少年は、少女の涙の夢を見る。

蓮華・水無月

コメント 15

シナリオID:908

オープニング

 お願い返して、と泣いた少女に、己の罪をどうしようも無く自覚した。


●
 その日、ギルドを訪れたのは一見して14~16歳ほどの少年だった。

「僕に、剣の手ほどきをつけて頂きたいんです」

 依頼内容をそう告げた少年の名は、ルークというらしい。思い詰めたような黒い瞳が印象的だ。
 どういう事か、と依頼の詳細を求めた受付嬢にルーク少年が語った所によれば、彼の住むシルキンス村から歩いて半日ほどの場所にある森の奥深くに入りたいのだと言う。しかしその森には最近になって狼の群れが現れるようになり、おいそれと近付けないのだとか。
 こくり、受付嬢が首を傾げた。

「それで、剣の手ほどきを? 討伐依頼ではなく?」
「はい。……あぁ、いえ、討伐依頼もそのうち村で出すかもしれないんですが、そうじゃなくて僕は……僕が、行かないといけないんです」

 幼なじみの大切な物を取りに行かなければならないのだと、それはどうしても自分自身が行かなくてはならないのだと。思い詰めた瞳を揺らしたルーク少年に、そうですか、と受付嬢は頷いた。


●
 それは、ほんのイタズラのつもりだったのだと言う。幼なじみの少女がいつも身につけていた首飾り、細い銀色の鎖にたったひとつだけ小さな青い石がぶら下がるそれを、ルーク少年はたまたま手にする機会があったのだ。
 それが、彼女の亡き母から譲り受けた品であることは、村の者なら誰でも知っていた。彼女がその首飾りをどんなに大切にしているかだって、皆ちゃぁんと知っていて。
 だからあれは、魔が差したのだ。少女の家に届け物に行った時、たまたま首から外してテーブルに置いてあったそれを見て――手に取ってしまったのは。
 いつも遊ぶ森の奥の秘密の場所に、そうして隠した。少女が首飾りを探して困って居たら、一緒に探してやるフリをして隠し場所を教えてやれば、それで済む話だと。

 ――けれどもそれは、森に狼の群れが現れたと言われて叶わなくなった。

 必死に首飾りを探す少女に、自分の罪だと告白しない訳にはいかなかった。絞り出すようにそれを告げたルークを見る少女の眼差しが、驚きに、怒りに、絶望に――軽蔑に染まるのを見た。

「返して……! 返してよ、お願い……母さんの首飾りを返してよ……!」

 ルークを睨みながら泣いて訴える少女の声に、事態を知った両親はルークを叱り飛ばした。村中から非難と軽蔑の視線を浴びて、ルークは自分が恐ろしい事をしでかしてしまったのだと理解して震えた。
 森には狼の群れが居る。おいそれと、首飾りを取りに行くことは叶わない。


●
「――だから。僕が、自分で行かないといけないんです。――僕のせいだから」

 幸いにしてというべきか、父親のお下がりの古びた短剣なら一振り持っている。それを見せられた受付嬢は、護身用程度にしかならなさそうだな、と思ったが指摘は避けた。
 お願いします、と頭を深々と下げたルーク少年に、募集はしてみましょうと受付嬢は頷いた。そうして張り出した依頼書の隣には、こんな依頼書が張られている。

【シルキンス村近郊の森に現れた狼の群れの退治依頼】

解説

◎目的 ルーク少年に剣の手ほどきをつけてやって下さい。 ◎目標 ルーク少年が1人で問題の首飾りを探しに行けるようになれば、依頼目標は達成となります。 父親からお下がりで譲られたという、刃渡り30cm程の古い短剣を一振り所持していますが、それ以外の武器・防具は一切所持していません。 村の子ども同士の喧嘩ならそこそこ強い(3回に2回は勝てる)、というのが本人談。 武器を扱った経験はないが、家の手伝いで毎日畑仕事はしているので、そこそこ体力はあるでしょう。 なお、所持金は依頼料ですべて使ってしまったようです。 ◎その他 シルキンス村からは、別途で狼退治の依頼が出ています。 ルーク少年はそれを知りません。 何もなければ4人ほどの冒険者が、皆さんが村に到着した3日後にやって来て、数日中には依頼を完了するでしょう。 狼の群れは15頭ほどとの事。 仔狼を見たという情報もあり。 冒険者が戦うのであれば、さほど苦戦する事はないと思われます。 ◎登場NPC ルーク……  15歳。  黒髪黒目の、勝気で冒険心の強い少年。  普段は歳相応に困っしゃくれた性格をしているが、今なら冒険者達の言葉には素直に従うでしょう。 ソアラ……  16歳。  はしばみ色の髪と瞳の、花が好きな女の子。  妹が生まれた時に亡くなった母から譲られた首飾りを大切にしている。

マスターより

初めまして、またはご無沙汰しております、或いはいつもお世話になっております、蓮華・水無月と申します。 今回はこんな探し物? な依頼でお邪魔いたします。 単純な戦闘依頼としては難易度は決して高くありませんが、少年をどう扱うかが分かれ道。 出ているという別依頼も気になるところですね。 それでは少年を助けるため、または少女の涙のために、お気が向かれましたらどうぞお気軽に、お助け頂けますようよろしくお願い致します。

リプレイ

 さてその日、シルキンス村の一角には剣術指導の冒険者達と、その指導を受けるルーク少年の声が響いていた。
 と言っても、いきなり実践は教えられない。まずは基礎体力作りだと、エルゼリオ・レイノーラはジョギングや腕立て伏せ、ストレッチ体操を少年に教える。

「農作業とは身体の動かし方が違うからね」

 激しい稽古の後の筋や関節の疲労回復、障害予防や調整力を高めるためにも必要なのだと説明すれば、少年は真剣な顔で頷いた。そうして、ぎこちなく身体を動かす。
 それが終われば、いよいよ実技だ。得意な戦い方で交代交代に剣の使い方を教えようと、訓練メニューは考えてあった。
 ――が、少年へ特訓できるのは別依頼を受けた者が来る直前までだろうと、サマエラ=フォリウムは眉を寄せる。彼女とエミリア・シバは別依頼を同時に受けてきたが、それでも3日後にはあと2人がやって来るのだ。
 その状況と村の都合も考えれば、長引かない程度にするのが望ましい。だから――という理由は、未だ別依頼の事を知らない少年には秘密だが、早い方が良いだろうと言うサマエラには異論無いようだ。

「倒すことが目的でないなら」

 ゆえにサマエラは、心構えも含めて少年に語った。そもそも狼に出会わないのが最善だが、戦わざるを得ない時もある。
 ならば、

「短剣ならば、こう……」

 まずは実際に構えて、動きを視認させる。正面から攻撃を受け止めるのでなく、逸らして受け流すイメージだ。

「コツは、相手そのものを逸らそうと、思わないこと」

 噛み付きなら鼻先、引っ掻きなら爪先。攻撃の末端を逸らすだけなら、力も最小限で済む。
 やってみろ、と少年自身にも短剣を構えさせ、身体でその動きを覚えさせた。可能ならすれ違いざまに軽くでも斬ってやれば消耗もさせられると、告げれば少年の瞳に力が宿る。
 そんな少年に「ただし、欲張りすぎないように、な」と釘を刺して、サマエラは適時手を取って動きを修正しつつ、その型を教え込んだ。水分補給も忘れずに、ある程度板に付くまで練習と、軽い打ち込み相手も務める。
 それが終わればララベル・サン・ディーベルが、短剣で素早く急所を狙う使い方や、木等を背にして数が多い狼に囲まれない様に戦う立ち回り方を教えた。

「ほら、そこは短剣をしっかりと構えて、懐に飛び込む様にしっかり踏み込んで」
「はい!」

 抑えるべき所、注意するべき点をしっかり伝えるララベルに、少年も真剣に頷く。その表情に、ララベルは胸中で微笑んだ。
 少年が何をしたのかは、依頼書では知っている。意中の相手――恐らく――の気を引きたいからと、取った方法は問題だが、こうして凄く後悔しているなら力になってあげたい。
 ゆえに笑顔になりつつも、特訓は遊びではないのだと厳しさも忘れないララベルである。幸い、少年の返事も動きもキレが良い。
 そんな村から離れた森の中では、エミリアとキオルティスが先行して探索していた。今回、冒険者達は別依頼までにこっそり狼を退治して、少年の身の安全を図る事にしたのだ。
 とはいえ、

「ルークちゃんが狼のいる森に踏み込むという、覚悟自体は満たしてあげたいのよね……欺瞞かもしれないけれど」
「いや、大事だと思うよ」

 ほぅ、と頬に手を当てて呟くエミリアに、キオルティスは同意を返す。返しながら、狼の足跡や痕跡を看破し発見すべく、視覚と感覚を研ぎ澄ませる。
 少年にとって大切なのは、狼を倒す事ではなく、首飾りを無事に取り戻す事だ。その為なら危険にも立ち向かえる覚悟を、問われている。
 だが本当に危険に――それも狼の群れに立ち向かうのを、見過ごす事も出来ないわけで。

「……居る。近い、かな」
「あら。早速ね」

 気軽な口調で真剣に、頷き合って発見した狼へと向かう。なるべく多くの狼を屠るため、キオルティスは持参した干し肉でさらに誘き寄せようと、手に持ち大きく振り回した。
 風が匂いを運び、獣の気配が強くなる。これ位かと、キオルティスは干し肉を放って細剣を取った。
 と同時に巨大な光塊を細剣に纏わせて、身近まで迫ってきた狼目掛け強く振り下ろす。ギャイン! と悲鳴が上がった。

(まず1頭)

 倒した狼を数えておかないと、残数の目星も付けられない。ゆえに胸中でカウントしつつ、次の狼へ素早く移動するキオルティスから少し離れた所で、エミリアも踊るように両手の剣で三連撃(トリプルファング)を繰り出す。
 そうして倒した狼達は、残らず隠蔽スキルを駆使して形跡含め、出来るだけ隠しておいた。うっかり誰かが森に入って見られたら、計画が台無しだ。

「夜になったら声帯模写で狼の遠吠えとかこっそり森の方からやれば、誤魔化せるかしら?」
「良いんじゃないかな」

 頷き合いながら痕跡が残っていないか確かめて、2人はまた探索を再開する。そんな森の出来事を、知るはずもなく特訓に精を出す少年を見つめ、エルゼリオはふぅむ、と考えた。

(幼馴染の大切な物を自分で取りに行かなくちゃならない、かぁ)

 依頼書で通り一遍の情報は得ても、詳しい事情までは分からない。けれども、かなり思い詰めているように見えるのが、何とも気にかかる。
 でもなぁ、と考えているうちにララベルの指導も一段落したようだ。なら次はまたボクだね、とエルゼリオは少年に声をかける。

「少し休んだら、次は怪我した時の応急処置の方法とかを教えるよ!」

 出血している傷口を清潔な布で直接強く押さえ、暫く圧迫する直接圧迫止血法は、基本的な止血法だから多くの出血が止血可能だ。剣術ではないが、森で傷付いた時には必要となる知識だろう。
 そう告げると、はい、と少年は頷いた。思い詰めた瞳のまま。


●
 人目を避けての討伐は、夜間にも行った。
 これは誰にも気取られてはならないと、サマエラは辺りを探りながら考える。同じく捜波・改で狼達を索敵していたララベルが、反応を見つけた、と身振りで仲間達に合図した。
 ララベルが察知した通り、少し行くとすぐ狼が見えた。成狼が2頭に仔狼が1頭――親子か。
 彼我の視線が絡み、場の殺意が増した。あちらも、冒険者を敵と認識している。
 サマエラが即座に範囲強化(レゾナンス・オブ・ヴァロー)を発動した。と同時に、1番大きな個体が地を蹴って距離を詰めてくる。
 指先をそちらに向け、魔矢を放った。ほんの少し勢いが緩み、だが狼はそのまま駆けてくる。
 ララベルがその軌道に割り込み、両手の細剣と共に狼を睨み据えた。

(ルーク頑張ってるけど)

 この短期間で覚えた戦い方だけでは、流石に太刀打ち出来ないだろう。戦いに慣れている冒険者だって、対処するなら複数で向かう場合が多い相手なのだ。
 だから。

「……お前達に恨みは無いけど、喰らえ疾風三連突!」

 気合一閃、疾風の如くララベルの放った三連撃(トリプルファング)を、受けた狼がギャン! と悲鳴を上げた。その隙にサマエラが霊刀に眩い光を宿らせ、渾身のエーテルブローを放つ。
 続けざまにもう1頭の成狼にも魔矢の指先を向けながら、サマエラは仲間達に声をかけた。

「必要なら、回復も回そう」
「ありがと!」

 それに叫び返しながらララベルは、再度の三連撃(トリプルファング)を放った。目の端に仔狼が見えたが、手は止めない。
 ――やがて森に静寂が戻り、冒険者達は深い息を吐いた。とまれ、3頭減らした。
 倒した狼達を、痕跡まで綺麗に隠しておく。残り頭数を計算し、わずかに見える空で時間を確かめ、次の探索へ。
 合間に声帯模写で狼の啼き声を演出し、翌日への疲れを残さない程度で切り上げ森から帰ってきた冒険者達は、まだ夜だというのにジョギングしている少年と遭遇し、はっと息を飲んだ。慌てて身を隠そうとするが、それより早く少年が気付いてしまう。
 足を止めた少年は、こく、と首を傾げた。

「何処かへ……?」
「うん、ちょっとね。――それより」

 そんな少年に肩をすくめつつ、エルゼリオは少し厳しい顔を作って少年を見る。特訓は1日の時間を決めて取り組み、無理のない範囲で実行するよう、最初に言ってあった。

「無理したって続かないからね。ずっと続けて行く事で、必ずキミの力になる筈だよ」
「――はい。すみません」

 その注意は覚えていたのだろう、叱責に少年は素直に肩を落とす。その瞳と顔に、焦燥が見えるのがやっぱり気になって。
 ふ、と表情を和らげたエルゼリオは、囁くように問いかけた。

「どうして、危険な森に1人で行きたいの?」

 その問いに少年が語ったのは、概ね事前情報と変わる所はない。だが、その口調や表情、村に来てからの雰囲気を思えば、察せられるものはある。
 ――彼には『狼がいる森に1人で行く勇気』が必要なんだろうな、と思った。少年を苦しめているすべてに向き合うために、きっと。

(でも、1人で狼と遭遇したら一溜まりもない筈)

 だから――やっぱり狼退治をしなきゃ、と決意を新たにするエルゼリオに送られて、少年は大人しく帰っていった。そうして夜が明けて、今度こそちゃんと休んできた少年にキオルティスが教えるのは、素早い敵や突撃して来る敵への、実践的な対処の仕方だ。

「まっすぐ走って来るばかりじゃないからね」

 むしろ正面から突進してくるだけの相手は、レアだろう。殊に群れを組んでいる時の狼は、それ自体が1つの生命体のように走り、回り込み、飛び掛かり、喰らいつく。
 だから、

「宙に浮いた敵が喉元に直接攻撃してきそうな時は、そのまま動かずに喉元を突く」
「そのまま……」
「宙に居る間は相手も無防備だからね」

 もちろん容易くはないが、対処方法を知っているだけでも違う。こんな風にね、と実際に構えて動きを見せると、少年が貪欲にその動きを追った。
 そんなキオルティスの指導が終われば、エミリアが実践編を買って出る。

「もちろん、ルークちゃんが反応できる速度から始めるから安心してね」

 鞘に入れたままの細剣を構えて言ったエミリアに、少年の目が複雑な色を帯びた。が、三連撃(トリプルファング)を3方向から襲い掛かかるように操り、慎重に寸止めで攻撃してみせると、悔しそうな色に変わる。
 幾度も立ち会ううちに、どうにか少年もその動きに対応出来るようになっていった。かわし、短剣で逸らし、喉元を狙い――

「狼は頭が良いのよ」

 やがて疲れ果て、汗だくで地に沈んだ少年にエミリアは教えた。持久戦で相手を弱らせたり、1頭が襲い掛かってから他が倣うよう時間差でくるなど、群れゆえの利を活かした動きもする。
 だからこそ厄介だ、けれど。

「逆に、隙さえ見せなければ襲われる確率は減るはずよ」

 そう、戦闘以外の移動時の警戒を怠らないよう、注意を言って聞かせる。その言葉を少年は、頷いて聞いていた。


●
 3日目。
 何とか森の狼退治も間に合い、少年の戦い方も少しは様になってきた。明日には別依頼の冒険者2人も来る――時間切れだ。
 いよいよ森に向かう少年を、冒険者達は入り口まで見送った。

「危険だからこそ、キミは1人で行かなければならないんだよね? それがキミなりの贖罪……」

 それが出来ない限り自分自身を許す事も出来ないのだろうと、確かめるエルゼリオに少年は瞳を伏せた。思い詰めた瞳――今は緊張の色も帯びている。
 そんな少年にララベルは、それらしい木彫りの像を取り出し、いかにも大切そうに手渡した。きょと、と瞳を瞬かせた少年に、にっこりする。

「気休めかもしれないけど、狼よけの呪いがかかってるから。目的は戦う事じゃないもんね……ルーク、頑張って」

 それに真剣な顔で頷いて、少年は1度、森を見上げた。そうして森に踏み入って行く、少年の後ろ姿をエルゼリオは祈るように見守る。
 少しして、少年の姿が完全に消えた所で冒険者達は顔を見合わせ、頷いた。

「行きましょ」

 そう言いながらエミリアが隠密状態となり、森に入っていく。同時にキオルティスも、ハイディングを使って少年の後を追い始めた。
 それは、声帯模写を使える者達で協力して狼の声真似をして、まだ森に狼がいると思わせるためだ。――そして少年の覚悟と勇気を試し、見届けるため。
 見つからないよう細心の注意を払って少年を追うと、その後姿は森を幾らも行かないうちに見えた。狼を警戒する歩みはゆっくりで、時々びくっと立ち止まっては辺りを見回している。
 これ以上近付くのは危険か、とかろうじて視認出来る距離を取った。寄ってこられたり見つかりそうになったら、ハイディングで隠れなきゃね、とエミリアは少年の姿を見つめる。

――アォォォ……ッ

 時折ララベルが、キオルティスが、そしてエミリアが狼の啼き声を発してみせると、少年が不安そうに辺りを見回した。一方向からだけではなく、キオルティスが疾風足で動き回り声の方向に動きを見せると、少年の動きもまた忙しなくなる。
 狼の存在と恐怖を、感じているのだと遠目にも判った。だがそれでも、森の奥へと進む足は止まらない。
 古びた短剣を縋るように握り締め、確実に。小さな池のほとりに立つ古木――その幹のうろから、きらりと光る青い石の首飾りを取り出すまで。
 その歩みは、決して止まる事はなかった。


●
 無事に戻ってきた少年を、冒険者達は森の入口で出迎えた。確かに見届けた覚悟と勇気を、キオルティスは心から褒め称える。

「立派にやり遂げたね」
「……良く、がんばったな」

 サマエラもしっかりと少年の目を見て頷き、微笑んだ。その衒いのない称賛に、初めて少年の表情が年相応に緩む。
 そんな少年に釘を刺すように、ただし、とキオルティスは言葉を続けた。

「強さには優しさも必要だ。レディは護るモノであって、困らせるモノじゃないよ」
「……ッ」
「それを忘れなければ、キミはもっと強くなれるさ」

 そう言いながら少年に渡したのは、1輪のカモミール。首飾りを返す際にはこの花と共に心からの謝罪をするんだよ、とアドバイスをして少年の背を優しく押す。
 それに頷いて、少女の家へと歩き出した少年の背中を、サマエラは眩しく見つめた。首飾りを無事に返すまでは見届けようと、その背を追う。
 ――少年の始まりは、誉められたものではない。だが悔いからだとしても、覚悟を持って成し遂げた事は本心から認めたいと、サマエラはそう思うのだ。
 少年が、少女の家の扉を叩く。その表情はとても緊張していて、断罪を待つ人のようだ。
 少年と同じく、扉が開くのを固唾を飲んで見守っていたララベルが、不意に「あ」と声を上げる。

「狼退治の冒険者にお願いして、狼退治したって口裏合わせて貰わないと」
「なら、おねえさん達があっちの仲間に話しておくわよ」

 そんなララベルを安心させるように、エミリアはウィンクした。彼女も、狼退治メンバーの一員でもあるのだ。
 エミリアの言葉に、ララベルが胸を撫で下ろした。同時に、今度はエルゼリオが押し殺した声を上げる。
 扉が、開いた。少女の険しい顔が現れる。
 その表情が少年の差し出した首飾りと花で緩むのを見届け、依頼は終わりを告げたのだった。

マスターコメント

いつもお世話になっております、または初めまして、蓮華・水無月です。 この度はご参加頂きまして、本当にありがとうございました。 少年の成長を促す? 物語、如何でしたでしょうか。 皆様のお心遣いや指導の数々、なるほどー、と頷きながら精一杯紡がせて頂きました。 ルーク少年の今後はどうなるかまだ判りませんが、きっと、皆様と過ごした3日間は彼の中に息づくことと思います。 でも、もう悪戯はやらないで欲しい。 このシナリオが皆様にとって、楽しんで頂けるものでしたら幸いです。 またのご縁がございましたら、どうぞ宜しくお願いいたします(深々と
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:少ない5 / 4〜5人

2021年05月26日 10時07分39秒 公開

成功

相談掲示板

  1. エミリア・シバ

    おねえさんはシーフのエミリアっていうわ、よろしくね。 うーん、この年代の男の子ならこういうことしちゃうのかしらねぇ……。 少年は、まあ鍛えてあげるとはして、鍛えてハイ終わりっていうのもねぇ、狼の群れも15頭もいるそうだし。 別途ででてる狼退治の依頼にどうにか介入して、数を減らしてあげる、とかしてあげる?とか思ったけどどうしたものかしらね。

  2. サマエラ=フォリウム

    ゴブリン、ヒーラー。サマエラだ。 よろしく頼む。 そうだな、依頼書が隣り合っていることもあり、退治依頼の方にも気付けるだろうから、 そちらにも関わってはおきたいが、関わり方に悩むな……。 全員一度に剣を教えるのも難しいので、その時手隙の者が狼を減らしに行くというのも、 可能ではありそうに、思う。 ただ、狼というのも、同族間で情の深い獣。 群として手負いにしたことで、全滅させるまで却って残りが凶暴化したり、しないだろうか。 単に心配し過ぎかも、しれないが……。

  3. エルゼリオ・レイノーラ

    ヒーラーのエルゼリオ・レイノーラです。 今回は宜しくね! 『ルーク少年が1人で問題の首飾りを探しに行けるようになれば、依頼目標は達成』 …って事になってるけど、 狼の群れ15頭ほどが徘徊してる森の中に放り出す訳には行かないよねぇ(汗) 剣術を教えるっていっても、短期間で教えられるのは剣術の初歩の初歩…せいぜい護身術くらいだし。 剣術を教える過程の実地訓練として、ボク達と少年で森に行って狼と戦闘⇒実地訓練で狼の数を減らした後、別途依頼の狼退治と連動する形で少年を森へ⇒少年には気付かれない様、ボク等はひっそりと見守る ――位しか思い付かないかも。

  4. エミリア・シバ

    ふと、ルーク少年に狼を倒させろ、ではないのよね。 事前に減らすじゃなくても全部倒しちゃっててもよかったりするのかしらね? ルークちゃんの覚悟とかを少し台無しにしてしまうかもしれないけれど…… それとは別にどんな訓練をつけるべきかしらねぇ。 防具は持ってなくて、古い短剣しか装備がないのよねぇ……。

  5. サマエラ=フォリウム

    そう、だな。安全最優先とするならば、 先に狼を全滅させてから、ルークにはそうと伝えず依頼を完遂……等でも、 (伝えてしまうとルークからの依頼としては成否が微妙になりそう) 状況的には、問題無さそうに思う……心情面、だけだな。 訓練の方は、所持は短剣のみ、心得は無し、となれば、 攻めを考えるより、守り……受けるよりも、受け流す方を重視かな、と個人的には。 体力さえあるなら、流し際に軽くでも斬り返すことを覚えられれば、 持久戦に持ち込んで、一頭追い払うことくらいは……できる、かもしれない。

  6. ララベル・サン・ディーベル

    僕は、シーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、よろしくね! そうだね、ルークに気づかれない様に、狼の数かなり減らしておく(全滅もあり?)かなとは僕も。 大事なのはルークが無事で、首飾りを無事に見つける事だと思うし。 訓練は、僕が教えるとしたら、大人数に囲まれないで戦う方法とかそっちかなぁ? 短剣だと攻めるなら、懐飛び込んで行くしか無いけど、相手が狼だと向こうの方がそう言うのと食いそうだからね…サマエラの受け流す方重視とかいいと思うよ。

  7. キオルティス

    遅くなって申し訳ない。 シーフのキオルティス。キオでもルティスでもお好きに。 今回は宜しくね。 俺も予め狼の数を減らす(もしくは淘汰しておく)のに賛成かな。 もし残すとしてもこの人数で簡単に往なせる程度にしておいて 影から見守る(手助けする)orルークさんと共に戦う、でも良いかな…と。 依頼としては2つ共、俺たちで受ける…と言う方向でも良いのかな、とか。 出来るかどうかは分かんないけど、ね。 訓練については、基本の動作にプラスして、1人で戦う際の智恵や行動、 立ち回り方なんかも教えられると良いかもね。まぁ、こんなには無理でも 最低限、サマエラさんの言う受け流しメインで教えるので良いかな…と思う。

  8. キオルティス

    連投ゴメン。 そう言えばルークさんは1人で行かなきゃいけないんだったね。 そうすると共闘は無理か。 ルークさんから見えない遠距離からの支援程度なら大丈夫、かな?

  9. エルゼリオ・レイノーラ

    >別依頼 『何もなければ4人ほどの冒険者が、皆さんが村に到着した3日後にやって来て、数日中には依頼を完了するでしょう』 ――って記載されてるから、ボク等とは別の冒険者が請ける事になるんだと思う。 『何もなければ』って事は、『何かあったら(狼が全滅するとか)』来ないって事かも。 >狼退治 少年には『(例え一匹でも)狼が居る森に1人で行く勇気』が必要なんだと思うし、 ボク等で全滅させちゃうのは避けたいかな?とは思う。 一匹位は残しておいて、少年が森に行く時にボク等は密かに見守る方向でどうかな? 全滅させる場合は『狼全滅』の事実を少年や周囲に伏せたまま、少年に森へ行って貰うとか? >訓練 ボクは基礎体力作りとか、(剣術とか関係ないけど)怪我した時の応急処置の方法とかを教えられたら良いな、って思ってるよ~。

  10. キオルティス

    ちょっと思い付いたんだけど、狼はルークさんが修行中に全滅させといて 俺たちの誰か(俺でも可)が声帯模写を使って、如何にも今もまだ狼が居るよ …って演じるのはどうかな。 一番安全かつ、ルークさんの覚悟と勇気も試せると思うんだけど。 幾ら何でも狼の気配すら無いのは拙いかな…って思って。 >訓練 これをどのくらいの期間、やるのかも決めておいた方が良いかな? 3日後には討伐部隊がやって来るのを考えると、実質2日位しか 使えないよね。…とすると、あんまり詰め込み過ぎない方が良いかな。

  11. エミリア・シバ

    >狼 あ、声帯模写ならおねえさんも持っているから、キオルティスちゃんと二人でやれば複数のこっているように思わせれたりするかしらね? それなら先に全滅させておいて、黙ってるという選択肢をとれば行けるし。 夜中に遠吠えの真似とかもしておけば、村の人にも誤解を与えれそうだし。 あとは、減らした時の狼たちの挙動が予測がつかないってところかしらね。 しつこく村まで追ってきても困るし、危険と思って普通に森から逃げ出す可能性もあるし、と どのみち、もう明日のお昼には出発だし、狼の扱いは統一しておかないとまずいかしらね? おねえさんは全滅に一票入れておくわね、自分で言っておいてどうかしらねと思っていたけれど、キオルティスちゃんの声帯模写案が出たので、いけるかもと。 >訓練 んーそうなのよねぇ、あまり日数ないから、おねえさんは実戦形式での相手になろうかしらね。 みんなが教えたものを試す的な。トリプルファング応用すれば、疑似的に3方向から襲い掛かるみたいな練習もできるかなって。

  12. サマエラ=フォリウム

    声帯模写か、なるほど……気配を残せるならば、確かに全滅させても意義はあるか。 全滅までは4人で数日かかるということで、先の通り、 その時手隙の者が向かって、事を進めていく……と思って、大丈夫だろうか? 訓練は、では私は受け流しの技術優先で、多少なりとも形になるよう教えていこう。 期間は、そうだな……討伐部隊が来るまでとして、 もし討伐依頼も受けられたりで、期間に余裕ができたとしても、全滅叶えばすぐ向かおうか。 あまり長引くのも、ルーク以外の村人にとって、良くはないしな。

  13. ララベル・サン・ディーベル

    >声帯模写 それは良さそうだね。 僕も使えるから、手伝わせてもらうね。 >狼 僕も全滅に1票で。

  14. エルゼリオ・レイノーラ

    >狼 了解!じゃ、全滅させる方向で異論ナシだよ~。 ボクは昼間は少年の訓練、夜間は狼退治するようにするね。

  15. サマエラ=フォリウム

    ん、夜間に向かうのか では……私も訓練の合間だけでなく、夜間にも向かおうか 一応、ショートスリーパーも持っておく

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0