【大変動】アダムと絶望の毒林檎
そうすけ
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シナリオID:797
オープニング
メドゥの指先幹部『緑の親指』アダムは、三つの蛇頭の断片と林檎の入った麻袋を肩に担ぎ、道なき道を切り開きながら、たった一人で原始の神殿に向かっていた。
瘴気が漂う暗黒の樹海に踏み入るにつれて、足元がじっとりと嫌な感じに湿り気を帯び、温度が急激に低下していく。雷のような太く恐ろしく鳴き声がするたびに、樹海が波打つように揺れ、頭上を覆う木々の葉から大粒の水滴がボタボタと音をたてて大量に零れ落ちた。
フードを被っていても関係ない。頭の先から足の先まで、全身ずぶ濡れだ。この体の震えは寒さからか、それとも恐怖からか。
おそらくその両方だろう。
目指す場所は、かつて混ざり物であった――古ゴブリンたちが暮らす村よりもずっとずっと南、禁忌の地だ。
古ゴブリンたちがけっして立ち入ろうとしなかった、いや、そもそもたどり着くがほぼ不可能なその場所に、いままた開き始めた時空の裂け目がある。
誰の記憶にも、どんな記録にも残っていないほど古い、神代の時代に建てられたと思われる石積のピラミッドは、雨風に削られて丸くなり、分厚く苔生して、封印としての役割を終えかかっていた。
「やっとついた。ここ来る、大変。『腕』はズルイ。魔法であっという間……。呪文、教えてくれてもいいのに」
鬱蒼とした樹海が開けると、まるで魔法のように空地が出現した。原始の昔、生け贄の儀式が行われていた広場だ。広場を囲む石造りの建物のすべてに宗教的側面があったようだが、いまは腐食して黒くなった草木の茂みに半ば埋もれ、高い林冠の影に覆われている。
中央にある緑色の小山、いや、封印のピラミッドの向こう側に、蠢く三つの異形の頭が見える。いまはまだ、こちら側に体を出しきれていないが、出てくればかなりの大きさになるだろう。
アダムは、ピラミッドの前に新しく作られた、骸骨の祭壇へ進んだ。
祭壇の前には『メドゥの左腕』がたった一人で立っている。
一点の染みもない火山帯の神官服を思わせる白いローブを頭からすっぽりとかぶり、身じろぎひとつせずピラミッドを見上げる姿はまるで幽霊のようだ。
背後にアダムの気配を感じているはずなのに、振り返りもしない。
「上手く行かなかったのね」
高くも低くもなく、熱くも冷たくもない、一切の感情を排した無色透明な声が事実だけを淡々と告げる。
『メドゥの左腕』が余計な前置きを口にしないのはいつもの事だ。
だからアダムも単刀直入に用件だけを伝える。
「もっと支配を強めないとダメ。力欲しい。新しい林檎、必要」
「……儀式を行う。三つの蛇頭の断片を」
アダムが骸骨の祭壇に三つの蛇頭の断片を置くと、『メドゥの左腕』がその横に鰐の胴の一片を置いた。
『メドゥの左腕』が炎の球を作りだし、意味不明の呪文を唱えながら祭壇の向こうへ投げる。
鮮やかな真紅の炎が、苔生したピラミッドの石を走りあがった。
思わず仰け反るほどの熱波が沸き起こる。
炎はピラミッドの斜面で四角く燃え広がると、真紅から目がくらむようなオレンジ色へと移り代わり、唐突に消えた。
空気が漏れるような鋭い音がして、ピラミッドの斜面に通路がぽっかりと開く。
「ヒッ……」
穴のような通路の向こうから、異形頭の一つがアダムを睨んでいた。
●
石舞台の上に立ったアダムは、古ゴブリンたちに『絶望の毒林檎』を次々と投げ与えた。
「ホラ、食べろ」
投げられたリンゴを手でうける者もいれば、下に落ちたものを地面を這うようにして拾う者もいる。その背を踏みつけアダムに「リンゴをくれ」と腕を伸ばす者もいた。
空腹だったこともあるが、村の古ゴブリンは『絶望の毒林檎』中毒になっていたのだ。
地獄絵図を眺めるアダムの顔に、恍惚の笑みが浮かぶ。
「リンゴ、食べる。チョット強くなる……。でも、きっと、お前たちに知恵ある者は倒せない。それでいい。時間を稼ぐ、チョットだけ。ククク……もうすぐ、もうすぐアレが出でくる。そうしたら、知恵ある者たちもドン・ゴーフルもオシマイ!」
『絶望の毒林檎』を食べ終えた白い蛇たちは、村を囲む輪を解き、赤い舌をちょろちょろ出しながら、時々聞こえてくる恐ろしい鳴き声に合わせてゆらり、ゆらりと体をくねらせている。
オモチャを探しているのだ。
白い蛇たちは、村の外に廃棄された食料(アダムは『絶望の毒林檎』以外の食べ物を捨てさせていた)目当てにやって来た野生生物と、それらを狙うクリーパーを見つけては、新たに得た力で切り刻んで遊んでいた。
一匹の白い蛇が、もたげていた鎌首を降ろし、二つに割れた赤い舌の先でアダムの頬に触れる。
「待て。順番に出発。大樹海は広いから、みんなで固まって行くと抜けられる。それはダメ。アレを見つけられてしまう」
全員でまとまって進撃し、一気にゴールディを制圧……と一瞬考えもした。
だが、冒険者たちは手ごわい。
大人数で移動すれば、いかに大樹海の木々が密で深いとはいえ、すぐにばれてしまうだろう。同じ、いや、こちらを上回る数を揃えてぶつかってくるはずだ。
そうなったら、先の戦いの結果からして、こちらが負ける確率が高い。ドン・ゴーフルを殺せなくなってしまう。
(イヤだ。ドン・ゴーフルを殺して死にたいのに……全滅、ダメ。絶対ダメ)
アダムは地団駄を踏むと、古ゴブリンたちを分け始めた。
「お前たちの半分と、もう半分の半分は神殿に連れて行く。残りの半分の半分は、もっと細かく分かれろ」
出来上がった班に、それぞれ白い蛇を1~3体ずつあてがっていく。
「そこのお前たち、先に行け。神殿から戻ってきたら、次、そっち。自分も一緒に出発する。お前たちは予備、村で待ってろ」
予備の古ゴブリンたちを村から連れ出すことになる前に、儀式が完了することを願うばかりだ。
アダムの願いに応えるかのように、異界の魔物が咆哮をあげた。
こうして最初に出発を命じられた数班が、三方向に分かれて北を目指し、少しずつ時間をずらして村を発っていった。
●
すでに何組かのパーティーが大変動の原因を突き止めるべく、サウゼル大樹海の北部に設置された前線キャンプを出発し、南へ向かっていた。
貴方たちはそのうちの1つだ。
いくつか夜を緑濃い天蓋の下で過ごし、幾度か北上してきた古ゴブリンや野生生物、ときにはクリーパーと戦いながら進んでいたある日、パーティーはいくらか開けた場所に出た。
4人テントが3つほど余裕を持って張れる空地に、久しぶりに見た日の光が降り注ぐ。さらには近くに小川が流れているらしく、涼し気な水音まで微かに聞こえてくる。
まだ日は高いが、貴方たちはここで一夜を明かすことにした。
それぞれ荷物を肩から降ろし、ひと息つく。
――そこへ。
あの大樹海全体を揺るがすような鳴き声が響いた。
思わず身をすくめてしまってから数十秒、ようやく鳴き声が途絶えたと思った瞬間、木々の根元を隠す大きな葉の向こうから火の玉が飛んできた。
直後、鉄の剣を振りかざした古ゴブリンたちが草木を跳び越え、冒険者たちに切りかかる。
敵襲!
誰かがあげた警告の声に、大木が倒れる大音が覆いかぶさる。
7メートル級の巨大な白い蛇と3メートルの白い蛇が、倒した木の向こうで鎌首をもたげていた。その間にいるのは――。
(この先にはいかせない。ここで死ね)
三つ角のゴブリンが、毒々しい色の林檎を貴方たちめがけて投げる。
解説
マスターより
リプレイ
――敵襲―っ!
突然、誰かが警告の叫び声を張り上げた。背負っていた麻袋を地面に降ろすギャメルの注意が草地の外へ向く。同時に腕が無意識に腰へ伸び、祭刀を構えていた。
「うわっ!?」
鋭い大鉈に薙ぎ倒されるように、大木が倒れてくる。とっさに横へ跳び退いたが、蔓や蔦がギャメルに絡みつき、まとわりついた。
「うへぇ……なんだ、これ?」
近くにいたハヤト=ガラン=ヴォルファングが手にする二刀を素早く振って、蔓と蔦を斬り払ってくれた。
「構えろ、ギャメル。また白い蛇と古ゴブリンたちだ。来るぞ!」
避けた木の幹が冒険者たちの頭上に漂い、粘っこい膠のような樹液を散らしていた。ハヤトの髪や耳にも淡黄褐色の汚れがついている。
ギャメルが帽子についた汚れを気にしていると、古ゴブリンの剣士が空に顔を向けたまま腕を伸ばして向かってきた。
何かを追って――。
「え、なんか飛んできた!? 林檎かアレ?」
形を見れば林檎そのものだが、普段口にしている林檎と違って色がなんとも毒々しい。
「……おいしいオヤツをわけてくれたってわけじゃなさそうだな。っと!」
林檎がキャッチされる寸前、ギャメルは古ゴブリン剣士の前に足を出して転ばせた。
ハヤトが目の前に転がってきた林檎を拾いあげる。
ナハティガル=ラーは、横目でハヤトが手にする毒林檎を見つつ抜刀した。
「それは以前、俺が前線キャンプの外で拾った林檎の芯の――おっと、考察はあとにしよう」
古ゴブリンの剣士たちと接触するよりも早く、空から赤い卵状の弾が二つ、距離を開けて落ちてきた。
ナハティガルは頭の中で素早く落下軌道を計算した。同時に予感のようなものが、あれはただの赤い卵ではない、と告げる。
「嫌な予感がする。できるだけ距離をとれ、散るんだ!」
いやな予感程よく的中するものだ。
赤い卵は二つ同時に別々の場所でひび割れ、パッと広がり、中からトカゲのような影が火を噴いて飛び出した。小さな火蜥蜴たちは地に落ちるとそれぞれが火柱に変わり、風をはらんで膨れ、うなりをあげて周囲に広がった。
炎は、阿吽の呼吸で二手に分かれつつあった冒険者たちの、それぞれ大多数を巻き込んだ。
奇声を発しながら、古ゴブリンの剣士が炎を割って、火に巻かれる冒険者たちに襲い掛かる。
「ちぃ――。甘いンだよ!」
ケン・Z・ブラッドリーは迫りきた切っ先を大げさに避けるでもなく、ただ首を傾げるだけでいなすと、片手で握った鋼の大太刀で、古ゴブリン剣士のこめかみを打ち払った。
古ゴブリン剣士の体が吹き飛び、受け身も何もしていない、見ている方が心配になるような倒れ方をした。
「こんな程度、ちょろっと炎で炙られたぐらいで隙を作るほど、俺はヤワじゃねぇんだ。しばらくそこで寝ていろ」
ピクリとも動かない古ゴブリン剣士を見て、フリーダ=ブロムヴィストは不安に駆られた。
雇い主であるドン・ゴーフルの『不殺』要望はいまだ有効だ。要望と言うよりは、命令に近い。何者かに操られているだけであれば、こちらとしても手にかけたくはないものだが、それも時と場合による。大樹海を南へ下るにつれて、彼らの抵抗も激しくなり、だんだん守るのが大変になってきていた。
「殺してないですよね?」
戦闘態勢を維持したままケンに問いかける。
「してねぇよ。たぶん」
たぶん、では困る。
フリーダが古ゴブリン剣士の生死を確認しようとした瞬間、青い影が真上から落ちてきて、全身をすっぽりと覆った。
顔を跳ね上げると、白い蛇が赤い目でこちらを睨んでいた。
二匹の内の一匹、フリーダからもたげた鎌首までの高さが優に3メートルは超えている。全長にして7メートルはくだらない大物だ。
(交戦した白い蛇の仲間でしょうか? それにしては以前と雰囲気が……)
前に戦った白い蛇は、蛇のように厳しい顔つきというよりは、むしろ壮大で気品に満ちた表情をしていた。その時も目には狂気の色が刺していたが、ここまで禍々しくはなかったように思う。
白い蛇はぐわっと口を開いて、彫像のように動かなくなったフリーダに襲いかかろうとした。
バーネット・フォーサイスが大口に向けて杖を突きだすと、白い蛇の体に踊る稲妻がまとわりついた。
「はいはい、残念でした。このバーネット様の目の前で、簡単に仲間を食わせてたまるかよ」
白い蛇のまわりでスパークする稲妻が激しさを増し、パリパリと音を立てる。赤い目が忌々し気に歪んだ。
バーネットが術で白い蛇の移動を邪魔したのだ。
思うように前へ出られなくなった白い蛇が戸惑っているうちに、レティシア・レインフィールは急いで癒しのオーラを広げると、近くにいる仲間の火傷を治した。
草地の反対側ではサイラスとギャメルが回復の光玉をせっせと遠くの仲間に投げている。
冒険者たちは派手な先制攻撃を受けてしまったが、三人の癒し手のおかげで急速に体勢を立て直しつつあった。
「フリーダ様、しっかりなさって!」
レティシアの声かけにより、フリーダはようやく我を取り戻した。
礼を言ったのち、大剣を両手でしっかりと握り直す。
巨体を回り込んで二人に追撃を仕掛けてきた敵の前に、スチールブルーのフルプレートに身を包んだアルベルト=V=シュタールシュヴェーアト立ち塞がる。
「これ以上来ないでくれ! お前たちを殺したくはないんだ!」
言っても無駄だと頭では分かってはいるが、声に出さずにいられなかった。
彼らを操っている人物――恐らく木立の影で細く笑んでいるあの三つ角のゴブリンを倒すか、ナハティガルが持ち返ったリンゴの芯から何か『特効薬』のようなものが作られるかしない限り、一時的に凶暴性を押さえることはできたとしても根本的な問題は解決されないだろう。
どうか聞き入れてくれ、という願いもむなしく、古ゴブリンの剣士はアルベルトめがけて一直線に突っ込んでくる。
口の端に白い泡をつけ、こぼれ落ちんばかりに見開いた目は血走っていた。集中したアルベルトには、古ゴブリンの顔面に血管が幾つもの浮いているのがはっきりと見える。下手な手加減をすると、やられてしまいそうだ。
(急所を外してやるしかない。……しっかりガードしてくれよ)
巨大な光塊を大太刀に纏わせた。後ろにいるレティシアたちを傷つけないよう、十分に気を配りながら両腕で構えた剣を大きく振りかぶる。
衝撃波が周囲に駆け抜けた。
古ゴブリン剣士がたたらを踏んで立ち止まり、とっさに剣をあげて防御する。
――グヘッ。
構えた剣を強く胸に叩きつけられて、古ゴブリン剣士が呻き声をあげた。すとん、と崩した膝を草むらに落とす。
レティシアに白蛇の睨みで竦んでいた体をほぐされたバーネットは、束ねたロープをアルベルトに投げた。
「これを使って!」
アルベルトはロープを空中でキャッチすると、背負っている盾を取った。ブン、と唸りを立てて盾を振り、立ち上がろうとしていた古ゴブリン剣士の頭を横殴りにする。
古ゴブリン剣士は白眼を剥いて倒れた。
「こっちにも一本くれ!」
ハヤトが横たわる古ゴブリン剣士の傍で腕をあげる。
束ねたロープが投げられと、ハヤトは代わりにさっき拾った毒林檎をフリーダに投げた。
二人が古ゴブリン剣士から武器を取り上げ、手足を縛っている間にバーネットがスタティックフィールドを展開し、白い蛇と残る古ゴブリン剣士の何人かを光球の中に封じ込めた。
ロープで縛られた古ゴブリン剣士は順次、草地の北端へ引きずられていく。
それを横目にしながら、アスティン・ヴェルラインはサイラスとともにペットの狼をけしかけて、骨の首飾りを2重3重にして枯れた薄い胸に垂らすシャーマンを牽制した。
「……どういう事情があれ、暴れているなら討伐すべきなんだろうけど……。殺さないようにってことだし、俺も気を付けないとなー」
弓を構え、矢に体内で練り込んだエーテルを注入する。先端に十分エーテルが貯まったところで、白い蛇に向けて放った。
アスティンが狙ったのは、体長が3メートルと比較して小さな白い蛇だ。あっちのデカイ白い蛇とは親子の間柄なのだろうか。父親と子、それとも母親と子? 蛇の性別の見分け方を知らないので、どちらなのかは判断できないが。
2匹の狼に吼えたてられ、怯えたシャーマンが奇怪な声をあげて緑色のお手玉を投げて来た。
放物線を描いて飛んでくる苔を丸めたような緑玉に、サイラスが矢先を向ける。
「赤の次は緑か」
サイラスにとっては、飛んでいる鳥を射落とすよりもむしろ簡単だった。
矢に貫かれた苔玉はそのまま飛んで、三本角のゴブリンが隠れていた大木の幹に刺し止められた。
幹に当たって潰れた苔玉から泡立つ汁が撒き散り、強い腐臭が漂った。苔玉を貫いていた矢がポロリと落ちたかと思ったら、大木の幹が腐り始めた。
「……とんでもないな。あれが鎧や盾に当たったら大変だ」
いきなり大木が折れた。
腐ったのは幹の一部だ。それだけで太い幹が折れるとは到底思えない。もともと中が腐っていたのか、それとも……。
がさがさと葉擦れの音を立てて、折れた半分が草地に落ちてくる。
音に驚いた狼たちがシャーマンと一緒になって逃げ出した。
わっと声をあげて、サイラスも、そして古ゴブリン剣士と戦うギャメルも、慌てて落下物の下から逃げる。
「またかよ!!」
落下の衝撃で草や葉、腐った樹液が派手に飛び散った。
直撃の範囲にはいなかったものの、白い蛇とアスティンが埃やなにやらを吸い込んだらしく、さかんに空えずきしている。
ふと、サイラスが残りの方へ目を向けると、大木の影にあった三本角の姿が消えていた。いや、大きなナイフを手に、隣の大木の枝に立っている。いつの間に――
矢筒に手を伸ばしていると、狼たちとシャーマンが三本角のいる大木の根元でうずくまっているのが見えた。
(まさか、この大木を倒したのは三本角のやつか?! 一瞬で……どうやって?)
三本角は危険だ。
だが、いまは二人いるシャーマンを無力化するのが先決だろう。
サイラスはフルプレートの鎧についた汚れをひと拭いすると、口笛を吹いて狼を呼び戻した。
アスティンも目にうっすらと涙を浮かべながら口笛を吹く。
「最初の頃に戦ったゴブたちとは一味違うということが分かったところで……仕切り直しだね」
小さい白蛇と大きな白蛇に5人ずつ、互いに支援し合える距離を保って、陣形を組み直す。間に倒木を挟んで、草地を二分する形だ。
●
草地の左半分。
ギャメルたちは、小さい方の白蛇と五人の古ゴブリン剣士、そして木の根の間にしゃがみ込むシャーマンを相手に戦う。
とりあえず、枝の上に逃れた三本角は無視だ。
「早く片づけて今夜はお湯でも沸かしてさっぱりしようぜ!!」
ギャメルが淡く輝くエーテルとともに放ったこの一言は、いい具合に冒険者たちの体から力みを抜きとった。右半分にいる仲間たちからも、いいね、の声が上がる。
前線キャンプを出発して数日、大樹海を行く体は疲弊し、汚れきっていた。近くに川が流れていることは、この草地を見つけてすぐせせらぎの音で確認している。夜には起こした火で湯を沸かし、体を拭いてさっぱりできると楽しみにしていたのだ。
想像するだけで、冒険者たちの体に力が漲った。
白い蛇を守るように古ゴブリン剣士が二人一組で襲い掛かってきた。
ケンは左腕の盾で振り下された剣を受け止めると、すぐさま体を捻り、右から懐に入り込んできた古ゴブリン剣士のみぞおちに蹴りをくれた。
剣を盾で受け流されて体を崩した古ゴブリン剣士を、ナハティガルが後続の敵ともども巨大な光塊をつけた剣を振るって打ちのめす。
ケンは倒れた古ゴブリン剣士の胸に馬乗りになって動きを封じ、腰に結えたロープを取った。お供に連れて来た狼が、古ゴブリンの顔の近くで牙を剥いて唸り、威嚇する。
「お湯で顔と足を洗いてぇな」
「ケン、言っておくがレディファーストだぞ」
振り抜いた剣を脇に戻しながらナハティガルが言う。
「わかってるさ。ああ、そうだ。テントも張ろうぜ。平らなところで横になって、手足を延ばしたままゆっくり寝たい。なあ、みんな?」
軽口を叩きながら、ケンは手慣れた動きで、股の下で狼を恐れながらモゾモゾもがく古ゴブリン剣士を縛る。
いままでは木の幹に背もたれて座り、眠るのが精いっぱいだった。しかも、原生生物やクリーパーの襲撃をいつ受けるか分からない状態だ。寝たくても眠れない夜が続いている。短くてもいいから、しっかり睡眠をとりたいというのはみんなが思っていることだ。
「一丁あがり、っと」
「あっちの連中も縛ってよ。オレが後ろへ転がしていくからさ」
ケンが立ちあがると、ギャメルが、ほいほい、と縛られた古ゴブリンをコミカルに転がしていく。
アスティンはナハティガルにぶちのめされて草の上に転がっている古ゴブリン剣士たちが立って動き回れないように、一人ずつ急所を外しながら重力の矢を射った。
身動が緩慢になった敵たちにまとめてダメージを与えようとしていたサイラスは、エーテルを籠めた矢を天に向けようとして、大木の枝にいる三本角が麻袋に手を入れ、下を見ていることに気づいた。
「あいつ、何をするつもりだ?」
麻袋から出た手に煮詰めた赤紫色の林檎が握られているのを見つけ、あわてて弓の角度を下げた。やつの真下にはシャーマンがいる。
「間にあえ」
指を離す。
風切りの音をたてて矢が飛ぶ。
突然、木の上で笑い声がした。見る。空中でおなかをかかえて狂ったよう笑う三本角の視線とぶつかった。
「お前、気づくのが遅い。だから外した。もう食われている」
矢はリンゴの天辺からちょっとだけ出ている果梗枝を削り切り、緑の闇の中へ飛び消えていた。シャーマンが小気味の良い音をたてて、落とされた毒林檎に齧りついている。その目は暗く、焦点を結んでおらず、どこか遠くを彷徨っている。
「いったい、それは何だ! 古ゴブリンたちに何を食べさせた!」
剣先を突きつけるナハティガルの詰問に、三本角は高みから笑い声で答えた。
「コレ? コレは絶望の毒林檎。あっちの世界の狂気で燻された、スィートな林檎。何もかも憎くなって滅ぼしたくなる。自分も……ククク」
「あっちの世界の狂気……だと?」
その時、遥か南の方角から大樹海を揺らす恐ろしい鳴き声が聞こえてきた。
ギャメルがびくりと身をすくませる。
(ひぇっ!? また、あのおっかねぇ声……どこかで別の古ゴブリンたちが鬨の声をあげているにしちゃ迫力満点だけど……)
遠くで原生動物が悲鳴のような鳴き声をあげ、木々の間を駆けていく音がした。もしかしたら小型のクリーパーかもしれない。どちらにしろ、彼らを怖がらせ、走らせるほど恐ろしい声の主は、古ゴブリンではないだろう。白い蛇も鳴かない。
(どちらでもないとしたら……樹海はオレたちが想像しているよりだいぶヤバイことになってそうだな)
食べかけの毒林檎を投げ捨てて、シャーマンが木の根の間から走り出てきた。樫の枝を蓬髪の上で振り回し、足で激しく大地を蹴り叩くようにして体を振動させる。
それは狂気に満ちた奇妙な踊りだった。
ケンは急に霞みだした目を瞬かせ、世界のゆがみを正した。
「あ、こいつはやべーぞ。みんな、見るな」
なにがどうとは説明ができないが、この踊りを見続けるのは危険だと本能が告げている。
シャーマンが発する奇声に合わせて、ケンのすぐ目の前にいた古ゴブリン剣士がゆっくりと腕を持ち上げた。ぎこちない動きで、ケンの頭へ剣を振りおろす。
盾で剣を持つ肘を受け払おうとしたが、なぜか盾は剣そのものに当たって甲高い金属音を立てた。
音でスイッチが入ったのか、他の剣士も動きだす。
ナハティガルが二本の剣を交互に振るって足の健を斬ろうとするも、代わりに足元の草が切れた。ムッとする熱い空気の中に、青臭い臭いが広がる。
ギャメルがケンに襲い掛かる古ゴブリン剣士を六角柱の結界に封じた。
アスティンが狼たちに、動きだした白い蛇を囲め、と命ずる。
「どうやら……あの変な踊りで調子が狂わされちゃったみたいだねー」
「そのようだな。ならば、魔法攻撃はどうだ?」
サイラスはエーテルを籠めた矢を天に向けて放った。空中でエーテルが炸裂し、無数の光の破片が白い蛇の上を中心に降り注ぐ。
光の刃に体を斬り刻まれた古ゴブリンと白い蛇が、バタバタと倒れた。
「ふむ。こっちはあまり影響がないようだな。と、まだ動けるやつがいるのか。あー、神経毒とか持ってくれば良かった」
涼しい顔で、しれっ、と物騒なことを言う。
ケンが悔しがる三本角の前で、ロープや蔦を使ってしっかりと拘束した。ギャメルが魔法で傷を癒した端から、ナハティガルとアスティンが後方へ引きずっていく。
「バカ、お前たちもっと暴れろ。おとなしく連れて行かれるな! おい蛇、コッチ向け!」
三本角が白い蛇の口に投げ入れようとした毒林檎を、サイラスが今度は矢で射落とした。
枝が折れそうなほど激しく地団駄踏む三本角に、ケンが啖呵を切る。
「てめぇ、この間ちょっかいかけて傍観してたやつだよな!! 人の和の邪魔しようとしてるんだよな……なぁ、そうだろう……じゃぁ逃げようとすんなよ!! そこで待ってろ、いいな」
「イヤだね。断る」
直後、三本指は枝から跳び落ちた。地面に着地して――。
ナハティガルは思わず眼帯をめくり上げ、両目を凝らして木の根元を見た。だが、三本角の姿はどこにも見当たらない。周りに生えた熱帯の草はピクリとも揺れておらず、着地してすぐ走り去った形跡もなかった。
「消えた、だと? アスティン、今の見ていたか!」
「見ていたよ。いたけど……」
ゆるりと首を振る。
アスティンの索敵術をもってしても、三本角がどこへ消えたのか、すぐには解らなかった。
●
草地の右半分。
倒木を挟んだ反対側では、大きな白い蛇に思いのほか苦戦していた。
こちらのシャーマンはハヤトが一足飛びに距離を縮め、速攻で気絶させている。毒林檎を持ったフリーダがおとりとなって白蛇の気を引き、残りのメンバーでその他の剣士を押さえている間に直接攻撃できたのだ。
初手にあっさり二人の古ゴブリン剣士を捕縛していたのは大きい。
その後、このまま一気に片付くかと思いきや――。
白い蛇が古ゴブリンたちを守りながら、猛然と冒険者たちに襲いかかってきたのだ。
ハヤトは固い白鱗を剣で叩き続けたせいか、手が痺れてきていた。うっかり剣を落としそうになって、慌てて握り直す。
(クソ……)
白い蛇はハヤトが剣を振るうたびに体をくねらせ、柔らかい腹が傷つかないようにしていた。目を狙い、エーテルを噴出して空中を駆けあがろうとすると、途端に体を引く。
さすがに図体がデカイだけのことはある。いやただ図体がデカイだけではない。こいつはそこそこ戦い慣れている。
(クソ……)
もういちど口の中で毒づいた。
時々、シューシューという蛇特有の音が高いところで聞こえる。目を合わせて睨まれれば、身動きが取れなくなってしまうのは解っているので、顔は上げられない。硬直したところでとぐろに巻かれてしまえば、全身が強く圧迫され骨が砕けるだろう。
白い蛇が舌をチロチロと出したり引っ込めたりしながら、まるであたりの様子を窺うように、頭をゆっくりと左右に動かす。
青々とした草の上に落ちる楕円形の影も、頭の動きに合わせて左右に動く。
「――っ!?」
漆黒の影が自分に向かって伸びてきたかと思ったら、いきなり胸に火を押しつけられたような痛みを感じた。
体の半分を流れる野生の血が行動を促した。
咄嗟に後ろへ跳びさがる。
どくどくと耳の奥が脈打ち、ハヤト、と周囲であがった己の名が、やけに遠くに聞こえる。黒い刃は強化された火蜥蜴革の胸甲を易々と貫いてきたが、幸いにもすぐに退避行動をとったため、胸の傷は深くないようだ。
だが、不意を突かれたショックは大きかった。
「テ、テメェは……」
すぐ目の前に三本角のゴブリンが立っていた。
フリーダが、短剣を握る手で胸を押さえるハヤトのカバーに入る。
アルベルトは追撃を仕掛けてきた古ゴブリン剣士たちを、光り輝く剣のオーラで打ち倒した。
バーネットが遠くから魔弾を飛ばして、白い蛇を攻撃する。
「いまのうちに。レティシア、ハヤトの手当てを頼むぜ」
レティシアは頷くと、目蓋を伏せて天地を巡るエーテルの流れに意識を集中させた。掴み取った不可視の流れと己の精神を接続し、汲み上げたエーテルを生命力に変えてハヤトに送る。
ほう、と息が口から漏れでる音を背後に聞きながら、フリーダは目の前に立つ三本角のゴブリンを睨んだ。
「どうやってそこに。さっきまで向こうの木の上にいたはずですよね?」
「ククク、秘密。アダム、これでもメドゥの指先の幹部。このぐらいできてあたりまえ」
「メドゥの……、幹部ですって?!」
ハヤトは後ろからカバーに入ったフリーダの肩を掴み、脇へ押しやった。
「ちょうどいい、テメェにゃ聞きてぇことが山ほどあんだ! このチャンス、逃がすかよ!!』
肺から上がってくる血で染まった牙を剥きだし、喉の奥を唸らせながら剣を振るった。
「ウヒャー」
三本角、いやメドゥの指先幹部アダムは、どこかからかう様な響きを含む悲鳴をあげると、白い蛇が落とす頭の影の中にすっと沈んだ。そのまま影の中に消えてしまう。
フリーダとハヤトは同時に、アダムが沈んだ影に飛び込んだ。
が、何も起こらない。
ハヤトが自慢の鼻をうごめかすが、臭いすらぷっつりと断たれていた。
「どこだ。どこに行きやがった!」
影の輪郭がくっきりとし、急に濃くなった。
白い蛇が口をあけて頭を降ろしてくる。
キン、と甲高い音がした。
白い蛇が目を閉じて頭をあげる。
「二人とも一旦下がれ。メドゥの指先の不意打ちに備えるんだ」
瞬間的に加速して割り込んだアルベルトが、剣で白い蛇の牙を一つ切り落としていた。
「白蛇よ、貴様を撃退してみせるぜ」
「俺にも手伝わしてくれよ」
後方からバーネットの魔弾支援をうけつつ、アルベルトは紫電一閃、撃帝国流の力強い剣技を繰りだして白い蛇の腹を掻っ捌いた。
苦しみ、のたうつ白い体が、臓物を散らしながらみるみるうちに血で赤く染まっていく。
(もし、古ゴブリンや白い蛇の皆様があのアダムと名乗るゴブリンに操られ、不本意に戦いを強いられているのでしたら……)
やはり死なせるわけにはいかない。
レティシアは目で仲間たちに、白い蛇を癒す同意を求めた。
バーネットは、一旦は受け止めた視線からすっと目を外した。頭の後ろに手をやって、ポリポリと首筋をかく。
「しょうがねえよな。また襲いかかってくるかもしんねーけど、ま、そん時は俺たちがまた止めてやるよ。いいぜ、はやく治してやりな」
他の仲間たちも親指をたてたり、うなずいたりして同意する。
「はい、それではそうさせていただきます」
レティシアが集中している間に、バーネットは倒木の周りで蔓を集めた。アルベルトたちに投げて、倒れている古ゴブリン剣士の手足を縛りあげていく。
その後ろ、倒木の向こう側で、ごっ、と音をたてて渦巻く風が起こった。
続いて悲鳴。
草原の左側にいた仲間たちを切り刻むエメラルドの渦の向こうで、赤い目を爛々と光らせた小さな白い蛇が鎌首をもたげている。
丁度、渦の縁にかかっていたバーネットは、すぐにエーテルバリアを張った。倒木の影に身を寄せてやり過ごそうとしたが、それでも固い緑の刃のいくつかが、木とバリアを突き抜け、体を浅く切った。
(なんだ、これ?)
地面に突き刺さった緑色のものを手に取る。
水晶化した葉っぱだった。
エメラルドの渦巻く風が唐突にやんだ。同じくして、力を使い果たした小さな白蛇が、草の上に体を伸ばす。
バーネットが様子を見るために倒木から頭を出したとき、サイラスとアルベルトが両側から警告の声をあげた。
「デカいヤツがそっちへ行ったぞ」
「白い蛇がこっちに向かってくる」
えっ、と思ったときには倒木が砕ける音がすぐ横でした。バーネットは手で目を覆い、倒れることで押しつぶされる勢いで飛んでくる木片をやり過ごす。
大きな白い蛇はレティシアに傷を癒してもらったとはいえ、まだ自由に動くことはできないはず。受けた傷はそれほど深く、致命的だったのだ。にもきわらず、驚くべきスピードで力尽きた小さな白い蛇に向かった。射かけられる矢も、飛んでくる光玉にも、振るわれる剣にも構わず、ひらいた傷の痛みに耐えながら、小さな白い蛇の体を大きく開けた口で咥えようとする。
まるで我が子を守ろうとする母親のように。
「やつだ! やつがデカイ白蛇の頭にいるぞ」
アルベルトたちが剣を手に駆けてくる。
集結する冒険者たちを見下すアダムの口に、邪悪な笑みが浮かんだ。
「お前たち、勝ったつもりでいい気になるな。もうすぐ……もうすぐアレが出てくる。そうなったら終わりだ。みんな死ぬ。ククク……ドン・ゴーフルもゴールディも滅びて、自分もやっと死ねる!」
「はぁ? 何を言っているのですか、貴方。自分もやっと死ねるとか……気は確かでしようか?」
フリーダは加速を利用して鋼の大剣を鋭く突き出し、衝撃刃をアダムに向けて飛ばした。
アダムはそれを見るや、大型のナイフを持った手を右に左に、また右に素早くふってエーテルの刃を三つ飛ばしした。空中で衝撃刃とエーテルの刃がぶつかり、鼓膜を激しく震わせる高音速をたてて、互いの攻撃は消滅した。
「――俺はナハティガル=ラー。ゴールディのゴブリンだ。貴様は何故、俺達を憎む……? 目的は何だ?」
「お前、キライ。混じりがいいほうに出ている。だからか? だからドン・ゴーフルに味方するのか? キレイな顔、体……妬ましい。ズタズタにしてやりたい」
「なんだと。だったら今すぐここに降りて来い!」
「いまは我慢する。見逃してやる」
ギャメルが怒った声で怒鳴る。
「おい、俺もゴブリンだぜ!」
「……お前は別に。ふつう。ただのゴブリン」
「何だよ、どういう意味だよただのゴブリンって! じゃ、ハヤトはどうなんだ」
アダムはニヤリとすると、いきなり首をまわして尾から白蛇の背に駆けあがろうとしていたハヤトに顔を向けた。
「残念。アダムを出し抜ぬけるのは『腕』や『足』……メドゥだけ」
途端、大きな白い蛇が尾を振ってハヤトを払い飛ばす。
「うわっ」
アダムは無邪気な笑い声をたてた。
「知恵あるゴブリンでも、そうでなくても、ドン・ゴーフルに味方する者は万死に値する。憎い」
「俺たちのことも憎いか」、とサイラスが凄む。
「……少しお喋りしすぎた。もう帰る。行くぞ、蛇」
大きな白い蛇が小さな白蛇を口にくわえたまま、冒険者たちに尾を向け、驚くべきスピードで川音がする方角へ逃げだした。
バーネットはハッとした。
「そうか、そういうことか。白い蛇たちが移動した跡がなかなか見つからないと思っていたら、途中で川を利用していたんだ!」
「感心している場合か! 追いかけるぞ!」
「まて、逃げるな!」
怒りに任せて走り出したハヤトとケンを、アスティンののんびりとした声が引き止める。
「俺たちも深手を負った。古ゴブリンたちの事もあるし、ここは一旦、前線キャンプに戻るほうがいいと思うなー」
●
レティシアはアダムが沈んだ影の跡に手をついた。そこに残されているかもしれない、アダムの思念を拾いあげるためだ。
他の仲間たちは捕えた古ゴブリンたちを見張っていたり、白い蛇たちが逃げて行った川へ水を汲みに行ったりしている。
自分とナハティガルを除いて。
草地の中央を分断していた倒木は、ハヤトとケン、アルベルトの三人で力を合わせて脇に退かした。いまはギャメルとアスティンが枝を組んで作った焚き火が、草地の真ん中で温かな光を広げている。
フリーダの提案で、テントは張らずに湯あみ場を囲む幕にすることになっていた。
当番のサイラスとバーネットが作った料理を食べ終えたら、今夜は満天の星空の下、古ゴブリンたちと一緒に雑魚寝だ。
交替で歩哨に立つが、短い時間でもしっかりとした睡眠がとれるだろう。
「どうだ、何かわかったか?」
ナハティガルは拾い集めた毒林檎をしげしげと眺めながら、自分と同じ色の髪が流れるほっそりとした背に問いかけた。
これを食べ続けると、最終的に鬱状態や絶望が狂気へと変貌するだろう。狂気に駆られて他者を狩り、さらなる死をもたらす凶暴な人になっていくのだ。
「ドロドロとした憎悪が邪魔をして……ああ、でも消える謎は何となくわかりました。ここにアダムが別の影を探していたときの記憶がうっすらと残されております。たぶん、影から影へ渡る能力を持っているのでございましょう。それから――」
「それはずいぶん厄介だな。それで? それからの続きはなんだ?」
レティシアは南へ顔を向けた。
「大きくて恐ろしい目、怖い……という、思いが残っていました。ほんとうに心の底から震えたので、強く記憶に残っていたのでしょう」
「恐ろしいもの?」
「はい。恐らく原生動物やクリーパーたちを怯えさせる、あの声の持ち主のことだと思われます」
まるで二人の会話を聞いていたかのようなタイミングで、恐ろしい声が木々を震わせた。
怯えた古ゴブリンたちが、身を寄せ合う。
見張りのフリーダとアスティンも体をすくませた。
ギャメルが火に枝をくべる手を止めたまま、ちょっぴり震えた声で軽口をたたく。
「寝る前にミルクが欲しくて泣いているのかな。ずいぶん声の大きい赤ちゃんだね」
やけに長い残響が、笑い声に掻き消されていく。
大樹海に日没が近づいていた。
マスターコメント
ショートEX難しい 報酬:多い10 / 5〜10人
2021年04月26日 04時42分48秒 公開
参加者
相談掲示板
No.1
サイラスだ、よろしくなー とりあえず弓使うかなと考えてる。 とりあえず蛇1術士1戦士6のグループ二つが襲いかかるって感じらしいし、こっちは二手とかに別れてそれぞれ対応する?それとも全部纏めて固まって対応する? 後は狙う優先度とかいるかね?多分蛇と術士が攻撃重視、蛇のバフ受けた戦士が庇う、余裕あれば殴ってくる感じだと思うけど。 後はなんか幹部?いるけどよう分からん 危険って攻撃されたらなのか、敵減ったらなのか。多分攻撃されたら逃げなくても自分を守らせそうだなとは思うけど。
ウオーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 白い蛇に集中攻撃をして早めに撤退願いたいが・・・ 『カバリング』を使うゴブリン剣士の動きを封じる必要があるな・・・
ヒーラーのギャメルだ! よろしくなー! >グループ 悩むところだよなぁ。 別々の方が戦いやすい気はするんだけど、敵の遠距離攻撃手段が多いのがちょっと怖いぜ。 相手してるのとは別のグループの敵から不意打ち気味に遠距離攻撃されたら、なかなか厄介だ。
ごきげんよう。私はレティシア・レインフィールと申します。 ヒーラーとして、お役に立てる事が出来ましたら幸いです。 皆様、よろしくお願い致します。 二班に分かれるか、それとも全員で纏まって行動すべきか。 前者の場合、互いの班が有事の際に援護出来る距離を維持しつつ戦う手もございますね。 何にせよ、こちらの方が人数が少ない分、先ずはあちらの手数を減らすのが肝要かと存じます。 私は初手に【命中&回避&抵抗上昇】の範囲効果がある レゾナンス・オブ・ヴァローの使用を検討しておりますが、行動順の事を考慮致しますと 現状ではギャメル様が一番最初に行動可能ですので もしギャメル様がお持ちになるのであれば、私は別の物を用意させて頂こうかと存じます。 撃破優先度としては、先ずは古ゴブリンの剣士の皆様となるでしょうか。 ただ不殺の指示がございますから、ダメージ調整や範囲攻撃の巻き込み注意が必要となります。 出来れば、メドゥの指先の方や白い蛇も放置せずに牽制が出来たらよろしいのですけれど これについても要相談、といったところでしょうか。
No.5
カバリングとか一応要る?シャーマンとの相性悪いけど 後は、最初に麻薬?林檎投げてるから指示とか襲撃の方向は林檎で出してるのかね? 無沙汰目指すならその林檎確保も手段かね?正直単体オンリーだと全部動けるゴブリンにカバリングで防がれて、麻薬で感覚おかしいとかある場合不殺とかかなり困難ぞ?
キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >方針 バランス的に考えると前衛寄りではあるが、二手に分かれて交戦も出来なくはないな。 二手に分かれるなら、ゴブリンの方もそれぞれの組を引き付けて分断させた方が良いだろうが、 そうなると俺らの方も班同士での連携が難しくなるから一長一短ではあるが。 纏まって戦う場合は範囲攻撃を喰らいやすかったり、混戦になりやすいのが難点ではあるが、 特定の敵に攻撃を集中させやすいだろうし、各個撃破していくならこっちの方が良いと思う。 >優先順位 可能なら範囲攻撃持ちのシャーマンか白い蛇を優先的に狙っていきたいな。 魔法やら遠隔範囲攻撃を使ってくる奴らは早期に削った方が、ヒーラーの負担も減って 戦いやすくなるだろうし。
>レゾナンス・オブ・ヴァロー OK! 用意しておくぜ。 >光縛封 これの使い道を考え中だ。戦闘すぐに小さい方の白蛇に使うか、メドゥの指先の逃亡阻止に使うか……。 ただ逃走を阻止する手段は色々あると思うから、どちらかというと小さい白蛇の方が良さげかな? >不殺 地味に大変な条件だよなぁ。 体力が弱ったところに光縛呪で動きを封じるのはどうだろ? あのスキルは回数制限もなかったし。
シーフのナハティガル=ラーだ。今回は宜しく頼む。 >分かれるか、纏まるか 敵は8体1組の2班編成で来ると言う事は、俺達を前後or左右から挟撃するつもりなのだろう。 何れにしても片方の班を放置する訳にも行かない為、 ・俺達も2班に分かれて対応する ・班分けはせずに抑え担当と攻撃担当で役割分担する …上記のどちらかにする必要はあるかと。 >光縛封 【カバリング】を白蛇や古ゴブリンのシャーマンに使用されると相当厄介なので、 古ゴブリンの剣士を封じ込めるのに使っても良い様に思う。 効果のある3Rの間に白蛇を弱らせる事が出来るなら大分楽になるかと。 あくまで意見の1つではあるが。 >不殺 結局の所、古ゴブリン達が力尽きる前に白蛇2体を無力化or弱体化して撃退するしかない、と。 光縛呪で拘束できるのは『戦闘不能状態の対象』や『無抵抗の対象』に限られるのと、 キャスター武器を装備しないと使用不可な所が難点ではあるな。
ギャメル様、ありがとう存じます。 私に対しても何か要望がございましたら、遠慮なく仰ってくださいませ。 >優先順位 確かに出来ればシャーマンの方々や白い蛇を狙いたいところではあるのですけれど 恐らく剣士の方々が彼らを守るように行動されるでしょうから それならいっその事、先に戦闘不能などにさせて頂いた方が カバリングによるダメージ調整の狂いを避けられるのでは、という考えもございますね。 ただ、先に白い蛇を撤退、もしくは撃破すれば 他の皆様は撤退される事から積極的に白い蛇を狙うのも間違いではございませんので どのような作戦を組まれるかによって判断は変わるのではないかと存じます。 >光縛封 悩ましいところですが、標的をどなたにするにせよ 古ゴブリンのシャーマンの方の魔法ですぐに破壊されるでしょうから 足止めよりもシャーマンの方の手を一時的に止める、と考えた方がよろしいかもしれません。 メドゥの指先の方に関しては捕縛出来れば越した事はございませんが 他の幹部の方々と同程度の実力をお持ちの場合、かなり難しい気が致します。 勿論、他の事が疎かにならない範囲内であれば メドゥの指先の方の逃亡阻止や捕縛を試みる事に異論はございません。 >不殺 光縛呪はナハティガル様の仰る通り、キャスター武器が使用条件となりますので それでしたら手分けをしてロープを予め用意し 戦闘不能の方以外を捕縛される方がよろしいかもしれません。
遅くなってごめん。 シューターのアスティン。よろしく。 <二手に分かれる? 数も多いし、二手に分かれるのは確かにありかな。 相互の班でフォローできるように、離れすぎないようには注意したいけど。 <カバリング 1ヘクス距離のカバリングってことだから、敵陣の状態次第では シャーマンと蛇を遠距離狙い打てそうだけど…。 その場合剣士をつり出す、とかしないとだめって考えればちょっとハードル高い、かな
遅くなっちまってすまねぇな! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! >二手に分かれるか? このメンツなら2班に分かれて相手の各部隊を各個撃破する感じでいいんじゃねーかと思うぜ。 向こうがどういう陣形で攻めてくんのかにもよるだろうが、こっちは互いの班で背後を守れる様に注意しとけばおのずと離れ過ぎるってのも避けれると思うしな。 >優先順位 俺は個人的にはシャーマン優先狙いで動こうと思ってんぜ! 敵さんも剣士を盾に守られてるとは思うが疾風足で回り込むかエアーライドで高さを取って剣士共の頭上を跳び越えて乗り込むかって感じで考えてるぜ。
No.12
とりま蛇と術師優先狙いするわ 二班分け指示多いっぽいからとりあえずどう分ける?
>班分け 二班編成で了解した。 現状のクラス分布は下記の通り。 ウォーリア×4 ヒーラー×2 シーフ×2 シューター×1 キャスター×1 バランス重視で5名1組×2班編成とするなら―― ウォーリア×2 ヒーラー×1 シーフ×1 シューターorキャスター×1 上記の振分けでどうだろうか? 作戦次第では意図的に編成を偏らせるのも有りかと。 (攻撃班、抑え班等)
>班分け 2班に分かれる意見のが多いな。 まぁ、それならそれで敵の連携も防げるから良いと思う。 それぞれの班が担当する敵を抑えきれるなら、敵を分断したようなものだし。 >優先度 範囲攻撃持ちとしては、シャーマンや白い蛇をカバリングできる位置に固まってくれるなら、 纏めて攻撃しやすいからありがたい所ではある。 カバリングするならダメージの蓄積も早くなるし、ラウンド1回だからそれ以降は素通りだ。
>陣形 敵は南側からとの事ですので、襲撃時点では全員固まっていると考えてよろしいでしょうか。 問題はその後の動きですがナハティガル様の仰る通り 前後、あるいは左右から挟撃をされる可能性がございますね。 正確には先ず正面からぶつかり、徐々に挟撃する形でございましょうか。 現時点で私達の中で一番行動順が早いギャメル様は レゾナンス・オブ・ヴァローをご用意して下さいますので 襲撃時はギャメル様を中心とした円陣となり 付与後は二班に分かれていく、といった形となりますね。 >班分け ナハティガル様、纏めや振り分け案をありがとう存じます。 基本的な形としては提示して下さった案の物で問題は無いかと。 理想的なのは挟撃される前にそれが不可能となるレベルまであちらの動ける方を減らす事ですので 確かに攻撃に特化した班と抑えに特化した班に偏らせるのもよろしいかと存じます。 どのような形になるにせよ、ヒーラーは各班に一人は必須でございますから もしギャメル様に希望がございましたら私はもう片方の班を担当させて頂ければと存じます。
>班分け 今のところ俺は、7メートル級の白蛇を狙う予定だな
遅くなりました。ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 ここまでの流れは確認しました。 >優先順位 白蛇が物理攻撃を使う以上、前衛は物理防御中心で固めたいところですし、 やはり最優先はシャーマンになるでしょうか。 同編成にカバリング持ちの剣士が複数いる以上、 範囲攻撃主体でカバリングごと狙う事ができれば優位に立てるかと思います。 >班分け それでは私も7m旧の相手を希望しておきます。
>班分け オレは3m側にいく。光縛封は3mの白蛇に使うな。 白蛇の物理範囲のフォレストストームを抑えたり、シャーマンの行動を浪費させるのに良いかなーって。 アイディアをくれてありがとう! 色々な行動を考える参考になったぜ。 ・対7m アルベルト(ウォーリア) フリーダ(ウォーリア) ・対3m ギャメル(ヒーラー)
>班分け それじゃあ、暫定的に俺は7mの側にするかね。 白蛇とシャーマンを優先的に狙いつつ、可能な限り多数の敵を巻き込んで攻撃するつもりだ。 あとはアーケインとかで足止めして、敵同士が連携できない様に分断してみる。 ・対7m アルベルト(ウォーリア) フリーダ(ウォーリア) バーネット(キャスター) ・対3m ギャメル(ヒーラー)
>班分け それでは、私は7mの方を担当させて頂きますね。 勿論、状況次第では対3m班の方々への援護も行いますので。 ・対7m アルベルト(ウォーリア) フリーダ(ウォーリア) バーネット(キャスター) レティシア(ヒーラー) ・対3m ギャメル(ヒーラー) (敬称略) >作戦 そして、これはあくまで提案なのですけれど。 範囲攻撃に優れたバーネット様がいらっしゃる対7mの方が 早く古ゴブリンを倒せる可能性が高い事から、もし範囲攻撃がまだ使用可能な場合は バーネット様には対3m班のどなたかと交代して頂くのは如何でしょうか? あるいは、交代とまではいかずとも 古ゴブリンの方々の生命の削り役を主に担当して頂く、と表現した方が正確でございましょうか。 バーネット様の希望や他の皆様のお考えもございますので 私の提案はあくまで案の一つとして受け止めて頂ければと存じます。 >個人 私個人としては、基本的には回復に専念する形となります。 ヒールでの回復を中心として、ヒーリングオーラでの範囲回復にBS回復用の解呪。 そして、緊急時用のリヴァーオブヴァイタルでの全回復。 残り一つに関しては攻撃を高める輝刃を候補にしておりますが ヒールの回数を増やしたり、攻撃手段として魔矢の用意も可能ですので もしご希望がございましたら遠慮なく仰ってくださいませ。
No.21
とりあえずウォーリア2人行ったから俺は3メートルの方なー。 ぶっちゃけ俺前衛というより肉盾になれる程度だからなぁ。範囲に人巻き込まない内に炸光矢撒いて前出る人が範囲に入るようになったら衝撃射撒いてって感じの動きの予定。 ・対7m アルベルト(ウォーリア) フリーダ(ウォーリア) バーネット(キャスター) レティシア(ヒーラー) ・対3m ギャメル(ヒーラー) サイラス(ウォーリア) (敬称略)
キャスターとシューターは分かれるんだったね。 じゃあ俺は3mの方かな。 炸光矢とか貫通衝撃矢で複数狙いつつ、カバーリング範囲外に シャーマンや蛇がいれば狙い撃つ感じで。 ・対7m アルベルト(ウォーリア) フリーダ(ウォーリア) バーネット(キャスター) レティシア(ヒーラー) ・対3m ギャメル(ヒーラー) サイラス(ウォーリア) アスティン(シューター) (敬称略)
顔出しが遅れてすまない ウォーリアーのケンだ 2つに分かれるんだな・・了解した。 それじゃぁ、俺は3Mの方に回る感じだな ・対7m アルベルト(ウォーリア) フリーダ(ウォーリア) バーネット(キャスター) レティシア(ヒーラー) ・対3m ギャメル(ヒーラー) サイラス(ウォーリア) アスティン(シューター) ケン(ウォーリアー) (敬称略)
>班分け では、俺は対3mの方に行くとしよう。 ・対7m アルベルト(ウォーリア) フリーダ(ウォーリア) バーネット(キャスター) レティシア(ヒーラー) ・対3m ギャメル(ヒーラー) サイラス(ウォーリア) アスティン(シューター) ケン(ウォーリアー) ナハティガル(シーフ) (敬称略) >作戦 タイミング等はバーネットに任せる形になるが、 もし交代するのであれば俺が行こうか? 俺も範囲攻撃は闘気槌2を活性化して行くが、四回しか使えないしな。 序盤は主に古ゴブリンのシャーマンを狙って闘気槌2で攻撃予定。 闘気槌2を全消費した段階で(敵の余力を推測しつつ)白蛇に暗殺撃、古シャーマンに三段連撃を使用して行くつもりだ。
>範囲攻撃 交代というか、そのまま3m側を狙おうか? 射程12有れば多少の移動で大体の敵に届くだろうし、 古ゴブリンも大多数を倒した後だから、俺一人攻撃から抜けても大きな影響は無いと思う。
>範囲攻撃 確かに、その射程の長さであればそのまま移行は可能でございましたね。 もしバーネット様にそのように対応して頂けるのであれば有難く。 ナハティガル様もご配慮、ありがとう存じます。
>範囲攻撃 承知した。 では、俺はそのまま対3m側で対応しよう。
プレイング提出できたぜ。 レティシアはまとめとか色々ありがとうなー! 班分けでもオレの希望を配慮してくれて嬉しかったぜ。 2R以降はヒールや解呪がメインの動きになりそうだ。 3m班のみんなが戦いに専念できるよう回復頑張るからなー! 古ゴブリンが死んじまうとマズイから、一応そっちも気にかけてるぜ。 バーネットも3m班に加勢してくれんだな。派手にドカンとやっちまってくれ!
>班分け んじゃ、俺は7mの白蛇の方だな! ・対7m アルベルト(ウォーリア) フリーダ(ウォーリア) バーネット(キャスター) レティシア(ヒーラー) ハヤト(シーフ) ・対3m ギャメル(ヒーラー) サイラス(ウォーリア) アスティン(シューター) ケン(ウォーリアー) ナハティガル(シーフ) (敬称略)