【大変動】南から来た麦の味

馬車猪

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シナリオID:687

オープニング

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 人類社会の中でゴブリンの地位は低い。
 だが、彼達の先祖(混ざり物)が大樹林から抜け出てゴールディ(都市国家)を建国したように、人類社会に確たる地位を築くことを目指すゴブリン達(ブラックデス)がいる。
 そんな、強い情熱を心に秘めて国外で活動中のゴブリンが、心挫けそうになっていた。
「ゴールドだったっけ?」
「ゴールディですよリットさん」
 ブラックデスが大きな恩を与えたのに、ゴールディの名前すら覚えていない。
「ンなこと言われても普段使わねー言葉は覚えられねーよ」
 このリットという少年はゴブリンに対して偏見はないし、ゴールディ出身のゴブリンを農業従事者として受け入れている。
 少年に話しかけている元食い詰め者、現小作農のゴブリン達は随分と良い食生活をしているようで、ゴールディにいたときより筋肉が厚くなっていて肌の色艶も良い。
 ゴブリンの地位と評判向上という目的を果たせているのかどうか、判断し辛い状況だった。
「解体した猪を吊すの手伝ってくれよ。黒服のおっちゃんの歓迎会用に熟成させようぜ」
「マフィアの幹部をおっちゃん呼ばわりは拙いですよ」
 そのタイミングで咳払いが響く。
 開きっぱなしのドアをノックするのは、ブラックデスのボス(ドン・ゴーフル)を真似て黒スーツ姿のゴブリンだ。
「予定より2日早く着いたんだが、少し時間いいか?」
「おう! すぐに吊し終えるから待っててくれよおっちゃん!!」
 リットに悪意は皆無。
 少しの敬意と結構な親しみもある。
 しかし徹底して失礼だった。
「おっちゃんは止めろ」
 ゴールディから来た男(ブラックデス幹部)は、まだ中年扱いされたくない年頃であった。

●
「うちのリットがすみません」
 リットの仲間達が深々と頭を下げた。
 相手がブラックデス(マフィア)というのは関係ない。
 リットが失礼なことをしたから謝っている。
「気にしないでくれ。……本当に気にしなくていいからな?」
 勘違いされている気がしたので急いで本題に入る。
「本国からの指示で、ゴールディの宣伝を強化することになった」
 難民キャンプに貴重な医薬品の支援を行った直後だ。
 諸手を挙げて歓迎されるだろうと予想していたのに、リット以外の難民がなんだか申し訳なさそうな顔をしているのに気付いた。
「あの」
「それは」
「冒険者のねーちゃんやにーちゃん達の方が目立ってるから、それ以外は記憶に残らねーんだよ」
 リットは、解体で出た肉の余りを焼きながら過酷な事実に言及する。
「8人くらいで100とかのコボルトをぶっ潰すんだぜ? 俺達はおっ……にーちゃんからの援助に感謝はしてるけど目立つ訳ねーよ」
 これ食う? と差し出された肝臓を受け取り無言で食べるゴールディ出身のゴブリン(ブラックデス幹部)。
 新鮮な肉はとても美味しく、少しは落ち着いた。
(考えろ。放置すれば難民キャンプへの投資は無駄になる)
 既にかなりの金を使った。
 リットグループへの貸しは出来たが、それだけで終わってしまうと効率が悪すぎる。
 失敗しても組織内での地位が低下するだけとはいえ、何より自分自身が許せない。
(何か、手が。冒険者が邪魔? いや、冒険者を使用すべきか)
 考えがまとまった。
「なあ坊主、最近困っていることはないか?」
「んー」
 リットは肉を焼いている。
「コボルトを撃退した場所で猪が増えている、ってか戻って来てるみたいで面倒といえば面倒かな」
 倒せば食肉に出来るので、リットにとっては害獣というより獲物だ。
「リットちゃん、リットちゃんを基準に考えちゃ駄目だよ」
「罠を作って維持するのも大変ですし、でも自力で撃退は出来るので冒険者ギルドに依頼するほどではないですし」
 リットの仲間達は鍛えてはいるが非授恵者。
 冒険者にとっては雑魚でしかない猪も、彼等にとってはかなりの脅威だ。
(なるほど。これならいけそうか)
 彼は素早く文面を考え、また来ると言い残してその場を立ち去った。

●
 依頼はビッグオウムを使って届けられた。
「ゴールディからの依頼です」
 職員は相変わらず淡々としている。
 依頼人が誰であろうが関係無い。
 冒険者にとって利益があるかどうかが最重要だ。
「難民キャンプでゴールディ(ブラックデス)の宣伝をしてください」
 露骨すぎる依頼だが依頼人も切実なのだ。
「依頼人の手配で、小麦と燃料と塩は既にキャンプへ運び込まれています」
 鍋や竈や水は難民キャンプが提供するので、そのままでも麦粥を難民に振る舞うことは可能だ。
「1つ、注意して頂きたい点があります」
 あくまで主役はゴールディ(ブラックデス)。
 コボルト相手の戦いで冒険者が大活躍しているので、現地での言動に気をつけないとゴールディではなく冒険者や冒険者ギルドの宣伝になってしまいかねない。
「また、貸し出される竈の近くで……正確には竈の近くにある畑に猪が現れるようです」
 狩って解体して麦粥の具にしてもよいし、ゴールディからの贈り物と宣伝しつつ難民にプレゼントしても良い。
「現地はやや食糧不足です。炊き出しをすれば良い宣伝になると思われます」
 ただ炊き出しをするのも良いし、他のことをしても構わない。
 全て冒険者に任されていた。

解説

■成功条件:ゴールディやブラックデスの知名度と評判を向上させること   食事を振る舞いながら宣伝すれば成功になりますが、冒険者の技術や作戦でより高度な成功を目指すことが可能です。 ■戦場  1.広々とした集会用広場。煮炊き用の竈や、肉の熟成小屋や解体小屋があり、徒歩1分圏内に複数の井戸があります。  2.一部でジャガイモの種芋の植え付けが始まっている複数の畑。コボルト戦後に罠が仕掛け直されましたがまだ数が不十分です。 ■討伐可能リスト ・猪  成獣から子供まで様々ですが、依頼開始時点まで生き延びている狡猾な面々です。  1グループ2~5頭で行動します。  成獣は重く速く固く突撃も仕掛けてきます。が、冒険者に1対1で勝てるものはいません。  移動:5 最大射程:1 総数15頭 ■他 ・来客  普段忙しく働いている難民や、職を得られなかった難民や、体調不良の難民や、キャンプに流れ込んだ賊じみた人間まで、様々な難民がやって来ます。 ・食材  用意されているのは、たっぷりの小麦(少し古くて臭いがややきつい)と塩と水と薪のみです。  他の材料は冒険者が調達する必要があります。 ・リット  冒険者からの指示がない場合、仲間と一緒に周辺警備を行います。 ・ゴールディ出身のゴブリン  小作人(複数)は、猪の排除が終わり次第種芋を植えるのを再開する予定。  ブラックデス幹部(1人)は、物資の手配で精力を使い尽くして現在休憩中です。

マスターより

 参加者に種族の制限はありません。全員ヒューマンでもOKです。

リプレイ

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「明日は筋肉痛かも」
 アルマ・ヴァレンタインが石臼を回しながら苦笑を浮かべた。
「石臼で砕いて、ふるいにかけて、もう一回石臼で……うん、いい感じ! 小麦粉があれば麦粥以外にも色々作れますしっ!」
 エフィルミアがすると簡単に見えるが、実際に行おうとすると苛酷な重労働だ。
 何故水車が必須とされるか、よく分かる光景だった。
「罠に使う餌ちょうだいなっ」
 キャッスル・アイランドが顔を出したとき、臼を回す前に徹底して清掃した小屋の中が、独特な香りで満たされていた。

●
「鹿の時はくくり罠と畑周りに溝を切ったり、鳴子を付けました。猪だと本当は餌と箱柵がよいのですけど今回うまくいきますかね」
 ドローミは小屋を建てた余りらしい木材を使って出来る限りの罠を作成、というより復活させる。
 難民も精一杯頑張ってはいるがドローミ達冒険者と比べると手際は悪い。
「ここまで入り込まれているなんてね」
 畑にある足跡を見て、シルヴィア・A・カペルが何度も目を瞬かせる。
 実家領内の農村とは全く違う。
 彼女は罠単独で獣を始末するのは早々に諦め、特定の場所に誘導することを優先させる。
 個人で準備可能な数では全く足りないので、ある程度以上まともな人間を美味しい料理を約束して集めての人海戦術だ。
「そのままひっぱってー、うんしょー!」
 キャッスルの掛け声で子供達が枝を引っ張った。
 エネルギーを溜め込まれた枝にキャッスルはわっかを作ったロープを取り付け、地面に緩く固定する工程まで一気に済ませる。
「これで罠はできあがりやね。危ないから使い終わるまでは近寄らないこと。うちとの約束やよ」
 はいと元気に応える子供達に、満足そうに頷くキャッスルであった。

●
 亜人の脅威は去り、南から大量の麦が運び込まれた。
 キャンプは祝いの気配に浮き足だち、それを猪達は好機と受け取った。
「今さら猪程度がっ!?」
 猪を舐めたリットが剣をかいくぐられて腹に突撃を受けた。
 猪は追撃して止めを刺そうとし、自らの足下にある消化可能なエネルギーの塊(状態の悪い小麦)に気付く。
 リットのことなど忘れて土ごと食らいつき、前脚で罠を作動させてしまい、びよんと上へ釣り上げられた。
「だいじょうぶ?」
 キャッスルがヒールとサイドヒールをほぼ同時に使う。
 後者の治癒力は高くはないが、危険な状態のリットを死から遠ざけるという意味で効果は絶大だ。
 損傷した骨と肉と血管が良い感じに繋がり、リットが勢いよく立ち上がった。
「ありがとよねーちゃん!!」
 そんなリットの頭頂すれすれを矢が通過する。
 ドローミによる精密かつ強力な一矢が、頭上で暴れる猪ではなく新手の猪の脇に突き立ち肉と血管を傷つける。
「戦闘中に気を抜くなど弛みきっていますね。反省しなさい」
 普段は徹底して礼儀正しいドローミが強い口調を使うほど、リットの行動は駄目駄目だった。
「何をぼうっとしているリット君! 無意味に足を止めるな、敵に向かえ!!」
 盾・甲冑・大剣という凄まじい重装備のアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトがリットを追い抜き猪とぶつかる。
 装備の重さと固さを防具として扱うことで衝撃を受け流し、毛と皮で強靱なはずの猪をまな板の上の肉の如く綺麗に切断する。
 分厚い肉も骨も、圧倒的な技術と力の前では溶けかけチーズより柔な存在だった。
(肉に血が回る前に仕留めるのが1番美味いんだが……仕方がないか。リット(弟分)君優先だ)
 見事な技と力を見せたアルベルトではあるが、内心はちょっと落ち込んでいる。
 猟師が一撃で仕留めて即座に血抜きと冷却をした肉の味を知っているからだ。
 敵はまだいる。
 アルベルトは勢いが止まらぬ3頭目に自分から突撃し、特別な技巧はないがデメリットなしで威力を高めた一撃を振り下ろす。
 たまたま分厚い頭蓋で受けることに成功した猪が、圧倒的な腕力と装備で頭蓋を割られて中身を飛び散らせた。
「次、右隣だ! イノシシを狩って肉を『ブラックデスからの贈り物』として提供しようぜ」
「へっ、分かってるよにーちゃん(剣の師匠)!」
 生まれも育ちも天井と床下ほど違う2人が、素晴らしい速度で駆けていった。

●
 その右隣にある広大な畑である。
 シルヴィアの罠群の1つで誘導された猪は、最も致命的な罠に直面していた。
「まだこんなにいたのだ」
 ストレガ・L・リベルガストラは口ほど驚いてはいない。
 予想の上限近くの数がいたので喜んでいるほどだ。
 猪達はストレガという強者の気配を感じ取って警戒を強め、逃げるための最後の機会を逃してしまう。
 無数の小さな稲妻が生じ(アーケインテンペスト改が発動)、ストレガを襲うにも逃げ出すにも移動時間がかかり過ぎるようなってしまった。
「うり坊と可能なら雌は傷つけずに逃がすのだ。子供は食いでがなくて勿体ないし自然の循環を考えると繁殖してもらわないと困るというもの」
 お前達(猪)は資源であり私(人類)は管理者。
 武力と知性に裏付けられた主張は猪の士気を削り、ストレガによる氷の矢が雄猪の体力を削ぎ脚を萎えさせる。
「皮骨は難民に渡すのだ。防寒具を作るのにいくらあっても足りないはずなのだ。だからできる限り綺麗に仕留めるのだ」
 多少技は身につけても根本的に雑なリットより、慎重に槍で刺す武装難民の方が狩りでは役に立っていた。
 猪が逃げる。
 ストレガの稲妻から逃げ切った少数の猪だけでなく、他方向からの侵入を試み難民に撃退された猪もそれぞれに逃亡している。
 だがエフィルミアの方が速い。
(むむっ、私に気付いていませんねっ)
 指先から光の矢を飛ばす。
 魔法攻撃なので、物理攻撃特化なエフィルミアが使ってもあまり威力はない。
 だがそれでもいいのだ。
 雌に浅い傷をつけられたことに気付き雄2頭が目を血走らせて反転、エフィルミアに逆襲しようとする。
 つまり足止め完了だ。
 牙が目立つ雄猪を軽々と回避。
 小柄なもう1頭が突撃を仕掛けるより早く、エフィルミアは隣を駆け抜けるついでに一撃を加える。
 攻撃特化のウォーリアではないので一撃で仕留めるのは不可能だ。しかし傷から流れる血は非常に目立つ目印であり、押っ取り刀で追って来た難民でも追跡可能になった。
(次は……そこっ)
 小さな林の向こうから微かな音を聞き取り、エーテルの波を飛ばして猪の別集団を捕捉する。
 風下から大回りして近付く。
 圧倒的な速力によりたいして時間はかからず、荒い息を吐き休憩中の猪の背後から忍び寄ることに成功する。
 風向きが変わる。
 エフィルミアに気付いた猪が逃げだそうとするが、スキル(疾風足)で加速した彼女からは逃れられない。
 猪が被弾を覚悟し防御に専念。が、予備動作ほぼ0からの一撃が首筋を深く抉って食肉という未来が確定された。

●
 社会の下層に位置する人間にとって、パンとは憧れである。
 食欲を強烈に刺激する焼きたての香りも、うま味が凝縮された柔らかなパン本体も、全て縁遠い品物だからだ。
「パン屋さんありがとうと言うべきか、依頼人さん頑張ったねと言うべきかー……」
 白く清潔なエプロンと帽子を装備したアルマが、酵母を仕込んだ生地を丸めている。
「臭いがきつめなのは香草を効かせるんだよ」
 脳内のスケジュール表を更新しながら教育も平行して行う。
 一定以上の階層の庶民なら母から教わるはずの内容を知らない少女と女性達が、文字通り全神経を集中させアルマの指示に従っている。
 その中で1人、リットより少し年上の少女が目立っている。
 指先の動きの繊細さも、目から感じられる情念も、明らかに周囲とは別次元だ。
「胃袋から攻めるのも効果ありそうだし一緒に作ろー?」
 天使のような表情で悪魔の如き逃れられぬ誘いをする。
 リットが旗頭の集団を実質的に動かす少女は、アルマによって籠絡される。
「今日はしないけど、酵母不要の挽いた小麦と水と塩だけで練った生地とかね。ちぎってスープに浸すとか入れたりするのも……」
 日常的に使う技術ほど、胃袋を掌握する役に立つのだった。
(なるほど)
 ドローミは冷静に観察している。
 この少女はキャンプ指導層(帝国貴族令嬢達)を参考に衣服と化粧に気を遣っているようだが、手にあかぎれがあるなど様々な面で甘さがある。
 想い人同様、教養が足りない。
「リット殿が何時気付くか油断なりません」
 一段落したタイミングでドローミが少女を連れ出す。
「彼は相当鈍いですが……手指、顔回り等に疵や荒れ残さぬ様可能な限り手入れしましょうね」
 深刻な傷はヒールで癒やせるが、ヒールは美容のための術ではない。
 だからドローミは、ヒューマンやエルフ用の肌に塗るための油を用意し、簡単なレシピも渡していた。
「時間との勝負なのだ」
 皮も骨も内臓も綺麗に取り外された肉を川で洗う。
 使い用のない部位は焼却待ちの場所に纏め、肉から血が消え温度も下がり次第、キャンプの食料庫へ運ばせる。
「血が飲料水に混じらないよう気を付けるのだ。……ここで全部洗うのだ」
 難民に難しいことは出来ないと判断し、ストレガはとにかく分かり易く指示を出した。
 アルベルトも解体を担当している。
 殺害目的なら大太刀の方が圧倒的に適してはいるが、食材として解体するなら包丁の方が向いているので今使っているのは厨房からの借り物だ。
「この肉はブラックデスの皆さんからの贈り物です。遠慮せず持って行ってください。余った肉は、お粥の具にしてくれ」
 厨房へ運んでいく難民とリットへそう伝えるアルベルトであった。
「リット殿、熟成肉はありますか」
「あるけどねーちゃん達(貴族令嬢達)の許可が……え、許可出てるの?」
 ドローミは、リットに直接要求を伝えるより副官的な立場にいる少女に伝える方が話が早いことに気付く。
「明日からの予定でしたが……やはり」
 外が騒がしいと思ったが案の定だ。
 肉とパンの気配に釣られて集まって来た者がかなりいる。
「仕方がありませんね。肉粥で前夜祭といきましょう」
 パン生地の発酵はまだ不十分なので、あく抜きを試みていたフル武技を利用する。
 粥は塩味。
 熟成肉は薄く切り、軽く炙った上で載せて存在感を出す。
 なかなかに、好評だった。

●
 ご近所のエルフが提供した大型看板に、ゴブリンの顔マークとゴールディの文字が墨書されている。
「うっし」
 ギャメルは一旦離れてマークと文字のバランスを確認。
 近くのテントに預かって貰っていたインクを受け取り戻ってくる。
「へへっ」
 木の枝に布を巻き付け、インクに浸してから大胆に描く。
 貴族のような階層の高い人々からは嫌われるかもしれないが、瑞々しい感性で力強く表現されたそれは、多少の雑さが魅力に感じてしまうほど良い出来だ。
(憧れのドン・ゴーフルの役に立てる機会だからな!)
 人類としてのゴブリンの、建国神話の登場人物だ。
 政治にはとことん疎いギャメルは、純粋な敬意と熱意に突き動かされている。
「こーいうのは『根を通す』ってのが大事なんだよな! 『筋を回す』だったかな?」
 インクがついた体を洗いにいくついでに、キャンプ側窓口(本来ならリット)に確認をとる。
「ありがとよっ」
 なんとなく気配が怖い(マフィアっぽい)ヒューマン(リット副官少女)が調理器具の手配までしてくれた。
 ギャメルは一晩ぐっすり寝て、勝負の日を迎えた。
 麦が弾ける音が難民達を驚かせる。
 弾け終わった麦は目の粗いザルに移され、殻をとられて綺麗に皿へ盛られる。
 ギャメルはゴブリンらしい外見であると同時に、調理人の母の背を見て育った少年だ。
「甘いもので疲れもぶっ飛ぶぜ!」
 炒られて弾けた小麦に、高級食材カカオの実から作った粉をぱらぱらり。
 喉仏が出ていない少年声による堂に入った口上は、祭りを華やかに盛り上げる。
「これぞドン菓子、南のゴールディから来た麦の味!」
 難民の目に、そのお菓子は輝いて見えた。
「ブラックデスの皆さんからの振る舞いやよ~」
 キャッスルも協力している。
 より子供向けにココアパウダーを使ったドン菓子ココア味を用意し、猪肉と塩のスープ、お湯割りココアで他の料理完成までの時間を稼ぐ。
「もう暑いからね~。無理せず座っておとくんやよ~」
 疲れた子供や具合の悪そうな人を休憩用テントに誘導し、お湯割りココアを渡して体力を回復させる。
「こら~。野菜を残しちゃ駄目やよ~。肉の脂とうま味を吸っとるんやからむしろ肉より美味しいんやよ~」
 それは言い過ぎではという表情のエルフに、キャッスルが微笑んで合図を送る。
「ええ、確かに美味しそうだ!」
 エルフも演技してくれる。
 体に良いけどちょっと苦いものを食べてもらうための工夫であった。
 管楽器の音が物語の始まりを告げる。
 追い詰められた混ざり物(ゴブリン)達が、知恵と力を振り絞り、仲間と助けあいながら森の外を目指す冒険譚だ。
「そこでゴーフルはこう言ったんだ」
 シルヴィアは語り弾きでドンの若い頃を表現する。
 崇拝者であるブラックデス幹部(キャンプの駐在員)からの情報が反映されているので美化の度合いが激しいが問題ない。
 これはブラックデス宣伝依頼の一環であり、娯楽の少ない難民への慰安でもあるのだ。
 格好良い人間(ゴブリン)が格好良く戦って困難を格好良く克服する。
 この場で求められているのはそういう物語だ。
 ブラックデス幹部(キャンプの駐在員)とギャメルが、違う顔なのに同じ表情をして聞き入っていた。
 物語が一段落して食事の時間が始まる。
 ストレガが焼き上がったパンをまな板の上に置き、ズバッと切って味付け焼き肉と葉物野菜を挟んでギュッとする。
 油とパンの香りが渾然一体となり、野菜多めの逸品に多くの難民が集まった。
「いっぱいあるから急がなくて大丈夫だよー」
 アルマも大量の料理を用意している。
 厚切り肉に出来ないサイズの肉をミンチにし小麦粉と香草とでタネにしたハンバーグ。ソースは豪華に赤ワイン使用だ。
 パンにはチーズと適度に塩抜きした干し肉を挟み、ゴールディの象徴ともいえるビッグオウムの焼き印を押している。
「これはリット君用。今作れなくてもいずれ作れるようになれば大丈夫、頑張って!」
 アルマは少女の恋の手伝いをする余裕もあった。
「ゴールディ直伝の猪料理ですよー!」
 エフィルミアは小麦粉団子も煮込んだ料理を提供している。
 本当に直伝かどうかは不明だが大人気なのでBD幹部も否定はしない。
「キャンプの人達を楽しませるだけではなく、ゴールディ出身のゴブリン達の心も慰めよう」
 幹部は、打ち合わせのときにシルヴィアが口にした言葉を思い出す。
(本気だったか。貴族の気まぐれかもしれないが、帝国に食い込めるかどうかの状況では天からの助けだ)
 語り弾きを純粋に楽しめる立場ではない。
「そして今日、ゴールディからの客人が訪れています」
 シルヴィアが幹部(ゴブリン)を紹介する。
「今回麦を送ってくれた組織(BD)からの使者でもあります。皆さん、よければ暖かな拍手で迎えて下さい!」
 拍手は盛大で、しかし歓迎の歓声はそれ以上に大きく拍手が聞こえなくなるほどだった。

マスターコメント

  ゴールディとブラックデスの名前が、難民キャンプの一部で知られるようになりました!
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:多い8 / 6〜8人

2021年03月31日 01時22分04秒 公開

成功

相談掲示板

  1. ギャメル

    ギャメルだぜー! みんな、よろしくな! 小麦粉じゃなくて小麦の粒なのか? 麦粥とも書かれてることだし。 あんまし質の良い小麦じゃねぇのが気になるが、古くなって水分が抜けてるだろうからこれはこれで変わった料理に使えるかもな。

  2. キャッスル・アイランド

    キャッスル・アイランドやよ。依頼ほぼ初参加だからお手柔らかにねぇ。 猪狩って鍋料理にしたら喜ばれそうやね~。 ……あれ?もしかして今いるのって皆ヒーラー?猪狩れるよ、ね? (うち高位のヒーラーの強さ分からない……ウォーリアさん来て~!)

  3. アルマ・ヴァレンタイン

    ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくー。 麦粥って大麦のいめーじが強いけど小麦でもいけるのかなー… 粉とまでは書いてないみたいだし、パンとかにするなら挽かないといけないのかな…? 麦粥げんていなら赤ワインとチーズとミードでキュケオーンもどきでも作ってみようかなと 医薬品は支援済みで具合の悪そうな人もいるみたい?だし臨時の診療所をやるのもいいけど >ヒーラーの強さ 2シリーズのアクションスキルで他職さんの真似事くらいはできるから戦えないことも…ない メイン行動消費する支援はそれほど効果ないしヒールなんて誰でも(全職)使えるしー…? 多段ヒットできるシーフさんに輝刃とか、レゾナンスは割合で上がるから多少マシだけど… うん、考えると悲しくなってくるのでこの話はやめよう?ハイ‼やめやめ

  4. ドローミ

    FP突っ込んだはずなのに、出発人数に届いていませんね。 ドローミです、今回も皆さん宜しくお願いしますね。 ボリッジ?は大麦ですよね。 【質問】 まだ出発人数に届いていませんが。 Q1 今回使用される麦は、小麦ですか? 大麦ですか? Q2 農夫殿は健在ですか? 併せて、リット殿の分含め春巻きの種や苗を畑に入れたいのですが、 時間が許せば可能ですか? 一先ず以上でお願いします。

  5. リット

    難民キャンプ在住のリットだ。よろしくな! 頭を使う仕事って苦手ー……。 【回答】 A1 > 用意されているのは、たっぷりの小麦(少し古くて臭いがややきつい)と塩と水と薪のみです。 ……粥よりパンの方がうまいよな。俺、滅多に食えねーけど。 A2 おっちゃんはすげー元気。 ジャガイモと小麦の植え付けの準備で目ぇ血走らせてなんか準備してる。 畑は、どっかなー、可能は可能だけど効果がどの程度あるかは分からねー。

  6. ドローミ

    はい回答ありがとうございます。 プレイングで言及しますが、春まきの小麦は強力粉の原料(パンの素)です。 やはり連作障害ありますが、頑張りましょう。

  7. ギャメル

    肉確保のため、イノシシ狩りに出向くか? キャスター系の武器なら用意できるから、遠くから魔法撃ったりもできるぞ。 オレ、古い小麦でポン菓子とかドン菓子って呼ばれてるアレを作りたい。 そしてドン菓子をドン・ゴーフルに絡めてゴールディとブラックデスをアピールするんだー! ……勝手に名前を使っていいのかはわからねぇが、宣伝してって頼まれたし、目的には沿ってるはず! 本格的な作り方で使う圧力かける装置は用意が難しそうだし、そもそもオレの頭では圧力って何って感じなんだが、フライパンにザルをかぶせて手作業で作るならできそうだ。

  8. キャッスル・アイランド

    ドン菓子、ええねぇ! 塩があるから猪肉は塩味になるかなって思ってるけど。 うち、甘い物が欲しい人の為にココアパウダー持っていってお湯割りで提供したいんよ。 あと植物共感で今食べられそうな植物生えてないか、一応探したいねぇ。道端の雑草だって食べられる物あるんよ? ・猪肉のスープ(食用雑草入り?) ・ホットココア(お湯割り) ・雑草由来のサラダ・おひたし(湯に一応通す) うちが提供できるとしたら、こんな所やね。 あっ、ココアパウダーの余りでドン菓子チョコ味も作れるかも?

  9. アルマ・ヴァレンタイン

    ゴールディとブラックデスらしさー…伊の国のまふぃあっぽい雰囲気…? リットくんもパンが好き?みたいだし、 猪肉(獲れたらで)とチーズあたりを具材にしたパニーニみたいなのでも作ってみるよ 特産?のビッグオウムちゃんとかブラックデスの焼印でも付けちゃおうかな? 【リットくんに質問】 Q1 下準備にかける日数はありますか?それとも難民キャンプに着いた時点から開始ですか? Q2 小麦はぜんぶ粒の状態ですか?粉に挽く時間や道具(石臼のようなの)はありますか?

  10. エフィルミア

    シーフのエフィルミアです!よろしくお願いします! 難民達に美味しいお肉を食べてもらう為に、全力で猪を狩ります! 範囲攻撃でドカンとやってしまうのが楽ですが、食用部分を多めに残したいので 一匹ずつ急所を一突き!で仕留めたいですねっ。 肉の熟成小屋や解体小屋があるので、猪を狩った後は難民に処理を任せても良さそう! 小麦は石で引いて小麦粉を作りたいです。 麦から粉になるだけで大分加工しやすくなりますし! 春になって木の実が生えるようになれば、酵母を作ってふわふわパンも可能になるかも。 今回試しに石で小麦を引いてみて、「すいとん」みたいなものを作りたいと思ってます。 醤油がなくて塩味ですけど、もちもち触感になるだけでもワクワクするんじゃないかなっ。 キャッスルさんの「猪肉のスープ(食用雑草入り?)」に混ぜてもらえたら嬉しいです…! 「肉」「草」「もちもち」の三種がそろえば完璧じゃないですかっ?(きらきら) キュケオーンもドン菓子も美味しそうでとってもいいと思います! ココアも凄く喜んで貰えそう! 皆が笑顔になれるような、いい宣伝にしましょー!

  11. エフィルミア

    Σふぁっ発言が被った!すいません! パニーニもおしゃれで美味しそう! 質問もありがとうございます。 下準備の時間や石臼があったら大分助かりますね…!(ぐっ)

  12. リット

    【回答】 A1 あるぜ。難民キャンプに着いてから数日後に炊き出しとかのイベント発生、ってことも出来ると思うし。 A2 粒の状態だ。粉に挽く時間は……多分あるんじゃねーかな。石臼っぽいのも、誰が持ち込んだかしらねーけど倉庫小屋にいくつか転がってた気がする。

  13. アルマ・ヴァレンタイン

    >リットくん 数日あればいろいろと下準備できそうな感じ、よかったよかった 回答ありがとうございましたー

  14. シルヴィア・A・カペル

    シルヴィアだ。よろしくね。 炊き出しや猪討伐の人数は充分かな? ブラックデスの幹部を含めたゴールディ出身のゴブリン達に聞き込みをした上で、ゴールディ都市国家の建国の物語を弾き語りしようと思うよ。食事の時は勿論、色んな場所で演奏して一般人達の情報も収集したい。 「コボルト戦後に罠が仕掛け直されましたがまだ数が不十分」ってあるから罠も作りたいし、賊じみた人間や職のない人間に罠作成や警護を頼めないかなって。可能であればブラックデスの名前で雇いたい。いざこざをブラックデスの関係者が解決したり、抑えになれば評判も上がるんじゃないかな。 【リットに質問】 初めまして、シルヴィアだ。今回はよろしくね。 Q1:幹部のおじさ……お兄さんに聞いて欲しいんだけど、ブラックデスの名前で人を雇ったり、報酬を出したりは出来るかな?

  15. リット

    【回答】 A1 出来るみてーだぜ。けどよー、冒険者ギルドに依頼したんだから、出切れば冒険者にやってもらいてーんじゃねーかな。

  16. シルヴィア・A・カペル

    リット、迅速な回答ありがとう。 「ブラックデスの関係者」として、私達が問題を解決するってことか。賊じみた人間や職のない人間に仕事に就いて貰えれば、と思ったんだけどそう簡単じゃないってことだね……了解だ。 リットの助言も踏まえて、弾き語りをしつつ情報収集、揉め事の種を出来る範囲で潰したいと思ってるよ。罠作成については賊じみた人間や職のない人間に協力を頼みたい。報酬は皆が作った美味しいご飯、ってことで。キャンプに帰属意識も持って貰えたら嬉しいしね。 ……猪は人の気配があれば逃げるから、出来れば罠に髪の毛が欲しいんだ(小声)

  17. シルヴィア・A・カペル

    あ、追記。 体調不良の一般人については、外傷ならヒールを使えたらと思ってる。病気は治せないけど……。

  18. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ウオーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 リットと一緒にイノシシ狩りをしようと思っているぜ!

  19. ストレガ・L・リベルガストラ

    ストレガなのだ。よろしくなのだ。 解体と炊き出し中心で動くのだー

  20. エフィルミア

    アルベルトさんとリットさんが組んで猪狩りをするのであれば、大きめの集団はそちらにお任せしますね! 私はシーフらしく、こそこそと2~3体の小さな集団を狙っていきましょう。 捜波を持っていくので情報共有するようにします! 下準備の時間も石臼もある…やりたい事が膨らみますね!楽しみですっ。

  21. ドローミ

    だいぶ間が空き、済みません。 書簡に気が付いてくれた、ストレガ殿、アルベルト殿 他の皆さんもご参加ありがとうございます >アルマ殿 古い麦は、製粉しパンを目指しますか? 調べてみましたが、今回短時間で酵母か重曹を大量確保するのが難しそうです。 調理するならば、ミサなどの儀式で使われる種なしのパン(薄くて香味がない)にせざる得無さそうです。 肉がゆ(参鳥湯もどき)や麦をつなぎというか増量剤にしたハンバーグなどなら確保できる材料で行けそうですが、 如何でしょう? >キャッスル殿 狩猟は戦闘に限らず、捕獲用の罠を作成するのでも活躍できるはずです。 >ギャメル殿 鍋のフタに金属製の盾を使うとうまくいくと思いますよ。 植物油を持ち込まないといけませんが。 【質問】 Q6くらい? 猪はやはり夜に来ますか? 熊が居ないので昼も来ますか?

  22. アルマ・ヴァレンタイン

    >ドローミさん Q3の回答で数日は準備にかけられそうだしパン屋さん辺りから調達しようかなと考えてたり (街でパン屋さんがあちこちにある描写もみるしドライイーストとかあるといいんだけど) 種なしパンは難民さんでも作りやすいパターンの紹介で仮ぷれいんぐに書いてたりする… リットくんグループの女の子も巻き込んで胃袋を攻めろー、な感じに あとは今回の古小麦をただ挽いただけの全粒粉だと臭いのきつさが前面に出てきそうなので、 これも準備期間に香草を探して生地に練り込もうかなとは ハンバーグは発想になかったー…タネに仕込んだり香草焼きにするのもいいかも? ぷれいんぐ調整して入れてみるね、どうもありがとー

  23. キャッスル・アイランド

    うーんと、うちが作れる罠だと釣り上げ式の罠かな。 わっかを作った短めのロープを高い所からぶら下げて、飛ばないように少しだけ重しになりそうな物置いて放置しとけばかかると思うんよ。餌は小麦をほんの少し分けてもらえば大丈夫やよ。 これで大体うちが出来る事は出揃ったかな?プレイングに書いておくね。

  24. リット

    【回答】 猪が昼と晩のどちらに来るかは、うーん、分からねぇ。 (冒険者の手で)よほど変わったことが起きない限り、来るのは確実なんだけどな。

  25. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    【質問】 今回、リットは何をする予定なんだ? 予定がなかったら、俺とイノシシ狩りに行ってほしんだが

  26. ギャメル

    みんなが作る飯もおいしそうだな! >ゴールディのアピール ゴールディの宣伝っつーことで、看板か何かを作って食事提供の時に立てかけておくってのを考え中だぜ。 文字が読めなくてもパッと見でわかるように、アルマの焼き印のアイディアを拝借してなんかゴールディらしい絵や図を描いとくのってどうだろ? シンプルなデザインでビッグオウムやゴブリンの顔マークを描いたり、BDってロゴを入れたり……。 アルファベットが存在するのかどうかとか、ロスガリア大陸の文字の詳細がちょっとわからねぇけど……! 木の板にインクか炭で描くか、シーフ道具の針金使って焼き印にするかだなー。 >イノシシ狩り 人数が増えて手は足りてそうだな。 狩りにいく人達に任せた! >キャッスル だな! ココア味にしてみる! オレはウワサでしかしらねぇけど、サウゼルの方にカカオ農園ができるって話もあるし、将来的にはチョコもゴールディと関連深い作物になっていくのかもな。 >ドローミ 弾ける熱い穀物をダマスカスの盾がバッチリ防ぐ!

  27. ドローミ

    回答ありがとうございます。 昨夜確認できなかったのが悔やまれますが、僕も半分は狩猟のお手伝いしましょう。 今までの感じだと、人数は不足していますので。 あとは、宣伝と粥の調理ですかね_ >アルベルト殿 該当する回はOPに出ていますね。 此方からの指示がない限り、キャンプのメンバーと周辺警護だそうです。

  28. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    >ドローミさん ・・・書いてありましたね。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0