その彩りの意味
革酎
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シナリオID:859
オープニング
リーンエス王国西部、ディズル大湿地帯に程近い商業街メーンス。
ここに、東ディズル手工芸商会の事務支所が置かれている。
支所長を務めているのは、リザードマンの部族ルアダルで工房組合代表を兼任するイリオである。
ある日、イリオは昔馴染みの商人から奇妙な壺を譲り受けた。曰く、数十年前にリザードマンの術師が焼き上げたという代物らしいが、それ以外の由来は何ひとつ分かっていない。
「また随分、奇妙な模様だなぁ。けど、綺麗だな……俺は嫌いじゃないぜ」
たまたま手工芸商会の隊商に随行して護衛任務を務めていたヒューマンの戦士アーギス・マーレイが、保管棚に置かれていた件の壺を手に取り、側面に描かれている幾何学模様をじろじろと眺めた。
リザードマンが作る手工芸には様々な品があるが、この様な整然且つ複雑極まりない幾何学模様を、わざわざ塗料を用いて彫り込むという工程は量産性に欠ける為、市場では余り流通していない筈だというのがイリオの持論だった。
「んじゃあ、誰かが家庭用に作ったとか、贈呈用に作った特別な品ってことかい?」
「恐らくはそうじゃないかな。まぁ専門家に見て貰わないと何ともいえないが、その珍しい模様は芸術性という観点からも結構な出来だと思う。工芸品というよりは、美術品という扱いの方が良いかも知れないね」
ふぅん、と生返事を返しながらアーギスは壺を保管棚に戻した。一見すれば名も無き陶芸家が魂を込めて作った芸術品といったところなのだが、術師が焼き上げたというところに多少の物珍しさを感じる。
イリオ自身は、この壺を売りに出すつもりは無いらしい。少なくとも彼の感性からすれば、他人に売るよりも自身の手元に置いて鑑賞したいという気分にさせる逸品なのだろう。
ところがその夜、思わぬ事件が出来した。
イリオとアーギスが仮眠を取っていた事務支所に居直り強盗団が押し入ってきたのである。忍び込んできた当初は単なる盗人共に過ぎなかったのだが、物音に気付いて事務所を見に来たアーギスとイリオを相手に、小剣の切っ先を突きつけてきた。
しかしアーギスは授恵者であり、且つ戦場でそれなりの経験を積んできた戦士だ。小剣を振るう盗人が束になってかかったところで、全く歯が立たなかった。
尤も、賊は何故か全員、片手に大きめの水袋を携えていた。この水袋が明らかに防御の妨げとなっており、若干戦い辛そうにしているというのも彼等にとってはマイナス材料となっていたようだ。
「じゅ、術師殿ッ! ここは逃げましょうッ!」
「お、おぅ……だが、あの壺は必ずやこのヌイール様が貰い受けるぞッ!」
盗人もとい強盗共の首領らしき男は興奮の余り、自分が名乗ってしまったことにも全く気づいていなかったらしい。しっかり己の口で正体をバラしつつ、泡を喰った様子で部下共々逃げていった。
●謎に迫れ
翌日、アーギスは件の壺を抱えてイリオと共にメーンスの冒険者ギルドへと足を運んだ。ヌイールなる人物について冒険者ギルドが情報を持っていないかを確認する為だ。
受付嬢のネイオ・フリンクは、カウンターの奥から持ち出した文書の山を漁りながら、恐らくメドゥの指先に所属する死霊術師ではないかと小首を捻った。
そのネイオの言葉に、イリオはピンと来るものがあった。
「そういえば、その壺を譲ってくれた商人が妙なことをいっていたな」
どうやらこの壺には奇妙な曰くが纏わりついている模様だ。イリオが聞いた話では、この壺を手元に置いていると、何かの拍子に女の幽霊が現れるということだそうだ。
分かっているのは、その幽霊の出現時刻が夜で、特によく冷える晩が比較的多かったかも知れないということであった。
すると今度は、アーギスがははぁ成程と首肯した。
「幽霊の出る壺を死霊術師が狙っている……ってこたぁ、この壺は単なる芸術品じゃなく、降霊術か何かの触媒になるか、或いは紋具そのものってところだろうな。この町に、魔術師を生業にしてる冒険者が来てたと思うんだが、彼らに一度見て貰えないかな」
或いは、この壺の謎について一緒に調べて貰える冒険者を雇い入れてみては、とネイオが勧める。イリオも、ヌイールなる死霊術師に毎度毎度狙われるのは真っ平御免だとばかりに、ネイオの勧めに従って冒険者を募集することで腹を固めた。
一体、この美しい壺にはどの様な謎が隠されているのだろうか。
解説
マスターより
リプレイ
深更のメーンスは、基本的には他の町と同様、大抵の住民が眠りに就いている。
酒場のある歓楽街以外は暗闇と静けさが支配している筈なのだが、東ディズル手工芸商会の事務支所がある一角だけは、少しばかり様子が異なった。
三人の冒険者達が、襲撃者たる賊の一部を叩きのめし、数分とかけずに制圧していたのである。
「これで大体、外の連中は全員ってぇとこですかねぇ」
ひと仕事終えたといった調子でオゴスは両掌を軽く打ち、埃を払う仕草を見せた。その足元には縄で縛り上げられた賊が数名、寝転がっている。
「陽動にしてはちょっとお粗末でしたわね……まぁどうせ他に本隊が居るのでしょうけど」
傍らではイーヤ・レプリスが呆れた様子で小さく肩を竦めた。
オゴスも当然、たった今捕縛したこの連中が本命の賊だとは思っていない。別動隊が事務支所の裏手に廻り込んでいるのは既に察知済みだったが、屋内には仲間の冒険者達が待ち構えている。何の心配も無かった。
「あ、始まったみたい」
エルシー・サリバンが赤い尻尾をぴょこんと跳ね上がらせ、事務支所が入っている建屋に振り向いた。先んじて屋内へ走らせていた栗鼠の相棒ティムの視界を通じて、事務支所内で賊の本隊と仲間の冒険者達が遭遇したことを知ったのである。
「この連中は冒険者ギルドからアーギスさんが引き取りに来るまで俺が見ておきますから、先に中へ戻ってて貰って良いですよ」
オゴスが右手親指で建屋を指すと、イーヤとエルシーは同時に頷き返して駆け戻ってゆく。程無くして、事務支所内から悲鳴とも怒号ともつかぬ叫び声が微かに鳴り響いてきた。
「エルシーさんが、買い手が付いたから近いうちに遠くへ売られるという噂を流したとかいってましたね」
オゴスは何ともいえぬ表情でかぶりを振った。そんな根も葉もない噂に簡単に引っかかるとは、相当に間の抜けた賊の様にも思えたのである。
その事務支所内では死霊術師ヌイールとふたりの手下が、人数で上回る冒険者達に包囲され、まさに万事休すの様相に追い込まれていたのだが、しかしイーヤとエルシーが駆け込んできた時には、力による制圧とは少しばかり状況が異なっていた。
「あ~あ、どうすんだよ。割れちまったじゃないか」
事務支所内の陳列棚前で、ルチル・プルメリア・グレイハーツが頭蓋面の奥からすっかり呆れ返った視線をヌイールに叩きつけている。
実はつい先程、ヌイールは衝撃波の様な攻撃魔術を誤って発動させ、陳列棚を大きく揺らしてしまった。
これは決してヌイール自身の本意ではなく、後方から忍び寄ったシニング・W・テュパラに大声で驚かされた為、つい手か口が滑って、発動直前に抑えておいたエーテルの波動を解き放ってしまったのだ。
「いや、っていうかさ、マジでそんなにビビるか? 死霊術師なのにあり得ねぇだろ、普通」
驚かした当人のシニングですら呆れる程に、ヌイールの無様さは際立っていた。こんな奴が構成員だというのだから、メドゥの指先も色々だなと考え込まざるを得ない。一応念の為、割れたのはヌイールの責任だとプレッシャーをかけてやったが、何だか気の毒に思えてきた。
「お前の責任だッ! 大事な壺をどうしてくれるッ!?」
同じくロイ・アウレアも、びしっと指差してヌイールを声高に責め立てた。
見事な棒読みだった。
相手がもっと知的で手強そうであれば芝居にも身が入ったであろうが、ヌイールの想定以上の間抜けっぷりを受けて、もう適当で良いかと手を抜く始末だった。
一方のヌイールは憐れな程に青ざめて狼狽しかけていたが、手下が見ている手前、余り情けない姿を晒すのもどうかと思い直したらしく、一応は平静を装って咳払いをひとつかふたつ。
「ふ、ふふん。割れたとしても問題は無い。しっかり濡らして月光に浴びせれば、本来の効果は発揮する筈なのだからな」
冷静さと高い知性をアピールしたかったのだろうが、ものの見事にポロりとやらかした。ヌイール自身もその直後、あ、拙い、やっちまったとばかりに顔面が硬直していた。
「ねぇ……もう良いかな?」
事務支所内の木椅子にのんびりと腰を下ろしていたアスカ・タチカゼが、愛用の太刀『飛鳥』壱號の柄を軽く叩いて立ち上がる。事前に決めてあった通り、退路を断つ為に裏口付近へと位置を取ったが、わざわざ戦闘陣形を取るまでも無く、勝敗は既に決していた。
その間にレイヤ・ダライ=カホールが箒と塵取りを持ってきて、陳列棚前の床を掃除し始めた。念には念を入れて、ヌイール達の周辺に稲妻の如き魔術の光帯を走らせてその動きを封じたものの、この状況ではこれ以上やることが無く、後片付けでもやっておこうと思い立ったのである。
「あー、逃げるんだったら危ないので、ゆっくり歩いて下さいね」
逃げるなと釘を刺すのも馬鹿馬鹿しく思えたレイヤだったが、マジカルポケット内に隠しておいた本物の壺を取り出すと、ロイが綺麗に拭き掃除している陳列棚にそっと戻した。
ヌイール達が、えぇ嘘ぉ!? と驚きの表情で目を剥いているのも、全く気にならなかった。
その数分後、ヌイールとふたりの手下は敢え無く御用となり、縄で縛り上げられた挙句、何故か靴を脱がされて裸足のまま木椅子に座らされていた。
すぐにでも尋問に取り掛かっても良かったのだが、折角だからオゴスが戻ってくるのを待とうということになり、それまで隠れていた事務支所長イリオが出て来て一同にお茶菓子を配って回った。
「あ、そうそう。織物工房の娘さんからまた色々、近況とか聞いてみたいなぁって思ってるんだけど」
「明日は工房休みだから、明後日にでも顔出してみると良いよ。きっと喜ぶと思う」
エルシーとイリオが当たり前の様に世間話を交わす。事務支所内には緊張感の欠片も無かった。
そうこうするうちに、オゴスが戻ってきた。外で捕えた賊は、アーギス・マーレイと冒険者ギルド職員達が無事に連行していったらしい。
●幽霊と降霊術
冒険者達は尋問の前に、ヌイールが二度と件の壺に手を出さぬ様にと釘を刺した。
「あたいらが相談役に居るってぇのに、よく手ぇ出す気になったねぇ」
ルチルが頭蓋面をヌイールの間近に寄せて、不気味に笑う。続けてエルシーが、
「壺のことは忘れてね。そうしたらボコボコにされた姿は秘密にしてあげるよ」
と晴れやかな笑みを浮かべつつ、凄みを帯びた視線でヌイールと手下共を鋭く射貫いた。ヌイールとふたりの手下は脂汗を浮かべて大きく頷き返す。瞳の奥に浮かんだ恐怖の色は本物と見て良いだろう。ルチルが何気に呟いた、相談役だから賊に対して手段は選ばぬという台詞もボディブローの様にずっしりと響いているらしい。
「やけに大袈裟に用意してたみてぇだが、全部沈めて水浸しにするってのとは違うのか」
幾分拍子抜けした様子でシニングは陳列棚に戻された例の壺を眺める。では、どの様にすれば女の幽霊が現れるのか。
イーヤがツボ押し用の健康棒、レイヤがくすぐり目的の鳥の羽、オゴスが鍼灸にも使えそうな暗針をそれぞれ手にして、ヌイールや手下達の足の裏に狙いを定める。三人の意図を即座に察したヌイールは、情けない程にあっさりと口を割った。
「成程……この幾何学模様が、実は降霊術紋具としての機能を発動する為の術式紋様だったのですか」
改めて件の壺を手に取り、ロイは感心した様子で低く唸った。ヌイール曰く、壺表面を濡らした状態で月光に晒せば、特殊な降霊術が発動し、特定の死者の霊を召喚することが出来るらしい。
「なぁんだ。お湯入れて煮てみたりとか、そういうのんじゃないんだ」
小型ハンマー片手にすり寄ってきたアスカに、ロイとイリオが引きつった笑みを返した。アスカは許可さえ貰えれば、叩いてみることも考えていた様だ。
イリオは兎も角、壺愛好家を自認するロイは、流石にそれはやめておいた方がと、やんわり諫めた。
「でも、制作者は分からないのよねぇ……」
昼間に方々を駆け回って情報を集めていたイーヤが、数枚のメモを読み返しながら小首を傾げた。壺自体にもそれらしい情報は残っていない。イリオに譲ってくれた商人も、入手先の部族名しか知らないという始末であった。その部族名はフィラムだった。
「フィラム……って確かルチルさんご出身の?」
イーヤが仕入れてきた情報を受けて、レイヤはルチルへと視線を転じた。レイヤ自身はディズル大湿地帯の中でも西方生まれだが、この手の紋様が描かれた壺は見たことが無い。染料や材料の土から制作元の土地が分かるかも知れないとは思っていたが、まさかフィラムの名が出るとは想定外だった。
ルチルはルチルで、訝しげに首を捻っている。
「いや、こんな壺の話は聞いたこと無いね。うちの部族の誰かが、他所から譲り受けたのかも知れない」
夜明け前には早速フィラムへ馬を走らせると頷いたルチルだが、それよりも今は、女の幽霊召喚に着手しなければならない。
オゴスが窓を開けて月光を呼び込み、水で表面を濡らした例の壺を、ロイが窓際の台上に優しく置いた。
すると程無くして、女のリザードマンの姿がまるで幻影の様に、ぼんやりと宙空に浮かび上がった。
まさに、幽霊である。
この女の幽霊は必死の形相で何かを口走り、しきりと周囲を見回していた。その顔つきが如何にも恐ろしげであり、一般人なら腰を抜かして逃げ出すかも知れない。
「何といっているか、分かりますか?」
「……ミゲリオ、というひとを探している様ですね」
ロイの問いかけに、読唇術を試みたオゴスが探る様な声音で応じた。骨灰らしき生々しい白色の壺――オゴスは壺自体の美しさと同時に、女の幽霊が見せる必死の形相が脳裏に焼き付いて離れなかった。
●夫婦の想い
翌朝。
フィラムとメーンス間を早馬で往復したルチルが事務支所へと姿を見せると、冒険者達とイリオが焼き豚と春野菜のサンドイッチで軽めの朝食を取っていた。
「ご苦労さん。何か分かったかい?」
シニングがルチルの為に取っておいたひと皿を差し出す。受け取ったルチルは、アスカが横へ詰めて空けてくれた食卓前のスペースに、木椅子を引っ張ってきて腰を下ろした。
フィラムにあの壺を譲り渡したのは、クラーヴという小さな部族だった。メーンスからは馬で小一時間程度の距離にあり、大湿地帯では東の端に位置する集落であった。
一同は件の壺を携えてクラーヴまで馬を走らせることとなった。ルチルは連続で鞍に跨ることになる為に尻が痛いとぼやいていたが、しかし事の顛末を見逃すつもりも無く、当然ながら一緒についてきた。
クラーヴ部族は壺を中心とした陶芸に秀でており、集落に辿り着いた時も、幾つかある陶芸工房からは窯から青天に立ち昇る灰色の煙が、幾条も目に付いた。
件の壺の成り立ちから、事情を知る者が居るとすれば老齢者であろうとの目星をつけ、アスカとシニングが長老や一部の老人達を広場に呼び集めてきた。
そこでロイが件の壺と、記憶の中にある女の幽霊を幻影という形で老人達に披露した。
「おぉ……ボニルタではないか」
老齢のリザードマンのひとりが懐かしげな表情で呻いた。続けてオゴスがミゲリオという名を問うと、その場の老人達は一斉に、苦い表情を浮かべた。
「ねぇ、何があったの?」
「良かったら、教えてくれませんか?」
アスカとレイヤが穏やかに問いかけると、長老のリザードマンが重い口を開いた。
曰く、女の幽霊ボニルタは数十年前、集落を襲ったクリーパーの餌食となって命を落としたのだという。ボニルタは、クラーヴ出身の魔術師ミゲリオの妻だった。
ボニルタの死後、ミゲリオは件の壺を制作した。後で分かったことだが、ミゲリオは亡き妻にもう一度会いたいという一心から、クラーヴでは禁忌とされている死霊術を駆使して例の壺を制作したらしい。恐らくミゲリオは、ひと目で死霊術と分かる様な紋具を作ってしまえば部族から追放されるばかりか、妻の魂までもが浄化されかねないと考えたのだろう。
そこでボニルタの魂のみを呼び出すことが出来る特定霊用降霊紋様を刻んだ壺を美術品として制作し、周囲の目を欺こうとしたと思われる。
「……んで、そのミゲリオさんは、今どこに?」
「死んだよ。壺の力でボニルタの霊を呼び出す前にな」
アスカに応じて、長老は吐息を漏らした。ボニルタが死んだ日の朝、ミゲリオとボニルタは軽い夫婦喧嘩で互いを罵り合い、ギクシャクした関係のままでクリーパーの襲撃が発生したのだという。
ミゲリオは、大いに後悔していた。最愛の妻たるボニルタ――生前の彼女に対し、最後に放った言葉が『愛している』ではなく、下らない罵倒だったことを、悔いても悔いても悔やみきれなかったらしい。
「だから、本当の心を伝えたかったんだね。禁忌を犯してまで」
ぽつりと呟いたアスカの左右で、ロイとオゴス、レイヤが静かに頷き合った。
ボニルタにミゲリオの想いを伝えてやろう。壺の由来を知った以上、立ち上がらない訳にはいかない。
その夜、冒険者達は再びボニルタの霊を召喚した。
場所は墓地。ミゲリオの墓の前である。
出現したボニルタは、墓標に刻まれたミゲリオの名を目にして呆然となった。その上でロイとオゴスがミゲリオが抱き続けた後悔の念を伝えると、ボニルタは何もいわず何度も何度も頷き、そして消えた。
それ以来、ボニルタの霊は二度と現れることは無かった。
メーンスに引き返した冒険者達は、イリオに件の壺を返した。
「ボニルタさんの霊は、もう現れないと思うよ」
イリオに事の仔細を告げたエルシーの表情は、どこか寂しげであった。
制作技法よりも、その経緯を知りたいと思っていたエルシーは、出来れば悲しい物語が隠されていないことを願っていたが、最後にはボニルタも最愛の夫の心を知り、静かに世を去った。そういう意味では、この壺を巡る一連の出来事は、良い形で終えられたといっても良いだろう。
「どうしてこう……美しいものには悲しいお話が付きまとうことが多いのでしょうね」
幾何学模様に彩られる白亜の壺をイリオが陳列棚に戻す様子を漠然と眺めながら、オゴスは誰に問いかけるともなく呟いた。勿論それはオゴスの主観的な感想に過ぎないのだが、誰も否定する気にはなれなかった。
ロイもオゴスと同様の想いを抱いていたが、イーヤは、これもまたひとつの人生の在り方だと妙に達観した調子で肩を竦めた。
「ところであのヌイールって奴ですけど……何となくアイーツとかサイームっていう名前の兄弟が居そう」
明後日の方向に飛んだ台詞を放ったイーヤに、冒険者達はただ苦笑を返すばかりであった。
マスターコメント
ショートシナリオR普通 報酬:多い8 / 4〜8人
2021年05月08日 10時44分57秒 公開
相談掲示板
レイヤ・ダライ=カホールです。 よろしくお願いしますね。 今回はこの壺の護衛と調査ですか… リザードマンの術師が手掛けた逸品、 複雑な幾何学模様といい、女の幽霊が現れるという話といい、 なかなかに気になる品ですね! いったいこれにはどんな物語が…しっかり調べたいところです。 あ、戦闘中に割れたりしたらいけません。 戦うときは気を付けないと、ですね。
シーフのオゴスです。どうぞよろしくお願い致します。 綺麗なものに纏わる依頼……。これは心躍りますね! ふふ。依頼を請けた仲間同士で相談や推理も楽しめたら、と思っております。 賊の水袋といい、幽霊出没条件の冷える晩というのも結露などの現象に関わってきそうですし、とりあえず水袋は用意しておきましょうか。
ヒーラーのイーヤよ、よろしく。 一応、東ディズル手工芸商会の相談役って肩書きがあるし、参加させてもらうわね。
シューターのロイ・アウレアです。 目と心の保養してくれる芸術的な品に魅かれて来たよ。 先に死霊術師ヌイールを徹底的に痛めつけ撃退、可能なら部下を生け捕りして 水袋の使用目的を聞き出すのはどうだろう? その際、ツボは隠すか偽物を支度出来たら騒ぎで壊す事無く行けそうだが…どちらにしても要相談で。 >水袋 単純に考えると、ツボに水を入れると何か反応するとか 表面を濡らすと別の模様が浮き上がるとか? >結露などの現象 うんうん、濡らす理由は…冷却かもしれないね。
情報屋のルチルだ。よろしく。 謎の多い話は是非とも検証したいものだ。 オゴスにそういった趣味があったのは意外だが。 壺の仕掛けを作動させる条件は「水で濡らす」で間違いなさそうだが、女の幽霊について詳細がわかってないから一度賊をとっ捕まえてからの方が良さそうだね。 ついでに何か知ってる事を吐いてくれたら上々。
死霊術師を締め上げる、水を濡らす。 この2つで答えはほぼ出そうね。 なら私はせっかくだし、遠回りでもしようかしら。 その壷を焼き上げたリザードマンの術士の聞き込みと、壷の模様をスケッチして聞き込み辺りね。 女の幽霊の顔が鮮明にわかる様子なら、それもスケッチして調べて見ましょう。 もちろん、死霊術師との戦闘にも参加するわよ。 回復がいらなそうならメテオライト2でも撃つわね。
水でぬらすか水を注ぐか、あるいは冷やす…? やっぱりそのあたりでしょうか。 そうなると詳しくお話を聞く必要がありそうです …光縛呪は持っていっときますね! あとは逃がしたりしないようにアーケインとか用意しようと思ってます。 あと、女の幽霊って、本当に幽霊なんでしょうか…? 実はこう、残留思念というか立体映像的なものとかかも。気になります。 わたしもせっかくなのでちょっと遠回りします。 模様についてはイーヤさんにお任せするとして、 ツボの原料や染料の種類から産地をある程度絞れないかな、と思って。 こういうの調べると、ちょっとワクワクしますね。
弓は索敵と戦闘のスキルがメインなので捕獲する方は皆様よろしくお願いします。 それっぽい偽物を支度か避難させておく兼はプレにしても良いかな? ツボは高い技術を要したようなので それ程のが作れる職人って形で絞り込めば、子か孫には辿り着けそうだね。 オレもどんな仕掛けがあるか色々と考えてて…考える事が楽しい。 どんな意味が有るか迄、辿り着けたら良いな。
わりぃ、遅くなった アタシはテュパラだ、よろしくな まぁ、族が皆してでかい水袋をもってきたってことは濡らすとかだろうな 沈めるってのもあるかも知んねぇが 元々無名だってことだし職人より術師のがあたりやすいかもしんねぇな 作品も数十年前の古いのらしいし老人世代に珍しい職人兼術者がいたかどうかを確認するのもいいかもだぜ
遅くなってゴメンね、ウォーリアのアスカだよ! うーん謎解きというか仕掛けとか考えるのはちょっと苦手かなぁ。 とりあえず賊を捕まえるって方向だからそっちをまずはしっかりやらせてもらって、壺についてはみんなみたいに情報集めるってよりかは実物を見て考えるようにしようかなって思うよ。 戦場をどう設定するかにもよるけど、室内とか閉所で戦うようならチャージングで後ろに回り込んで殺界で入り口ふさぐとかはできると思うな。
シューターのエルシー・サリバンだよ。よろしくね。 女性の姿が浮かぶのかぁ…離れて過ごす家族や恋人に晴れ姿を見せる為の投影機とかかな? 悲しい理由じゃないと良いな。 東ディズル手工芸商会の方々に会いたいのもあって参加したので 撃退もするけど、調査はもっと頑張るね。
>ロイさん ツボの偽物を用意するのは、破損のリスクがなく安心です。お願い致します。 偽物の準備が間に合わなかった時に備えて、幻影を作るスキルなども重宝しそうですね。 >ルチルさん そうですね、綺麗なものが好きです。 ついはしゃいじまって口を滑らせましたが、此処だけの話というやつにしといてください。 >個人行動 ヌイールはギルドからもマークされているとのことなので、ギルドになんらかの情報があるかもしれません。ちょいと調べてみます。
>幻影を作るスキル 良いですね!返信ありがとうございます。 似た形状のに布を被せそれっぽく置こうと思ってましたが、幻影ならそのものに出来るね。 投影時間が1分間なので相手が偽物と気付いた時の保険で支度しても良いな。 本物はマジカルポケットに預かって貰えたらと思ってますが、誰か取得してませんか? 無ければオレが取得しようと思ってます。 幻影は持ってますが、これはオゴスさんが仕度されますか?
あ、マジカルポケットなら覚えてますよ! わたしの方でしまっておきましょうか?
レイヤさん、ありがとうございます! マジポケをお願いしますね。 こちらは偽物と幻影の件を濃くしてプレを書きます。 (オゴスさんが幻影を支度されるなら、別件を濃くしますので言ってくださいね。)
俺は幻影のスキルを覚えいないので、ロイさんがご用意してくれるのでしたらその方が助かります。よろしくお願い致します。 レイヤさんのマジカルポケットで壺を守っていただけると、戦闘や捕縛の際に動くのがとても楽になります。ありがとうございます。
マジカルポケットで壺を守ってもらえるのは安心さが違うね。頼んだよ。 幻影使用中は動けないわけだから怪しまれないようにフォローを入れようと思うよ。 ロイとは同じシューターだから立ち位置が近くても不自然さはないだろうさ。 >オゴス はは、そういった話は内緒にするから安心してくれ。
ではオレが幻影を使ってルチルさんに守って貰いながら 「ふふ、本物はこっちだ―!(壁に投影)」とかしましょうか。 本物が安全なら多少の無理が出来ますから、お世話に成ります(笑み) 肝心の懲りさせるほどの手は浮かばないなぁ… 更に尋問も上手くないので…みなさま宜しくお願いします。 あ、偽物を割って「お前の責任だ!」と追い詰めるなら出来るかな? 上手く割れたらその流れで何をする気だったかは聞いてみます。
壁じゃないな…棚に投影ですね! 動きは皆様に合せると書きますからお好きにどうぞ。
偽物を割らせるのか……んじゃ、私はおどかしでもしよーっと そしたら、自然に割れたりすっかも?