壮絶な重さと速度を、大太刀と盾を使って辛うじて受け流す。
「特異個体か!?」
アルベルトの顔面に向かって棍棒が跳ね上がる。
3メートル級オーガにとっては手頃なサイズでも人間にとっては最大級の大きさだ。
十分以上に強固なはずの鎧と盾が、嫌な感じに揺れてアルベルトの体を奥まで揺らした。
「不幸中の幸いですか。護衛中に遭遇したら継嗣殿はともかく我々は危なかったかもしれません」
ドローミはアルベルトを治療しない。
既にエーテルで援護はしているのだ。
性質を歪めたエーテルを矢に含ませて、執拗にオーガの顔面を狙う。
人類なら顔面が抉れて無残な有様になるはずの矢が数度当たったのに、体格から雌と推測されるオーガは多少の切り傷程度ですませて棍棒を高速で振り回し続ける。
「間に合いましたか」
最後に当たると致命傷とは別の手応えがあった。
顔面の傷から染みこんだ毒が、ぎりぎり特異個体に分類されるオーガの足を猛烈に引っ張る。
(きついな。だが)
慣れてきた。
アルベルトは気合いで痛みを耐えて頭狙いの棍棒を横に押しのける。
盾を支える腕が痛みで麻痺しそうだがまだ動く。
「でやぁっ!!」
裂帛の気合いと共に大太刀を旋回させる。
相手がコボルトなら、英雄級の特異個体でない限り即死も十分ありうる一撃だ。
腰の端から腹にかけて赤い線が延び、数秒遅れてどろりと鮮血が垂れる。
内臓がこぼれたりはしていないが手当しなければまず死ぬ重傷だった。
「見たかリーラントさん、俺の力を!」
にやりと笑うアルベルトは、実に雄雄しかった。
「見たけど」
馬鹿にする気配もないが賞賛する気配も非常に薄い。
「そういうのは倒してからにして頂戴」
セニャは攻撃しない。
オーガも反撃しない。
不利を悟ったオーガは武器を捨てて全力で逃亡を開始。速度ではオーガに勝るものの短時間で倒すほどの攻撃力を持たないセニャは、いつも通りに不毛な追撃戦を開始した。
一度バンビが足止めしてくれるがオーガは一時的に遅くなるだけだ。
「クソッ」
足止めから抜けた直後にアルベルトが追いつく。
通常攻撃が攻城槌級でも相手の頑丈さは飛び抜けている。
切っ先が強靱な肌を裂いて筋肉も傷つけるが致命傷には遠すぎた。
「セニャ殿が速度にこだわるのはこのせいですか。逃がしても大丈夫ですか?」
ドローミが放つ矢は効率よくオーガの命を削る。
だがそれも弓の射程内にオーガがいるとき限定だ。
セニャが長時間かけてようやく可能な打撃を短時間で与えはしたものの、ドローミは一度も致命打の手応えを感じない。
「付近のオーガ部族にヒーラーは確認されてないわ。自然に治るまでの時間は稼げるでしょうね」
追撃では、何の成果も得られなかった。
「お疲れ様です。継嗣殿も飲まれたのですが」
「頂くわ」
セニャは塩水を飲んで困惑する。
「何かのまじない?」
「いずれは学問になると思いますよ。それよりアルベルト殿、勝敗は兵家の常ですよ」
「恥ずかしいところを見せたな」
精神の不調から回復出来るのは良い戦士の証だ。
刃を鞘に戻して伸ばした手を、セニャの細くしかし固くなった指がしっかりと握る。
「私なんて恥ずかしいところだらけよ。何度亜人を仕留められなかったか」
多少は攻撃されたはずなのに、傷跡が1箇所もない貴族令嬢が息を吐いて手を離す。
「そんなことは」
「ジョセフッ」
アルベルトの言葉を最後まで聞く前にセニャの頭からアルベルトのことが消えた。
「ねーさまー!」
セロンガードの背中で楽しげに手を振っている。
隠密としての能力も授恵者としての能力も全て接待に使っているので、驚くほど安定してしかも速度が素晴らしくさらにジョセフが行きたい方向に指示するまでもなく動く。
「やっとあえたっ」
忙しいのは知っているから我慢はするが寂しいのだ。
肩車されていることを忘れたままセニャに抱きつき頬をすりつけた。
(幼いときはこういう時間も必要でしょう)
曲芸じみたというより超高難度の曲芸的姿勢でジョセフを支えながら、セロンガードは大真面目に考える。
数分ふれあいを楽しんだセニャが、ずっと支えていたセロンガードを称えるべきか嫉妬に身を焦がすべきか迷って、少々おかしな表情になっていた。
「仲が良いのは良いことです」
ドローミはメイドと手分けして周辺を警戒している。
冒険者以外の護衛も引き連れてきているとはいえ、ほとんど建物のない平原は決して安全ではない。
「なにか着てるの?」
ジョセフがじいっとアルベルトを見る。
良く知っている男女とは体型が違う。
「触ってみるか?」
「うん、うん? わぁっ」
アルベルトともセニャとも全く別物で生命力に満ちた指先が首の筋肉を這い回る。
鍛えづらい場所なのに、発達した筋がしっかりとある。
「すごーい!」
見た目は美幼女でも男の子だ。
筋肉にも憧れるし、重厚な鎧を着て大きな剣を振り回すのも大好きだ。
「ジョセフ君」
微笑むと白い歯が目立つ頼れるおにーさんを演じるアルベルトに、ジョセフの背後からじっとりとした目が向けられる。
(肩車羨ましい……駄目だ雑念は拙い。子供は鋭いんだ)
雑な義弟とは違うのだ。アルベルトは、少なくともこのときだけは心身とも男前になる。
「一人前の騎士になるためには筋肉も必要だがそれだけじゃ駄目だ。常に力無きもののための剣となる覚悟を持たなければならないんだ」
そうしなければ、武力は容易く暴力と化す。
紫と金の瞳に強い憧れの感情が浮かんでも、アルベルトは決して気を抜かなかった。
「逮捕される状況でしょうか」
ドローミは少し困惑している。
「逮捕したいけれど残念ながら冒険者だからね」
セニャは、アルベルトを戦友扱いしたことなどすっかり忘れて嫉妬で身を焦がしている。
相変わらず重度のブラコンである。
「しかし……」
ドローミが平原とそこに展開する戦力を見渡す。
「口に出さないのは評価するわ。帝国崩壊なんて大事件が起きなければ、お兄様が蓄えた力を開拓にも使えたでしょうけどね」
元帝国領に何がいるか分からない状況では落ち着いて婿捜しも出来ないわよと、珍しく本音を漏らして今にも舌打ちしそうなセニャであった。
マスターコメント
ショートEX普通 報酬:標準7 / 6〜10人
2021年06月23日 11時30分40秒 公開
相談掲示板
5歳の少年がいると聞いて来ました。ヴィノニス、と言います。 皆さん、よろしくお願いしますね? 目的:パンクリアース学園からリーラント伯爵領中心都市へのジョセフの護衛 障害: ・犬型魔獣(出現?) ・オーガ(確実に出現) ・オーク(確実に出現) ・その他? 道のりがどのくらい掛かるものかは読み取れませんでしたが、ローテーションで警戒しながら御曹司のお坊ちゃんと交流すればいい……のよね? 普段よりもランクが高い(EX)依頼だし、気合が入ります。
ドローミです。 今回も宜しくお願いしますね。 部室に公爵令嬢が居るのですが、セニャ殿の勝利は揺るぎないですよね。 (どう見てもウィル伝家の伯父か伯母のご息女) 校長なんて吹けば飛ぶのです_
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー ジョセフさんの行き帰りの護衛はローテで警戒ー…でいいのかな 外に出ての肩車(したい人いる…?)をするならより索敵に念をいれたほうがいいかもだけど 個人の行動では前に提案したハーブ関連のことがあるので ハーブ園でなにかするのと侵入してくる魔獣や亜人の迎撃をするよていだよ
美少年がいると聞いて(主に背後が)居ても立ってもいられずにやって来た。 ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 ・・・えっと、この美少年を手取り足取りで筋骨隆々な騎士にするって事でいいんだっけ?(すっとぼけ)
遅くなったけどセニャ・リーラントよ。 依頼が成立して安堵してるわ。 これでジョセフが無事に戻ることが出来る……のよね?
ハイスピードキャスターのバンビですわ。 道すがら英才教育を施しましょう。将を射んと欲するならまずは弟君からですわ。
シューターのロイ・アウレアです。よろしくお願いします。 地道に護衛をして…その他はまだ未定なので、追々考えますね。
>リーラントさん おう、任せておけ! ジョセフきゅn・・・もといジョセフ君は無事に護衛してみせるぜ! 帰る途中に、騎士の心得でも説くとするかな。 あと、リーラント領に着いたら大型魔獣・オーガ・オーク討伐の助っ人でもさせてもらおうか。
セロンガードです。 よろしくお願いします。 わるいことがなんの事なのかにもよりますが、ひとまずは普通に遊びたいですね。
まあ、とにかく、最速こそが最善と教え込む予定ですわ。セニャ様の思想とも合致していますし、 よもや怒られることはないと思いますが、将来的な支持基盤は作っといて差し上げましょう。
ん?移動が完了してから、敵は出ますか? おはようございます。 【質問】 Q1 使用される馬車の御者は僕たちが代行しますか? Q2 リーラント領までは、一般人が徒歩で移動できる距離でしょうか?(野営を行わないで) >皆さん 帰還時に馬車を利用しますか? どなたかが肩車するなどして、徒歩にて行いますか?
A1 しても良いわよ A2 無理だと思うわ
回頭ありがとうございました。