【学乱】炎に消える伯爵家
馬車猪
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シナリオID:1014
オープニング
クリーパーを打ち倒すのも魔獣の群れを退けるのも全て授恵者。
だが、時代が下るにつれて人は増え組織化された。
今では土地と人を直接支配する者こそが強者であると、彼等は心から信じていた。
●貴族派である以前に
娘が飛び出したとき、驚き怒りはしたが活発さを喜ぶ部分もあった。
しかし今は恐怖すら感じている。
「今しかないのだ」
冒険者の成長速度は異常だ。
娘の消息を知るため人を派遣したときのことを今でも夢に見る。
最も信頼する部下が、子供向けの御伽噺にも似た英雄譚を持ち帰ったのだ。
「放置すれば手遅れになる」
彼は貴族派貴族だ。
大きな変化は好まない。
が、最近の冒険者の成長速度は好悪の問題ではない。
「今すぐ首輪を嵌めなければ全てが変わる」
帝国の語らずの智者のような、単身で部隊に匹敵すると思われる強者が在野に多数出現しかねない。
王家は楽観視し過ぎている。
実際に力を持つ者が上位者に唯々諾々と従うなどあり得ない。
我等がその根拠だ。
邪悪であるから反抗するのではない。
力があるから欲のないふりをせず王家に対抗出来るのだ。
冒険者も必ずそうなると、彼は自分自身を基準に考え決めつけていた。
「伯爵様」
忠実な部下が、部下として許される最も強い抗議を行う。
王家の影響が強い冒険者ギルドに手を出すのは、有力な伯爵家にとっても危険な行動だ。
部下は忠誠心故に主を諫めようとしている。
「露見しても問題がないよう手を打った」
パンクリアース学園へ移動中の冒険者を襲い、捏造証拠を押しつけた上で放置する。
冒険者がいくら強くても、火まで使って奇襲すれば十分勝てるはずと考えていた。
「土地と人を直接支配する者こそが強者なのだ」
ナハティガル伯爵は、先手を打ったつもりであった。
●捕縛まで1分。鎮火まで10分でした
「2年前はそんな考えが主流でした」
焦げ臭い宿屋の一室で、煤まみれの冒険者ギルド職員が貴族派の心理を解説している。
「今も全く同じ考えの貴族もいはしますが」
目端の利く貴族なら、急激に強くなり活躍も派手になる授恵者の存在に気付いている。
今ここにいて、放火と放火犯を鎮圧した冒険者達もその典型例だ。
職員が無機質な視線を横へと向けた。
頑丈な縄でぐるぐる巻きにされた放火犯の横には、『冒険者が学園で企てていた陰謀の証拠』が転がっている。
もちろん捏造ではあるが完成度は異様に高い。
「冒険者に期待する貴族だけでなく、冒険者を危険視する貴族も現れたということです」
聞き上手な職員と一部冒険者の手により黒幕は判明している。
ナハティガル伯爵家。
始まりの百家の流れを汲む名門であり、代々政治に長けた人材を輩出しているので位以上の影響力を持つ大物だ。
「ですので」
消えて貰いましょう。
職員は異様な達筆で『ナハティガル伯爵が冒険者と職員の暗殺を指示した証拠』を作成しながら淡々と言う。
瞳孔が開いている。どうやら職員は職員で怒り狂っているようだ。
「手筈はこうです」
その1。放火犯を王都にある伯爵家の屋敷に放り込む。
その2。放火犯を追いかけてきたという名目で屋敷に侵入する。
その3。抵抗を排除しつつ今完成した証拠を、執務室や隠し部屋で見つける。
その4。騒ぎに気付いてやって来た衛兵に事情を伝えるか、衛兵が来る前に襲撃の痕跡を消して立ち去る。
作戦としては非常に強引で乱暴だが、ナハティガル伯爵ほどの有力者と普通に交渉等すれば負けるのはこちら側なので仕方がない。
これはあくまで自衛。
宿ごと焼き討ちされて陰謀の首謀者にされかかった被害者による、精一杯の反撃なのだ。
「今から攻め込めば護衛は少ないはずです」
伯爵がいない場合でも、本拠にいくらか戦力は残っているはずだ。
「皆さんが屋敷に突入してから10分後に、衛兵が屋敷に踏み込むよう手配します」
屋敷の制圧に成功すれば、冒険者が多少派手にやってもなんとかすると職員は断言する。
「これは売られた喧嘩です。高値で買ってあげましょう」
舐められたら殺せとは言わない。
殺されそうになったから報復する。
これは、そんな単純な理由の依頼である。
解説
マスターより
リプレイ
超重量級の太刀を片手で構え、ケン・Z・ブラッドリーは染みついた煙の臭いに閉口する。
「はぁ……まったく。これだから腐りだした権力者は面倒くさいんだよな」
気持ちを切り替える。
自然と表情が厳しくなる。
「放火の首魁がいるというタレコミがあった。無駄な抵抗せず首を出せ!!」
夜明けまで遠い夜の闇に、猛々しい声が響き渡った。
「ちょっと! 抜け駆けは許しませんわよ」
実家へ襲撃することになってしまったパトリツィア=レイネス=ナハティガルが鏖殺路線は許しませんわよと無意識に盾を上下させる。
「んんっ……、パトリツィアですわ!! お父様に問い質したい件があり急ぎ戻りました。どうせ聞いてますわよね。開けろとは言いませんから姿を現しなさい!!」
聞き取り易く、それでいて遠くまで響く声だ。
政治でも戦場でも上に立つ者に相応しい声に、屋敷がにわかに騒がしくなる。
(誰も出てこない。……話し合う気がないのは本当に残念ですわ)
パトリツィアは男爵家を飛び出して今は冒険者をしている。
だから実家に与えられる猶予はこれで終わりだ。
「やっちゃってくださいまし」
静かな夜が、戦場に変わった。
(今回はこちらに関係者の人も居るし、冒険者ギルドって後ろ盾もあるわ。やられたからにはやり返さないと)
イーヤ・レプリスは微笑んではいるが魔力は禍々しく脈動している。
「新しい入り口を作ってあげるわ」
赤々と燃える巨弾が分厚い門に突き刺さり炸裂する。
縦にも横にも広い門は巨大な破壊力を真正面から受け止めてしまい、爆発に抵抗しきれず罅が入り外側から押し広げられて無残な金属製オブジェと化す
「頑丈だな。狙われる心当たりは十分ってか?」
ケンが失笑する。
予想以上に頑丈ではあるが、ケン達冒険者から見れば金の無駄遣いだ。
「王国の伯爵ともあろうお人が、ギルドに喧嘩を売る意味を理解できなかったのかしら」
冒険者の中には帝国の高位貴族(の後継者候補)やゴールディの幹部候補まで、各国の有力者が少なくない数入り込んでいる。
アウレーリア・フォン・ネーベルベルクもその1人だ。
「これは我がネーベルベルク伯爵家、ひいては帝国への挑戦でもある。――さぁ、誰が強者か教育して差し上げましょう?」
罠に付き合うつもりはない。
エーテルを集めて高めた魔力を爆炎へと変えて、未だ障害物としては機能していた門の残骸を幅数メートル分吹き飛ばした。
ケンが首狩刀を肩に担いで疾走する。
警報が無数に仕掛けられ、足止めの罠まで仕掛けられている前庭を文字通りに踏みつぶし盾で残骸を押し退けながら玄関へと迫る。
「どこか一箇所は破れるだろ。そらお返しだ」
闘気槌が屋敷そのものを狙う。
絶大な威力が直径15メートルの範囲に薄まらずに直撃。
鉄が仕込まれた扉がひび割れ、常識的な範囲の強度しかなかった壁に人間が通れる穴が開いた。
「畜生っ、王党派のカチコミかぁっ!?」
ウォーリア、キャスター、ヒーラーからなる3人の傭兵が、貰った金の分は働こうと1階の玄関近くで待ち構える。
「っ」
「おい光縛封を早くっ!?」
振り返ったキャスターは、相棒の右胸に突き立った矢に気付く。
普段なら胸の防具で止まったかもしれないが、大急ぎで駆けつけたためいくつか防具がないのだ。
ヒーラーはとっさに術を切り替える。
矢を抜きながら治癒することで致命傷を避けることが出来たが、光縛封という物理前衛封じを使うのが遅れた。
(さすが貴族の本拠。やりにくい)
矢を射た直後のセロンガード・シュタインドルフが、屋敷の外で使っていた黒マントを投げ捨てる。
屋敷の豪華な内装は、攻め込む側にとって面倒臭い場所へ配置されている。
内装目当てに押し入る賊にとっては最悪な場所だ。
「火ぃっ!?」
傭兵授恵者が混乱する。
正体不明の男が躊躇いなく火種を取り出したのだ。
「やめろぉっ!!」
(先に焼き討ちしておいて何を言っているのだか)
屋敷の殺気立ち具合から眠ったままの者はいないと判断したセロンガードが、自家製の火炎瓶を素早く投げる。
固く美しい光沢を持つ調度品に当たって砕け、飛び散った油に火がつき燃え上がった。
「こんばんはー。意趣返しに来たよー」
まだ煙の勢いは強くないのに煙臭いコルリスが、壁に開いた穴をするりと抜けて傭兵達に襲いかかる。
30メートル近く駆けて即攻撃に移れるのはスキルの効果で、石のような質感を持つ突撃槍が微動だにしないのはコルリスの修練の成果だ。
「何故生きて」
「はい照合完了ー」
華奢で小柄な金髪幼女に見えても中身は20歳。
自分達がどれほど危険な目にあい、今もどれほど危険な立場にあるか十分理解している。
突撃槍から伸びる巨大光塊を槍ごと担ぎ、一件無造作に実際は素晴らしい精度で傭兵3人組を襲う。
「魔法っ!?」
盾がまともに機能しない。
槍がまとう魔力が、物理特化の防具をほとんどすり抜け傭兵の体と心に直撃する。
悲鳴をあげそうになるのを奥歯を噛みしめなんとか耐える。が、足が震えてろくに動けない。
「降伏するならあたしは殺さないよー。あたしは」
コルリスが言ったのは単なる事実だ。事実だからこそ、傭兵達は震え上がった。
●
壁の向こうから繰り出される穂先は、威力は授恵者に及ばないものの恐るべき精度であった。
「伯爵! 俺達に濡れ衣を着せようとした件について落とし前をつけてもらうぞ!!」
アルベルト=V=シュタールシュヴェーアの大音声は頑丈な壁を揺らすほどで、いざというときの仕掛けをまで使った男達も動揺させる。
(拙いな。このままじゃ時間を稼がれる)
ここは1階だ。
2階の奥にいると思われる伯爵が遠い。
伯爵を確保する前に衛兵が到着すれば、形勢不利とみた冒険者ギルドがアルベルト達を見捨てる展開になりかねない。
「仕方がないわね」
こんな状況でも色っぽいイーヤが、ギルドから貸与された照明で高い天井を照らす。
「時間稼ぎをお願い出来るかしら」
「任せる!」
アルベルトは迷わない。
切っ先が毒でぬらつく槍を盾で的確に防御。
長身の彼が振れば天井にも届きそうな大太刀を指の延長のように扱い、頑丈な壁の脆い箇所を貫き伯爵の手勢を撃つ。
「それがお前達の忠誠の形かっ」
吐き捨てるように問いかけ、戦闘開始直後に落とした松明を蹴りつける。
微かな黒煙をあげる炎が、毛足の長い絨毯を強く熱して新たな炎を生み出した。
「さあて、楽しくお料理しましょ」
イーヤが目指したのは厨房だ。
食用油を見つけるが独特の気配に気付いて隠し扉を発見。
蝶番の部分に光弾を打ち込んで扉を開けるのではなく取り外す。
「よい香り。お酒の趣味は認めてあげる」
アルコールが極めて多い銘酒の樽を蹴り転がすという罰当たりな行為が少し楽しい。
「人を焼き兎にしようとしたのだもの。おうちごと焼いても文句は言わせないわよ」
火の気配に気付いた別の傭兵1組が、厨房用の細い階段を駆け下りイーヤに襲いかかろうとした。
「殺しはしないから避難誘導をしてくれるかしら?」
本音であると同時に罠だ。
言葉を聞こうと思考の一部が裂かれた傭兵に、圧倒的な魔力で形作られた光弾が1人1つずつ飛ぶ。
魔法防御が低い前衛にとっては致命的で、魔法防御があっても生命が高くない後衛にとっても致命的な一撃が3回。
仲間を庇ったウォーリアが、複数の傷口と口から血を吐きながら倒れた。
「あらお上手」
傭兵ヒーラーが必死の思いで呼び出した光の六角柱。
それと比べれば豆粒のように小さな光弾が、光柱が存在しないかのように真っ直ぐに飛ぶ。
一瞬で消え去ってしまった光柱があった場所を、生き残りの傭兵が呆然と見上げている。
イーヤが落とした火種が油と酒精と結びつき、代々の伯爵家が仕掛けてきた罠ごと家を燃やす炎に育とうとしていた。
●
「まさか冒険者!?」
「白々しいわね。雇い主から聞かされていなくても、どんな状況かは分かるでしょう」
2階へ後退する傭兵3人を、アウレーリアは平然とした足取りで追っている。
「あれを使えっ」
見た目は豪華でも防戦に向いた間取りと、重く固い美術品を活用して簡易のバリケードを防ぐ3人組。
アウレーリアが見えなくなった直後に膨れあがる魔力を感じてその場から慌てて離れるが、着弾した炎ごと弾けた美術品の残骸に追撃された。
「罠は二重三重か」
しっかりとした造りの天井が、不自然なほど綺麗に剥がれて落ちてくる。
階段を上がった直後のアルベルトが、徹底強化されたダマスカス鋼製円形盾で受け流しつつ奇襲の仕掛けを切り刻む。
「応える気がないならそのままでいい。お前達の献身に相応しい主か考えてみろ!!」
帝国名門貴族で育った経験と戦術眼と幸運と何よりアルベルトの剛運があってようやく防ぐことの出来る猛攻だった。
なのに彼等が守ろうとするのは、火付けまで使う暗殺と陰謀を試みた凶悪犯だ。
伯爵の兵達は、反論する言葉を探せなかった。
「こちらですわ!」
防御側は時間稼ぎを目指して最も的確に行動した。
それでも、攻める側に屋敷を知り尽くした者がいれば無意味だ。
「冒険者か」
明らかに授恵者ではなく、しかし権威だけでなく人格的な圧を感じさせる男が護衛と共に待ち構えていた。
「やはり野蛮か」
「俺たちが野蛮?」
ケンが鼻で笑う。
主を逃がすために時間を稼ぐ覚悟を持っている男達が、ケンの威圧でまともに動けなくなる。
「だったらてめぇはただの犯罪者だろうが」
怒鳴りはせず、しかし内容は痛烈だ。
「他者より強者が上に立つのはわかるぜ。だけどよ……力にはそれ相応の責任があり、人の上に立つものはその下の者の支えでもって上に立てるんだろう」
「導くのが貴族だ。その為には非常の手段を使うしかないこともある」
己の正しさと手段の汚さを確信した声だ。
ケンは舌打ちする。
「ただ他者を支配するだけの強者は貴族とは言わねぇ。欲にのまれた卑族だ。そんな腐った膿なら燃えちまえ」
階下から登ってくる煙と熱が、対決の場を染めていく。
「お父様、いえナハティガル伯爵」
パトリツィアは依頼をうけた冒険者として1枚の羊皮紙を掲げる。
「証拠は揃っています。なんと言おうがお父様が私をも殺そうとしたのは事実。他の冒険者まで含めて殺そうとした報いは受けてもらいますわ」
体が熱い。
授恵者ではない護衛達は息をするのも苦しそうだ。
伯爵も気力だけで平然としたふりをしているが、いつまでもは続かないだろう。
「諦めないのであれば後は後勝手にどうぞ。私は、これから駆けつける衛兵にこれを突きつけて言っておきますわ。私達を焼き殺そうとして証拠隠滅を図られたと」
降参しないのであれば名誉も命も諦めろと、パトリツィアは伯爵だけでなく護衛達にも要求した。
「そろそろ行かせてもらうぜ」
「やれ!」
伯爵が命じる。
護衛は、完全に命を捨てる覚悟でケンと主の娘を包囲しようとする。
「馬鹿野郎が」
「ブラッドリーさん、火が回るまで時間はないぞ」
アルベルトはこの戦場で初めて刃の向きをずらした。
手加減しても両断しかねない非授恵者達を、即死ではなく重度の打撲傷に留めて床へを叩き付ける。
「お初にお目にかかりますわネーベルベルク伯」
淑女ではなく戦士の礼をして、アウレーリアがフードをずらす。
煌めく金髪は背後の炎に照らされ美しく輝き、翠玉のような瞳は炎も凍えるかのような冷たさだ。
「帝国の人間に知られるなど、隙だらけですわね」
光縛封による不意打ちがこの場の4人を覆う。
傭兵ヒーラーによる会心策だが、アウレーリアの強化された光弾によりあっさりと消滅させられる。
「自力救済を宣言したいところだけど勘弁してあげるわ。今よりもっと酷い目にあうでしょうから」
フードで髪と顔を隠す。
見下ろす彼女の視線の先で、ケンが乱暴に伯爵を取り抑えている。
「まだ策があるって顔だな。まったく悪党が考えることはどこも同じか」
ロープを使って最下級の罪人を扱うときのように伯爵とその部下達を拘束する。
「どういうことだ?」
「ハッ、すぐに分かるさ。ほらとっとと歩け。俺達と違って骨まで焼かれちまうぞ」
ケン達は悠々と壁と床を破壊し、火が完全にまわりつつある屋敷から脱出した。
●
時間は数分ほど遡る。
今回最も派手に燃やしたのはコルリスである。
安全性に優れた生活魔法の代わりに、セロンガードの一品を見本に油と火種を使って庭に火を広げた。
広大な庭が炎に覆われる。
赤々と輝き周囲を熱し乾かし炎上させる炎は、衛兵を呼び寄せると同時に不審者を照らし出した。
「やはりいましたか」
照らし出してもすぐには認識出来ない水準の、見事過ぎる隠業を使う者がいた。
それも捜波を連続行使するセロンガードにかかれば真昼の黒装束のようなものだ。
非授恵者の隠密としては飛び抜けて優れた男も、隠密の技と授恵者の能力を兼ね備えたセロンガードには敵わない。
コルリスに進路を塞がれた直後にセロンガードに組み付かれ、抵抗しようとするが片手で完全に押さえ込まれて全身をまさぐられる。
興味深そうに見守るコルリスの前で、セロンガードは一見して読めない書類を服の中から回収した。
「符丁ですね。証拠の隠滅の指示書かと」
とっさに自害しようとした隠密の顎を固定し毒を取り上げ歯と歯と間に大きなものを挟む。
隠密が呆然とするほど手慣れていた。
「伯爵を政治的に無力化するには証拠が弱いかもしれません」
「ふっふー、あたしは騎士ではないから、目的の為なら結構手段を択ばないんだよ♪」
コルリスはにんまりと笑い、火事直前の屋敷から拝借した金庫を両手で掲げた。
●
未だ夜は明けず、しかし事態は収束へ向かっていた。
押っ取り刀で駆けつけた衛兵と冒険者ギルド関係者が現場を封鎖し、遅れてやって来た伯爵家の人間と小声で何かを話し合っている。
伯爵は伯爵としての礼遇で、しかし外部との連絡のとれぬ場所へ連れて行かれている。
「力持つ強者は力なき下の者のためにその力をふるうもんだろう。だからこそ、尊とばれ敬われるんだよ。それをなせるから貴い人……貴族だろう」
俺も少しは貴族に期待していたのだなと、ケンはほろ苦く笑った。
「耳が痛いですわ。本当に、これからどうなるのやら」
パトリツィアは被害者であると同時に事件を解決した者の一員であり、加害者の家族という複雑な立場にある。
貴族としてのナハティガル家に止めを刺すことも、どうにか延命することも出来るはずだ。
だから悩ましい。
「あーこんなところに密書がー」
打ち合わせ通りコルリスが証拠を見つけた。
有力すぎる証拠に、詳しい事情を知らされていない衛兵達も察した。
朝日が昇る。
悪事に荷担していないメイドや執事達が、焼け落ちた邸宅を呆然と見上げていた。
マスターコメント
ショートシナリオR普通 報酬:多い8 / 6〜8人
2021年06月15日 23時11分55秒 公開
参加者
相談掲示板
まだアイコンがないけど。 即製ウォーリアのコルリスだよ、宜しくね~♪
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 今回は、伯爵と護衛と傭兵を斬ればいいのか? とにかく暴れるぜ!
ウォーリアのパトリツィア=レイネス=ナハティガルですわ。此度は我が家の出来事にお手をお貸し頂きありがとうございます。 出来れば、手を貸してる傭兵だけ撃破出来れば嬉しいのですが……お父様、何故こんな事を。
ヒーラーのイーヤよ、よろしく。 宿で休んでたら突然火をつけられて悪党にされる。 しかも貴族様の勝手なご都合で。 運よくボヤ程度で済んだし、犯人も捕まったわ。 けど死人が出てもおかしくない事をしたんだから、相応の報いは受けてもらわないと。 ……と言いたいけど、そこにご令嬢様がいるとなればちょっとやりづらいわね。 どうするかは相談の行き先次第ってことにするわ。 まぁ、現状だと私が淑女なのは17時30分までって事を教えてあげるレベルね。
エリザだ。よろしく頼む。 これ傭兵やなんかの情報はPL情報のようだねぇ。とりあえず全力で暴れて、どこに落としどころを付けるかを決める感じなんだろうか?
シューターのセロンガード、参上致しました。 レッツファイア…私の火炎瓶が唸りそうですが、 本当に燃やしてしまっても良いのですか?
キャスター、アウレーリアです。宜しく。 ……えぇと。受けておいてなんですけど、良いのね? 焼けと言われれば如何様にでも。ただ、範囲は決めておかないと野火の如く燃え広がるわ。 目標は更地?それとも、制圧したと示せるように屋敷は残しておいた方が良いかしら。 作る死体の数も、0~13体のなかで線を引いておいた方が良いと思うの。 さぁ、どうします?
やりたい放題やられたんですもの。此方もやらねば格好がつきませんわ。 抵抗するものだけ撃破しておけば、屋敷も制圧出来ると思いますわ。 そしたら、屋敷一つ程度焼いてしまって構いませんわ。 机とペンがあれば政治は出来る……お父様の教えです。故に今一度全部焼いてしまって、やり直してもらいましょう。
>ナハティガルさん ・・・了解した。 斬るのはともかく、遠慮せずに焼いて良いんだな? とは言っても、俺は炎系のスキルを持っていないのでたいまつでも持っていこうと思っているぜ。
>ナハティガルさん 本当に良いの? ……そう、ならなるべく人的被害が無い様に心がけるわ。 >潜入方法 ギルド職員案では放火犯を追いかけてきたって名目で押し込むだけど、パトリツィアさんがいるなら「火急の用で戻ってきたから屋敷に入れてほしい」って事で屋敷内部に入れないかしら? もちろん、パトリツィアさん次第だけど。
っとごめんなさい。 よく見たら鍵だけじゃなくて鎖まで巻いてあるし、無理そうね。
おはよー! まあ後の為にも、伯爵には生存して貰うのがいいのかな? お庭に可燃物多数らしいから、先に着火しちゃえば向こうの護衛の一部は出てきてくれそうな? (結果的にどこかは開けてくれる) 手品は覚えてみたけど、証拠品(偽)は使うー?
ええ。もう覚悟はしています。 私はナハティガル家の令嬢の前に冒険者ですから。 >潜入方法 確かに、先に焼いて仕舞えば鳴子も燃えますわね。 私が中に入れて欲しいと言えば、入れても貰えるかしら?でも鎖まで解くかはわかりませんね。気を引くことはできると思いますわ。
とりあえず、突入は深夜でよろしいかしら? 後は放火した所を、出てきた連中を叩きのめしてから開いた所に潜入し、2階を目指す。 2階も制圧したら執務室を漁って証拠品を掲示。で、燃え盛る中衛兵に証拠を提示。 そんな流れでしょうか。
屋敷を焼くのは既定なのね。それじゃあ、なるべく人的被害の無いよう工夫するわ。 初手で勢いよく火を着け過ぎると、突入が困難になったり証拠品が燃えてしまう恐れがあります。 まずは示威行為も兼ねて庭だけ焼き払い、建物への着火は流れを見つつやっていきましょう。 ……十分聡明ならば、庭を焼かれた時点で無駄な抵抗はしない筈だけれど。 きっとそうもいかないわね。全て灰になるまで気付かないわ、きっと。
顔出しができてなくてすまん ウォーリアーのケンだ よろしく頼む まぁ、燃やすのは既定路線だしうまく燃やそう とりあえず、夜襲しかけて傭兵と伯爵を無力化してボコればいいのかな? 今回の騒動でいろいろ言いたいことがあるけど少しここらでガス抜きさせてもらおうかな
まだ白紙~。 多分ねー、正門なり裏口なりは武器で殴るか、アウレーリアさんに1回だけスキルぶつけて貰うと通れるようになると思うの。 庭に火をつけてしまえば、傭兵1組と護衛2人は出てこざる得ないよね。 PL情報だけどあたしたちが考慮しなくても、変わらず。 パトリツィアさんが身分を明らかにしてくれるなら、傭兵は投降してくれるかも? 庭さえ燃えれば、屋敷は焦げるくらいでOKと思うよ。 証拠品(偽)はあたしが引き出しにはさむのでいいかな? パトリツィアさんがする? あとねー、爆炎だと着火できないから松明かランタンを~。 生活魔法持ったから火打石は要らないよ。
基本的には、この実力者揃いのパーティーなら小細工無用の正面突破で暴れてもらうのがいいと思いますわ。 ガス抜きのつもりで大暴れしてくださいませ。 証拠品に関してはコルリスさんにお任せしますわ。引き出しに挟んで頂けて? ランタンは私持ってるので、着火もしときますわね。