【蠱毒】死霊術師を追撃せよ

おおくまねこ

コメント 12

シナリオID:603

オープニング

●
「エフレム氏が封印地帯の結界の綻び調査に同行してくれる冒険者を探しているみたいだよ。君達、やってみないかい?」
 冒険者の店のマスターは一枚の依頼書を手にしながら、店でたむろしていた冒険者たちにそう切りだした。

 エフレムと言えば、亡国の皇子レイウェスト・バルダスの近衛騎士にして『召喚士の到達者』とまで謳われる、ロスガリア大陸でも有数の実力を持つリザードマンの授恵者(レシーバー)だ。そのエフレムが、ディズル大湿地帯にある「封印地帯」の結界の綻びが生まれた場所の調査に赴く予定だという。その調査に際し、冒険者ギルドにも協力を要請してきたらしい。
「おっと、封印地帯についても説明した方がいいかな。封印地帯といえば、超巨大クリーパー『泥血啜る月吸蟲』を封印している結界がある場所のことだ。結界はエーテルの乱れで自然に綻んでくるから、湿地帯に住むリザードマン達が定期的に修繕をしているんだけど、またその綻びが生まれたようだ。今回はその綻びの場所を探すのに協力する依頼というわけだね」

 封印地帯はディズル大湿地帯の内部に存在する石垣と川で物理的に隔離された土地なのだが、中は濃霧がたちこめている上、エーテルが乱れている影響で月吸蟲以外にも多数のクリーパーやアンデッドが跋扈している極めて危険な場所だ。
 結界の綻びの位置はエーテルの気配に敏感なエフレムならば、特定自体はそう難しくはないのだが、万が一、調査中に強力なクリーパーに遭遇した場合もエフレムは本気を出せない「事情」がある。彼はこの調査では召喚術は使うわけにはいかないのだ。そこで、冒険者ギルドにもお鉢が回ってきたというわけなのであった。
「エフレムは高名な授恵者だ。一緒に仕事をすればいい刺激にもなると思う。みんな、この依頼どうかな?」
 
●
「皆様の協力に感謝します。では行くとしましょう」
 冒険者たちと合流したエフレムは短く礼を言うと、早速封印地帯へと出発した。冒険者達はエフレムに先導され、跳ね橋のようになった門をくぐり、川を渡り、封印地帯へと入っていく。濃霧がたちこめる中、冒険者たちはエフレムと共に慎重に進んでいった。

 冒険者たちを引き連れ、結界の綻びを探して石垣沿いに移動していたエフレムはふと足を止め、手で冒険者達を制した。
「この先に、アンデッドと思われる者達の気配があります」
 その言葉を聞き、冒険者達の間に緊張が走る。

「――あれは」
 冒険者たちが見たものは、十体近い数の白骨兵士(スケルトン)が石垣に鉄球や槌を叩きつけ、結界の要石を傷つけている姿だった。
「ククク、その調子じゃ、亡者達よ」
 しわがれた声でアンデッド達に命令を下しているのは、紫のローブを目深く被った老人と思しき人物だった。
「貴様、そこで何をしている」
「ん? しまった、見つかってしもうたか」
「――」
 エフレムの声に反応し、男が振り向いた瞬間、冒険者達は言葉を失った。なぜなら、振り向いた老人もまた、白骨死体だったからだ。頭蓋骨の形状からして、エフレムと同じリザードマンだろう。
 間合いを保ったままエフレムが杖を構えると、死霊術師を守るように集まってきたスケルトン達が陣形を組んだ。
「これはこれは。『語らずの智者』エフレムのみならず、冒険者達までおるか。ここは退散するのが吉じゃな。スケルトン共よ、後は任せたぞ」
 言うが早いか、死霊術師は冒険者達に背を向け、封印地帯の奥へと向かって一目散に駆け出した。封印地帯の内部は濃霧が発生していて見通しが悪い。急いで追わなければすぐに見失ってしまう!
(月吸蟲への攻撃を控える今、召喚術を使って消耗することは極力避けたい。スケルトン程度が相手なら召喚術を使わずともなんとかなるか)
 エフレムは宝杖を振り上げてスケルトンの群れに飛び込むと、冒険者たちに向けて叫んだ。
「このスケルトン達の相手は拙が。貴方達は奴を追って下さい!」

解説

 目的:結界に対して破壊工作を行っていたネクロマンサーの追撃。  状況:冒険者たちはエフレムと共にディズル大湿地帯の封印地帯の結界の綻びの調査に赴きましたが、調査中、結界に対しては破壊工作を行っていた死霊術師に遭遇しました。逃走したネクロマンサーを追撃しましょう。  なお、エフレムは足止めとしてネクロマンサーが残したスケルトンの相手をする為、ネクロマンサーの追撃は冒険者たちだけで行うことになります。  ※ネクロマンサーの逃亡を許した場合、シナリオは失敗となります。 ●ディズル大湿地帯の封印地帯について  封印地帯は超巨大クリーパー「月吸蟲」を押し込めた湿地帯を、エーテルが清浄化された石垣と、その内側を流れる川により囲い込むことによって形成されている土地です。封印地帯内部は濃霧に包まれている上にエーテルが乱れており、クリーパーやアンデッドが多数生息する危険地帯です。  月吸蟲によってエーテルの乱れが広がると、封印にも影響が出るため、石垣にはエーテルの清浄化を保つ能力のある石柱が要石のように一定間隔で埋め込まれています。   ●登場NPC  エフレム  シルトラース帝国の皇子レイウェスト・バルダスの近衛騎士のリザードマンです。召喚士の到達者とまで謳われる召喚士ですが、今回は超大型クリーパー『月吸蟲』との戦いに備えて力を温存する為、白兵戦のみでスケルトン達と交戦します(今回は調査だけのつもりだったので自身が戦闘することは想定外でした)。  PCが殺されそうになった場合は封印している召喚術を解禁して助けに来てくれますが、その場合は後々のシナリオで悪影響が出る場合があります。 ※今回の調査にはレイウェストは同行していません。  死霊術師????  リザードマンのスケルトンの姿をしたネクロマンサーです。  ネクロマンスの他、氷嵐、エーテルバリア、光縛呪、ヒールなどの魔法を使用します。武器は短杖です。  移動力:6(追い付かれるまでは全力で逃走します)  蛇のスケルトン  死霊術師のローブの内側に隠れている蛇のスケルトンです。死霊術師に危険が迫ると護衛として活動を開始します。攻撃手段は牙です。  スケルトン×8  しっかりとした武器、鎧、盾で武装したスケルトンです。エフレムの足止め役なので基本的にはリプレイには登場しません。

マスターより

 こんにちは。おおくまねこです。本シナリオはディズル大湿地帯を舞台に展開する帝国連動シナリオの一シナリオです。今回は亡国の皇子レイウェスト・バルダスの忠臣、エフレムと共に封印地帯の結界を調査する依頼となります。とはいえ、オープニングで示された事情によりエフレムとは分断されているので、冒険者たちは独力でネクロマンサーを仕留める必要があります。ご興味がありましたらよろしくお願いします。

リプレイ

●
「このスケルトン達の相手は拙が。貴方達は奴を追って下さい!」
 エフレムが叫んだ時、すでに冒険者たちは死霊術師に向けて駆け出していた。
「いきなり逃げやがるとはな!? 逃がすかよ!」
「にゃ!? あのガイコツさん(仮称)、キャスターっぽいのにめちゃ早い!? でも足の早さなら負けないよー!」
 ハヤト=ガラン=ヴォルファングとサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブ、疾風足を発動したシーフの二人は、凄まじい速度で死霊術師を追いかけ、十秒と経たずに死霊術師に追いついた。
「何ッ!?」
「とうっ!」
 サフィラは死霊術師を間合いに捉えた瞬間、足からエーテルを噴射して飛翔し、死霊術師を飛び越え、進路を防いだ。
「ふふーん! かけっこ得意なシーフから逃げようだなんて百年早いんだからっ!」
 
「義を見てせざるは勇無き也、ですね」
 続いて、ルーファス・W・ワーズワースも突撃(チャージング)を発動して加速し、死霊術師を追った。さすがにシーフ二人ほどの速力は出ないが、ルーファスの全速力は死霊術師と互角だ。先行した二人が足止めしてくれていれば、すぐに追い付けるだろう。

「この霧の中では気休め程度だけど……」
 エルゼリオ・レイノーラはエンライトを発動し、辺りを照らしながら死霊術師を追いかけた。この封印地帯は濃霧のせいでひどく視界が悪い。足元を照らさないと沼に転落してしまうかもしれない。

「なんて足の速さ……! わたしじゃ追いつけない!」
 レイヤ・ダライ=カホールは唖然とした。
(結界へ破壊工作を? 封印の綻びはこれが原因だったんですか!? こんなことをするなんて、ディズルに生まれたものとして信じられない……そのうえ結界の内側へ逃げるだなんて……そこから来たモノだとでも!?)
「……追いかけなくちゃ!」
 色んなことが頭の中をぐるぐると回っているが、レイヤはすぐに気を取り直し、死霊術師を追った。エフレムが抑えられている以上、自分たちが頑張らねば。

「エフレム様……! すぐに片付けてきて加勢いたします。それまでどうかご辛抱を!」
 スィーリーンはエフレムに一言詫びを入れ、急いで死霊術師を追いかけた。できればエフレムと共に戦いたかったが、この状況ではそう贅沢は言っていられない。

「ここまで速い奴らがおるとはのう。仕方ない」
 死霊術師はサフィラから距離を取りながら短杖を取り出し、サフィラへと氷嵐を放った。同時にローブの袖口から白い鎖のような何かが飛び出し、ハヤトへと襲い掛かる! 

「うわっ!」
 ぞっとするような死の風を、サフィラはギリギリで見切って躱した。ハヤトも身を捻って鎖を回避する。すると、避けたはずの鎖が独りでにぬるりと持ち上がり、ハヤトの行く手を防いだ!
「シャー!」
「蛇のスケルトン!? うるぁ! ブレイブファング傭兵団のハヤト様が相手になってやんぜ!!」
 ロープのように見えたのは全長2メートルほどの蛇のスケルトンだった。さすがに骨格だけで判断できる者は冒険者の中にはいなかったが、これは「キングヘビ」属のスケルトン。サイズはそれほどでもなく、毒蛇でもないが、自分より大きな動物をも絞め殺す極めて獰猛な蛇だ。
「そらよッ!」
 ハヤトは双剣を抜くと、竜巻のように回転しながら三連撃(トリプルファング)を蛇へと叩きつけた。蛇を怯ませたハヤトはそのまま、フェザーステップで死霊術師と再び距離を詰める。
「追い付きましたよ」
 その時、ルーファスが戦場に駆け付けて来た。すかさず死霊術師にシーザーロアを叩きつける。

「魔法攻撃が得意そうだから……っと」
 サフィラは死霊術師に向けて魔乱印を発動した。
「ぬう!」
 魔力の集中を乱す光印を刻まれ、死霊術師は苦し気に呻いた。
(できれば捕まえて色々聞きたいけど難しいかなぁ?)
 サフィラは構えた死霊術師の様子を伺いながら思案する。可能なら捕縛したいところだが、白骨死体(スケルトン)? が相手では生け捕りは望み薄だろう。気絶とかもしなさそうだし。
 
「さて、誰を狙うか――」
 死霊術師は短杖を掲げると、黒い眼窩をきょろきょろとせわしなく動かした。狙われたのは――戦場に到着したばかりのルーファスだ。死霊術師の杖から放たれた紫色の氷嵐はルーファスを凍えさせんと牙を剥いた。 
「ッ!」
 ルーファスは咄嗟に『重点硬化』を発動し、氷嵐に耐えた。だがダメージは大きい。重点硬化の恩恵があっても、耐えられるのはあと二発が限度、という所だろう。
「……さて、まだ続けるかの? 逃げ帰るなら見逃してやるぞ」
 一撃入れて調子に乗ったのか、カタカタを歯を打ち鳴らして死霊術師は笑った。
 だが、ルーファスは怯まず死霊術師を睨み付けた。
「安く見ないで貰いたい。傷付く覚悟もなく前に立つほど甘えてはいない」

●
 その時、ルーファスは道中でのエフレムとのやり取りを思い出していた。
「何故貴方程の方が付いていて、レイウェスト殿下を最前線に置いているのでしょう」
「――」
「皇族たる者範たるべし、というのは分かります。ですがそれは、今。最悪の可能性を呑んででもしなければならない事なのですか」
 同じ趣旨の質問を、レイウェスト本人にもしたことがある。
 シルトラース帝国最後の皇族であるレイウェストは、かけがえのない存在だ。ならば護衛騎士(エフレム)は皇子の安全を第一に考えるべきなのではないか。
 ルーファスの問いは、エフレムの怠慢を糾弾するとも取れるものだったが――。
「殿下には授恵者(レシーバー)としての経験が必要なのです」
 エフレムは特に怒りは見せず、普段と変わらぬ口調で返答した。
「――」
 意外な答えだった。ルーファスはもう少し詳しい説明を期待したが、『語らずの智者』がそれ以上語ることはなかった。
 
 ●
(エフレム卿の真意は分からない。だが、この男(死霊術師)を野放しにすれば確実にレイウェスト殿下にとっても凶事となる)
 帝国再興を考慮するなら、こんな最序盤で躓くわけにはいかない。ルーファス自身は外様の王国貴族 だが、それでも縁というのは有る物だ。義を見てせざるは勇無き也。レイウェストに助力すると決めた以上、この男は絶対に逃がさない。

「フム。やはり引かんか。ならば――」
 その時、死霊術師の後ろの空間にエーテルの稲光が走った。レイヤの稲妻(アーケインテンペスト)だ。
「ぬう!?」
「追い付き、ました!」
 その時、エルゼリオ、レイヤ、スィーリーンの三人が追い付いてきた。
「……これはちとまずいの。エフレム以外全員揃ってしもうたか」
 鎌首をもたげている蛇のスケルトン、そして、亡者であるにも関わらず饒舌に喋っている死霊術師の姿を見て、エルゼリオは息を呑む。
「ただのアンデッドとは思え無い。――死霊術師さん、一体何者なの……?」
「ククク、良かろう。減るものでなし、名ぐらいは教えてやろう。我が名はドレイク。死を超越せし、不滅の死霊術師(ネクロマンサー)よ」
 髑髏の死霊術師は、よくぞ聞いてくれたとばかりに饒舌に己の名を語った。
 ドレイク。それが奴の名であるらしい。
「何者ですか、あなたは……! いったい!」
 レイヤが叫んだ。
(しかしなんて強力な……アンデッド? にしてはずいぶん明瞭な)
 レイヤはドレイクの在り様に強い違和感を感じていた。普通のアンデッドは生前の意識をとどめない。それに、白骨化した後アンデッドになった上で老人のような言葉遣いで話すことも奇妙に感じる。死霊術での魂の操作なのだろうか?
「結界を破壊して、何をするおつもりですか?」
 スィーリーンは死霊術師へと問いかけた。

「クク、さてのう? まさか封印されておる月吸蟲(デカブツ)に用があるわけでもなかろうしなあ?」
 カタカタと歯を鳴らし、ドレイクは笑った。当然だが、まともに答える気はないらしい。

「さて、話はしまいじゃ。一人二人ぐらいは道連れにしてくれよう」
 死霊術師は杖を振り上げ、ルーファスに向けて紫色のエーテルの弾丸を放った。
 ルーファスは再び「重点硬化」を発動し、敵の魔法攻撃に耐える。
「ハヤトっ! 合わせて!」
 サフィラは赤光のエーテルを纏い、双剣を一閃した。赤いエーテルはドレイクの外套に絡みつき、その動きを鈍らせる。
「おう!」
 ハヤトもサフィラと息を合わせ、双剣の三連撃を叩きつけた!
「ぬう!」
 二人の猛攻を両手でガードするドレイク。その骨がみるみるうちにひび割れていく。護衛の蛇がハヤトを狙って噛みついたが、ハヤトはひらりと身を躱した。

(蛇が護衛であるのなら、術師が逃げられない限り矛先は此方へ向くだろう)
 ルーファスは味方を巻き込まないよう慎重に位置を調整すると、光の斬撃でスケルトンとドレイクを纏めて薙ぎ払った。死霊術師が再び逃走を試みないよう注意深く様子を伺いながら、振り抜いた剣を構え直す。
(例え、何者かの端末であろうと。今は断じて逃がすわけにはいかない)

「猛き勇者達に祝福を! 『レゾナンス・オブ・ヴァロー』!」
 エルゼリオの祭刀からエーテルが迸り、冒険者たち6名はエーテルの加護を得た。さらに、エルゼリオは負傷しているルーファスへと治癒(ヒール)をかけた。
「援護、します!」
 レイヤの杖からドレイクへと炎球(フレイムゲイズ)が放たれた。ドレイクに着弾し、爆裂した業火はまるで意志を持っているかのように蠢き、味方は避けてドレイクとスケルトンの全身だけを焼き焦がす! この炎が致命傷となり、蛇のスケルトンはただの屍に還った。
「もうやられてしもうたか! 役に立たぬ護衛じゃの!」
「逃がしはしませんよ」
 動揺した一瞬の隙を突き、スィーリーンのフリーズボルトがドレイクを直撃した。
「くっ……!」
 六人の冒険者に完全に包囲され、孤立無援となったドレイクに、もはや逃げ出す隙などありはしなかった。

●
 数十秒後――。
「――皆はボクが護る!」
 エルゼリオのエーテルブローが突き刺さった時、ドレイクの体は崩壊を始めた。
「ふはははは! やるではないか!……エフレム抜きでも敗れるとは! はははは!」
 骸骨の死霊術師は陰惨な笑い声を上げながらガラガラと音と立てて崩れ去った。
 ――そして、辺りは静寂を取り戻した。

「そうだ、エフレムさんは!?」
 エルゼリオは叫んだ。
「まだ戦っている、音が、聞こえます! そんなに、距離は、離れてない、はずです!」
「すぐ引き返しましょう!」
 エルゼリオ、スィーリーン、レイヤはエフレムの身を案じ、すぐに元来た方向へと引き返した。
「オレはこいつの死体を回収してから行く! また動き出すかもしれねーからな!」
「では、念の為に私も残ります」
「分かった! ハヤトとルーファスくんも気を付けて!」
 二人に応答するテフィラ。ハヤトとルーファスを残し、冒険者たちは急いで道を引き返した。

「皆さん、御無事でしたか」
「エフレムくん、アイツは倒した! あたしたちも一緒に戦うよ!」
 冒険者たちはエフレムに加勢し、まだ2体残っていたスケルトン達を掃討した。
 
●エピローグ
 冒険者たちはエフレムと共に封印地帯を脱出した後、死霊術師やスケルトンを回収し、冒険者ギルドに提出した。尋問は叶わなかったが、解析すれば何か分かるかもしれないと期待してだ。
 その日はもうすっかり日が落ちていたので、冒険者たちはエフレムと共に宿を取ることとなった。
「そういえば、ヤコブんも死霊術師だよね? 『メドゥの指先』が絡んでるのかなぁ?」
 サフィラはエフレムに聞いてみようと思い立ち、彼の部屋を訪ねようとしていた。
「……およ? あれはスィちゃん?」
 すると、サフィラはエフレムの部屋の前を行ったり来たりしているスィーリーンを発見した。
「お、ホントだな」
 ちょうどエフレムに聞きたいことがあったハヤトもひょっこりと顔を出し、テフィラと合流した。

●
「うちの団員であんたのファンがいるんだが色々と話してやってくんねーか?」
「拙は構いませぬ」
「そっか。助かる。ほら、スィーリーン」
 ハヤトはニカッと笑うと、廊下にいたスィーリーンを引きずり込み、エフレムの前に突き出した。
「……」
(あのエフレム様とお話ができるなんて……!)
 スィーリーンは胸が高鳴るのを感じていた。スィーリーンはエフレムの大ファンなのだ。
 大陸最強の召喚士と名高いエフレム。自分もいつか彼のように偉大なキャスターになりたいと、スィーリーンは憧れているのだ。なんとファッションセンスまで彼の真似ているほどの熱の入りっぷりである。
「あの……!」
「……」
「封印地帯の調査ではありがとうございました! 足止めをして頂いて……」
「こちらこそ。お陰で兄者(アシムベート)に良い報告が出来ます」
 あのエフレム様が私に礼を……! 光栄の余り卒倒してしまいそうだ。
「……」
 どうしよう。うまく言葉が出てこない。エフレム様の私生活とか聞いてもいいのだろうか。いや、それよりもどうすればエフレム様のように魔力を高めることができるかを――。
「……」
 エフレムは生真面目だが、ファンサービスができるような器用な男ではない。喜びの余り精神の均衡を失っているスィーリーンと、寡黙なエフレム。沈黙が続いた。
「せっかくだし魔法でも見てもらえばいいんじゃない?」
 見かねたサフィラはスィーリーンに助け舟を出した。
「見るだけならば構いませぬ」
「ぜひお願いします……!」
 エフレムの返答はなんとも愛想のないものだったが、スィーリーンはとても嬉しそうだった。
 その後、スィーリーンは自分の魔法を幾つかエフレムに見てもらった上、エーテルの扱い方について少しだけアドバイスをもらったのだった。

「なあ、帝国の崩壊ってのはどんなだったんだ?」
 その後、ハヤトは直接崩壊を体験したエフレムに状況がどうだったのか投げかけてみた。ハヤトの両親も帝国領内で行方知れずになっている。もしかしたらエフレムならば、何か手がかりを知っているかもしれないと期待してのことだった。
「……」
 ハヤトの問いに、エフレムは沈黙した。
「あ、悪い。言いたくねえなら――」
 いたたまれなくなったハヤトがそうエフレムに言いかけた時。
「……この世の終わりのような光景でした。……拙には、殿下をお救いするのが精一杯でした」
「そっか」

●
「皆さん、お世話になりました」
 エフレムは冒険者たちに頭を下げた。調査結果は上々だ。結界の綻びが急速には早まっていた原因。その全てがあの死霊術師(ドレイク)の仕業であったのかは分からないが、実行犯と思しき男を逃がさず倒すことができたことは小さくない収穫だ。

「ですが――ドレイク自身も本体ではなく端末だった可能性がある」
 ルーファスはぽつりと呟いた。
「ええ。あの死霊術師には、不自然な点が、幾つか、ありました」
 ルーファスの言葉に頷くレイヤ。
 もしあの男がまだ生きているとすれば――封印地帯の危機はまだ終わっていない。

「また、力をお借りするかもしれませぬ」
 エフレムは最後にそう言って、レイウェストの元へと帰っていった。
 嵐の到来を予感しつつ、冒険者達はエフレムを見送ったのだった。

マスターコメント

 エフレムがスケルトン達を全滅させる前にドレイクを撃破できたので、結果は大成功です。おめでとうございます! 称号も全員付与としました。  ディズル大湿原の封印に関するお話は今後も出していく予定です。ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:多い6 / 4〜6人

2021年03月01日 02時10分51秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. レイヤ・ダライ=カホール

    レイヤ・ダライ=カホールです、クラスはキャスター。よろしくお願いしますね。 結界への破壊工作!?なんてことを! しかも結界の内側へ逃げるだなんて…そこから来たとでも? いったい何者でしょう?逃がすわけにはいきません! まだ詳しいことは考えてませんけど、 とりあえず距離を離される前に移動阻害とか掛けていきたいですね。

  2. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    にゃ!シーフのサフィラだよっ! むむ!キャスターっぽいのに逃げ足がめちゃ早い!追いかけっこだったら負けないんだからねっ!(ふんす)

  3. スィーリーン

    エフレム様とご一緒出来るなんて……! お役に立てるよう尽力しませんと! あ、ええと、キャスターのスィーリーンと申します。 よろしくお願いします。 死霊術師?もリザードマンなのでしょうか? 結界を壊そうとする様な輩が同胞とは思いたくありませんけれど、 ともあれ逃がす訳にはまいりませんね。 私も魔法での移動阻害等を考えております。

  4. ルーファス・W・ワーズワース

    ウォーリアのルーファスと言います。どうぞ良しなに。 死霊術師さん少し驚くくらい足速いですね…… と、とりあえずチャージングを連発して距離を稼ぎますか。 移動阻害が成立していれば阻害分だけ距離が縮まる筈ですし。 ある程度距離が縮まったらシーザーロアを試みてみようと思いますが、 この感じだと僕の役割は蛇のスケルトンの相手ですかね。 魔法攻撃対策は取っていますが、物理の方が対処が容易なのは変わりませんし。

  5. ハヤト=ガラン=ヴォルファング

    おーっす! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、みんなよろしくな!! 死霊術師のくせになんだあの逃げ足の速さ!? こいつは疾風足で一気に回り込んで足止めしねーとだな! んで、足止め出来たらあとは皆で囲んでフルボッコって感じだろ? 範囲魔法警戒すんならみんなの距離は保って囲み攻撃が良さそうだな。

  6. エルゼリオ・レイノーラ

    ヒーラーのエルゼリオ・レイノーラだよ。 今回は宜しくね! 死霊術師さん、凄い足の速さだよね~; シーフより速いって一体…肉がない分、身が軽いから?( 一応、視界確保用にエンライトを持って行くつもりでいるよ。 無いよりはマシかなー?って。 それと、光縛呪を使ってくるみたいだけど―… これって戦意喪失した人にしか効果ないよね?

  7. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    とりあえず、あたしとハヤトは疾風足 ルーファスはチャージングで追っかけて レイヤとスィちゃんがアーケイン使って移動を邪魔する感じかなっ? 氷嵐とか厄介な魔法が多いから魔印乱と対魔感持ってこうかなっ >エルゼリオ あ!それあたしも気になってた! 気絶させて使うにしても、今回のシチュだと意味あるのかなっ? それとも、冒険者のスキルとは仕様が違うのかなっ??

  8. ルーファス・W・ワーズワース

    >動き そうですね。疾風足を使える方は回り込んで頂けると、 シーザーロアが効いた場合に背中側に位置出来るので 攻撃がより当てやすいかもしれません。死角になりますから。 >光縛呪 難易度がもう1段階位高ければ、気絶させる手段を疑うのですが。 うーん、良く分からないですね。使えるよ、というだけの話でしょうか。 個人的にはさらっと出て来ている「ネクロマンス」なるスキルも気になりますが。

  9. レイヤ・ダライ=カホール

    そうですね、アーケインで… いや。当てられるなら【移動阻害】のほうが暫く効果が続く分、フリーズボルトのほうが良いかも…? 悩みどころですね。 ところでウォーターウォークはいりませんか?周囲は川や湿地ですからあれば走りやすくなると思います、 射程が0なので持っていくか悩んでるんですけど。 >光縛呪 確かに光縛呪が効果を及ぼすのは無抵抗の対象…。死霊術の材料にする…のは死体でしょうしね。 うーん。いったいどういう…? あと気になるのがあの死霊術師。白骨化した骸のアンデットにしては意識が明瞭です。 よそから動かされている端末、なんて線もありそうだなって思います。

  10. ルーファス・W・ワーズワース

    >移動阻害 うーん、移動力が速い=命中回避が高い。では決してないので 割と何とも言い難いのですが、恐らく、推定格上……と、仮定すると。 フリーズボルトは微妙かもしれません。命中判定を経由するので。 ただ、回数は圧倒的にフリーズボルトなんですよね。 もしも命中を全力で引き上げられるならフリーズボルト優勢。 それ以外ならアーケインが安全と、いう気はします。 >ウォーターウォーク 有れば便利。という気はしますが優先するほどか、は未知数ですね。 恐らく最多地形の沼地や湿地にウォーターウォークが効くか不明なので。 ただ川には確実に効くので、今後のことを考えて実験的に。 ないし枠が有れば、辺りの位置づけになるかと。 >意識鮮明 なるほど、端末という可能性は如何にも有りそうですね。 となると案外、ジャマーや残留思念感応なんかが 効果的である可能性も有りますか。や、僕は持っていないのですが。

  11. エルゼリオ・レイノーラ

    >光縛呪 現状、用途が不明だから不気味ではあるよね! >意識鮮明 確かにその辺は気になるなぁ。 上位のアンデットだと意識を保っていられる…とか? >行動 エンライトで視界確保しながら死霊術師さんを追跡。 発見後はレゾナンス・オブ・ヴァローをサブアクションで全体付与してから、 前衛兼盾役として盾を構えつつ、エーテルブロー2での近接攻撃を仕掛ける予定。 負傷者はヒール2で回復&全体の負傷率が高くなった頃を見計らって、ヒーリングオーラで全体回復するよ!

  12. ハヤト=ガラン=ヴォルファング

    俺は個人的にサフィラと連携して疾風足で回り込んで足止め。 そっからはヒット&アウェイで倒しにいく感じだな。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0