【CP】命を繋ぐ甘い香

馬車猪

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シナリオID:674

オープニング

●
 コボルトの敗残兵が顔を上げた。
 甘い匂いがする。
 ここ数日水しか口にしていない口に唾があふれ、腹が鳴った。
 匂いの源は荷馬車だ。
 巨躯のビヒモーに牽かれ、未舗装の地面で弾むたびに濃い匂いを放っている。
 同族(亜人)が10人でかかっても倒せそうにない相手だ。
 飢えて傷ついたコボルトなら撃退するのに数十人は必要かもしれない。
 だがここには100人以上いる。
 囲んで移動を封じれば、後は数の暴力でなんとかなるかもしれない。
 なんとかしなれけば、この場にいるコボルト全員が、故郷に戻れず死ぬだけだ。
「近づくんじゃねー! こいつは全部難民キャンプのもんだっ!!」
 リット(授恵者)が殺意を剥き出しにしても、飢えたコボルト達は槍を杖にしてじりじり近づくのだった。

●
 敗残兵との戦いが始まる数日前。
 リットは濃厚な薬草のにおいを嗅いでいた。
 不快に感じるのは薬効が強いからで、平時でも買い集めるのが大変な質と量だ。
 それが包帯と一緒に大型の荷馬車に詰め込まれている。
 高カロリーの非常食が詰め込まれた荷馬車も別に1両あり、実際に目にしたリットが己の目を疑っていた。
「どうだ」
 ゴールディゴブリン(ブラックデス構成員)が、悪戯に成功した悪ガキのように笑った。
「すげぇ」
 リットは何度も触れて確かめて、ようやくこれが現実であることを実感する。
 これがあれば、大勢の怪我人を治療出来るし腹が減った難民(同胞)を飢えで殺さずに済む。
「いったい何を払えばいいんだ?」
 普段は勢いだけで生きているようなリットだが、スラムで生き延びただけあって恩と仇についての感覚は鋭敏だ。
 巨大な恩を受ける以上、巨大な何かを返す必要がある。
「いいから早く出発しろ。キャンプにいるゴブリンにはよろしく伝えてくれよ?」
「あんたの狙いは知らねーし興味もねーけど、ぜってぇ(恩も借りも)忘れねぇ」
 リットは深々と頭を下げ、御者台に飛び乗った。

●
 ここは冒険者ギルドではない。
 帝国難民キャンプと往復する輸送隊のいくつかが出発地点としている、王国の地方都市だ。
 冒険者ギルドで何度か顔を見たことのある職員が駆け足でやって来る。
「今回は特に急ぎの依頼です」
 現在、難民キャンプとその周辺で人類対コボルトの戦いが発生している。
 コボルトの数は圧倒的で、しかし冒険者の活躍で難民キャンプやエルフの村々は持ち堪えている。
 しかし被害は0ではない。
 物資輸送が困難になっているので、医薬品の食料もかなり深刻だ。
「医薬品が用意されています。皆さんには難民キャンプまでの輸送と護衛をお願いします」
 大型荷車2両。
 密度はともかく面積としては広大な難民キャンプや複数のエルフ集落に送る量としては少ない。が、質は凄まじい。
 重症者や重傷者に使うための貴重な薬草や、少量でも大量のエネルギー補給が可能な食料がみっしり詰まっているのだ。
「道案内兼御者が1人、難民キャンプから派遣されています」
 今回は特急便だ。
 コボルトが徘徊する危険な経路を通る必要があり、非授恵者を連れて行くと守るのが面倒なのだ。
「申し訳ないですが2人目の授恵者の御者のあてはありません」
 もう1人の御者は冒険者が担当する必要がある。
「また、亜人に怯えないビヒモーを2頭用意していますが……」
 おそらくコボルトは飢えている。
 ビヒモーも肉として狙われる。
 荷車はそもそも人間が牽くようには出来ていないので、ビヒモーを使わず冒険者(授恵者)が牽くのは無理だ。
 つまり荷車だけでなくビヒモーも守るしかない。
「手段はお任せします」
 2両を全員で守って移動するか、別々に移動するか、護衛班と進路上のコボルト討伐班に分かれるかなど、選択肢は様々にある。
「難民キャンプを助けてあげてください」
 どんな作戦で何を目指すか、冒険者の手に委ねられていた。

解説

■成功条件:荷車2両を難民キャンプへ持ち込むこと  コボルトの討伐数などで成功の度合いが上昇するかもしれません。 ■戦場  1:未舗装の道がある荒野。ところどころに凹みがあります。  2:コボルトの敗残兵がうろつく、難民キャンプに通じる道がある平地 ■討伐リスト  特異個体は登場しません。人間と会話可能な個体も登場しません。 ・敗残兵コボルト  冒険者やエルフとの戦いで負けたコボルト。  手槍を装備しています。毛皮や略奪品の鎧を装備している個体もいますが少数です。  荷車からの匂いに気付くと、最後の力を振り絞って攻撃してきます。  集団行動に慣れている個体が多く、陣形を組んだ場合は命中率がかなり向上します。  匂いに気付くまではそれぞれ単独で行動し、難民キャンプから離れる方向に移動中です。  戦場2に登場。総勢100体。 最大射程:1  匂いに気付くまでの移動:1  匂いに気付いた後の移動:3  隊列を組んだ際の移動 :2 ・軽装コボルト  敗残兵コボルトの撤退を援護するためやってきたコボルト達。  投石技術を持ち、隠密能力にもある程度長けていています。  荷車に気付くと凹んだ地形などに隠れ、奇襲してビヒモーごと奪おうとする可能性があります。  荷車が単独の場合は、確実に襲撃を試みます。  戦場1に登場。1集団6体で3集団います。総勢18体。複数集団が連携する可能性有り。  移動:4 最大射程:10 ■他 ・ビヒモー1頭&荷車1両目  食料が主に積み込まれた重い荷車と、それを牽く体格の良いビヒモー。  チョコレートもあり、匂いが目立ちます。  移動は基本的に4です。 ・ビヒモー1頭&荷車2両目  医薬品が詰め込まれた荷車と、それを牽くビヒモー。  においますが1両目と比べると目立ちません。  移動は基本的に5です。 ・リット  連戦で疲れていますが、御者台に乗ってビヒモーに指示を出す程度なら可能です。  プレイングで指定がない場合、リットは荷車2両目を担当します。

マスターより

 輸送作戦です!

リプレイ

●
 ドローミにとっては慣れた道であるのに、左右に広がる景色は見慣れないものだ。
 多数のコボルトが通り過ぎた結果、もともと緑が薄い土地が完全な荒野になってしまっていた。
「これは、予想以上ですね」
 敵の気配が薄ら漂っているのも問題だが、ドローミの武器の1つである非常に優れた嗅覚が役に立たないのは辛い。
 先頭の車両からの甘い匂いが強烈過ぎた。
「これだけの物資を支援していただけるのは滅多にないことです」
 ノックス・マグナは敢えて好意的な解釈だけを口にする。
 2両のビヒモー車に積まれているのは高価な物資だ。
(善意だけによるものではないでしょうが貴重な物資です)
 冒険者(授恵者)8人に依頼するより多くの金とコネが必要だったはずだ。
「絶対に無駄には出来ません。必ずコボルトを突破して届けましょう」
 思惑があっても窮地にある人々を救うため私財が擲たれたのは事実。
 遣り甲斐のある仕事に、冒険者の士気は上がっていた。
「時期が良かったのか悪かったのか」
 全身が隠れる装束に身を包んだルチル・プルメリア・グレイハーツは、振動で舌を噛まないよう注意しつつ小声でつぶやいた。
 チョコレートは目的地に届けば多くの命を明日へ繋げる物資であり、大量の敵を引きつけてしまう釣り餌でもある。
 情報だけでなく旅のついでに運び手を引き受ける事も多い彼女は、今回の依頼の危険性を良く理解していた。
「啓示でも、この手の輸送で襲撃を受けるのはテン=プレと出ていますから戦闘は避けられないでしょう。なるべく荷車に被害を出さないように物資を輸送したいところですね」
 フリーダ=ブロムヴィストの言葉使いは独特だ。事実を言っているのか何かの例えかは分からない。
 が、彼女が本気でそう言っていて、しかも確度の高い未来であるのは何度も証明された現実であった。
 セリオス・オーガストは1人無言で捜波を連続行使している。
 探知用エーテルの波動の使用と、自らの五感から得た情報と総合しての情報評価は精神を疲弊させる。
 安全地帯を抜けてから、数時間は続けているのだから。
 バンビは、セリオスが指を曲げてある方向を示したのに気付いた。
「輸送隊の護衛もこのハイスピードキャスターにお任せあれですわ」
 宣言する前に立ち上がり、立ち上がる前に詠唱は終わっている。
 味方に合図を送ろうとしていたコボルトに魔弾を飛ばす。
 当たれば重傷か即死と直感した亜人は無意識に数歩後退してしまい、その結果射程から逃れることは出来たが遠くに潜んでいる同族に知らせるのを失敗した。
 バンビは追撃しない。
 セリオスから伝えられる正確な情報に従い、激しく揺れる荷台でくるりと斜め後ろへ向きを変える。
 言語だとしたらあまりにも御粗末な音の連なりが、指示された方向から微かに聞こえた。
 ハイスピードキャスターは自称ではなく客観的な評価。
 投石紐持ちのコボルトが立ち上がるより1秒以上早く、足止めのための小稲光を出現させる。
 そうしている間もビヒモー車は最高速を保ったままで、あっという間に投石の射程から外れる。
 投石兵達が追おうとしても、稲光に邪魔された足では荷車に追いつくのは不可能だ。
 コボルトの中では精鋭に分類される者達が、バンビの術1回で事実上無力化された。
「すっげー!」
 先頭車両の御者をしているリットが、思ったよりずっと遠くに落ちた石の音に気付いて感嘆する。
 無意識に振り返ろうとして、ビヒモーに強く手綱を引っ張られて慌てて前に向き直った。
(ビヒモーの奴、普段よりやる気ありすぎねーか?)
 リットは困惑していた。
「ありがとうお前たち。キャンプに着いてからを楽しみにしていろよ」
 ディレイン・オールドケイジに御者をされているビヒモーも上機嫌で軽快に駆けている。
 毛並みもいつもより明らかに良い。
(おやつだけでなくブラッシングもしてやらないとな)
 眠たげな目と無精ひげからは想像し辛いかもしれないが、ディレインは誠実に接したからビヒモーがそれに応えたのだった。
「リット君、前方注意だ。よーしよし、お前たちも気張ってくれよ」
 構われたリットを見て不満げな2頭を、ディレインが態度と語調で褒めて宥めていた。

●
 ひょろひょろ矢が敗残兵コボルトに届かず地面に落ちた。
 コボルトはそれを嘲笑う元気もなく、しかし落ちた場所から漂う塩と脂の匂いに気付いて思考の全てが食欲一色に染まる。
 残った力を使い尽くす勢いで、血を分けた兄弟を押しのけ干し肉を拾い上げようとしていた。
 凄惨な光景を目にしてもセリオスは冷静だ。
 矢にエーテルを込め、短弓から放ったとは思えぬ凄まじい加速で自ら仕掛けた罠に送り込む。最初の弱々しい矢は干し肉という罠を仕掛けるための手段であった。
 輝く矢は地面に触れる前に炸裂して無数の光破片に変わる。
 その1つ1つが矢の速度に相応しい威力を持ち、傷つき餓えた敗残兵を前から切り刻む。
 血で汚れた干し肉が、小さな指から離れて地面に転がった。
「コボルトが近くにっ」
 御者台のリットが騒ぐ前にノックスが気付いている。
 知らされていたバンビは凹みの端から真横に鉄壁を生成する。
 凹みは大きく蓋として塞ぐのは不可能。しかし極めて頑丈でコボルトにとっては想像の中にすら存在しない魔法の壁だ。
 甘い香りに釣られて勢いよく飛び出そうとして、強靱な壁で頭を強く打って二度と意識が戻らない。そんな個体が半数を超え、残った個体も酷い傷を負って混乱していた。
 ノックスは弓から剣に持ち替え荷台から飛び降りる。
 槍を持ったコボルトが、飢餓に苛まれた弱々しい足取りで向かって来る。
 彼等の狙いは食料だ。ノックスという脅威を全く理解も想像も出来ていない。
(ここで好きにさせればいずれは帝国本土まで、か)
 前に出る。
 コボルトが無意識に槍を付きだしノックスに向けようとするが追いつけない。
 大太刀に光刃をまとわせる。
 本体の刀身が1メートル半、光刃は実に10メートル越え。
 ノックスの剣技と腕力をそのまま伝える光の刃は、薄汚れた槍になど邪魔されずコボルトの五体を切り裂く。
 血と内臓が乾いた地面に湿気を与え、生臭い蒸気を立ち上らせた。
(拙いな)
 セリオスの目にキャンプの天幕が映る。
 その近くにコボルトの姿はない。このまま進むと、難民キャンプに防衛戦闘を強いることになる。
「リット」
 セリオスが御者の肩を軽く叩く。
「うん? ……あっ、分かった」
 ビヒモー車の進路が右へと変わる。
 チョコの匂いに釣られた飢餓状態のコボルト達が、逃げることも隠れることも忘れてひたすらにビヒモー車を追う。
「4人と1頭で倒しきれる数ではないが」
 セリオスが炸光矢や貫通衝撃射で1集団をまとめて倒しても、コボルトの生き残りは大勢いる。
「後は仕留めるだけだ」
 残りの5人が乗ったもう1両が、コボルトを追い立てながら接近してきていた。

●
 先行する車両が遠ざかる。
 高速回転する車輪は鋪装されていない道で耳障りな音を出し、強烈な甘い香りと共にコボルトの注意を惹きつける。
(ようやく鼻がきくようになりました……が)
 リザードマンを見慣れていない者は気付かないかもしれないが、ドローミは驚愕の表情を頑張って隠している。
(このコボルト達、練度が高いですね)
 ビヒモーの誘導に専念するディレインの代わりに強力な防御術をビヒモーへ提供する。
 淡い透明な光は華やかで、雌のビヒモーはどことなく機嫌良さそうだ。
 しかし効果は重厚だ。
 当たり所が悪ければ重傷やそれ以上が有り得る投石が、軽い打ち身程度にしかならずにビヒモーの毛に跳ね返された。
「よく頑張った。大丈夫だ、キャンプに着けば念入りにブラッシングしてやるからな。新鮮な野菜もだ」
 普段からは想像出来ないほど真剣なディレインは、柔らかな雰囲気の中に強靱な芯を感じさせる実に良い男に見える。
 ビヒモーは彼を気に入ったのか、あるいは単にブラッシングと食事に釣られたのか、どちらにせよ亜人に怯えないほど士気が上昇した。
「はは、多いねこれは」
 1体ずつ倒していたらキャンプに亜人を連れて行く展開になりかねない。
「これはプレゼントだ。お返しはいらないよ」
 ディレインが手綱を左腕で保持し、右腕で祭刀を掲げる。
 素早く宙に刻んだ祈りの印は、練磨はされているがどこか陰りがあった。
 荒野に六角の光檻が出現する。
 車両を追ってきた投石兵も、少数混じるようになった敗残兵の槍兵も、檻に一切影響を与えられない。
「切り札を使っちまったな」
 苦笑しビヒモーも世話に注力するディレインだが諦めてなどいない。
 この場には何人もの冒険者がいるのだから。
「これではまるで」
 国相手の戦争ではないですかという言葉をドローミが飲み込んだ。
「僕は索敵と牽制に専念します。倒すのは任せますよ」
 五感の中でも特に嗅覚を酷使し、数多くの戦いで磨いた看破術で隠れた敵を探し、見つける。
「右後方!」
 今は何より速度が優先だ。
 地面を跳ねるように揺れる荷台の上から、だいたいの方向と距離だけを考えエーテル入りの矢を放つ。
 炎ではなく光の破片の吹雪が、凹んだ地形で石を振りかぶっていたコボルトを切り刻んだ。
 ルチルの3人張りの強弓が恐るべき矢を放つ。
 ただ強いだけではなく、着弾地点で破裂し指向性を持った衝撃波をコボルトへと向ける。
 ドローミにより見つけられドローミによりあぶり出されたコボルトの隊伍が、たった1発の矢で文字通り粉砕された。
「あたいは情報屋であって兵士じゃないんだけどね」
「それは興味深い。しかしこの戦場も情報を得られる場所だと思いますよ」
 ドローミが礼儀正しく軽口を叩く。
「人をその気にさせるのがうまいね。参考にさせて貰うよ」
 ビヒモー車が走っているので、弓をつがえて放つ動作をしても移動が継続される。
 ルチルはそこに楽しさと戦力を感じながら、ドローミでも見つけられなかった数体を炸光矢で狙い撃つ。
 威力が低下する術なので一撃で全滅とまではいかなかい。
 しかし、気付かれない自信があった亜人は防御が疎かであり、放置しても死にかねないほど深い傷を負っていた。
 コボルト達の動きが乱れた。
 地面を駆け回る小さな……少なくともビヒモーよりはずっと小さなものを捉えられず行動選択に迷う。
(前のめりは止めな。お前が命を賭けるに値する敵じゃない。一撃離脱を徹底するんだ)
 ルチルとエーテルリンクを結んだ狼が、索敵して情報をルチルに渡すだけでなく後方からの奇襲役も見事に実行している。
 敵に与えるダメージはルチルの数分の1ではあるが、亜人の部隊行動を邪魔して速度を低下させるという点ではルチルすら上回っていた。
(珍しいですね。リットさんが流血していません)
 脳内または異なる次元で拍手っぽいものが響いているのを感じつつ、フリーダがひょいと荷台から飛び降りる。
 分厚い装甲と盾と剣に加えて、高さと速度がもたらす衝撃が足下から伝わる。
 しかしフリーダの強靱かつしなやかな体は衝撃を受け流してダメージらしいダメージを負わない。
「おいねーちゃん! こんな数相手に正面からやりあうって、大丈夫なのかよ!」
 速度を落としたビヒモー車で、リットが自らも剣を抜いて参戦するか迷っている。半減したとはいえコボルトの数が多すぎた。
「大丈夫ですとも。アールティ……んんっ、最短で片付ける好機ですから」
 大剣を片手で構えたまま、常識外の速度で加速する。
 決死の覚悟でリットとビヒモーに向け突撃してきた槍コボルトに、巨大な光塊付き斬撃をプレゼント。
 5体のうち実に3体が倒れ、残る2体の槍もフリーダの盾で弾かれる。
「死物狂いですね」
 コボルトの必死の目を見ても動揺しない。
(追い込まれた犬は暴れビヒモーより凶暴。啓示の通りです)
 後の個体は味方の弓矢に任せて再度加速。
 別方向から飛来した石を、盾と鎧を活かして防いで積み荷を守るのだった。

●
 戦いは終盤だ。
 コボルトは2両に迫り、冒険者はコボルトの大群を射程に収めた。
「補給線を断つのは戦略の基本。腹が減れば戦はできないのだ。うむ、偶々かもだがよくできてるのだ」
 ビヒモー車に並走していたストレガ・L・リベルガストラが足を止める。
 氷嵐の余波が舞う空間に槍兵コボルトが突入。
 倒れた同族を踏んで、止めを刺したのにも気付かずストレガ達への突撃を開始した。
「大丈夫なのだ」
 動揺するビヒモー達に悠然と頷くことで冷静にさせる。
 同時に酷く目立つ小さな雷の群れ(アーケインテンペスト)を地面に敷く。ビヒモー達が驚くが、直前に落ち着いていたので暴走するほどではない。
 コボルトの速度が激減。突撃が散歩未満に変わる。
 槍の穂先はストレガにもビヒモーにもたどり着けず、持ち主が後ろから押されてふらふらと揺れた。
「死に物狂いなのだ。前がつんのめれば」
 止めは攻撃術ではなく移動妨害術(スタティックフィールド)だ。
 既に足止めした個体だけを巻きこむ形で場を塗り替えると、突撃する後続が完全に足が止まったコボルト達にぶつかり悲劇を引き起こす。
 コボルトの体に突き立った槍を伝い血が流れ、コボルトの手を汚した。
 ノックスは、少しだけ興奮していることに気付く。
 刃が届く距離に数十のコボルトがいる。
 万全な状態で白兵戦を行うなら数で圧殺されかねない相手が、今は移動を封じられて案山子同然だ。これほどの好機は滅多に無い。
 大太刀の威力よりほんの少し弱い威力が、大きな光という形でコボルトの槍隊を覆う。
 奇跡的な幸運で拘束から抜け出そうとしているコボルトがいることに気付いた上で無視。
 攻撃に専念することで威力を向上させて、わずかなコボルトが一歩踏み出した瞬間、光塊を振り下ろした。
 砕けた肉と骨片混じりの液体が地面を汚す。生き残りは0だ。
 ノックスは振り返り、反対側の密集したコボルトも蹂躙した。
「追う必要はないのだ」
 ストレガは興奮したビヒモーを宥め、自らは魔矢を連射する。
 威力はそれほど高くはないが、士気も統制も崩壊したコボルトにはこれで十分だ。
 組んだ隊列が邪魔になり、まだ効果の続く稲光にも邪魔され逃げ切れない。
「彼方も生き残るのに必死なのだ。これはヒト族の手を借りれなかったゴールディの未来の一つなのだ」
 だからこそ押し通る。
 正義とは殴り合うもの。
 人類同士なら言葉の殴り合いで済むこともあるかもしれないが、人類対亜人の争いは血生臭い争いにならざるを得ない。
 ストレガはコボルトに対し、一切容赦はしなかった。

●
「とっとと解散しよーぜ。テントで眠りたい」
「リット殿、まだ治りきっていませんよ」
 おつかれー、と雑に挨拶して立ち去ろうとしたリットをドローミが首根っこを掴んで止めてヒールを行使した。
「今後ともご贔屓に」
 ルチルはリットに一言声をかけてから、商品(情報)を仕入れるためキャンプの中へ入っていった。

マスターコメント

 全ての荷がキャンプへ運び込まれました!
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 6〜8人

2021年03月16日 17時06分31秒 公開

成功

相談掲示板

  1. ディレイン・オールドケイジ

    ヒーラーのディレインだ。 見知った顔もいるみたいだけど、まあよろしく。 とりあえず、御者やる人以外は徒歩、って認識でいいのかねえ。

  2. フリーダ=ブロムヴィスト

    ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 基本的には匂いが目立たず機動力に優れた2両目を戦闘において偵察兼露払い、 その後狙われやすい1両目が警戒しながら進軍と行った形がベストでしょうか。 あるいは荷車に先んじて偵察役を用意して先行偵察してもらうのも良いとは思います。 どちらの場合でも荷車の護衛は欠かさないようにしたいところです。 そういえば、騎乗スキルはあるのですが……今回の場合御者に適応されるのでしょうか?

  3. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む 道中はフリーダが言うような感じでいいと思う 戦場1だとへこんだ地形に隠れるようだから捜波などでそういう地形があったら調べて反応があれば先に攻撃、ないし奇襲に備えられればいいだろうな。 戦場2の方は数がだいぶ多いから、近づかれる前にどれだけ削れるかだな。なるべく近づかれる前に範囲などで数を減らしたいところだが

  4. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    情報屋のルチルだ。 クラスはシューター。よろしく。 色々選択肢はあるがフリーダの言ってるヤツがわかりやすくていいと思うな。 軽装コボルトを釣り出すなら馬車を単独で動かした方が効率がいい。 危険はあるが先に偵察するより馬車で釣り出した方が多くコボルトを見つけやすいと思うよ。 荷馬車の操縦は疲れてるようだしリットに頼んだ方が安定するかね。

  5. ノックス・マグナ

    シューターのノックスです。 よろしくお願いします。 荷馬車を分けて動かすと戦力が二分される点には気をつけたいですね。 匂いがどこまで広がるか、それを嗅ぎ取るコボルトの嗅覚が不明瞭なので進路とは別の、偵察を行っていない方向から軽装コボルトがやってくる可能性もありますので。 私としては匂いのする馬車で釣りだした方が良いかなと思います。 リットさんは疲れていているようですし、戦闘で普段のパフォーマンスを発揮できるか分からないので御者を任せた方が良いと思います。

  6. ストレガ・L・リベルガストラ

    キャスター、ストレガなのだ。よろしくなのだ。 リットに御者を任せるの賛成なのだ。 敵集団より荷馬車のほうが移動力あるなら気づかれたなら停止せず突破の認識でおっけーなのだ? 軽装だけ気をつけたいところなのだ。 私は荷馬車1の護衛につくのだ。 戦闘にはアーケインとスタティック敷いて移動妨害して範囲攻撃投げるのだ。 ヒールも持ってビヒモーの治療にも対応するのだ。

  7. リット

    ウォーリアだけど今回は御者のような気もするリットだ! よろしく!

  8. ディレイン・オールドケイジ

    戦場1は軽装コボルトが投石してくるのが厄介だよねえ。ビヒモーが狙われて興奮とかされても困るしさ。 1集団ずつ釣れればなあ…ちょっと方法思いつかないんだけど。 あ、1回だけ片方の荷車だけなら、光縛封で守ることはできそう。 戦場2は、セリオス君の言う通りまずは数を減らして、その後は駆け抜ける感じ? 荷車1と2で移動力を合わせたほうがいいんかねえ。 それと、御者の片方を疲れてるリットに頼むのは賛成として、もう片方はどうしようか。 フリーダちゃんはウォーリアだし、咄嗟に動けるように両手はあけておいたほうがよくない?

  9. ドローミ

    遅れました、ドローミと言います宜しくお願いしますね。 回復と射撃、堅甲2を持ちます。 今までの感じだと、御者のとなりに一人は乗れるはずです。

  10. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    御者の一人はギルドから派遣されているよ。 ギルドから派遣された御者とリット、他に御者をやりたい者がいなければこれで一応人数は揃うはずだ。 >荷馬車のほうが移動力あるなら気づかれたなら停止せず突破 ここだが、馬車の移動力に満たないメンバーがいる事に要注意だな。 置いて行かれたり、護衛が誰もいないまま馬車が突っ走って行く危険がある。 アタイも移動力が3しかないから、余裕があるなら空いてる御者席や荷台に乗って行きたいが攻撃手段が近接のみの者はそうもいかない。 足止めを食らい続けるわけにもいかないから戦闘中の馬車移動はなるべく護衛に合わせた方がいいだろう。

  11. フリーダ=ブロムヴィスト

    >御者 OP文に書いてある「道案内兼御者が1人、難民キャンプから派遣されています」という部分なのですが、 この派遣されてきた方と言うのがリット様なのではないでしょうか? 勘違いでしたらごめんなさい。 >戦場2 敗残兵とはいえ総数100人というのは中々骨の折れる数ですね。 100人同時に襲撃されると流石に守り切れないと思います。 とはいえ強硬突破に成功したとしても、キャンプまで追跡して来たらそれはそれで危ない気もしますね。 突っ込む前にある程度相手の数を減らしてから向かう形の方が良いかもしれません。

  12. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    >御者 あー、明言されてないから別人と思っていたが確かにリットは「難民キャンプから来た」「授恵者」だな。 アタイの方が読み違えてたかも。 御者を担当するならできれば手が塞がっても支障が出ない者がいいか。 >作戦 ・荷車2を先頭に進軍して敵を誘い出し、荷車1は後続で進軍。 ・戦場1は敵の隠れそうな場所を事前に洗い出して襲撃を察知。 ・戦場2は敵の数を減らしながら進軍。 ・強行突破の有無は検討中。必要に応じて移動力を合わせる? ・コボルト全滅の必要はないが、討伐数に応じて成功度が上昇の可能性+キャンプにコボルトが襲撃する危険を減らせる。 上がってる案だとこんな感じか。

  13. バンビ

    ハイスピードキャスターのバンビですわ。 先行はお任せくださいませ。速やかなる一撃にて敵の出鼻をくじき、後続の皆さまにバトンタッチいたしますわ。

  14. ディレイン・オールドケイジ

    >御者 俺も、派遣されてるってのがリット君だと思ってたわ。 で、俺が荷車1の御者しようと思うんだけどどうかなあ。両手ふさがってても一番どうにかなりそうだし。 ビヒモーを守ることを優先して、戦闘始まったら堅甲使ってあげようかなって考えてるんだよね。

  15. フリーダ=ブロムヴィスト

    >御者 それではディレイン様に御者をお願いしたいと思います。 こちらはその分前衛として頑張りますね。 >行動 それでは荷車1の前衛として行動をしようと思います。 接近してくる敵を切った張ったで迎撃するつもりです。

  16. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    御者の役割、頼んだよ。 ではアタイは荷車1両目につこうか。 索敵と、スペースがあれば荷馬車に乗って弓での攻撃を行うよ。 ・1両目(後続) ディレイン(御者) フリーダ ルチル ・2両目(先行) リット(御者) バンビ

  17. ノックス・マグナ

    では私は2両目に。 前衛としても動けるので今回はそのように振る舞います。 ・1両目(後続) ディレイン(御者) フリーダ ルチル ・2両目(先行) リット(御者) バンビ ノックス

  18. ストレガ・L・リベルガストラ

    1両目なのだ。よろしくなのだ ・1両目(後続) ディレイン(御者) フリーダ ルチル ストレガ ・2両目(先行) リット(御者) バンビ ノックス

  19. ドローミ

    すみません 1両目に付くか乗るかします 看破と射撃 回復とビヒモー優先で堅甲2の付与になります

  20. セリオス・オーガスト

    ん、ぎりぎりで済まんが、戦力的に俺は二両目のほうがよさそうなので2両目のほうにのっておくな とりあえず周辺の索敵して警戒しながら射撃で援護する

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0