【蠱毒】封印地帯へ少年は向かった
岩岡志摩
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シナリオID:577
オープニング
ディズル大湿地帯にはリザードマンたちの部族が複数存在し、それぞれの縄張り内にある集落に暮らしていると言われている。
その中でもターミル族は、リザードマンの中でも特に農耕を重視し、浮遊農場の制作や普及に加え、湿地帯での兵站を担う重要な立ち位置にいる。
そのためか、ここターミル族が暮らす集落周辺には浮遊農場が幾つも存在し、周囲に点在する霧を貫いた陽光が、大規模と言える農地を照らしている。
一目で農耕が盛んだとわかる光景が、この集落周囲に広がっていた。
一方で、この部族に所属する者達は武芸にも関心を示し、幼いころから武勇に秀でた他の部族から武技や戦術を学ぶ機会を増やしている。
それはターミル族として生を受けた『ディノ』という少年も、例外ではない。
彼は農耕を重視する部族の中では、鍬を振るい農地と会話をするよりも、剣を握り誰かを守りたいと願う心の持ち主でもあった。
●騒動
そんなディノが暮らすターミル族の集落で、1つの騒動が起きる。
「だれか、誰か助けて! お姉ちゃんが! お姉ちゃんが!」
集落の中より、リザードマンの女の子が悲痛な叫び声をあげ、助けを求めていた。
すると周囲の者達が集まってきて、女の子の話を聞いている。
どうも女の子と一緒に暮らす同族の女性が苦しみだし、それを女の子が助けてほしいと周囲に訴えているようだ。
リザードマンは家族の概念が希薄と言われているが、その家で暮らしていた女の子と彼女が『お姉ちゃん』と慕う女性は、お互いの交流の中で絆を培っていた。
幸運にもこの集落には、薬学を努力して学んだというリザードマンの薬師もいた。
さっそく診察が始まるが、診察を行った薬師は表情を曇らせる。
「これは今集落にある薬では治りにくい病気ですね」
薬師は患者周囲の環境を暖かくする作業を行いながら、病名を告げる。
薬師曰く、この病気は風土病とは言えないくらい発症率が低いが、一度病気になると通常の薬や、治療に有効とされる暖かくして過ごさせる方法では快復が難しく、新しく薬を調合する必要がある。
「ただその薬を調合するには、1種類だけ入手困難なものがあります」
それはこの集落周辺には存在せず、生育条件が特殊なため薬師が知る限りでは1か所のみ。
「『封印地帯』に通じる石垣の間の通路の1つに、泉が湧き出ているところがあります。その周辺で咲く紫がかった花の実が、この病気への薬を作るために必要です」
薬師の言葉に、集落の者達は沈黙する。
封印地帯とは、ある大型級クリーパーを物理的に封印した場所にあたる。
そのクリーパーはエーテルの乱れた湿原でしか生きられないと言われ、エーテルが清浄化された石垣と川で封印を形成して閉じ込めている。
そういった経緯から、封印地帯は周囲の湿原とは隔絶された環境にあり、周囲にもアンデッドや魔獣の姿が確認されていることから、近づくのは危険が大きい。
行けるとすれば、それは授恵者といった強者だろう。
ターミル族の集落は冒険者に依頼を出すべく動き、やがて彼らは近くの集落まで別件で立ち寄った冒険者達がいるという情報を掴む。
ただ依頼を出してから、実際に冒険者達が来るまでは時間がかかる。
それまでに患者の容体は持つだろうか?
そんな空気が漂う中、集落で暮らす子供の1人があることを大人に伝える。
「ディノが薬になる実を探しに、封印地帯の方向へ走っていった」
それを聞いた集落の人々はディノを救うべく、追加の使者を冒険者達のいる集落へと走らせる。
●依頼
ターミル族の集落から急ぎ駆けこんできた使者から情報を受け、同席していた職員は依頼に応じてくれた冒険者達に向き直る。
「すまない。依頼内容だが若干訂正させてほしい」
使者から聞き出した情報を含め、職員は再度説明を重ねる。
「みんなに行ってもらいたい場所は、『封印地帯』と呼ばれる地域の周辺、石垣の間にある通路であることに変更はない」
そこにある泉周囲に生息する紫がかった花の実を採取し、ターミル族のいる集落まで届ける。これも変わらない。
「ただみんなが現地に到着してその花の実を探す間、どうしても遅れが生じる。それを待ち切れずに先走った者がいたらしい」
それは集落に暮らすリザードマンの少年で、名はディノという。
以前から農耕よりも武技に興味を持ち、剣を握り誰かを守れる存在になりたいと話していたことから、今回も困っている人を助けたい一心で『封印地帯』に向かったのだろうと、使者は言っていたようだ。
「現地近くまでは集落から案内を出すので、みんなはその後についていけばいい」
ただしその花の実が取れるという件の通路は、元はリザードマンだったスケルトンといったアンデッドや魔獣達の徘徊する危険な場所になっており、そこまでは集落のリザードマン達も付き添えず、手前で待機するとのことだ。
「そのディノという少年が向かったということは、薬となる実が存在する場所に心当たりがあると考えていいだろう。彼を保護し、薬となる実の回収を頼む」
そう言って職員は皆様に頭を下げる。
使者の話では、通路を徘徊するアンデッドや魔獣は、何故か石垣のある地域より外側に出ることはないので、ディノを救助し花の実を回収した後、そこまで退けば安全が確保され、依頼達成となるようだ。
「お願いします。どうか一刻も早くディノを助けてやって下さい」
ディノの行動は褒められたものではないが、使者として冒険者達に依頼を持ち込んだリザードマンは、ディノのことを心から案じていた。
「悔しいですが、現地はアンデッドや魔獣が多くて私達では向かうことができません。ディノを救えるのは皆さんしかいないんです」
そう言って使者は皆様に向け頭を下げてくる。
急がなければディノという少年の命が危なくなるのは確かで、彼を救うことができるのは。
今この場にいる皆様しかいない。
●邂逅
荒い息をつきながらも、緑の鱗を持つリザードマンの少年――ディノは片手に棒を握り、なおも集落を目指す。
ディノは何度も転びそうになるが、紫の花から採取した実をもう片方の手に抱えこみ、ひた走る。
その後ろには、ディノを獲物とみなしたリザードスケルトンや魔獣達が、骨を軋ませる音や咆哮を発して追いすがる。
走る/疾る/奔る/迫る。
逃げる/追う/飛ぶ/跳ぶ。
どうにか封印地帯を囲む石垣の外まで逃げきれるかと思われたが、ディノは藪に足を取られ、その場に転倒。
とっさに抱えた実を庇い、地面に体を叩きつけたディノが起き上がったころには、行く手を骸骨達が塞ぎつつあった。
――ここで実を潰されるわけにはいかない。
ディノは自分自身の命よりも、腕の中で守り抜いた実の安全を優先し、逃げ道がないか素早く周囲を見渡す。
ここでディノの視界は、こちらへ駆けてくる見知らぬ人々――冒険者達の姿を捉えた。
とっさにディノは自身の身に着けている布で花の実を包むと、冒険者達がいる方角へと投擲して叫ぶ。
「どうかそれを持って、集落に――!」
それ以上の言葉をのみ込むと、ディノは周囲の骸骨や魔獣達の関心を自分に向けさせるため、立ち上がると封印地帯のある方角へ駆けだした。
目論見通り、骸骨や魔獣達はディノを追いかけ、冒険者や放り投げられた花の実より遠ざかっていく。
それを見て、冒険者である皆様は――。
解説
マスターより
リプレイ
現場に駆けつけた冒険者達の選択は、ディノと薬となる実の両方を守る事だった。
「少なくても、ここで見捨てる選択肢はないですね」
グレイブ・ヤードは花の実近くまで移動し、周囲にいるモアギブンス(以下『猿』と略)を牽制すると共に、レゾナンス・オブ・ヴァローを行使。
グレイブの声と共に解き放たれたエーテルによって、周囲の冒険者達の身が淡い光に包まれ、その身体能力を向上させていく。
「この後の無茶を押し通しやすくしました。その後は退路確保を兼ねて敵の駆除を行いましょう」
――無事に戻るまでが依頼ですからね。
そんなグレイブへの援護も兼ねて、キーゼも花の実の防衛に回る。
「今のところ、実を狙う敵になるのは猿くらいでしょうか?」
超聴覚によって捉えた音と天眼で得られた視点が、敵の動向をキーゼに教えてくれる。
「居場所や動きは把握済みです。奇襲はさせません」
キーゼは花の実を守るべく、光縛封を行使。
キーゼの祈りとともに、光を放つ六角形の柱がその場に顕現して花の実を包み、光の壁が猿達の侵入を阻む。
「別の敵が来ないうちに、早々に撤退したいところかな」
アスティン・ヴェルラインは狼のリュリュを花の実への守りにまわし、自らは戦術眼と天眼を駆使して、敵の動向や周囲の状況を把握していく。
「ところどころ視界が悪いけど……この距離なら何とかなるかな」
敵の撃破と足止め、そして味方の退路確保を自分の役割と定めたアスティンは、ディノを追う骨の1体にダマスカス鋼の強弓を向け、弓弦を引き絞る。
「……退路は塞がせない」
呟きと共に、アスティンは攪乱射撃を行使。
弓弦が矢を放つ響きと共に、対象を侵すエーテルを纏う矢が骨の背に突き立ち、射抜かれた骨は命中精度が粗くなる。
キーゼが花の実の守りを引き受け、グレイブやアスティンの援護を受けた冒険者達は、ディノのもとへひた走る。
その途中でリザードマンスケルトン(以下『骨』と略)の1体が立ち塞がるも、アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトがこれに対処する。
「ディノ君を救ってみせる。リザードマンスケルトンを倒し、皆の退路を確保するぜ!」
既に行使したチャージングで移動力を上げたアルベルトは、そのまま骨へと肉薄するなり紫電一閃を行使。
「逃がしはしない、見逃すと思ったか?」
アルベルトの宣告と共にダマスカス鋼の大太刀が、力と速度を兼ね備える鋭い一撃と化して、骨に繰り出される。
大太刀は戦士の一断によって燃え上がるように眩く輝き、骨の身を縦に断ち割ると、骨は仰向けに倒れ、その身が崩れていく。
「一緒に戻りましょう、置いていける訳がありません!」
コルネリウス・アーラはディノに呼びかけながら、強引にディノと骨達の前へ割り込む。
そのままシーザーロアで骨の戦意(?)を自身に向けさせたコルネリウスは、ダマスカス鋼の盾を押し出し、骨を食い止めながらディノに忠告する。
「ひとりで解決しようと思わないで。誰だってどんなに強くてもひとりで出来ない事は沢山あります。私達だってそうです」
そしてコルネリウスは攻撃を続ける骨に向け、強打2を行使。
鋼の大剣が威力を重視した強力な一撃と化して骨に叩きつけられ、一撃を浴びた骨は骨片を散らしてよろめく。
その骨と入れ替わるように、猿の1体が周囲の石垣を足場に宙へ跳躍して襲いかかる。
猿の攻撃がディノやコルネリウスに届く前に、疾風足で加速し、ディノを追っていたサニー・フォン・オルライトが跳びあがり、宙で猿と交錯する。
「こんな事されて助けられても、助かった人は喜ばないよ?」
その一瞬、サニーの行使したダブルエッジによって鋼の爪と鋼の細剣が交互に繰り出される。
2度身を裂かれた猿が血を撒いて落下し、地面に叩きつけられる中、サニーが着地する。
「これ以上勝手に動かないようにね。今は戻れなさそうだから、この場で防衛するつもりだよ」
サニーはディノにそう言い含めた直後、ディノの周囲に光の柱が顕現する。
駆けつけたフェイサル・セイフが行使した光縛封だ。
「剣では殺せぬ敵と闘い、命を救おうとするその意気は認めよう」
フェイサルは、ディノの意気込みについては否定しない。
「だが、それもともすれば蛮勇となる。諫言の為にもまずは全力で救い出さねばな」
今は戦闘中の為、それ以上の言葉をのみ込んだフェイサルは、組みあげた光の壁で骨や猿からディノを守る。
その間に、ディノと同郷にあたるハリス・アル・ターミルも駆けつける。
「病を治す代わりに若き同胞を喪ったとして、誰が喜べるものですか! 貴方は彼女の命だけを救い、心に永劫残る傷を刻むところだったのですよ!?」
郷土愛が強いハリスは、同胞にあたるディノは守る対象と認識しつつも、勇を貴ぶ者達の『熱』にディノが浮かされたのではと考えていた。
誰かを救うための勇気はハリスも否定しないが、自分が犠牲になることは間違いだと断じる。
「ディノ! よく見ておきなさい、この戦いを!」
そう叫んだハリスは、骨達に突っ込むと闘気槌を行使。
巨大な光塊を纏うダマスカス鋼の槍が打ち下ろされ、その威力を浴びた骨達は損傷を蓄積させ、骨片が宙に散った。
●退却
ディノと花の実を確保できた冒険者達は、次の行動に移る。
「退路の確保は引き受けたぜ。闘いが終わったらディノ君の勇気を称えるか」
ダマスカス鋼の盾で骨の攻撃を受け止めたアルベルトは、そう言いながら闘気槌2を行使。
巨大な光塊を武器に纏わせた大太刀が強く振り下ろされ、解放された威力が周囲の骨達だけを打ち砕き、四散させる。
「このままディノ君を救出して、花の実を確保して集落に戻ろうぜ」
アルベルトが退路となる空間の維持に努める間、アスティンも援護射撃を続け、これを支援する。
「……命を懸けて誰かを助ける、一見すると美談だけどね」
アスティンはディノの行動に思うところはあるが、今は依頼が優先と意識を眼前に引き戻す。
「……連れ帰るまでが依頼だ。やらせない」
アスティンは追ってくる猿や骨に向け、濃煙炸弾を行使。
エーテルで形成された光弾がアスティンより発射され、放たれた光弾が仲間達と敵の間で炸裂すると、濃い煙幕を形成し敵の視界を塞いでいく。
「敵の移動力を考慮すると、猿はある程度殲滅しておきたい所だよね」
サニーは超聴覚で猿達の立てる音を感知すると、壁歩きを駆使して石垣の壁面を駆け上がり、壁面を伝ってきた猿へダブルエッジを行使。
振るわれた鋼の爪と細剣への手応えと共に、胴を裂かれた猿が宙に血を撒いて落下し、地面に叩きつけられる。
「特に猿の移動阻害は絶対に避けたいよね。攻撃される前に撃破を続けることにするよ」
サニーは壁歩きの効果のある間、猿達への警戒と牽制を続け、コルネリウスも殺界を行使。
「私は引き続き陽動を行い、退却の為の時間を稼ぎます」
大剣がエーテルを纏って長大な刃を形成すると、周囲に不可視のエーテルを張り巡らせ、猿を押し包む。
「敵の深追いはしません。安全が確保され次第、殿を務めて即座に撤退行動に移ります」
猿を屠ったコルネリウスは敵の撃破よりも、ディノの防衛を優先する。
「安全が確保されるまで、黙って見ていることだ」
フェイサルは何かを言おうとしたディノを制し、ヒーリングオーラや解呪を駆使して仲間達の治療にあたる。
「私達が君に、正しい命の使い方を教えよう」
フェイサルの行使した術によって、冒険者達は骨や猿より受けた攻撃から回復し、敵との戦闘を継続する。
フェイサル自身も友人にあたるハリスの縁者の危機、それも病気絡みと聞いて奮起し、今回の依頼に参加しているが、そのことはおくびにも出さない。
そのハリスは、コルネリウスと連携する形で骨達への迎撃を続けている。
「我が前で……同胞を殺させはしないッ!」
重点硬化により、輝くエーテルを纏わせたダマスカス鋼の盾で攻撃を凌いだハリスは、ドラゴンチャリオッツを行使。
エーテル光を全身に纏ったハリスが、盾を構えて地を蹴った。
前方へ射出されたハリスの肉体が骨と衝突する瞬間、強烈な衝撃を巻き起こし、骨を吹き飛ばす。
既にコルネリウスの攻撃で脆くなっていた骨は、石垣に激突して砕け、飛び散った骨片が地に降り注ぐ。
「今です! このまま全員で退却に移りましょう!」
戦略眼で今が好機と判断したハリスの檄を受け、冒険者達はディノを守りつつ退却を開始する。
退路の先では、グレイブとキーゼが花の実と退路を守り続けていた。
「魂を磨いていく事を至上とする彼らが、肉体をどのように見ているかは分かりませんが。私は肉体は彼らが魂を磨いていった軌跡であると思います」
グレイブは骨に一定の敬意を見せながら、セイントスラストを行使。
「今現在魂を磨いている同胞を邪魔することは本意ではないでしょうからね」
――故に彼らの誇りを守る意味で、完全に大地に帰すべきかと。
鋭い踏み込みと共に、眩く光輝くエーテルを纏わせたダマスカス鋼の祭刀が繰り出され、骨の胴を貫く。
既にアスティンの攻撃で脆くなっていた骨はその一撃で砕け、無数の骨片となって大地に帰っていく。
一方でグレイブは、猿に対しては真逆の評価を下している。
「猿は純粋に邪魔としか言いようがないので、文字通りの駆除対象ですかね」
グレイブの言葉にキーゼも同意する。
「そうですね。猿の数を減らし、実を守ることを最優先にしましょう」
これまでの戦闘で猿達が魔法攻撃に弱いことを見抜いたキーゼは、超聴覚と天眼で捉えた頭上の猿に向け、魔矢を行使。
キーゼの突き出されたダマスカス鋼の祭刀より光の矢が駆け上がり、落下を始めていた猿の胴を貫いた。
その一撃で生命を断たれた猿は血飛沫をあげ、地面に叩きつけられる。
「最悪、実を抱えての離脱を優先する可能性も考慮しましたが、その必要はありませんでしたね」
そう言い残すとキーゼもグレイブと共に花の実を回収し、退却する仲間達の後を追った。
●教え
退却後、ターミルの集落に到着した冒険者達は、依頼にあった花の実を薬師に引き渡す。
医療や薬学の心得があるフェイサルは病人の世話や治療の手伝いを、ハリスが看護への協力を申し出て、それぞれ病人のいる建物へと入っていく。
治療が行われている間、ディノを待ち構えていたのは他の冒険者達とディノへの『訓戒』だった。
「誰かの為に勢い勇んで出たのは宜しいですが……結局、実の確保に加えそちらの救助と二度手間になっているのですよね」
キーゼは冷静に、ディノの行動によって起こった事実を告げていき、サニーが後に続く。
「……ま、この子が先に行ってくれてたおかげで私達が探す時間が省けたのは確かだからさ。さっきの戦闘とここまでの移動の時間があるから、プラスになってるかどうかは怪しいとこだけど」
サニーはそう言いながらも、ディノの仲間を想う気持ちはきちんと認めている。
自分にできることをしたいという意思も認めている。
「ただまぁ、集落の人たちもすごく心配してたしねえ。命を捨てられるのは大層立派だけど、それは今じゃないでしょ」
「動く前に一度深呼吸を。それと、速度は確かに大事ですが、他をおろそかにすれば結果は今回のように無駄な時間を使うこととなりますよ。お忘れなく」
サニーとキーゼは事実だけでなく、具体的な改善策をディノに教える。
リュリュと合流したアスティンも、話に加わる。
「……助けようとして死ぬ方はある意味満足かもだけど」
アスティンはその場合、予想される未来をディノに聞かせる。
「……その命を背負わされ、残された人は……まぁ、生きてる限り苦しむことになるだろうね。……今後はよく考えることだね」
それだけ言うと、アスティンは封印地帯の方面への警戒に戻る。
「同胞を護りたい想いは立派です。けれど勇敢さと無茶を混同してはいけませんよ」
コルネリウスもアスティンやディノの言い分を否定しないよう留意しつつ、こう忠告する。
「大人や私達を、信じて頼ってください。貴方自身の信頼もそこから積み重ねていくんです」
そしてコルネリウスは「実を採取してくれてありがとうございます」とディノに頭を下げる。
(他の人が色々言うでしょうから私は何も言わず、ただ黙って見守るとしましょう)
グレイブは仲間達やディノをヒール2や解呪で治療して以降は、口をはさまず事態を見守っている。
――言われない方が、かえって理解する事もあります。
言われている間は、改善できる余地があることをグレイブは理解している。
その間に病人への治療を終えたフェイサルとハリスが建物から姿を現し、ディノのもとへやってくる。
「私から貴殿に言えることは2つです。まず皆を守る戦士たらんと志すならば、まず己を守る術を身に着けること」
ハリスはその想いは肯定しつつも、同郷ゆえにやや厳しくディノに忠告する。
「2つ目は命を容易く投げ打ってはなりません。長く戦ってこそ多くを救えるのです」
ハリスはフェイサルがディノの心を汲んでくれると信じ、後を託す。
「皆に様々な事を言われただろうが、皆も決して誰かを救いたいという君の想いを否定している訳では無い」
フェイサルは、落ち着いた口調でディノに語りかける。
「それを胸に抱いて行動に移せる。それは誰かと共に生きる命として素晴らしい資質だと保証しよう」
肯定しつつ、助言を送る。
「……だが、だからこそ自身の命を大事にする事だ。己の命に負うべき責任を全うした上で、自他の命を正しく使う術を知ったとき。君は心に、あらゆる脅威を打ち払う刃を持てると、我々も信じているのだ」
既に他の仲間達が伝えたことを踏まえながら、フェイサルは『期待』をディノに示し、それまで俯いていたディノの顔が再び冒険者達に向き直る。
そしてディノは「はい」と頷き、教えを守る気持ちを固める。
「よくやったな。君の勇気で集落の病人は救われるぞ! ディノ君」
アルベルトは手放しでディノを褒めたたえる。
相手の身分や種族の違いに拘らないアルベルトは、ディノの勇気は称賛されるものだと考えている。
「今回は誰も犠牲にならない結果を掴むことができたんだ。褒めるところは褒めるとしようぜ」
正すべきところは正し、称賛するところは褒める。
アルベルトの姿勢はシンプルだが、それだけ容易にディノの心にも届いた。
●快復
その後、薬師より病人の容体が安定したとの報告が届く。
「本当にありがとうございます」
同郷のハリスもディノや集落の人々と一緒になって、冒険者達に頭を下げ感謝する。
ハリスが提案した祝宴は様々な事情で実現しなかったが、冒険者達への恩義を忘れることはない。
ディノは集落を守る一員となるべく、今後も努力していくことだろう。
自分達を救ってくれた冒険者達からの教えを守りながら。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2021年02月27日 07時32分34秒 公開
相談掲示板
ヒーラー グレイブ・ヤードです。 好きに呼んでもらって構わんよ
ハリスと申します。どうぞ宜しく。 ここに帰るのも随分と久しぶりですね…。皆元気だろうか…。 しかし、やはり封印の戦いの熱は我が故郷にも波及していましたか。 戦士であればいざ知らず、未来ある若い命を危険に晒す事はできません。 皆様、どうか我が同胞を救うために力をお貸し下さい。
ん。サニー・フォン・オルライト。クラスはシーフ よろしくね? 一先ず疾風足まで使えば救出対象を抱えて戻ってくる事も出来そうだけど、どうしよっか? 重量で移動ペナルティがかかった場合、開始位置までギリギリ帰ってこれないことも考えられそうだけど
フェイサル・セイフ、癒しの術と剣を少々使う者だ。今回は宜しくお願いする。 若さ……いや、幼さ故の蛮勇と呼ぶのは容易だが…… 剣では殺せぬ病と闘い、命を救おうとするその意気は認めねばな。 友人の縁者でもある、諫言の為にもまずは全力で救い出そう。 >初動 単純な時間稼ぎであれば私はA-5から初手で【光縛封】が使えるな。 彼が封印地帯へ走るのを皆が止めたい、という場合でも効果はある。 ただ……これは一度使用すると破壊されるか私が解除するまで我々にも中の少年に手が出せん。 効果の続く内に周囲の脅威を除かなければむしろ危険が増すし、 敵から急いで遠ざける事を最優先に、というのであれば注意が必要だろうな。
ウォーリアのコルネリウスです。よろしくお願いします。 救出が目的であるので、殲滅する必要は無いのですね。 まずディノさんの元へ向かい護ることを優先するのであれば、私もチャージングを使用して早めにディノさんの元まで行くことは可能だとは思います。 藪もありますから、抱えてすぐ戻るというのは少し難しそうですね。 ディノさんが封印地帯方面にこれ以上向かうのを制止して追い付くことと、ディノさんの安全確保、その間の時間稼ぎ、退路確保など分担して行う必要があるでしょうか。
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 とにかく急がないとディノ君が危ないってことか。 チャージングでディノ君のところに行くか、ディノ君周辺のスケルトンを倒しに行くかしないとな
シューターのアスティン。よろしく。 …冒険者を見てるのに実を投げて自分がおとりになるとか、 見方によっては冒険者に自分は守れないって思ってるってことかな…舐められてるな。 まぁ、いいけど。 <救出 ディノの移動力と移動タイミングがちょっとわからないけど、 同時に動き出したとして初期位置から多少封印方面に動いてからしか追いつけないかもだね。 そうなると封印地帯方面付近にいる猿から移動阻害を受ける可能性もあるし、 オルライトに初手で確保してすぐ戻ってもらうのはちょっときついかもだね。 <行動 ウォーリアーとヒーラーが多いんだね、今回。 となると…。 1マス1ヘクスみたいだから戦場全域弓の射程内か。 俺はペットだけ前に行かせて、初期位置からディノのところに向かう 奴らを狙撃してひるませる、とか 煙幕で視界を遮って邪魔をする、とかに専念したほうがよさそう、かな? あと。実の回収をどうするかだよね。1ターン目が無事ってことは2ターン目には保護してないとまずいだろうし。
さて、お願いします。僕が最後ですかね 今回はキャスター不在ですか。 では、ヒーラーは他にもいらっしゃいますし、キャスター仕様で行きましょう。 >実と救出 ここに関しては初手から同時に動くしかないですかね。 救出に関しては脚の早い方に任せて合流と説得、ついで後退 実に関しては周りの安全確保も必要ですので、それこそ実に守りを置くかあるいは光縛封等で安全確保かと。 抱えて動くぐらいの品ですので、持って戦闘は厳しいかと。 >ディノ 素直に下がってくれるか怪しいのですので、そのあたりは説得次第ですかね
>囮とかその他 まぁ、あちらの数が数ですし、実力も面識もわからない以上 目的のみを優先というのはよくあることですからね。 多分この中でも、同じようになったら同じようなことを行う方もいらっしゃると思いますよ >ディノ少年 何なら私が確保に専念いたしましょうか? 余計なものがなければ皆さん特に苦労はせず駆除を行えるかと思いますが。
数が多い事もありますし、出来れば戦闘は必要最低限に留たいですね。 >ディノ そうですね、ディノさんも移動はするでしょうし、最速で動いても1Rで接触はもしかしたら少し難しい場合があるかもしれません。私はディノさんの確保と説得に回りたいと思いますので、移動しながら声かけをしていこうかと。 リザードマンスケルトンは射程は0ですし、A5かA7辺りから真っすぐ進みたいところですが。 >実と救出 実の回収については、初手でA5から移動開始の1名がなるべく1R以内に到達し即時回収、という形の方が良さそうでしょうか。実を持つ方は、キーゼさんの仰るように、実を守る事に集中した方が良いかもしれませんね。 2R以降に潰れてしまったら失敗になるか、再採取をしなければいけなくなるかと思います。
>実について 同胞の命が懸かった品とは言え、これを守る為に人手を割くのもやや厳しいですね。 説得する方が1~2名、退路確保に4~5名、補助に2~3名程度は欲しい所です。 キーゼ殿の提案にあった光縛封での当座の安全確保が現状では最善かと。 現在敵の興味は突出したディノが引き付けております。 知能の低い敵がそれを差し置いて実をわざわざ破壊しようとはしないはずです。 >担当 私はドラゴンチャリオッツやシーザーロアで敵を散らしつつ退路の確保を致します。 変則的な移動を行うモアギブンスへ優先的にシーザーロアを通したい所ですね。 敵は物理一辺倒のようですから、私ならば回復なしでもある程度は耐えられます。 キーゼ殿は他の方のフォローを優先して頂いて構いません。 移動力の関係でディノを救いに向かえないのは歯痒いですが、そこはネムリアス殿や サニー殿にお任せいたします。どうか宜しくお願い致します。 >ディノに舐められている? 確かに「助けてくれ」ではなく「それを持って逃げて欲しい」では、百戦錬磨の方にとって無礼と取られても仕方がないかもしれませんが、状況の逼迫と子供ゆえの経験の不足から冷静な判断ができなくなっているものかと。 ディノの心は実を無事に集落に届けるという一点であり、こちらにさして侮蔑的な感情を抱いているとは思えません。説得の折は我々が冒険者であること、そして彼の命も見捨てるつもりがないことを伝えれば、信じてくれるものと考えます。 やり方は間違っていたかもしれませんが、彼は紛れもなく集落の同胞を救うために動いた。私としてはその点を認めたいと思っております。…無茶を怒りはしますが。
俺は退路確保に参加しよう 6Aからスタートして6I方面にチャージングかましてリザードマンスケルトンを倒しに行こうかなと考えている。 俺もディノ君に「舐められている」とは感じないな。
>行動 では、僕は予定を変えて実の確保を最優先で動きましょうか。 初手で実のあるHEXに光縛封を使い安全を確保、ついで周囲の敵への対応になりますか。 3Rは安全確保できますが、まあもう一人ぐらいいて頂けると安泰ですかね。 自身の耐久力はそれなりにありますが、殲滅力には欠けますからね。 >ディノ氏 まあ、恐らく薬の材料を確保することしか考えてない、というところでしょうね 此方の確保の場合、一番厄介なのが移動阻害のBSですね。 撤退の際や確保の際にこれを受けたら、間違いなく足並みが乱れるので。 そういう意味でも、足の速い方が可能な限り早急にディノ氏周辺を確保するのが最善かと。
>行動 ん。じゃあ実の確保は任せちゃうね とりあえず1R目は疾風足使ってディノ君に接近 説得するにしろ無理矢理抱えて走るにしろ、近づかなきゃ始まらなそうだし その後は抱えて戻れそうならメイン移動+フェザーステップ分で戻る、無理そうなら敵を引きつけるって感じかなぁ 後者の場合、セイフ君が言ってたみたいに光縛封を使ってみるのもアリ、かも? 私自身確定で敵を引きつけられる手段を持ってる訳じゃないし ただ、この辺りはまだ要相談かなぁ
>行動 では、私はチャージングを使用してサニーさんと一緒にディノさんに追い付いて早めの確保を目指しますね。 殺界やシーザーロアがありますので、敵の引き付けや足止めは任せてください。どちらにするかは考え中ですが、タンカーですから防御も体力もあるので、早々倒れることは無いと思います。
とりあえず初手で範囲支援(レゾナンスオブヴァロー)を使用しておきます。 移動には関わりませんが、それなりに無理を通せるかと思います。
前に出る人は十分そうかな。 A4あたりの初期位置から位置を微調整しつつ、 弓で奥の敵から狙撃していって、ディノの周囲の敵へのけん制と 退路の確保をするよ。 一応増援は来ないとは思うけど、万が一のために周囲も警戒しておく。 ペットは狼を連れて行って 実の防衛の手助けに前に出すよ。 本職の前衛には及ばなくても少しは役に立つと思うし。 <ディノの確保 追いつければ子供だし抱えるなり引っ張るなりはできるんじゃないかな。 身の安全を優先する思考なら、 一緒に来ない限りここから離れない、とか言えば 俺たちだけが実を持ちかえるっていう状況が なくなるから、おとなしくついてくるかもだし。 …実だけが戻ってくれば助けられた人が一生罪悪感を背負って 苦しむだけなのにな。
出発が差し迫って参りましたね。 皆様の御助力に改めて感謝を。 >初期位置 私はA3より開始し、一気にD・E付近まで南下致します。 そこに留まりながらチャリオッツによる弾きや闘気槌による範囲攻撃を。 これは対象識別ですから、味方に迷惑はかけません。 アルベルト殿やフェイサル殿も気になさらず接近して頂いて結構です。 脱出組の皆様は私とは反対側のA6~7付近よりの脱出を目指して頂ければ。 入口付近に一匹いますが、単体ならば恐らく問題にはなりますまい。 >実だけが戻れば~ 仰る通りです、アスティン殿。そこはディノに厳重に言い含めなくては。 病人を救う代わりに若き同胞を喪ったとあっては、誰一人喜べはしません。 彼が皆を守る戦士たらんと志すならば、決してその命を易く扱ってはならない。 まず己が生き延びる術を知ることで、初めて多くの命を救えるのだと。
……よし、それでは私はやはり初手でディノに【光縛封】を使用しよう。 オルライトやアーラの脚の速さであれば接触まで時間はかからないだろうが…… 今回の状況では、彼が我々より離れた位置へ移動しようとするのをまず避けるべきと見た。 ……彼が何かしらの理由で素直に我々に従ってくれなかった場合の保険、でもあるな。 その後は各方面の前衛を支援しつつ、実を守る位置取りをしたいと思う。 誰もが一つしか持ちえぬ「命」というモノを皆で正しく使えばどれほどの事ができるのか、将来有望な子供に教えてやらねばな。